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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102132
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両用ドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/44 20060101AFI20220630BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20220630BHJP
   E05C 17/22 20060101ALI20220630BHJP
   E05C 19/02 20060101ALI20220630BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E05F11/44 D
E05F15/655
E05C17/22 A
E05C19/02 D
B60J5/04 Z
B60J5/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216684
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】角谷 誠一
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA01
2E052DA06
2E052DB01
2E052DB06
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052GD09
2E052GD12
(57)【要約】
【課題】搭載性に優れた車両用ドア装置を提供する。
【解決手段】車両用ドア装置は、第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づきドア5に開閉されるドア開口部3の開側端部47に設けられた可倒レバー40と、この可倒レバー40を付勢して起立状態に保持する付勢部材45と、を備える。また、車両用ドア装置は、ドア5が全開位置に移動することにより起立状態の可倒レバー40に係合して、そのドア5を全開位置に保持するチェック機構を備える。更に、第1のリンクアームは、ドアが開動作することによりドア開口部3の開側端部47に近接する位置に設けられ、チェック機構は、第1のリンクアームと一体に設けられる。そして、可倒レバー40は、全閉位置P0に移動するドア5に押圧されて傾倒することにより、そのドア5とドア開口部3の開側端部47との間の隙間50に収容される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームと、
前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアに開閉されるドア開口部の開側端部に設けられた可倒レバーと、
前記可倒レバーを付勢して起立状態に保持する付勢部材と、
前記ドアが全開位置に移動することにより前記起立状態の前記可倒レバーに係合して前記ドアを全開位置に保持するチェック機構と、を備え、
前記第1のリンクアームは、前記ドアが開動作することにより前記ドア開口部の開側端部に近接する位置に設けられ、
前記チェック機構は、前記第1のリンクアームに設けられるとともに、
前記可倒レバーは、全閉位置に移動する前記ドアに押圧されて傾倒することにより該ドアと前記ドア開口部の開側端部との間の隙間に収容される車両用ドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア装置において、
前記チェック機構は、
互いに対向する位置に配置された一対の係合部材と、
前記一対の係合部材を互いが近接する方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記一対の係合部材の間に前記可倒レバーが挿入された状態で該可倒レバーに係合すること、を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア装置において、
前記ドアと前記ドア開口部の開側端部との間の隙間には、車幅方向に離間して外側シール部材及び内側シール部材が配置されるものであって、
前記可倒レバーは、前記外側シール部材と前記内側シール部材との間の位置に前記収容されること、を特徴とする車両用ドア装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用ドア装置において、
前記チェック機構は、前記ドア開口部の開側端部に設けられた前記可倒レバーの支持部材に対する当接部を有するとともに、該当接部又は前記可倒レバーの支持部材の少なくとも一方に緩衝部材が設けられていること、を特徴とする車両用ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有した第1及び第2のリンクアームを備える車両用ドア装置がある。このような車両用ドア装置は、第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づいて、そのドア開口部に設けられたドアが開閉動作する。また、例えば、特許文献1に記載の車両用ドア装置は、車体に対する第1の回動連結点周りにリンクアームと一体に回動するチェックアームを備える。更に、このチェックアームは、リンクアームの回動により車両のドアが全開位置に移動することで、ボール状の外形を有した係合部が車体に設けられたチェック溝保持部に係合する。そして、これにより、その係合部をチェック溝保持部に押し当てる弾性部材の付勢力に基づいて、車両のドアを全開位置に保持する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-239339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の構成では、リンクアームに連動してチェックアームが回動するスペースが必要になる。そして、これが車両に搭載する上での制約になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用ドア装置は、車体に対する第1の回動連結点と車両のドアに対する第2の回動連結点とを有する第1及び第2のリンクアームと、前記第1及び第2のリンクアームが形成するリンク機構の動作に基づき前記ドアに開閉されるドア開口部の開側端部に設けられた可倒レバーと、前記可倒レバーを付勢して起立状態に保持する付勢部材と、前記ドアが全開位置に移動することにより前記起立状態の前記可倒レバーに係合して前記ドアを全開位置に保持するチェック機構と、を備え、前記第1のリンクアームは、前記ドアが開動作することにより前記ドア開口部の開側端部に近接する位置に設けられ、前記チェック機構は、前記第1のリンクアームに設けられるとともに、前記可倒レバーは、全閉位置に移動する前記ドアに押圧されて傾倒することにより該ドアと前記ドア開口部の開側端部との間の隙間に収容される。
【0006】
上記構成によれば、可倒レバーとチェック機構との係合力に基づいて、安定的に、そのドアを全開位置に保持することができる。更に、ドアが全閉位置にある場合には、可倒レバーが傾倒することで、そのドアとドア開口部の開側端部との間に形成される隙間が狭くとも、この隙間内に可倒レバーを収容することができる。そして、これにより、その優れた搭載性を確保することができる。
【0007】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記チェック機構は、互いに対向する位置に配置された一対の係合部材と、前記一対の係合部材を互いが近接する方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記一対の係合部材の間に前記可倒レバーが挿入された状態で該可倒レバーに係合することが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、ドアを全開位置に移動させる第1のリンクアームの回動に基づいて、その可倒レバーに係合するチェック機構を形成することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、安定的に、そのドアを全開位置に保持することができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記ドアと前記ドア開口部の開側端部との間の隙間には、車幅方向に離間して外側シール部材及び内側シール部材が配置されるものであって、前記可倒レバーは、前記外側シール部材と前記内側シール部材との間の位置に前記収容されることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、外側シール部材と内側シール部材との間に形成される防水性の高い空間に、その可倒レバーを収容することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用ドア装置において、前記チェック機構は、前記ドア開口部の開側端部に設けられた前記可倒レバーの支持部材に対する当接部を有するとともに、該当接部又は前記可倒レバーの支持部材の少なくとも一方に緩衝部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、チェック機構及び可倒レバーの支持部材が、そのドアの全開位置を超えて開動作方向に向かう第1のリンクアームの回動を規制するストッパ部として機能する。そして、これらのチェック機構及び可倒レバーの支持部材間に緩衝部材を介在させることで、両者の当接による振動や音の発生を抑制して、高い質感を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた搭載性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用ドア装置の斜視図。
図2】車両用ドア装置の斜視図。
図3】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図4】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図5】リンク機構を形成する第1及び第2のリンクアームの平面図。
図6】第1のリンクアームに連結された駆動アーム及びアクチュエータの側面図。
図7】第1のリンクアームに連結された駆動アーム及びアクチュエータの平面図。
図8】ドア開口部の開側端部に設けられた可倒レバーの平面図。
図9】可倒レバーの動作説明図。
図10】可倒レバーの動作説明図。
図11】チェック機構の断面図。
図12】可倒レバー及び可倒レバーに係合するチェック機構の平面図。
図13】可倒レバー及びチェック機構の別例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、車両用ドア装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面に設けられたドア開口部3を備えている。そして、そのドア開口部3には、このドア開口部3に車両1のドア5を支持する第1のリンクアーム11及び第2のリンクアーム12が設けられている。
【0016】
詳述すると、本実施形態の車両1において、これら第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、車体2に対する第1の回動連結点X1と、ドア5に対する第2の回動連結点X2と、を有している。具体的には、第1のリンクアーム11は、上下方向(各図中、上下方向)に延びる支軸N1aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N1bに軸支された状態でドア5に連結されている。そして、第2のリンクアーム12もまた、上下方向に延びる支軸N2aに軸支された状態で車体2に連結されるとともに、上下方向に延びる支軸N2bに軸支された状態でドア5に連結されている。
【0017】
即ち、図3図5に示すように、本実施形態の車両1においては、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が四節リンクとしての構成を有するリンク機構15を形成する。そして、本実施形態の車両1は、このリンク機構15の動作に基づいて、そのドア開口部3に支持されたドア5が開閉動作する構成になっている。
【0018】
さらに詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12を用いて、そのドア5を車両後方側(図1中、左側、図2中、右側)のドア開口部3に支持する。本実施形態の車両1において、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12は、それぞれ、ドア開口部3の後縁部3rにおいて、その車体2に対して回動可能に連結された第1の回動連結点X1を有している。また、本実施形態の車両1において、第1のリンクアーム11は、第2のリンクアーム12よりも上方に設けられている。更に、第1のリンクアーム11は、ドア5の前後方向略中央位置において、このドア5に対して回動可能に連結された第2の回動連結点X2を有し、第2のリンクアーム12は、ドア5の前端部5f近傍において、このドア5に連結された第2の回動連結点X2を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、その第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5が開閉動作するような車両用ドア装置20が形成されている。
【0019】
具体的には、図3図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、その第1の回動連結点X1周りに第1及び第2のリンクアーム11,12が、各図中、反時計回り方向に回動することにより、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12に支持された車両1のドア5が車両後方側(各図中、左側)に開動作する。そして、その第1の回動連結点X1周りに第1及び第2のリンクアーム11,12が、各図中、時計回り方向に回動することで、これら第1及び第2のリンクアーム11,12に支持されたドア5が車両前方側(各図中、右側)に閉動作する構成になっている。
【0020】
また、本実施形態の車両用ドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5の開閉動作軌跡が規定される。即ち、図4に示すように、第1及び第2のリンクアーム11,12が車幅方向(図3図5中、上下方向)に延在する状態となる中間位置においては、車両前後方向への移動成分が大きくなる。そして、図3に示すように、ドア5の開閉動作位置が全閉位置P0に近いほど、第1及び第2のリンクアーム11,12が車両前後方向(図3図5中、左右方向)に延在する状態となることで、その車幅方向への移動成分が大きくなる。
【0021】
更に、図1図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20においては、第2のリンクアーム12よりも第1のリンクアーム11の方が、より重心Gに近い位置においてドア5に連結された第2の回動連結点X2を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、ドア5の荷重を支える支持機能について、その第1のリンクアーム11が、より大きなドア荷重を支えるメインリンク21となり、第2のリンクアーム12は、その作用するドア荷重が比較的小さいサブリンク22となるように構成されている。
【0022】
尚、本実施形態の車両用ドア装置20においては、第1のリンクアーム11の方が、第2のリンクアーム12よりも大きな径を有している。そして、車両用ドア装置20は、これにより、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11に高い支持剛性を付与する構成となっている。
【0023】
また、図6及び図7に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、第1の回動連結点X1と第2の回動連結点X2との間の位置において、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11に対して回動可能に連結された駆動アーム23を備えている。更に、車両用ドア装置20は、この駆動アーム23に駆動力を付与して回動させることにより、そのリンク機構15を駆動するアクチュエータ25を備えている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、このアクチュエータ25の駆動力に基づいて、そのドア5を開閉動作させることができるパワードア装置30としての構成を有している。
【0024】
具体的には、本実施形態の車両用ドア装置20において、その第1のリンクアーム11に対する駆動アーム23の連結位置、つまり第1のリンクアーム11における第3の回動連結点X3は、その第2の回動連結点X2よりも第1の回動連結点X1に近い位置に設定されている(図3図5参照)。また、本実施形態のアクチュエータ25は、第1のリンクアーム11の下方となる位置において、その車体2に固定されている。更に、本実施形態の車両1において、このアクチュエータ25は、その出力軸25xが第1の回動連結点X1と略同軸となる位置に配置されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、このアクチュエータ25の出力軸25xに対して、その第1のリンクアーム11に並行して配置された駆動アーム23の一端側を連結する構成となっている。
【0025】
即ち、本実施形態の車両用ドア装置20においては、アクチュエータ25の駆動力に基づいて、その駆動アーム23の回動に連動して第1のリンクアーム11及び第2のリンクアーム12が回動する。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、これらの第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5が開閉動作する構成になっている。
【0026】
さらに詳述すると、本実施形態の駆動アーム23は、アクチュエータ25の出力軸25xに対し、その第1端部23aが相対回転不能に連結されている。また、駆動アーム23は、その第2端部23bに設けられた上方に向かって突出する係合突部33を備えている。更に、第1のリンクアーム11は、その下面11bに設けられた係合凹部34を備えている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、この第1のリンクアーム11に設けられた係合凹部34に対して、駆動アーム23の係合突部33が係合することにより、その第3の回動連結点X3が形成されている。
【0027】
具体的には、本実施形態の車両用ドア装置20において、駆動アーム23側の係合突部33は軸形状、詳しくは、駆動アーム23の第2端部23bを貫通するピン形状をなしている。また、第1のリンクアーム11側の係合凹部34は、第1のリンクアーム11の下面11bに設けられた取り付け凹部36に対して、長孔37xを有したブッシュ37を取着することにより形成されている。更に、このブッシュ37は、例えば、樹脂やゴム、或いはエラストマ等の軟質素材を用いて形成される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その第1のリンクアーム11と駆動アーム23との接触により生ずる打音を抑制して高い静粛性を確保する構成になっている。
【0028】
(全開位置におけるドアの保持構造)
次に、本実施形態の車両用ドア装置20に実装された全開位置P1におけるドア5の保持構造について説明する。
【0029】
図5及び図8に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア開口部3の後縁部3rに設けられた可倒レバー40を備えている。具体的には、本実施形態の車両1において、ドア開口部3の後縁部3rには、上下方向(図8中、紙面に直交する方向)に伸びる支軸41を有した支持部材42が固定されている。そして、本実施形態の可倒レバー40は、その支軸41周りに回動することのできる状態で、この支持部材42に軸支されている。
【0030】
具体的には、本実施形態の可倒レバー40は、図8中、反時計周り方向に回動することにより、その先端40aが車幅方向外側(図8中、上側)に向かって移動する。更に、この可倒レバー40は、支持部材42に設けられたストッパ部43に当接することで、その先端40aが車幅方向外側に向かう方向の回動が規制される。尚、本実施形態の可倒レバー40は、その支軸41により軸支された基端側に、支持部材42側のストッパ部43に係合する係合突部44を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、このように、その可倒レバー40がドア開口部3の後縁部3rから車両前方側(図8中、右側)に向かって突出した状態が、この可倒レバー40の起立状態となっている。
【0031】
更に、本実施形態の車両用ドア装置20は、この可倒レバー40を起立方向に付勢、つまりは、図8中、反時計周り方向に回動付勢する付勢部材45を備えている。具体的には、本実施形態の支持部材42は、その支軸41に嵌挿された捩りコイルバネ46を備えている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、この捩りコイルバネ46を付勢部材45に用いることにより、その弾性力に基づいて、可倒レバー40の係合突部44が支持部材42側のストッパ部43に当接した状態、つまりは起立状態に保持する構成となっている。
【0032】
また、図3図5図9及び図10に示すように、本実施形態の車両1において、可倒レバー40が設けられたドア開口部3の後縁部3rは、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づいて、そのドア5が開動作する方向に位置する。そして、本実施形態の可倒レバー40は、このドア開口部3の開側端部47となる後縁部3rにおいて、その全閉位置P0に向かって移動するドア5に対して当接する位置に配置されている。
【0033】
更に、図9及び図10に示すように、本実施形態の可倒レバー40は、全閉位置P0に向かって移動するドア5に押圧されることにより、各図中、時計周り方向に回動して、その先端40aが車幅方向内側(各図中、下側)に向かって移動する。そして、車両用ドア装置20は、これにより、その可倒レバー40が車両前方側(図各中、右側)に臨むドア開口部3の後縁部3rに沿うように配置された傾倒状態となるように構成されている。
【0034】
尚、本実施形態の車両用ドア装置20は、その可倒レバー40に当接するドア5の後端部5rに設けられたカバー部材48を備えている。本実施形態の車両用ドア装置20において、このカバー部材48は、例えば、樹脂等の比較的軟質な素材を用いて構成されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、そのドア5及び可倒レバー40を保護する構成となっている。
【0035】
また、本実施形態の車両1において、ドア5の後端部5rには、このドア5が全閉位置P0に移動することにより、そのドア5の後端部5rとドア開口部3の開側端部47との間の隙間50に配置される外側シール部材51が設けられている。更に、その開側端部47となるドア開口部3の後縁部3rには、同じくドア5が全閉位置P0に移動することにより、外側シール部材51よりも車幅方向内側(図10中、下側)の位置において、そのドア5の後端部5rとドア開口部3の開側端部47との間の隙間50に配置される内側シール部材52が設けられている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20においては、これら外側シール部材51と内側シール部材52との間の位置に、その可倒レバー40が設けられている。
【0036】
具体的には、本実施形態の外側シール部材51及び内側シール部材52は、それぞれ、例えば、ゴムやエラストマ等、弾力性を有した軟質素材を用いて形成されている。また、これらの外側シール部材51及び内側シール部材52は、それぞれ、ドア5の後端部5r及びドア開口部3の開側端部47を縁取りするかたちで上下方向に延設されている。即ち、これらの外側シール部材51及び内側シール部材52は、ドア5が全閉位置P0に移動することにより、それぞれ、押し潰された状態で、そのドア5の後端部5rとドア開口部3の開側端部47とに挟み込まれる。尚、説明の便宜上、図10中、ドア開口部3の開側端部47との間に内側シール部材52を挟み込むドア5側の当接部については、その記載を省略する。そして、本実施形態の可倒レバー40は、これにより、その外側シール部材51と内側シール部材52との間に形成される防水性の高い空間の内側に収容される構成となっている。
【0037】
また、図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、ドア5が全開位置P1に移動することにより、上記のように起立状態に保持された可倒レバー40に係合するチェック機構60を備えている。
【0038】
詳述すると、図3図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20において、このチェック機構60は、そのメインリンク21に位置付けられた第1のリンクアーム11と一体に設けられている。また、本実施形態の車両1において、この第1のリンクアーム11は、上記のように、ドア5が開動作することにより、その開側端部47となるドア開口部3の後縁部3rに近接する位置に設けられている。更に、チェック機構60は、そのドア5を開動作させる方向の回動により、ドア開口部3の開側端部47に設けられた可倒レバー40に臨む位置において、その第1のリンクアーム11に固定されている。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、このチェック機構60と可倒レバー40との係合力に基づいて、そのドア5を全開位置P1に保持する構成となっている。
【0039】
具体的には、図11及び図12に示すように、本実施形態のチェック機構60は、その可倒レバー40の先端40aが挿入される挿入孔61を有した略四角箱状のケース62を備えている。また、このチェック機構60は、互いに対向する位置において、そのケース62内に配置された一対の係合部材63,63を備えている。更に、チェック機構60は、これら一対の係合部材63,63を互いが近接する方向に付勢する付勢部材64,64を備えている。尚、本実施形態のチェック機構60において、これらの付勢部材64,64には、例えば、圧縮コイルバネ等が用いられる。そして、本実施形態のチェック機構60は、これら一対の係合部材63,63の間に可倒レバー40が先端40a側から挿入された状態で、この可倒レバー40に係合する構成となっている。
【0040】
即ち、本実施形態のチェック機構60は、ドア5が全開位置P1に移動することにより、第1のリンクアーム11の回動に基づいて、そのドア開口部3の開側端部47側に臨む挿入孔61を介してケース62内に可倒レバー40が挿入される。また、各係合部材63,63は、ケース62内において、それぞれ、その可倒レバー40の挿入方向(図11中、上側から下側に向かう方向)に対して、略直交する方向(同図中、左右方向)に付勢されている。更に、このチェック機構60は、ケース62内に挿入された可倒レバー40を、その付勢部材64,64に付勢された一対の係合部材63,63が、その可倒レバー40の幅方向両側から挟み込む。換言すると、本実施形態の車両用ドア装置20においては、ケース62内に挿入された可倒レバー40が、その付勢部材64,64の付勢力に抗して各係合部材63,63を押し込む態様で、これら一対の係合部材63,63の間に配置される。そして、本実施形態のチェック機構60は、これにより、その一対の係合部材63,63間に挟み込まれた可倒レバー40との係合力に基づいて、第1のリンクアーム11の回動を規制することのできる構成になっている。
【0041】
尚、本実施形態のチェック機構60は、その挿入孔61を囲む態様でケース62の意匠面62sに固着された環状の緩衝部材65を有している。本実施形態のチェック機構60において、この緩衝部材65は、例えば、ゴムやエラストマ等、弾力性を有した軟質素材を用いて形成されている。また、本実施形態のチェック機構60は、挿入孔61と反対側の位置(図11中、下側の位置)において、そのケース62に設けられた挿通孔66を有している。更に、第1のリンクアーム11は、そのチェック機構60が固定される位置に図示しない中空部を有している。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、その挿通孔66に挿通される状態でチェック機構60のケース62を貫通した可倒レバー40の先端40aが、第1のリンクアーム11内に配置される構成になっている。
【0042】
また、図3図5に示すように、本実施形態の車両用ドア装置20は、アクチュエータ25の駆動力又は利用者の操作力により、そのドア5が開動作する方向の力が付与されることで、第1のリンクアーム11がドア開口部3の開側端部47から離間する方向に回動する。更に、これにより、見かけ上、その挿入孔61を介してケース62内に挿入された可倒レバー40が、この可倒レバー40を一対の係合部材63,63間に挟み込む付勢部材64,64の付勢力に抗して抜脱される。そして、本実施形態の車両用ドア装置20は、これにより、そのチェック機構60と可倒レバー40との係合が解除される構成となっている。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、ドア開口部3の開側端部47に設けられた可倒レバー40と第1のリンクアーム11に設けられたチェック機構60とが係合することにより、その第1のリンクアーム11に支持されたドア5が全閉位置P0に保持される。更に、可倒レバー40は、全閉位置P0に向かって移動するドア5に当接して押圧されることにより傾倒する。そして、可倒レバー40は、このように傾倒した状態で、その全閉位置P0に移動したドア5とドア開口部3の開側端部47との間の隙間50に収容される。
【0044】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両用ドア装置20は、車体2に対する第1の回動連結点X1と車両1のドア5に対する第2の回動連結点X2とを有する第1及び第2のリンクアーム11,12を備える。また、車両用ドア装置20は、第1及び第2のリンクアーム11,12が形成するリンク機構15の動作に基づきドア5に開閉されるドア開口部3の開側端部47に設けられた可倒レバー40と、この可倒レバー40を付勢して起立状態に保持する付勢部材45と、を備える。更に、車両用ドア装置20は、ドア5が全開位置P1に移動することにより起立状態の可倒レバー40に係合して、そのドア5を全開位置P1に保持するチェック機構60を備える。第1のリンクアーム11は、ドア5が開動作することによりドア開口部3の開側端部47に近接する位置に設けられ、チェック機構60は、第1のリンクアーム11と一体に設けられる。そして、可倒レバー40は、全閉位置P0に移動するドア5に押圧されて傾倒することにより、そのドア5とドア開口部3の開側端部47との間の隙間50に収容される。
【0045】
上記構成によれば、可倒レバー40とチェック機構60との係合力に基づいて、安定的に、そのドア5を全開位置P1に保持することができる。更に、ドア5が全閉位置P0にある場合には、可倒レバー40が傾倒することで、そのドア5とドア開口部3の開側端部47との間に形成される隙間50が狭くとも、この隙間50内に可倒レバー40を収容することができる。そして、これにより、その優れた搭載性を確保することができる。
【0046】
例えば、車体2側の制約条件が少ない、広いドア開口部3の開口スペースを確保することができる等の利点がある。更に、その生産性とデザイン自由度とを両立させることができる。そして、チェック機構60を第1のリンクアーム11と一体化することにより、その軽量化と低コスト化を図ることができる。
【0047】
(2)チェック機構60は、互いに対向する位置に配置された一対の係合部材63,63と、これら一対の係合部材63,63を互いが近接する方向に付勢する付勢部材64,64と、を備える。そして、チェック機構60は、その一対の係合部材63,63の間に起立した状態の可倒レバー40が挿入された状態で、この可倒レバー40に係合する。
【0048】
上記構成によれば、ドア5を全開位置P1に移動させる第1のリンクアーム11の回動に基づいて、その可倒レバー40に係合するチェック機構60を形成することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、安定的に、そのドア5を全開位置P1に保持することができる。
【0049】
(3)全閉位置P0に移動したドア5とドア開口部3の開側端部47との間の隙間50には、車幅方向に離間して外側シール部材51及び内側シール部材52が配置される。そして、可倒レバー40は、これら外側シール部材51と内側シール部材52との間の位置において、その隙間50内に収容される。
【0050】
上記構成によれば、外側シール部材51と内側シール部材52との間に形成される防水性の高い空間に、その可倒レバー40を収容することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0051】
(4)車両用ドア装置20は、その第1の回動連結点X1と第2の回動連結点X2との間の位置に第3の回動連結点X3を有して、第1のリンクアーム11に連結された駆動アーム23を備える。そして、車両用ドア装置20は、この駆動アーム23に駆動力を付与して回動させることにより、そのリンク機構15を駆動するアクチュエータ25を備える。
【0052】
上記構成によれば、構成簡素、且つコンパクトに、そのアクチュエータ25の駆動力に基づいてドア5を開閉動作させるパワードア装置30を形成することができる。加えて、そのアクチュエータ25の配置自由度を確保することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記実施形態では、メインリンク21としての構成を有する第1のリンクアーム11を、サブリンク22としての構成を有した第2のリンクアーム12よりも上方に配置することとした。しかし、これに限らず、第1のリンクアーム11の上方に第2のリンクアーム12を設ける構成であってもよい。そして、ドア開口部3の開側端部47に近い位置に設けられた第1のリンクアーム11をサブリンク22とし、よりドア開口部3の開側端部47から遠い位置に設けられた第2のリンクアーム12をメインリンク21とする構成に適用してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、チェック機構60は、互いに対向する位置に配置された一対の係合部材63,63と、これら一対の係合部材63,63を互いが近接する方向に付勢する付勢部材64,64と、を備える。そして、これらの一対の係合部材63,63及び付勢部材64,64が可倒レバー40の挿入孔61を有した略四角箱状のケース62内に収容されることとした。
【0056】
しかし、これに限らず、起立状態の可倒レバー40に係合してドア5を全開位置P1に保持することが可能であれば、チェック機構60の構成は、任意に変更してもよい。例えば、ケース62の形状は、任意に変更してもよい。また、支軸周りに回転しつつ両者の間に可倒レバー40の挿入を許容する一対のローラーを係合部材に用いる等の構成としてもよい。そして、付勢部材64,64についてもまた、圧縮コイルバネに限らず、例えば、板バネ等、その他のバネ部材を用いてもよく、バネ以外の弾性部材を用いる構成であってもよい。
【0057】
・可倒レバー40についてもまた、例えば、先端40aに係合力が高まるような大径部を有する等、その形状は、任意に変更してもよい。更に、支持部材42の形状についてもまた、任意に変更してもよい。そして、可倒レバー40の付勢部材45についてもまた、捩りコイルバネ46に限らず、その他のバネ部材を用いてもよく、バネ以外の弾性部材を用いる構成であってもよい。
【0058】
図13に示すように、ドア5が全開位置P1に移動することにより、第1のリンクアーム11に設けられたチェック機構60Bが、そのドア開口部3の開側端部47に設けられた可倒レバー40の支持部材42Bに当接する構成としてもよい。具体的には、この図13に示す例においては、その可倒レバー40の挿入孔61が設けられたケース62Bの意匠面62sが、その可倒レバー40の支持部材42Bに対するチェック機構60B側の当接部71となっている。そして、可倒レバー40の支持部材42B側の当接部72には、例えば、ゴムやエラストマ等、弾力性を有した軟質素材を用いて形成された緩衝部材75が設けられている。
【0059】
上記のような構成を採用することで、チェック機構60B及び可倒レバー40の支持部材42Bが、そのドア5の全開位置P1を超えて開動作方向に向かう第1のリンクアーム11の回動を規制するストッパ部として機能する。そして、これらのチェック機構60B及び可倒レバー40の支持部材42B間に緩衝部材75を介在させることで、両者の当接による振動や音の発生を抑制して、高い質感を確保することができる。
【0060】
・また、ケース62の意匠面62sに固着された緩衝部材65(図11参照)が可倒レバー40の支持部材42Bに当接する構成としてもよい。更に、可倒レバー40の支持部材42B側及びチェック機構60B側の両方に緩衝部材を設ける構成としてもよい。即ち、チェック機構60B及び可倒レバー40の支持部材42Bの少なくとも何れか一方に緩衝部材が設けられているとよい。そして、チェック機構60B側の当接部71、及び可倒レバー40の支持部材42B側の当接部72についてもまた、その形状は、任意に変更してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、その駆動アーム23及びアクチュエータ25によって、メインリンク21としての構成を有する第1のリンクアーム11を駆動することとした。しかし、これに限らず、サブリンク22としての構成を有した第2のリンクアーム12を駆動してもよい。そして、第1及び第2のリンクアーム11,12の両方を駆動する構成としてもよい。
【0062】
即ち、駆動アーム23及びアクチュエータ25の数、並びに、これらの配置は、任意に変更してもよい。例えば、第1のリンクアーム11の上方、或いは第2のリンクアーム12の下方に、そのアクチュエータ25を配置してもよい。また、ドア5側にアクチュエータ25を配置してもよい。そして、車体2側及びドア5側の両方にアクチュエータ25を配置してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、車両1のドア5が車両後方側に開動作する構成に適用したが、ドア5が車両前方側に開動作する構成に適用してもよい。また、その第1及び第2のリンクアーム11,12の各支軸N1a,N1b及び各支軸N2a,N2bが傾いた構成に適用してもよい。そして、アクチュエータ25のような駆動源を有しない手動式のドア装置に適用してもよい。
【0064】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記第1及び第2のリンクアームの少なくとも何れかに対し、前記第1の回動連結点と前記第2の回動連結点との間の位置に第3の回動連結点を有して連結される駆動アームと、前記駆動アームに駆動力を付与して回動させることにより前記リンク機構を駆動するアクチュエータと、を備えること、を特徴とする車両用ドア装置。
【0065】
上記構成によれば、構成簡素、且つコンパクトに、そのアクチュエータの駆動力に基づいてドアを開閉動作させるパワードア装置を形成することができる。加えて、そのアクチュエータの配置自由度を確保することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…車両
2…車体
3…ドア開口部
5…ドア
11…第1のリンクアーム
12…第2のリンクアーム
15…リンク機構
20…車両用ドア装置
40…可倒レバー
45…付勢部材
47…開側端部
50…隙間
60…チェック機構
X1…第1の回動連結点
X2…第2の回動連結点
P0…全閉位置
P1…全開位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13