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特開2022-102271レーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物およびそれを用いたレーザー溶着用筒状成形体、並びに筒状成形体-チューブ結合構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102271
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】レーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物およびそれを用いたレーザー溶着用筒状成形体、並びに筒状成形体-チューブ結合構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20220630BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20220630BHJP
   B29C 65/16 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K7/14
C08L23/26
C08L77/00
B29C65/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216909
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 依史
(72)【発明者】
【氏名】齋木 計宏
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
【テーマコード(参考)】
4F211
4J002
【Fターム(参考)】
4F211AA11
4F211AA29
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH11
4F211AH17
4F211TA01
4F211TC11
4F211TD07
4F211TN27
4J002BB121
4J002BB212
4J002CL001
4J002CL002
4J002CL011
4J002FD090
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体をレーザー溶着する際の溶着性を改善することができる、レーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物およびそれを用いたレーザー溶着用筒状成形体、並びに、上記レーザー溶着用筒状成形体とチューブとがレーザー溶着されてなる結合構造体を提供する。
【解決手段】樹脂チューブ2とレーザー溶着されるコネクタ1の材料として、下記の(A)~(C)成分を特定の割合で含有するレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物を用いる。
(A)ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(但し、(C)を除く)。
(B)上記(A)の屈折率との差が0.02以内の屈折率を示す、ガラス繊維フィラー。
(C)上記(A)の主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記(B)のガラス繊維フィラー表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する、相溶化剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分からなる母材ポリマーとともに、下記の(B)および(C)成分を含有し、(B)および(C)成分の重量比が、(B):(C)=2:0.01~2:1であることを特徴とするレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
(A)ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(但し、(C)を除く)。
(B)上記(A)の屈折率との差が0.02以内の屈折率を示す、ガラス繊維フィラー。
(C)上記(A)の主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記(B)のガラス繊維フィラー表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する、相溶化剤。
【請求項2】
上記(A)成分がポリプロピレンであり、上記(C)成分が無水マレイン酸変性ポリプロピレンである、請求項1記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
【請求項3】
上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンにおける無水マレイン酸変性率が0.1~4.0mol%である、請求項2記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
【請求項4】
上記(A)成分がポリアミドであり、上記(C)成分が、測定温度180℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)が1~200cm3/10分のポリアミドである、請求項1記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
【請求項5】
上記(A)~(C)成分の合計に対する上記(B)成分の含有割合が、2.0~50重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物からなることを特徴とするレーザー溶着用筒状成形体。
【請求項7】
自動車用チューブ用コネクタである、請求項6記載のレーザー溶着用筒状成形体。
【請求項8】
請求項6または7記載のレーザー溶着用筒状成形体の開口端縁内に、樹脂チューブの端部が挿入された状態でレーザー溶着されてなることを特徴とする筒状成形体-チューブ結合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物およびそれを用いたレーザー溶着用筒状成形体、並びに、上記レーザー溶着用筒状成形体とチューブとがレーザー溶着されてなる結合構造体(筒状成形体-チューブ結合構造体)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用チューブとコネクタの接続に対して、Oリングを備えたコネクタに自動車用チューブを圧入しシール性を確保する、といった締結方法が行われている。しかしながら、上記のような締結方法では、Oリングのようなシール部品等の部品点数が増加し、そのことが、組付工数の増大やコストアップの要因となっている。
【0003】
そのようななか、近年、上記のようなシール部品を用いた圧入締結に代わる締結方法として、溶着締結が注目されている。そして、チューブを接続するコネクタのような筒状の部材に対応した溶着締結の技術の中では、スピン溶着(回転による摩擦熱を利用した溶着)が、安価な設備で溶着できるといった点で有利であることが知られている。
しかしながら、スピン溶着は、その溶着部に、バリの発生による汚染が生じやすいといった問題がある。
そこで、上記のような溶着部の汚染の問題を解消する手法として、レーザー溶着が注目されている。
【0004】
レーザー溶着は、レーザー透過材を透過したレーザー光が、レーザー吸収材で吸収されて発熱し、レーザー吸収材が溶融するとともに、伝熱により透過材も溶融させることで、レーザー透過材とレーザー吸収材を溶着する手法である。
上記レーザー溶着による溶着状態は、吸収材に伝えられるレーザーのエネルギーにより変化し、レーザー光出力、透過材のレーザー光の透過率、透過材の肉厚などに影響される。そして、レーザー光のエネルギーが少なすぎると溶着不良となり、レーザー光のエネルギーが大きすぎると材料劣化による溶着不良が発生する。
そのため、レーザー溶着においては、上記レーザー透過材の透過率のバラつきを押さえ、レーザー吸収材に伝えられるレーザー光のエネルギーを一定にすることが求められている。
【0005】
ここで、上記のようなレーザー溶着に特化したレーザー透過材としては、例えば、特許文献1に示すものがある。
特許文献1では、レーザー透過材としてポリプロピレン成形体を用いており、上記ポリプロピレン成形体には、レーザー光の透過(レーザー溶着性能)を阻害することなく、ポリプロピレン成形体の機械的強度等を向上させるために、ポリプロピレンと屈折率の近似した無機充填剤が含まれている。そして、上記無機充填剤として、タルク、白マイカを用いた実施例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-001350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、例えば自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体を製造する際に顕著にみられるウェルド部の発生に起因した、充填剤の凝集の問題については、充分な検討がなされていない。
【0008】
すなわち、特許文献1の実施例では、射出成形によってシート材を製造しているのであるが、上記のようなシート材の製造において、通常、射出成形による樹脂の流れ方向は一方向である。そのため、ウェルド部は殆ど発生せず、上記のような充填剤の凝集が問題となることは殆どない。
しかし、筒状成形体を製造する際には、樹脂の流れ方向が多方向となり、合流する箇所でウェルド部が顕著に発生し、そこに充填剤が顕著に凝集しやすくなる。
また、上記充填剤が、特許文献1の実施例で用いられていたようなもの(タルク、白マイカ)では、コネクタを成形した際に充分な強度(特に高温強度)が得られないため、例えば上記充填剤としてガラス繊維からなるものを用いることが検討されるが、一般的に市販されているガラス繊維(Eガラス等からなるガラス繊維)は、例えばポリプロピレンに比べ屈折率が高い。そのため、母材ポリマーとガラス繊維の界面でレーザー光が反射しやすく、結果、レーザー透過率が下がり、レーザー吸収材に伝えられるレーザー光のエネルギー量が低下する課題がある。
そこで、ポリプロピレンの屈折率と近似する屈折率のガラス繊維を用いることも検討されるが、その場合であっても、上記ガラス繊維の凝集部分にレーザー光が当たると、レーザー光が散乱してしまい、良好なレーザー溶着ができなくなるといった問題がある。
そのため、特許文献1に開示のレーザー透過材が、仮に、自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体であり、その充填剤としてガラス繊維を使用し、上記筒状成形体の開口端縁内に樹脂チューブの端部を挿入してレーザー溶着した場合であっても、コネクタとチューブの充分な溶着ができない(その溶着部全周での溶着強度を確保することができない)ことから、樹脂チューブを流れる流体の漏れや、樹脂チューブが筒状成形体から外れるなどの不具合が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体をレーザー溶着する際の溶着性等を改善することができる、レーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物およびそれを用いたレーザー溶着用筒状成形体、並びに、上記レーザー溶着用筒状成形体とチューブとがレーザー溶着されてなる結合構造体(筒状成形体-チューブ結合構造体)の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、先に述べたような筒状成形体の材料として、ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(A)を母材ポリマーとして用いるとともに、上記母材ポリマーの屈折率との差が0.02以内の屈折率を示すガラス繊維フィラー(B)と、上記母材ポリマーの主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記ガラス繊維フィラー(B)の表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する相溶化剤(C)を上記材料中に含有することを想起した。その結果、ガラス繊維フィラーの界面でレーザー光が散乱することなく透過するようになり、さらに上記ガラス繊維フィラー(B)の分散性が向上するようになるため、筒状成形体の射出成形時に、ウェルド部にガラス繊維フィラー(B)が凝集するのを低減することができる。これらのことから、レーザー溶着する際の溶着性等を改善することができるようになることを突き止め、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、上記の目的を達成するために、以下の[1]~[8]を、その要旨とする。
[1] 下記の(A)成分からなる母材ポリマーとともに、下記の(B)および(C)成分を含有し、(B)および(C)成分の重量比が、(B):(C)=2:0.01~2:1であることを特徴とするレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
(A)ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(但し、(C)を除く)。
(B)上記(A)の屈折率との差が0.02以内の屈折率を示す、ガラス繊維フィラー。
(C)上記(A)の主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記(B)のガラス繊維フィラー表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する、相溶化剤。
[2] 上記(A)成分がポリプロピレンであり、上記(C)成分が無水マレイン酸変性ポリプロピレンである、[1]に記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
[3] 上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンにおける無水マレイン酸変性率が0.1~4.0mol%である、[2]に記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
[4] 上記(A)成分がポリアミドであり、上記(C)成分が、測定温度180℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)が1~200cm3/10分のポリアミドである、[1]に記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
[5] 上記(A)~(C)成分の合計に対する上記(B)成分の含有割合が、2.0~50重量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物からなることを特徴とするレーザー溶着用筒状成形体。
[7] 自動車用チューブ用コネクタである、[6]に記載のレーザー溶着用筒状成形体。
[8] [6]または[7]に記載のレーザー溶着用筒状成形体の開口端縁内に、樹脂チューブの端部が挿入された状態でレーザー溶着されてなることを特徴とする筒状成形体-チューブ結合構造体。
【発明の効果】
【0012】
以上のことから、本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物は、高温強度等の改善がなされるとともに、自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体となるよう射出成形する際に顕著に生じるウェルド部に、ガラス繊維フィラーが凝集するのを低減することができ、上記筒状成形体をレーザー溶着する際の溶着性を改善することができる。そのため、上記樹脂組成物を用いたレーザー溶着用筒状成形体も、高いレーザー溶着性等を示す。そして、上記レーザー溶着用筒状成形体とチューブとがレーザー溶着されてなる結合構造体(筒状成形体-チューブ結合構造体)も、その結合部分(溶着部全周)の溶着強度が向上するため、チューブを流れる流体の漏れや、チューブが筒状成形体から外れるなどの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の筒状成形体-チューブ結合構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物は、先に述べたように、下記の(A)成分からなる母材ポリマーとともに、下記の(B)および(C)成分を含有し、(B)および(C)成分の重量比が、(B):(C)=2:0.01~2:1を示すものである。
(A)ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(但し、(C)を除く)。
(B)上記(A)の屈折率との差が0.02以内の屈折率を示す、ガラス繊維フィラー。
(C)上記(A)の主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記(B)のガラス繊維フィラー表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する、相溶化剤。
なお、本発明において、屈折率とは、レーザー光1060nmに対する屈折率を示すものであり、精密屈折計KPR-3000でd線(587.6nm)、e線(546.1nm)、t線(1013.98nm)より近似曲線を作製し、1060nmの屈折率を求めたものである。したがって、以降に記載の各材料の屈折率は、この方法により求めたものである。
【0016】
以下に、上記樹脂組成物の各材料について詳しく説明する。
【0017】
[(A)成分]
上記樹脂組成物の母材ポリマーである(A)成分には、ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選ばれた少なくとも一つ(但し、後記の(C)成分を除く)が用いられる。なお、本発明において、母材ポリマーとは、上記樹脂組成物の性質に大きな影響を与えるものであり、通常、上記(A)~(C)成分の合計に対して45重量%以上、好ましくは、上記樹脂組成物全体の45重量%以上を占めるものである。
【0018】
上記ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)が好ましいが、エチレンのような他のオレフィン単量体、(メタ)アクリル酸エステル等のその他の単量体との共重合体でもあってもよい。但し、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンは除く。
そして、上記ポリプロピレンには、通常、JIS K 7210に準拠し、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分のものが用いられる。上記メルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.5~45g/10分、より好ましくは1~40g/10分、更に好ましくは2~35g/10分である。なお、上記MFRは、メルトインデックサを用いて測定することができる。
また、上記ポリプロピレンとしては、通常、その屈折率が1.470~1.510のものが用いられる。上記屈折率は、好ましくは1.475~1.505、より好ましくは1.480~1.500、更に好ましくは1.485~1.495である。
【0019】
また、上記ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド92、ポリアミド99、ポリアミド912、ポリアミド1010、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、およびこれらのポリアミドを構成するポリアミド成分の内の少なくとも2種類の構造が異なった成分を含むポリアミド共重合体が用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、耐塩化カルシウム性により優れ、融雪剤(耐塩化カルシウム)に付着によるクラックを抑制することができることから、ポリアミド12が好ましい。
そして、上記ポリアミドとしては、通常、そのMVR(脂肪族ポリアミドの場合は、JIS K 7210に準拠し、測定温度275℃、荷重5kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)。芳香族ポリアミドの場合は、JIS K 7210に準拠し、測定温度325℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)。)が0.1~40cm3/10分のものが用いられ、上記MVRは、好ましくは0.2~38cm3/10分、より好ましくは0.3~35cm3/10分、更に好ましくは0.4~30cm3/10分である。なお、上記ポリアミドの、JIS K 7210に準拠し、測定温度180℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)は、0.1cm3/10分以下(高分子量)であるため、後記の(C)成分とは異なる。そして、上記MVRは、メルトインデックサを用いて測定することができる。
また、上記ポリアミドとしては、通常、その屈折率が1.51~1.55のものが用いられる。上記屈折率は、好ましくは1.515~1.545、より好ましくは1.52~1.54、更に好ましくは1.525~1.535である。
【0020】
[(B)成分]
(B)成分には、上記樹脂組成物の母材ポリマー((A)成分)の屈折率との差が0.02以内の屈折率を示すガラス繊維フィラーが用いられる。上記の屈折率の差は、好ましくは0.01以内、より好ましくは0である。
上記のように、(A)成分である母材ポリマーの選択(屈折率)により、使用されるガラス繊維フィラー(B)(屈折率の差が上記範囲内のガラス繊維フィラー)が決められる。
なお、上記ガラス繊維フィラーの屈折率は、好ましくは1.4~1.7、より好ましくは1.44~1.64、更に好ましくは1.48~1.58である。
【0021】
また、上記ガラス繊維フィラー(B)の材料であるガラス繊維としては、Dガラス(低誘電率ガラス)、NEガラス(低誘電率無アルカリガラス)、Eガラス(無アルカリガラス)、Cガラス(耐酸用アルカリガラス)、Aガラス(アルカリガラス)、Sガラス(高強度・高弾性ガラス)、および耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られるフィラメント状の繊維があげられる。なかでも、前記(A)成分である母材ポリマーの屈折率との屈折率差が小さいことから、Dガラス、NEガラスが好ましく用いられる。
さらに、上記ガラス繊維の繊維径は、射出成型加工性、レーザー光透過性の観点から、好ましくは2.5~20μm、より好ましくは5~15μmである。
【0022】
そして、筒状成形体における高温強度等の改善の観点から、上記樹脂組成物において、上記(A)~(C)成分の合計(100重量%)に対する上記(B)成分の含有割合は、2.0~50重量%であることが好ましく、より好ましくは10~30重量%、更に好ましくは15~25重量%の範囲である。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分には、上記樹脂組成物の母材ポリマー((A)成分)の主鎖と同一の構成単位を有し、かつ上記ガラス繊維フィラー(B)表面の水酸基に反応性を示す官能基(カルボン酸基、カルボン酸基の無水物、エポキシ基、アミド基等)を有する相溶化剤が用いられる。
上記のように、(A)成分である母材ポリマーの主鎖により、使用される相溶化剤が決められる。なお、(A)成分として、ポリプロピレンおよびポリアミドが併用される場合は、いずれかの主鎖と同一の構成単位を有する相溶化剤を用いればよい。
【0024】
ここで、上記(A)成分がポリプロピレンである場合、上記相溶化剤(C)としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、イミン変性ポリプロピレン等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、筒状成形体におけるレーザー溶着性等の改善の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましく、より好ましくは、無水マレイン酸変性率が0.01~20mol%のポリプロピレン、更に好ましくは、無水マレイン酸変性率が0.05~10mol%のポリプロピレン、特に好ましくは、無水マレイン酸変性率が0.1~5mol%のポリプロピレンである。
また、上記のように相溶化剤(C)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン等である場合、その相溶化剤(C)の、JIS K 7210に準拠し、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~400g/10分、より好ましくは0.3~300g/10分、更に好ましくは0.1~200g/10分である。なお、上記MFRは、メルトインデックサを用いて測定することができる。
さらに、上記のように相溶化剤(C)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン等である場合、その相溶化剤(C)の屈折率は、好ましくは1.475~1.505のものが用いられる。上記屈折率は、より好ましくは1.480~1.500、更に好ましくは1.485~1.495である。
なお、上記のように、(A)成分がポリプロピレンであり、上記相溶化剤(C)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン等である場合、上記相溶化剤(C)の無水マレイン酸基等がガラス繊維フィラー(B)表面の水酸基と反応して接着し、上記相溶化剤(C)のポリプロピレン部が母材ポリマーと相溶性に優れるため分散性が向上する。その結果、筒状成形体におけるレーザー光透過性や高温強度等も向上するようになる。
【0025】
また、上記(A)成分がポリアミドである場合、上記相溶化剤(C)としては、その、JIS K 7210に準拠し、測定温度180℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(MVR)が1~200cm3/10分のポリアミド(低分子量ポリアミド)が用いられる。なかでも、筒状成形体におけるレーザー溶着性等の改善の観点から、上記MVRは、好ましくは2~175cm3/10分、より好ましくは3~150cm3/10分、更に好ましくは4~125cm3/10分、特に好ましくは5~100cm3/10分である。上記MVRは、メルトインデックサを用いて測定することができる。
なお、上記のような低分子量ポリアミドは、過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる。
また、上記のように、(A)成分がポリアミドであり、上記相溶化剤(C)が上記MVRを示すポリアミド(低分子量ポリアミド)である場合、その低分子量ポリアミドの添加により、末端アミド量が増えるため、ガラス繊維フィラー(B)表面の水酸基と反応性が向上する。低分子量ポリアミドは、母材ポリマーと相溶性に優れるため、ガラス繊維フィラー(B)の再凝集を防ぎ、分散性が向上する。その結果、筒状成形体におけるレーザー光透過性や高温強度等も向上するようになる。
さらに、上記のように相溶化剤(C)が低分子量ポリアミドである場合、その相溶化剤(C)の屈折率は、好ましくは1.515~1.545のものが用いられる。上記屈折率は、より好ましくは1.52~1.54、更に好ましくは1.525~1.535である。
【0026】
そして、筒状成形体におけるレーザー溶着性等の改善の観点から、上記樹脂組成物において、(B)および(C)成分の重量比は、(B):(C)=2:0.01~2:1であり、好ましくは(B):(C)=2:0.02~2:0.5、更に好ましくは(B):(C)=2:0.1~2:0.3の範囲である。
【0027】
[その他の成分]
本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物には、上記各成分の他、レーザー光透過性を損なわない種類および範囲で、必要に応じて、着色剤(染料および顔料)、熱安定剤、酸化防止剤、無機充填剤、結晶核剤、耐候剤、可塑剤、潤滑剤、耐衝撃材等といった他の成分を配合することができる。
【0028】
上記染料としては、例えば、アゾ系,アンスラキノン系,ペリノン系,ペリレン系,フタロシアニン系,カルボニウム系,インジゴイド系の、油性染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料があげられる。なかでも、レーザー透過性に優れることから、ペリレン系の染料が好ましい。
【0029】
上記顔料としては、フタロシアニン系,アンスラキノン系,イソインドリノン系,キナクリドン系,ペリレン系,アゾ系等の有機顔料があげられる。なかでも、レーザー透過性に優れることから、ペリレン系の有機顔料が好ましい。
【0030】
先述のように、上記着色剤は、レーザー光透過性を損なわない範囲で使用する必要があるため、通常、本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物中の着色剤の含有割合は1重量%未満である。そして、上記観点から、着色剤の含有割合は、0.75重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0031】
<レーザー溶着用筒状成形体の製造方法>
つぎに、本発明のレーザー溶着用筒状成形体は、例えば以下のようにして製造される。
【0032】
すなわち、まず、母材ポリマー(A)と、ガラス繊維(ガラス繊維フィラー(B))と、相溶化剤(C)と、必要に応じ、その他の成分とを、二軸押出機を用いて200~260℃のシリンダー温度で溶融混練する。そして、上記溶融混練物(本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物)から、ペレットを得る。
つぎに、上記ペレットを用い、射出成形機により設定温度200~280℃で筒状成形体用の金型内に射出成形する。このようにして、目的とする筒状成形体を製造することができる。
【0033】
また、別の製造方法として、母材ポリマー(A)と、ガラス繊維(ガラス繊維フィラー(B))と、相溶化剤(C)と、必要に応じ、その他の成分とを、1ショット毎に、その必要量を射出成形機にそれぞれ直接投入し、その射出成形により、目的とするレーザー溶着用筒状成形体を得るようにしてもよい。
さらに、上記各材料の一部を予め混合した後、その混合物を、残りの材料とともに、1ショット毎に、その必要量を射出成形機にそれぞれ直接投入し、その射出成形により、目的とするレーザー溶着用筒状成形体を得るようにしてもよい。
【0034】
上記の各種製法に用いられるガラス繊維の繊維長は、通常、2~6mmのものが用いられ、3~5mmの繊維長のものが好ましい。なお、溶融混練機や射出成形機内でガラス繊維が折損し、ガラス繊維がより微細化することから、通常、上記繊維長は、レーザー溶着用筒状成形体中のガラス繊維長とは異なる。
【0035】
<レーザー溶着用筒状成形体>
上記のようにして得られたレーザー溶着用筒状成形体は、レーザー溶着性等の観点から、通常、内径2.5~50mm、肉厚0.25~10mm、長さ20~1000mmの略筒状の形状を示すものである。上記内径は、好ましくは3~45mm、より好ましくは3.5~40mm、更に好ましくは4~35mmである。また、上記肉厚は、好ましくは0.5~7.5mm、より好ましくは0.75~5mm、更に好ましくは1.0~3.0mmである。また、上記長さは、好ましくは25~500mm、より好ましくは30~250mm、更に好ましくは35~100mmである。
そして、上記のように「略筒状」であるため、上記レーザー溶着用筒状成形体は、完全な筒状のものに限定されるものではなく、その開口端縁内に、樹脂チューブの端部を挿入した状態でレーザー溶着することが可能な形状であればよい。
【0036】
上記レーザー溶着用筒状成形体に対し、分光光度計(例えば、日本分光社製のV-770)を用いて、1060nmの全光透過率を測定した場合、その全光透過率は、55%以上であることが好ましく、より好ましくは57%以上、更に好ましくは60%以上である。また、上記レーザー溶着用筒状成形体のウェルド部に対する上記全光透過率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは52%以上、更に好ましくは55%以上である。
【0037】
また、上記レーザー溶着用筒状成形体の中央部(長さ方向に対する中央部)を固定し、長さ10mmの片持ち梁状態で、筒状成形体の先端の開口部に対し、押込み速度5mm/分で、JIS K 7171の圧子(先端R2.0)を軸直方向に押し込んだ時の破断強度(N)を、引張試験機ストログラフの圧縮評価により測定した場合、その破断強度は、450N以上が好ましく、500N以上がより好ましく、550N以上が更に好ましく、600N以上が特に好ましい。
【0038】
そして、このようにして得られた本発明のレーザー溶着用筒状成形体は、自動車用チューブ用コネクタ、水道配管のコネクタ等として好ましく用いられる。なかでも、自動車用チューブ用コネクタがより好ましい。
【0039】
<筒状成形体-チューブ結合構造体>
図1は、本発明の筒状成形体-チューブ結合構造体の一例を示す断面図であり、図において、1はコネクタ(筒状成形体)であり、2は樹脂チューブである。そして、上記コネクタ1が、本発明のレーザー溶着用筒状成形である。図示のように、上記コネクタ1の開口端縁1a内に、樹脂チューブ2の端部を挿入した状態で、上記コネクタ1の外側からレーザー光を照射することにより、上記コネクタ1を透過したレーザー光が樹脂チューブ2で吸収されて発熱し、樹脂チューブ2の母材ポリマーが溶融する。さらに上記コネクタ1へ伝熱することで、上記コネクタ1の母材ポリマーも溶融する。このようにして、両者の界面が溶着される。
【0040】
上記コネクタ1と樹脂チューブ2とは、通常、その母材ポリマーが同種材料でなければ接着しないが、上記コネクタ1の開口端縁1a、あるいは上記樹脂チューブ2の溶着面に、ホットメルトフィルムの配置や接着剤塗布や静電塗装等の表面処理を施すことにより、両者を溶着させることも可能である。また、上記樹脂チューブ2の材料あるいは上記樹脂チューブ2の溶着面には、レーザー光を吸収して発熱するような材料(カーボンブラック、無機顔料、有機顔料、染料等)が使用される必要がある。なお、上記樹脂チューブ2は、通常、長尺のものであり、上記コネクタ1の長さは、樹脂チューブ2に比べると短い。
【0041】
本発明で用いるレーザーとしては、800~1200nmに発振波長を有するものを用いることができ、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He-Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザー等の公知のレーザーを適用できる。これらのレーザーの出力は、5~40W程度であることが好ましい。
【0042】
レーザーの照射時間およびレーザーと被照射体(コネクタ1および樹脂チューブ2)との間隔は、レーザーの出力、コネクタ1の厚み、コネクタ1のレーザー透過率等を考慮して調整する必要がある。
【0043】
本発明の筒状成形体-チューブ結合構造体が、上記コネクタ1の開口端縁内に、上記樹脂チューブ2を1.5cm挿入し、その状態のまま、筒状成形体の外側から、樹脂チューブ2とコネクタ1の重なり初める位置から10mmの部位に、レーザー出力40W,1秒/周の条件でレーザー光を照射し、上記コネクタ1と樹脂チューブ2との界面を溶着させたものである場合、その、引張試験機ストログラフによる軸方向引張評価による溶着強度(N)は、450N以上が好ましく、475N以上がより好ましく、500N以上が更に好ましい。
【実施例0044】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0045】
まず、下記に従い、実施例および比較例の筒状成形体を作製した。なお、筒状成形体に使用する各材料の屈折率は、レーザー光1060nmに対する屈折率を示すものであり、精密屈折計KPR-3000でd線(587.6nm)、e線(546.1nm)、t線(1013.98nm)より近似曲線を作製し、1060nmの屈折率を求めたものである。
【0046】
[実施例1]
ポリプロピレン(製品名:ノバテックPP MA1B、日本ポリプロピレン社製、屈折率:1.49、MFR(JIS K 7210に準拠し、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定):21g/10分)79.9重量部と、酸変性ポリプロピレン(製品名:TPPP9232、BYK社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性率:2.0mol%、屈折率:1.49、MFR(JIS K 7210に準拠し、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定)6g/10分)0.1重量部と、Dガラスからなるガラス繊維(GF)フィラー(カット長3mmにカットされた、繊維径φ11μmのガラスチョップドストランド、屈折率:1.48、製品名:ECS(HL)-301TDS、重慶国際複合材料 有限公司(CPIC)社製)20重量部と、ペリレン系着色剤(製品名:LUMOGEN Black K 0087、BASFジャパン社製)0.1重量部とを配合し、二軸押出機(スクリュー径30mm)を用いて、180℃のシリンダー温度で溶融混練し、ペレットを得た。
そして、上記ペレットを用い、射出成形機により設定温度180℃で筒状成形体用の金型内に射出成形して、外径12mm、肉厚2mm、長さ25mmの筒状成形体を作製した。
【0047】
[実施例2~4,比較例1~8]
後記の表1に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、実施例1と同様にしてペレットを作製し、それを用いて、実施例1と同様の筒状成形体を得た。
なお、実施例2、比較例1~4では、二軸押出機のシリンダー温度および射出成形機の設定温度は、実施例1と同じ温度に設定し、実施例3,4、比較例5~8では、二軸押出機のシリンダー温度は220℃、射出成形機の設定温度は260℃とした。
また、後記の表1に記載の「PA12」は、ポリアミド12(製品名:Grilamid L20、エムスケミー社製、MVR(JIS K 7210に準拠し、測定温度275℃、荷重5kgで測定):85cm3/10分、屈折率:1.53)である。また、後記の表1に記載の「低分子量PA」は、Platamid 2513(アルケマ社製、MVR(JIS K 7210に準拠し、測定温度180℃、荷重2.16kgで測定):24cm3/10分、屈折率:1.53)である。さらに、後記の表1に記載の「GFフィラー(Eガラス)」は、Eガラスからなるガラス繊維フィラー(カット長3mmにカットされた、繊維径φ10μmのガラスチョップドストランド、屈折率:1.56、製品名:ECS305K、重慶国際複合材料 有限公司(CPIC)社製)であり、「GFフィラー(NEガラス)」は、NEガラスからなるガラス繊維フィラー(カット長3mmにカットされた、繊維径φ11μmのガラスチョップドストランド、屈折率:1.51、製品名:New glass、日東紡社製)であり、「GFフィラー(Dガラス)」は、先に述べたように、Dガラスからなるガラス繊維フィラー(カット長3mmにカットされた、繊維径φ10μmのガラスチョップドストランド、屈折率:1.48、製品名:ECS(HL)-301TDS、重慶国際複合材料 有限公司(CPIC)社製)である。
【0048】
そして、上記のようにして得られたペレットおよび筒状成形体に関し、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1に併せて示す。
【0049】
<コネクタ強度>
各筒状成形体の中央部(長さ方向に対する中央部)を固定し、長さ10mmの片持ち梁状態で、筒状成形体の先端の開口部に対し、押込み速度5mm/分で、JIS K 7171の圧子(先端R2.0)を軸直方向に押し込んだ時の破断強度(N)を、引張試験機ストログラフの圧縮評価により測定した。なお、本発明では、通常、上記破断強度が450N以上要求される。
【0050】
<溶着強度>
各筒状成形体の開口端縁内に、下記のようにして作製した樹脂チューブA,Bのいずれか(樹脂チューブA,Bのいずれを用いたかは、後記の表1および表2に示す。)1.5cm挿入し、その状態のまま、筒状成形体の外側から、チューブとコネクタの重なり初める位置から10mmの部位に、レーザー出力40W,1秒/周の条件で1060nmのレーザー光を照射し、上記筒状成形体と樹脂チューブとの界面を溶着させた(図1参照)。上記のように溶着させたサンプルから、引張試験機ストログラフによる軸方向引張評価により、その溶着強度(N)を測定し、以下の基準で評価した。
溶着強度450N以上 〇
溶着強度450N未満 ×
【0051】
なお、樹脂チューブA,Bは、以下のようにして作製した。
【0052】
[樹脂チューブAの作製]
ポリプロピレン(製品名:ノバテックPP BC6C、日本ポリプロピレン社製)100重量部と、カーボンブラック(製品名:MCF♯45、三菱化学社製)0.1重量部と、を配合し、二軸押出機(スクリュー径30nm)を用いて、180℃のシリンダー温度で溶融混練し、ペレットを得た。
そして、上記ペレットを用い、溶融押出機により設定温度180℃で溶融押出成形して、外径8mm、肉厚1.5mmの樹脂チューブAを作製した。
【0053】
[樹脂チューブBの作製]
ポリアミド12(製品名:Grilamid L25、エムスケミ-社製)100重量部と、カーボンブラック(製品名:MCF♯45、三菱化学社製)0.1重量部を配合し、二軸押出機(スクリュー径30nm)を用いて、220℃のシリンダー温度で溶融混練し、ペレットを得た。
そして、上記ペレットを用い、溶融押出機により設定温度220℃で溶融押出成形して、外径8mm、肉厚1.5mmの樹脂チューブBを作製した。
【0054】
<レーザー全透過率>
各筒状成形体の材料であるペレットを用い、射出成形機により設定温度260℃でシート状成形体用の金型内に射出成形(一方向に射出)して、厚み2mmのシートを作製した。そして、上記シートに対し、分光光度計(日本分光社製、V-770)を用いて、1060nmの全光透過率を測定し、以下の基準で評価した。
全光透過率55%以上 〇
全光透過率55%未満 ×
【0055】
<レーザー全透過率(ウェルド評価)>
上記シート状成形体用の金型内への射出成形時に、対向する2方向から射出を行い、意図的にウェルド部ができるようにして、厚み2mmのシート(ウェルド評価用)を作製した。そして、上記シートのウェルド部に対し、分光光度計(日本分光社製、V-770)を用いて、1060nmの全光透過率を測定し、以下の基準で評価した。
全光透過率50%以上 〇
全光透過率50%未満 ×
【0056】
【表1】
【0057】
上記表1の結果から、実施例1~4では、筒状成形体(コネクタ)の材料において、母材ポリマー(ポリプロピレンやPA12)とGFフィラーとの屈折率の差が小さく(0.02以内)、本発明に規定の要件を充足していることから、コネクタ強度が高く、レーザー全透過率も高く、さらに、ウェルド部ができた場合であってもレーザー全透過率が高い結果となった。そして、上記筒状成形体を樹脂チューブにレーザー溶着した際に、優れた溶着強度が得られた。
【0058】
これに対し、比較例1,2,5,6では、筒状成形体(コネクタ)の材料における母材ポリマー(ポリプロピレンやPA12)とGFフィラーとの屈折率の差が大きく、その結果、レーザー全透過率が低く、溶着強度も低くなる結果となった。比較例3,7では、相溶化剤(酸変性ポリプロピレンや低分子量PA)の添加量が多く、レーザー全透過率が低くなる結果となった。比較例4,8では、筒状成形体(コネクタ)の材料において、「母材ポリマーの主鎖と同一の構成単位を有し、かつGFフィラー表面の水酸基に反応性を示す官能基を有する、相溶化剤」に相当するものが含まれていないことから、射出成形時のGFフィラーの凝集による問題が解消されず、レーザー全透過率の低下や、溶着強度の低下につながる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のレーザー溶着用筒状成形体用樹脂組成物は、自動車用チューブ用のコネクタのような筒状成形体となるよう射出成形する際に顕著に生じるウェルド部に、ガラス繊維フィラーが凝集するのを低減することができ、上記筒状成形体をレーザー溶着する際の溶着性を改善することができる。上記筒状成形体としては、自動車用チューブ用のコネクタの他、水道配管のコネクタ等に適用することができる。また、上記筒状成形体の溶着対象としては、樹脂チューブ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 コネクタ
2 樹脂チューブ
1a 開口端縁
図1