(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102351
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】農業用ハウス構造
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20220630BHJP
A01G 9/20 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G9/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217035
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松葉 正
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029AA10
2B029BB20
2B029KB01
2B029KB03
2B029KB10
(57)【要約】
【課題】小さな透光ガラス窓でも必要時に十分な太陽光をハウス本体内に導入することができる農業用ハウス構造を提供する。
【解決手段】透光ガラス窓5よりも大きな面積の反射ミラー18を有するヘリオスタット15で、必要時に十分な量の太陽光Lを透光ガラス窓5からハウス本体1内に導入することができる。従って太陽光Lを導入している間はLED照明11の出力を低下させたり或いは消灯することができ、その分照明用電力を確実に低減させることができる。太陽光Lは透光ガラス窓5の直前でラインP状に集光するため、透光ガラス窓5のサイズは小さいままでもヘリオスタット15で反射された太陽光Lの全てをハウス本体1内に導入することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透光のボックス形状で、北側の側面の上方のみに縦幅が小さく横幅が東西方向に大きい透光ガラス窓が設けられたハウス本体と、
ハウス本体の内部に東西方向に沿った状態で設けられた栽培ベッドと、
栽培植物の成長に必要な波長の人工光をハウス本体内に照射可能な照明と、
ハウス本体の北側に設置され、透光ガラス窓に相当する横幅で且つ透光ガラス窓よりも大きな縦幅の反射ミラーを有し、太陽を追尾しながら太陽光を透光ガラス窓側に反射し、反射された太陽光が透光ガラス窓の直前で水平なライン状に集光後透光ガラス窓内に導入されるヘリオスタットと、を備えたことを特徴とする農業用ハウス構造。
【請求項2】
ハウス本体の内部に、透光ガラス窓に相当する横幅を有する長尺状のミラーを透光ガラス窓の上端に対応する北側端から南側へ向けて斜め下方へ傾斜するように複数設けたルーバー状の拡散ミラーが設けられ、
該拡散ミラーの各ミラーが透光ガラス窓から導入された太陽光を栽培ベッドへ向けて反射する角度に設定されていることを特徴とする請求項1記載の農業用ハウス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用ハウス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナなど、不透光でボックス状のハウス本体を用意し、そのハウス本体の内部温度を理想的に管理すると共に、ハウス本体内に設けられたLED照明から栽培植物の成長に最適な波長の人工光を照射するクローズ型の農業用ハウスが知られている。
【0003】
LED照明により必要な波長の光を植物に照射しているが、必要な光をすべてLED照明でまかなうと、照明用電力が過大に必要となるため、ハウス本体の一部に小さな透光ガラス窓部を形成し、昼間はその透光ガラス窓から自然な太陽光を導入し、照明用電力の低減を図っている。透光ガラス窓が小さいため外部環境の影響を受けずにハウス本体内における温度制御の容易性を保つことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の関連技術にあっては、ハウス本体に形成された小さな透光ガラス窓からそのサイズに見合う分の太陽光しかハウス本体内に導入できないため、太陽光導入の効果が小さく、照明用電力の低減を十分に図ることができなかった。
【0006】
本発明はこのような従来の関連技術に着目してなされたものであり、小さな透光ガラス窓でも必要時に十分な太陽光をハウス本体内に導入することができる農業用ハウス構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術的側面によれば、不透光のボックス形状で、北側の側面の上方のみに縦幅が小さく横幅が東西方向に大きい透光ガラス窓が設けられたハウス本体と、ハウス本体の内部に東西方向に沿った状態で設けられた栽培ベッドと、栽培植物の成長に必要な波長の人工光をハウス本体内に照射可能な照明と、ハウス本体の北側に設置され、透光ガラス窓に相当する横幅で且つ透光ガラス窓よりも大きな縦幅の反射ミラーを有し、太陽を追尾しながら太陽光を透光ガラス窓側に反射し、反射された太陽光が透光ガラス窓の直前で水平なライン状に集光後透光ガラス窓内に導入されるヘリオスタットと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の技術的側面によれば、ハウス本体の内部に、透光ガラス窓に相当する横幅を有する長尺状のミラーを透光ガラス窓の上端に対応する北側端から南側へ向けて斜め下方へ傾斜するように複数設けたルーバー状の拡散ミラーが設けられ、該拡散ミラーの各ミラーが透光ガラス窓から導入された太陽光を栽培ベッドへ向けて反射する角度に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の技術的側面によれば、透光ガラス窓よりも大きな面積の反射ミラーを有するヘリオスタットで、必要時に十分な量の太陽光を透光ガラス窓からハウス本体内に導入することができる。従って太陽光を導入している間は照明の出力を低下させたり或いは消灯することができ、その分照明用電力を確実に低減させることができる。ヘリオスタットで反射された太陽光は透光ガラス窓の直前でライン状に集光するため、透光ガラス窓のサイズは小さいままでもヘリオスタットで反射された太陽光の全てをハウス本体内に導入することができる。
【0010】
本発明の第2の技術的側面によれば、透光ガラス窓からハウス本体内に導入された太陽光の全てを拡散ミラーで反射して栽培ベッド側へ向けることができるため、栽培ベッドから外れて無駄になる太陽光がなく効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】ハウス本体とヘリオスタットを南北方向に沿って断面した断面図。
【
図4】ハウス本体を東西方向に沿って断面した断面図。
【
図5】
図1中矢示SA-SA線に沿う透光ガラス窓の断面図。
【
図6】
図2中矢示SB-SB線に沿う反射ミラーの断面図。
【
図7】拡散ミラーで太陽光を栽培ベッドに向けて反射している状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図8は本発明の好適な実施形態を示す図である。尚、東西南北の方向性は
図1に示された通りである。
【0013】
ハウス本体1はコンテナを利用したボックス形状で、長手方向を東西方向に向けた状態で設置されている。ハウス本体1は南北方向及び東西方向でそれぞれ対面する一対の側面2、3を有し、屋根面4は水平である。
【0014】
ハウス本体1の各面は金属板の間に断熱材を設けた構造で、ハウス本体1の内部の断熱性は保たれている。このような断面構造のためハウス本体1の各面は不透光で、基本的に外部からの光は内部に侵入しないようになっている。
【0015】
但し、ハウス本体1の北側の側面2には、その上方に縦幅が小さく横幅が大きい長方形状の透光ガラス窓5が東西方向に沿って2つ設けられている。透光ガラス窓5は、
図5に示すように、2枚の透明な耐熱ガラス6の間にスペーサー7を介して乾燥空気層8を設けた構造で、この部分だけ透光性を有しており、優れた断熱性と耐熱性を有している。透光ガラス窓5はサイズが小さく且つ断熱性を有しているため、ハウス本体1内部の管理された温度環境を変動させることはない。
【0016】
ハウス本体1の内部には、東西方向に沿う上下二段の栽培ベッド9が南北方向で2列設けられている。この栽培ベッド9で植物の栽培が行われる。ハウス本体1の内部の東側端部の上部には室温調整装置10が設けられている。この室温調整装置10に温水と冷水を制御しながら循環することにより、ハウス本体1内を栽培植物にとって最適な内部温度に管理している。
【0017】
ハウス本体1の南北方向の両側の内面にはLED照明11が4個ずつ(計8個)設置されている。このLED照明11から栽培植物の成長に最適な波長の光が上向きに照射されるようになっている。夜間や雨天等で後述する太陽光Lの補助がない場合は、このLED照明11だけをハウス本体1内に照射して、ハウス本体1の内部で乱反射させながら栽培ベッド9の栽培植物に必要な人工光を与えるようになっている。
【0018】
栽培ベッド9の上部にはルーバー状の拡散ミラー12が設けられている。この拡散ミラー12は透光ガラス窓5に相当する横幅を有する長尺状のミラー13を透光ガラス窓5の上端に対応する北側端から南側へ向けて斜め下方へ傾斜するように複数設けた構造をしている。各ミラー13の角度は中心軸14を中心に回転させることにより変更自在で、北側から南側に掛けて漸次角度が水平に対して大きくなるように予め設定されている。
【0019】
このような構造をしたハウス本体1の外側には、その北側に2基のヘリオスタット15がそれぞれ各透光ガラス窓5に対応した状態で設けられている。このヘリオスタット15は、
図2に示すように、支柱16と、支柱16に対して水平方向で回転自在(H方向)な水平シャフト17と、水平シャフト17に対して高度方向で回転自在(V方向)な反射ミラー18から構成されている。
【0020】
反射ミラー18の横幅は透光ガラス窓5に相当し、縦幅は透光ガラス窓5よりも十分に大きい。この反射ミラー18は複数の分割された要素から構成され、各要素を架台19に取付けた構造になっている。そして反射ミラー18の各要素は角度が上下方向でのみ変化しており、全体として反射ミラー18が上下方向で湾曲した状態になっている。反射ミラー18の表面には波長選択膜20が設けられており、太陽光Lのうちで栽培植物の光合成に必要な波長のみを反射して、それ以外の波長領域(主に赤外域)は除外されるようになっている。
【0021】
水平シャフト17のH方向での回転と反射ミラー18のV方向での回転はそれぞれモータ(図示省略)により制御される。ハウス本体1に対してこのヘリオスタット15で反射された太陽光Lの導入が必要な場合には、反射ミラー18を太陽Sに連動させて稼働させ、太陽光Lを常に透光ガラス窓5に向けて反射することができる。
【0022】
ヘリオスタット15の反射ミラー18が全体として上下方向で湾曲した状態になっているため、反射ミラー18で反射された太陽光Lは透光ガラス窓5の直前で水平なラインP状に集光し、その後に透光ガラス窓5からハウス本体1内に導入される。 太陽光Lは透光ガラス窓5の直前でラインP状に集光するため、サイズの小さい透光ガラス窓5でもヘリオスタット15で反射された太陽光Lの全てをハウス本体1内に導入することができる。
【0023】
ヘリオスタット15で反射された太陽光Lは集光された状態で透光ガラス窓5を通過するため、透光ガラス窓5は太陽光Lにより加熱されるが、透光ガラス窓5が2枚の耐熱ガラス6により形成されているため問題ない。
【0024】
ハウス本体1内に導入された太陽光Lは再び上下方向に拡散しながらルーバー状の拡散ミラー12に当たる。拡散ミラー12の各ミラー13の角度が北側から南側に掛けて漸次水平に対して大きくなるように予め設定されているため、透光ガラス窓5からハウス本体1内に導入された太陽光Lの全てを拡散ミラー12で反射して栽培ベッド9へ向けることができる。
【0025】
例えば、
図7中の太陽光L′はミラー13の角度を変化させない場合の反射方向を示しており、このようにミラー13の角度を南側に向けて漸次大きくしないと、ミラー13で反射された太陽光L′は栽培ベッド9から外れた方向へ向かい無駄になる。しかしこの実施形態の拡散ミラー12によれば栽培ベッド9から外れて無駄になる太陽光Lがないため効率的である。
【0026】
反射された太陽光Lには栽培植物の光合成に必要な波長が含まれるため確実に成長させることができると共に、不要な赤外領域の光が除かれているため、ハウス本体1の内部温度を必要以上に上昇させて、室温調整装置10への負荷を増加させることがない。
【0027】
以上説明したように、透光ガラス窓5よりも大きな面積の反射ミラー18を有するヘリオスタット15で、必要時に十分な量の太陽光Lを透光ガラス窓5からハウス本体1内に導入することができる。従って太陽光Lを導入している間はLED照明11の出力を低下させたり或いは消灯することができ、その分LED照明11の電力を確実に低減させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウス本体
2 側面(南北)
5 透光ガラス窓
9 栽培ベッド
11 LED照明
12 拡散ミラー
13 ミラー
15 ヘリオスタット
18 反射ミラー
L 太陽光
S 太陽
H 水平方向回転
V 高度方向回転
P 集光ライン