(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102360
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220630BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
B65G61/00 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217048
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】390002761
【氏名又は名称】キヤノンマーケティングジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592135203
【氏名又は名称】キヤノンITソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189751
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友輔
(72)【発明者】
【氏名】吉持 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、品目ごとに決定された目標サービス率を満たすように、時系列にリスクを分散した在庫補充予定を作成する仕組みを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、品目の目標サービス率を取得し、当該品目の将来の時系列の出庫数を予測する情報処理装置であって、前記取得された目標サービス率に基づいて、前記予測された時系列の出庫数を調整する出庫調整手段と、前記調整された時系列の出庫数に基づいて、前記品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する補充決定手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
品目の目標サービス率を取得し、当該品目の将来の時系列の出庫数を予測する情報処理装置であって、
前記取得された目標サービス率に基づいて、前記予測された時系列の出庫数を調整する出庫調整手段と、
前記調整された時系列の出庫数に基づいて、前記品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する補充決定手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記決定された在庫補充数に係る金額を算出する金額算出手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
複数の品目の在庫補充に係る予算金額を取得する予算取得手段と、
前記複数の品目において前記算出された金額の合計と前記予算金額とを比較する比較手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記比較された結果に基づいて、前記複数の品目の前記決定された時系列の在庫補充数を調整する補充調整手段と、
前記複数の品目の調整された在庫補充数で充足可能な出庫数に基づいて、前記複数の品目の達成可能な目標サービス率を逆算する逆算手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記逆算された前記複数の品目の達成可能な目標サービス率を出力する出力制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
品目の将来の時系列の出庫数を予測し、当該品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する情報処理装置であって、
前記予測された出庫数および前記決定された在庫補充数に基づいて、前記品目の達成可能な目標サービス率を逆算する逆算手段と、
前記逆算された前記品目の達成可能な目標サービス率を出力する出力制御手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
品目の目標サービス率を取得し、当該品目の将来の時系列の出庫数を予測する情報処理装置の制御方法であって、
出庫調整手段が、前記取得された目標サービス率に基づいて、前記予測された時系列の出庫数を調整する出庫調整ステップと、
補充決定手段が、前記調整された時系列の出庫数に基づいて、前記品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する補充決定ステップと
を備えることを特徴とする情報処理装置
【請求項8】
品目の目標サービス率を取得し、当該品目の将来の時系列の出庫数を予測する情報処理装置において実行可能なプログラムであって、
前記情報処理装置を、
前記取得された目標サービス率に基づいて、前記予測された時系列の出庫数を調整する出庫調整手段と、
前記調整された時系列の出庫数に基づいて、前記品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する補充決定手段
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫補充判断を支援する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
在庫管理とは、常に変動する需要に対し製品・商品の在庫品の数量が適切になるよう補充することを指す。補充を適切に行うことで、欠品リスク(機会損失、信用の失墜、など)や、過剰在庫リスク(保管コスト、売れ残り廃棄、など)を低減することができる。
【0003】
補充量は、一般に、現在庫、入庫予定、出庫予定から将来の在庫予定を算出し、在庫予定と安全在庫とを比較し、不足分を補充する。
【0004】
安全在庫は、需要の上振れに備えて余分に保有する在庫であり、品目の欠品リスクと過剰在庫リスクを総合的に勘案して判断する。
【0005】
ここで、高額な品目に対する在庫管理を考える。高額な品目は過剰在庫リスクが高いため安全在庫を持たず、受注都度補充とすることで欠品リスクを負わないようにすることが多い。しかし、受注都度補充とした場合、補充のリードタイムが長いと顧客からの受注にタイムリーに対応できない。そこで、高額な品目についても見込み補充することを考える。
【0006】
高額な品目は、1個の補充により欠品リスク、過剰在庫リスクが大きく変動するために、「補充する」or「補充しない」をより厳密に判断することが求められる。
【0007】
特許文献1では、補充数量を適切に決定する方法として、次に示す方法が開示されている。
【0008】
品物を補充する場合の補充単位に対する余りの数に基づいた補充の目安となる値を登録する登録手段、上記品物に対する販売数を取得する取得手段、およびこの取得手段により取得した品物の販売数と、上記登録手段により登録されている補充の目安となる値と、に基づいて補充量を判断する判断手段、から補充量を決定する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、補充単位に対する余りの数に基づいた補充の目安となる値を人手で登録しておく必要があるため、リスク最小となる値を登録することが直感的に困難である。
【0011】
また、別の視点を挙げる。
【0012】
通常、在庫管理対象品目は複数であるため、特許文献1による方法では品目毎の補充を独立に判断することになる。この場合、安全在庫を品目ごとに保持することになるため、複数品目間の需要変動の打消し合いを考慮できない。
【0013】
さらに、近年受注に対する供給ではなく、一定の条件下で金額を固定して物品を供給する仕組み(サブスクリプション)が進展しており、決められた予算枠内で物品を補充するニーズが増えている。
【0014】
ここで、需要の読み違いや価格の高騰等により、各品目の目標サービス率維持に必要な補充額が予算を超えた(あるいは超えることが予見された)局面を考える。
【0015】
この局面で目標サービス率を維持するよう補充を行った場合、ある品目の補充が将来過剰在庫となって予算を圧迫し、別の品目の補充が行えなくなる懸念がある。
【0016】
一方で、将来の予算を留保すべく直近の目標サービス率を暫定的に下げた場合、直近の欠品リスクが増大してしまう。
【0017】
したがって、予算枠維持の制約がある中で、時系列で欠品リスクをバランスさせるよう目標サービス率を調整することが必要である。
【0018】
本発明は上記を鑑みてなされたもので、品目ごとに決定された目標サービス率を満たすように、時系列にリスクを分散した在庫補充予定を作成する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、品目の目標サービス率を取得し、当該品目の将来の時系列の出庫数を予測する情報処理装置であって、前記取得された目標サービス率に基づいて、前記予測された時系列の出庫数を調整する出庫調整手段と、前記調整された時系列の出庫数に基づいて、前記品目の将来の時系列の在庫補充数を決定する補充決定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、品目ごとに決定された目標サービス率を満たすように、時系列にリスクを分散した在庫補充予定を作成する仕組みを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本発明の実施形態の在庫補充計画システムのシステム構成の一例を示すブロック図
【
図3】本発明の実施形態の情報処理装置に適用可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図4】本発明の実施形態の在庫補充計画システムの機能構成の一例を示すブロック図
【
図5】本発明の実施形態の在庫補充計画システムで使用するテーブル類のデータ構成例およびデータ例
【
図6】本発明の実施形態の在庫補充計画システムで使用するテーブル類のデータ構成例およびデータ例
【
図7】サービス率補正処理の一例を示すフローチャート
【
図8】出庫予定算出処理の一例を示すフローチャート
【
図9】目標サービス率を加味した出庫予定数を算出する方式の一例を示す図
【
図10】在庫予定算出処理の一例を示すフローチャート
【
図12】サービス率補正値算出処理の一例を示すフローチャート
【
図14】目標サービス率の補正値を逆算する方式の一例を示す図
【
図16】在庫補充判断処理の一例を示すフローチャート
【
図17】補充アラート算出処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の一例を説明する。
【0023】
図1を参照してサービス率補正値算出の考え方を説明する。
【0024】
サービス率補正とは、期末時点までの残予算と、出庫予定数を金額換算して得られる必要額に基づき、予算に収まるように各品目の目標サービス率を補正することを指す。
【0025】
ここで、残予算は、予算から期初~現在までの出庫実績数を金額換算したものを差し引いて求める。また、予算は、あらかじめ決められた金額を設定する。たとえば、各品目の出庫実績と目標サービス率、期間中に基づき出庫予定数を算出し、それに単価をかけて求めることができる。
【0026】
目標サービス率は、品目の重要度(欠品リスクの大きさ)などに応じて決定しておく。
【0027】
また、出庫予定数は、何らかの予測手法により求めた数量に、目標サービス率に応じた上振れを考慮して求める。
【0028】
本実施例では、需要の分布が、出庫頻度×期間の数量を平均、分散とする正規分布に従うと仮定し、累積確率が目標サービス率となる数量を出庫予定数とする予測手法を利用しているが、他の予測手法でも構わない。
【0029】
必要額が残予算を超えた場合は、超過分の削減を各品目に配分し、配分により目減りした出庫予定数に基づき、目標サービス率を逆算する。
【0030】
図2は、本発明における在庫補充計画システムのシステム構成の一例を示す図である。図中の管理サーバ103は、本発明の情報処理装置として機能する装置であり、クライアント101、102からのリクエストを受け付けると、後述する各種処理を行う。101、102はクライアント装置であって、管理サーバ103に対してリクエストを行うためにユーザが用いる端末装置である。103は、管理サーバ103とクライアント101、102を相互に通信可能に接続するLAN(Local Area Network)等のネットワークである。
【0031】
次に、
図3を参照して、
図2の管理サーバ103に適用可能な情報処理装置のハードウェア構成の一例を説明する。
【0032】
CPU201は、システムバス204に接続される後述の各デバイスやコントローラを統括的に制御する。また、ROM202あるいは外部メモリ211には、CPU201の制御プログラムであるBIOS(Basic Input / Output System)やオペレーティングシステムプログラム(以下、OS)や、各サーバ或いは各PCの実行する機能を実現するために必要な後述する各種プログラム等が記憶されている。RAM203は、CPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0033】
CPU201は、処理の実行に際して必要なプログラム等をRAM203にロードして、プログラムを実行することで各種動作を実現するものである。また、入力コントローラ(入力C)205は、キーボード209や不図示のマウス等のポインティングデバイスからの入力を制御する。ビデオコントローラ(VC)206は、ディスプレイ装置210等の表示装置への表示を制御する。ディスプレイ装置は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等である。これらは必要に応じて管理者が使用するものである。本発明には直接関係があるものではない。
【0034】
メモリコントローラ(MC)207は、ブートプログラム、ブラウザソフトウエア、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、各種データ等を記憶するハードディスク(HD)やフロッピーディスク(登録商標 FD)或いはPCMCIAカードスロットにアダプタを介して接続されるフラッシュメモリ等の外部メモリ211へのアクセスを制御する。
【0035】
通信I/Fコントローラ(通信I/FC)208は、ネットワークを介して、外部機器と接続・通信するものであり、ネットワークでの通信制御処理を実行する。例えば、TCP/IPを用いたインターネット通信等が可能である。
【0036】
なお、CPU201は、例えばRAM203内の表示情報用領域へアウトラインフォントの展開(ラスタライズ)処理を実行することにより、ディスプレイ装置210上での表示を可能としている。また、CPU201は、ディスプレイ装置210上の不図示のマウスカーソル等でのユーザ指示を可能とする。
【0037】
本発明の管理サーバの各種処理を実行するために用いられるプログラムは外部メモリ211に記録されており、必要に応じてRAM203にロードされることによりCPU201によって実行されるものである。さらに、本発明に係わるプログラムが用いる定義ファイルや各種情報テーブルは外部メモリ211に格納されている。以上が、管理サーバ103に適用可能な情報処理装置のハードウェア構成の一例の説明である。
【0038】
図4は、クライアント101、および、管理サーバ103の機能構成の一例を示す模式図である。
図3に示すように、管理サーバ103は、データ管理部301、送信制御部302、受信制御部303、サービス率補正部304、在庫補充判断部305を備えている。また、クライアント101は、送信制御部311、受信制御部312、入力・表示制御部313を備えている。
【0039】
データ管理部301は、サービス率補正、在庫補充判断に必要となるデータである、出庫系列データ、品目データ、在庫データ、出庫予定データ、入庫予定データ、在庫予定データ、予算データ、アラートデータをそれぞれ管理するためのデータテーブルである出庫系列テーブル301-1、品目テーブル301-2、在庫テーブル301-3、出庫予定テーブル301-4、入庫予定テーブル301-5、在庫予定テーブル301-6、予算テーブル301-7、アラートテーブル301-8を管理する機能部である。これらデータテーブルの構成については、後述することにする。
【0040】
送信制御部302は、データ管理部301で管理されているデータから必要なデータをクライアント101へ送信する機能部である。受信制御部303は、クライアント101から受信したデータをデータ管理部301に記憶する機能部である。サービス率補正部304は、品目テーブル301-2の目標サービス率と出庫予定テーブル301-4に基づき出庫予定を算出し、出庫予定と在庫テーブル301-3の在庫と入庫予定テーブル301-5の入庫予定に基づき在庫予定を算出し、在庫予定と予算テーブル301-7に基づき目標サービス率(補正後)を算出する機能部である。在庫補充判断部305は、目標サービス率(補正後)と出庫予定テーブル301-4に基づき出庫予定を算出し、出庫予定と在庫テーブル301-3の在庫と入庫予定テーブル301-5の入庫予定に基づき在庫予定を算出し、補充アラートを算出する機能部である。
【0041】
送信制御部311は、入力・表示制御部313で入力されたデータから必要なデータを管理サーバ103へ送信する機能部である。受信制御部312は、管理サーバ103から受信したデータを入力・表示制御部313に受け渡す機能部である。入力・表示制御部313は、受信制御部312から受け渡される、補充アラート算出結果を画面表示し、画面操作入力を受け付けて送信制御部311に受け渡す機能部である。
【0042】
次に、
図5(a)を参照して
図4の出庫系列テーブル301-1のデータ構成について説明する。
図5(a)に示すように、出庫系列テーブル301-1は、品目、出庫日、出庫数というデータ項目を有して構成されている。
【0043】
次に、
図5(b)を参照して
図4の品目テーブル301―2のデータ構成について説明する。
図5(b)に示すように、品目テーブル301-2は、品目、目標サービス率(初期値)、目標サービス率(補正値)、目標サービス率(下限値)、出庫頻度、補充LT、単価というデータ項目を有して構成されている。
【0044】
次に、
図5(c)を参照して
図4の在庫テーブル301―3のデータ構成について説明する。
図5(c)に示すように、在庫テーブル301―3は、品目、在庫数というデータ項目を有して構成されている。
【0045】
次に、
図5(d)を参照して
図4の出庫予定テーブル301―4のデータ構成について説明する。
図5(d)に示すように、出庫予定テーブル301―4は、品目、対象期間(From)、対象期間(To)、出庫予定数というデータ項目を有して構成されている。
【0046】
次に、
図5(e)を参照して
図4の入庫予定テーブル301―5のデータ構成について説明する。
図5(e)に示すように、入庫予定テーブル301―5は、品目、入庫予定日、入庫予定数というデータ項目を有して構成されている。
【0047】
次に、
図6(f)を参照して
図4の在庫予定テーブル301―6のデータ構成について説明する。
図6(f)に示すように、在庫予定テーブル301―6は、品目、日付、在庫予定数というデータ項目を有して構成されている。
【0048】
次に、
図6(g)を参照して
図4の予算テーブル301―7のデータ構成について説明する。
図6(g)に示すように、予算テーブル301―7は、契約期末、残期間、残予算というデータ項目を有して構成されている。
【0049】
次に、
図6(h)を参照して
図4のアラートテーブル301―8のデータ構成について説明する。
図6(h)に示すように、アラートテーブル301―8は、品目、アラート、補充数というデータ項目を有して構成されている。
【0050】
以下、各機能の詳細を処理の流れに沿って説明する。
【0051】
図7を参照して、管理サーバ103のCPU201によって行われるサービス率補正処理の概要について説明する。この処理をCPU201に行わせるためのコンピュータプログラムは、外部メモリ211に記憶されており、必要に応じてCPU201は当該コンピュータプログラムをRAM203にロードし、ロードしたコンピュータプログラムによる制御に従って、本処理を行うことになる。
【0052】
サービス率補正処理において、CPU201は、まず、データ管理部301で管理しているサービス率補正処理に用いる各種データを取得する(ステップS001)ここで取得するデータは、出庫系列テーブル301-1に記憶されている出庫系列データ、品目テーブル301-2に記憶されている品目データ、在庫テーブル301-3に記憶されている在庫データ、入庫予定テーブル301-5に記憶されている入庫予定データ、予算テーブル301-7に記憶されている予算データ、である。
【0053】
次に、予測期間を当月~予算期末、目標サービス率を目標サービス率(初期値)に設定する(ステップS002)。
【0054】
ステップS002の設定値をパラメータとして、出庫予定算出処理(ステップS003、
図8で後述)、在庫予定算出処理(ステップS004、
図10で後述)、サービス率補正値算出処理(ステップS005、
図12で後述)を実施し、最後に、算出したサービス率補正値を、目標サービス率(補正値)に設定する(ステップS006)。
【0055】
ここで、
図8を参照して、
図7のステップS003の出庫予定算出処理の詳細について説明する。
【0056】
出庫予定算出処理は、予測期間と目標サービス率に対して、予測期間中の出庫予定を目標サービス率に応じた上振れを考慮して算出する。
【0057】
まず、品目データの各品目に対し、以降の処理(ステップS102~ステップS103)を反復する(ステップS101)。
【0058】
反復処理にて、CPU201は、まず、平均出庫予定数を算出する(ステップS102)。
【0059】
本実施例では、出庫頻度に残契約期間を掛けて算出しているが、他の予測手法、例えば、トレンドや周期性を考慮した手法を用いてもよい。
【0060】
次に、目標サービス率を加味した出庫予定数を算出する(ステップS103)。
【0061】
目標サービス率を加味した出庫予定数を算出する方式の一例を
図9に示す。平均出庫予定数が9.0、目標サービス率85%が与えられた場合、出庫予定数の発生確率が平均、分散とも9.0の正規分布に従うと仮定し、累積確率が85%となる数量を導出すると、出庫予定数は12.1となる。このように期間平均としての出庫予定数を算出することにより、目標サービス率を満たすための上振れ分を時系列に配分することができる。つまり対象期間全体に過剰在庫または欠品のリスクを分散することができる。なお本実施例では、期間全体の平均出庫予定数を算出しているが、時系列の出庫予測結果に基づいて、予測期間ごとに出庫予定数を算出してもよい。また、予測期間ごとに目標サービス率が変動するような場合も、同様に予測期間ごとに算出すればよい。
【0062】
以上が、
図7のステップS003の出庫予定算出処理の詳細である。
【0063】
次に、
図10を参照して、
図7のステップS004の在庫予定算出処理の詳細について説明する。
【0064】
在庫予定算出処理は、予測期間に対して、在庫データ、出庫予定データ、入庫予定データに基づき、予測期間中の在庫予定を算出する。
【0065】
ステップS001で取得した各品目に対して、以降の処理(ステップS202)を反復する(ステップS201)。
【0066】
ステップS202では、在庫予定数を算出する。
【0067】
在庫予定数は、在庫数+予測期間中の入庫予定数-予測期間中の出庫予定数にて算出する。
【0068】
期間を予算期末、目標サービス率を初期値に設定し出庫予定算出処理、在庫予定算出処理を行った結果を
図11に示す。
【0069】
次に、
図12を参照して、
図7のステップS005のサービス率補正値算出処理の詳細について説明する。
【0070】
サービス率補正値算出処理は、期末時点までの残予算と、出庫予定数を金額換算して得られる必要額に基づき、残予算に収まるよう各品目の目標サービス率の補正値を算出する。
【0071】
まず、品目データの各品目に対し、予算期末時点の必要額を算出する。(ステップS301)。
【0072】
必要額は、在庫入庫額+不足額にて算出する。在庫入庫額は(在庫数+入庫予定数)×単価、不足額は予算期末時点の在庫予定数がマイナスの場合は在庫予定数×単価、プラスの場合はゼロとする。
【0073】
次に、全品目の必要額の合計と残予算から充当率を算出し(ステップS302)、充当率と各品目の必要額、在庫入庫額から充当額を算出する(ステップS303)。
【0074】
本実施例では、予算期末までの必要額を公平に充足するよう、充当率は(残予算+在庫入庫額の合計)/必要額の合計により算出し、充当額は必要額×充当率-在庫入庫額により算出しているが、他の方法、例えば、予算期末までの不足額を公平に充足するよう算出してもよい。なお、本実施例では発生していないが、後述のサービス率が目標サービス率(下限値)を下回る場合は目標サービス率(下限値)を下回らないように充当率を調整する。
【0075】
必要額、充当率、充当額を算出した結果を
図13に示す。
【0076】
次に、品目データの各品目に対し、以降の処理(ステップS305~ステップS306)を反復する(ステップS304)。
【0077】
ステップS305では、充当額から予算期末時点の出庫見込数を逆算する。
【0078】
出庫見込数は、充当額でカバーできる出庫数を表し、充当額/単価 +(在庫数+入庫予定数)にて算出する。
【0079】
次に、ステップS305では、出庫見込数からサービス率(目標サービス率の補正値)を逆算する。
【0080】
目標サービス率の補正値を逆算する方式の一例を
図14 に示す。平均出庫予定数が9.0、出庫見込数が5.0と与えられた場合、
図9同様に出庫予定数の発生確率が平均、分散とも9.0の正規分布に従うと仮定し、数量が5.0となる累積確率を導出すると、目標サービス率の補正値は77.1%となる。
【0081】
サービス率補正値算出処理を行った結果を
図15に示す。
【0082】
在庫補充判断とは、補充リードタイム(補充LT)後時点の在庫予定数に基づき、補充アラートを算出することを指す。
【0083】
ここで、在庫予定数は、現在の在庫数に補充LT後までの入庫予定数、出庫予定数を加味して求める。なお、出庫予定数には目標サービス率(補正値)に応じた上振れが加味されていることに注意する。
【0084】
次に、
図16を参照して、管理サーバ103のCPU201によって行われる在庫補充判断処理の概要について説明する。この処理をCPU201に行わせるためのコンピュータプログラムは、外部メモリ211に記憶されており、必要に応じてCPU201は当該コンピュータプログラムをRAM203にロードし、ロードしたコンピュータプログラムによる制御に従って、本処理を行うことになる。
【0085】
在庫補充判断処理において、CPU201は、まず、データ管理部301で管理している在庫補充判断処理に用いる各種データを取得する(ステップS401)ここで取得するデータは、出庫系列テーブル301-1に記憶されている出庫系列データ、品目テーブル301-2に記憶されている品目データ、在庫テーブル301-3に記憶されている在庫データ、入庫予定テーブル301-5に記憶されている入庫予定データ、である。
【0086】
次に、予測期間を当月~補充LT後、目標サービス率を目標サービス率(補正値)に設定する(ステップS402)
ステップS402の設定値をパラメータとして、出庫予定算出処理(ステップS403)、在庫予定算出処理(ステップS404)、補充アラート算出処理(ステップS405)を実施する。
【0087】
ステップS403の出庫予定算出処理、ステップS404の在庫予定算出処理の詳細は説明済のため割愛する。
【0088】
次に 、
図17 を参照して、
図16のステップS405の補充アラート算出処理の詳細について説明する。
【0089】
ステップS001で取得した各品目に対して、以降の処理(ステップS502)を反復する(ステップS501)。
【0090】
ステップS502では、補充アラートを算出する。
【0091】
補充LT後の在庫予定数がマイナスの場合は補充数をそのマイナス分とし補充アラートをOn、プラスの場合は補充数を0とし補充アラートをOffとする。
【0092】
期間を補充LT後、目標サービス率を補正値に設定し出庫予定算出処理、在庫予定算出処理、補充アラート算出処理を行った結果を
図18に示す。
【0093】
補正前は、目標サービス率が高く、品目A、B、Cのすべてが要補充となっていたが、補正後は目標サービス率が抑制されたため、品目A、Bのみが要補充で補充数も減少している。
【0094】
これにより、目標サービス率を維持するように補充したがために将来過剰在庫となって予算を圧迫し、別の品目の補充が行えなくなる事象を低減できると期待できる。
【0095】
また、目標サービス率は予算見合いで抑制されているため、直近の欠品リスクが増大することもないと期待できる。
【0096】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
【0097】
また、本発明におけるプログラムは、各フローチャートの処理方法をコンピュータが実行可能なプログラムである。なお、本発明におけるプログラムは各フローチャートの各装置の処理方法ごとのプログラムであってもよい。
【0098】
以上のように、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムを読み出し、実行することによっても本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0099】
この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、DVD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、シリコンディスク等を用いることが出来る。
【0100】
また、コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0101】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0102】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、ひとつの機器から成る装置に適用しても良い。また、本発明は、システムあるいは装置にプログラムを供給することによって達成される場合にも適応できることは言うまでもない。この場合、本発明を達成するためのプログラムを格納した記録媒体を該システムあるいは装置に読み出すことによって、そのシステムあるいは装置が、本発明の効果を享受することが可能となる。
【0103】
さらに、本発明を達成するためのプログラムをネットワーク上のサーバ、データベース等から通信プログラムによりダウンロードして読み出すことによって、そのシステムあるいは装置が、本発明の効果を享受することが可能となる。なお、上述した各実施形態およびその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
10 情報処理装置
50 処理制御部
100 データ管理部