(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102374
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】バンド及びバンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 5/20 20060101AFI20220630BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A44C5/20 B
A44C5/00 502C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217064
(22)【出願日】2020-12-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り オリオン株式会社は、令和2年2月12日~令和2年2月14日)までの期間中、第6回ウェアラブルEXPO(東京ビッグサイト(東京国際展示場)内)にて、櫻井研、バンジャマンダブーが発明した、添付資料に示される「バンド」を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】397006542
【氏名又は名称】オリオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512086219
【氏名又は名称】株式会社クロスエフェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 研
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン ダブー
(57)【要約】
【課題】従来よりも容易に体の一部に着脱可能なバンド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明のバンドは、身体の一部に巻き付けられることにより身体に装着されるバンドであって、所定方向に延びるバンド本体と、前記バンド本体の一端部に形成される係合部と、前記バンド本体の他端部に形成されるとともに、前記係合部と係合可能な被係合部と、を有する。前記係合部は、前記被係合と係合した係合状態において前記バンド本体によって構成される周の長さである周長が大きくなる方向及び前記所定方向に直交する幅方向への前記被係合部に対する移動が規制されるように前記被係合部に係合する一方、前記周長が小さくなる方向への力が前記バンド本体に付与されたときに、前記被係合部との係合が解除されるように前記被係合部に対して係合可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部に巻き付けられることにより身体に装着されるバンドであって、
所定方向に延びるバンド本体と、
前記バンド本体の一端部に形成される係合部と、
前記バンド本体の他端部に形成されるとともに、前記係合部と係合可能な被係合部と、を有し、
前記係合部は、前記被係合部と係合した係合状態において前記バンド本体によって構成される周の長さである周長が大きくなる方向及び前記所定方向に直交する幅方向への前記被係合部に対する移動が規制されるように前記被係合部に係合する一方、前記周長が小さくなる方向への力が前記バンド本体に付与されたときに、前記被係合部との係合が解除されるように前記被係合部に対して係合可能である、バンド。
【請求項2】
請求項1に記載のバンドにおいて、
前記バンド本体は、物体を取り付けるための取付手段と、前記取付手段から一方へ延びる第1バンド部と、前記取付手段から他方へ延びる第2バンド部と、をさらに有し、
前記係合部は、前記第1バンド部の一端部に設けられ、
前記被係合部は、前記第2バンド部の他端部に設けられる、バンド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバンドにおいて、
前記係合部は、前記幅方向に延びる軸部を有し、
前記被係合部の内側または外側の少なくともいずれか一方側には、前記幅方向に延びるとともに前記係合状態において前記周長が大きくなる方向への前記係合部の移動を規制するように径方向に対して傾斜する方向に開く溝部が形成され、
前記軸部は、当該軸部が前記溝部に係合されることにより、前記周長が大きくなる方向への移動が抑制され、かつ前記周長が小さくなる方向への移動が許容された状態で前記被係合部に係合可能である、バンド。
【請求項4】
請求項3に記載のバンドにおいて、
前記係合部及び前記被係合部は、前記軸部が前記溝部に係合されることにより、前記係合部の前記被係合部に対する前記幅方向への移動が規制されるように互いに嵌合する、バンド。
【請求項5】
請求項4に記載のバンドにおいて、
前記係合部は、ベース部と、前記ベース部から径方向に立ち上がるとともに前記所定方向に延びて前記軸部を前記幅方向に延びた状態で支持する壁部を有し、
前記被係合部は、前記軸部が前記溝部に係合されることにより前記壁部の前記幅方向への移動が規制されるように前記壁部と嵌合可能な嵌合溝とを有する、バンド。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のバンドの製造方法であって、
前記バンド本体の表面形状を形成する表形成面を有する移動型と、前記表形成面に対向するとともに前記バンド本体の裏面形状を形成する裏形成面を有する固定型と、を有する形成型を用いたバンドの製造方法であって、
前記表形成面は、前記溝部を形成するために前記裏形成面に向けて延びる突起部を有し、
前記表形成面と前記裏形成面とを対向させかつ前記移動型と前記固定型とを当接させた状態で前記移動型と前記固定型との間に形成される射出空間内に樹脂材料を射出する工程と、
前記突起部の延びる方向と平行な方向に、前記移動型を前記固定型に対して移動させる工程と、を含む、バンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の一部に装着されるバンド及びこのバンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体の一部、例えば腕に装着して用いられるバンドとして、特許文献1に記載のような腕時計バンドが知られている。この腕時計バンドは、長さ調整孔が形成された一方のバンド部と、この長さ調整孔に挿通可能な突棒が設けられた他方のバンド部と、を有する。
【0003】
他方のバンド部の突棒を一方のバンド部の長さ調整孔に挿通することにより、腕時計バンドを腕に巻き付けた状態で、一方のバンド部と他方のバンド部とを連結することができる。
【0004】
また、他方のバンド部には、一方のバンド部が挿通可能な挿通枠部が設けられており、挿通縁部は、バンドの長手方向に沿って平行に延びる長手縁部を有する。一方のバンド部が挿通枠部に挿通された状態で長手縁部に当接することにより、この一方のバンド部のバンド幅方向への移動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような腕時計バンドを腕に装着する際、その着脱の作業は一般に、腕時計バンドが装着される側の手とは反対側の手で行われる。しかしながら、特許文献1に記載の腕時計バンドでは、他方のバンド部の突棒を一方のバンド部の長さ調節孔に挿通し、さらに一方のバンド部を挿通枠部に挿通する必要があり、これらの作業を片手で行うのは非常に不便であった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、従来よりも容易に身体の一部に着脱可能なバンド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のバンドは、身体の一部に巻き付けられることにより身体に装着されるバンドであって、所定方向に延びるバンド本体と、前記バンド本体の一端部に形成される係合部と、前記バンド本体の他端部に形成されるとともに、前記係合部と係合可能な被係合部と、を有し、前記係合部は、前記被係合と係合した係合状態において前記バンド本体によって構成される周の長さである周長が大きくなる方向及び前記所定方向に直交する幅方向への前記被係合部に対する移動が規制されるように前記被係合部に係合する一方、前記周長が小さくなる方向への力が前記バンド本体に付与されたときに、前記被係合部との係合が解除されるように前記被係合部に対して係合可能である。
【0009】
本発明のバンドによれば、前記係合部は、前記バンド本体の係合状態において前記周長が大きくなる方向及び前記所定方向に直交する幅方向への前記被係合部に対する移動が規制されるように前記被係合部に係合する。このため、係合部と被係合部との所定方向及び幅方向への位置ずれを抑制した状態で、バンド本体を身体の一部に装着することができる。
【0010】
また、前記周長が小さくなる方向への力が前記バンド本体に付与されたときに、前記係合部と前記被係合部との係合が解除されるので、バンドの周長を小さくする方向への力をこのバンドに付与することで容易に係合部と被係合部との係合を解除し、バンドを身体から取り外すことができる。
【0011】
前記バンドにおいて、前記バンド本体は、物体を取り付けるための取付手段と、前記取付手段から一方へ延びる第1バンド部と、前記取付手段から他方へ延びる第2バンド部と、をさらに有し、前記係合部は、前記第1バンド部の一端部に設けられ、前記被係合部は、前記第2バンド部の他端部に設けられるのが好ましい。
【0012】
このように構成すれば、取付手段に物体を取り付けた状態で、第1バンド部の係合部と第2バンド部の被係合部同士を係合することができる。すなわち、バンドにより物体を身体に装着することができる。
【0013】
前記バンドにおいて、前記係合部は、前記幅方向に延びる軸部を有し、前記被係合部の内側または外側の少なくともいずれか一方には、前記幅方向に延びるとともに前記係合状態において前記周長が大きくなる方向への前記係合部の移動を規制するように前記径方向に対して傾斜する方向に開く溝部が形成され、前記軸部は、当該軸部が前記溝部に係合されることにより、前記周長が大きくなる方向への移動が抑制され、かつ前記周長が小さくなる方向への移動が許容された状態で前記被係合部に係合可能であるのが好ましい。
【0014】
このように構成すれば、前記被係合部には、前記幅方向に延びる溝部が形成されているので、係合部の軸部を溝部に係合させることにより係合部と被係合部とを係合することができる。
【0015】
また、溝部は、前記バンド本体の前記係合状態において前記周長が大きくなる方向への前記係合部の移動を規制するように前記径方向に対して傾斜する方向の一方側に開いている。このため、バンド本体の係合状態において、周長が大きくなる方向への力がバンド本体に付与されている時に、周長が大きくなる方向への係合部の移動を規制することができる。
【0016】
また、前記軸部は、当該軸部が前記溝部に外側から係合されることにより、前記周長が大きくなる方向への移動を規制し、かつ前記周長が小さくなる方向への移動を許容する。このため、バンド本体の係合状態において、このバンド本体に周長が小さくなる方向への力を付与することで、バンド本体を身体から容易に取り外すことができる。
【0017】
前記バンドにおいて、前記係合部及び前記被係合部は、前記軸部が前記溝部に係合されることにより、前記係合部の前記被係合部に対する前記幅方向への移動が規制されるように互いに嵌合するのが好ましい。
【0018】
このように構成すれば、軸部が溝部に係合されることにより、容易に係合部の被係合部に対する幅方向への移動が規制される。このため、バンドを身体に巻き付けた状態の係合部と被係合部同士の横ずれを容易に抑制することができる。
【0019】
前記バンドにおいて、前記係合部は、ベース部と、前記ベース部から径方向に立ち上がるとともに前記所定方向に延びて前記軸部を前記幅方向に延びた状態で支持する壁部を有し、前記被係合部は、前記軸部が前記溝部に係合されることにより前記壁部の幅方向への移動が規制されるように前記壁部と嵌合可能な嵌合溝とを有するのが好ましい。
【0020】
このように構成すれば、前記係合部は、ベース部と、前記ベース部から径方向に立ち上がるとともに前記所定方向に延びて前記軸部を前記幅方向に延びた状態で支持する壁部を有することにより、前記係合部に対する前記被係合部の前記幅方向への移動を規制するので、溝部に係合可能となるように軸部を支持する壁部を、幅方向への移動を規制するために用いることができる。
【0021】
また、係合部は、第1バンド部の一端部に設けられ、被係合部は、第2バンド部の他端部に設けられているので、第1バンド部の一端部と第2バンド部の他端部同士を係合することができる。
【0022】
前記バンドの製造方法は、前記バンド本体の表面形状を形成する表形成面を有する移動型と、前記表形成面に対向するとともに前記バンド本体の裏面形状を形成する裏形成面を有する固定型と、を有する形成型を用いたバンドの製造方法であって、前記表形成面は、前記溝部を形成するために前記裏形成面に向けて延びる突起部を有し、前記表形成面と前記裏形成面とを対向させかつ前記移動型と前記固定型とを当接させた状態で前記移動型と前記固定型との間に形成される射出空間内に樹脂材料を射出する工程と、前記突起の延びる方向と平行な方向に、前記移動型を前記固定型に対して移動させる工程と、を含む、のが好ましい。
【0023】
このようなバンドの製造方法によれば、前記表形成面には、前記裏形成面に対向して設けられるとともに前記移動型の移動方向に延びる突起部が形成されているので、射出空間内に樹脂材料を射出したときに、前記移動型の移動方向に延びる溝部を前記バンド本体に形成することができる。このため、バンド本体の係合状態において周長が大きくなる方向への被係合部に対する係合部の移動を規制する溝部を、このバンド本体に形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも容易に身体の一部に着脱可能なバンド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るバンドを腕に装着した状態を表す斜視図である。
【
図4】前記バンドに係る係合部を裏面から見た平面図である
【
図5】前記バンドの係合状態における係合部と被係合部の係合状態を説明するための斜視図である。
【
図6】前記バンドの係合状態における係合部及び被係合部の断面図である。
【
図7】前記バンドの巻付解除状態における係合部及び被係合部の横断面図である。
【
図8】前記バンドの製造方法に係る形成型を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るバンド1について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
バンド1は、
図1に示すように、身体の一部、例えば腕3に巻き付けられることによりこの腕3に装着されるリストバンドである。バンド1は、
図1~
図3に示すように、所定方向(長手方向)に延びるバンド本体10を有する。
【0028】
以下では、バンド1を腕3に巻き付けて装着した係合状態でバンド1が腕3に接する側(内側)の面を裏面、バンド1の裏面とは反対側(外側)の面を表面として説明する。
【0029】
バンド本体10は、例えばエラストマー樹脂により形成される。バンド本体10は、
図3に示すように、物体(図略)を取り付けるための取付手段40と、取付手段40から一方へ延びる第1バンド部41と、取付手段40から他方へ延びる第2バンド部42と、を一体に有する。
【0030】
取付手段40は、例えば円盤形状の位置情報センサー等の物体を取り付けるための取付部を有する。取付部は、その裏面から表側(
図3の紙面上方)に向かって窪んだ収納部を有しており、当該収納部に物体を収納することにより、この物体を取付部に取り付けることができる。取付部の形状は、物体の形状に合わせて決定され、本実施形態では円盤形状の位置情報センサーに対応した凹形状となっている。
【0031】
第1バンド部41は、取付手段40の一端部から所定方向に沿って延びるように形成されている。第1バンド部41の一端部には、係合部20が形成されている。
【0032】
第2バンド部42は、取付手段40の他端部から所定方向に沿って延びるように形成されている。第2バンド部42の他端部には、係合部20に係合可能な被係合部30が形成されている。
【0033】
係合部20は、バンド1の係合状態において、バンド本体10によって構成される周の長さである周長が大きくなる方向b(
図5~
図7参照)及び幅方向への被係合部30に対する移動が規制されるように被係合部30に係合する。また、係合部20は、周長が小さくなる方向a(
図5~
図7参照)への力がバンド1に付与されたときに、係合部20と被係合部30との係合が解除されるように被係合部30に係合可能である。
【0034】
具体的に、係合部20は、
図4に示すように、所定方向(長手方向)に延びる帯状のベース部21と、ベース部21の裏面にこのベース部21の幅方向(
図4の紙面左右方向)に所定間隔空けて設けられる2つの壁部22,22と、ベース部21から離間した状態で壁部22,22によって支持される2本の軸部24,24と、を有する。
【0035】
壁部22は、
図4に示すように、幅方向に延びる2本の軸部24,24をベース部21から離間した状態で支持する。壁部22は、
図5に示すように、ベース部21の所定方向(長手方向)に延びるように形成されている。
【0036】
2本の軸部24,24は、
図4に示すように、所定方向(長手方向)に所定間隔空けて設けられており、ともに壁部22を幅方向に貫通した状態で壁部22に支持される。
【0037】
軸部24は、
図5及び
図6に示すように、被係合部30の溝部32(後述)にこの被係合部30の表面(外側)から係合されることにより、第1バンド部41と第2バンド部42とを連結状態に保持する。これにより、軸部24は、バンド本体10の周長が大きくなる方向(
図4の方向b)への係合部20の被係合部30に対する移動が規制されつつ、バンド本体10の周長が小さくなる方向(
図6の方向a)への移動が許容された状態で溝部32に係合する。
【0038】
また、係合部20及び被係合部30は、軸部24が溝部32に係合されることにより、係合部20の被係合部30に対する幅方向への移動が規制されるように互いに嵌合する。
【0039】
具体的に、被係合部30には、
図5に示すように、所定方向(長手方向)に延びるとともに表側に開き壁部22が嵌合可能な嵌合溝36と、嵌合溝36に交差するとともに表側に開き軸部24が係合可能な溝部32が形成されている。
【0040】
嵌合溝36は、幅方向に所定間隔空けて2箇所に形成されており、これら2箇所の嵌合溝36,36に壁部22,22がそれぞれ嵌合することにより、係合部20の被係合部30に対する幅方向への移動が規制される。
【0041】
溝部32は、壁部22の所定方向(長手方向)に沿って所定間隔空けて複数形成されている。所定方向(長手方向)に隣接する2つの溝部32,32に2本の軸部24,24がそれぞれ係合することにより、第1バンド部41と第2バンド部42とが連結状態で保持される。
【0042】
溝部32は、バンド1の係合状態において、バンド本体10の径方向に対して交差するとともに、方向aへ向けて傾斜した状態で表側(外側)に開口している。すなわち、溝部32の傾斜方向と被係合部30の所定方向(長手方向)とのなす角θ(
図8参照)が鋭角となるように溝部32が開口している。
【0043】
係合部20の軸部24が溝部32に係合されることにより、バンド本体10の周長が大きくなる方向bへの係合部20の移動が抑制される。
【0044】
(バンド1の着脱方法)
以下、バンド1の着脱方法について用いて説明する。
【0045】
バンド1を腕3に装着する時、まずは
図1に示すようにバンド本体10を腕3に巻き付けて係合状態とする。具体的に、
図5及び
図6に示すように、係合部20の軸部24を被係合部30の溝部32に係合する。これにより、軸部24を支持している壁部22が嵌合溝36に嵌合される。
【0046】
溝部32は、バンド本体10の径方向に交差する方向のうち、周の中心から遠ざかるほどバンド本体10の周長が小さくなる方向aに傾斜して被係合部30の表面(外側)に開口している。つまり、溝部32に軸部24が係合された状態で、係合部20が被係合部30に対してバンド本体10の周長が大きくなる方向bへ移動しようとした時、溝部32の底部と軸部24とが当接する。その結果、バンド本体10の周長が大きくなる方向bへの係合部20の被係合部30に対する移動が抑制される。
【0047】
この時、所定方向(長手方向)に並んで形成された複数の溝部32の内、隣接する2箇所の溝部32,32を選択し、それぞれの溝部32,32に係合部20の軸部24,24を係合することで、バンド本体10の腕3への巻付長さ(周長)を調整することができる。
【0048】
また、この状態では、係合部20の壁部22が被係合部30の嵌合溝36に嵌合されているので、係合部20の被係合部30に対する幅方向への移動が抑制される。
【0049】
バンド1を腕3から取り外す時、係合部20を被係合部30に対してバンド本体10の周長が小さくなる方向aに移動させる。この時、係合部20の軸部24が被係合部30の溝部32にガイドされて溝部32が傾斜している方向と同じ方向に移動する。これにより、軸部24が被係合部30の表面(外側)に押し上げられる。その結果、
図7に示すように、係合部20と被係合部30との係合が解除される。
【0050】
(製造方法)
以下、本実施形態のバンド1の製造方法について、
図8を用いて説明する。
【0051】
バンド1は
図8に示すような形成型を用いて製造される。
【0052】
バンド1の製造に用いる形成型は、
図8に示すように、バンド本体10の表面形状を形成する表形成面51を有する移動型50と、表形成面51に対向するとともにバンド本体10の裏面形状を形成する裏形成面61を有する固定型60と、を有する。
【0053】
移動型50は、移動型50の表形成面51と固定型60の裏形成面61とが互いに対向した状態で上下方向に移動するように配置されている。
【0054】
表形成面51は、移動型50の所定方向(長手方向)一端部(
図8の紙面右側)に向かうに従って下方向に傾斜する傾斜面51aと、他端部(
図8の紙面左側)に向かうに従って下方向に傾斜する傾斜面51bと、を含む。
【0055】
表形成面51の傾斜面51aには、裏形成面61に対向するとともに溝部32を形成するために裏形成面61に向かって(すなわち下方向に)突出する突起部52が所定方向(長手方向)に並んで複数形成されている。この突起部52は、移動型50の所定方向(長手方向)に直交する幅方向(
図8の紙面前後方向)に延びて形成されており、その太さ(
図8の紙面左右方向の長さ)は、軸部24の直径に応じて適宜設定される。
【0056】
裏形成面61は、所定方向(長手方向)一端部に向かうに従って下方向に傾斜する傾斜面61aと、所定方向(長手方向)他端部に向かうに従って下方向に傾斜する傾斜面61bと、を含む。傾斜面61a,61bの傾斜角及び、傾斜面51a,51bの傾斜角は互いに等しく、これらの傾斜角は鋭角とされている。そしてこれら傾斜角がバンド本体10の溝部32の傾斜角θとなる。
【0057】
バンド本体10の射出成型の際、表形成面51と裏形成面61との間に形成される射出空間C(
図8参照)内にエラストマー樹脂等の樹脂材料を射出する。そして、突起部52の延びる方向と平行な方向に、移動型50を固定型60に対して上方向に移動させる。これにより、バンド本体10の所定方向(長手方向)に対して傾斜角θだけ傾斜した溝部32を有するバンド1を製造することができる。
【0058】
(作用効果)
本発明のバンド1によれば、係合部20は、バンド本体10の係合状態においてバンド1の周長が大きくなる方向b及び幅方向への移動が規制されるように被係合部30に係合する。このため、係合部20と被係合部30との所定方向(長手方向)及び幅方向への位置ずれを抑制した状態で、バンド本体10を腕3に装着することができる。
【0059】
また、周長が小さくなる方向aへの力がバンド本体10に付与されたときに、係合部20と被係合部30との係合が解除されるので、バンド1の周長を小さくする方向aへの力をこのバンド1に付与することで容易に係合部20と被係合部30との係合を解除し、バンド1を腕3から取り外すことができる。
【0060】
また、被係合部30の表面(外側)には、幅方向に延びる溝部32が形成されているので、係合部20の軸部24を溝部32に係合させることにより係合部20と被係合部30同士を係合することができる。
【0061】
また、溝部32は、バンド1の係合状態において周長が大きくなる方向bへの係合部20の移動を規制する方向aへ向けて傾斜するように表面(外側)に開いている。このため、バンド1の係合状態において、周長が大きくなる方向bへの力がバンド1に付与されている時に、周長が大きくなる方向への係合部20の移動を規制することができる。
【0062】
また、軸部24は、当該軸部24が溝部32に表面(外側)から係合されることにより、周長が大きくなる方向bへの移動が規制され、かつ周長が小さくなる方向aへの移動が許容された状態で被係合部30に係合可能である。このため、バンド1の係合状態において、このバンド1に周長が小さくなる方向aへの力を付与することで、バンド1を腕3から容易に取り外すことができる。
【0063】
また、係合部20及び被係合部30は、軸部24が溝部32に係合されることにより、係合部20の被係合部30に対する幅方向への移動が規制されるように互いに嵌合するので、バンド本体10を腕3に巻き付けた状態の係合部20と被係合部30同士の横ずれ(係合部20の被係合部30に対する幅方向への移動)を抑制することができる。
【0064】
また、係合部20は、ベース部21と、ベース部21から径方向に立ち上がるとともに所定方向に延びて軸部24を幅方向に延びた状態で支持する壁部22を有することにより、係合部20に対する被係合部30の幅方向への移動を規制するので、溝部32に係合可能となるように軸部24を支持する壁部22を、幅方向への移動を規制するために用いることができる。
【0065】
また、バンド本体10は、物体を取り付けるための取付手段40と、取付手段40から一方へ延びる第1バンド部41と、取付手段40から他方へ延びる第2バンド部42と、をさらに有し、係合部20は、第1バンド部41の一端部に設けられ、被係合部30は、第2バンド部42の他端部に設けられる。このため、取付手段40に物体を取り付けた状態で、第1バンド部41の係合部20と第2バンド部42の被係合部30同士を係合することができる。すなわち、バンド1により物体を身体に装着することができる。
【0066】
また、表形成面51及び裏形成面61は所定方向(長手方向)一端部に向かうに従って下方向に傾斜角θだけ傾斜する傾斜面51a,61aをそれぞれ含み、表形成面51の傾斜面51aには、下方向に突出する突起部52が形成されているので、射出空間C内に樹脂材料を射出し、突起部52の延びる方向と平行な方向に移動型を固定型に対して移動させときに、下方向に延びる溝部32をバンド1における傾斜面51aに対応する位置(被係合部30の表面)に形成することができる。また、この溝部32は、バンド1の所定方向(長手方向)に対してa方向に傾斜角θだけ傾斜して開口して形成される。このため、バンド1の係合状態においてバンド1の径方向に交差する方向に延びるとともにb方向への被係合部30に対する係合部20の移動を規制する溝部32を、このバンド1に形成することができる。
【0067】
(変形例)
上記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0068】
上記実施形態では、バンド1を腕3に巻き付けて装着したが、バンド1を装着する場所は腕3に限られず、例えば足に装着しても良いし、身体のその他の部位に装着しても良い。
【0069】
上記実施形態では、バンド本体10の取付手段40と第1バンド部41と第2バンド部42同士は一体に形成されていたが、これら取付手段40と第1バンド部41と第2バンド部42同士は互いに別体に形成されていても良い。
【0070】
また、取付部は、その裏面から内部に向かって窪んだ収納部を有しており、当該収納部に物体が収納されることにより、この物体が取付部に取り付けられていたが、収納部が形成される面は、取付部の裏面に限られず、取付部の表面であっても良い。
【0071】
また、取付部に取り付けられる物体は、位置情報センサーに限られず、例えば時計の文字盤であっても良い。
【0072】
上記実施形態では、溝部32および嵌合溝36が被係合部30の外側に形成されていたが、溝部32および嵌合溝36が形成されるのは被係合部30の外側ではなく、内側であっても良い。この場合、係合部20の壁部22は、ベース部21の内側ではなく外側に設ける必要がある。
【0073】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 バンド
10 バンド本体
20 係合部
22 壁部
24 軸部
30 被係合部
32 溝部
36 嵌合溝
40 取付手段
41 第1バンド部
42 第2バンド部
50 移動型
52 突起部
60 固定型
C 射出空間