(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102172
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】カラーフィルタおよびその製造方法および表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220630BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216746
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福島 嵩也
【テーマコード(参考)】
2H148
2H291
【Fターム(参考)】
2H148BB01
2H148BD11
2H148BD14
2H148BG02
2H291FA02X
2H291LA21
(57)【要約】
【課題】液晶表示装置において斜め視認性を向上するためのカラーフィルタとその製造方法を簡便に提供することを目的とする。
【解決手段】透明基板の一方の面上に、ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスの開口部に形成され、少なくとも赤色画素、緑色画素、青色画素を構成に含む着色画素パターンと、オーバーコート層とが順に形成されたカラーフィルタにおいて、前記着色画素の画素境界は、前記ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスに隣接する前記着色画素が、前記ブラックマトリクスにオーバーラップすることで形成される重なり層と、前記青色画素材料からなる突起部が順に積層された遮光突起部を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の面上に、ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスの開口部に形成され、少なくとも赤色画素、緑色画素、青色画素を構成に含む着色画素パターンと、オーバーコート層とが順に形成されたカラーフィルタにおいて、
前記着色画素の画素境界は、前記ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスに隣接する前記着色画素が、前記ブラックマトリクスにオーバーラップすることで形成される重なり層と、前記青色画素材料からなる突起部が順に積層された遮光突起部を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記遮光突起部上に形成されるオーバーコート層の層厚が、前記ブラックマトリクスの開口部に形成される前記着色画素パターン上のオーバーコート層の層厚より薄いことを特徴とする、請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルタの製造方法であって、
ブラックマトリクス形成工程と、青色画素以外の着色画素を形成する工程と、
青色画素形成予定部と、各着色画素間に開口を有したフォトマスクを用いて、青色画素パターンと青色画素材料からなる突起部を一括で形成する工程と、
オーバーコート層の形成工程とを有し、
前記フォトマスクの青色画素形成予定部上の開口部には、ハーフトーン膜が形成されていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの表示装置用のカラーフィルタおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの調整、分光特性制御を目的としてカラーフィルタが用いられている。
【0003】
表示装置に用いられるカラーフィルタは、基本的に、表示部の着色画素と、非表示部のブラックマトリクス(BM)で構成される。液晶表示装置においては、前記構成に加えて、液晶の駆動方式(VA、TN、FFS、IPS)に応じてオーバーコート(OC)層、透明導電膜、配向突起、フォトスペーサ(PS)を適宜構成に追加する。
【0004】
表示装置に用いられるカラーフィルタの画素を形成する方法として、これまで実用化されてきたものは、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法などが挙げられるが、現在はフォトリソグラフィ法が主流である。
【0005】
フォトリソグラフィ法では、レジスト塗布、露光、現像の一連のプロセスを、カラーフィルタのパターンを構成する要素ごとに繰り返すことで、所望の構成のカラーフィルタを得る。
図4、5に、フォトリソグラフィ法によりブラックマトリクス、各着色画素、オーバーコート層が順に形成されるプロセスを模式的に示す。
【0006】
一般的なカラーフィルタの形成プロセスでは、カラーフィルタの着色画素4は、ブラックマトリクス5の形成後に形成されるが、この際、着色画素4とブラックマトリクス5の間に隙間が発生すると表示不良の原因となるため、ブラックマトリクス5と着色画素4の一部を意図的にオーバーラップさせて形成することが好ましいとされている。ここで、ブラックマトリクス5と着色画素4の重なり量が大きくなると、ブラックマトリクス5を介して互いに隣接する着色画素4同士が画素間のブラックマトリクス5上で重なり合い、総膜厚が局所的に高くなる部分7(以後、ツノ段差と呼ぶ)が発生する。このツノ段差が大きくなり、カラーフィルタの表面平坦性が悪化すると、液晶パネルを組立てた際に、液晶配向不良が発生する原因となる。ツノ段差による表面平坦性の悪化を防ぐ為、着色画素上に形成するオーバーコート層を、ツノ段差が十分に被覆できるように設計することが一般的であるが、オーバーコート層を厚くすると、液晶層―ブラックマトリクス間の距離が増加する。液晶層―ブラックマトリクス間の距離が大きくなると、迷光による意図しない画素への光漏れが発生し、表示が混色したように視認される恐れがある。
【0007】
観察者が透明基板6側の斜め方向から表示物を視認する模式的様子を
図6に示した。ここでは、液晶駆動素子(図示せず)によって、緑色画素4G上の液晶のみ駆動(ON)されているので、本来緑色のみ視認されなければならないが、実線で示す斜め方向の光(漏れ光M)が赤色画素を通過してしまい、緑色に赤色が混ざる様子を模式的に示している。
【0008】
このように、ブラックマトリクス5の端部にツノ段差7が形成されたカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、隣接する画素からの光漏れによる斜め視認性の悪化や混色によるコントラストの低下などが起こり、表示品質に悪影響を及ぼすことがあった。
【0009】
上記の問題を解決するために、特許文献1では、オーバーコート層を形成する前に、カラーフィルタの表面を研磨して、ツノ段差の高さを低くする方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献2では、ブラックマトリクスの開口部のガラス基板上に透明樹脂パターンを積層し、その上に着色画素を形成する方法が記載されている。
【0011】
また、特許文献3では、オーバーコート層形成後、ブラックマトリクス上に、さらに遮光壁を形成する方法が記載されている。
【0012】
特許文献1~3の方法では、いずれも構造物を形成または除去するための工程が必要となり、手間やコストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008-281678号公報
【特許文献2】特開2018-40879号公報
【特許文献3】特許第6447655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の問題を改善するにあたり、発明者は一般的なカラーフィルタの色構成のうち、青色は視感度が低く、黒色に次いで透過率が低いことから、疑似的な遮光性を有することに着目した。
【0015】
本発明は上記性質を利用したものであり、液晶表示装置において斜め視認性を向上するためのカラーフィルタとその製造方法を、工程を追加することなく簡便に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本発明の請求項1に係る発明は、透明基板の一方の面上に、ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスの開口部に形成され、少なくとも赤色画素、緑色画素、青色画素を構成に含む着色画素パターンと、オーバーコート層とが順に形成されたカラーフィルタにおいて、前記着色画素の画素境界は、前記ブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスに隣接する前記着色画素が、前記ブラックマトリクスにオーバーラップすることで形成される重なり層と、前記青色画素材料からなる突起部が順に積層された遮光突起部を有することを特徴とするカラーフィルタである。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明は、前記遮光突起部上に形成されるオーバーコート層の層厚が、前記ブラックマトリクスの開口部に形成される前記着色画素パターン上のオーバーコート層の層厚より薄いことを特徴とする、請求項1に記載のカラーフィルタである。
【0018】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のカラーフィルタの製造方法であって、ブラックマトリクス形成工程と、青色画素以外の着色画素を形成する工程と、青色画素形成予定部と、各着色画素間に開口を有したフォトマスクを用いて、青色画素パターンと青色画素材料からなる突起部を一括で形成する工程と、オーバーコート層の形成工程とを有し、前記フォトマスクの青色画素形成予定部上の開口部には、ハーフトーン膜が形成されていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、漏れ光を防止する遮光壁を既存のカラーフィルタを構成する材料で代替し、一括で形成することで、追加の工程、材料を追加することなく得られるようになる。よって、液晶表示装置の斜め視認性を向上するためのカラーフィルタを、簡便に生産することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一部の画素を拡大して示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るカラーフィルタの製造工程の例を順に示す模式的断面である(その1)。
【
図3】本発明の実施形態に係るカラーフィルタの製造工程の例を順に示す模式的断面である(その2)。
【
図4】液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの従来の形成方法を示す模式的断面図である。
【
図5】
図4に続く液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの従来の形成方法を示す模式的断面図である。
【
図6】従来の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一部の画素を拡大して示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一部の画素を拡大して示す模式的断面図である。
【0024】
本発明のカラーフィルタ50は、透明基板6と、透明基板6の一方の面上に形成されたブラックマトリクス5と、ブラックマトリクス5の開口部に形成され、青色画素4B層が含まれる複数の着色画素4(ここでは赤色画素4Rと緑色画素4G)と、オーバーコート層3を構成に含む。各着色画素の画素間は、ブラックマトリクス5と、隣接する着色画素4と、青色画素と同じ材料からなる遮光突起部8、8Gが形成されている。
【0025】
本カラーフィルタの構成に用いられる透明基板、ブラックマトリクスを形成する黒色レジスト、着色画素を形成する着色レジスト、オーバーコート層を形成するオーバーコート材は、公知のカラーフィルタに用いられる材料と同様のものを用いることができる。
【0026】
透明基板は、ガラス基板や、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などのプラスチック基材等が用いられる。
【0027】
黒色レジストは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタン系黒色顔料などと、感光性樹脂と、を混練し、均一に分散させることによって作製した材料等が用いられる。
【0028】
着色レジストは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、溶剤とを含有する組成物中に、染料および顔料を分散させたもの等が用いられる。
【0029】
オーバーコート材は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂など熱硬化性や光硬化性の樹脂組成物を用いて形成されたもの等が用いられる。
【0030】
上記画素間の遮光突起部の構造は、赤色画素―緑色画素間と赤色画素―青色画素間で異なる。赤色画素―緑色画素間では、赤色画素4R層の周辺で隣接する緑色画素4Gが周辺のブラックマトリクス5上で赤色画素4R層に乗り上げ重なり部を形成し、その重なり部の上に青色画素4B層からなる遮光突起部8Gが形成される。
【0031】
一方、赤色画素―青色画素間では、赤色画素4R層の周辺のブラックマトリクス5上で隣接する青色画素4Bが赤色画素4R層に乗り上げ重なり部を形成し、その重なり部に連なって遮光突起部8が形成される。
【0032】
本実施形態におけるカラーフィルタを用いた液晶表示装置の画素表示を観察者が視認する模式的様子を
図1に示した。観察者が斜め方向から表示装置を視認した際、実線で示した漏れ光Mは、ブラックマトリクス5上の遮光突起部8Gによって遮光され、これにより混色が抑制される。
【0033】
このように、本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、隣接する画素からの光漏れが軽減され、斜め視認性が向上する。また混色によるコントラストの低下なども軽減され、表示品質を良好にする。
【0034】
本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を
図2、
図3を用いて説明する。
【0035】
本発明のカラーフィルタの製造工程は、通常のカラーフィルタ製作方法と同様にフォトリソグラフィ法を用いる。
【0036】
(ブラックマトリクスと青色画素以外の着色画素形成工程)
ブラックマトリクス5と青色画素以外の少なくとも1つの着色画素4とを形成する。
【0037】
透明基板6の上に、感光性の黒色レジストを塗布し、フォトマスクを介して露光してレジストを硬化させた後、不要部分を現像にて除去することで、開口部を有するブラックマトリクス5を形成する。その後、ブラックマトリクス5の開口部に、同様のプロセスを通じて、赤色画素4Rと緑色画素4Gを順に形成する。本工程の例示では、青色画素の以外の着色画素の構成は赤色、緑色のみとしているが、実際のカラーフィルタはこの構成に限るものではなく、必要であれば白色画素、黄色画素を始めとする他色画素を適宜追加してもよい。
【0038】
図2(a)に示したように、ブラックマトリクス5上に赤色画素4Rと緑色画素4Gの一部が乗り上げ、お互いに重なった部分でツノ段差7Gが形成される。
【0039】
(青色画素、遮光突起部形成工程)
図2(a)で示した青色画素以外が形成された基板上に、通常のフォトリソグラフィプロセスに従い、感光性の青色レジスト4BZを塗布し(
図2(b))、露光(
図2(c))、現像を経てパターン(
図3(a))を形成する。
図2(c)で示されるように、本工程の露光時に用いるフォトマスクは、青色画素形成予定部と、各着色画素間に対応する位置に開口部を設けており、開口部のうち、青色画素形成予定画素に対応する開口部には、照射光Uの透過率を調整するためのハーフトーン膜12が形成されている。ここで、ハーフトーン膜12の透過率は波長365nmの照射光Uを10%以上透過させるものが好ましい。透過率が10%未満である場合は、樹脂へ照射される光量の不足により十分に硬化せず、解像しない恐れがある。上記工程により、
図3(a)で示されるように、透明基板6の一方の面上に、ブラックマトリクス5と着色画素4、遮光突起部8、8Gが形成される。
【0040】
(オーバーコート層形成工程)
図3(b)で示されるように、
図3(a)の工程で形成した着色画素上にオーバーコート層3を形成する。オーバーコート層3の形成に用いるレジストは、熱硬化型、光硬化型のいずれでも問題ないが、光硬化型レジストが好ましい。光硬化型レジストであれば、フォトマスク側のハーフトーン加工、グレートーン加工により、オーバーコート層の形成膜厚を局所的に調整することが可能であり、遮光突起部上と画素上の膜厚を制御することにより、熱硬化性レジストと比較して薄膜で平坦な表面を得ることが可能となる。
【0041】
このようにして形成されたカラーフィルタ50を
図1で示される液晶表示装置に組み込むと、バックライト1の光による液晶駆動素子のONになったところの光が漏れ光Mとなっても、遮光突起部8、8Gによって、漏れ光Mが遮光され、斜め視認性の悪化や混色によるコントラストの低下などを起こすことが低減される。更に、遮光突起部8、8Gの形成は青色画素の形成と同時であるため、既存プロセスから生産性を落とすことなく遮光壁を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・バックライト
2・・・液晶層
3・・・オーバーコート層
4・・・着色画素
4R・・・赤色画素
4G・・・緑色画素
4B・・・青色画素
4BZ・・・感光性の青色レジスト
5・・・ブラックマトリクス
6・・・透明基板
7・・・ツノ段差
7G・・・ツノ段差
8・・・遮光突起部(漏れ光障壁)
8G・・・遮光突起部(漏れ光障壁)
10・・・フォトマスク
11・・・フォトマスク開口部
12・・・ハーフトーン膜(フォトマスク開口部)
13・・・遮光部
19・・・透明基板
50・・・カラーフィルタ
100・・・液晶表示装置
M・・・漏れ光
U、U´・・・照射光