(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102130
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】凍結ゼリー飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20220630BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20220630BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220630BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220630BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20220630BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20220630BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L29/20
A23L29/244
A23L29/30
A23L29/231
A23L29/238
A23L29/269
A23L29/281
A23L29/256
A23L2/00 Z
A23L2/60
A23L29/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216682
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美穂
(72)【発明者】
【氏名】岡島 拓真
【テーマコード(参考)】
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LC05
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH02
4B041LH06
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4B041LK10
4B041LK11
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4B041LP01
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4B041LP16
4B117LC02
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4B117LL02
4B117LL04
4B117LP14
4B117LP16
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料であって、冷凍されて品温が-18[℃]程度の状態で、容器の吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感が得られ、さらに、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感が復元可能な凍結ゼリー飲料を提供する。
【解決手段】本発明に係る凍結ゼリー飲料は、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料であって、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類を含有し、前記機能性多糖類は、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料であって、
水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類を含有し、
前記機能性多糖類は、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有すること
を特徴とする凍結ゼリー飲料。
【請求項2】
前記イヌリンは、長鎖イヌリンであり、
前記機能性多糖類は、少なくとも長鎖イヌリンを含有すること
を特徴とする請求項1記載の凍結ゼリー飲料。
【請求項3】
前記水溶性糖類は、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖、およびトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記糖アルコールは、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、マンニトール、およびラクチトールからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、
前記ゲル化剤は、寒天、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、κ-カラギナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、ゼラチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、LMペクチン、HMペクチン、アラビアガム、および大豆多糖類からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有すること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の凍結ゼリー飲料。
【請求項4】
前記糖アルコールは、エリスリトールであること
を特徴とする請求項3記載の凍結ゼリー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
室温状態(品温が、1[℃]~30[℃]の状態)ではゼリー状であり、冷凍状態(品温が、氷結晶を生成する温度領域から-20[℃]程度までの状態)では氷結晶を含む凍結ゼリー状であって、室温状態および冷凍状態のいずれの状態においても飲用される凍結ゼリー飲料が知られている。この凍結ゼリー飲料は、通常、スパウト等と呼ばれる細い吸い口を有する袋状容器(一般に、スパウトパウチ等と呼ばれる容器)や、同様の細い吸い口やストロー挿込口を有し、紙材等により構成された可撓性パック等に充填され、容器が押圧されることにより、吸い口やストロー挿込口に突き刺されたストローからゼリーや凍結ゼリーが吐出し、飲用される。
【0003】
従来技術の例として、特許文献1(特開2002-272431号公報)には、水溶性糖類化合物として果糖、ブドウ糖、ショ糖および粉飴と、糖アルコールとしてエリスリトールと、ゲル化剤としてカラギナンおよびローカストビーンガムとが配合された凍結ゼリー飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の凍結ゼリー飲料は、冷凍されて、冷凍庫から取出した直後の品温が-18[℃]程度の状態では未だ硬過ぎて、前述のようなスパウトパウチや可撓性パックを手に掴んで押圧しても、吸い口やストロー(以下、まとめて「吸い口」と表記する)から凍結ゼリーを吐出させられないという課題があった。例えば特許文献1には、冷凍庫から取出して1分後の品温が-10[℃]の状態で初めて凍結ゼリー(同文献では、シャーベットゼリー)を吸い口から吐出させて引用可能となるが未だ飲み頃(飲みやすい状態)でなく、冷凍庫から取出して3分後の品温が-5[℃]の状態で初めて飲み頃になることが記載されている。このように、従来の凍結ゼリー飲料は、凍結ゼリーを容器の吸い口から容易に吐出させ、飲用して氷結晶を含む凍結ゼリー食感が得られる状態になるまでに3分もの時間を要していた。したがって、品温が-18[℃]程度の状態で吸い口から吐出可能で、さらには当該冷凍状態において細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感が得られる凍結ゼリー飲料が望まれている。
【0006】
また、別の課題として、冷凍された凍結ゼリーが解凍されて室温(例えば、品温が10[℃]程度)状態に戻された状態では、冷凍前のゼリー食感を復元することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料であって、冷凍されて品温が-18[℃]程度の状態で、容器の吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感が得られ、さらに、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感が復元可能な凍結ゼリー飲料を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る凍結ゼリー飲料は、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料であって、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類を含有し、前記機能性多糖類は、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することを特徴とする。
【0010】
これによれば、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類が相乗的に作用して、冷凍されると、氷結晶は細かく滑らかでありながら、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷が好適に作られるようになる。その結果、冷凍状態(例えば、品温が-18[℃]程度の状態)で柔らかく、容器の細い吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感を味わうことができる。さらに、氷結晶の構造が弱くなり、ゲル化剤の冷凍変性を抑制できることから、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感を復元することができる。
【0011】
また、前記イヌリンは、長鎖イヌリンであり、前記機能性多糖類は、少なくとも長鎖イヌリンを含有することが好ましい。
【0012】
また、前記水溶性糖類は、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖、およびトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記糖アルコールは、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、マンニトール、およびラクチトールからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有し、前記ゲル化剤は、寒天、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、κ-カラギナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、ゼラチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、LMペクチン、HMペクチン、アラビアガム、および大豆多糖類からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有することが好ましい。このうち、前記糖アルコールは、エリスリトールであることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷凍されて品温が-18[℃]程度の状態で、容器の吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感が得られるようになる。さらに、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感が復元可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る凍結ゼリー飲料について説明する。本実施形態に係る凍結ゼリー飲料は、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料である。ここで、本願における「ゼリー」とは、通常に飲食できる人が通常の吸引力でスパウト等の吸い口やストローから吸引可能な程度の流動状態を有するゲルをいい、「ゼリー状」とはその状態をいう。また、「氷結晶」とは、氷の結晶であって、この氷には、水からなる氷の他に、糖類等の凍結ゼリー飲料に含有する成分が、分散した分散液や、溶解した溶解液等からなる氷を含む。また、「凍結ゼリー」とは、少なくとも品温が0[℃]以下であって、氷結晶を含むゼリーをいい、「凍結ゼリー状」とはその状態をいう。
【0015】
本実施形態に係る凍結ゼリー飲料は、水溶性糖類と、糖アルコールと、ゲル化剤と、さらには、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種類と、を含有する。以下、詳細に説明する。
【0016】
水溶性糖類は、甘味料として甘味を付与する。また、冷凍時には微細で滑らかな氷結晶を形成させる作用を有する。水溶性糖類としては、特に限定されないが、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等が挙げられ、これらのうち、少なくとも1種類以上を含んでいればよい。ただし、ここに例示した中では、ブドウ糖が好適である。
【0017】
水溶性糖類の配合量(2種類以上の材料を用いる場合は、それら合計の配合量)としては、特に限定されないが、凍結ゼリー飲料全質量の5[質量%]~30[質量%]程度を配合すればよく、より好適には10[質量%]~25[質量%]、さらに好適には15[質量%]~23[質量%]が好ましい。水溶性糖類の含有率が大き過ぎると、粘性が高くなって、飲用した際に糊状感を感じやすくなる。
【0018】
糖アルコールは、水溶性糖類と同じく甘味料として甘味を付与する。また、糖アルコールは過冷却においてガラス形成をしやすい物質群であり、過冷却における挙動が水溶性糖類とは異なる。したがって、水溶性糖類に加えて糖アルコールを含有させることで、冷凍温度にムラが生じ、均一な氷ができにくくなる。その結果、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷を作ることができる。
【0019】
糖アルコールとしては、特に限定されないが、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、マンニトール、ラクチトール等が挙げられ、これらのうち、少なくとも1種類以上を含んでいればよい。ただし、ここに例示した中では、エリスリトールが好適である。
【0020】
糖アルコールの配合量(2種類以上の材料を用いる場合は、それら合計の配合量)としては、特に限定されないが、凍結ゼリー飲料全質量の2[質量%]~20[質量%]程度を配合すればよく、より好適には5[質量%]~15[質量%]、さらに好適には7[質量%]~12[質量%]が好ましい。
【0021】
ゲル化剤は、適度の粘性を付与すると共に、ゲル化作用によりゼリー状を作り出す。また、冷凍時に微細で滑らかな氷結晶を形成させる作用にも寄与する。ゲル化剤としては、特に限定されないが、例えば、寒天、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、κ-カラギナン、ι-カラギナン、λ-カラギナン、ゼラチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、LMペクチン、HMペクチン、アラビアガム、大豆多糖類等が挙げられる。これらのうち、少なくとも1種類以上を含んでいればよいが、好適には、1種類または2種類程度を含有させるとよい。2種類程度の材料を適切に組み合わせることにより、ゲル化剤をよる作用をより安定化させることができる。なお、ここに例示した中では、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、およびアルギン酸ナトリウムが好適である。
【0022】
ゲル化剤の配合量(2種類以上の材料を用いる場合は、それら合計の配合量)としては、特に限定されないが、凍結ゼリー飲料全質量の0.03[質量%]~10[質量%]程度を配合すればよく、より好適には0.05[質量%]~5.0[質量%]、さらに好適には0.1[質量%]~3.0[質量%]が好ましい。ゲル化剤の含有率が小さ過ぎるとゲル化作用が弱まってゼリー食感が得られにくくなる。一方、ゲル化剤の含有率が大き過ぎると粘性が高くなって、飲用した際に糊状感を感じやすくなる。
【0023】
さらに、本実施形態に係る凍結ゼリー飲料は、機能性多糖類を含有させることに特徴がある。ここでいう機能性多糖類は、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンからなる群より選ばれる多糖類であって、これらのうち、少なくとも1種類以上を含んでいればよい。
【0024】
イヌリンは、ショ糖分子に多数の果糖分子が直鎖上に結合した水溶性の多糖類である。イヌリンはブドウ糖やショ糖等の水溶性糖類と同じく氷点降下作用を有するが、イヌリンの場合、ブドウ糖やショ糖等と比較して氷点が下がりにくく、そのため、冷凍時には凍りやすく、解凍時には融け出しが遅くなる。したがって、イヌリンを含有させることにより、水溶性糖類との間で氷点に差異が生じ、均一な氷がよりできにくくなる。その結果、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷がより作られやすくなる。凍結ゼリー飲料に含有させるイヌリンの種類としては、特に限定されないが、上記効果は果糖分子をより多く持つ(すなわち、重合度の高い)程高くなるため、好適には短鎖イヌリンよりも長鎖イヌリンを用いるのが好ましい。なお、本願でいう短鎖イヌリンとは、平均重合度(果糖数)が2~10程度のイヌリンをいう。また、長鎖イヌリンとは、平均重合度(果糖数)が11~40程度のイヌリンをいう。長鎖イヌリンの中でも、平均重合度15~40程度のものを用いるとより好適であり、平均重合度15~30程度ものと用いるとさらに好適である。
【0025】
また、サイクロデキストリン(CD)はブドウ糖が環状に繋がった構造を有し、内部に疎水基、外部に親水基を持つ。そのため、サイクロデキストリン分子表面は、親水性である水分子の密度が高くなる。したがって、サイクロデキストリンを含有させることにより、ゼリー飲料内部の水分子の分布が不均一になり、均一な氷がよりできにくくなる。その結果、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷がより作られやすくなる。凍結ゼリー飲料に含有させるサイクロデキストリンとしては、特に限定されないが、好適には水への溶解性が高いα-サイクロデキストリンやγ-サイクロデキストリンを用いるのが好ましい。また、高度分岐環状デキストリンは、螺旋状のグルカン鎖を有して高度な分岐構造を持つ。また、難消化性デキストリンは、澱粉に微量の酸を添加して加熱処理した焙焼デキストリンを加水分解し、精製することによって得られ、複雑な分岐構造を持つ。高度分岐環状デキストリンおよび難消化性デキストリンは、通常のデキストリンとは異なる構造を有しており、水への親和性が異なる。したがって、高度分岐環状デキストリンや難消化性デキストリンを含有させることにより、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷がより作られやすくなる。
【0026】
機能性多糖類の配合量(2種類以上の材料を用いる場合は、それら合計の配合量)としては、特に限定されないが、凍結ゼリー飲料全質量の0.1[質量%]~20[質量%]程度を配合すればよく、より好適には1[質量%]~15[質量%]、さらに好適には2[質量%]~10[質量%]が好ましい。
【0027】
その他、本発明の目的に反しない範囲で、凍結ゼリー飲料中に任意の添加物を含有させてもよい。
【0028】
以上の成分を含有することにより、室温状態ではゼリー状であり、冷凍状態では氷結晶を含む凍結ゼリー状である凍結ゼリー飲料が実現される。そして、機能性多糖類を含有させることにより、他の成分と相乗的に作用して、氷結晶は細かく滑らかでありながら、氷結晶の構造が弱く外見上柔らかい氷が好適に作られるようになるため、凍結ゼリーは冷凍状態(例えば、品温が-18[℃]程度の状態)で柔らかく、容器の細い吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感を味わうことができる。さらに、氷結晶の構造が弱くなり、ゲル化剤の冷凍変性を抑制できることから、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感を復元することができる。
【0029】
続いて、本実施形態に係る凍結ゼリー飲料を製造するには、所定量の水にゲル化剤を添加し、加熱して溶解させる。加熱条件はゲル化剤の種類や量に応じて適宜設定すればよく、一例として、加熱温度を60[℃]~90[℃]等に設定すればよい。次いで、この溶液に、水溶性糖類、糖アルコール、および機能性多糖類を添加し、溶解させることで、室温状態ではゼリー状である凍結ゼリー飲料が製造することができる。これらの成分を溶解させる際の溶液の温度等も、ゲル化剤のときと同じく各成分の種類や量に応じて適宜設定すればよい。また、所定量の水にゲル化剤、水溶性糖類、糖アルコール、および機能性多糖類を添加し、加熱溶解させることもできる。ゲル化剤が加熱溶解していれば他の成分の添加方法は特に限定されない。製造された凍結ゼリー飲料は、一例として、前述のスパウトパウチや可撓性パック等に充填される。これによれば、室温状態では、容器を手に掴んで押圧することにより、容器の吸い口からゼリーを吐出させて飲用することができる。また、容器ごと冷凍すると、室温状態のゼリー状から冷凍状態の凍結ゼリー状に変化させることがき、同様に容器を手に掴んで押圧することにより、容器の吸い口から凍結ゼリーを吐出させて飲用することができる。
【実施例0030】
(方法)
表1~4に示す材料、および水を用いて凍結ゼリー飲料を製造した。具体的な配合は各試験にて示す。
製造方法は、水にゲル化剤を添加し90[℃]に加熱して溶解させた。次いで、この溶液に、水溶性糖類、糖アルコール、および機能性多糖類を添加し、溶解させて凍結ゼリー飲料を製造した。なお、一部の比較例において所定の成分を配合しないものは、当該成分を添加しない以外は実施例と同条件で凍結ゼリー飲料を製造した。
得られた凍結ゼリー飲料をアルミ製のスパウトパウチに充填し、10[℃]で冷蔵し、品温が10[℃]の状態で、容器(スパウトパウチ)を手に掴んで押圧し、吸い口(スパウト)からの吐出性を表5の基準に従って評価した。また、ゼリーを飲用し、その食感を表6の基準に従って評価した。
また、凍結ゼリー飲料をスパウトパウチごと-18[℃]で冷凍し、品温が-18[℃]の状態で、同様に容器(スパウトパウチ)を手に掴んで押圧し、吸い口(スパウト)からの吐出性を表5の基準に従って評価した。また、凍結ゼリーを飲用し、その食感を表6の基準に従って評価した。
さらに、凍結ゼリーを解凍し、品温が10[℃]の状態で飲用し、冷凍前の食感の復元性を表6の基準に従って評価した。
以上の、品温が10[℃]の状態における吐出性および食感、品温が-18[℃]の状態における吐出性および食感、ならびに解凍されて品温が10[℃]の状態に戻された状態における食感は、いずれも10人のパネラーが各人で評価し、最も人数の多かった評価を評価結果とした。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
(結果)
以下、各試験の配合(配合割合)および評価結果を示す。ただし、品温が10[℃]における吐出性については、全ての実施例、比較例および参考例で差異が認められず、いずれも容器を掴む動作で容易に吐出できたことから(評価◎)、表における記載を省略する。
【0038】
試験1
試験1では、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類の全てを配合して凍結ゼリー飲料を製造した(実施例1、2)。また、これら4種の成分のいずれかを配合せずに(いずれかを欠く)凍結ゼリー飲料を製造した(比較例1~4)。
各例の配合(配合割合)および評価結果を表7に示す。
【0039】
【0040】
表7に示すように、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類を全て配合したものでは(実施例1、2)、室温状態(ここでは、品温が10[℃]の状態)でのゼリー食感および冷凍状態(ここでは、品温が-18[℃])での凍結ゼリー食感が共に良好で、容器を掴む動作で容易に吐出でき、また、解凍時(以下、「解凍されて室温状態(ここでは、品温が10[℃]の状態)に戻された状態」の意味で「解凍時」の表記を使用する)には、食感を復元することができた(全項目で評価○以上)。このうち、機能性多糖類として長鎖イヌリン(平均重合度23)を用いたものは(実施例2)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性において特に良好な結果が得られた(評価◎)。一方、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類のいずれか1つを欠いているものでは(比較例1~4)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても十分な結果が得られなかった(全項目で評価×。ただし、比較例13は冷凍状態での吐出性が「○」であるが、そもそもゼリー状にならなかった)。
【0041】
試験2
試験2では、機能性多糖類としてイヌリン(実施例3、4:短鎖イヌリン、実施例5、6:長鎖イヌリン)、サイクロデキストリン(実施例7、8:α-CD、実施例9、10:γ-CD)、高度分岐環状デキストリン(実施例11、12)、および難消化性デキストリン(実施例13、14)を用いて凍結ゼリー飲料を製造した。また、これらの多糖類に代えて、通常の直鎖型のデキストリンを用いて凍結ゼリー飲料を製造した(比較例5~8)。
各例の配合(配合割合)および評価結果を表8に示す。
【0042】
【0043】
表8に示すように、サイクロデキストリンでは、ブドウ糖の数(すなわち、環のサイズ)に関わらず、α-CDおよびγ-CDのいずれを用いたものでも(実施例7~10)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○)。また、高度分岐環状デキストリンおよび難消化性デキストリンでも(実施例11~14)、同じく室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○)。一方、これらに対して、通常の直鎖型のデキストリンを用いたものでは(比較例5~8)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても十分な結果が得られなかった(全項目で評価×)。
【0044】
また、イヌリンでは、重合度に関わらず、短鎖イヌリン(平均重合度10)および長鎖イヌリン(平均重合度23)のいずれを用いたものでも(実施例3~6)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、長鎖イヌリンを用いたものでは(実施例5、6)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性において特に良好な結果が得られ(評価◎)、上記のサイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリンおよび難消化性デキストリンを含む機能性多糖類の中で最も高い効果が認められた。
【0045】
試験3
試験3では、水溶性糖類、糖アルコール、およびゲル化剤のそれぞれに様々な材料を用いて凍結ゼリー飲料を製造した(実施例15~62および参考例1)。また、水溶性糖類または糖アルコールを配合せずに(いずれかを欠く)凍結ゼリー飲料を製造した(比較例9、10)。
各例の配合(配合割合)および評価結果を表9および表10に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
表9に示すように、水溶性糖類および糖アルコールを配合することで(実施例15~27)、これらを欠く比較例9、10に対して、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られ(全項目で評価○以上)、本試験で用いた全ての材料に十分な効果が認められた。このうち、水溶性糖類にブドウ糖、糖アルコールにエリスリトールを用いたもので(実施例15、21)、特に良好な結果が得られた(評価◎)。
【0049】
また、ゲル化剤では、表10に示すように、澱粉(参考例1)を除き、本試験で用いた全ての材料および組み合わせで(実施例28~62)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、寒天(実施例28、49)、寒天とグアーガムとの組み合わせ(実施例29、52)、ネイティブジェランガムとタラガムとの組み合わせ(実施例33)、κ-カラギナンとローカストビーンガムとの組み合わせ(実施例35)、アルギン酸ナトリウム(実施例42)、アルギン酸ナトリウムとHMペクチンとの組み合わせ(実施例43)、ジェランガムとタラガムとの組み合わせ(実施例46)、寒天とグルコマンナンとの組み合わせ(実施例47、54)、寒天とローカストビーンガムとの組み合わせ(実施例48)、寒天とタラガムとの組み合わせ(実施例53)、寒天とネイティブジェランガムとの組み合わせ(実施例56)、および寒天とアルギン酸ナトリウムとの組み合わせ(実施例61)で特に良好な結果が得られた(冷凍状態での食感および吐出性が、いずれも評価◎)。これらの組み合わせにおける配合割合等を考慮すると、ゲル化剤として、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、グルコマンナン、およびアルギン酸ナトリウムが特に好適であることが示された。
【0050】
試験4
試験4では、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類のそれぞれについて、様々な配合量(配合割合)で凍結ゼリー飲料を製造した(実施例63~86)。また、水溶性糖類、糖アルコール、または機能性多糖類を配合せずに(いずれかを欠く)凍結ゼリー飲料を製造した(比較例11、12、13)。
各例の配合(配合割合)および評価結果を表11に示す。
【0051】
【0052】
表11に示すように、水溶性糖類では、配合量(配合割合)が5[質量%]~30[質量%]の範囲において(実施例63~68)、水溶性糖類を欠く比較例11に対して、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、10[質量%]~25[質量%]の範囲(実施例64~67)でより効果が高く、15[質量%]~23[質量%]の範囲(実施例65~66)でさらに効果が高くなった(評価◎)。
【0053】
また、糖アルコールでは、配合量(配合割合)が2[質量%]~20[質量%]の範囲において(実施例69~74)、糖アルコールを欠く比較例12に対して、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、2[質量%]~15[質量%]の範囲(実施例69~73)でより効果が高く、7[質量%]~12[質量%]の範囲(実施例71~72)でさらに効果が高くなった(評価◎)。
【0054】
また、ゲル化剤では、配合量(配合割合)が0.03[質量%]~10[質量%]の範囲において(実施例75~80)、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、0.05[質量%]~5.0[質量%]の範囲(実施例76~79)でより効果が高く、0.1[質量%]~3.0[質量%]の範囲(実施例77~78)でさらに効果が高くなった(評価◎)。
【0055】
また、機能性多糖類では、配合量(配合割合)が0.1[質量%]~20[質量%]の範囲において(実施例81~86)、機能性多糖類を欠く比較例13に対して、室温および冷凍状態での食感ならびに冷凍状態での吐出性、さらに解凍時の復元性のいずれにおいても良好な結果が得られた(全項目で評価○以上)。このうち、1[質量%]~15[質量%]の範囲(実施例82~85)でより効果が高く、2[質量%]~10[質量%]の範囲(実施例83~84)でさらに効果が高くなった(評価◎)。
【0056】
以上の結果から、水溶性糖類、糖アルコール、ゲル化剤、および機能性多糖類として、イヌリン、サイクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン、および難消化性デキストリンのうち少なくとも1種類を含有する凍結ゼリー飲料によれば、室温状態では、容器を掴む動作で吸い口から容易にゼリーを吐出させて良好なゼリー食感を味わうことができ、また、冷凍状態でも、同様に容器を掴む動作で吸い口から容易に凍結ゼリーを吐出させて細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感を味わうことができ、さらに、解凍されて室温状態に戻された状態では、冷凍前のゼリー食感を復元できることが示された。
【0057】
なお、本発明は、冷凍庫から取出した直後において、スパウトパウチや可撓性パック等の容器の吸い口から凍結ゼリーを吐出させ、凍結ゼリー食感を味わうことができることを課題の一つとしている。そこで、冷凍庫の設定温度の一般的な業界基準が-18[℃]とされていることに鑑み、冷凍状態として、特に品温が-18[℃]程度の状態を例示して説明した。したがって、冷凍状態が品温-18[℃]に限定される訳ではない。また、本発明の効果である、冷凍状態で、容器の吸い口から容易に吐出させることができ、飲用すると細かく滑らかな氷結晶を含む優れた凍結ゼリー食感が得られること、さらに、解凍されて室温状態に戻された状態で、冷凍前のゼリー食感が復元可能になることが品温-18[℃]の状態に限定される訳ではない。