(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102322
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220630BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B60R11/02 M
H04R1/02 107
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216986
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】516293451
【氏名又は名称】豊通オートモーティブクリエーション 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本家 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉将
【テーマコード(参考)】
3D020
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC01
3D020BD03
3D020BD05
5D017BC01
(57)【要約】
【課題】外面部における防水性の低下を抑制しつつ音声による操作を可能にした車両を提供する。
【解決手段】車両10は、車両10の外面部を構成する表面及び該表面とは反対側の裏面を有する金属製の外板であるアウターパネル50と、アウターパネル50の裏面に接触した状態で取り付けられていてアウターパネル50の振動を電気信号に変換する第1圧電振動マイク90と、車両10の内部に設けられていて第1圧電振動マイク90から出力された出力信号が入力される電子制御装置85とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面部を構成する表面及び該表面とは反対側の裏面を有する金属製の外板と、
前記裏面に接触した状態で取り付けられていて前記外板の振動を電気信号に変換する圧電振動マイクと、
車両の内部に設けられていて前記圧電振動マイクから出力された出力信号が入力される電子制御装置とを備える車両。
【請求項2】
金属製のアウターパネル、及び該アウターパネルの車両内側に設けられた金属製のインナーパネルを有するドアを備え、
前記外板は、前記アウターパネルであり、
前記圧電振動マイクは、前記アウターパネルの前記裏面に接触した状態で前記アウターパネルと前記インナーパネルとによって区画される空間に収容されている
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ドアとして、助手席のドアである第1ドアと、前記助手席の後ろの席であって車両左側に位置する左後部座席のドアである第2ドアとを含み、
前記第1ドアの前記アウターパネルは、前記インナーパネルと接合される周縁部と、該周縁部よりも中央側に設けられて平坦板状に形成された平坦部とを含み、
前記第1ドアは、車両前後方向における前側の端部である前端部と、該前端部に設けられたヒンジとを有し、該ヒンジを中心として回転移動する片開きドアであり、
前記第2ドアは、アクチュエータの駆動によってスライド移動するスライドドアであり、
前記圧電振動マイクは、前記第1ドアにおける前記平坦部の裏面に取り付けられており、
前記車両は、前記圧電振動マイクと前記電子制御装置とを接続する配線を有し、
前記配線は、前記第1ドアの前記前端部を通って前記車両の内部に設けられている前記電子制御装置に接続されており、
前記電子制御装置は、前記圧電振動マイクから出力された前記出力信号に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御して前記第2ドアをスライド移動させる
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1ドアに組付けられた窓を備え、
前記第1ドアにおける前記インナーパネルには、前記アウターパネルと前記インナーパネルとによって区画される前記空間にアクセスするためのサービスホールが設けられ、
前記サービスホールは、前記第1ドアの車両前後方向の中間位置よりも前側に配置され、
前記圧電振動マイクは、前記第1ドアの車両前後方向の中間位置よりも前側に配置されているとともに、前記窓が該第1ドア内に収納された状態において該窓と接触しない位置に配置されている
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
車両後部に設けられたバックドアと、
前記バックドアが開閉する開口部を構成するピラーとを備え、
前記ピラーは、金属板材からなるピラーアウタ、及び該ピラーアウタの車両内側に設けられたピラーインナを有し、
前記外板は、前記ピラーアウタであり、
前記圧電振動マイクは、前記ピラーアウタの前記裏面に接触した状態で取り付けられている
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両には、電子制御装置と、電子制御装置から送信された制御信号に基づきドアを開閉させるアクチュエータとが搭載されている。また、車両には、Bピラーの外面部にマイクロホンが取り付けられている。マイクロホンは、車外にいるユーザが発した音声、すなわち空気振動を電気信号に変換して電子制御装置に出力する。特許文献1に記載の車両では、マイクロホンから出力された電気信号に基づいて電子制御装置がアクチュエータの駆動を制御することで、ユーザの音声によるドアの開閉操作を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両では、マイクロホンは車両の外面部に露出して設けられており、電子制御装置は車両の内部に設けられている。こうした構成では、電気信号を送受信するための配線をマイクと電子制御装置との間で引き回すために、車両の外面部に開口等を形成する必要が生じる。そのため、車両の防水性が低下する虞がある。特許文献1に記載の車両では、この点については考慮されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、外面部における防水性の低下を抑制しつつ音声による操作を可能にした車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両は、車両の外面部を構成する表面及び該表面とは反対側の裏面を有する金属製の外板と、前記裏面に接触した状態で取り付けられていて前記外板の振動を電気信号に変換する圧電振動マイクと、車両の内部に設けられていて前記圧電振動マイクから出力された出力信号が入力される電子制御装置とを備える。
【0007】
上記構成では、車両における外板の裏面に圧電振動マイクを取り付けている。そのため、圧電振動マイクが車両の外部に露出した状態とはならず、圧電振動マイクから車両の内部に設けられた電子制御装置へ配線を引き回すための開口を外面部に形成する必要がない。
【0008】
また、ユーザが発した音声は、空気振動として伝わり外板を振動させる。圧電振動マイクは、外板の振動を電気信号に変換することで車外にいるユーザの音声情報を取得する。そのため、圧電振動マイクへ空気振動を伝達させるための開口を外板に形成する必要もない。
【0009】
このように、外板に開口を形成することなく圧電振動マイクから電子制御装置へユーザの音声情報を入力することができる。したがって、上記構成によれば、外面部における防水性の低下を抑制しつつ音声による操作を可能にした車両を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外面部における防水性の低下を抑制しつつ音声による操作を可能にした車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】第1ドアにおけるインナーパネルの構成を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
車両の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1に示すように、車両10は、車両前後方向における前側に設けられたフロントフェンダパネル11を有している。フロントフェンダパネル11には、上方へ延びる第1ピラー12が接続されている。第1ピラー12の上端部にはルーフパネル13が接続されている。ルーフパネル13は車両後方に延びている。ルーフパネル13の後端部には、下方へ延びる第2ピラー20が接続されている。第2ピラー20の下端部には、リアフェンダパネル14が接続されている。
【0013】
フロントフェンダパネル11とリアフェンダパネル14との間、すなわち第1ピラー12と第2ピラー20との間には、乗員が車両10へ乗降するためのドアが配置されている。車両10の左側部には、助手席のドアである第1ドア30と、第1ドア30よりも車両後方に配置された第2ドア70とが設けられている。第2ドア70は、助手席の後ろの席であって車両左側に位置する左後部座席のドアである。なお、図示を省略しているが、車両10の右側部には、運転席のドアである第3ドアと、第3ドアの車両後方に配置された第4ドアとが設けられている。第4ドアは、運転席の後ろの席であって車両右側に位置する右後部座席のドアである。
【0014】
図1に示すように、車両10の後部には、リアフェンダパネル14に接続されているリアバンパ15が設けられている。リアバンパ15と第2ピラー20との間にはテールライト16が設けられている。車両10の後部には、ルーフパネル13、第2ピラー20、リアバンパ15、及びテールライト16によって構成された開口部10Aが設けられている。車両10には、車両後部に設けられた開口部10Aを開閉するバックドア75が設けられている。バックドア75は、その上端部を中心として車両10上方へ回転移動する。すなわち、バックドア75は、跳ね上げ式の公知のドア構造を有している。
【0015】
これらフロントフェンダパネル11、第1ピラー12、ルーフパネル13、第2ピラー20、リアフェンダパネル14、第1ドア30、第2ドア70、第3ドア、第4ドア、リアバンパ15、テールライト16、及びバックドア75の表面は、車両10の外面部を構成している。すなわち、これら各部材において上記表面を構成する各板が外板に対応する。
【0016】
図2に示すように、第1ドア30は、本体部31と、該本体部31よりも上方に設けられた窓枠32とを有している。窓枠32には、例えばガラスからなる窓40が組付けられている。第1ドア30の本体部31は、車両前後方向における前側(
図2の左側)の端部である前端部31Aと、車両前後方向における後側(
図2の右側)の端部である後端部31Bと、前端部31A及び後端部31Bの間に位置する中央部31Cとを有している。第1ドア30は、前端部31Aに設けられたヒンジ45を有している。ヒンジ45は、前端部31Aにおいて上側の部分に設けられた第1ヒンジ45Aと、第1ヒンジ45Aよりも下側に設けられた第2ヒンジ45Bとからなる。第1ヒンジ45A及び第2ヒンジ45Bは、車両10において第1ドア30よりも車両内側に設けられた図示しないフレームに連結されている。第1ドア30は、第1ヒンジ45A及び第2ヒンジ45Bを中心として側方に回転移動する片開きドアである。
【0017】
図3に示すように、第1ドア30は、アウターパネル50、インナーパネル55、及びドアトリム60を備えている。
アウターパネル50は、例えば金属製である。アウターパネル50は、車両10の外面部を構成する表面50Aと、該表面50Aとは反対側、すなわちインナーパネル55側の裏面50Bとを有している。第1ドア30において、アウターパネル50が外板に対応する。
【0018】
インナーパネル55は、例えば金属製である。インナーパネル55は、アウターパネル50の車両内側に設けられている。
ドアトリム60は、例えば樹脂製である。ドアトリム60は、インナーパネル55の車両内側に設けられている。
【0019】
第1ドア30の本体部31は、車両外側から車両内側に向けて、アウターパネル50、インナーパネル55、及びドアトリム60が順に積層されることによって構成されている。そして、アウターパネル50とインナーパネル55とによって、
図2に示す窓枠32が構成されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、本体部31において、アウターパネル50はその周縁部分がインナーパネル55と接合されている。すなわち、本体部31の前端部31A及び後端部31Bにおいて、アウターパネル50とインナーパネル55とが接合されている。また、本体部31における中央部31Cでは、下端部分においてアウターパネル50とインナーパネル55とが接合されている。このように、第1ドア30のアウターパネル50において、前端部31Aを構成する部分、後端部31Bを構成する部分、及び中央部31Cにおける下端部分を構成する部分がインナーパネル55と接合される周縁部51に相当する。
【0021】
アウターパネル50は、金属製の板材を例えばプレス加工することによって車両10のデザインに応じた形状に成形されている。そのため、アウターパネル50は、平坦板状に形成されている平坦部52と、湾曲板状に形成されている湾曲部53とを含む。本実施形態では、アウターパネル50において、
図2に破線で囲む領域、すなわち、中央部31Cを構成する部分においてさらに中央側の領域が平坦部52となっており、平坦部52を除く領域が湾曲部53となっている。なお、平坦部52及び湾曲部53の位置や範囲は任意に変更が可能である。
【0022】
図3に示すように、アウターパネル50とインナーパネル55とは、互いに接合されている周縁部分を除いて離間して配置されている。そのため、本体部31の内部には、アウターパネル50とインナーパネル55とによって区画された空間S1が設けられている。アウターパネル50とインナーパネル55とによって区画された空間S1には、上述した窓40が図示しない昇降機構によって収容される。また、インナーパネル55は、ドアトリム60に対しても部分的に離間して設けられている。
【0023】
図4に示すように、ドアトリム60には、車室内から第1ドア30を開閉するためのドアハンドル61と、アームレスト62とが設けられている。また、ドアトリム60には、アームレスト62よりも下方の位置にスピーカを保護するためスピーカグリル63が設けられている。スピーカグリル63は、第1ドア30の本体部31において、車両前後方向の中間位置よりも前側に配置されている。助手席には、収納としてのグローブボックス64が設けられている。
図3に示すように、インナーパネル55とドアトリム60との間には、吸音材65が設けられている。吸音材65は、例えば樹脂製のスポンジからなる。吸音材65は、アームレスト62からスピーカグリル63の周囲に至る範囲に設けられている。
【0024】
図5に示すように、第1ドア30のインナーパネル55には、組付け孔56と、サービスホール57とが形成されている。組付け孔56は、スピーカグリル63に対応した位置に設けられている。組付け孔56には、スピーカが組付けられる。サービスホール57は、組付け孔56の上方に配置されている。サービスホール57は、アウターパネル50とインナーパネル55との間の空間S1にアクセスするための開口を構成している。サービスホール57は、組付け孔56と車両前後方向において同様の位置に配置されている。すなわち、サービスホール57は、第1ドア30の本体部31において、車両前後方向の中間位置Cよりも前側に配置されている。
【0025】
図2に示すように、車両10は、第2ドア70をスライド移動させるための第1アクチュエータ80を有している。第1アクチュエータ80は、例えばモータを含む電動アクチュエータである。第1アクチュエータ80は、リアフェンダパネル14の内部に設けられている。第1アクチュエータ80は、車両10に設けられた一対のレール81に沿って第2ドア70をスライド移動させる。このように、第2ドア70は、車両前後方向へスライド移動するスライドドアとして構成されている。なお、第2ドア70における第1ドア30と同様の構成については、共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0026】
車両10は、第1アクチュエータ80へ制御信号を送信する電子制御装置85を備えている。本実施形態では、電子制御装置85は、第1ドア30よりも車両前側(
図2の左側)に設けられている。より詳細には、電子制御装置85は、助手席に設けられたグローブボックス64の裏(フロントフェンダパネル11の車両内側)に配置されており、車両10の内部に設けられている。電子制御装置85は、第1アクチュエータ80と電気的に接続されている。電子制御装置85は、第1アクチュエータ80の駆動を制御することで、第2ドア70を開閉制御する。
【0027】
車両10は、バックドア75を開閉するための第2アクチュエータ88を有している。第2アクチュエータ88は、例えばモータを含む電動アクチュエータである。第2アクチュエータ88は、第2ピラー20の内部に設けられている。第2アクチュエータ88は、電子制御装置85と電気的に接続されている。電子制御装置85は、第2アクチュエータ88の駆動を制御することで、バックドア75を開閉制御する。なお、第2ドア70及びバックドア75は、車外にいるユーザがドアハンドル等を操作することで手動でも開閉可能に構成されている。
【0028】
車両10は、第1ドア30のアウターパネル50に取り付けられた第1圧電振動マイク90を備えている。第1圧電振動マイク90は、アウターパネル50の振動を電気信号に変換する。
【0029】
図3に示すように、第1圧電振動マイク90は、アウターパネル50の裏面50B、より詳しくは平坦部52の裏面に接触した状態で取り付けられており、アウターパネル50とインナーパネル55とによって区画される空間S1に収容されている。本実施形態では、アウターパネル50の裏面50Bに取り付けられた第1圧電振動マイク90は、窓40が第1ドア30内に収納された状態において該窓40と接触しない位置に配置されている。
【0030】
詳細には、平坦部52の上方部分にある湾曲部53は、上端部から下方に向かうに従って徐々にインナーパネル55から離れるように湾曲している。このため、空間S1は、上端部分から平坦部52側の下方に向かうに従って徐々に広くなっている。つまり、空間S1は、平坦部52に対応する部分の方が、平坦部52よりも上方部分(湾曲部53)に対応する部分よりも広く形成されている。
【0031】
平坦部52の下方部分にある湾曲部53は、下端部から上方に向かうに従って徐々にインナーパネル55から離れるように湾曲している。このため、空間S1は、下端部分から平坦部52側の上方に向かうに従って徐々に広くなっている。つまり、空間S1は、平坦部52に対応する部分の方が、平坦部52よりも下方部分(湾曲部53)に対応する部分よりも広く形成されている。
【0032】
このため、平坦部52の裏面に取り付けられている第1圧電振動マイク90は、空間S1において比較的広い部分に配置されている。そして、窓40が第1ドア30内に収納された状態において、アウターパネル50の平坦部52と窓40との距離が第1圧電振動マイク90の厚さ(
図3の左右方向における寸法)よりも長くなっている。
【0033】
本実施形態では、第1圧電振動マイク90の車両内側に、インナーパネル55を介して上述した吸音材65が配置されている。
図5に示すように、第1圧電振動マイク90は、第1ドア30の車両前後方向の中間位置Cよりも前側に配置されている。サービスホール57は、第1圧電振動マイク90と同様に、第1ドア30の車両前後方向の中間位置Cよりも前側に配置されている。そのため、第1圧電振動マイク90は、サービスホール57と近い位置に設けられている。
【0034】
図2に一点鎖線で示すように、車両10は、第1圧電振動マイク90と電子制御装置85とを接続する第1配線91を有している。第1配線91の第1端は、第1圧電振動マイク90に接続されている。第1配線の第2端は、電子制御装置85に接続されている。電子制御装置85は、上述したようにフロントフェンダパネル11の車両内側に設けられており、第1ドア30の外に配置されている。そのため、第1配線91は、第1ドア30の内部に設けられた第1端から第1ドア30の前端部31Aを通って車両10の内部に引き回されている。第1圧電振動マイク90から出力された出力信号は、第1配線91を介して電子制御装置85に入力される。
【0035】
また、車両10は、第2ピラー20に取り付けられた第2圧電振動マイク95を備えている。
図6に示すように、第2ピラー20は、ピラーアウタ21と、ピラーインナ22とを有している。ピラーアウタ21は、例えば金属板材からなる。ピラーアウタ21は、車両10の外面部を構成する表面21Aと、該表面21Aとは反対側、すなわちピラーインナ22側の裏面21Bとを有している。第2ピラー20において、ピラーアウタ21が外板に対応する。ピラーインナ22は、例えば樹脂製である。ピラーインナ22は、ピラーアウタ21の車両内側に設けられている。ピラーインナ22は、ピラーアウタ21と部分的に接合されている。
【0036】
第2圧電振動マイク95は、ピラーアウタ21の裏面21Bに取り付けられており、ピラーアウタ21とピラーインナ22とによって区画される空間S2に収容されている。第2圧電振動マイク95は、ピラーアウタ21の振動を電気信号に変換する。
【0037】
図2に示すように、車両10は、第2圧電振動マイク95と電子制御装置85とを接続する第2配線96を有している。第2配線96の第1端は、第2圧電振動マイク95に接続されている。第2配線の第2端は、電子制御装置85に接続されている。第2配線96は、車両10の内部を引き回されている。第2圧電振動マイク95から出力された出力信号は、第2配線96を介して電子制御装置85に入力される。
【0038】
こうした車両10では、ユーザは音声によって第2ドア70及びバックドア75の開閉操作を行うことができる。すなわち、車外にいるユーザが発した音声は、空気振動として伝わり第1ドア30のアウターパネル50や第2ピラー20のピラーアウタ21を振動させる。これにより、第1圧電振動マイク90及び第2圧電振動マイク95の少なくとも一方によってユーザの音声情報が取得される。取得されたユーザの音声情報は、出力信号として電子制御装置85に入力される。電子制御装置85では、公知の音声認識処理を実行し、車外にいるユーザが、第2ドア70を開閉操作するための第1操作ワードを発声したか否か、及びバックドア75を開閉操作するための第2操作ワードを発声したか否かを判断する。電子制御装置85は、ユーザが第1操作ワードを発声したと判断したときには、第1アクチュエータ80へ制御信号を送信し、第2ドア70をスライド移動させる。また、電子制御装置85は、ユーザが第2操作ワードを発声したと判断したときには、第2アクチュエータ88へ制御信号を送信し、バックドア75を回転移動させる。なお、第1操作ワード及び第2操作ワードは、電子制御装置85に予め記憶させることができる。
【0039】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態では、第1ドア30において車両10の外面部を構成する金属製の外板であるアウターパネル50の裏面50Bに、第1圧電振動マイク90を接触した状態で取り付けた。また、第2ピラー20において同外板であるピラーアウタ21の裏面21Bに、第2圧電振動マイク95を接触した状態で取り付けた。そのため、第1圧電振動マイク90及び第2圧電振動マイク95が車両10の外部に露出した状態とはならず、各圧電振動マイク90,95から車両10の内部に設けられた電子制御装置85へ配線を引き回すための開口を車両10の外面部に形成する必要がない。
【0040】
また、各圧電振動マイク90,95は、外板の振動を電気信号に変換することで車外にいるユーザの音声情報を取得する。そのため、各圧電振動マイク90,95へ空気振動を伝達させるための開口を外板に形成する必要もない。
【0041】
このように、外板に開口を形成することなく各圧電振動マイク90,95から電子制御装置85へユーザの音声情報を入力することができる。したがって、外面部における防水性の低下を抑制しつつ音声による操作を可能にした車両10を実現できる。
【0042】
また、車両10の外部に各圧電振動マイク90,95が露出しないため、車両10の外観を損ねることもない。
(2)第1ドア30のアウターパネル50は、車両10の外面部を構成する部材のうちで比較的広い面積を有しており、振動が伝達されやすい部位である。
【0043】
本実施形態では、第1圧電振動マイク90を、第1ドア30のアウターパネル50の裏面50Bに取り付けて、アウターパネル50とインナーパネル55とによって区画される空間S1に収容している。そのため、外板における振動を生じ易くして、車外にいるユーザの音声情報を取得しやすくできる。したがって、ユーザの音声操作の感度を高めることに貢献できる。また、第1圧電振動マイク90が第1ドア30の内部に収容されていることから、第1圧電振動マイク90における耐水性も確保できる。
【0044】
(3)第1ドア30のアウターパネル50は、インナーパネル55に接合された周縁部51よりも、インナーパネル55に接合されていない中央側の部分の方が振動を伝達しやすい。また、このアウターパネル50において、平坦板状に形成されている平坦部52は、湾曲板状に形成されている湾曲部53に比して曲げ剛性が低く振動を伝達しやすい。
【0045】
本実施形態では、第1ドア30のアウターパネル50において中央側に配置された平坦部52の裏面に第1圧電振動マイク90を取り付けていることから、ユーザの音声情報を該アウターパネル50を介して好適に取得することができる。なお、本実施形態では、第1圧電振動マイク90を、スライド移動する第2ドア70ではなく、回転移動する第1ドア30に取り付けている。そのため、第1圧電振動マイク90に連結されている第1配線91をドアのスライド移動を考慮して長く引き回す必要がない。また、本実施形態では、電子制御装置85が第1アクチュエータ80の駆動を制御することで、左後部座席のドアである第2ドア70を音声操作によって開閉可能な構成としている。そのため、車両10の停止時において車道側ではなく歩道側に配置されやすい第2ドア70から乗員の乗降を促すことが可能になる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、音声情報の取得を一層容易にしつつも、第1圧電振動マイク90に連結される第1配線91の取り回しを容易とし、さらには乗員の安全性向上にも寄与することが可能になる。
【0047】
(4)本実施形態では、第1圧電振動マイク90を、サービスホール57と同様に第1ドア30において車両前側に配置することで、サービスホール57の近くに配置している。こうした構成は、アウターパネル50及びインナーパネル55を接合して第1ドア30を組み立てた状態であっても、サービスホール57を通じてアウターパネル50とインナーパネル55とによって区画される空間S1にアクセスして第1圧電振動マイク90をアウターパネル50の裏面50Bに取り付けることで実現できる。したがって、第1圧電振動マイク90をアウターパネル50に取り付けるときの作業を容易とすることができる。
【0048】
また、第1圧電振動マイク90を窓40と接触しない位置に配置している。そのため、窓40の開閉によって第1圧電振動マイク90が窓40に干渉することがない。その結果、第1圧電振動マイク90の耐久性を確保することも可能になる。
【0049】
したがって、第1圧電振動マイク90の取付作業性を向上させつつ耐久性の一層の向上を図ることができる。
(5)本実施形態では、バックドア75が開閉する開口部10Aを構成する第2ピラー20において、ピラーアウタ21の裏面21Bに第2圧電振動マイク95を取り付けている。そのため、バックドア75に第2圧電振動マイク95を取り付ける場合に比して、バックドア75の開閉時の衝撃が第2圧電振動マイク95に作用しにくくなる。したがって、第2圧電振動マイク95の耐久性を向上させることができる。
【0050】
(6)本実施形態では、外板の振動を電気信号に変換する圧電振動マイクとして、車両前側に配置された第1圧電振動マイク90と、車両後側に配置された第2圧電振動マイク95とを備えている。そのため、各圧電振動マイク90,95からユーザまでの距離が過度に長くなることを抑えて、ユーザによる音声操作の感度を高めることが可能になる。
【0051】
(7)第1ドア30において、第1圧電振動マイク90に対して車両内側に吸音材65を配置した。そのため、車室内の音声を第1圧電振動マイク90によって検出しにくくできる。そのため、車外にいるユーザを対象とした音声情報の取得が容易となる。
【0052】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、車両10は、圧電振動マイクとして、第1圧電振動マイク90と第2圧電振動マイク95とを備えたが、何れか一方を省略してもよい。
【0053】
・上記実施形態において、第1圧電振動マイク90を、第1ドア30の車両前後方向の中間位置Cに配置してもよいし、該中間位置Cよりも後側に配置してもよい。
・第1ドア30の構成においては、アウターパネル50の平坦部52と窓40との距離が第1圧電振動マイク90の厚さよりも短い場合がある。こうした場合には、例えば、第1ドア30に収容された窓40の下端よりも下方に位置する部分等(例えば湾曲部53)に取り付けることで、第1圧電振動マイク90を窓40と接触しない位置に配置することができる。このように、第1圧電振動マイク90を、第1ドア30のアウターパネル50において平坦部52以外の部分に設けてもよい。
【0054】
・第1圧電振動マイク90と電子制御装置85とを接続する第1配線91の引き回し態様は上記実施形態のものに限らない。例えば、第1配線91は、第1ドア30の前端部31Aを通らずに引き回されていてもよい。
【0055】
・第1ドア30を開閉制御するためのアクチュエータを別途設けて、各圧電振動マイク90,95から出力された出力信号に基づいて電子制御装置85が第1ドア30を開閉制御してもよい。こうした構成では、ユーザは、第1ドア30に対応した操作ワードを発声することで、第1ドア30を開閉操作できる。また、第3ドア及び第4ドアを同様に音声によって開閉操作できるようにしてもよい。なお、ドアの開き方は、上記実施形態のものに限らない。例えば、第1ドア30をスライド移動するスライドドアとして構成してもよい。
【0056】
・圧電振動マイクを、第1ドア30以外の他のドアに取り付けてもよい。また、圧電振動マイクを、車両10の外面部を構成する外板において、アウターパネル50やピラーアウタ21以外の他の部分の裏面に取り付けるようにしてもよい。すなわち、圧電振動マイクを、フロントフェンダパネル11、第1ピラー12、ルーフパネル13、及びリアフェンダパネル14等の外板を構成する部材の裏面に取り付けるようにしてもよい。
【0057】
・電子制御装置85は、圧電振動マイクから入力された出力信号に基づいて、ドアの開閉制御以外の他の制御を実行するようにしてもよい。他の制御としては、例えば、車両10のエンジンの始動停止制御や、窓40の昇降制御、エアコンなどの補機の駆動制御等がある。
【符号の説明】
【0058】
10…車両、10A…開口部、12…第1ピラー、20…第2ピラー、21…ピラーアウタ(外板)、21A…表面、21B…裏面、22…ピラーインナ、30…第1ドア、31…本体部、31A…前端部、31B…後端部、31C…中央部、40…窓、45…ヒンジ、45A…第1ヒンジ、45B…第2ヒンジ、50…アウターパネル(外板)、50A…表面、50B…裏面、51…周縁部、52…平坦部、53…湾曲部、55…インナーパネル、56…組付け孔、57…サービスホール、70…第2ドア、75…バックドア、85…電子制御装置、90…第1圧電振動マイク、91…第1配線、95…第2圧電振動マイク、96…第2配線。