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  • 特開-中空糸膜モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102353
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20220630BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20220630BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 500
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217039
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 政巳
【テーマコード(参考)】
2D132
4D006
【Fターム(参考)】
2D132FA12
4D006GA02
4D006HA03
4D006JA13A
4D006JA13C
4D006JA25Z
4D006JB06
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB06
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】ろ過対象となる液体が高温高圧の場合であっても、長期に亘り安定的にろ過を行うことを可能とする中空糸膜モジュールを提供する。
【解決手段】開口部111を有するケース110と、ケース110内に配される複数の中空糸膜120と、開口部111側で、複数の中空糸膜120の各中空内部を開放させた状態で、複数の中空糸膜120間及びケース110の内壁面との間の隙間を封止し、かつ複数の中空糸膜120をケース110に固定する封止固定部130と、を備える中空糸膜モジュール100であって、封止固定部130は、環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃でのデュロメータタイプDの硬度が30以上の耐熱性ポリウレタンにより構成されると共に、厚みが25mm以上であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケースと、
前記ケース内に配される複数の中空糸膜と、
前記開口部側で、前記複数の中空糸膜の各中空内部を開放させた状態で、前記複数の中空糸膜間及び前記ケース内壁面との間の隙間を封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定する封止固定部と、
を備える中空糸膜モジュールであって、
前記封止固定部は、
環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃での前記硬度が30以上の耐熱性ポリウレタンにより構成されると共に、
厚みが25mm以上であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
シャワーヘッドに備えられることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器などに好適に用いられる中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水器などにおいては、原水中の異物をろ過するために、中空糸膜モジュールが広く利用されている。中空糸膜モジュールにおいては、ケース内に複数の中空糸膜が配されている。そして、ケースの開口部側には、複数の中空糸膜の各中空内部を開放させた状態で、複数の中空糸膜間及びケース内壁面との間の隙間を封止し、かつ複数の中空糸膜をケースに固定する封止固定部が設けられている。封止固定部は、ポッティング剤を硬化させることにより得られる。
【0003】
上記のように構成される中空糸膜モジュールにおいて、ろ過対象の原水が高温高圧の場合には、ポッティング剤の加水分解や加圧変形によって、封止固定部がケースから剥離してしまうおそれがある。これにより、ろ過が適切に行われないおそれもある。この対策として、別途、Oリングなどのシールリングを設ける技術も知られているが、部品点数が増加してしまうため、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-302907号公報
【特許文献2】特開平9-187626号公報
【特許文献3】特開平11-197460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ろ過対象となる液体が高温高圧の場合であっても、長期に亘り安定的にろ過を行うことを可能とする中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明の中空糸膜モジュールは、
開口部を有するケースと、
前記ケース内に配される複数の中空糸膜と、
前記開口部側で、前記複数の中空糸膜の各中空内部を開放させた状態で、前記複数の中空糸膜間及び前記ケース内壁面との間の隙間を封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定する封止固定部と、
を備える中空糸膜モジュールであって、
前記封止固定部は、
環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃での前記硬度が30以上の耐熱性ポリウレタンにより構成されると共に、
厚みが25mm以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ろ過対象となる液体が、温水のように高温の液体であって、かつ圧力が高い場合であっても、封止固定部がケースから剥がれてしまうことを抑制することができる。
【0009】
上記の中空糸膜モジュールが、シャワーヘッドに備えられるとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、ろ過対象となる液体が高温高圧の場合であっても、長期に亘り安定的にろ過を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施例1に係る中空糸膜モジュールを備えるシャワーヘッドの概略構成図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る中空糸膜モジュールの概略構成図である。
図3図3は本発明の実施例2に係る中空糸膜モジュールの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(実施例1)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係る中空糸膜モジュール及びシャワーヘッドについて説明する。図1は本発明の実施例1に係る中空糸膜モジュールを備えるシャワーヘッドの概略構成図である。図1においては、シャワーヘッドの内部構造が分かるように、シャワーヘッドの一部を破断した図を示している。図2は本発明の実施例1に係る中空糸膜モジュールの概略構成図であり、中空糸膜モジュールの概略構成を断面図にて示している。
【0014】
<シャワーヘッド>
シャワーヘッド10は、ユーザに握られるハウジング11を備えている。このハウジング11においては、その内部に、中空糸膜モジュール100が着脱自在となるように構成されている。このように構成されるシャワーヘッド10によれば、水道水などの原液中の異物(浮遊物)を、中空糸膜モジュール100によって、ろ過することができる。
【0015】
<中空糸膜モジュール>
中空糸膜モジュール100は、開口部111を有するケース110と、ケース110内に配される複数の中空糸膜120と、ケース110の開口部111側に設けられる封止固定部130とを備えている。ケース110の形状については、円筒状の他、直方体状など、各種の構成を採用し得る。封止固定部130は、ケース110の開口部111側で、複数の中空糸膜120の各中空内部を開放させた状態で、複数の中空糸膜120間及びケース110の内壁面との間の隙間を封止し、かつ複数の中空糸膜120をケース110に固定する役割を担っている。本実施例に係る封止固定部130は、ポッティング剤である液状の耐熱性ポリウレタンが硬化することにより得られる。すなわち、例えば、まず、ケース110内に複数の中空糸膜120が配された状態で、ケース110の開口部111の付近に液状の耐熱性ポリウレタンが充填される。その後、耐熱性ポリウレタンを硬化させることで、封止固定部130が得られる。これにより、複数の中空糸膜120間の隙間が埋まり、かつ、ケース110の内壁面に接着された状態の封止固定部130が得られる。なお、耐熱性ポリウレタンが硬化した後に、ケース110の端部の一部を、硬化後の耐熱性ポリウレタンの一部と複数の中空糸膜120の端部と共に切断することによって、複数の中空糸膜120の各中空内部が開放された状態となる。また、ケース110には、開口部111とは反対側に貫通孔112が設けられている。
【0016】
この中空糸膜モジュール100に対し、貫通孔112から水道水などの原水を供給させる(図2中、矢印A参照)と、複数の中空糸膜120により、それぞれろ過された液体が、各中空糸膜120の中空内部を通って、開口部111から排出される(矢印B参照)。また、開口部111側から複数の中空糸膜120の各中空内部に原水を供給することで、中空糸膜120によりろ過された液体を、貫通孔112から排出させることもできる。
【0017】
以上のように構成される中空糸膜モジュール100を、上記のシャワーヘッド10に適用する場合には、封止固定部130は、60℃程度の高温高圧の温水に曝され得る。そこで、本実施例に係る封止固定部130においては、封止固定部130がケース110から剥がれてしまわないように、以下の構成を採用している。
【0018】
すなわち、本実施例に係る封止固定部130は、環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃でのデュロメータタイプDの硬度が30以上の耐熱性ポリウレタンにより構成されている。また、封止固定部130は、厚みT(図2に示すように、中空糸膜120の長手方向の厚み)が25mm以上40mm以下となるように構成されている。
【0019】
<本実施例に係る中空糸膜モジュールの優れた点>
本実施例に係る中空糸膜モジュール100によれば、封止固定部130が上記のような耐熱性ポリウレタンにより構成されることにより、封止固定部130が加水分解してしまうことを抑制することができる。また、封止固定部130の厚みTを25mm以上に設定したことで、封止固定部130が圧力により変形してしまうことを抑制することができる。このように、本実施例に係る中空糸膜モジュール100によれば、ろ過対象となる液体が高温高圧の場合であっても、長期に亘り安定的にろ過を行うことができる。また、ケース110と封止固定部130との間の隙間から漏れる液体を封止するためのシールリングなどを、別途設ける必要もない。なお、封止固定部130の厚みの上限に関しては、厚みが厚くなるにつれて膜面積が小さくなることに伴う目詰まり寿命(流量が低下してしまう)の観点から40mm以下に設定するのが望ましい。
【0020】
以下、評価試験結果について説明する。評価試験として、60℃の温水を、0.5MPaの圧力にて、中空糸膜の膜内に繰り返し通水する加圧試験を行った。その結果、上述した本実施例に係る中空糸膜モジュール100の構成において、厚みTが30mmの場合には、5000回加圧した後においても、封止固定部130の剥がれ等は発生しなかった。厚みTが40mmの場合にも同様の結果が得られた。これに対し、厚みTが10mmの場合には、2回の加圧後に封止固定部の剥離が発生した。また、厚みTが20mmの場合には、100回の加圧後に、封止固定部のケースからの一部離脱が認められた。なお、評価試験では、封止固定部の材料については、いずれも同一の材料(環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃でのデュロメータタイプDの硬度が30以上の耐熱性ポリウレタン)を用いた。また、評価試験では、内径が42mmの円筒状のケース110を採用した。
【0021】
なお、本実施例に係る中空糸膜モジュール100は、シャワーヘッド10に限らず、各種ろ過装置に適用可能である。特に、高温高圧の液体をろ過するためのろ過装置に好適に用いることができる。
【0022】
(実施例2)
図3には、本発明の実施例2が示されている。図3は本発明の実施例2に係る中空糸膜モジュールの概略構成図であり、中空糸膜モジュールの概略構成を断面図にて示している。
【0023】
中空糸膜モジュール200は、一対の開口部211,212を有するケース210と、ケース210内に配される複数の中空糸膜220と、ケース210における一対の開口部211,212側にそれぞれ設けられる封止固定部231,232とを備えている。ケース210の形状については、円筒状の他、直方体状など、各種の構成を採用し得る。封止固定部231,232の役割については、上記実施例1で説明した通りである。また、本実施例に係る封止固定部231,232についても、上記実施例1と同様に、ポッティング剤である液状の耐熱性ポリウレタンが硬化することにより得られる。封止固定部231,232の製法についても、上記実施例1で説明した製法を採用し得る。また、本実施例に係るケース210には、側面に貫通孔213が設けられている。
【0024】
この中空糸膜モジュール200に対し、開口部211側から複数の中空糸膜220の各中空内部に原水を供給する(図中、矢印C参照)ことで、各中空糸膜220によりろ過された液体を、貫通孔213から排出させることができる(図中、矢印E参照)。なお、ろ過されなかった液体は、開口部212側から排出される(図中、矢印D参照)。また、貫通孔213から原水を供給することで、ろ過された液体を、複数の中空糸膜220の各中空内部を通じて、開口部211側及び開口部212側から排出させることもできる。
【0025】
本実施例に係る封止固定部231,232においても、環境温度が23℃でのデュロメータタイプDの硬度が50以上、かつ環境温度が80℃でのデュロメータタイプDの硬度が30以上の耐熱性ポリウレタンにより構成されている。また、封止固定部231,232は、厚みT(図3に示すように、中空糸膜220の長手方向の厚み)が25mm以上40mm以下となるように構成されている。
【0026】
以上のように構成される中空糸膜モジュール200においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 シャワーヘッド
11 ハウジング
100,200 中空糸膜モジュール
110,210 ケース
111,211,212 開口部
112,213 貫通孔
120,220 中空糸膜
130,231,232 封止固定部
T 厚み
図1
図2
図3