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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102195
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】計画立案装置および計画立案方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20220630BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216788
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】株式会社日立物流
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末光 一成
(72)【発明者】
【氏名】細田 順子
(72)【発明者】
【氏名】岸川 直子
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 慶人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストの低減化を図る。
【解決手段】計画立案装置は、複数の賃借可能な倉庫から対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を複数作成し、倉庫契約情報に基づいて第2倉庫を対象期間賃借する場合の賃借計画案を倉庫案ごとに作成し、需要情報および輸送能力情報に基づいて、対象期間において供給元から輸送して第1倉庫および第2倉庫に保管し第1倉庫から供給先に輸送する場合における第1倉庫および第2倉庫の対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を倉庫案ごとに作成し、第2倉庫についての対象期間を、在庫輸送計画案において第2倉庫の在庫容量が存在しない期間を除外した賃借期間に変更し、賃借期間における第2倉庫の賃借費用を算出し、総輸送費用と倉庫案に含まれるすべての第2倉庫について算出された賃借費用の総額との総和を、倉庫案ごとに算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する計画立案装置であって、
供給先への需要量と供給時期とを示す需要情報と、発地から着地への輸送時期、輸送量および輸送費用を示す輸送能力情報と、倉庫ごとに保管容積と単位賃借費用とを規定する倉庫契約情報と、にアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
対象期間で利用する第1倉庫を少なくとも含む倉庫集合に、複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を複数作成し、前記倉庫契約情報に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成する賃借計画案作成処理と、
前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫および前記第2倉庫に保管し前記第1倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫および前記第2倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を、前記倉庫案ごとに作成する在庫輸送計画案作成処理と、
前記第2倉庫についての前記対象期間を、前記在庫輸送計画案作成処理によって作成された在庫輸送計画案において前記第2倉庫の在庫容量が存在しない期間を除外した賃借期間に変更し、前記賃借期間における前記第2倉庫の賃借費用を算出する賃借費用算出処理と、
前記総輸送費用と、前記倉庫案に含まれるすべての前記第2倉庫について算出された賃借費用の総額と、の総和を、前記倉庫案ごとに算出する評価値算出処理と、
前記評価値算出処理による算出結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする計画立案装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計画立案装置であって、
前記プロセッサは、
前記賃借期間において前記倉庫案の総在庫容量が所定の上限以上の期間が存在し、かつ、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の他の第2倉庫が存在するか否かを、前記倉庫案ごとに判定する判定処理と、
いずれの倉庫案についても、前記判定処理によって前記所定の上限以上の期間が存在しない、または、前記他の第2倉庫が存在しないと判定された場合、前記総和に基づいて、当該倉庫案のうち特定の倉庫案に関する前記在庫輸送計画案および前記賃借期間が適用された賃借計画案を、出力対象の複合計画に決定する決定処理と、を実行し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記決定処理によって決定された複合計画を出力する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計画立案装置であって、
前記決定処理では、前記プロセッサは、前記総和が最小となる倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項4】
請求項2に記載の計画立案装置であって、
前記決定処理では、前記プロセッサは、前記総和がしきい値以下の倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項5】
請求項2に記載の計画立案装置であって、
前記決定処理では、前記プロセッサは、前記総和が最大ではない倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項6】
請求項2に記載の計画立案装置であって、
前記賃借計画案作成処理では、前記プロセッサは、前記判定処理によって前記所定の上限を超える期間が存在し、かつ、前記他の第2倉庫が存在すると判定された倉庫案の各々を前記倉庫集合とし、前記倉庫集合ごとに、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を作成し、前記倉庫契約情報に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項7】
請求項1に記載の計画立案装置であって、
前記賃借計画案作成処理では、前記プロセッサは、対象期間で利用する第1倉庫および前記供給先への輸送が可能な第3倉庫を少なくとも含む倉庫集合に、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を作成し、前記倉庫契約情報に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成し、
前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサは、前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫、前記第2倉庫および前記第3倉庫に保管し前記第1倉庫および前記第3倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫、前記第2倉庫および前記第3倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を、前記倉庫案ごとに作成する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項8】
請求項7に記載の計画立案装置であって、
前記倉庫契約情報は、前記倉庫ごとの位置情報を有し、
前記需要情報は、前記供給先ごとの位置情報を有し、
前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサは、前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記供給先への物品の保管先を、前記第1倉庫および前記第3倉庫のうち前記供給先に近い方の倉庫に決定し、前記決定した保管先の倉庫に前記供給先への物品の保管を保管して前記供給先に輸送する在庫輸送計画案を作成する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項9】
請求項7に記載の計画立案装置であって、
前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサは、前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記第1倉庫から前記供給先に輸送する場合の第1輸送費用と、前記第1倉庫から前記第3倉庫に保管し前記第3倉庫から前記供給先に輸送する場合の第2輸送費用と、を算出し、前記第1輸送費用と前記第2輸送費用とに基づいて、前記供給先への物品の保管先を、前記第1倉庫および前記第3倉庫のうちいずれかの倉庫に決定し、前記決定した保管先の倉庫に前記供給先への物品を保管して前記供給先に輸送する在庫輸送計画案を作成する、
ことを特徴とする計画立案装置。
【請求項10】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する計画立案装置が実行する計画立案方法であって、
前記計画立案装置は、供給先への需要量と供給時期とを示す需要情報と、発地から着地への輸送時期、輸送量および輸送費用を示す輸送能力情報と、倉庫ごとに保管容積と単位賃借費用とを規定する倉庫契約情報と、にアクセス可能であり、
前記計画立案方法は、
前記プロセッサが、
対象期間で利用する第1倉庫を少なくとも含む倉庫集合に、複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を作成し、前記倉庫契約情報に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成する賃借計画案作成処理と、
前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫および前記第2倉庫に保管し前記第1倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫および前記第2倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を、前記倉庫案ごとに作成する在庫輸送計画案作成処理と、
前記第2倉庫についての前記対象期間を、前記在庫輸送計画案作成処理によって作成された在庫輸送計画案において前記第2倉庫の在庫容量が存在しない期間を除外した賃借期間に変更し、前記賃借期間における前記第2倉庫の賃借費用を算出する賃借費用算出処理と、
前記総輸送費用と、前記倉庫案に含まれるすべての前記第2倉庫について算出された賃借費用の総額と、の総和を、前記倉庫案ごとに算出する評価値算出処理と、
前記評価値算出処理による算出結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする計画立案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計画を立案する計画立案装置および計画立案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流分野において、需要が多い繁忙期に、倉庫に保管すべき在庫数が常時使用している倉庫(メイン倉庫)の容量を超える場合がある。このような場合、数ヶ月だけ追加の倉庫を借り、一時的に保管容量を増やすという運用がある。この場合、複数の製品について、どの倉庫にいくつの在庫をいつからいつまで保管するかという在庫輸送計画を決める必要がある。
【0003】
特許文献1は、輸配送を計画する輸配送計画プログラムを開示する。この輸配送計画プログラムは、複数の末端倉庫と複数の末端倉庫に物品が配送される中間倉庫との間の輸配送計画を行うコンピュータに、複数の末端倉庫ごとの物品の予測出荷量、及び予測出荷量に対応した実績出荷量を取得し、取得した予測出荷量及び実績出荷量に基づき、予測対象期間に含まれる複数の予測時点それぞれについて、中間倉庫に在庫を保持した場合の中間倉庫における中間安全在庫量、及び複数の末端倉庫それぞれに在庫を保持した場合の複数の末端倉庫における末端安全在庫量を算出し、算出した複数の予測時点における中間安全在庫量及び末端安全在庫量に基づき、在庫の中間倉庫での保持から複数の末端倉庫での保持への切り替えと、複数の末端倉庫への平準化した輸配送への切り替えとを行う切替時点を出力する処理を行わせる。
【0004】
特許文献2は、コスト最小となる物流ネットワークが得られた後に、その物流ネットワークが現実的に実行可能な物流ネットワークであるか否かを確認することが可能な情報処理装置を開示する。この情報処理装置は、物流ネットワークにおいて、各物流拠点における物品の需要量や供給量と、物品の搬送等に要する費用を用いてコストが最小となる最適物流ネットワークを導出し、その最適物流ネットワークにおける前記物品の重要拠点における需要量、及び供給拠点における供給量の推移を時系列にシミュレーションを行い、その結果が制約条件を満たしているかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-020885号公報
【特許文献2】特開2012-014372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、各倉庫における最低契約期間、賃借開始日、出庫能力、取扱製品などの契約条件が考慮されていない。たとえば、倉庫の賃借契約には、数ヶ月単位というような最低賃借期間が存在する。このような賃借契約を考慮しない場合、追加で外部倉庫を賃借したが、契約期間が適正でない結果、外部倉庫に在庫が保管されない期間が発生し、余剰コストが発生する場合がある。したがって、輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストを低減化することができない。
【0007】
本発明は、輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストの低減化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の一側面となる計画立案装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する計画立案装置であって、供給先への需要量と供給時期とを示す需要情報と、発地から着地への輸送時期、輸送量および輸送費用を示す輸送能力情報と、倉庫ごとに保管容積と単位賃借費用とを規定する倉庫契約情報と、にアクセス可能であり、前記プロセッサは、対象期間で利用する第1倉庫を少なくとも含む倉庫集合に、複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を複数作成し、前記倉庫契約情報に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成する賃借計画案作成処理と、前記需要情報および前記輸送能力情報に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫および前記第2倉庫に保管し前記第1倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫および前記第2倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を、前記倉庫案ごとに作成する在庫輸送計画案作成処理と、前記第2倉庫についての前記対象期間を、前記在庫輸送計画案作成処理によって作成された在庫輸送計画案において前記第2倉庫の在庫容量が存在しない期間を除外した賃借期間に変更し、前記賃借期間における前記第2倉庫の賃借費用を算出する賃借費用算出処理と、前記総輸送費用と、前記倉庫案に含まれるすべての前記第2倉庫について算出された賃借費用の総額と、の総和を、前記倉庫案ごとに算出する評価値算出処理と、前記評価値算出処理による算出結果を出力する出力処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態によれば、輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストの低減化を図ることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1にかかる在庫輸送例を示す説明図である。
図2図2は、在庫輸送計画例を示すグラフである。
図3図3は、計画立案装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、商品情報の一例を示す説明図である。
図5図5は、需要情報の一例を示す説明図である。
図6図6は、輸送能力情報の一例を示す説明図である。
図7図7は、倉庫契約情報の一例を示す説明図である。
図8図8は、計画立案装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図9図9は、倉庫案の作成例を示す説明図である。
図10図10は、在庫輸送計画案算出例を示す説明図である。
図11図11は、賃借期間算出例を示す説明図である。
図12図12は、評価値算出部による倉庫容積利用率の算出例を示す説明図である。
図13図13は、最終案決定部による複合計画案の決定例を示す説明図である。
図14図14は、在庫輸送計画情報の一例を示す説明図である。
図15図15は、賃借計画情報の一例を示す説明図である。
図16図16は、最終案出力部による出力画面例を示す説明図である。
図17図17は、計画立案装置による複合計画案生成処理手順例を示すフローチャートである。
図18図18は、実施例2にかかる在庫輸送例を示す説明図である。
図19図19は、実施例2にかかる保管先決定処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
近年、全国的にトラック台数や倉庫の逼迫が加速してコスト高騰が進んでいる。トラックを第三者から契約で借りる物流企業の場合、倉庫への在庫供給においても、トラック不足による欠品を回避したり、コスト増加を抑えたりすることが重要である。そこで、実施例1は、需要変動に対応して、繁忙期だけ追加倉庫を借り、一時的に在庫容積を増やすことにより、サプライチェーンの倉庫賃借コストおよび輸送コストの削減を実現する。
【0012】
<在庫輸送例>
図1は、実施例1にかかる在庫輸送例を示す説明図である。倉庫Xは、配送業者が常時使用している倉庫である(以下、メイン倉庫Xと表記する)。通常、工場Zからの物品は、メイン倉庫Xに配送されて保管される。そして、納品日までにメイン倉庫Xから納品先の最寄りの地方倉庫を介して納品先に配送される。
【0013】
ここで、繁忙期のような需要増に対応したり総コストを抑制したりするため、配送業者が、追加レンタル可能な外部倉庫の使用契約を外部倉庫の所有者と締結する場合がある。なお、総コストとは、物品を保管するために必要な倉庫の賃借料などの倉庫賃借コストと、当該物品を輸送するために必要な輸送車両の賃借料などの輸送コストと、当該物品の欠品ロスコスト(販売機会損失)と、の総和である。但し、以下の説明においては、欠品ロスコスト(販売機会損失)をゼロに近づけることを前提としており、総コストについては倉庫賃借コストと輸送コストの和として説明する。
【0014】
外部倉庫としては、たとえば、外部倉庫A~Cがある。外部倉庫Aは、外部倉庫A~Cの中で最もメイン倉庫Xの近くに位置するが、外部倉庫A~Cの中で最も賃借料が高く、かつ、保管容量も最小である。外部倉庫Aの賃借料は、1日ごとの従量課金[円/m・日]とする。
【0015】
外部倉庫Cは、外部倉庫A~Cの中で最もメイン倉庫Xから遠くに位置するが、外部倉庫A~Cの中で最も賃借料が安く、かつ、保管容量も最大である。外部倉庫Cの賃借形式は、2ヶ月1棟丸ごとレンタルとする。外部倉庫Bは、外部倉庫A~Cの中で最もメイン倉庫Xから距離および保管容量は並であり、賃借形式は、1ヶ月1棟丸ごとレンタルとする。なお、外部倉庫A~Cのメイン倉庫Xから距離、保管容量および賃借形式は一例であり、外部倉庫A~Cとは異なるメイン倉庫Xから距離、保管容量および賃借形式の外部倉庫は存在する。
【0016】
在庫計画は、どの追加倉庫をいつまで使うか、または、いずれも使わないかにより、大きく変化する。1棟丸ごとレンタルの外部倉庫(たとえば、外部倉庫B,C)を賃借する場合、なるべく倉庫を埋めるよう輸送を集約して輸送コストが低減するような在庫輸送計画が立案される。
【0017】
従量課金制の外部倉庫(たとえば、外部倉庫A)を賃借する場合、なるべくメイン倉庫Xで保管し、外部倉庫での保管を極力減らして、倉庫賃借コストが低減するような在庫輸送計画が立案される。
【0018】
このように、需要変動に対応して、サプライチェーンの倉庫賃借コストおよび輸送コストを削減するために、外部倉庫の賃借を考慮した在庫輸送計画が立案される。
【0019】
<在庫輸送計画例>
図2は、在庫輸送計画例を示すグラフである。(A)は、外部倉庫の賃借を事前に決めてから立案した在庫輸送計画(以下、単純計画)201を示す。(B)は、外部倉庫の契約条件を考慮した外部倉庫の賃借計画211,212と単純計画202とを同時に立案した複合計画210を示す。(A)および(B)において、横軸は時間軸であり、縦軸はメイン倉庫および外部倉庫での保管中の総在庫容積である。また、10月第1週から11月第4週までを、繁忙期までの在庫の準備期間とし、12月第1週から12月第3週までを繁忙期とする。
【0020】
(A)は、単純計画201の立案前に外部倉庫Bが賃借された単純計画201を示す。外部倉庫Cの賃借形式は、2ヶ月1棟丸ごとレンタルであり、配送業者は、10月の第4週の月曜日から12月の第3週の日曜日までの2か月間(以下、外部倉庫Cの契約期間)、外部倉庫Cを追加レンタルしたものとする。
【0021】
単純計画201では、外部倉庫Cの契約期間の間、メイン倉庫Xの保管容量Sxを超えて、物品を保管可能であることを示す。外部倉庫Cの契約期間中の外部倉庫Cの保管容量において、単純計画201を除いたハッチングを施した部分は、その分の在庫を保管しておらず無駄になっている在庫容積である。
【0022】
(B)は、まず、倉庫賃借コスト低減の観点により、外部倉庫A~Cの中から外部倉庫Bを選択して在庫輸送を計画し、その後、さらに、外部倉庫Bでは保管できない期間および在庫量について、さらに外部倉庫Aを選択して、在庫輸送を計画した複合計画210を示す。具体的には、たとえば、大保管容量長期間の契約では、外部倉庫B,Cのような1または複数ヶ月単位で1棟丸ごとレンタル可能な外部倉庫が優先適用され、小保管容量短期間の契約では、外部倉庫Aのような1日ごと従量課金のレンタルが可能な外部倉庫が優先適用される。
【0023】
(B)は、外部倉庫B,Aの契約条件を考慮した賃借計画211,212を単純計画202と同時に立案した複合計画210であるため、各外部倉庫B,Aの契約条件に応じた在庫輸送により、外部倉庫B,Aの未使用期間(ハッチング部分)が、(A)に比べて低減する。これにより、倉庫賃借コストを低減することが可能になる。そして、倉庫Bの保管率を上げ、保有在庫量を平均化させることで、繁忙期における輸送量を減少させることができ、輸送コストをも抑えることができる。この結果、輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストを最小化することが可能な倉庫案を立案することができる。
【0024】
<計画立案装置のハードウェア構成例>
図3は、計画立案装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。計画立案装置300は、プロセッサ301と、記憶デバイス302と、入力デバイス303と、出力デバイス304と、通信インターフェース(通信IF)305と、を有する。プロセッサ301、記憶デバイス302、入力デバイス303、出力デバイス304、および通信IF305は、バス306により接続される。プロセッサ301は、計画立案装置300を制御する。記憶デバイス302は、プロセッサ301の作業エリアとなる。また、記憶デバイス302は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス302としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス303は、データを入力する。入力デバイス303としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイクがある。出力デバイス304は、データを出力する。出力デバイス304としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF305は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0025】
また、記憶デバイス302は、具体的には、たとえば、商品情報340と、需要情報350と、輸送能力情報360と、倉庫契約情報370と、を記憶する。以下、図4図7を用いて商品情報340~倉庫契約情報370について詳細に説明する。
【0026】
<商品情報340>
図4は、商品情報340の一例を示す説明図である。商品情報340は、製品を示す情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、品目名401と、容積402と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが商品データを構成するエントリとなる。品目名401は、商品の種類を示す品目の名称である。品目名401は、たとえば、JANコードや商品コード(型番)である。容積402は、品目名401の商品1個当たりが空間を占有する体積であり、たとえば、商品が内接する直方体の体積である。
【0027】
<需要情報350>
図5は、需要情報350の一例を示す説明図である。需要情報350は、商品の需要を示す情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、日付501と、納品先502と、品目名401と、需要量503と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが需要データを構成するエントリとなる。日付501は、納品先502が商品を納品してほしい年月日である。納品先502は、商品を要求し納品を要求し当該商品が納品される相手である。納品先502には、その位置情報(緯度および経度、または住所)も含まれる。需要量503は、品目名401の品目で特定される商品の個数である。
【0028】
<輸送能力情報360>
図6は、輸送能力情報360の一例を示す説明図である。輸送能力情報360は、商品を輸送する能力を示す情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、出発日601と、発地602と、着地603と、最大車両台数604と、車両単価605と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが輸送能力データを構成するエントリとなる。
【0029】
出発日601は、発地602から輸送車両が出発する年月日である。発地602は、輸送車両が商品等を積んで出発する地点であり、たとえば、工場Zやメイン倉庫X、外部倉庫A~Cが該当する。図6では、例として「工場Z」のように表記しているが、発地602には、その位置情報(緯度および経度、または住所)も含まれる。着地603は、輸送車両が到着する地点であり、たとえば、メイン倉庫X、外部倉庫A~C、納品先P~Rが該当する。図6では、例として「倉庫X」のように表記しているが、着地603には、その位置情報(緯度および経度、または住所)も含まれる。
【0030】
最大車両台数604は、出発日601に発地602から着地603への輸送をおこなうことが可能な輸送車両の台数の最大値である。最大車両台数604を超えた台数の輸送車両が、出発日601に発地602から着地603への輸送をおこなうことはできない。車両単価605は、輸送車両の単価である。
【0031】
なお、説明を単純化するため、輸送車両1台当たりの積載量は、輸送能力情報360に図示しないが、輸送車両1台当たりの積載量は、所定の積載量とする。
【0032】
<倉庫契約情報370>
図7は、倉庫契約情報370の一例を示す説明図である。倉庫契約情報370は、倉庫の契約に関する情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、倉庫名701と、最大保管容積702と、最低賃借期間703と、賃借開始可能日704と、単位賃借費用705と、賃借単位706と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが倉庫契約データを構成するエントリとなる。
【0033】
倉庫名701は、倉庫を一意に特定する識別情報である。図示はしないが、倉庫名701は、倉庫の位置情報(緯度および経度、または住所)に関連付けられている。最大保管容積702は、倉庫名701で特定される倉庫が保管可能な容積の最大値である。
【0034】
最低賃借期間703は、倉庫名701で特定される倉庫を最低限賃借しなければならない期間である。賃借開始可能日704は、倉庫名701で特定される倉庫の賃借が開始可能な日である。単位賃借費用705は、単位期間(たとえば、一か月や一週間)あたりの賃借単位706の賃借に必要な金額である。賃借単位706は、倉庫名701で特定される倉庫で賃借可能な容積の単位である。
【0035】
なお、本例では、倉庫Xは、配送業者が保有または常時賃借しているメイン倉庫Xであるため、最低賃借期間703および賃借開始可能日は「なし」、賃借単位706は、倉庫Xが「固定」(外部倉庫のように変更可能ではないという意味)であることを示す。
【0036】
<計画立案装置の機能的構成例>
図8は、計画立案装置の機能的構成例を示すブロック図である。計画立案装置300は、記憶部801と、制御部802と、を有する。記憶部801は、図3に示した記憶デバイス302により実現される。記憶部801には、図3~7に示した商品情報340、需要情報350、輸送能力情報360および倉庫契約情報370が格納される。また、記憶部801には、制御部802から出力される在庫輸送計画情報814および賃借計画情報815も格納される。
【0037】
制御部802は、図3に示した記憶デバイス302に記憶されたプログラムを、プロセッサ301に実行させることにより実現される。具体的には、たとえば、制御部802は、賃借計画案作成部821と、在庫輸送計画案作成部822と、賃借費用算出部823と、評価値算出部824と、収束判定部825と、最終案決定部826と、最終案出力部827と、を有する。
【0038】
賃借計画案作成部821は、1以上の倉庫案を作成し、倉庫案ごとに賃借計画案を作成する。倉庫案とは、メイン倉庫Xのみ、または、メイン倉庫Xに1以上の外部倉庫が追加された倉庫群である。そして、賃借計画案作成部821は、倉庫案ごとに、倉庫案に新規に追加された外部倉庫の賃借期間を、在庫輸送計画の対象期間に設定する。ここで、作成される倉庫案を具体的に説明する。
【0039】
図9は、倉庫案の作成例を示す説明図である。図9中、丸図形は倉庫案を示し、矢印は外部倉庫の追加および在庫輸送計画案作成部822による在庫輸送計画案の算出を示す。ここでは、図1に示した外部倉庫A~Cが追加される場合の例を示す。図9の説明では便宜的に在庫輸送計画案の算出については省略する。
【0040】
賃借計画案作成部821は、メイン倉庫Xのみの倉庫案900を起点として外部倉庫を1つずつ追加していく。たとえば、賃借計画案作成部821は、外部倉庫Aを追加した倉庫案901、外部倉庫Bを追加した倉庫案902、外部倉庫Cを追加した倉庫案903を作成する。
【0041】
倉庫案で保管能力が不足、すなわち、倉庫案の倉庫群で保管容量が満杯となる期間が存在する場合には、賃借計画案作成部821は、当該倉庫案に未割当の外部倉庫を追加する。具体的には、たとえば、倉庫案901で保管能力が不足している場合には、賃借計画案作成部821は、倉庫案911、912を作成する。倉庫案911で保管能力が不足している場合には、賃借計画案作成部821は、倉庫案9110を作成し、倉庫案912で保管能力が不足している場合には、賃借計画案作成部821は、倉庫案9120を作成する。
【0042】
倉庫案902、903についても同様に、保管能力が不足している場合には、賃借計画案作成部821は、倉庫案921,922,931,932,9210,9220,9310,9320を作成する。なお、外部倉庫が追加される都度、作成された倉庫案ごとに在庫輸送計画案作成部822が在庫輸送計画案を算出するため、たとえば、倉庫案911(X+A+B)と、倉庫案921(X+B+A)とは、異なる倉庫案になる。
【0043】
図9に戻り、在庫輸送計画案作成部822は、賃借計画案作成部821によって作成された倉庫案ごとに、在庫輸送計画案を作成する。具体的には、たとえば、在庫輸送計画案作成部822は、倉庫案に含まれる各倉庫の倉庫契約データにしたがっていくつかの外部倉庫の対象期間内での使用を契約したと仮定して、輸送される商品の商品データ、当該商品の需要データ、および当該商品の輸送能力データを遵守して、当該商品が輸送および入出庫される在庫輸送計画案を算出する。
【0044】
在庫輸送計画案は、発地602と、着地603と、品目名401と、品目名401で特定される商品の発地602から着地603への輸送数と、要求納期と、納品予定日と、を含む。また、在庫輸送計画案は、倉庫ごとに保管される商品の個数および保管期間も含む。倉庫での商品の保管期間は、たとえば、倉庫に着地した日付(発地602からの出発日に、経路探索で算出された着地603に到着するまでの日数を加算した日付)から当該倉庫から納品先へ輸送される出発日601までの期間である。これにより、倉庫案の全倉庫における1日ごとの総在庫容積が特定される。
【0045】
また、商品の在庫容量が倉庫案に含まれる倉庫群の総在庫容積を超える期間がある場合、在庫輸送計画案作成部822は、輸送能力データを遵守する限りにおいて、倉庫群の総在庫容積を超える分の在庫容量を、当該期間よりも前の倉庫群の総在庫容積を超えていない期間に付け替えて、付け替え後も倉庫群の総在庫容積を超えないように、在庫輸送計画案を算出してもよい。このような付け替えを「前倒し」と称す。
【0046】
また、在庫輸送計画案作成部822は、倉庫群の総在庫容積を超える期間がない場合でも、輸送コストを低減するために、前倒しを実行してもよい。たとえば、車両単価605が高い時期から安い時期に前倒しすれば、輸送コストが低減される。
【0047】
前倒ししても倉庫案に含まれる倉庫群の総在庫容積を超える期間がなくならない場合、在庫輸送計画案作成部822は、倉庫群の総在庫容積を上限として、保管能力が不足した在庫輸送計画案を作成することになる。
【0048】
図10は、在庫輸送計画案算出例を示す説明図である。図10では、在庫輸送計画案の対象期間を、例として、2020/10/1~2020/12/31とする。したがって、点線矩形で示した外部倉庫A~Cの賃借計画案1001~1003における賃借期間も、2020/10/1~2020/12/31となる。
【0049】
図10では、在庫輸送計画案作成部822は、倉庫案901~903の在庫輸送計画案1011~1013を算出する。賃借計画案1001~1003のうちハッチングを施した部分は、外部倉庫A~Cにおいてその分の在庫を保管しておらず無駄になっている在庫容積である。
【0050】
図8に戻り、賃借費用算出部823は、倉庫案ごとの適切な賃借期間を算出する。すなわち、賃借計画案では、倉庫案に新規追加された外部倉庫の賃借期間が対象期間(2020/10/1~2020/12/31)に設定されている。したがって、賃借費用算出部823は、倉庫案に新規追加された外部倉庫の倉庫契約データを遵守して、賃借計画案で設定された当該外部倉庫の賃借期間を対象期間よりも短い期間に設定する。
【0051】
図11は、賃借期間算出例を示す説明図である。図11では、倉庫案902の賃借計画案1002に対する賃借期間算出例を示す。倉庫案902に新規追加された外部倉庫Bの倉庫契約データ(図7の3行目のエントリ)は、最大保管容積702が「10000」、最低賃借期間703が「28日」、賃借開始可能日704が「毎週月曜日」、単位賃借費用705が「50万円/週」、賃借単位706が「1棟ごと」、という賃借契約条件1100である。
【0052】
賃借費用算出部823は、賃借契約条件1100を遵守し、メイン倉庫Xの保管容量を超えた部分を包含し、かつ、図11のハッチングで示した無駄な在庫容積を低減して倉庫賃借コストが最小になるように、外部倉庫Bの必要最小限の賃借期間となる賃借計画案1102を決定する。この場合の賃借計画案1102は、最低賃借期間703および賃借開始可能日704を遵守して、賃借開始日が10月第4週である19日月曜日、賃借期間が10月19日(月)から12月20日(日)までの8週間となる。
【0053】
また、最大保管容積702が「10000(m)」でかつ賃借単位706が「1棟ごと」であるため、外部倉庫Bの使用可能な最大保管容量は、「10000(m)」になる。また、単位賃借費用705が「50万円/週」であり、かつ、賃借期間が10月19日(月)から12月19日(日)までの8週間であるため、外部倉庫Bの倉庫賃借コスト(賃借費用)は、400万円となる。
【0054】
図8に戻り、評価値算出部824は、輸送コストと倉庫賃借コストとの総和である総コストを算出する。また、評価値算出部824は、各倉庫案の賃借期間において、総在庫容積が満杯となる期間を特定するための倉庫容積利用率を算出する。以下、図12を用いて具体的に説明する。
【0055】
図12は、評価値算出部824による倉庫容積利用率の算出例を示す説明図である。賃借計画案1102のある期間tにおいて賃借計画案1102の倉庫案902(メイン倉庫Xおよび外部倉庫B)の在庫容積をVit Use、当該倉庫案の最大保管能力(最大保管容量)をVit Maxとすると、期間tの倉庫容積利用率ritは、下記式(1)であらわされる。なお、iは、賃借計画案を一意に特定する識別番号である。
【0056】
it=Vit Use/Vit Max・・・(1)
【0057】
倉庫容積利用率ritは1以下の値であり、倉庫容積利用率rit=1の期間tは、倉庫案の全倉庫が満杯、rit<1であればその期間tでは満杯でないことを示す。したがって、倉庫容積利用率rit=1の期間tの最大保管能力Vit Maxを大きくする、すなわち、外部倉庫をさらに追加することにより、在庫容量を増加させることが可能になる。なお、期間tの長さは、任意に設定可能である。本例では、1日単位で保管容量が変動するため、期間tの長さを1日とする。また、図12の期間Dは、倉庫容積利用率rit=1の期間tが連続する期間である。
【0058】
図8に戻り、収束判定部825は、賃借計画案の各々について総コストが収束したか、すなわち、新規に外部倉庫を追加する必要がないか否かを判定する。具体的には、たとえば、収束判定部825は、倉庫容積利用率ritが1未満の期間tのみである賃借計画案については、これ以上総コストを低減できないため収束したと判定し、倉庫容積利用率ritが1の期間tを含む賃借計画案についてはまだ総コストを低減できる可能性があるため、収束していないと判定する。
【0059】
なお、本例では、収束判定の基準を倉庫容積利用率rit=1としたが、倉庫容積利用率rit<1となる任意の値(たとえば、0.9)を上限としてもよい。すなわち、収束判定部825は、倉庫容積利用率ritが当該上限以上となる期間tのみである賃借計画案については、これ以上総コストを低減できないため収束したと判定し、倉庫容積利用率ritが当該上限未満の期間tを含む賃借計画案についてはまだ総コストを低減できる可能性があるため、収束していないと判定する。
【0060】
最終案決定部826は、収束判定部825によって収束したと判定された複合計画案のうち、総コストが最小となる賃借計画案とその在庫輸送計画案とを組み合わせた最終複合計画案を決定する。
【0061】
図13は、最終案決定部826による複合計画案の決定例を示す説明図である。複合計画案1300は、倉庫案900が適用された賃借計画案とその在庫輸送計画案との組み合わせである。複合計画案1321は、倉庫案921が適用された賃借計画案とその在庫輸送計画案との組み合わせである。複合計画案13100は、倉庫案9110が適用された賃借計画案とその在庫輸送計画案との組み合わせである。
【0062】
図13の例では、最終案決定部826は、各倉庫案に対応する複合計画案のうち、総コストが最小となる複合計画案1321を、出力対象となる最終複合計画案(複合計画210)に決定する。なお、最終案決定部826は、総コストが最小となる複合計画案だけでなく、総コストが少ない順で複数の複合計画案を最終複合計画案に決定してもよく、総コストが所定のコスト以下となる1以上の複合計画案を最終複合計画案に決定してもよい。
【0063】
図8に戻り、最終案出力部827は、最終案決定部826によって決定された最終複合計画案を出力する。具体的には、たとえば、最終案出力部827は、出力デバイス304の一例であるディスプレイに表示したり、記憶部801に格納したり、計画立案装置300と通信可能な他のコンピュータに送信したりする。最終複合計画案は、上述したように、賃借計画案を示す賃借計画情報815とその在庫輸送計画案を示す在庫輸送計画情報814との組み合わせである。
【0064】
図14は、在庫輸送計画情報814の一例を示す説明図である。在庫輸送計画情報814は、在庫輸送計画案を示す情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、発地602と、着地603と、品目名401と、輸送数1401と、要求納期1402と、納品予定日1403と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが輸送計画データを構成するエントリとなる。
【0065】
輸送数1401は、発地602から着地603に輸送される品目名401で特定される商品の個数である。輸送数1401は、品目名401で特定される商品についての日付501、納品先502および需要量503に基づいて算出される。要求納期1402は、品目名401で特定される商品の発地602から着地603に輸送数1401分輸送しなければならない期日である。要求納期1402は、需要情報350の日付501以前に設定される。
【0066】
納品予定日1403は、品目名401で特定される商品が輸送数1401分納品先502に納品される年月日であり、着地603から納品先502までの輸送日数も考慮される。納品予定日1403は、要求納期1402以前に設定される。
【0067】
図15は、賃借計画情報815の一例を示す説明図である。賃借計画情報815は、賃借計画案を示す情報であり、具体的には、たとえば、フィールドとして、倉庫名701と、契約容積1501と、賃借開始日1502と、賃借終了日1503と、総賃借費用1504と、を対応付けた情報である。同一行の各フィールドの値の組み合わせが賃借計画データを構成するエントリとなる。
【0068】
契約容積1501は、倉庫名701で特定される倉庫(メイン倉庫Xまたは外部倉庫A~C)と契約した容積である。契約容積1501は、賃借単位706と、賃借開始日1502から賃借終了日1503までの賃借期間における品目名401で特定される商品の容積402および需要量503と、に基づいて算出される。
【0069】
賃借開始日1502は、倉庫名701で特定される倉庫の賃借が開始する年月日である。賃借開始日1502は、賃借費用算出部823により、倉庫名701で特定される倉庫を含む倉庫案の賃借計画案に対応する在庫輸送計画案と、賃借開始可能日704と、に基づいて設定される。具体的には、たとえば、在庫輸送計画案において、倉庫案に追加された最新の外部倉庫の保管容量が0から0を超えた日付以前で、かつ、直近の賃借開始可能日704が、賃借開始日1502に設定される。
【0070】
賃借終了日1503は、倉庫名701で特定される倉庫の賃借が終了する年月日である。賃借終了日1503は、賃借費用算出部823により、倉庫名701で特定される倉庫を含む倉庫案の賃借計画案に対応する在庫輸送計画案と、最低賃借期間703と、賃借開始可能日704と、に基づいて設定される。具体的には、たとえば、在庫輸送計画案において、倉庫案に追加された最新の外部倉庫の保管容量が0を超えた日付から0になった日付以降で、かつ、賃借開始日1502から起算した最低賃借期間703の日付以降に設定される。
【0071】
総賃借費用1504は、倉庫名701で特定される倉庫を賃借開始日1502から賃借終了日1503まで賃借した場合の賃借費用の総額である。総賃借費用1504は、単位賃借費用705と、賃借単位706と、賃借開始日1502から賃借終了日1503までの賃借期間と、に基づいて算出される。
【0072】
図16は、最終案出力部827による出力画面例を示す説明図である。出力画面1600は、計画立案装置300または計画立案装置300と通信可能な他のコンピュータで表示される。
【0073】
出力画面1600は、在庫輸送計画情報814と、賃借計画グラフ1601と、を含み、最終複合計画案(本例では、複合計画案1321)を可視化した情報である。賃借計画グラフ1601の横軸は時間軸であり、縦軸は総在庫容積を示す軸である。賃借計画グラフ1601は、賃借計画情報815と倉庫ごとの賃借期間内の在庫容積とに基づいて作成される。
【0074】
<複合計画案生成処理手順例>
図17は、計画立案装置300による複合計画案生成処理手順例を示すフローチャートである。計画立案装置300は、暫定賃借計画Pを賃借計画案P で更新する(ステップS1701)。iは、賃借計画案P を一意に特定する識別番号である。開始当初の賃借計画案P は、賃借期間が対象期間(2020/10/1~2020/12/31)であるメイン倉庫Xのみを倉庫案900とする賃借計画案である。
【0075】
つぎに、計画立案装置300は、未割当の外部倉庫を暫定賃借計画Pの倉庫案に追加して、対象期間で賃借する場合の賃借計画案P´ を作成する(ステップS1702)。具体的には、たとえば、暫定賃借計画Pが倉庫案900を含む賃借計画案P である場合、図9に示したように、計画立案装置300は、倉庫案900に外部倉庫Aを追加した倉庫案901と、倉庫案900に外部倉庫Bを追加した倉庫案902と、倉庫案900に外部倉庫Cを追加した倉庫案903と、を作成する。そして、図10に示したように、計画立案装置300は、各倉庫案901~903に追加された外部倉庫A~Cごとに、対象期間で賃借する賃借計画案1001~1003をP´ として作成する。
【0076】
つぎに、計画立案装置300は、賃借計画案P´ ごとに、賃借計画案P´ の保管能力を上限とし、輸送コストを最小化する在庫輸送計画案P を作成する(ステップS1703)。具体的には、たとえば、図10に示したように、計画立案装置300は、賃借計画案1001~1003ごとに、対象期間で賃借する在庫輸送計画案1011~1013を在庫輸送計画案P として作成する。
【0077】
つぎに、計画立案装置300は、在庫輸送計画案P ごとに、在庫輸送計画案P の各期間tの在庫容積Vit Useを満たし、かつ、賃借契約条件を遵守する倉庫賃借コスト最小の賃借期間(賃借開始日T Sta~賃借終了日T Fin)を取得する(ステップS1704)。
【0078】
図11に示したように、在庫輸送計画案1012を例に挙げると、計画立案装置300は、各期間の在庫容積Vit Useが外部倉庫(本例では、外部倉庫B)の追加前における倉庫案(本例では、メイン倉庫Xのみの倉庫案900)の最大保管能力(本例では、メイン倉庫Xの保管容量)以下であり、かつ、賃借契約条件1100を遵守する倉庫賃借コストを算出する。図11の例では、賃借期間が10/19~12/20の8週間であり、かつ、単位賃借費用705が50[万円/週]であるため、倉庫賃借コストの400万円が最小倉庫賃借コストになる。また、賃借期間が10/19~12/20の8週間であるため、10/19が賃借期間の賃借開始日T Staであり、12/20が賃借終了日T Finである。
【0079】
つぎに、計画立案装置300は、賃借計画案P´ ごとに、賃借計画案P´ の追加倉庫の賃借期間を賃借開始日T Sta~賃借終了日T Finに更新した賃借計画案P を作成し、賃借計画集合Sに追加する(ステップS1705)。図11の例では、賃借計画案1102が賃借計画案P として賃借計画集合Sに追加される。
【0080】
つぎに、計画立案装置300は、在庫輸送計画案P と賃借計画案P とにより総コストcを算出する(ステップS1706)。総コストcは輸送コストとステップS1704の最小倉庫賃借コストとの和である。具体的には、たとえば、計画立案装置300は、在庫輸送計画案P に基づいて、輸送コストを算出する。輸送コストは、たとえば、賃借期間(賃借開始日T Sta~賃借終了日T Fin)内に賃借計画案P における各倉庫に入出庫する輸送車両の台数に、車両単価605を乗じた額で算出される。
【0081】
つぎに、計画立案装置300は、賃借計画案P ごとに、賃借計画案P の各期間tの在庫容積Vit Useと最大保管能力Vit Maxとにより、倉庫容積利用率ritを算出する(ステップS1707)。
【0082】
つぎに、計画立案装置300は、倉庫容積利用率rit=1となる期間tが存在し、かつ、賃借計画案P の倉庫案にまだ割り当てられていない外部倉庫がある特定の賃借計画案P が、暫定賃借計画Pに存在するか否かを判定する(ステップS1708)。
【0083】
特定の賃借計画案P が存在する場合(ステップS1708:Yes)、計画立案装置300は、特定の賃借計画案P をステップS1701の更新対象に設定して(ステップS1709)、ステップS1701に戻る。たとえば、図12の場合、在庫輸送計画案1012において、期間Dが倉庫容積利用率rit=1となる期間tの存在期間となる。
【0084】
したがって、計画立案装置300は、在庫輸送計画案1012に対応する賃借計画案1102をステップS1701の更新対象に設定する。このように、ステップS1702では、賃借計画案1102の倉庫案902に外部倉庫Aが追加された倉庫案921と、賃借計画案1102の倉庫案902に外部倉庫Cが追加された倉庫案922と、が作成される。
【0085】
一方、特定の賃借計画案P が存在しない場合(ステップS1708:No)、計画立案装置300は、賃借計画集合Sから総コストcが最小となる賃借計画案P と在庫輸送計画案P との組み合わせを取得し、当該組み合わせを最終複合計画案に決定する(ステップS1710)。そしてに、計画立案装置300は、最終複合計画案を複合計画210として出力する(ステップS1711)。これにより、一連の処理を終了する。
【0086】
このように、実施例1によれば、計画立案装置300は、追加の外部倉庫の賃借契約条件を考慮した賃借計画案を、在庫輸送計画案と同時に立案する。したがって、各倉庫の賃借契約条件に応じた在庫輸送により、倉庫の未使用期間が削減される。これにより、輸送コストと倉庫賃借コストとの総コストcを最小化することができ、費用の低減化を図ることができる。
【実施例0087】
実施例2は、実施例1に、追加倉庫として、さらに出庫能力がある自社倉庫を適用した在庫輸送例を示す。実施例2では、実施例1との相違点を中心に説明するため、当該相違点の説明を省略する。また、実施例1と同一構成には同一符号を付し、その説明も省略する。
【0088】
図18は、実施例2にかかる在庫輸送例を示す説明図である。実施例2では、実施例1で示した外部倉庫A~Cのほか、メイン倉庫X以外の他の自社倉庫(以下、サブ倉庫)Yが適用される。サブ倉庫Yは、メイン倉庫Xよりも納品先Qから近い立地である(ただし、メイン倉庫よりも納品先Pからは遠い立地とする)。
【0089】
図18において、メイン倉庫X(発地602)からサブ倉庫Y(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は20万円/台、メイン倉庫X(発地602)から納品先P(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は10万円/台、メイン倉庫X(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は50万円/台、サブ倉庫Y(発地602)から納品先P(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は50万円/台、サブ倉庫Y(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は20万円/台とする。なお、メイン倉庫Xと外部倉庫A~Cとの間の輸送コストは、工場Zからメイン倉庫Xへの輸送経路における輸送コストに含まれるものとする。
【0090】
外部倉庫A~Cは、出庫機能、すなわち、直接納品先に輸送する機能がないため、工場Zから外部倉庫A~Cに保管された商品を納品先に輸送する場合、一旦メイン倉庫Xに戻され、メイン倉庫Xから納品先に輸送される。これに対し、サブ倉庫Yは、出庫機能がある倉庫である。サブ倉庫Yに入庫された商品は、メイン倉庫Xに戻さずに直接納品先に輸送可能である。このため、サブ倉庫Yの立地が納品先にとってメイン倉庫Xよりも近いと、輸送コストが削減される。また、メイン倉庫Xに戻す手間がなくなるため、納品期間の短縮にもつながる。
【0091】
なお、メイン倉庫X(外部倉庫A~Cも含む)から納品先P、Qへ直接輸送する輸送経路をメインルートと称し、メイン倉庫X(外部倉庫A~C含まない)からサブ倉庫Yを経由して納品先P、Qへ輸送する輸送経路をサブルートと称す。
【0092】
計画立案装置300は、同一の需要データ(需要情報350のエントリ)について、メインルートおよびサブルートの輸送コストを算出し、算出結果に基づいて保管先を決定する。たとえば、工場Zからの商品の納品先がQであれば、計画立案装置300は、保管先をメイン倉庫Xまたはサブ倉庫Yのうち輸送コストが低い方に決定する。
【0093】
具体的には、たとえば、メイン倉庫Xに入庫された商品を納品先Qに輸送する場合、メイン倉庫X(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605は50万円/台である。
【0094】
これに対し、サブ倉庫Yに入庫された商品を納品先Qに輸送する場合の輸送単価は、メイン倉庫X(発地602)からサブ倉庫Y(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605:20万円/台と、サブ倉庫Y(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605:20万円/台と、の総和:40万円/台になる。
【0095】
したがって、計画立案装置300は、保管先を輸送コストが低いサブ倉庫Yに決定する。このように、納品先Qに納品される商品を、メイン倉庫Xよりもサブ倉庫Yで保管する方が、輸送コストが低減する。また、メイン倉庫Xにおけるその分の保管容量で他の商品を保管することができる。
【0096】
なお、工場Zからの商品の納品先がPであれば、計画立案装置300は、メインルートおよびサブルートの輸送コストを算出するまでもなく、保管先を現在の倉庫案に含まれるいずれかの倉庫に決定してもよい。
【0097】
また、仮に、メイン倉庫X(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605が30万円/台である場合、計画立案装置300は、保管先を輸送コストが低いメイン倉庫Xに決定する。
【0098】
ただし、仮に、メイン倉庫X(発地602)から納品先Q(着地603)への輸送経路における輸送車両の車両単価605が40万円/台である場合、メイン倉庫Xの輸送コストとサブ倉庫Yの輸送コストは同一である。このような場合、たとえば、計画立案装置300は、輸送回数の少ない方、本例ではメイン倉庫Xを保管先に決定してもよい。これにより、サブ倉庫Yでの商品の入出庫が不要となり、納品期間の短縮につながる。
【0099】
このような場合、たとえば、計画立案装置300は、メイン倉庫Xおよびサブ倉庫Yのそれぞれの空き保管容量に基づいて決定してもよい。たとえば、計画立案装置300は、メイン倉庫Xの空き保管容量が所定のしきい値以下であれば、保管先をサブ倉庫Yに決定する。これにより、新たに外部倉庫を追加する必要がなくなり、倉庫賃借コストの増加を抑制することができる。なお、このような保管先の決定は、メイン倉庫Xの輸送コストとサブ倉庫Yの輸送コストは同一である場合に限らず、メイン倉庫Xの輸送コストとサブ倉庫Yの輸送コストとのコスト差が所定範囲内である場合にも適用してよい。
【0100】
なお、サブ倉庫Yは、賃借計画案作成部821により倉庫案に追加される。これにより、倉庫案は、メイン倉庫Xおよびサブ倉庫Yに、外部倉庫が追加された倉庫集合となり、実施例1と同様に、賃借計画案が作成される。
【0101】
<保管先決定処理>
図19は、実施例2にかかる保管先決定処理手順例を示すフローチャートである。保管先決定処理は、ステップS1703において、在庫輸送計画案作成部822が、賃借計画案P´ ごとに在庫輸送計画案P を作成する際に実行される処理である。
【0102】
在庫輸送計画案作成部822は、需要情報350に未選択の需要データ(エントリ)があるか否かを判断する(ステップS1901)。未選択の需要データがある場合(ステップS1901:Yes)、在庫輸送計画案作成部822は、需要情報350から日付501が最古の未選択需要データを選択する(ステップS1902)。
【0103】
つぎに、在庫輸送計画案作成部822は、選択需要データの納品先、メイン倉庫、およびサブ倉庫の各位置情報に基づいて、メイン倉庫がサブ倉庫よりも選択需要データの納品先に近いか否かを判定する。メイン倉庫がサブ倉庫よりも選択需要データの納品先に近い場合(ステップS1903:Yes)、在庫輸送計画案作成部822は、選択需要データの品目名401で特定される商品の保管先を現在の倉庫案のいずれかの倉庫に決定する(ステップS1904)。具体的には、たとえば、在庫輸送計画案作成部822は、メイン倉庫Xの空き保管容量がしきい値以下でなければ、当該商品の保管先をメイン倉庫Xに決定し、しきい値以下であれば、倉庫案に含まれているいずれかの外部倉庫に決定する。
【0104】
一方、メイン倉庫がサブ倉庫よりも選択需要データの納品先に近くない場合(ステップS1903:No)、在庫輸送計画案作成部822は、選択需要データの品目名401で特定される商品を納品先へ納品する際の輸送コストを、ルートごと(メインルート、サブルート)に算出する(ステップS1905)。
【0105】
そして、在庫輸送計画案作成部822は、上述したように、算出結果に基づいて、保管先を決定し(ステップS1906)、ステップS1901に戻る。ステップS1901において、需要情報350に未選択の需要データがない場合(ステップS1901:No)、保管先決定処理は終了する。
【0106】
このように、実施例2によれば、サブ倉庫Yを有効活用することにより、輸送コストや倉庫賃借コスト、ひいては総コストの低減化を図ることができる。
【0107】
なお、上述した実施例1および実施例2では、在庫輸送計画を例に挙げて説明したが、生産計画でもよい。この場合、メイン倉庫Xは、生産計画では、各工場Zから輸送される部品群で製品を組み立てる組立工場として機能する(倉庫として機能してもよい)。この場合、メイン倉庫Xは、納品先に対し、製造した製品を輸送することになる。外部倉庫A~Cおよびサブ倉庫Yは、部品を一時的に保管する倉庫として機能してもよいし、組立工場としても機能してもよい。また、この場合、倉庫契約情報370には、フィールドとして、一月当たりの光熱費や一月当たりの税金の金額が含まれていてもよい。
【0108】
また、上述した実施例1および実施例2にかかる計画立案装置は、下記(1)~(9)のように構成することもできる。
【0109】
(1)プログラムを実行するプロセッサ301と、前記プログラムを記憶する記憶デバイス302と、を有する計画立案装置300は、供給先(納品先502)への需要量503と供給時期(日付501)とを示す需要情報350と、発地602から着地603への輸送時期(出発日601)、輸送量(最大車両台数604)および輸送費用(車両単価605)を示す輸送能力情報360と、倉庫(倉庫名701)ごとに保管容積(最大保管容積702)と単位賃借費用705とを規定する倉庫契約情報370と、にアクセス可能である。
【0110】
つぎに、前記プロセッサ301は、対象期間(2020/10/1~2020/12/31)で利用する第1倉庫(メイン倉庫X)を少なくとも含む倉庫集合に、複数の賃借可能な倉庫(外部倉庫A~C)から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる複数の倉庫案(X+A、X+B、X+C)を作成し、前記倉庫契約情報370に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案1001~1002を前記倉庫案ごとに作成する賃借計画案作成処理を実行する(ステップS1702)。
【0111】
つぎに、前記プロセッサ301は、前記需要情報350および前記輸送能力情報360に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫および前記第2倉庫に保管し前記第1倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫および前記第2倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案1011~1013を、前記倉庫案ごとに作成する在庫輸送計画案作成処理を実行する(ステップS1703)。
【0112】
つぎに、前記プロセッサ301は、前記第2倉庫についての前記対象期間を、前記在庫輸送計画案作成処理によって作成された在庫輸送計画案1012において前記第2倉庫の在庫容量が存在しない期間を除外した賃借期間(2020/10/19~2020/12/20)に変更し、前記賃借期間における前記第2倉庫の賃借費用を算出する賃借費用算出処理を実行する(ステップS1704、S1705)。
【0113】
つぎに、前記プロセッサ301は、前記総輸送費用(輸送コスト)と、前記倉庫案に含まれるすべての前記第2倉庫について算出された賃借費用の総額(倉庫賃借コスト)と、の総和(総コストc)を、前記倉庫案ごとに算出する評価値算出処理を実行する(ステップS1706)。そして、前記プロセッサ301は、前記評価値算出処理による算出結果を出力する出力処理を実行する(ステップS1711)。
【0114】
これにより、ユーザは、倉庫案ごとの総和により、どの倉庫案がどのくらいのコストがかかるかを把握することができる。
【0115】
(2)上記(1)の計画立案装置300において、前記プロセッサ301は、前記賃借期間において前記倉庫案の総在庫容量が所定の上限(たとえば、倉庫案の各倉庫の最大保管容積702の総和。この総和よりも低い値でもよい。)以上の期間tが存在し、かつ、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の他の第2倉庫が存在するか否かを、前記倉庫案ごとに判定する判定処理を実行する(ステップS1708)。
【0116】
そして、前記プロセッサ301は、いずれの倉庫案についても、前記判定処理によって前記所定の上限以上の期間tが存在しない、または、前記他の第2倉庫が存在しないと判定された場合、前記総和に基づいて、当該倉庫案のうち特定の倉庫案に関する前記在庫輸送計画案および前記賃借期間が適用された賃借計画案を、出力対象の複合計画に決定する決定処理を実行する(ステップS1708:Yes、ステップS1710)。
【0117】
そして、前記出力処理では、前記プロセッサ301は、前記決定処理によって決定された複合計画を出力する。
【0118】
すなわち、収束判定部825は、外部倉庫の追加の必要がない倉庫案の各々について前記総和が収束しこれ以上低減しないと判定する。したがって、ユーザは、特定の倉庫案についての最も低コストな複合計画を、決定結果から得ることができる。
【0119】
(3)上記(2)の計画立案装置300において、前記決定処理では、前記プロセッサ301は、前記総和が最小となる倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する。
【0120】
これにより、前記総和が最も低い複合計画を自動的に特定することができる。
【0121】
(4)上記(2)の計画立案装置300において、前記決定処理では、前記プロセッサ301は、前記総和がしきい値以下の倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する。
【0122】
これにより、低コストな複合計画を、絶対評価により自動的に特定することができる。
【0123】
(5)上記(2)の計画立案装置300において、前記決定処理では、前記プロセッサ301は、前記総和が最大ではない倉庫案を前記特定の倉庫案に決定する。
【0124】
これにより、低コストな複合計画を、相対評価により自動的に特定することができる。
【0125】
(6)上記(2)の計画立案装置300において、前記賃借計画案作成処理では、前記プロセッサ301は、前記判定処理によって前記所定の上限を超える期間が存在し、かつ、前記他の第2倉庫が存在すると判定された倉庫案の各々を前記倉庫集合とし、前記倉庫集合ごとに、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を作成し、前記倉庫契約情報370に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成する(ステップS1709⇒ステップS1701,S1702)。
【0126】
すなわち、収束判定部825は、外部倉庫の追加が必要な倉庫案の各々について前記総和が収束していないため、さらなるコストの低減化を図ることができる。
【0127】
(7)上記(1)の計画立案装置300において、前記賃借計画案作成処理では、前記プロセッサ301は、対象期間で利用する第1倉庫および前記供給先への輸送が可能な第3倉庫を少なくとも含む倉庫集合に、前記複数の賃借可能な倉庫から前記対象期間で賃借する未追加の第2倉庫を追加した異なる倉庫案を作成し、前記倉庫契約情報370に基づいて、前記第2倉庫を前記対象期間賃借する場合の賃借計画案を前記倉庫案ごとに作成し(ステップS1702)、前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサ301は、前記需要情報350および前記輸送能力情報360に基づいて、前記対象期間において供給元から輸送して前記第1倉庫、前記第2倉庫および前記第3倉庫に保管し前記第1倉庫および前記第3倉庫から供給先に輸送する場合における前記第1倉庫、前記第2倉庫および前記第3倉庫の前記対象期間の総在庫容量および総輸送費用を含む在庫輸送計画案を、前記倉庫案ごとに作成する(実施例2:図18)。
【0128】
これにより、輸送コストや倉庫賃借コスト、ひいては総コストの低減化を図ることができる。
【0129】
(8)上記(7)の計画立案装置300において、前記倉庫契約情報370は、前記倉庫ごとの位置情報を有し、前記需要情報350は、前記供給先ごとの位置情報を有し、前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサ301は、前記需要情報350および前記輸送能力情報360に基づいて、前記供給先への物品の保管先を、前記第1倉庫および前記第3倉庫のうち前記供給先に近い方の倉庫に決定し、前記決定した保管先の倉庫に前記供給先への物品の保管を保管して前記供給先に輸送する在庫輸送計画案を作成する(ステップS1904)。
【0130】
これにより、輸送コストの低減化を図ることができ、また、供給先に近い方の倉庫に保管できるため、納品作業の効率化を図ることができる。
【0131】
(9)上記(7)の計画立案装置300において、前記在庫輸送計画案作成処理では、前記プロセッサ301は、前記需要情報350および前記輸送能力情報360に基づいて、前記第1倉庫から前記供給先に輸送する場合の第1輸送費用と、前記第1倉庫から前記第3倉庫に保管し前記第3倉庫から前記供給先に輸送する場合の第2輸送費用と、を算出し、前記第1輸送費用と前記第2輸送費用とに基づいて、前記供給先への物品の保管先を、前記第1倉庫および前記第3倉庫のうちいずれかの倉庫に決定し、前記決定した保管先の倉庫に前記供給先への物品を保管して前記供給先に輸送する在庫輸送計画案を作成する。
【0132】
これにより、車両単価605を優先して、輸送コストの低減化を図ることができる。
【0133】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0134】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサ301がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0135】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0136】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0137】
A~C 外部倉庫
P、Q 納品先
X メイン倉庫
Y サブ倉庫
Z 工場
201、202 在庫輸送計画
210 複合計画
211,212 賃借計画
300 計画立案装置
301 プロセッサ
302 記憶デバイス
340 商品情報
350 需要情報
360 輸送能力情報
370 倉庫契約情報
705 単位賃借費用
706 賃借単位
801 記憶部
802 制御部
814 在庫輸送計画情報
815 賃借計画情報
821 賃借計画案作成部
822 在庫輸送計画案作成部
823 賃借費用算出部
824 評価値算出部
825 収束判定部
826 最終案決定部
827 最終案出力部
900~903、911、912、921,922,931,932、9210,9220,9310,9320 倉庫案
1001~1003 賃借計画案
1011~1013 在庫輸送計画案
1100 賃借契約条件
1102 賃借計画案
1300 複合計画案
1321 複合計画案
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19