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特開2022-102376エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法
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  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図1
  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図2A
  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図2B
  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図3
  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図4
  • 特開-エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102376
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 61/06 20060101AFI20220630BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20220630BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F02B61/06 G
F02B77/00 J
F02B77/00 C
F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217066
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】三菱重工メイキエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石山 明洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 拓弥
【テーマコード(参考)】
3J009
【Fターム(参考)】
3J009DA11
3J009DA17
3J009EA03
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA38
3J009EA44
3J009FA10
3J009FA30
(57)【要約】
【課題】エンジンの大きさが大きくなることを抑制する。
【解決手段】一実施形態に係るエンジンの出力装置は、クランクシャフトと、クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第1出力軸と、クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第2出力軸であって、第1出力軸と同軸に配置された第2出力軸と、クランクシャフトに取り付けられた第1駆動ギア及び第2駆動ギアと、第1出力軸に取り付けられ、第1駆動ギアと噛合する第1被駆動ギアと、第2出力軸に取り付けられた第2被駆動ギアと、第2駆動ギア及び第2被駆動ギアと噛合し、第2駆動ギアからの駆動力を第2被駆動ギアに伝達するためのアイドラギアと、を備える。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力を外部に伝達するためのエンジンの出力装置であって、
前記エンジンにより駆動されるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第1出力軸と、
前記クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第2出力軸であって、前記第1出力軸と同軸に配置された第2出力軸と、
前記クランクシャフトに取り付けられた第1駆動ギア及び第2駆動ギアと、
前記第1出力軸に取り付けられ、前記第1駆動ギアと噛合する第1被駆動ギアと、
前記第2出力軸に取り付けられた第2被駆動ギアと、
前記第2駆動ギア及び前記第2被駆動ギアと噛合し、前記第2駆動ギアからの駆動力を前記第2被駆動ギアに伝達するためのアイドラギアと、
を備える
エンジンの出力装置。
【請求項2】
前記第1出力軸又は前記第2出力軸の何れか一方の出力軸は、中空軸であり、
何れか他方の出力軸は、前記一方の出力軸の内周に挿通されている
請求項1に記載のエンジンの出力装置。
【請求項3】
前記第1出力軸は、中空軸であり、
前記第2出力軸は、前記第1出力軸の内周に挿通されている
請求項2に記載のエンジンの出力装置。
【請求項4】
前記第1出力軸の回転方向は、前記第2出力軸の回転方向と逆である
請求項1乃至3の何れか一項に記載のエンジンの出力装置。
【請求項5】
前記クランクシャフトが前記第1出力軸を回転させる場合の減速比は、前記クランクシャフトが前記第2出力軸を回転させる場合の減速比と等しい
請求項1乃至4の何れか一項に記載のエンジンの出力装置。
【請求項6】
前記第1駆動ギア、前記第2駆動ギア、前記第1被駆動ギア、前記第2被駆動ギア、及び前記アイドラギアは、クランクケースとギアボックスとで囲まれた空間内に配置されている
請求項1乃至5の何れか一項に記載のエンジンの出力装置。
【請求項7】
前記第1被駆動ギアに形成された凹部に配置されていて、前記第2出力軸を回転可能に軸支する軸受
をさらに備える
請求項1乃至6の何れか一項に記載のエンジンの出力装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置
を備えるエンジン。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の出力装置の組立方法であって、
前記クランクシャフトに前記第2駆動ギアを取り付けるとともに、前記第2被駆動ギアが取り付けられている前記第2出力軸をクランクケースに配置された軸受に保持させるステップと、
前記保持させるステップの実施後に、前記クランクシャフトに前記第1駆動ギアを取り付けるとともに、前記第1出力軸を前記第2出力軸と同軸に配置するステップと、
を備える
出力装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの出力装置、エンジン及び出力装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレシプロエンジン等の容積型内燃機関では、燃料と空気との混合気を燃焼させたときの熱エネルギを運動エネルギとして出力することができる。具体的には、例えばレシプロエンジンでは、燃料と空気との混合気を燃焼させたときの熱エネルギをクランクシャフトを回転させる運動エネルギとして出力することができる。
例えばレシプロエンジンでは、クランクシャフトに接続された動力伝達軸からのトルク反力を受けることとなる。そのため、このトルク反力がエンジンやこのエンジンを搭載する機器に対して所望しない揺動や振動等を招く原因となり得る。
【0003】
このような揺動や振動等を低減可能なエンジンとして、例えば並列配置された2つのクランクシャフトを備え、一方のクランクシャフトの回転方向が他方クランクシャフトの回転方向と逆方向となるように構成したエンジンが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-148186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のエンジンように、並列配置された2つのクランクシャフトを備え、一方のクランクシャフトの回転方向が他方クランクシャフトの回転方向と逆方向となるように構成することで、上述したような所望しない揺動や振動等を抑制できる。
しかし、例えば特許文献1に記載のエンジンでは、並列配置された2つのクランクシャフトのそれぞれにピストンを備えるので、2つのクランクシャフトが並ぶ方向にエンジンの大きさが大きくなってしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、並列配置された2つの出力軸を備えつつもエンジンの大きさが大きくなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンの出力装置は、
エンジンの出力を外部に伝達するためのエンジンの出力装置であって、
前記エンジンにより駆動されるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第1出力軸と、
前記クランクシャフトからの駆動力を外部に伝達するための第2出力軸であって、前記第1出力軸と同軸に配置された第2出力軸と、
前記クランクシャフトに取り付けられた第1駆動ギア及び第2駆動ギアと、
前記第1出力軸に取り付けられ、前記第1駆動ギアと噛合する第1被駆動ギアと、
前記第2出力軸に取り付けられた第2被駆動ギアと、
前記第2駆動ギア及び前記第2被駆動ギアと噛合し、前記第2駆動ギアからの駆動力を前記第2被駆動ギアに伝達するためのアイドラギアと、
を備える。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、上記構成(1)の出力装置を備える。
【0009】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係る出力装置の組立方法は、
上記構成(1)の出力装置の組立方法であって、
前記クランクシャフトに前記第2駆動ギアを取り付けるとともに、前記第2被駆動ギアが取り付けられている前記第2出力軸をクランクケースに配置された軸受に保持させるステップと、
前記保持させるステップの実施後に、前記クランクシャフトに前記第1駆動ギアを取り付けるとともに、前記第1出力軸を前記第2出力軸と同軸に配置するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、エンジンの大きさが大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るエンジン及び出力装置を出力装置の出力軸の軸線方向から見た図である。
図2A図1のIIA矢視断面図である。
図2B図1のIIB矢視断面図である。
図3】一実施形態に係る出力装置についての組立方法の手順を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る出力装置についての組立方法を説明するための図である。
図5】一実施形態に係る出力装置についての組立方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
図1は、一実施形態に係るエンジン及び出力装置を出力装置の出力軸の軸線方向から見た図である。なお、図1では、説明の便宜上、シリンダヘッドや、後述するギアボックス、出力軸、及びクランクシャフト等の記載を省略している。
図2Aは、図1のIIA矢視断面図であり、一実施形態に係るエンジン及び出力装置を出力装置の後述する第1出力軸、第2出力軸及びクランクシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図である。
図2Bは、図1のIIB矢視断面図である。
【0014】
図1図2A及び図2Bに示した一実施形態に係るエンジン1は、例えば単気筒の4サイクルエンジンであり、1つのシリンダ3と、シリンダ3に配置された不図示のピストンと、該ピストンが不図示のコネクティングロッドを介して連結される1つのクランクシャフト5とを備えている。なお、図1図2A及び図2Bに示した一実施形態に係るエンジン1では、エンジン1の上下方向は、図1における図示上下方向と同方向であるものとする。
【0015】
一実施形態に係るエンジン1は、後で詳述する出力装置10を備えている。一実施形態に係るエンジン1では、出力装置10は、クランクシャフト5の一端側(図2A及び図2Bにおける図示上側)の軸部57に接続されていて、エンジン1と一体的に設けられている。クランクシャフト5の他端側(図2A及び図2Bにおける図示下側)の軸部58には、不図示のフライホイールが取り付けられている。
【0016】
一実施形態に係るエンジン1は、シリンダーブロック20と、クランクケース40と、ギアボックス60と、軸受カバー80とを備えている。一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20は、クランクシャフト5のクランクピン51、クランクアーム53及びカウンターウェイト55を収容する空間23を画定する収容部22を含んでいる。
一実施形態に係るエンジン1では、収容部22の側方、より具体的にはクランクシャフト5の一端側(図2A及び図2Bにおける図示上側)の側方が開口している。すなわち、一実施形態に係るエンジン1では、収容部22は、この開口部分を形成する開口部24を含んでいる。
一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20の側方に取り付けられたクランクケース40は、開口部24が形成する開口を覆っている。
すなわち、一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20の下部領域と、該下部領域の側方に開いた開口を閉じるクランクケース40とで囲まれる空間23内にクランクシャフト5のクランクピン51、クランクアーム53及びカウンターウェイト55が収容されている。
【0017】
一実施形態に係るエンジン1では、クランクケース40からクランクシャフト5の一端側の軸部57が突出している。また、一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の他端側の軸部58が一端側の軸部57とは反対側に向かって収容部22から突出している。
【0018】
一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5は、一端側の軸部57が軸受91を介してクランクケース40に回動可能に軸支され、他端側の軸部58が軸受92を介してシリンダーブロック20に回動可能に軸支されている。
【0019】
一実施形態に係るエンジン1では、クランクケース40は、シリンダーブロック20側の側部とは反対側の側部がギアボックス60で覆われている。一実施形態に係るエンジン1では、クランクケース40とギアボックス60とによって、後述する第1駆動ギア101、第2駆動ギア201、第1被駆動ギア103、第2被駆動ギア203、及びアイドラギア202を収容するギア収容空間71が形成されている。
一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の一端側の軸部57の軸端57aは、ギア収容空間71内に位置している。
なお、アイドラギア202は、図2Aにおける紙面奥側に位置するため、厳密に言えば図2Aには表れない。そこで、説明の便宜上、図2Aにおける紙面奥行き方向(すなわちエンジン1の上下方向)に沿って見たときに表れるアイドラギア202の位置を破線で図示することで、エンジン1の上下方向に沿って見たときのアイドラギア202と他のギアとの位置関係を示すようにしている。
また、説明の便宜上、図2A及び図2Bにおいて、第1駆動ギア101や第2駆動ギア201、クランクシャフト5の一端側の軸部57等におけるハッチングの記載を省略している。
【0020】
(出力装置10について)
一実施形態に係るエンジン1は、エンジン1の出力が一実施形態に係る出力装置10を介して出力されるように構成されている。
すなわち、一実施形態に係る出力装置10は、エンジン1の出力を外部に伝達するためのエンジン1の出力装置10である。
一実施形態に係るエンジン1の出力装置10は、エンジン1により駆動されるクランクシャフト5と、クランクシャフト5からの駆動力を外部に伝達するための第1出力軸110、及び、第2出力軸210を備える。
一実施形態に係る出力装置10では、第2出力軸は、第1出力軸と同軸に配置されている。
一実施形態に係るエンジン1の出力装置10は、クランクシャフト5に取り付けられた第1駆動ギア101及び第2駆動ギア201と、第1出力軸110に取り付けられ、第1駆動ギア101と噛合する第1被駆動ギア103と、第2出力軸210に取り付けられた第2被駆動ギア203とを備える。一実施形態に係る出力装置10は、第2駆動ギア201及び第2被駆動ギア203と噛合し、第2駆動ギア201からの駆動力を第2被駆動ギア203に伝達するためのアイドラギア202と、を備える。
【0021】
より具体的には、一実施形態に係る出力装置10では、同軸に配置された第1出力軸110及び第2出力軸210は、クランクシャフト5の中心軸AXcと同じ方向に延在するように配置されている。一実施形態に係る出力装置10では、エンジン1及び出力装置10を上下方向から見たときに、第1出力軸110及び第2出力軸210は、クランクシャフト5の一端側の軸部57の側方に配置されている。
一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110又は第2出力軸210の何れか一方の出力軸は、中空軸であるとよく、何れか他方の出力軸は、一方の出力軸の内周に挿通されているとよい。例えば図2A及び図2Bに示す出力装置10では、第1出力軸110は、中空軸であり、第2出力軸210は、第1出力軸110の内周に挿通されている。
したがって、一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110の中心軸AX1と第2出力軸210の中心軸AX2とが一致する。
なお、第1出力軸110の中心軸AX1、第2出力軸210の中心軸AX2、及び、クランクシャフト5の中心軸AXcが存在する仮想平面Pvは、一実施形態に係るエンジン1の底面1aと平行であるとよい。すなわち、一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110の中心軸AX1、第2出力軸210の中心軸AX2、及び、クランクシャフト5の中心軸AXcは、一実施形態に係るエンジン1の底面1aと平行に延在するとよい。
【0022】
一実施形態に係る出力装置10では、第1駆動ギア101及び第2駆動ギア201は、クランクケース40から突出したクランクシャフト5の一端側の軸部57と同軸となるように軸部57に取り付けられて固定されている。すなわち、一実施形態に係る出力装置10では、第1駆動ギア101及び第2駆動ギア201は、クランクシャフト5の中心軸AXcに沿って隣り合うように配置されている。一実施形態に係る出力装置10では、第2駆動ギア201は、第1駆動ギア101及び第1被駆動ギア103よりも軸部57の基端側、すなわち、クランクケース40に近い位置に配置されている。
また、一実施形態に係る出力装置10では、アイドラギア202及び第2被駆動ギア203は、第1駆動ギア101及び第1被駆動ギア103よりも軸部57の基端側、すなわち、クランクケース40に近い位置に配置されている。
一実施形態に係る出力装置10では、第2駆動ギア201を第1駆動ギア101及び第1被駆動ギア103よりも軸部57の基端側に配置することで、アイドラギア202の位置をエンジン1の中心側に近づけることができるので、エンジン1の重心位置をエンジン1の中心位置に近づけることができる。
【0023】
一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110は、中心軸AX1に沿って第1出力軸110を貫通する貫通孔である中空部111を有する。一実施形態に係る出力装置10では、中空部111には、第2出力軸210が挿通されている。
一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110の基端側(図2A及び図2Bにおける図示下側)には、第1被駆動ギア103が第1出力軸110と同軸となるように取り付けられている。なお、図2A及び図2Bに示す出力装置10のように、第1被駆動ギア103は、第1出力軸110と一体的に形成されていてもよい。
【0024】
一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110は、ギアボックス60に保持される第1軸受93と、軸受カバー80に保持される第2軸受94とによって回動可能に軸支されている。なお、一実施形態に係る出力装置10では、軸受カバー80は、第2軸受94の外輪を保持する部材であり、ギアボックス60に取り付けられている。
【0025】
一実施形態に係る出力装置10では、第1被駆動ギア103は、ギアボックス60に保持される第1軸受93よりもクランクケース40に近い位置、すなわち、第1軸受93よりも図2A及び図2Bにおける図示下方に配置されている。第1被駆動ギア103は、上述したように、第1駆動ギア101と噛合している。
【0026】
一実施形態に係る出力装置10では、第1被駆動ギア103においてクランクケース40側(図2A及び図2Bにおける図示下方)を向いた端部103aには、後述する第4軸受96を保持する凹部103bが形成されている。凹部103bは、後述する第4軸受96の外輪を保持している。
【0027】
一実施形態に係る出力装置10では、第2出力軸210は、クランクケース40に保持される第3軸受95と、第1被駆動ギア103に保持される第4軸受96とによって回動可能に軸支されている。すなわち、一実施形態に係る出力装置10は、第1被駆動ギア103に形成された凹部103bに配置されていて、第2出力軸210を回転可能に軸支する軸受である第4軸受96を備える。したがって、一実施形態に係る出力装置10では、第2出力軸210は、第4軸受96、第1被駆動ギア103及び第1出力軸110を介して、ギアボックス60に保持される第1軸受93、及び、軸受カバー80に保持される第2軸受94に支持されることとなる。
【0028】
一実施形態に係る出力装置10では、第2被駆動ギア203は、クランクケース40に保持される第3軸受95と、第1被駆動ギア103に保持される第4軸受96との間で第2出力軸210と同軸となるように第2出力軸210に取り付けられて固定されている。第2被駆動ギア203は、後述するように、アイドラギア202における第2ギア部202bと噛合している。
【0029】
一実施形態に係る出力装置10では、アイドラギア202は、第2駆動ギア201と噛合する第1ギア部202aと、第1ギア部202aと同軸に配置されていて第2被駆動ギア203と噛合する第2ギア部202bとを有する。一実施形態に係る出力装置10では、アイドラギア202は、第1ギア部202aが第2ギア部202bよりもクランクケース40側(図2A及び図2Bにおける図示下方)に位置するようにギア収容空間71内に配置されている。
一実施形態に係る出力装置10では、アイドラギア202は、クランクケース40に保持される軸受97と、ギアボックス60に保持される軸受98との間でクランクケース40及びギアボックス60に回動可能に支持されている。
一実施形態の出力装置10では、アイドラギア202は、その中心軸AX3の位置がクランクシャフト5の中心軸AXcの位置よりもエンジン1の下方に位置するように配置されている。
【0030】
一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110及び第2出力軸210は、ギアボックス60及び軸受カバー80から外部に突出している。
【0031】
上述した一実施形態に係るエンジン1では、シリンダ3内における混合気の燃焼によって不図示のピストンが受けた力でクランクシャフト5が駆動されると、クランクシャフト5からの駆動力は、第1駆動ギア101及び第1被駆動ギア103を介して第1出力軸110に伝達されるとともに、第2駆動ギア201、アイドラギア202及び第2被駆動ギア203を介して第2出力軸210に伝達される。このように、上述した一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5からの駆動力は、出力装置10の第1出力軸110及び第2出力軸210から外部の機器に伝達されるように構成されている。
【0032】
上述した一実施形態に係るエンジン1では、図1の矢印aで示すように、例えばクランクシャフト5が図示反時計方向に回動すると、第1駆動ギア101及び第1被駆動ギア103を介して駆動される第1出力軸110は、図1の矢印bで示すように図示時計方向に回動する。すなわち、上述した一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の回動方向と第1出力軸110の回動方向とは異なる。
【0033】
上述した一実施形態に係るエンジン1では、図1の矢印aで示すように、例えばクランクシャフト5が図示反時計方向に回動すると、第2駆動ギア201と第1ギア部202aで噛合しているアイドラギア202は、図1の矢印cで示すように図示時計方向に回動し、アイドラギア202の第2ギア部202bと噛合している第2被駆動ギア203は、図1の矢印dで示すように図示反時計方向に回動する。したがって、上述した一実施形態に係るエンジン1では、図1の矢印aで示すように、例えばクランクシャフト5が図示反時計方向に回動すると、第2出力軸210は、図1の矢印dで示すように図示反時計方向に回動する。すなわち、上述した一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の回動方向と第2出力軸210の回動方向とは同じになる。
したがって、上述した一実施形態に係るエンジン1では、第1出力軸110の回動方向と第2出力軸210の回動方向とが逆となる。
【0034】
上述した一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5からの駆動力を第1出力軸110と第1出力軸110と同軸に配置された第2出力軸210とに伝達できるので、第1出力軸110と第2出力軸210のそれぞれにピストンを設ける必要がない。これにより、2つの出力軸110、120のそれぞれにピストンを備える場合と比べてエンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。すなわち、一実施形態に係る出力装置10によれば、エンジン1の構成を大きく変えることなく同軸の2つの出力軸110、120を駆動できる。
【0035】
例えば、東南アジア等で使用されことが多いロングテールボートと呼ばれる比較的小型の船舶のように、エンジンの出力軸にプロペラシャフトの一方端を接続し、このプロペラシャフトを介してプロペラシャフトの他方端に取り付けられているスクリューを回転駆動させることで推進力を得るようにしている船舶が知られている。
例えば、上述したロングテールボートのような比較的小型の船舶において、上述した一実施形態に係る出力装置10を用いる場合、第1出力軸110に中空軸である第1のプロペラシャフトの一方端を接続し、第2出力軸210に、第1のプロペラシャフトの内周に挿通される第2のプロペラシャフトの一方端を接続することができる。また、第1のプロペラシャフトの他方端近傍に第1のスクリューを取り付け、第1のプロペラシャフトの他方端から突出させた第2のプロペラシャフトの他方端近傍に第2のスクリューを取り付けることができる。そして、第1のプロペラシャフト及び第2のプロペラシャフトを介して2つのスクリューをそれぞれ回転駆動させるようにすることができる。
例えば、上述したロングテールボートのような比較的小型の船舶において、上述した一実施形態に係る出力装置10を用いることで、船舶に搭載するエンジンの小型化を図れる。
【0036】
また、上述した一実施形態に係る出力装置10によれば、第2被駆動ギア203がアイドラギア202を介して第2駆動ギア201によって駆動されるので、第2出力軸210の回転方向を第1出力軸110の回転方向とを逆にすることが容易となる。これにより、第2出力軸210に作用するトルク反力の向きを第1出力軸110に作用するトルク反力の向きと逆にすることが容易である。したがって、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力を互いに相殺させることが容易となるので、エンジン1に作用するトルク反力を抑制できる。これにより、エンジン1や該エンジン1を搭載する機器における所望しない揺動や振動等を抑制することが容易となる。
よって、例えば、上述したロングテールボートのような比較的小型の船舶において、ロール方向への船舶の揺動や振動を抑制することが容易となる。
【0037】
上述した一実施形態に係るエンジン1によれば、上述した一実施形態に係る出力装置10を備えるので、エンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。すなわち、一実施形態に係るエンジン1によれば、エンジン1の構成を大きく変えることなく同軸の2つの出力軸110、120を駆動できる。
また、上述した一実施形態に係るエンジン1によれば、上述したように、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力を互いに相殺させることが容易となるので、エンジン1に作用するトルク反力を抑制できる。これにより、エンジン1や該エンジン1を搭載する機器における所望しない揺動や振動等を抑制することが容易となる。
【0038】
以下、一実施形態に係る出力装置10についてさらに説明する。
一実施形態に係る出力装置10では、例えば上述したように、第1出力軸110又は第2出力軸210の何れか一方の出力軸は、中空軸であるとよく、何れか他方の出力軸は、一方の出力軸の内周に挿通されているとよい。
これにより、例えば第1出力軸110と第2出力軸210とが軸方向の異なる位置に並べて配置される場合と比べて、エンジン1の中心から第1出力軸110又は第2出力軸210の先端までの距離が大きくなることを抑制できる。
【0039】
一実施形態に係る出力装置10では、例えば上述したように、第1出力軸110は、中空軸であるとよく、第2出力軸210は、第1出力軸110の内周に挿通されているとよい。
上述したように第2出力軸210を第1出力軸110の内周に挿通させた場合、第1出力軸110の基端部(図2A及び図2Bに示す例では、第1被駆動ギア103の端部103a)から突出させた第2出力軸210の基端側の領域に第2被駆動ギア203を取り付けることが容易となる。なお、第1被駆動ギア103は、第1出力軸110の外周側に取り付けることができる。このように、第1出力軸110の基端部から突出させた第2出力軸210の基端側の領域に第2被駆動ギア203を取り付けることで第2被駆動ギア203が第1出力軸110及び第1被駆動ギア103と干渉することを回避できる。また、第1被駆動ギア103は、第1出力軸110の外周側に取り付けることで第2出力軸210及び第2被駆動ギア203との干渉を回避できる。
上記のように第1被駆動ギア103及び第2被駆動ギア203を配置することで、第2被駆動ギア203は、第1被駆動ギア103よりもエンジン1の中心側に配置されることとなる。したがって、第2被駆動ギア203と噛合するアイドラギア202も第1被駆動ギア103よりもエンジン1の中心側に配置されることとなる。これにより、アイドラギア202の位置をエンジン1の中心側に近づけることができるので、出力装置10(エンジン1)の大きさが大きくなることを抑制できる。
したがって、一実施形態に係る出力装置10によれば、出力装置10(エンジン1)の大きさが大きくなることを抑制できる。
【0040】
一実施形態に係る出力装置10では、上述したように、第1出力軸の回転方向は、第2出力軸の回転方向と逆であるとよい。
これにより、上述したように、第2出力軸210に作用するトルク反力の向きを第1出力軸110に作用するトルク反力の向きと逆にすることができる。したがって、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力を互いに相殺させることができるので、エンジン1に作用するトルク反力を抑制できる。これにより、エンジン1や該エンジン1を搭載する機器における所望しない揺動や振動等を抑制できる。
よって、例えば、上述したロングテールボートのような比較的小型の船舶において、ロール方向への船舶の揺動や振動を抑制できる。
【0041】
一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比は、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比と実質的に等しいとよい。
すなわち、一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比は、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比と全く同じであってもよく、エンジン1の用途によっては、僅かな差があっても実質的に等しければよい。
これにより、第1出力軸110からの駆動力と第2出力軸210からの駆動力とが同じ回転速度で出力されることが望ましい場合に好適である。
また、一実施形態に係る出力装置10によれば、第1出力軸110に作用するトルク反力の大きさと第2出力軸210に作用するトルク反力の大きさを同じ大きさにし易くなるので、第1出力軸110の回転方向と第2出力軸210の回転方向とが異なる方向であれば、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力とを互いに効果的に相殺できる。
【0042】
(減速比について)
一実施形態に係る出力装置10の減速比について、各ギアの歯数の一例を参照して説明する。
まず、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比について説明する。
一実施形態に係る出力装置10では、一例として第1駆動ギア101の歯数は20であり、第1被駆動ギア103の歯数は39である。この場合、一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比は、39/20=1.95である。
【0043】
次いで、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比について説明する。
一実施形態に係る出力装置10では、一例として第2駆動ギア201の歯数は22であり、アイドラギア202の第1ギア部202aの歯数は27であり、アイドラギア202の第2ギア部202bの歯数は21であり、第2被駆動ギア203の歯数は33である。この場合、一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比は、(27/22)×(33/21)≒1.93である(小数第三位を四捨五入)。
【0044】
このように、一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110及び第2出力軸210の回転速度をクランクシャフト5の回転速度のおよそ1/2に減速することができる。
なお、上述した一例では、第2出力軸210の回転速度は、第1出力軸110の回転速度に対して約1.1%ほど大きくなる。しかし、例えば上述したロングテールボートのような比較的小型の船舶において、上述したように第1のプロペラシャフト及び第2のプロペラシャフトを介して2つのスクリューをそれぞれ回転駆動させる場合では、上述した一例における第1出力軸110の回転速度と第2出力軸210の回転速度との差は問題にならない。このような場合には、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比と、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比とは、実質的に等しい値であると言ってもよい。
【0045】
一実施形態に係る出力装置10では、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比と、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比とは、実質的に等しい値であってもよく、等しい値であってもよい。
【0046】
なお、例えば、他の一例として、第1駆動ギア101の歯数と第1被駆動ギア103の歯数とを等しくし、第2駆動ギア201の歯数と第2被駆動ギア203の歯数とを等しくし、アイドラギア202における第1ギア部202aと第2ギア部202bとの歯数を等しくしてもよい。これにより、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比、及び、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比は、共に1となるので等しい値にすることができる。
なお、この場合には、第1ギア部202a及び第2ギア部202bの歯数は、第2駆動ギア201の歯数及び第2被駆動ギア203の歯数とが等しくてもよく、異なっていてもよい。
また、第1ギア部202aと第2ギア部202bとの歯数を等しくする場合、アイドラギア202を第1ギア部202aと第2ギア部202bとの2つの領域に分けて形成する必要はない。
【0047】
一実施形態に係る出力装置10では、上述したように、第1駆動ギア101、第2駆動ギア201、第1被駆動ギア103、第2被駆動ギア203、及びアイドラギア202は、クランクケース40とギアボックス60とで囲まれた空間(ギア収容空間)71内に配置されているとよい。
これにより、これら各ギアを合理的に配置できる。
【0048】
一実施形態に係る出力装置10では、上述したように、第1被駆動ギア103に形成された凹部103bに配置されていて、第2出力軸210を回転可能に軸支する軸受(第4軸受)96をさらに備えるとよい。
これにより、第2出力軸210が第4軸受96、第1出力軸110、及び第1出力軸110を回転可能に軸支する軸受である第1軸受93及び第2軸受94を介して出力装置10のケーシングであるクランクケース40やギアボックス60に支持されるので、第2出力軸210の軸支に係る構成が合理的となる。したがって、第2出力軸210の軸支に係る構成の信頼性を向上できるとともに、第2出力軸210の軸支に係る構成を小型化できる。
【0049】
第1出力軸110の中心軸AX1、第2出力軸210の中心軸AX2、及び、クランクシャフト5の中心軸AXcが存在する仮想平面Pvは、一実施形態に係るエンジン1の底面1aと平行であるとよい。すなわち、一実施形態に係る出力装置10では、第1出力軸110の中心軸AX1、第2出力軸210の中心軸AX2、及び、クランクシャフト5の中心軸AXcは、一実施形態に係るエンジン1の底面1aと平行に延在するとよい。
【0050】
(出力装置10の組立方法について)
以下、出力装置10の組立方法について説明する。
図3は、一実施形態に係る出力装置についての組立方法の手順を示すフローチャートである。
図4は、一実施形態に係る出力装置についての組立方法を説明するための図であり、第2出力軸をクランクケースに配置された軸受に保持させた状態を示している。
図5は、一実施形態に係る出力装置についての組立方法を説明するための図であり、第1出力軸を第2出力軸と同軸に配置した状態を示している。
【0051】
一実施形態に係る出力装置10についての組立方法は、第2出力軸210を配置するステップS10と、第1出力軸110を配置するステップS20とを備えている。
【0052】
(第2出力軸210を配置するステップS10)
一実施形態に係る出力装置10についての組立方法では、第2出力軸210を配置するステップS10は、クランクシャフト5に第2駆動ギア201を取り付けるとともに、第2被駆動ギア203が取り付けられている第2出力軸210をクランクケース40に配置された第3軸受95に保持させるステップである。
より具体的には、例えば図4に示すように、第2出力軸210を配置するステップS10において、作業員は、クランクケース40から突出しているクランクシャフト5の一端側(図4における図示上側)の軸部57に第2駆動ギア201を取り付ける。なお、第2駆動ギア201の中心軸に沿って形成された貫通孔の内周、及び、軸部57の外周には、スプライン又はセレーションが形成されており、軸部57に第2駆動ギア201を取り付けることで、軸部57と第2駆動ギア201との中心軸AX1周りの相対的な回転が防止される。
【0053】
また、第2出力軸210を配置するステップS10において、作業員は、クランクケース40に取り付けられている不図示の軸受に回動可能に軸支されるように、アイドラギア202を配置する。その後、作業員は、クランクケース40に外輪が保持されている第3軸受95の内輪の内周に第2出力軸210の基端側の端部挿通させて、第2出力軸210を第3軸受95に保持させる。なお、第4軸受96は、第2出力軸210を第3軸受95に保持させる前、又は、第2出力軸210を第3軸受95に保持させた後で第2出力軸210に装着するようにしてもよい。
【0054】
(第1出力軸110を配置するステップS20)
一実施形態に係る出力装置10についての組立方法では、第1出力軸110を配置するステップS20は、第2出力軸210を配置するステップS10の実施後に、クランクシャフト5に第1駆動ギア101を取り付けるとともに、第1出力軸110を第2出力軸210と同軸に配置するステップである。
より具体的には、例えば図5に示すように、第1出力軸110を配置するステップS20において、作業員は、クランクケース40から突出しているクランクシャフト5の一端側(図4における図示上側)の軸部57に第1駆動ギア101を取り付ける。なお、第1駆動ギア101の中心軸に沿って形成された貫通孔の内周にも、第2駆動ギア201と同様にスプライン又はセレーションが形成されており、軸部57に第1駆動ギア101を取り付けることで、軸部57と第1駆動ギア101との中心軸AX1周りの相対的な回転が防止される。その後、作業員は、第1駆動ギア101及び第2駆動ギア201の抜け止めのための固定板59を軸部57の軸端57aに取り付ける。
【0055】
また、第1出力軸110を配置するステップS20において、作業員は、第1出力軸110を第2出力軸210と同軸に配置する。すなわち、作業員は、第1出力軸110を第1被駆動ギア103が取り付けられている方の端部から中空部111内に第2出力軸210を挿通させることで、第1出力軸110を第2出力軸210と同軸に配置する。そして、凹部103bに第4軸受96の外輪を保持させる。
【0056】
第1出力軸110を配置するステップS20の実施後、作業員は、第1軸受93、ギアボックス60、第2軸受94及び軸受カバー80を順次取り付ける。以上で、一実施形態に係る出力装置10の組立てが完了する。
以上のように説明した、一実施形態に係る出力装置10についての組立方法によれば、一実施形態に係る出力装置10を効率的に組み立てることができる。
なお、一実施形態に係る出力装置10を分解する場合は、上述した組立作業を逆にたどればよい。
【0057】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の出力装置10では、アイドラギア202の中心軸AX3の位置は、クランクシャフト5の中心軸AXcの位置よりもエンジン1の下方であるが、クランクシャフト5の中心軸AXcの位置よりもエンジン1の上方であってもよい。アイドラギア202の中心軸AX3の位置をクランクシャフト5の中心軸AXcの位置よりもエンジン1の下方又は上方に設定することで、クランクシャフト5と第1出力軸110及び第2出力軸210とを接近させることができる。これにより、出力装置10の小型化を図れる。
なお、出力装置10の上下方向の寸法に余裕がない場合には、アイドラギア202の中心軸AX3が上述した仮想平面Pv内に存在するようにアイドラギア202の中心軸AX3の位置を設定してもよい。
【0058】
上述した一実施形態の出力装置10では、エンジン1の上下方向において、第1出力軸110の中心軸AX1、及び、第2出力軸210の中心軸AX2の位置は、クランクシャフト5の中心軸AXcの位置と同じであったが、異なっていてもよい。
【0059】
上述の説明では、第1出力軸110及び第2出力軸210を外部の機器と接続するための構成について特に言及していなかったが、例えば、第1出力軸110の先端(図2A及び図2Bにおける図示上側)近傍の外周に、外部の機器と接続するためのスプライン又はセレーションを形成してもよい。
また、例えば、第2出力軸210の先端(図2A及び図2Bにおける図示上側)を第1出力軸110の先端から突出させ、第2出力軸210の先端近傍の外周に、外部の機器と接続するためのスプライン又はセレーションを形成してもよい。
また、例えば、第2出力軸210の先端側から中心軸AX2に沿って第2出力軸210に孔を形成し、該孔の内周に外部の機器と接続するためのスプライン又はセレーションを形成してもよい。
【0060】
一実施形態に係るエンジン1は、例えば単気筒の4サイクルエンジンであったが、2気筒以上の直列型エンジンやV型エンジンであってもよい。また、一実施形態に係るエンジン1は、2サイクルエンジンであってもよい。
【0061】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1の出力装置10は、エンジン1の出力を外部に伝達するためのエンジン1の出力装置10である。本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1の出力装置10は、エンジン1により駆動されるクランクシャフト5と、クランクシャフト5からの駆動力を外部に伝達するための第1出力軸110と、クランクシャフト5からの駆動力を外部に伝達するための第2出力軸210であって、第1出力軸110と同軸に配置された第2出力軸210と、を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1の出力装置10は、クランクシャフト5に取り付けられた第1駆動ギア101及び第2駆動ギア201と、第1出力軸110に取り付けられ、第1駆動ギア101と噛合する第1被駆動ギア103と、第2出力軸210に取り付けられた第2被駆動ギア203と、第2駆動ギア201及び第2被駆動ギア203と噛合し、第2駆動ギア201からの駆動力を第2被駆動ギア203に伝達するためのアイドラギア202と、を備える。
【0062】
上記(1)の構成によれば、クランクシャフト5からの駆動力を第1出力軸110と第1出力軸110と同軸に配置された第2出力軸210とに伝達できるので、第1出力軸110と第2出力軸210のそれぞれにピストンを設ける必要がない。これにより、2つの出力軸110、120のそれぞれにピストンを備える場合と比べてエンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。すなわち、上記(1)の構成によれば、エンジン1の構成を大きく変えることなく同軸の2つの出力軸110、120を駆動できる。
【0063】
また、上記(1)の構成によれば、第2被駆動ギア203がアイドラギア202を介して第2駆動ギア201によって駆動されるので、第2出力軸210の回転方向を第1出力軸110の回転方向とを逆にすることが容易となる。これにより、第2出力軸210に作用するトルク反力の向きを第1出力軸110に作用するトルク反力の向きと逆にすることが容易である。したがって、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力を互いに相殺させることが容易となるので、エンジン1に作用するトルク反力を抑制できる。これにより、エンジン1や該エンジン1を搭載する機器における所望しない揺動や振動等を抑制することが容易となる。
【0064】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1出力軸110又は第2出力軸210の何れか一方の出力軸は、中空軸であるとよく、何れか他方の出力軸は、一方の出力軸の内周に挿通されているとよい。
【0065】
上記(2)の構成によれば、例えば第1出力軸110と第2出力軸210とが軸方向の異なる位置に並べて配置される場合と比べて、エンジン1の中心から第1出力軸110又は第2出力軸210の先端までの距離が大きくなることを抑制できる。
【0066】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第1出力軸110は、中空軸であるとよく、第2出力軸210は、第1出力軸110の内周に挿通されているとよい。
【0067】
上記(3)の構成によれば、上述したように、アイドラギア202の位置をエンジン1の中心側に近づけることができるので、出力装置10(エンジン1)の大きさが大きくなることを抑制できる。
【0068】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、第1出力軸110の回転方向は、第2出力軸210の回転方向と逆であるとよい。
【0069】
上記(4)の構成によれば、第2出力軸210に作用するトルク反力の向きを第1出力軸110に作用するトルク反力の向きと逆にすることができる。したがって、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力を互いに相殺させることができるので、エンジン1に作用するトルク反力を抑制できる。これにより、エンジン1や該エンジン1を搭載する機器における所望しない揺動や振動等を抑制できる。
【0070】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、クランクシャフト5が第1出力軸110を回転させる場合の減速比は、クランクシャフト5が第2出力軸210を回転させる場合の減速比と等しいとよい。
【0071】
上記(5)の構成によれば、第1出力軸110からの駆動力と第2出力軸210からの駆動力とが同じ回転速度で出力されることが望ましい場合に好適である。
また、上記(5)の構成によれば、第1出力軸110に作用するトルク反力の大きさと第2出力軸210に作用するトルク反力の大きさを同じ大きさにし易くなるので、第1出力軸110の回転方向と第2出力軸210の回転方向とが異なる方向であれば、第1出力軸110に作用するトルク反力と第2出力軸210に作用するトルク反力とを互いに効果的に相殺できる。
【0072】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、第1駆動ギア101、第2駆動ギア201、第1被駆動ギア103、第2被駆動ギア203、及びアイドラギア202は、クランクケース40とギアボックス60とで囲まれた空間(ギア収容空間)71内に配置されているとよい。
【0073】
上記(6)の構成によれば、これら各ギアを合理的に配置できる。
【0074】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、第1被駆動ギア103に形成された凹部103bに配置されていて、第2出力軸210を回転可能に軸支する軸受(第4軸受)96をさらに備えるとよい。
【0075】
上記(7)の構成によれば、第2出力軸210が第4軸受96、第1出力軸110、及び第1出力軸110を回転可能に軸支する軸受である第1軸受93及び第2軸受94を介して出力装置10のケーシングであるクランクケース40やギアボックス60に支持されるので、第2出力軸210の軸支に係る構成が合理的となる。したがって、第2出力軸210の軸支に係る構成の信頼性を向上できるとともに、第2出力軸210の軸支に係る構成を小型化できる。
【0076】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1は、上記(1)乃至(7)の何れかの構成の出力装置10を備える。
【0077】
上記(8)の構成によれば、エンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。すなわち、上記(8)の構成によれば、エンジン1の構成を大きく変えることなく同軸の2つの出力軸110、120を駆動できる。
【0078】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る出力装置10の組立方法は、上記(1)乃至(7)の何れかの構成の出力装置10の組立方法である。本開示の少なくとも一実施形態に係る出力装置10の組立方法は、クランクシャフト5に第2駆動ギア201を取り付けるとともに、第2被駆動ギア203が取り付けられている第2出力軸210をクランクケース40に配置された軸受(第3軸受)95に保持させるステップS10と、上記保持させるステップS10の実施後に、クランクシャフト5に第1駆動ギア101を取り付けるとともに、第1出力軸110を第2出力軸210と同軸に配置するステップS20と、を備える。
【0079】
上記(9)の方法によれば、上述した出力装置10を効率的に組み立てることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 エンジン
5 クランクシャフト
10 出力装置
40 クランクケース
60 ギアボックス
71 空間(ギア収容空間)
101 第1駆動ギア
103 第1被駆動ギア
110 第1出力軸
201 第2駆動ギア
202 アイドラギア
203 第2被駆動ギア
210 第2出力軸
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5