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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102329
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B67D1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216995
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 保起
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀行
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】芝田 悠月
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082BB01
3E082FF09
(57)【要約】
【課題】利用者が操作部に接触することなく飲食物を提供することが可能なディスペンサを提供する。
【解決手段】飲食物を吐出する吐出口12と、空中に空中像Aを表示する空中像表示装置30と、前記空中像Aに対して利用者が空中で近接したことを検知する光センサー72と、前記光センサー72による検知信号に基づいて、吐出に関する制御を行う制御部80と、を備えるディスペンサ1。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物を吐出する吐出口と、
空中に空中像を表示する空中像表示装置と、
前記空中像に対して利用者が空中で近接したことを検知する光センサーと、
前記光センサーによる検知信号に基づいて、吐出に関する制御を行う制御部と、を備えるディスペンサ。
【請求項2】
前記空中像表示装置は、
光源と、
前記光源から発せられた光を受けて投影像を作り出す投影フィルムと、
前記投影フィルムにより作り出される前記投影像を空中に映し出す3Dプレートと、を備える請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記投影フィルムの出射側の面に、第1の偏光フィルタと、前記第1の偏光フィルタから90度回転させた状態の第2の偏光フィルタとが重畳された状態で配されている請求項2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記投影フィルムに形成された前記空中像の基となる第1の像および第2の像は、異なる平面上に配されており、
前記第1の像に基づく第1の前記空中像と、前記第2の像に基づく第2の前記空中像とは、異なる仮想的な平面上に映し出されている請求項2または請求項3に記載のディスペンサ。
【請求項5】
利用者が当該ディスペンサの前に立ったことを検知する利用者検知センサーを備え、
前記制御部は、前記利用者検知センサーから利用者が検知されたとの検知信号を受けて、前記光センサーからの検知信号に基づいて吐出に関する制御を行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記吐出口からそれぞれ異なる態様の吐出を行う複数種類の吐出モードを備え、
前記空中像表示装置は、前記吐出モード毎に異なる前記空中像を複数表示するものとされ、
前記光センサーは、前記異なる空中像毎にそれぞれ別個に利用者の近接を検知可能であり、
前記制御部は、前記複数の空中像のうち、前記光センサーによって近接が検知された前記空中像に対応する前記吐出モードにより前記吐出口から吐出を行う請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項7】
前記空中像表示装置は光源として3色のLEDを備えており、
前記制御部は、利用者の前記空中像に対する近接に伴って使用する前記光源の種類や光強度を変更することにより、前記空中像の表示色や明るさを変更可能としている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【請求項8】
音発生装置を備えており、
前記制御部は、利用者の前記空中像に対する近接に伴って操作音を発生可能としている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスペンサの一例として、下記特許文献1に記載のものが知られている。このディスペンサは、略直方体状の形状を有する本体の前面に、利用者に飲料を提供する空間である飲料注出部と、利用者が提供を受ける飲料を選択しその飲料を注出させるための操作部とが設けられている。利用者は操作部に設けられたボタンを選択して手指で押圧することにより、欲しい飲料を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-240948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ウイルスや細菌の感染を理由に、公共の場所等で、不特定多数の人が接触する部分が敬遠される傾向にある。ディスペンサにおいても、操作部のボタンは利用者の全員が接触する部分であるため、不衛生になりがちであるという問題があった。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、利用者が操作部に接触することなく飲食物を提供することが可能なディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本明細書に開示のディスペンサは、飲食物を吐出する吐出口と、空中に空中像を表示する空中像表示装置と、前記空中像に対して利用者が空中で近接したことを検知する光センサーと、前記光センサーによる検知信号に基づいて、吐出に関する制御を行う制御部と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、ディスペンサの利用者は、ディスペンサと離隔して空中に表示された空中像に手指等を近づけるだけで、飲食物の提供を受けることができる。すなわち、従来のようにディスペンサに直接接触する必要がないから、接触によるウイルスや細菌の感染を防止することができ、衛生的に優れる。
【0008】
前記空中像表示装置は、光源と、前記光源から発せられた光を受けて投影像を作り出す投影フィルムと、前記投影フィルムにより作り出される前記投影像を空中に映し出す3Dプレートと、を備えていてもよい。
【0009】
このような構成により、目的に合った所望の空中像を空中に表示することが実現可能となる。
【0010】
前記投影フィルムの出射側の面に、第1の偏光フィルタと、前記第1の偏光フィルタから90度回転させた状態の第2の偏光フィルタとが重畳された状態で配されていてもよい。
【0011】
投影フィルムにより作り出される投影像は、3Dプレートによって空中の所定位置に映し出される。しかし、3Dプレートを通過する光のうち、空中像の形成に寄与しない不要な光がある場合には、不要な光によって、所望の空中像とは別に、ゴーストという虚像が形成される場合がある。そのため、空中像の視認性が低下する虞がある。
【0012】
このような問題に対し、上記構成によれば、空中像の周囲にゴーストが形成されることが抑制されるため、空中像の視認性を向上させることが可能となる。
【0013】
前記投影フィルムに形成された前記空中像の基となる第1の像および第2の像は、異なる平面上に配されており、前記第1の像に基づく第1の前記空中像と、前記第2の像に基づく第2の前記空中像とは、異なる仮想的な平面上に映し出されていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、複数の空中像を、視た目に異なる奥行き部分に配置することができる。
【0015】
利用者が当該ディスペンサの前に立ったことを検知する利用者検知センサーを備え、前記制御部は、前記利用者検知センサーから利用者が検知されたとの検知信号を受けて、前記光センサーからの検知信号に基づいて吐出に関する制御を行う構成とされていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、利用者がいないのに飲食物が吐出口より吐出される誤動作を抑制することができる。
【0017】
前記吐出口からそれぞれ異なる態様の吐出を行う複数種類の吐出モードを備え、前記空中像表示装置は、前記吐出モード毎に異なる前記空中像を複数表示するものとされ、前記光センサーは、前記異なる空中像毎にそれぞれ別個に利用者の近接を検知可能であり、前記制御部は、前記複数の空中像のうち、前記光センサーによって近接が検知された前記空中像に対応する前記吐出モードにより前記吐出口から吐出を行う構成とされていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ディスペンサに複数種類の吐出モードが設けられ、利用者が吐出モードを選択する必要がある場合でも、利用者は、空中像表示装置により表示された複数の空中像のひとつに手指等を近接させることにより、吐出モードの選択を行うことができる。すなわち、ディスペンサに直接接触しなくても済むため、衛生的に優れる。
【0019】
前記空中像表示装置は光源として3色のLEDを備えており、前記制御部は、利用者の前記空中像に対する近接に伴って使用する前記光源の種類や光強度を変更することにより、前記空中像の表示色や明るさを変更可能としていてもよい。
【0020】
上述したように、利用者が手指等を空中像に近接させるだけで飲食物が吐出される構成においては、利用者は従来の接触型のような節度感が得られないため、近接動作が検知されたかどうか分かり難い場合がある。このような問題に対し、上記構成によれば、近接動作の検知を空中像の色や明るさの変化により視覚的に表現することができるから、利用者にとって操作感が向上する。
【0021】
また、供給する飲食物が空になったり、装置に異常が生じた場合に、例えば赤色を点灯あるいは点滅させる等、視覚的に分かり易くすることができる。
【0022】
さらに、音発生装置を備えており、前記制御部は、利用者の前記空中像に対する近接に伴って操作音を発生可能としていてもよい。
【0023】
このような構成によっても、近接動作の検知を聴覚的に表現することができるから、利用者にとって操作感が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本明細書に開示される技術によれば、利用者が操作部に接触することなく飲食物を提供することが可能なディスペンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1のディスペンサの正面図
図2】ディスペンサの平面図
図3】ディスペンサの側面図
図4図1のI-I線におけるディスペンサの縦断面図
図5】ディスペンサの要部拡大縦断面図であって、空中像表示装置の縦断面図
図6】空中像表示装置の背面図
図7】空中像表示装置の分解斜視図
図8】空中像形成の基本構造を表す概念図
図9】投影フィルムに描写された図柄を表す図
図10】ディスペンサの前方に空中像が表示された状態を表す斜視図
図11】ディスペンサの制御に係る構成の概要を示すブロック図
図12】ディスペンサの制御の一例を示すフローチャート
図13】実施形態2のディスペンサの前方に空中像が表示された状態を表す斜視図
図14】空中像表示装置の要部分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
実施形態1のディスペンサ1を、図1から図12によって説明する。図1から図12の各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向とする。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付して他の部材の符号は省略することがある。
【0027】
[ディスペンサ1]
図1に示すように、ディスペンサ1は、ハウジング10を有する。ハウジング10は、全体として縦長の箱状をなし、底面の四隅に配された脚部15によって支持されている。図3に示すように、ハウジング10の前面には、ハウジング10の上端部及び下端部が前方に突出することで、上突出部11Uと下突出部11Lが形成されている。上突出部11Uと下突出部11Lの突出長(前後方向の長さ)はほぼ同等であり、突出幅(左右方向の長さ)は、上突出部11Uが下突出部11Lよりやや短い寸法とされている。
【0028】
ディスペンサ1は、図4に示すように、ハウジング10内の主に後部に設けられた冷凍装置21と、ハウジング10内の前下部に設けられ、冷凍装置21により冷却されて製氷を行う製氷装置22と、ハウジング10内の前上部に設けられ、製氷装置22によって製氷された氷片(飲食物の一例)を貯えるための貯氷タンク23と、を備える。貯氷タンク23の前壁の下端部には、氷片を放出するための放出口24が形成されている。
【0029】
またディスペンサ1は、ディスペンス装置25を備える。ディスペンス装置25は、ハウジング10の前側、主として、上突出部11Uの内側に設けられている。ディスペンス装置25は、放出口24を開放可能に閉止するシャッター26を備える。
【0030】
上突出部11Uの下面には吐出口12が設けられており、貯氷タンク23に貯えられた氷片は、ディスペンス装置25によって吐出口12から下方の下突出部11Lに向けて吐出可能とされている。また、吐出口12の上方には、水道等の給水設備から延びる給水管が配設されており、これにより、ディスペンサ1は、吐出口12から氷片と併せて浄水を吐出可能とされている。下突出部11Lで受け止められた氷片等から生じた排水等は、排水機構によってハウジング10の外部に排出される。
【0031】
上述した上突出部11Uには、中央部に矩形のハウジング側開口13が設けられており(図5参照)、このハウジング側開口13に、空中像表示装置30が取り付けられている。
【0032】
[空中像表示装置30]
図5から図8に示すように、空中像表示装置30は、LED(光源の一例)32と、LED32から発せられた光を受けて操作部の投影像を作り出す投影フィルム33と、投影フィルム33の出射側の面に積層された第1偏光フィルタ37Aおよび第2偏光フィルタ37Bと、投影フィルム33により作り出される操作部の投影像を空中に映し出す3Dプレート38と、を備えている。これらLED32、投影フィルム33、第1偏光フィルタ37A、第2偏光フィルタ37B、および3Dプレート38は、保持部材40に一体に保持されている。以下、各部材について個別に説明する。
【0033】
[保持部材40]
保持部材40は、図7に示すように、前側支持フレーム41と、下側LED支持部51と、上側LED支持部61とが組み付けられることにより構成されている。
【0034】
前側支持フレーム41は、図5に示すように、ハウジング10の上突出部11Uの前面から上下方向において湾曲しつつ前方に膨出する前壁42と、前壁42の左右両側縁部とハウジング10の上突出部11Uの前面との間を塞ぐ一対の側壁43と、を備えている(図7参照)。前壁42の中央部には、矩形のフレーム側開口44が設けられている。フレーム側開口44の開口縁部のうち、互いに対向して上下方向に延びる一対の側縁部44Aには、後方および上方に向けて延びる縦壁45が設けられている。また、フレーム側開口44のうち下縁部44Bには、上方に向けてやや傾斜しつつ後方に向けて延びる底壁46が設けられている。一対の縦壁45と底壁46とはU字形状に連なっている。
【0035】
一対の縦壁45の内側面には、縦壁45の後端付近かつ下端と、フレーム側開口44の上方の角部とをつなぐ線に沿って、縦リブ47が設けられている。また、底壁46には、一対の縦リブ47の下端を連結する横リブ48が設けられている。底壁46のうち横リブ48よりも後方側は、下方に向けて屈曲している(図5参照)。これらのリブ47、48の後方側の面には、後述する3Dプレート38の端部が載置される。
【0036】
また、前側支持フレーム41の底壁46には、4つの矩形の孔部50が横方向に並んで設けられている。これらの孔部50には、後述する近接検知センサー72(光センサーの一例)が取り付けられる。
【0037】
前側支持フレーム41には、下側LED支持部51が組み付けられている。下側LED支持部51は、図5および図7に示すように、前側支持フレーム41の一対の縦壁45および底壁46で囲まれた領域を後方から塞ぐように縦壁45および底壁46に宛がわれる矩形の奥壁52と、奥壁52の上縁部から奥壁52の板面に対して前方側に垂直に立ち上がり、一対の縦壁45の上端を架け渡すように配される天井壁53とを備えた断面L字形状の部材である。天井壁53の前端部は、下側LED支持部51が前側支持フレーム41に組み付けられた状態において、前側支持フレーム41の前壁42の背面に隣接する位置あるいは当接する位置まで延びている。また、天井壁53の中央部には、矩形の天井壁側開口54が設けられている。
【0038】
図5に示すように、下側LED支持部51の天井壁53の上方には、上側LED支持部61が組み付けられている。上側LED支持部61は、天井壁53とほぼ同寸法の矩形の板状のベース部62を備える(図7参照)。ベース部62には、4つの略矩形のベース部側開口(図示せず)が横方向に一列に並んで設けられており、各ベース部側開口の開口縁部には、上方に向けて立ち上がる筒状壁64が設けられている。各筒状壁64は、上方が先細りとされた、略四角錐状とされている。4つのベース部側開口は、ベース部62が下側LED支持部51の天井壁53に重畳された状態において、天井壁側開口54の内側に配されている。各筒状壁64の上端には上下方向に貫通する通し孔65が設けられている。4つの筒状壁64は、いずれも、ベース部62からの立ち上がり寸法が同等とされており、それらの上端面は、同一平面上に配されている。
【0039】
[LED32およびLED基板31]
上述した筒状壁64の上端面には、LED基板31が取り付けられる。また、LED基板31の下面うち筒状壁64の通し孔65に対応する位置には、LED32が設けられている。本実施形態において、LED32は、赤色LED(R)、緑色LED(G)、青色LED(B)の3種類がセットになったRGBLEDが使用される。RGBLEDは、赤色LED(R)、緑色LED(G)、青色LED(B)を個別に点灯・消灯させることが可能であり、各LED単色、二色混合、フルカラーと選択して点灯させることで、多彩な色を作り出すことができる。上側LED支持部61(筒状壁64の上端)にLED基板31が取り付けられた状態において、各LED32は通し孔65から筒状壁64内に臨んでおり、LED32から発せられた光は筒状壁64に沿って進んで下方に向けて照射されるようになっている。
【0040】
[投影フィルム33および偏光フィルタ37]
図5および図7に示すように、上述した下側LED支持部51の天井壁53の下面には、上から順に、投影フィルム33と2枚の偏光フィルタ37A、37Bとが積層されるとともに保持されている。
【0041】
投影フィルム33は、後述する操作部の投影像を作り出すものであって、LED32から発せられた光を遮断する黒色フィルムに後述する操作部を表す図柄34(空中像Aの基の一例)が描写されたものである。図柄34部分は、光を透過可能とされている。
【0042】
図9は、投影フィルム33に描写された、操作部を表す図柄34を表すものである。なお、図9および図10においては、図柄34および空中像Aを分かり易くするために白黒反転させた状態で表している。本実施形態のディスペンサ1は、「氷」と、「氷および水」と、「水」の3種類の注出物(吐出モードの一例)を選択可能とされており、それらを図柄34で表したものを丸で囲んでスイッチのように表示したもの(以下選択スイッチ35A,35B,35Cとする)と、各選択スイッチ35A,35B,35Cの下方において内容を文字で表示したものとが、横方向に並んで描かれている。また、右端には、3種類の選択スイッチ35A,35B,35Cのいずれかを選択した後に注出を行うための注出スイッチ36が表示されている。注出スイッチ36は、選択スイッチ35A,35B,35Cと比較してやや大きく、かつ太い線で描かれている。
【0043】
第1偏光フィルタ37Aおよび第2偏光フィルタ37Bは、投影フィルム33の出射側に配されている。偏光フィルタ37は、表面にU形溝又は山形溝が均等に平行配列したものであり、これらの溝の凸部分で拡散光を抑制して、光の向きを溝に沿って垂直方向に帯状に配光させる機能を有する。また、2枚の偏光フィルタ37を、溝の凸部分が直行状態となるように重ね合わせる事で、点配光にすることができる。つまり、光の拡散性を抑制し、一定方向の光で後述する3Dプレート38に向けて出射させることが可能となる。これにより、光の拡散性よるゴースト(虚像)の発生を抑制し、空中像Aを鮮明にすることができる。本実施形態においても、上方(投影フィルム33側)に配された第1偏光フィルタ37Aに対して、下方に配された第2偏光フィルタ37Bは、溝が直交する状態(90度回転させた状態)で積層されている。
【0044】
[3Dプレート38]
3Dプレート38は、上述したように、投影フィルム33により作り出される操作部の投影像を空中に映し出す機能を有する。3Dプレート38は、図5および図7に示すように、上述した前側支持フレーム41の一対の縦壁45の内側面に設けられた縦リブ47および底壁46の上面に設けられた横リブ48の後方側の面にその端部が載置されることにより、フレーム側開口44を上方から下方に向けて斜め後方に塞ぐ形で前側支持フレーム41に取り付けられている。なお、3Dプレート38の上端部は、フレーム側開口44の上縁部に設けられた係止爪49により後方側から係止されている(図5参照)。
【0045】
3Dプレート38は、LED32から発せられた光が投影フィルム33を透過することにより作り出された操作部の投影像を、空中の所定個所に映し出す機能を有する。操作部の投影像は、3Dプレート38を対称面として、投影フィルム33と対称とされた空中部分(ディスペンサ1の前方)に映し出される(図8および図10参照)。以下、空中に映し出された操作部の像を、空中像Aとする。本実施形態では、上述した4つのスイッチ35A,35B,35C,36の空中像Aは、仮想的な同一平面上に横並びに表示されている(図10参照)。
【0046】
[利用者検知センサー71および近接検知センサー72]
ディスペンサ1は、ディスペンサ1の正面の特定距離内に人が立ち止まったことを検知する利用者検知センサー71と、利用者が操作部の空中像Aに対して近接したことを検知する近接検知センサー72(光センサーの一例)と、を備えている。
【0047】
利用者検知センサー71は、例えば赤外線センサー等の非接触光センサーを、ハウジング10の前壁に取り付けたものを使用できる。利用者検知センサー71は、後述する制御部80に接続されている(図11参照)。
【0048】
近接検知センサー72も、例えば赤外線センサー等の非接触光センサーを用いており、前側支持フレーム41の底壁46に設けられた4つの孔部50に取り付けられている(図7参照)。4つの近接検知センサー72は、上述した操作部の空中像Aである4種類のスイッチ35A,35B,35C、36に対応可能な位置に設けられている。近接検知センサー72は、後述する制御部80に接続されている(図11参照)。
【0049】
[制御部80]
ディスペンサ1は、空中像表示装置30、および、吐出口12からの氷片等の吐出を制御する制御部80を備えている。制御部80は、CPU、RAM、ROM等を有するコンピュータを主体として構成されるものであり、図4に示すように、貯氷タンク23の後方に設置された制御箱27内に収容されている。
【0050】
図11に示すように、制御部80には、利用者検知センサー71、近接検知センサー72、空中像表示装置30、および、ディスペンス装置25が接続される。制御部80は、利用者検知センサー71および近接検知センサー72からの検知信号に基づいて、空中像表示装置30のLED32のオン/オフ(色選択)、および、ディスペンス装置25のシャッター26の開放/閉止を制御するように構成されている。
【0051】
制御部80による空中像表示装置30およびディスペンス装置25の制御の一例について、図12を参照しつつ以下に説明する。
【0052】
図12に示すように、制御が開始されると、ディスペンサ1が待機状態であることを利用者に示すべく、空中像表示装置30が空中に映し出す全てのスイッチ35A,35B,35C,36に対応するLED32を緑に点灯し(ステップS1)、その後、利用者検知センサー71が検知しているか否かを判断する(ステップS2)。利用者検知センサー71が検知していると判断すると(ステップS2でYes)、制御部80は、4つのLED32のうち、選択スイッチ35A,35B,35C用の3つのLED32を青に変更するとともに、注出スイッチ36用のLED32をシアン(緑+青)に変更する(ステップS3)。
【0053】
ステップS3の後、選択スイッチ35A,35B,35C用のいずれかの近接検知センサー72が検知していると判断すると(ステップS4でYes)、検知した選択スイッチ35用のLED32の色を白(赤+緑+青)に変更させる(ステップS5)。検知しなかった選択スイッチ35用のLED32は、青のまま(変更なし)とする。
【0054】
次に、注出スイッチ36の近接検知センサー72が検知している判断すると(ステップS6でYes)、注出スイッチ36用のLED32の色を白(赤+緑+青)に変更させるとともに、シャッター26を、放出口24を開放した状態とさせる(ステップS7)。さらに、注出スイッチ36の近接検知センサー72が検知していないと判断すると(ステップS8でYes)、全ての選択スイッチ35A,35B,35C用のLED32を青にするとともに注出スイッチ36用のLED32をシアン(緑+青)にし、シャッター26を放出口24を閉止した状態とさせる(ステップS9)。
【0055】
その後、引き続き利用者検知センサー71が検知している(ステップS10でYes)場合は、ステップS4に戻り、検知していない場合はステップS2に戻って、S10までの制御が繰り返される。
【0056】
上記の制御を、ディスペンサ1の利用者の利用状況に即して説明する。利用者は、ディスペンサ1の前方において緑色のスイッチ35A,35B,35C,36の空中像Aが浮かび上がっている(ステップS1)のを見て、ディスペンサ1が利用可能であることがわかる。ディスペンサ1を利用する場合、利用者は、ディスペンサ1の正面に立ち、吐出口12の下方にカップを載置する。利用者がディスペンサ1の正面に立つ(ステップS2でYes)と、4種類のスイッチのうち選択スイッチ35A,35B,35Cの空中像Aが青に変化し、注出スイッチ36の空中像Aがシアンに変化する(ステップS3)。
【0057】
利用者が3つの選択スイッチ35の空中像Aのひとつに手指を近づける(選択する)と(ステップS4でYes)、選択された選択スイッチ35の空中像Aが白に変化する(ステップS5)。この時、選択されなかった選択スイッチ35の空中像Aは青のままである。
【0058】
次に、利用者が注出スイッチ36の空中像Aに手指を近づけると(ステップS6でYes)、注出スイッチ36の空中像Aがシアンから白に変化するとともに、選択した氷片等が吐出口12から吐出される(ステップS7)。そして、利用者が手指を注出スイッチ36の空中像Aから遠ざけると(ステップS8でYes)、氷片等の吐出が停止されるとともに、選択スイッチ35の空中像Aが青に戻り、注出スイッチ36の空中像Aはシアンに戻る。
【0059】
[構成の要旨及び作用効果]
以上記載したように、実施形態1に係るディスペンサ1は、氷片および水を吐出する吐出口12と、空中に空中像Aを表示する空中像表示装置30と、空中像Aに対して利用者が空中で近接したことを検知する近接検知センサー72(光センサー)と、近接検知センサー72による検知信号に基づいて、吐出に関する制御を行う制御部80と、を備える。
【0060】
このような構成によれば、ディスペンサ1の利用者は、ディスペンサ1と離隔して空中に表示された空中像Aに手指等を近づけるだけで、氷片および水の提供を受けることができる。すなわち、従来のようにディスペンサ1に直接接触する必要がないから、接触によるウイルスや細菌の感染を防止することができ、衛生的に優れる。
【0061】
また、空中像表示装置30は、LED32と、LED32から発せられた光を受けて投影像を作り出す投影フィルム33と、投影フィルム33により作り出される投影像を空中に映し出す3Dプレート38と、を備えている。
【0062】
このような構成により、目的に合った所望の空中像Aを空中に表示することが実現可能となる。
【0063】
また、投影フィルム33の出射側の面に、第1の偏光フィルタ37Aと、第1の偏光フィルタ37Aから90度回転させた状態の第2の偏光フィルタ37Bとが重畳された状態で配されている。
【0064】
投影フィルム33により作り出される投影像は、3Dプレート38によって空中の所定位置に映し出される。しかし、3Dプレート38を通過する光のうち、空中像Aの形成に寄与しない不要な光がある場合には、不要な光によって、所望の空中像Aとは別に、ゴーストという虚像が形成される場合がある。そのため、空中像Aの視認性が低下する虞がある。
【0065】
このような問題に対し、上記構成によれば、空中像Aの周囲にゴーストが形成されることが抑制されるため、空中像Aの視認性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、利用者が当該ディスペンサの前に立ったことを検知する利用者検知センサー71を備え、制御部80は、利用者検知センサー71から利用者が検知されたとの検知信号を受けてから、近接検知センサー72からの検知信号に基づいて吐出に関する制御を行う構成とされている。
【0067】
このような構成によれば、利用者がいないのに氷片や水が吐出口12より吐出される誤動作を抑制することができる。
【0068】
吐出口12からそれぞれ異なる態様の吐出を行う複数種類の吐出モード(氷、氷+水、水)を備え、空中像表示装置30は、吐出モード毎に異なる空中像A(選択スイッチ35A、35B、35C)を複数表示するものとされ、近接検知センサー72は、異なる空中像A毎にそれぞれ別個に利用者の近接を検知可能であり、制御部80は、複数の空中像Aのうち、近接検知センサー72によって近接が検知された空中像Aに対応する吐出モードにより吐出口12から吐出を行う構成とされている。
【0069】
このような構成によれば、ディスペンサ1に複数種類の吐出モードが設けられ、利用者が吐出モードを選択する必要がある場合でも、利用者は、空中像表示装置30により表示された複数の空中像Aのひとつに手指等を近接させることにより、吐出モードの選択を行うことができる。すなわち、ディスペンサ1に直接接触しなくても済むため、衛生的に優れる。
【0070】
空中像表示装置30は光源として3色LED32を備えており、制御部80は、利用者の空中像Aに対する近接に伴って使用するLED32の種類や光強度を変更することにより、空中像Aの表示色や明るさを変更可能としている。
【0071】
上述したように、利用者が手指等を空中像Aに近接させるだけで氷片および水が吐出される構成においては、利用者は従来の接触型のような節度感が得られないため、近接動作が検知されたかどうか分かり難い場合がある。このような問題に対し、上記構成によれば、近接動作の検知を空中像Aの色や明るさの変化により視覚的に表現することができるから、利用者にとって操作感が向上する。
【0072】
また、供給する氷片や水が空になったり、装置に異常が生じた場合に、例えば赤色を点灯あるいは点滅させる等、視覚的に分かり易くすることができる。
【0073】
<実施形態2>
実施形態2について、図13および図14を参照して説明する。実施形態2のディスペンサに設けられる空中像表示装置130は、図13に示すように、3つの選択スイッチ35A,35B,35Cの空中像A1と、注出スイッチ36の空中像A2とが、仮想的な異なる平面上に映し出されるところが上記実施形態1と相違している。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には実施形態1と同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0074】
図14に示すように、本実施形態の上側LED支持部161のベース部162のうち、注出スイッチ36に対応する筒状壁164(以下注出用筒状壁164Bとする)が立ち上がる領域は、その他の領域より上方に突出した台座部166とされている。台座部166は、ベース部162の板面から、下方に開口する扁平な箱型に突出しており、注出用筒状壁164Bは、台座部166の上面から立ち上がっている。注出用筒状壁164Bは、ベース部162からの高さ寸法が、その他の筒状壁164(以下選択用筒状壁164Aとする)のベース部162からの高さ寸法と同等とされており、全ての筒状壁164の上端面は、同一平面上に配されている。
【0075】
投影フィルム33および2枚の偏光フィルタ37は、選択スイッチ35用と注出スイッチ36用とで分割されている。具体的には、選択スイッチ35の図柄(第1の像の一例)が描写された投影フィルム331およびこれに積層される2枚の偏光フィルタ371A、371Bは、上記実施形態1と同様に、下側LED支持部51の天井壁53の下面に保持されている。一方、注出スイッチ36の図柄(第2の像の一例)が描写された投影フィルム332およびこれに積層される2枚の偏光フィルタ372A、372Bは、台座部166の上壁166Aの下面に保持されている。すなわち、選択スイッチ35用の図柄と、注出スイッチ36用の図柄とは、台座部166の高さであるD、すなわち、距離Dだけ離れた平面上に配置されている。なお、各部材の板厚は考慮しないものとする。
【0076】
図8に示すように、光が投影フィルム33を透過することにより作り出される投影像は、3Dプレート38と対称となる位置に空中像Aとして映し出される。つまり、投影フィルム33と3Dプレート38との間の距離によって、空中像Aが映し出される位置が決まる。このため、3Dプレート38からの距離が投影フィルム331より距離Dだけ離れた位置に配された投影フィルム332の像、すなわち、注出スイッチ36の空中像A2は、選択スイッチ35の空中像A1よりも、距離Dだけ利用者に近い位置に映し出される(図13参照)。
【0077】
このように、本実施形態によれば、投影フィルム331に形成された空中像A1の基となる選択スイッチ35の図柄と、投影フィルム332に形成された空中像A2の基となる注出スイッチ36の図柄は、異なる平面上に配されており、空中像A1と、空中像A2とは、異なる仮想的な平面上に映し出されている。このように、複数の空中像Aを、利用者にとって見た目に異なる奥行きに配置することにより、個別に空中像Aの強調効果を高めることができる。
【0078】
なお、このように複数の空中像Aの奥行きが異なる場合、利用者による操作位置のずれが生じることが考えられるが、検出位置をリニア(直線的)に検知可能な近接検知センサー(光センサー)を使用することで、投影距離の変化による利用者の操作位置のずれに対応することができる。
【0079】
<他の実施形態>
本明細書は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0080】
(1)近接検知センサー(光センサー)は、利用者の手指の位置をリニア(直線的)に検知可能とされたものを用いることが好ましい。そのようなセンサーを使用した場合には、複数の空中像が前後方向において異なる位置(異なる奥行き)に映し出されたり、背丈が小さい子供が大人とは異なる方向から空中像に近接した場合でも、利用者の近接をより正確に判定することが可能となる。
【0081】
(2)また、近接検知センサー(光センサー)として、利用者の手指の位置をリニアに検知可能とされたものを用いる場合には、例えば、利用者の空中像への手指の近接に応じて、空中像の色を徐々に変化させる構成とすることも可能である。
【0082】
(3)上記実施形態では、LED32としてRGBLEDを使用し、センサーの検知に応じて空中像Aの色を変化させる例を示したが、LED32はRGBLEDに限らず、例えば、2色のLEDや、色が異なる単色のLEDを複数並べたものを使用してもよい。そのような構成であっても、空中像の色を変化させることができる。なお、空中像の色を変化させない構成も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0083】
(4)上記実施形態では、利用者の操作感(操作を行っている実感)を向上させるため、スイッチの空中像を手指の近接(スイッチの選択)に応じて変色させる構成を示したが、操作感を高める他の方法として、利用者の近接に伴って音発生装置により操作音を発生させる構成とすることもできる。このような構成によっても、近接の検知を聴覚的に表現することができるから、利用者にとって操作感が向上する。
【0084】
(5)あるいは、利用者の近接に応じて光の強度を変更あるいは変化させることにより、操作感を向上させることもできる。
【0085】
(6)利用者検知センサー71は省略することもできる。また、空中像(LED)は、常時(利用者がいない場合も)点灯した状態としなくてもよく、例えば、センサーの検知に応じて点灯させたり、消灯させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:ディスペンサ、10:ハウジング、11L:下突出部、11U:上突出部、12:吐出口、13:ハウジング側開口、23:貯氷タンク、24:放出口、25:ディスペンス装置、26:シャッター、27:制御箱、30,130:空中像表示装置、31:LED基板、32:LED(光源)、33、331、332:投影フィルム、34:図柄(空中像の基となる像)、35:選択スイッチ、36:注出スイッチ、37A、371A、372A:第1偏光フィルタ、37B、371B、372B:第2偏光フィルタ、38:3Dプレート、40:保持部材、41:前側支持フレーム、44:フレーム側開口、50:孔部、51:下側LED支持部、61、161:上側LED支持部、71:利用者検知センサー、72:近接検知センサー(光センサー)、80:制御部、A、A1、A2:空中像、D:距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14