(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102191
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/04 20060101AFI20220630BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20220630BHJP
F28F 13/08 20060101ALI20220630BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F28F3/04 A
F28D9/00
F28F13/08
F25B39/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216781
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐川 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 駿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩介
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103CC02
3L103CC18
3L103DD15
3L103DD19
3L103DD57
(57)【要約】
【課題】流体を熱交換流路部に適切に分配させ、熱交換効率を向上させる。
【解決手段】本発明の一形態に係る熱交換器は、流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含む。前記複数の金属板は、互いに拡散接合によって積層される。前記複数の金属板の少なくとも1つは、前記流入口と前記熱交換流路部との間において、前記流入口から前記流出口に流れる前記流体を前記熱交換流路部の手前で衝突させるガイド壁を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含み、
前記複数の金属板は、互いに拡散接合によって積層され、
前記複数の金属板の少なくとも1つは、前記流入口と前記熱交換流路部との間において、前記流入口から前記流出口に流れる前記流体を前記熱交換流路部の手前で衝突させるガイド壁を有している
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載された熱交換器であって、
前記ガイド壁は、前記流入口から前記流出口に向かう方向に対して交差する
熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載された熱交換器であって、
前記ガイド壁の両端間に前記流体を通過させる溝が設けられている
熱交換器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された熱交換器であって、
前記ガイド壁のほかに、前記熱交換流路部と前記流入口との間に前記流体を分配する分流域が設けられている
熱交換器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載された熱交換器であって、
前記流入口の中心と前記流出口の中心とを結ぶ線から前記ガイド壁の中心がずれている
熱交換器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載された熱交換器であって、
蒸発器として機能する
熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路が形成された金属板を積層した熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換部として機能させるための流路が形成された薄い金属板を複数積層した熱交換器(例えば、マイクロチャンネル熱交換器)では、冷媒の流入口から流入した流体が流路が形成された領域部(以下、熱交換流路部)に均等に流れるように、流入口と熱交換流路部との間に流体を熱交換流路部に分配する分流域を設ける場合がある。例えば、分流域として、流入口と熱交換流路部との間に複数のガイドを放射状に配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような熱交換器においては、一般的には熱交換器内の圧力損失を低減するため、流体が流れる流路の長さが短く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、流路の長さを短く設定してしまうと熱交換器における十分な伝熱面積を確保できなくなる。このため、該熱交換器においては流路の長さを短く設定する代わりに熱交換流路部を幅広く配置する必要性が生じる。
【0006】
しかし、流入口の幅に比べて熱交換流路部が広く形成されると、流体の流れ方向の慣性力によって、流体は熱交換流路部の中央付近に流入しやすく、熱交換流路部の両端部には流体が流れにくくなる現象が起き得る。例えば、流入口と熱交換流路部との間に分流域を設けたとしても、慣性力を備えた流体が、一旦、分流域に流入してしまうと、流体にとっては分流域のガイドの作用によって、分流域の中央付近に流体が多く流れ、分流域の端部付近には流体が流れにくくなる現象が起きる。従って、単に流入口と熱交換流路部との間に分流域を設けただけでは、流体を熱交換流路部に適切に分配できないという問題があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、流体を熱交換流路部に適切に分配させる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱交換器は、流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含む。前記複数の金属板は、互いに拡散接合によって積層される。前記複数の金属板の少なくとも1つは、前記流入口と前記熱交換流路部との間において、前記流入口から前記流出口に流れる前記流体を前記熱交換流路部の手前で衝突させるガイド壁を有している。
【0009】
このような熱交換器によれば、ガイド壁によって流体が熱交換流路部に適切に分配される。
【0010】
上記の熱交換器においては、前記ガイド壁は、前記流入口から前記流出口に向かう方向に対して交差する方向に延在してもよい。これにより、流体が熱交換流路部に、より適切に分配される。
【0011】
上記の熱交換器においては、前記ガイド壁の両端間に前記流体を通過させる溝が設けられてもよい。これにより、流体が熱交換流路部に、より適切に分配される。
【0012】
上記の熱交換器においては、前記ガイド壁のほかに、前記熱交換流路部と前記流入口との間に前記流体を分配する分流域が設けられてもよい。これにより、流体が熱交換流路部に、より適切に分配される。
【0013】
上記の熱交換器においては、前記流入口の中心と前記流出口の中心とを結ぶ線から前記ガイド壁の中心がずれてもよい。これにより、流体が熱交換流路部に、より適切に分配される。
【0014】
上記の熱交換器においては、蒸発器として機能させてもよい。蒸発器として機能させた場合、流入口から流入した流体が熱交換流路部に適切に分配される。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、流体が熱交換流路部に適切に分配される熱交換器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る熱交換器の概要を示す模式的斜視図である。
【
図2】図(a)は、
図1のA1―A1線に沿った模式的断面図である。図(b)は、
図1のA2-A2線に沿った模式的断面図である。
【
図3】流路が形成された金属板を示す模式的斜視図である。
【
図4】流路が形成された金属板を示す模式的斜視図である。
【
図5】積層ブロック体を製造する方法を示す模式的斜視図である。
【
図6】熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。
【
図7】図(a)は、参考例1に係る熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。図(b)は、参考例2に係る熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。
【
図8】本実施形態の変形例1に係る金属板の模式的平面図である。
【
図9】本実施形態の変形例2に係る金属板の模式的平面図である。
【
図10】本実施形態の変形例3に係る金属板の模式的平面図である。
【
図11】本実施形態の変形例4に係る金属板の模式的平面図である。
【
図12】本実施形態の変形例5に係る金属板の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0018】
(熱交換器の構造)
図1は、本実施形態に係る熱交換器の概要を示す模式的斜視図である。
【0019】
熱交換器10は、積層ブロック体1と、継手体51~54とを具備する。積層ブロック体1は、例えば、略直方体である。継手体51~54のそれぞれは、積層ブロック体1の側面1wに接続される。継手体51から継手体52に向かう方向と、継手体53から継手体54に向かう方向とは、例えば、交差する。
【0020】
熱交換器10は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。例えば、高温の流体(例えば、温水)が熱交換器10の継手体51から流入すると、この流体は、積層ブロック体1を経由し、継手体52から流出する。一方、低温の流体(冷媒)が継手体53から流入すると、この流体は、積層ブロック体1を経由し、継手体54から流出する。継手体51~54のそれぞれには、例えば、図示しない連結管等が接続される。
【0021】
積層ブロック体1は、主面1u(上面)と、主面1uとは反対側の主面1d(下面)と、主面1uと主面1dとに連設された側面1wとを有する。積層ブロック体1において、主面1u、1dに直交する方向をZ軸方向とする。側面1wには、継手体51~54のそれぞれが挿通される開口2hが設けられている。例えば、
図1の例では、4つの側面1wに、それぞれ1つの開口2hが設けられる。開口2hは、1つの側面1w当たりに1つとは限らず、複数設けることもできる。
【0022】
積層ブロック体1は、伝熱板である複数の金属板2Aと、伝熱板である複数の金属板2Bと、下側外殻板である複数の金属板3Aと、上側外殻板である複数の金属板3Bとを有する。主面1u側には複数の金属板3Aが、主面1d側には複数の金属板3Bが、それぞれZ方向に積層されている。複数の金属板3Aと複数の金属板3Bとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Aと、複数の金属板2Bとが交互に積層されている。金属板3A及び金属板3Bのそれぞれは、複数の金属板に限らず、1つの金属板でもよい。
【0023】
複数の金属板3A、2A、2B、3Bのそれぞれは、Z軸方向に積層された状態で拡散接合により接合される。拡散接合としては、固相接合、熱間圧接、冷間圧接等があげられる。なお、複数の金属板3Aと複数の金属板3Bとの間の複数の金属板2A、2Bをまとめて積層体2とする。なお、
図1では、Z方向に積層された複数の金属板のそれぞれの境界に実線が描かれているが、拡散接合後、実線は消滅することがある。
【0024】
複数の金属板2Aのそれぞれ及び複数の金属板2Bのそれぞれには、流路が形成されている(後述)。また、継手体51~54のそれぞれは、積層ブロック体1の側面1wに挿入されて、例えば、側面1wにロウ付けにより接合される。
【0025】
図2(a)は、
図1のA1―A1線に沿った模式的断面図である。
図2(b)は、
図1のA2-A2線に沿った模式的断面図である。
図2(a)、(b)の断面図は、他の継手体52、53、54付近の積層ブロック体1においても適用される。
【0026】
金属板2Aは、さらに継手体51~54の高さ位置よりも下側または上側に配置される金属板2Aaと、継手体51~54の高さ位置に配置される金属板2Abとに分けられる。金属板2Bは、継手体51~54の高さ位置よりも下側または上側に配置される金属板2Baと、継手体51~54の高さ位置に配置される金属板2Bbとに分けられる。
【0027】
例えば、積層ブロック体1は、複数の金属板2Aaと、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Baと、複数の金属板2Bbと、複数の金属板3Aと、複数の金属板3Bとを有する。継手体51~54の高さ位置よりも下側または上側においては、Z軸方向に、複数の金属板2Aaと、複数の金属板2Baとが交互に積層されている。継手体51~54の高さ位置においては、Z軸方向に、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Bbとが交互に積層されている。複数の金属板3A及び複数の金属板3Bのそれぞれは、1つの金属板でもよい。複数の金属板3A、2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、3Bのそれぞれは、このように積層された状態で拡散接合により接合される。
【0028】
積層ブロック体1の内部には、継手体51に連通する空間1sが形成され、継手体52に連通する空間1tが形成されている。空間1s、1tは、Z軸方向に延在する。また、図示はされていないが、積層ブロック体1の内部には、同様に継手体53、54のそれぞれに連通する空間が形成されている(後述する空間1u、1v(
図5))。これらの空間は、複数の金属板2Ab及び複数の金属板2Bbのそれぞれに形成された流路(後述)に連通する。
【0029】
また、積層ブロック体1の側面1wには、継手体51の一部が挿入される開口2hが設けられている。側面1wに向かって見た場合の開口2hの形状は、例えば、矩形状である。開口2hの形状は円形でもよい。
【0030】
金属板2Aa、2Ba、金属板3Aa、3Ba、2Ab、2Bb、3Ab、3Bbは、熱伝導率が高く、例えば、同じ種類の金属板である。これらの金属板は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼板、銅、アルミニウム合金、チタン、マグネシウム合金等の少なくともいずれか一つを含む。
【0031】
(金属板)
図3(a)~
図4(b)は、流路が形成された金属板を示す模式的斜視図である。
【0032】
例えば、流路が形成された金属板としては、
図3(a)に示す金属板2Abと、
図3(b)に示す金属板2Aaと、
図4(a)に示す金属板2Bbと、
図4(b)に示す金属板2Baとが使用される。
【0033】
図3(a)に示す金属板2Abは、継手体51~54の高さ位置に配置される金属板である。金属板2Abは、主面2uと、主面2uとは反対側の主面2dと、主面2uと主面2dとに連続する側面2wとを有する。
【0034】
金属板2Abには、その4辺のそれぞれ近傍に、Z軸方向に貫通する流入口211、213、及び、流出口212、214が設けられている。ここで、流入口211及び流出口212は、後述する金属板2Ba、2Bbにとっての流入口及び流出口であり、流入口213及び流出口214が金属板2Ab、または後述する金属板2Aaにとっての流入口及び流出口となる。
【0035】
流入口213は、側面2wにおいて、継手体53と接続されるため開放されている。同様に、流出口214は、側面2wにおいて、継手体54に接続されるため開放されている。流入口211、213及び流出口212、214は、エッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。また、該処理として、3Dプリンター等の積層造形技術も用いることができる。
【0036】
金属板2Abの主面2uには、例えば、平面形状が矩形状の凹部250が形成されている。また、凹部250には、低温流体の流路として機能する流路25aが設けられている。
【0037】
例えば、凹部250には、流路25aを形成するための凸部25tが複数設けられている。凸部25tは、凹部250の底面から上に突出した凸状体である。凸部25tは、例えば、X軸方向に延在し、中央部で屈曲している。凸部25tは、複数設けられ、例えば、X軸方向とY軸方向とに並設される。凸部25tの凹部250の底面からの高さは、凹部250の深さと同じである。この流路25a(凸部25t)が形成された領域を熱交換流路部25とする。熱交換流路部25は、X軸方向において、流入口213と流出口214との間に設けられる。
【0038】
ここで、流入口213から流出口214に向かう方向(X軸方向)に対して直交する方向(Y軸方向)では、流入口213及び流出口214の幅に比べて、凹部250の幅または熱交換流路部25の幅が広くなっている。
【0039】
凹部250及び凸部25tは、金属板2Abの主面2uに、例えば、ハーフエッチング技術、レーザ加工、切削加工、または3Dプリンター等の積層造形技術によって形成される。流路25a及び凹部250の深さはいずれの箇所で均一であってよい。また、凸部25tの数は、図示される数には限らない。また、凸部25tの形状は、図示される大きさ、形に限られず、流体の流路25aが形成されれば、適宜その形状を変更してもよい。
【0040】
流入口213及び流出口214は、X軸方向において凹部250に連通している。流入口211及び流出口212は、凹部250に連通していない。すなわち、金属板2Abにおいて、流体は、流入口213から流入し、熱交換流路部25を経て、流出口214から流出する。
【0041】
さらに、凹部250には、流入口213と熱交換流路部25との間において、ガイド壁26が設けられている。ガイド壁26は、流入口213から流出口214に流れる流体を熱交換流路部25の手前で衝突させる凸状体である。ガイド壁26は、流入口213から流出口214に向かう方向Fに対して交差する方向(例えば、60°≦θ≦120°)に延在する。ガイド壁26は、流入口213から流出口214に向かう方向Fに対して直交してもよい。なお、θが上記の範囲を超えると、流体のガイド壁26に対する衝突効果が失われるので好ましくない。ガイド壁26の高さは、例えば、凹部250の深さと同じでもよく、凹部250の深さより低くてもよい。Y軸方向において、ガイド壁26の長さは、熱交換流路部25よりも短く、流入口213の幅よりも長くてもよく、流入口213の幅と同じでもよく、流入口213の幅よりも短くてもよい。
【0042】
ガイド壁26は、凹部250及び凸部25tが形成されるのと同時に、例えば、ハーフエッチング技術、レーザ加工、切削加工、または3Dプリンター等の積層造形技術によって形成される。
【0043】
図3(b)に示す金属板2Aaは、継手体51~54の高さ位置の上側または下側に配置される金属板である。金属板2Aaにおいて、流入口213及び流出口214のそれぞれは、側面2wから開放されていない。これ以外の構造は、金属板2Abと同じである。
【0044】
図4(a)に示す金属板2Bbは、継手体51~54の高さ位置に配置される金属板である。金属板2Bbは、主面2uと、主面2uとは反対側の主面2dと、主面2uと主面2dとに連続する側面2wとを有する。
【0045】
金属板2Bbには、その4辺のそれぞれ近傍に、Z軸方向に貫通する流入口211、213、及び、流出口212、214が設けられている。流入口211は、側面2wにおいて、継手体51と接続されるため開放されている。同様に、流出口212は、側面2wにおいて、継手体52に接続されるため開放されている。流入口211、213及び流出口212、214は、エッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。また、該処理として、3Dプリンター等の積層造形技術も用いることができる。
【0046】
金属板2Bbの主面2uには、例えば、平面形状が矩形状の凹部270が形成されている。また、凹部270には、高温流体の流路として機能する流路27aが設けられている。
【0047】
例えば、凹部270には、流路27aを形成するための凸部27tが複数設けられている。凸部27tは、凹部270の底面から上に突出した凸状体である。凸部27tは、例えば、Y軸方向に延在し、中央部で屈曲している。凸部27tは、複数設けられ、例えば、X軸方向とY軸方向とに並設される。凸部27tの凹部270の底面からの高さは、凹部270の深さと同じである。この流路27a(凸部27t)が形成された領域を熱交換流路部27とする。熱交換流路部27は、Y軸方向において、流入口211と流出口212との間に設けられる。
【0048】
ここで、流入口211から流出口212に向かう方向(Y軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)では、流入口211及び流出口212の幅に比べて、凹部270の幅または熱交換流路部27の幅が広くなっている。
【0049】
凹部270及び凸部27tは、金属板2Bbの主面2uに、例えば、ハーフエッチング技術、レーザ加工、切削加工、または3Dプリンター等の積層造形技術によって形成される。流路27a及び凹部270の深さはいずれの箇所で均一であってよい。また、凸部27tの数は、図示される数には限らない。また、凸部27tの形状は、図示される大きさ、形に限られず、流体の流路27aが形成されれば、適宜その形状を変更してもよい。
【0050】
流入口211及び流出口212は、Y軸方向において凹部270に連通している。流入口213及び流出口214は、凹部270に連通していない。すなわち、金属板2Bbにおいて、流体は、流入口211から流入し、熱交換流路部27を経て、流出口212から流出する。
【0051】
さらに、凹部270には、流入口211と熱交換流路部27との間において、ガイド壁28が設けられている。ガイド壁28は、流入口211から流出口212に流れる流体を熱交換流路部27の手前で衝突させる凸状体である。ガイド壁28は、流入口211から流出口212に向かう方向Fに対して交差する方向(例えば、60°≦θ≦120°)に延在する。ガイド壁28は、流入口211から流出口212に向かう方向Fに対して直交してもよい。なお、θが上記の範囲を超えると、流体のガイド壁28に対する衝突効果が失われるので好ましくない。ガイド壁28の高さは、例えば、凹部270の深さと同じでもよく、凹部270の深さより低くてもよい。ガイド壁28の長さは、X軸方向において、熱交換流路部27よりも短く、流入口211の幅よりも長くてもよく、流入口211の幅と同じでもよく、流入口211の幅よりも短くてもよい。
【0052】
ガイド壁28は、凹部270及び凸部27tが形成されるのと同時に、例えば、ハーフエッチング技術、レーザ加工、切削加工、または3Dプリンター等の積層造形技術によって形成される。
【0053】
図4(b)に示す金属板2Baは、継手体51~54の高さ位置の上側または下側に配置される金属板である。金属板2Baにおいて、流入口211及び流出口212のそれぞれは、側面2wから開放されていない。これ以外の構造は、金属板2Bbと同じである。
【0054】
(積層ブロック体の製造方法)
図5は、積層ブロック体を製造する方法を示す模式的斜視図である。
【0055】
図5に示すように、複数の金属板3Aのそれぞれと複数の金属板3Bのそれぞれとが重ねられ、複数の金属板3Aと複数の金属板3Bとの間に、金属板2Aa、2Baが交互に配置される。ここで、継手体51~54の高さ位置では、金属板2Ab、2Bbが交互に配置される。
【0056】
これにより、各金属板の流入口211が積層方向(Z軸方向)に繋がって、空間1sが形成され、各金属板の流出口212が積層方向に繋がって、空間1tが形成され、各金属板の流入口213が積層方向に繋がって、空間1uが形成され、各金属板の流出口214が積層方向に繋がって、空間1vが形成される。
【0057】
この後、この積層方向に積層された複数の金属板のそれぞれが真空の状態で積層方向に加圧・加熱されることによって、それぞれの金属板が拡散接合により接合され、
図1に示す積層ブロック体1が形成される。
【0058】
次に、積層ブロック体1の側面1wから、継手体51が開口2hを通じて空間1sに接続され、継手体52が開口2hを通じて空間1tに接続され、継手体53が開口2hを通じて空間1uに接続され、継手体54が開口2hを通じて空間1vに接続される。これにより、熱交換器10が形成される(
図1)。
【0059】
(熱交換器の作用)
図6(a)、(b)は、熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。一例として、
図6(a)には金属板2Aaが示され、
図6(b)には金属板2Baが示されている。ここで、金属板2Baは、Z軸方向において金属板2Aaの上側または下側に積層されている。また、金属板2Aaは、Z軸方向において金属板2Baの上側または下側に積層されている。
【0060】
図6(a)に示す金属板2Aaにおいて、低温流体である冷媒が流入口213から流入すると、冷媒は、熱交換流路部25を経由して、流出口214から流出する。一方、
図6(b)に示す金属板2Baにおいては、高温流体が熱交換器10の流入口211から流入すると、高温流体は、熱交換流路部27を経由して、流出口212から流出する。
【0061】
ここで、熱交換流路部25においては、冷媒が複数の流路25aを流れるときに、凸部25tが中央部で屈曲していることから、流路25a内での冷媒の流れる速さが変化する。これにより、冷媒は、流路25aにおいて局所的に常時攪乱し、冷媒の伝熱性能を向上させることができる。
【0062】
一方、熱交換流路部27においては、高温流体が複数の流路27aを流れるときに、凸部27tが中央部で屈曲していることから、流路27a内での高温流体の流れる速さが変化する。これにより、高温流体は、流路27aにおいて局所的に常時攪乱し、高温流体の伝熱性能を向上することができる。
【0063】
これにより、熱交換流路部25を流れる冷媒と、その上下に配置された熱交換流路部27を流れる高温流体の伝熱性能が向上するる。この結果、熱交換流路部25を流れる冷媒は、熱交換流路部27を流れる高温流体から熱を奪い、熱交換流路部27を流れる高温流体は、熱交換流路部25を流れる冷媒によって熱を奪われる。換言すれば、熱交換流路部25、27によって冷媒-高温流体の熱交換が行われることから、熱交換流路部25、27は、熱交換器10の熱交換部として機能する。
【0064】
また、流入口213から流入する冷媒が液体または気液二相の状態のとき、冷媒は、熱交換流路部25を流れて熱交換流路部27を流れる高温流体から熱を奪い、流出口214において蒸気となることから、熱交換器10は、冷媒にとっての蒸発器として機能する。
【0065】
ここで、本実施形態の金属板2Aaにおいては、流入口213と熱交換流路部25との間に、冷媒の流れ方向に交差するガイド壁26が設けられている。ガイド壁26が設けられたことにより、流入口213から流入した冷媒は、熱交換流路部25に向かって直進せず、熱交換流路部25の手前でガイド壁26に衝突する。これにより、流入口213から流入した冷媒は、ガイド壁26を迂回して、熱交換流路部25の中央部と、熱交換流路部25の両端部に満遍なく流入する。この後、熱交換流路部25を流れ出た冷媒は、流出口214付近に集中し、流出口214から流出する。なお、矢印は、冷媒の平均的な流れを模式的に表している。
【0066】
一方、金属板2Baにおいても、流入口211と熱交換流路部27との間に、高温流体の流れ方向に交差するガイド壁28が設けられている。ガイド壁28が設けられたことにより、流入口211から流入した高温流体は、熱交換流路部27に向かって直進せず、熱交換流路部27の手前でガイド壁28に衝突する。これにより、流入口211から流入した高温流体は、ガイド壁28を迂回して、熱交換流路部27の中央部と、熱交換流路部27の両端部に満遍なく流入する。この後、熱交換流路部27を流れ出た高温流体は、流出口212付近に集中し、流出口212から流出する。なお、矢印は、高温流体の平均的な流れを模式的に表している。
【0067】
図7(a)は、参考例1に係る熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。
図7(b)は、参考例2に係る熱交換器における流体の流れを示す模式的平面図である。
図7(a)、(b)には、金属板2Aaからガイド壁26を取り除いた金属板2Acが示されている。
【0068】
図7(a)に示す金属板2Acにおいては、流入口213と熱交換流路部25との間にガイド壁26が設けられていない。従って、流入口213から流入した冷媒は、冷媒が持つ慣性力によって、熱交換流路部25に向かって直進する。この後、冷媒は、熱交換流路部25の中央部に流入し、熱交換流路部25を流れ出た冷媒が流出口214付近に集中して流出口214から流出する。
【0069】
従って、金属板2Acを用いた場合は、凹部250の両端部に冷媒が流れにくくなる死水域25d(冷媒が滞留する領域)が形成されやすい。この結果、金属板2Acを用いた場合は、死水域25dを除いた部分の熱交換流路部25で冷媒と高温流体との間の熱交換が行われることになり、熱交換能力が低下してしまう。
【0070】
特に、熱交換器10を冷媒にとっての蒸発器として動作させる場合は、流入口213から流入する冷媒が液冷媒または気液二相冷媒であり、流出口214から流出する冷媒が蒸気(ガス冷媒)となっているため、流入口213から流入する冷媒の密度は、ガス冷媒の密度に比べて大きくなっている。このため、流入口213から流入した密度の高い液冷媒または気液二相冷媒は慣性力の影響を受けやすく、流入口213から流出口214に向かって直進しやすい傾向にある。
【0071】
また、
図7(b)に示す金属板2Adにおいては、ガイド壁26を設けない代わりに、流入口213と熱交換流路部25と間に分流域29が設けられている。分流域29は、流入口213から熱交換流路部25に向けて放射状に延在する複数の凸部29tを有する。分流域29は、流入口213から流入した冷媒を熱交換流路部25に向けて均等に分配することを目的とする。
【0072】
しかし、流入口213と熱交換流路部25と間に分流域29のみを設けたとしても、流入口213から流入した冷媒、一旦、分流域29に流入してしまうと、冷媒にとっては凸部29tが障壁となって、結局、冷媒が持つ慣性力により熱交換流路部25の両端部にまで冷媒が行き渡らず、死水域25dが残存してしまう。また、流入口213と熱交換流路部25と間の狭い領域では、凸部29tの長さ、本数、及び角度について機械的な制約があり、流入口213から流入した冷媒を熱交換流路部25に向けて均等に分配されるような凸部29tを形成することが難しい。
【0073】
このように、熱交換器10を冷媒にとっての蒸発器として動作させる場合は、ガイド壁26の有無によって熱交換器の熱交換能力が大きく変化する。
【0074】
本実施形態では、
図6(a)に示すように、流入口213と熱交換流路部25との間にガイド壁26を設けている。このため、流入口213から流入した冷媒がガイド壁26に衝突して、熱交換流路部25に向かって直進しにくくなり、凹部250の両端部に行き渡るようになる。従って、金属板2Aaでは、凹部250の両端部に死水域25dが形成されにくくなり、冷媒が熱交換流路部25に適切に分配される。これにより、熱交換流路部25で冷媒と高温流体の伝熱性能が向上し、熱交換能力が大きく向上する。
【0075】
同様に、
図6(b)に示すように、流入口211と熱交換流路部27との間にガイド壁28を設けている。このため、流入口211から流入した冷媒がガイド壁28に衝突して、熱交換流路部27に向かって直進しにくくなり、凹部270の両端部に行き渡るようになる。従って、金属板2Baでは、凹部270の両端部に死水域(図示せず)が形成されにくくなり、冷媒が熱交換流路部27に適切に分配される。これにより、熱交換流路部27で冷媒と高温流体の伝熱性能が向上し、熱交換能力が大きく向上する。
【0076】
さらに、ガイド壁26を用いれば、熱交換流路部25の両端部に流体が行き渡り、熱交換流路部25を熱交換のために無駄なく利用することができるため、金属板2Aa、2Abにおける流体の進行方向の長さを短く設定することができる。同様に、ガイド壁28を用いれば、熱交換流路部27の両端部に流体が行き渡り、熱交換流路部27を熱交換のために無駄なく利用することができるため、金属板2Ba、2Bbにおける流体の進行方向の長さを短く設定することができる。これにより、熱交換器のコンパクト化が実現する。
【0077】
また、ガイド壁26を用いれば、その長手方向における長さを調整することで、熱交換流路部25の中央部及び熱交換流路部25の両端部に流入する冷媒の量を容易に調整することができる。同様に、ガイド壁28を用いれば、その長手方向における長さを調整することで、熱交換流路部27の中央部及び熱交換流路部27の両端部に流入する高温流体の量を容易に調整することができる。
【0078】
また、凸部25t、27tのほかにガイド壁26、28を設ければ、積層方向において熱交換器の機械的強度が増加し、凹部250、270が変形したり破損したりしにくくなる。
【0079】
また、熱交換器10の目標能力に応じて、ガイド壁26は、複数の金属板2Ab、2Abの少なくとも1つに配置されていればよく、ガイド壁28は、複数の金属板2Ba、2Bbの少なくとも1つに配置されていればよい。例えば、熱交換器の目標能力に応じて、ガイド壁26またはガイド壁28を積層方向に重なる金属板に対してN個おきに設けてもよい(N≧1)。
【0080】
また、高温流体として高温水蒸気等の気体を用いる場合は、流入口211における高温流体の慣性力が液体に比べて減少し、また、高温流体は液体に比べて熱交換流路部27の両端部に拡散しやすいことから、ガイド壁28は適宜取り除いてもよい。
【0081】
(変形例1)
図8は、本実施形態の変形例1に係る金属板の模式的平面図である。
【0082】
金属板2Aaにおいて、流入口213から流入する冷媒が液体または気液二相の状態のとき、熱交換流路部25を流れる冷媒は、熱交換流路部27を流れる高温流体から熱を奪い、流出口214において蒸気となる場合がある。
【0083】
このような場合、金属板2Aaの上面2uに対して垂直な方向から金属板2Aaをみたときの流出口214の断面積(開口面積)は、流入口213の断面積(開口面積)よりも大きくてもよい。これにより、液体または気液二相の状態よりも体積が増加した冷媒の蒸気が流出口214から効率よく排出される。
【0084】
(変形例2)
図9(a)、(b)は、本実施形態の変形例2に係る金属板の模式的平面図である。
【0085】
図9(a)に示す金属板2Aaにおいては、ガイド壁26の長手方向において、ガイド壁26の両端間に冷媒を通過させる溝260が設けられてもよい。溝260は、Z軸方向に延在し、ガイド壁26の厚み方向においてガイド壁26を貫通する。溝260は、1つに限らず、少なくとも1つガイド壁26に設けられ、溝260によって、ガイド壁26が複数に分割される。
【0086】
図9(b)に示す金属板2Baにおいては、ガイド壁28の長手方向において、ガイド壁28の両端間に冷媒を通過させる溝280が設けられてもよい。溝280は、Z軸方向に延在し、ガイド壁28の厚み方向においてガイド壁28を貫通する。溝280は、1つに限らず、少なくとも1つガイド壁28に設けられ、溝280によって、ガイド壁26が複数に分割される。
【0087】
このような溝260を設けることにより、熱交換流路部25の両端部のほか、熱交換流路部25の中央部にも冷媒を流入させることができ、熱交換流路部25の中央部及び両端部に流入する冷媒の量を容易に調整することができる。同様に、溝280を設けることにより、熱交換流路部27の両端部のほか、熱交換流路部27の中央部にも高温流体を流入させることができ、熱交換流路部27の中央部及び両端部に流入する高温流体の量を容易に調整することができる。
【0088】
(変形例3)
図10(a)、(b)は、本実施形態の変形例3に係る金属板の模式的平面図である。
【0089】
図10(a)に示す金属板2Aaにおいては、ガイド壁26のほかに、熱交換流路部25と流入口213との間に冷媒を分配する分流域30が設けられている。分流域30は、熱交換流路部25とガイド壁26との間に位置する。分流域30は、流入口213から熱交換流路部25に向けて放射状に延在する複数の凸部30tを有する。分流域30は、流入口213から流入した冷媒を熱交換流路部25に向けて均等に分配する。分流域30は、
図10(b)に示す金属板2Baに設けてもよい。
【0090】
このようなガイド壁26及び分流域30を設けることにより、冷媒を熱交換流路部25により均等に流入させることができ、高温流体を熱交換流路部27により均等に流入させることができる。
【0091】
(変形例4)
図11(a)、(b)は、本実施形態の変形例4に係る金属板の模式的平面図である。
【0092】
変形例4に係るガイド壁26には、さらに溝260を設けてもよく、ガイド壁28には、溝280を設けてもよい。このような溝260、280を設けることにより、冷媒をガイド壁26の両側からと、ガイド壁26の中央から熱交換流路部25により均等に流入させることができる。同様に、高温流体を熱交換流路部27により均等に流入させることができる。
【0093】
(変形例5)
図12は、本実施形態の変形例5に係る金属板の模式的平面図である。
【0094】
図12に示す金属板2Aaにおいては、流入口213の中心と流出口214の中心とを結ぶ線215から、ガイド壁26の中心261が線215と直交する方向にずれている。ガイド壁26の長手方向は、線215と交差(例えば、直交)する。例えば、ガイド壁26は、冷媒が進行する方向に対して凹部250の両端250wの一方側(例えば、左側)に寄せられている。
【0095】
例えば、Z軸方向において、金属板2Aaの上下には金属板2Baが配置されることから、高温流体は、方向2Ba
fに流れる。高温流体においては、金属板2Aaを流れる冷媒に熱を奪われるため、方向2Ba
fの上流ほど、温度が高くなっている。換言すれば、金属板2Aaにとっては、
図12の右側の領域ほど、熱負荷が高い状態にある。
【0096】
従って、
図12に示すように、ガイド壁26を左側に寄せ、凹部250の右側に冷媒をより多く流通させることにより、冷媒と高温流体との熱交換効率がより向上する。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…積層ブロック体
1s、1t、1u、1v…空間
1w…側面
1u、1d、2u、2d…主面
2…積層体
2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、3A、3B…金属板
2h…開口
2w…側面
10…熱交換器
25、27…熱交換流路部
25a、27a…流路
25t、27t、29t、30t…凸部
25d…死水域
26、28…ガイド壁
29、30…分流域
51、52、53、54…継手体
211、213、212、214…流出口
250、270…凹部
250w…両端
260、280…溝
261…中心