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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102278
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220630BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20220630BHJP
【FI】
G06T7/00 590
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216922
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100217191
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信吾
(72)【発明者】
【氏名】坂田 享裕
【テーマコード(参考)】
5B043
5L049
【Fターム(参考)】
5B043AA09
5B043BA09
5B043FA07
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】顧客独自の印影を得ることができるシステム及びプログラムを提供すること。
【解決手段】顧客により入力された当該顧客の顧客情報に基づいて、その顧客に対応する印影画像が印影データベース24から取得され(S103)、この取得された印影画像の擬似印影画像が生成される(S105)。この擬似印影画像に基づいて生成される印鑑作成用データを用いて、顧客の印鑑(例えば実印)を作成することが可能となる。このように、印影画像ではなく擬似印影画像に基づいて生成された印鑑作成用データを用いて印鑑を作成するようにすることで、印影画像の示す印影(標準的な印影)がそのまま得られるのではない独自性のある印鑑(非画一的な印鑑)を顧客に提供することが可能となる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印影画像を管理する印影データベースと、
顧客により入力された当該顧客に関する情報に基づいて、前記印影データベースからその顧客に対応する印影画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された印影画像の擬似印影画像を生成する擬似印影画像生成手段と、を備える
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を管理する擬似印影データベースを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する登録手段を備え、
前記登録手段は、前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像が、前記擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像と同一又は類似でない場合、その生成された擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム
【請求項4】
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像が、前記擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像と同一又は類似である場合、この同一又は類似を解消するための変更をその生成された擬似印影画像に加える変更手段を備え、
前記登録手段は、前記変更手段により変更が加えられた擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム
【請求項5】
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を前記印影データベースに登録する更新登録手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム
【請求項6】
前記擬似印影画像に基づいて印鑑作成用データを生成する印鑑作成用データ生成手段を備える
ことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から6の何れか一項に記載の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インターネット上で印鑑の注文を可能にしたシステムとして、例えば、特許文献1に示されるようなシステムが存在する。この種のシステムでは、印鑑の発注者側に設置された発注者端末と、印鑑の注文を管理する管理サーバとがインターネットを介して通信可能に接続される。そして、印鑑(印面)の文字や書体等を特定するためのデータが発注者端末で入力されて管理サーバに送信されると、管理サーバにてそのデータに基づく印影イメージ(印影画像)が生成され、この印影イメージと同じ印影が得られる印鑑を注文することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-310151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムのように、印鑑の注文(ネット注文)に際して生成される印影イメージは、システムを構成する端末やサーバに予め記憶された書体や印面レイアウト等のデータに基づいて生成される。このような印影イメージに基づいて作成される印鑑については、印影イメージの流用や印影の画一化等による独自性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記懸念を払拭すべく、顧客独自の印影を得ることができるシステム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0007】
手段1のシステムは、
印影画像を管理する印影データベースと、
顧客により入力された当該顧客に関する情報に基づいて、前記印影データベースからその顧客に対応する印影画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された印影画像の擬似印影画像を生成する擬似印影画像生成手段と、を備える
ことを要旨とする。
【0008】
これによれば、顧客により入力された当該顧客に関する情報に基づいて、その顧客に対応する印影画像が印影データベースから取得され、この取得された印影画像の擬似印影画像が生成される。
【0009】
ここで、印影データベースで管理される印影画像は標準的(一般的)な印影を示すものであり、顧客に関する情報に基づいて印影データベースから取得される印影画像は、その顧客の標準的(一般的)な印影を示すものである。また擬似印影画像は、印影画像に類似した画像であって、印影画像が示す標準的な印影によく似た疑似的な印影を示すものである。
【0010】
このように、顧客により入力された当該顧客に関する情報に基づいて、その顧客に対応する印影画像の擬似印影画像が生成されるようにすることで、印影画像の示す印影(標準的な印影)がそのまま得られるのではない独自性のある印影(非画一的な印影)を得ることが可能となる。
【0011】
手段2のシステムは、手段1のシステムにおいて、
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を管理する擬似印影データベースを備える
ことを要旨とする。
【0012】
これによれば、生成された擬似印影画像をデータベースで管理することができるので、擬似印影画像により示される印影が得られる印鑑の作成や販売等を顧客の注文に応じて簡便に行うことが可能となる。
【0013】
手段3のシステムは、手段2のシステムにおいて、
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する登録手段を備え、
前記登録手段は、前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像が、前記擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像と同一又は類似でない場合、その生成された擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する
ことを要旨とする。
【0014】
これによれば、新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像(生成済の擬似印影画像)と同一又は類似でない場合、その新たに生成された擬似印影画像は擬似印影データベースに登録されて管理される。このため、過去に生成した擬似印影画像と同一又は類似の擬似印影画像が生成されるのを防ぐことができる。これにより、顧客の印影の独自性を担保しやすくすることができる。
【0015】
手段4のシステムは、手段3のシステムにおいて、
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像が、前記擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像と同一又は類似である場合、この同一又は類似を解消するための変更をその生成された擬似印影画像に加える変更手段を備え、
前記登録手段は、前記変更手段により変更が加えられた擬似印影画像を前記擬似印影データベースに登録する
ことを要旨とする。
【0016】
これによれば、新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベースで管理されている擬似印影画像(生成済の擬似印影画像)と同一又は類似である場合、この同一又は類似を解消するための変更が、新たに生成された擬似印影画像に加えられる。そして、変更後の擬似印影画像が擬似印影データベースに登録される。このため、過去に生成した擬似印影画像と同一又は類似の擬似印影画像が新たに生成されたとしても、その同一又は類似を解消した上で、擬似印影データベースで管理されるようになる。これにより、生成された擬似印影画像が無駄になるのを防ぐことができる。
【0017】
手段5のシステムは、手段1のシステムにおいて、
前記擬似印影画像生成手段により生成された擬似印影画像を前記印影データベースに登録する更新登録手段を備える
ことを要旨とする。
【0018】
これによれば、擬似印影画像が生成されると、その生成された擬似印影画像が印影データベースに登録され、印影画像として管理される。このため、過去に生成された擬似印影画像が印影データベースに登録されて印影画像として管理されるようになった後、その擬似印影画像に由来する印影画像が印影データベースから取得され、この取得された印影画像の擬似印影画像が新たに生成された場合、この新たに生成された擬似印影画像が、今回取得された印影画像の由来である擬似印影画像と同一になることはない。これにより、過去に生成した擬似印影画像と同一の擬似印影画像が新たに生成されることのないようにして、顧客の印影の独自性を担保しやすくすることができる。
【0019】
手段6のシステムは、手段1から5の何れか一つのシステムにおいて、
前記擬似印影画像に基づいて印鑑作成用データを生成する印鑑作成用データ生成手段を備える
ことを要旨とする。
【0020】
これによれば、顧客に対応する印影画像の擬似印影画像に基づいて印鑑作成用データが生成される。この生成された印鑑作成用データは印鑑の作成に用いられ、該印鑑作成用データに基づいて顧客の印鑑が作成される。このように、印影画像ではなく擬似印影画像に基づいて生成された印鑑作成用データを用いて印鑑を作成するようにすることで、印影画像の示す印影(標準的な印影)がそのまま得られるのではない独自性のある印鑑(非画一的な印鑑)を顧客に提供することが可能となる。
【0021】
なお、本発明でいう「印鑑」は、用紙等の捺印対象物に印面を押し付けて捺印する物理的な印鑑(手に持って使用する印鑑)だけでなく、印影を画像データ化した印影イメージデータを端末の画面に表示された電子文書等の捺印対象に画面上で捺印することができる電子的な印鑑(所謂「電子印鑑」)も含まれる。
【0022】
また、手段7のプログラムは、コンピュータを、前述の手段1から6の何れか一つに記載の各手段として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
以上の本発明によれば、顧客独自の印影を得ることができるシステム及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るシステムの構成図である。
図2】サービス提供サーバの処理部の機能ブロック図である。
図3】実印準備処理のフローチャートである。
図4】実印注文処理のフローチャートである。
図5】(A)は印影画像の一例を示す図であり、(B)は擬似印影画像の一例を示す図である。
図6】GANの基本構造を示す説明図である。
図7】変形例1の実印準備処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
[システムの構成]
実施形態に係るシステムは、図1に示すように、顧客が使用する端末1と、顧客に対しサービスを提供するサービス提供事業者側に設けられるサービス提供サーバ2と、インターネット等のネットワーク3と、を含んで構成される。
【0027】
サービス提供事業者は、インターネットを利用した商品の販売(ネット通販)をはじめとする各種サービスを提供する者である。本実施形態のシステム(以下「本システム」ともいう。)によるネット通販で取り扱う主たる商品は「印鑑」である。印鑑には、浸透印やゴム印、硬質印、電子印鑑等が含まれる。また、本システムによりサービス提供事業者が提供するサービスの1つとして「実印準備サービス」がある。実印準備サービスについての詳細は後述する。
【0028】
[端末の構成]
次に、顧客が使用する端末1について説明する。図1では、顧客が使用する端末(「顧客端末」ともいう。)として1台の端末1を示しているが、その数は1台に限られず、顧客の数に応じて変動し得るものであり、実際には複数台の顧客端末が存在するのが通常である。
【0029】
図1に示すように、端末1は、処理部11、記憶部12、通信部13、表示部14及び操作部15を含むコンピュータにより構成される。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォン、タブレットなどの通信端末を、端末1とすることができる。
【0030】
処理部11は、端末1の作動を制御するための各種処理を実行するものであり、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。処理部11のことを「制御部」ともいう。
【0031】
記憶部12は、端末1を作動させるOS(Operating System)や各種アプリケーションのプログラム、その他端末1の作動に必要なデータを記憶するものであり、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)、補助記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)等により構成される。アプリケーション(アプリケーションソフトウェア)には、Webサーバに接続してWebサイト(Webページ)の閲覧や操作等を可能とするブラウザが含まれる。
【0032】
通信部13は、ネットワーク3を介してサービス提供サーバ2とデータ通信を行うものである。
【0033】
表示部14は、各種の情報を表示するものであり、液晶ディスプレイ等により構成される。
【0034】
操作部15は、顧客が各種の入力を行うために操作されるものであり、キーボードやマウス等により構成される。なお、表示部14は、表示機能(出力機能)と入力機能とを兼ね備えたタッチパネルであってもよい。この場合、表示部14に表示されるボタンやアイコン、キーボード等が操作部15として機能する。
【0035】
[サービス提供サーバの構成]
次に、サービス提供サーバ2について説明する。サービス提供サーバ2は、本サーバ2にネットワーク3を介して接続される端末1の利用者(顧客)に対して、商品(印鑑等)の販売(ネット通販)やこれに付随する種々のサービスを提供する。このサービスには後述の実印準備サービスが含まれる。
【0036】
図1に示すように、サービス提供サーバ2は、処理部21、記憶部22及び通信部27等を含むコンピュータにより構成される。なお、図1では、サービス提供サーバ2が備える表示部及び操作部の図示を省略している。
【0037】
処理部21は、端末1と同様にCPU等により構成され、サービス提供サーバ2の作動を制御するための各種処理を実行するものである。処理部21のことを「制御部」ともいう。
【0038】
記憶部22は、端末1と同様にROM、RAM、HDD等により構成され、サービス提供サーバ2を作動させるOS(Operating System)や各種アプリケーションのプログラム、その他サービス提供サーバ2の作動に必要なデータを記憶するものである。
【0039】
通信部27は、ネットワーク3を介して当該サーバ2に接続された端末1やその他の装置等とデータ通信を行う。他の装置には、印鑑作成事業者側に設置されたサーバや印面彫刻装置(自動彫刻機)が含まれる。なお、印鑑作成事業者は、サービス提供事業者と同じ者であっても異なる者であってもどちらでもよい。
【0040】
サービス提供サーバ2は、クラウド型のサーバやオンプレミス型のサーバにより構成することができる。またサービス提供サーバ2は、複数存在していてもよいし、いわゆる仮想化されたサーバであってもよい。
【0041】
サービス提供サーバ2には、Webサイトの運営やサービスの提供等に必要な各種のデータ、プログラム等がインストールされ、記憶部22に記憶される。具体的には、図1に示すように、顧客情報データベース23、印影データベース24、擬似印影データベース25及び実印準備サービスプログラム26が記憶される。また記憶部22には、図1に示すものの他、Webサイトのページ(Webページ)を構成するデータ(コンテンツファイル等)や、印鑑(印影)の書体を構成するデータ(フォントファイル)、印面レイアウトを構成するデータ(印面レイアウトファイル)、その他の処理を実行するためのプログラム等が記憶される。
【0042】
なお、本実施形態では、Webサイトの運営、及び、データベース等の各種データの管理を、サービス提供サーバ2が担う構成としているが、Webサイトの運営を担うWebサーバと、各種データ管理を担う管理サーバとを別個に設けてもよい。
【0043】
顧客情報データベース23は、本システムによるサービスの提供を受ける者である顧客に関する情報(「顧客情報」ともいう。)を管理するデータベースである。本システムにより提供されるサービスには、本システムの利用者として会員登録を済ませた顧客に対してのみ提供されるサービス(「会員サービス」ともいう。)が含まれている。会員サービスの利用を希望する顧客は事前に会員登録を行う必要があり、会員サービスを初めて利用する顧客に対しては会員登録が求められる。
【0044】
会員登録は、例えば、本システムのWebサイトにアクセスした端末1(顧客端末)の表示部14に表示される会員登録画面(図示せず)の入力フィールドに会員登録に必要な情報を入力し、これをサービス提供サーバ2に送信することにより行うことができる。このとき入力(送信)される情報が顧客情報であり、入力された顧客情報が顧客情報データベース23に登録されて管理される。
【0045】
顧客情報には、ID、パスワード、氏名(漢字表記、仮名表記)、生まれ年、性別、メールアドレス、住所等、顧客を特定可能な情報が含まれる。ID及びパスワードは、会員サービスを利用する際に入力する認証情報(ログイン情報)でもある。なお、顧客情報の入力(会員登録)は原則1回行えばよく、一度登録された顧客情報は削除等されない限り、顧客情報データベース23に保存されたままとなる。
【0046】
印影データベース24は、標準的(一般的)な印影を示す印影画像(印影画像データ)を管理するデータベースである。本実施形態の印影データベース24で管理される印影画像は、実印の一般的な印面の仕様に基づくものとされており、いわば印影見本である。具体的には、印面形状が「円形」、書体が「篆書体」、印面レイアウト(文字の配置)が「縦書き」とされている。印影データベース24では、そうした仕様による印影画像が氏名(名字)別で管理されており、主要な名字のほとんどが網羅されている。なお、本実施形態で示す印面の仕様は一例であり、印影画像の基となる印面の仕様は任意に定めることができる。
【0047】
印影データベース24による印影画像の管理は、画像をデータベースに直接保存して行う方法や、所定のディレクトリに画像ファイルを保存してそのファイルパスをデータベースに保存して行う方法、印影画像により示される印影(印面)の構成データ(印面文字、文字数、書体等を示すデータ)をデータベースに保存して行う方法等を採ることができる。ここで、構成データは、例えば、印面文字「佐藤」、文字数「2」、書体「篆書体」、印面レイアウト「縦書き」といった印面構成を定める構成値であり、印面の仕様を定めるデータであるともいえる。このような構成データをデータベースに保存する場合、印影画像取得時に取得対象の構成データをデータベースから抽出してその抽出された構成データに基づいて印影画像を生成するプログラムが設けられる。
【0048】
擬似印影データベース25は、後述の実印準備サービスプログラム26を処理部21が実行することで生成される擬似印影画像(擬似印影画像データ)を管理するデータベースである。
【0049】
擬似印影画像は、印影データベース24から一の印影画像が取得されると、その取得された印影画像に似せて生成されるものであり、この生成された擬似印影画像が擬似印影データベース25に登録されて管理される。擬似印影データベース25による擬似印影画像の管理は、前述の印影データベース24による印影画像の管理と同様にして行うことができる。
【0050】
実印準備サービスプログラム26は、本システムにより提供される実印準備サービスを実行するためのプログラムである。
【0051】
処理部21は、サービス提供サーバ2にネットワーク3を介して接続された顧客端末(端末1)からの指示に基づいて実印準備サービスプログラム26を実行することが可能であり、実印準備サービスプログラム26にしたがって、図2に示す各手段211~215として機能する。
【0052】
取得手段211は、顧客が端末1を操作して実印準備の指示入力を行った場合、その指示入力を行った顧客の顧客情報を顧客情報データベース23から抽出し、その顧客情報に対応する印影画像(顧客により入力された顧客情報に対応する印影画像)を印影データベース24から取得する手段である。この取得手段211は本発明の「取得手段」の一例である。
【0053】
なお、実印準備の指示入力は、例えば、サービス提供サーバ2に接続して本システムにログインした端末1の表示部14に表示される会員サービスメニュー画面(図示せず)から「実印準備」を選択することにより行うことができる。
【0054】
擬似印影画像生成手段212は、取得手段211により取得された印影画像の疑似印影画像を生成する手段である。この擬似印影画像生成手段212のことを「第1生成手段」ともいう。
【0055】
登録手段213は、擬似印影画像生成手段212により生成された疑似印影画像を擬似印影データベース25に登録する手段である。この登録手段213は本発明の「登録手段」の一例である。
【0056】
実印作成用データ生成手段214は、顧客が端末1を操作して実印注文(実印作成)の指示入力を行った場合、その指示入力を行った顧客の擬似印影画像(擬似印影画像生成手段212により生成された擬似印影画像)に基づいて実印作成用データを生成する手段である。実印作成用データは本発明の「印鑑作成用データ」の一例であり、実印作成用データ生成手段214は本発明の「印鑑作成用データ生成手段」の一例である。実印作成用データ生成手段214(印鑑作成用データ生成手段)のことを「第2生成手段」ともいう。
【0057】
なお、実印注文は実印準備サービスに含まれるものであり、実印注文の指示入力は、例えば、サービス提供サーバ2に接続して本システムにログインした端末1の表示部14に表示される会員サービスメニュー画面(図示せず)から「実印注文」を選択することにより行うことができる。
【0058】
実印作成用データ生成手段214により生成される実印作成用データには、少なくとも、その生成の基となる擬似印影画像により示される印影(印面の仕様)を特定可能な情報(「印面情報」ともいう。)が含まれる。印面情報は、例えば、印面の文字や書体(字体)、文字の配置、バランス等、印面の内容を特定することができる情報である。
【0059】
実印作成用データ出力手段215は、実印作成用データ生成手段214により生成された実印作成用データを所定の外部装置に対して出力する手段である。実印作成用データの出力先となる外部装置は、例えば、サービス提供サーバ2と接続可能な印鑑作成事業者側のサーバや印面彫刻装置(自動彫刻機)である。
【0060】
実印作成用データ出力手段215により出力された実印作成用データが外部装置に入力すると、その外部装置に入力した実印作成用データに基づいて実印が作成され、この作成された実印が顧客に提供される。
【0061】
[実印準備サービス]
次に、本システムにより提供される実印準備サービスについて説明する。実印準備サービスは会員サービスの一種であり、顧客が自身の実印を簡単に注文できるよう、その実印の作成(印鑑作成)に必要な情報(擬似印影画像、実印作成用データ)を事前に用意(準備)しておくものである。
【0062】
実印準備サービスの提供にあたり、サービス提供サーバ2の処理部21は、実印準備サービスプログラム26にしたがって実印準備処理(S100)および実印注文処理(S200)を実行する。以下、図3および図4に示すフローチャートを用いて、実印準備処理(S100)および実印注文処理(S200)について説明する。なお、本明細書においてS100等の「S」(フローチャート中の「S」)はステップを意味する。
【0063】
[実印準備処理]
処理部21は、サービス提供サーバ2に接続された端末1から実印準備の指示入力を受けると、図3に示す実印準備処理(S100)を実行する。同図に示すように、実印準備処理(S100)ではまず、実印準備の指示入力を行った顧客の顧客情報を顧客情報データベース23から抽出する(S101)。
【0064】
顧客情報の抽出(S101)は、実印準備サービス(会員サービス)の利用に際して顧客が入力した認証情報(ID及びパスワード)に基づいて顧客情報データベース23内を検索することにより行われる。なお、該当の顧客情報が抽出されなかった場合には、実印準備の指示入力を行った顧客に対し会員登録を促すメッセージを端末1に送信して該端末1の表示部14に表示させ、実印準備処理(S100)を終える。
【0065】
次いでS103では、S101で抽出した顧客情報に対応する印影画像を印影データベース24から取得する(S103)。例えば、顧客情報に含まれる顧客の名字が「佐藤」である場合、図5(A)に示す印影画像が取得される。同図に示す印影画像は、印面文字が「佐藤」、書体が「篆書体」である場合の印影画像の一例である。S103の処理は、処理部21が取得手段211として機能することによるものである。
【0066】
次いでS105では、S103で取得した印影画像の擬似印影画像を生成する(S105)。S105の処理は、処理部21が擬似印影画像生成手段212として機能することによるものである。
【0067】
本実施形態では、S105による擬似印影画像の生成を、GAN(Generative Adversarial Networks:敵対的生成ネットワーク)を用いて行うものとしている。すなわち、本実施形態の擬似印影画像生成手段212は、GANを用いて印影画像の擬似印影画像を生成する機能を備えている。
【0068】
ここで、GANの基本構造について説明する。GANは生成モデルの一種であり、「教師なし学習」を基本とするものである。図6に示すように、GANは2つのニューラルネットワークで構成され、そのうちの1つは生成器(Generator)500であり、もう1つは識別器(Discriminator)501である。
【0069】
生成器500は、生成データの特徴の種に相当するランダムノイズや潜在変数と呼ばれる乱数(以下、単に「ノイズ」という。)を入力とし、このノイズを所望のデータに近づけるようにマッピングして、偽物のデータ(Fake)を生成する。識別器501は、生成器500により生成された偽物のデータ(Fake)と、本物のデータ(Real)との何れかを入力として受け取り、その受け取ったデータが偽物であるか本物であるかを出力値として判定(真偽判定)する。出力値は、偽物である場合を「0」、本物である場合を「1」として、その確率を連続値として返すようにする。これに対し生成器500は、生成した偽物のデータに対する識別器501の出力が「1」に近づくように、偽物のデータを生成する。こうした偽物のデータの生成と真偽判定とを交互に繰り返すことで2つのネットワークを競合させて学習を進めることで、生成器500は本物のデータに近い偽物のデータを生成できるようになる。
【0070】
本実施形態では、こうしたGANの基本構造を利用して擬似印影画像を生成するものとしている。すなわち、図6中、本物のデータがS103で取得した「印影画像」に相当し、これに似せて生成される偽物のデータが「擬似印影画像」に相当する。そして、2つのネットワークを競合させて学習を進めるなか、生成器500により生成される擬似印影画像(偽物のデータ)が識別器501により本物と判定される確率が、予め定められた確率(閾値)を上回るようになった場合、このときの擬似印影画像(偽物のデータ)を今回の生成対象、すなわち、S103で取得した印影画像の擬似印影画像として確定させる(S105)。この確定させた擬似印影画像がS105の処理結果である。
【0071】
つまり、本実施形態の擬似印影画像生成手段212は、2つのニューラルネットワーク(生成器500と識別器501)を備え、実印準備の指示入力(印鑑準備指示入力)に基づいて所定のノイズデータ(例えばノイズ画像データ)をランダムに生成して該ノイズデータを第1のニューラルネットワーク(生成器500)に入力し、これを契機に第1のニューラルネットワーク(生成器500)で生成される画像と、印影データベース24から取得された顧客の印影画像とを、第2のニューラルネットワーク(識別器501)に交互に入力して真偽判定を行い、該真偽判定の結果、生成された画像が所定条件を満たした場合(例えば、本物と判定される確率が所定確率(閾値)よりも大きい場合)、その画像を擬似印影画像として生成を終えるように構成されている。
【0072】
S105の処理により生成(確定)された擬似印影画像は、実印準備の指示入力を行った顧客の端末1(表示部14)に表示される(表示手段)。これにより顧客は準備される実印の印影を確認することができる。
【0073】
図5(B)に擬似印得画像の一例を示す。同図に示す擬似印影画像(偽物)は、図5(A)に示す印影画像(本物)に似せて生成されたものであり、印影画像(本物)と比較して、図5(B)中の破線で示すポイント1~4に若干の差異があるだけである。
【0074】
このように、GANを用いて擬似印影画像を生成する構成では、生成器500に入力するノイズ(初期値)にランダム性を持たせることで、生成される擬似印影画像にもランダム性が生まれる。すなわち、実印準備の指示入力に基づく実印準備処理(S100)が実行される(つまり、生成器500にノイズが入力される)たびに、S105の処理により異なる擬似印影画像が生成されることになる。これにより、顧客ごとに独自性のある擬似印影画像(顧客独自の擬似印影画像)を容易に生成することが可能となる。
【0075】
なお、生成器500が生成した擬似印影画像をS105の処理結果として確定させる基準となる前述の閾値、すなわち、識別器501が擬似印影画像(偽物)を本物と判定する確率の閾値(所定確率)は予め任意に定めることができ、閾値をどのように定めるかによって、擬似印影画像を印影画像にどの程度まで似せるのかを調整することができる(類似度の調整)。また例えば、実印準備の指示入力に基づく実印準備処理(S100)を実行するごとに、その閾値をプログラムでランダムに設定するように構成することができる(閾値設定手段)。この場合、擬似印影画像の類似度を固定化せず変化し得るものとすることができ、これにより、生成される擬似印影画像の独自性をより高めることが可能となる。
【0076】
以上のようにして擬似印影画像を生成したら(S105)、その生成した擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録して(S107)、実印準備処理(S100)を終える。S107の処理は、処理部21が登録手段213として機能することによるものである。
【0077】
S107では、今回の実印準備処理(S100)の実行契機となる実印準備の指示入力を行った顧客の顧客情報と連付けて擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録する。後述の実印注文処理(S200)で、実印注文の指示入力を行った顧客の擬似印影画像を取得可能とするためである。
【0078】
[実印注文処理]
処理部21は、サービス提供サーバ2に接続された端末1から実印注文の指示入力を受けると、図4に示す実印注文処理(S200)を実行する。同図に示すように、実印注文処理(S200)ではまず、実印注文の指示入力を行った顧客の顧客情報を顧客情報データベース23から抽出する(S201)。
【0079】
顧客情報の抽出(S201)は、実印準備サービス(会員サービス)の利用に際して顧客が入力した認証情報(ID及びパスワード)に基づいて顧客情報データベース23内を検索することにより行われる。なお、該当の顧客情報が抽出されなかった場合には、実印注文の指示入力を行った顧客に対し会員登録を促すメッセージを端末1に送信して該端末1の表示部14に表示させ、実印注文処理(S200)を終える。
【0080】
次いでS203では、S201で抽出した顧客情報に対応する擬似印影画像(擬似印影画像データ)を擬似印影データベース25から取得する(S203)。例えば、顧客情報に含まれる顧客の名字が「佐藤」である場合、図5(A)に示す印影画像に似せて生成された、図5(B)に示す擬似印影画像(S105で生成された擬似印影画像)が取得される。なお、該当の擬似印影画像が取得されなかった場合には、実印注文の指示入力を行った顧客に対し擬似印影画像の準備(実印準備の指示入力)を促すメッセージを端末1に送信して該端末1の表示部14に表示させ、実印注文処理(S200)を終える。
【0081】
次いでS205では、S203で取得した擬似印影画像(つまり、S105で生成された擬似印影画像)に基づいて実印作成用データを生成する(S205)。S205の処理は、処理部21が実印作成用データ生成手段214として機能することによるものである。実印作成用データは、S203で取得した擬似印影画像(擬似印影画像データ)により示される印影を得ることができる印面を特定可能な情報(印面情報)を含むものである。
【0082】
次いでS207では、S205で生成した実印作成用データを、該実印作成用データの出力先となる所定の外部装置へ出力する(S207)。S207の処理は、処理部21が実印作成用データ出力手段215として機能することによるものである。
【0083】
前述したように、実印作成用データの出力先となる外部装置は、例えば、サービス提供サーバ2と接続可能な印鑑作成事業者側のサーバや印面彫刻装置(自動彫刻機)である。S207で出力された実印作成用データが外部装置に入力することで、今回の実印注文が印鑑作成事業者に受け付けられ、その実印作成用データに基づいて、実印注文を行った顧客の実印が作成されることとなる。
【0084】
なお、S205で生成される実印作成用データは、S207での出力先となる所定の外部装置が読み取り可能なデータとして生成される。
【0085】
[実施形態の作用効果]
以上に説明した実施形態のシステムによれば、顧客により入力された当該顧客に関する情報(顧客情報)に基づいて、その顧客に対応する印影画像が印影データベース24から取得され(S103)、この取得された印影画像の擬似印影画像が生成される(S105)。そして、生成された擬似印影画像は擬似印影データベース25に登録され(S107)、その擬似印影画像に基づいて、印面情報を含む実印作成用データが生成される(S205)。この生成された実印作成用データが実印の作成に用いられ、該実印作成用データに基づいて顧客の実印が作成される。
【0086】
このように、印影画像ではなく擬似印影画像に基づいて生成された実印作成用データを用いて実印を作成するようにすることで、印影画像の示す印影(標準的な印影、印影見本)がそのまま得られるのではない独自性のある実印(非画一的な実印、印影)を顧客に提供することが可能となる。
【0087】
特に本実施形態では、擬似印影画像生成手段212(S105)による擬似印影画像の生成を、GANを用いて行うものとしている。このため、実印準備サービスを利用する顧客からの指示に基づく実印準備処理(S100)を実行するたびに異なる擬似印影画像を生成することが可能となり、これにより顧客ごとに異なる実印作成用データを生成することが可能となる。このことは、同姓の顧客からの指示に基づき実印準備処理(S100)を実行する場合において同様である。つまり、実印準備サービスを利用する顧客のなかに同姓の者が居るとしても、その顧客ごとに異なる擬似印影画像及び実印作成用データを生成することが可能となる。これにより、作成される実印の独自性を担保して、顧客独自の実印であることの信憑性を高めることが可能となる。特に、GANにより生成された擬似印影画像に基づく実印作成用データを用いて実印が作成されることを顧客に訴求することで、実印作成に用いられる印影画像(印影画像データ)の流用や印影の画一化等の懸念を払拭し、顧客に安心感を与えることが可能となる。
【0088】
また、GANにより生成された擬似印影画像に基づく実印作成用データを用いて作成される実印は、手彫りの実印に匹敵する独自性(非画一性)を有しているといえる。このため、GANにより生成された擬似印影画像に基づく実印作成用データを印面彫刻装置(自動彫刻機)に出力して印面を作成することで、顧客独自の実印を機械彫りで作成して、短期間で顧客に提供することが可能となる。つまり、擬似印影画像の生成にGANを用いることは、特に、独自性(非画一性)が求められる実印を機械彫りで作成して短期間で顧客に納めるのに効果的である。
【0089】
また、生成された擬似印影画像は擬似印影データベース25で管理されるので、擬似印影画像で示される印影が得られる実印(印鑑)の作成や販売等を顧客からの注文(実印注文の指示入力)に応じて簡便に行うことが可能となる。
【0090】
以上、実施形態に係るシステムについて説明したが、本システムは適宜改良を付加することが可能である。以下、改良を付加した変形例について説明する。
【0091】
[変形例1]
上記実施形態では、擬似印影画像生成手段212(S105)により生成された擬似印影画像を一律に擬似印影データベース25に登録するものとしていた。これに対し変形例1は、擬似印影画像生成手段212(S105)により新たに生成された擬似印影画像が、これより前に生成されて擬似印影データベース25に登録されている擬似印影画像(生成済の擬似印影画像)と同一又は類似であるか否かを判定し、同一又は類似でない場合、新たに生成された擬似印影画像をそのまま擬似印影データベース25に登録し、同一又は類似である場合、この同一又は類似を解消するための変更を新たに生成された擬似印影画像に加えて、その変更後の擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録するものである。
【0092】
ここで、GANにより生成される擬似印影画像は、基本的には、実印準備処理(S100)が実行される(S105が実行される)たびに異なるので、過去に生成された擬似印影画像と同一のものが生成される可能性は低いと考えられるが、その可能性が完全にゼロになるとは限らないとも考えられる。また例えば、実印準備の指示入力を行った顧客が他人であるものの同姓である場合、GANにより生成された擬似印影画像同士が類似する可能性も考えられる。このような事情を考慮して、実印準備サービスを利用して作成される実印の独自性を高める(担保する)ために、変形例1の構成をとることができる。
【0093】
図7は変形例1の実印準備処理(S100)のフローチャートであり、図3に置き換わるものである。図7に示す変形例1の実印準備処理(S100)のうち、S101~S105及びS107の処理は上記実施形態と同様である。これに加え、変形例1の実印準備処理(S100)では、S105で擬似印影画像が生成されると、次いで、その生成された擬似印影画像が、そのとき既に擬似印影データベース25に登録(管理)されている擬似印影画像と同一又は類似であるか否かを判定する(S106)。このS106の処理は、実印準備サービスプログラム26にしたがって処理部21が判定手段(図示せず)として機能することによるものである。
【0094】
変形例1の実印準備サービスプログラム26には、S105で新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベース25に登録されている擬似印影画像(過去に生成済の擬似印影画像)と同一又は類似であるか否を判定する制御(判定プログラム)が組み込まれ、これに基づいて同一又は類似についての判定(類似度判定)が行われる。同一又は類似であるか否の判定条件(類似度判定条件)は予めプログラミングされるものであり、例えば、判定対象となる各擬似印影画像(画像データ)の特徴量に差異がなければ同一と判定され、差異があるもののその差異が予め定められた基準量以下であれば類似と判定される。こうした同一又は類似の判定(類似度判定)は、例えば、印影(印面)を構成する文字や書体の類似度をプログラムにより計算して行うことができる。
【0095】
そして、S106で同一又は類似でないと判定した場合(S106でNO)、S105で生成された擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録して(S107)、実印準備処理(S100)を終える。
【0096】
一方、S106で同一又は類似であると判定した場合(S106でYES)、S105で生成された擬似印影画像に対して変更を加える変更処理を実行する(S108)。このS108の処理は、実印準備サービスプログラム26にしたがって処理部21が変更手段(図示せず)として機能することによるものである。
【0097】
変形例1の実印準備サービスプログラム26には、S105で新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベース25に登録されている擬似印影画像(過去に生成済の擬似印影画像)と同一又は類似である場合、その生成された擬似印影画像に変更を加える制御(変更プログラム)が組み込まれ、これに基づいて変更処理(S108)が行われる。変更処理により擬似印影画像に対して加える変更内容は予めプログラミングされるものであり、例えば、新たに生成された擬似印影画像により示される印影を構成する文字のうち特徴が表れやすい部分(特徴点)の線の太さや傾き、印影を構成する文字の大きさや配置、バランス等を変更の対象(変更内容)とすることができる。この場合、例えば、印影を構成し得る文字について特徴点が何であるのかを、顧客等を対象とするアンケート等によりサービス提供事業者が事前に調査しておき、その調査結果を変更処理(変更プログラム)に反映させてもよい。こうすれば、変更後の擬似印影画像に基づいて生成された実印作成用データを用いて作成される実印の印影に対し顧客が違和感を覚えにくくすることができ、また、市場のトレンドに即した実印を提供(作成)することが可能となる。
【0098】
S108による変更処理は、変更後の擬似印影画像(変更処理を施した擬似印影画像)が、既に擬似印影データベース25に登録されている擬似印影画像と同一又は類似でないと判定されるまで行われる。そして、変更後の擬似印影画像について、S106で同一又は類似でないと判定した場合(S106でNO)、その変更後の擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録して(S107)、実印準備処理(S100)を終える。
【0099】
以上の変形例1によれば、新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベース25に登録(管理)されている擬似印影画像(生成済の擬似印影画像)と同一又は類似でない場合(S106でNO)、その新たに生成された擬似印影画像は擬似印影データベースに登録されて管理される(S107)。そして、擬似印影データベースに登録された擬似印影画像に基づいて実印作成用データが生成される(S205)。このため、過去に生成した擬似印影画像と同一又は類似の擬似印影画像に基づく実印作成用データ、すなわち、過去に生成した実印作成用データと同一又は類似の実印作成用データが生成されるのを防ぐことができる。これにより、作成される実印(生成される実印作成用データ)の独自性を担保しやすくすることができる。
【0100】
また、新たに生成された擬似印影画像が、既に擬似印影データベース25に登録(管理)されている擬似印影画像(生成済の擬似印影画像)と同一又は類似である場合(S106でYES)、この同一又は類似を解消するための変更が、新たに生成された擬似印影画像に加えられる(S108)。そして、変更後の擬似印影画像が擬似印影データベースに登録される(S107)。このため、過去に生成した擬似印影画像と同一又は類似の擬似印影画像が新たに生成されたとしても、その同一又は類似を解消した上で、実印作成用データの生成に供することができる。これにより、生成された擬似印影画像が無駄になるのを防ぐことができる。
【0101】
[変形例2]
上記実施形態では、擬似印影画像生成手段212(S105)により生成された擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録するものとしていた。これに対し変形例2は、擬似印影画像生成手段212(S105)により生成された擬似印影画像を、擬似印影データベース25だけでなく、印影データベース24にも登録するものである。
【0102】
すなわち、上記実施形態及び/又は変形例1の実印準備処理(S100)において、擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録する際(S107)、その擬似印影画像を印影データベース24にも登録する。印影データベース24への擬似印影画像の登録に際しては、その擬似印影画像の生成の由来となった印影画像(登録されている印影画像)を更新(上書き)する形で登録してもよいし、その由来となった印影画像とは別に追加する形で登録してもよい。
【0103】
このように、擬似印影画像生成手段212(S105)により生成された擬似印影画像を印影データベース24に登録する処理は、実印準備サービスプログラム26にしたがって処理部21が更新登録手段(図示せず)として機能することによるものである。
【0104】
以上の変形例2によれば、擬似印影画像が生成されると、その生成された擬似印影画像が印影データベース24に登録され、印影画像(印影見本)として管理される。このため、過去に生成された擬似印影画像が印影データベース24に登録されて印影画像として管理されるようになった後、その擬似印影画像由来の印影画像が印影データベース24から取得され、この取得された印影画像の擬似印影画像が新たに生成された場合、この新たに生成された擬似印影画像が、今回取得された印影画像の由来である擬似印影画像と同一になることはない。これにより、過去に生成した擬似印影画像と同一又は類似の擬似印影画像が新たに生成されることのないようにして、作成される実印(生成される実印作成用データ)の独自性を担保しやすくすることができる。
【0105】
なお、変形例2において、印影データベース24に登録されている一の印影画像(例えば、図5(A)に示す印影画像)について、擬似印影画像の生成及び印影データベース24への擬似印影画像の登録が所定の複数回(例えば100回)行われた場合、これより後は、その一の印影画像の擬似印影画像が生成されるのを制限するようにしてもよい(制限手段)。こうすれば、一の印影画像について擬似印影画像が何度も生成される(印影データベース24に登録される)ことで、新たに生成される擬似印影画像が、その生成の基となる印影画像と似なくなってしまう(類似度が低くなりすぎる)のを防ぐことができる。つまり、印影画像と似なくなってしまうのは、もはや擬似印影画像とはいえないので、これを避けるために、一の印影画像についての擬似印影画像の生成回数を制限する機能(制限手段)を設けるのである。
【0106】
以上、本発明の実施形態および変形例1,2を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
例えば、上記実施形態では、実印準備の指示入力に基づく実印準備処理(S100)において、生成された擬似印影画像を擬似印影データベース25に登録するまでの処理を行い、実印注文の指示入力に基づく実印注文処理(S200)において、擬似印影データベース25に登録されている擬似印影画像を取得してこれに基づく実印作成用データを生成する処理を行うものとしていた。
【0108】
これに対し、実印準備処理(S100)において、S105で生成された擬似印影画像に基づいて実印作成用データを生成する処理を行うようにしてもよい。この場合、実印作成用データ(印鑑作成用データ)を管理する実印作成用データベース(印鑑作成用データベース)をサービス提供サーバ2に設け、擬似印影画像に基づいて生成した実印作成用データを実印作成用データベースに登録する処理を実印準備処理(S100)内で行うように構成する。そして、その後の実印注文処理(S200)において、実印注文の指示入力を行った顧客の実印作成用データを実印作成用データベースから取得し、この取得した実印作成用データを出力するように構成する。このような構成によっても本発明は実現可能である。
【0109】
なお、実印作成用データベース(印鑑作成用データベース)を設け、当該データベースで実印作成用データ(印鑑作成用データ)を管理する場合、擬似印影データベース25を必ずしも設けなくてもよい。実印作成用データ(印鑑作成用データ)は擬似印影画像に基づいて生成されるものであり、実印作成用データ(印鑑作成用データ)をデータベースで管理することは、擬似印影画像をデータベースで管理することと実質的に同じだからである。
【0110】
また上記実施形態では、サービス提供サーバ2に印影データベース24と擬似印影データベース25とを設け、印影画像と擬似印影画像とを別々のデータベースで管理するものとしていたが、印影画像と擬似印影画像とを一のデータベースで管理するようにしてもよい。つまり、印影データベース24と擬似印影データベース25とを一のデータベースとして構成してもよい。
【0111】
また上記実施形態では、印影データベース24で管理される印影画像(印影見本)に関し、その印影画像の基となる印面の仕様を、印面形状「円形」、書体「篆書体」、印面レイアウト「縦書き」の1パターンとしていたが、例えば、「篆書体」に加えて「印相体」等の他の書体を選択可能に設けるなどして、印影画像(印影見本)のバリエーションを増やしてもよい。
【0112】
また印影データベース24において、市場や実印準備サービスでの実印選びの傾向を考慮して、氏名(名字)・年齢(年代)・性別ごとに選択されやすいと思われる(人気のある)印影画像を管理するようにしてもよい。こうすれば、実印準備サービスを利用する顧客が実印準備の指示入力を行った際、その顧客に適した印影画像を印影データベース24から取得して、その印影画像を由来として擬似印影画像及び実印作成用データを生成することが可能となり、その結果、顧客に適した実印を提供することが可能となる。
【0113】
また、市場や実印準備サービスでの実印選びの傾向を蓄積してこれを基に統計データを生成することが可能な統計データベースをサービス提供サーバ2に設け、印影データベース24と統計データベースとを連携させるようにしてもよい。統計データは、例えば、顧客の生まれ年(年齢)ごとの書体の選択率、性別ごとの書体の選択率、氏名(名字)ごとの書体の選択率等、印影(印面)を構成する文字の書体に関する統計データとすることができる。そして、例えば、顧客が実印準備の指示入力を行った際、その顧客の顧客情報を基に当該顧客の氏名(名字、文字数)、生まれ年(年齢)、性別等から導き出される書体の統計データを統計データベースから取得し、その取得した統計データに見合った印影画像を印影データベース24から取得するように構成することができる。これによっても、顧客に適した印影画像を印影データベース24から取得することが可能となり、その結果、顧客に適した擬似印影画像及び実印作成用データを生成して、顧客に適した実印を提供することが可能となる。
【0114】
また上記実施形態では、実印作成用データ生成手段214(S205)により生成される実印作成用データは印面情報を含むものとしていたが、実印作成用データには、印面情報の他、S201で抽出される顧客情報のうち「性別」や「生まれ年」に基づく情報を含めることができる。具体的には、例えば、顧客の性別が「男性」である場合には印面サイズを「18mm」に設定し、「女性」である場合には印面サイズを「15mm」に設定する等、印面サイズを特定(設定)するための情報(印面サイズ情報)を含めることができる。また例えば、顧客の「生まれ年」によって最適な印鑑(実印)の素材(例えば、牛角白や黒水牛、薩摩本つげ等)を特定(設定)するための情報(印材情報)を含めることができる。このように、印面情報に加えて、印面サイズ情報や印材情報を実印作成用データに含めることで、作成される実印の独自性をより高めることが可能となる。
【0115】
また上記実施形態では、実印準備処理(S100)のS105で生成された擬似印影画像を顧客の端末1(表示部14)に表示するものとしていたが、表示しないようにしてもよい。こうすれば、実印準備サービスで準備される実印の印影が第三者の目に触れるリスクをなくして、実印(印影)の偽造防止を図ることが可能となる。また、S105で生成された擬似印影画像を表示しない(非表示とする)代わりに、S103で取得された印影画像(印影見本)を顧客の端末1(表示部14)に表示するようにしてもよい(表示手段)。準備される実印の印影を顧客がイメージしやすくすることができるからである。この場合、端末1(表示部14)に表示される印影画像は、実際に準備(作成)される実印の印影ではないので、前述のリスクはない。
【0116】
また上記実施形態では、擬似印影画像生成手段212(S105)による擬似印影画像の生成にGANを利用するものとしていたが、GANを利用せずに擬似印影画像を生成するようにしてもよい。つまり、擬似印影画像生成手段212(S105)による擬似印影画像の生成はGANによる画像生成に限定されない。
【0117】
例えば、実印準備処理(S100)のS103で取得した印影画像(例えば図5(A)を参照)に対して何らかの変更を加える手段を設け、その変更を加えた印影画像(変更後の印影画像)を擬似印影画像とするようにしてもよい。この変更を加える手段は、例えば、上記変形例1の変更処理(S108)と同じ要領で構成することができる。すなわち、S103で取得した印影画像に変更を加えてその変更後の印影画像を擬似印影画像として生成する制御(変更生成プログラム)を実印準備サービスプログラム26に組み込み、これに基づいて擬似印影画像生成処理(S105)を行うように構成することができる。
【0118】
この場合、S103で取得した印影画像に対して加える変更内容は予めプログラミングすることができ、例えば、取得した印影画像により示される印影を構成する文字のうち特徴が表れやすい部分(特徴点)の線の太さや傾き、印影を構成する文字の大きさや配置、バランス等を変更の対象(変更内容)とすることができる。但し、変形例1の変更手段は同一又は類似を解消するための変更を加えるものであったが、ここでの変更は、S103で取得した印影画像に類似した画像(擬似印影画像)を生成するための変更である。すなわち、S103で取得した印影画像と、変更後の印影画像(擬似印影画像)とが、類似の範囲内に収まるように変更を加えるものである(例えば、図5(A)、(B)の関係を参照)。そのような変更により擬似印影画像を生成する制御(変更生成プログラムによる擬似印影画像の生成)では、取得した印影画像と、変更後の印影画像(擬似印影画像)との類似度があまりにも低くならないように両画像の類似度判定を行うことに留意する必要がある。
【0119】
また上記実施形態では、実印準備サービスを例に説明したが、当該サービスで準備の対象(擬似印影画像及び印鑑作成用データの生成対象)とされる印鑑の用途(種類)は実印に限られず、銀行印や認印、法人印など、その用途・種類は問わない。
【0120】
また、対象の印鑑(実印等)が電子印鑑である場合、擬似印影画像に基づいて生成される印鑑作成用データをもとに電子印鑑が作成される。この場合、電子印鑑として使用可能なデータ(印影イメージデータ)が印鑑作成用データに基づいて作成され、その印影イメージデータが電子印鑑として提供される。
【符号の説明】
【0121】
1 端末、2 サービス提供サーバ、3 ネットワーク、11 処理部、12 記憶部、13 通信部、14 表示部、15 操作部、21 処理部、22 記憶部、23 顧客情報データベース、24 印影データベース、25 擬似印影データベース、26 実印準備サービスプログラム、27 通信部、211 取得手段、212 擬似印影画像生成手段、213 登録手段、214 実印作成用データ生成手段、215 実印作成用データ出力手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7