(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102380
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電気転てつ機の筐体構造
(51)【国際特許分類】
B61L 5/06 20060101AFI20220630BHJP
B61L 5/10 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B61L5/06
B61L5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217073
(22)【出願日】2020-12-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】伊佐山 正
(72)【発明者】
【氏名】岡見 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆浩
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161SS02
(57)【要約】
【課題】従来技術に比べて高い耐水性を有する電気転てつ機の筐体構造を提供する。
【解決手段】電気転てつ機1の筐体構造は、上面に開口部10aを有するケース(筐体)10と、開口部10aを開閉するケースカバー(蓋体)11と、柔軟な弾性材料で形成されて開口部10aを囲む枠状のシール部材12とを含む。シール部材12は、ケース10の上部に取り付けられ、及び、上方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の上向突条部を上部に有し、ケースカバー11による開口部10aの閉塞時に複数の上向突条部の少なくとも一つがケースカバー11によって押圧される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含み、
前記シール部材は、前記筐体の上部に取り付けられ、及び、上方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の上向突条部を有し、
前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記複数の上向突条部の少なくとも一つが前記蓋体によって押圧される、
電気転てつ機の筐体構造。
【請求項2】
前記シール部材には、前記筐体の上部に取り付けられる取付部と前記複数の上向突条部との間を全周にわたって延びる空洞部が形成されている、請求項1に記載の電気転てつ機の筐体構造。
【請求項3】
前記シール部材には、前記シール部材を前記筐体の上部に取り付ける際に前記筐体の上部が嵌入する嵌入溝が全周にわたって形成されており、前記嵌入溝が前記取付部として機能する、請求項1に記載の電気転てつ機の筐体構造。
【請求項4】
前記シール部材は、前記筐体の上部に取り外し可能に取り付けられ、
前記嵌入溝の底部には、下方に突出すると共に全周にわたって延びる少なくとも一つの下向突条部が形成されており、
前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記少なくとも一つの下向突条部が前記筐体の前記上部の上端面に押し付けられる、
請求項3に記載の電気転てつ機の筐体構造。
【請求項5】
前記シール部材は、前記筐体の前記上部に取り外し可能に取り付けられ、
前記嵌入溝の側面には、溝内方に突出すると共に全周にわたって延びる少なくとも一つの横向突条部が形成されており、
前記少なくとも一つの横向突条部が前記筐体の前記上部の側面に接触している、
請求項3又4に記載の電気転てつ機。
【請求項6】
上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含み、
前記シール部材は、前記蓋体の下部に取り付けられ、及び、下方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の下向突条部を有し、
前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記複数の下向突条部の少なくとも一つが前記筐体に押し付けられる、
電気転てつ機の筐体構造。
【請求項7】
前記蓋体は、回動支点を中心に上下方向に回動することで前記開口部を開閉するように構成され、前記回動支点が前記筐体の端部から外方に離隔した位置に設けられている、請求項1~6のいずれか一つに記載の電気転てつ機。
【請求項8】
上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含み、
前記シール部材は、前記筐体又は蓋部に取り付けられて前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記筐体と前記蓋体との間で圧縮され、
前記蓋体は、回動支点を中心に上下方向に回動することで前記開口部を開閉するように構成され、前記回動支点が前記筐体の端部から外方に離隔した位置に設けられている、
電気転てつ機の筐体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の走行する線路の分岐器のトングレールを転換させる電気転てつ機の筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気転てつ機は、モータ、減速機構、転換歯車、転換ローラ及び動作かん等を有している。電気転てつ機においては、モータの回転力が減速機構及び転換歯車を介して転換ローラに伝達され、転換ローラの回転運動に伴い、動作かんが直線往復運動する。これにより、動作かんに連結されたトングレールの位置が定位と反位との間で移動する。
【0003】
特許文献1には、従来の電気転てつ機の一例が開示されている。特許文献1に開示された電気転てつ機では、筐体(ケース)の上部開口がシール部材(パッキン)を介して蓋部材(カバー)で覆われる構成の筐体構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、台風やゲリラ豪雨等の集中豪雨による水害が多発している。電気転てつ機は、レール面付近に設置されることから水害の影響を直接受けやすく、また、その交換も容易ではない。そのため、電気転てつ機の耐水性を向上させることが要望されている。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術に比べて高い耐水性を有する電気転てつ機の筐体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、電気転てつ機の筐体構造は、上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含む。前記シール部材は、前記筐体の上部に取り付けられ、及び、上方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の上向突条部を有する。そして、電気転てつ機の筐体構造は、前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記複数の上向突条部の少なくとも一つが前記蓋体よって押圧されるように構成されている。
【0008】
本発明の他の側面によると、電気転てつ機の筐体構造は、上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含む。前記シール部材は、前記蓋体の下部に取り付けられ、及び、下方に突出すると共に全周にわたって延びる複数の並列した下向突条部を有する。そして、前記電気転てつ機の筐体構造は、前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記複数の下向突条部の少なくとも一つが前記筐体に押し付けられるように構成されている。
【0009】
本発明のさらに他の側面によると、電気転てつ機の筐体構造は、上面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する蓋体と、柔軟な弾性材料で形成されて前記開口部を囲む枠状のシール部材とを含む。前記シール部材は、前記筐体又は蓋部に取り付けられて前記蓋体による前記開口部の閉塞時に前記筐体と前記蓋体との間で圧縮される。また、前記蓋体は、回動支点を中心に上下方向に回動することで前記開口部を開閉するように構成され、前記回動支点が前記筐体の端部から外方に離隔した位置に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来技術に比べて高い耐水性を有する電気転てつ機の筐体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電気転てつ機(ケースカバーが開かれた状態)を示す斜視図である。
【
図2】ケースカバーが取り外された状態の電気転てつ機を示す斜視図である。
【
図3】電気転てつ機においてケースとケースカバーとの間をシールするシール部材の平面図である。
【
図5】ケースの上部に取り付けられた状態のシール部材を示す要部断面図である。
【
図6】ケースカバーによるケースの開口部の閉塞時(ケースカバーがケースに締結された状態)におけるシール部材の状態を示す要部断面図である。
【
図8】ケースの上部に代えてケースカバーの下部に取り付けられた場合のシール部材を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る筐体構造が適用された電気転てつ機の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、図示省略の基本レールの延伸方向に平行な方向を前後方向とし、前記基本レールの幅方向に平行な方向を左右方向とし、前記基本レールの高さ方向に平行な方向を上下方向とする。
【0013】
図1は、実施形態に係る電気転てつ機(ケースカバー(蓋体)が開かれた状態)を示す斜視図であり、
図2は、ケースカバー(蓋体)が取り外された状態の電気転てつ機を示す斜視図である。
【0014】
図1を参照すると、実施形態に係る電気転てつ機1においては、上面に開口部10aを有する箱型のケース(筐体)10と、ケース10の開口部10aを開閉するケースカバー(蓋体)11と、ケース10の開口部10aを囲む枠状のシール部材12とを含む筐体構造が採用されている。
【0015】
図1及び
図2を参照すると、電気転てつ機1において、ケース10の後面には、防水構造を有するモータ20が取り付けられている。また、ケース10の内部には、電気転てつ機1を構成する部品(構成部品)の大部分(一部がケース10外に突出する部品を含む)が配置されている。具体的には、本実施形態において、ケース10の内部には、外線端子板21、制御リレー22、回路制御器23、動作かん24及び鎖錠かん25などが配置されている。また、
図1、
図2には表れていないが、ケース10の内部には、減速機構、転換歯車及び転換ローラが配置されている。
【0016】
前記減速機構は、複数の歯車を有し、モータ20の回転力を前記転換歯車に伝達する。前記転換歯車には前記転換ローラが取り付けられている。前記転換ローラは、前記転換歯車の回転に伴って動作かん24の転換カム面(図示省略)を押すことにより、動作かん24を左右方向に往復移動(直線往復運動)させる。
【0017】
動作かん24は、図示省略のトングレールの位置を定位の位置から反位の位置へと又は反位の位置から定位の位置へと移動させるための部品である。動作かん24は、ケース10を左右方向に貫通して配置されている(つまり、動作かん24の両端は、ケース10外に突出している)。動作かん24の一方の端部は、前記トングレールに連結されている。動作かん24が左右方向に移動することにより、前記トングレールの位置が定位の位置と反位の位置との間で切り換えられるようになっている。
【0018】
鎖錠かん25は、動作かん24により定位の位置又は反位の位置に切り換えられた前記トングレールをそのままの位置に維持(鎖錠)するための部品である。鎖錠かん25は、ケース10を左右方向に貫通して配置されている(つまり、動作かん24と同様、鎖錠かん25の両端部は、ケース10外に突出している)。鎖錠かん25の一方の端部は、前記トングレールに連結されている。動作かん24の移動に伴って前記トングレールの位置が定位の位置又は反位の位置に切り換えられると、鎖錠かん25は、動作かん24の移動方向と同じ方向に移動する。
【0019】
なお、図示省略するが、ケース10における動作かん24及び鎖錠かん25のそれぞれの入出部には、シール部材及びグリスを併用した耐水構造が適用されており、外部から前記入出部を介してケース10内に水が浸入することが防止されている。
【0020】
ケースカバー11は、回動支点Xを中心に上下方向(
図1中の矢印方向)に回動してケース10の開口部10aを開閉するように構成されている。本実施形態において、ケースカバー11の回動支点Xは、ケース10の後端部から後方(すなわち、ケース10の外方)に離隔した位置に設けられている。
【0021】
具体的には、本実施形態において、ケース10の後端部には、ケースカバー11を上下方向に回動自在に支持する支持部材30が取り付けられている。支持部材30は、例えば板金を加工して形成されている。支持部材30は、一端側がケース10の後端部の上部に固定され、モータ20の上方をケース10の後方に延在している。支持部材30の他端側は、支持部材30の他端部が上側になるように横向きU字状に曲げられて(折り返されて)フック部30aを形成している(
図2参照)。
【0022】
他方、ケースカバー11の後端部には、後方に延びる一対のアーム部31,31が設けられ、一対のアーム部31,31の先端部の間には、丸棒状の軸部材32が取り付けられている。具体的には、軸部材32は、一端側が一対のアーム部31,31の一方の先端部に固定され、他端側が一対のアーム部31,31の他方の先端部に固定されている。
【0023】
そして、ケースカバー11側の軸部材32がケース10側の支持部材30のフック部30aに差し込まれることにより、ケースカバー11が支持部材30に上下方向に回動自在に支持されている。ここで、本実施形態において、フック部30aの内径は、軸部材32の外径よりも僅かに大きく設定され、フック部30aの幅方向(左右方向)の寸法は、軸部材32の長さよりも僅かに小さく設定されている。このため、軸部材32がフック部30aに差し込まれることによって、ケースカバー11は、ケース10に対して前後方向及び左右方向に位置決めされるようになっている。したがって、ケースカバー11は、軸部材32がフック部30aに差し込まれた状態で静かに降ろされる(下方に回動させられる)ことにより、正しい位置でケース10の開口部10aを閉塞する。
【0024】
本実施形態において、ケース10の開口部10aを閉塞したケースカバー11は、ケース10の前端部、すなわち、開口部10aを挟んで回動支点Xの反対側に設けられた手回しノブ40が回転操作されることによってケース10に締結される。手回しノブ40は、操作用のハンドル40aを有している。ハンドル40aは、先端部が互いに逆方向(例えば、
図1及び
図2に示される後側を向いた状態とその逆の前側を向いた状態)を向くように180度回動可能に構成されている。
【0025】
なお、上記と逆の動作により、すなわち、手回しノブ40が回転操作されてケースカバー11のケース10に対する締結が解除され、ケースカバー11が持ち上げられ(上方に回動させられ)、及び、軸部材32がフック部30aから引き抜かれることにより、ケースカバー11を取り外す(ケース10から分離させる)ことが可能である。
【0026】
シール部材12は、柔軟な弾性材料で形成されている。特に制限されないが、シール部材12は、弾性及び耐候性などに優れた合成ゴム(ニトリルゴムNBR、エチレンプロピレンゴムEPDM、クロロプレンゴムCR及びシリコンゴムSI等)で形成されるのが好ましい。また、本実施形態において、シール部材12は、ケース10の開口部10aを囲むように下部側がケース10の上部に取り外し可能に取り付けられている。
【0027】
シール部材12は、ケースカバー11によってケース10の開口部10aが閉塞され及び手回しノブ40の回転操作によってケースカバー11がケース10に締結されることにより、ケース10とケースカバー11との間で圧縮されてケース10とケースカバー11との間をシールする。すなわち、開口部10aが密封される。なお、以下の「ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時」は、主にケースカバー11がケース10に締結されている状態をいうものとする。
【0028】
図3は、シール部材12の平面図であり、
図4は、
図3のA-A断面拡大図である。
【0029】
図3及び
図4参照すると、シール部材12の上部は、上側に凸となる円弧状の断面形状を有している。また、シール部材12の上部の表面には、上方(斜め上方を含む)に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数(ここでは四つ)の突条部(以下「上向突条部」という)121が形成されている。上向突条部121の先端部は、上側に凸となる円弧状の断面形状を有している。
【0030】
本実施形態において、複数(四つ)の上向突条部121は、シール部材12の上部の表面に等間隔で配置されている。また、複数(四つ)の上向突条部121は、シール部材12の頂部、換言すれば、シール部材12の頂部を通るA-A断面の中心線(以下単に「シール部材の断面中心線」という)CLを挟んで左右均等に(左右それぞれに二つずつ)配置されている。つまり、シール部材12の上部の表面には、並列した偶数個の上向突条部121が形成されており、前記偶数個の上向突条部121は、シール部材12の頂部(断面中心線CL)を挟んで左右均等に配置されている。
【0031】
シール部材12の下部には、シール部材12をケース10の上部に取り付ける際にケース10の上部が嵌入する嵌入溝122が全周にわたって形成されている。つまり、嵌入溝122は、ケース10の上部に取り付けられる取付部として機能する。嵌入溝122は、シール部材12の断面中心線CL上に設けられている。嵌入溝122の幅Wは、ケース10の上部の厚さT(
図5参照)に等しいか又はそれよりも僅かに小さく、嵌入溝122の底部122aは、平坦面になっている。
【0032】
嵌入溝122の底部(溝底面)122aには、下方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数(ここでは二つ)の突条部(以下「下向突条部」という)123が形成されている。下向突条部123の先端部は、下側に凸となる円弧状の断面形状を有している。本実施形態において、複数(二つ)の下向突条部123は、シール部材12の断面中心線CL(=嵌入溝122の中心線)を挟んで左右均等に(左右それぞれに一つずつ)配置されている。
【0033】
また、シール部材12には、複数の上向突条部121と嵌入溝122の底部122a(換言すれば、複数の下向突条部123)との間を全周にわたって延びる空洞部124が形成されている。本実施形態において、空洞部124は、円形断面を有している。但し、これに限られるものではなく、空洞部124の断面形状は任意に設定可能である。
【0034】
図5は、ケース10の上部に取り付けられた状態のシール部材12を示す要部断面図であり、
図6は、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時(ケースカバー11がケース10に締結された状態)におけるシール部材12の状態を示す要部断面図である。
【0035】
図5に示されるように、シール部材12は、下向突条部123の先端部がケース10の上部の上端面10bに接触するようにケース10の上部に取り付けられる。その後、ケースカバー11によってケース10の開口部10aが閉塞され及び手回しノブ40の回転操作によってケースカバー11がケース10に締結されると、シール部材12は、ケース10とケースカバー11との間で圧縮される。つまり、シール部材12は、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時にケース10とケースカバー11との間で圧縮される。すると、
図6に示されるように、シール部材12は、複数の上向突条部121がケースカバー11の対応する面に接触して押圧されると共に複数の下向突条部123がケース10の上部の上端面10bに押し付けられて弾性変形する。これにより、ケース10とケースカバー11との間がシール部材12によって効果的にシールされる。
【0036】
実施形態に係る電気転てつ機1によれば、以下のような効果が得られる。
【0037】
柔軟な弾性材料で形成されてケース10の開口部10aを囲むシール部材12は、ケース10の上部に取り付けられている。また、シール部材12は、上方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の上向突条部121を上部に有している。そして、ケースカバー11によるケース10の上面の開口部10aの閉塞時に複数の上向突条部121がケースカバー11によって押圧されるように構成されている。
【0038】
このため、シール部材12のケースカバー11に対する十分な接触圧力が得られ、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時にケース10とケースカバー11との間の良好なシール性が確保される。また、複数の上向突条部121のそれぞれは他の上向突条部121から分離されており、かりに複数の上向突条部121のいずれかによじれ等が生じた場合であっても他の上向突条部121はその影響をほとんど受けない。このため、ケースカバー11とシール部材12との間に部分的なすきまが生じることも抑制される。したがって、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時にケース10とケースカバー11との間の良好且つ安定したシール性が得られ、外部からケース10内に水が浸入することが防止される。この結果、従来技術に比べて高い耐水性を有する電気転てつ機(の筐体構造)が得られる。
【0039】
また、シール部材12の下部には、シール部材12をケース10の上部に取り付ける際にケース10の上部が嵌入する嵌入溝122が全周にわたって形成されており、嵌入溝122がシール部材12をケース10の上部に取り付けられる取付部として機能する。このため、シール部材12を容易且つ安定してケース10の上部に取り付けることが可能であり、シール部材12をケース10の上部から取り外すことも容易である。
【0040】
また、シール部材12には、複数の上向突条部121と嵌入溝122の底部122aとの間を全周にわたって延びる空洞部124が形成されている。このため、ケースカバー11によるケース10の上面の開口部10aの閉塞時、すなわち、シール部材12がケース10とケースカバー11との間で圧縮されたとき、当該圧縮に対するシール部材12の良好な変形追従性が得られる。したがって、ケース10とケースカバー11との間の良好且つ安定したシール性が得られる。なお、空洞部124の形状や大きさなどを調整することにより、前記圧縮に対するシール部材12の変形追従性を調整することも可能である。
【0041】
また、嵌入溝122の底部122aには、下方に突出すると共に全周にわたって延びる並列した複数の下向突条部123が形成され、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時に複数の下向突条部123がケースカバー11の上部の上端面10bに押し付けられる。このため、シール部材12がケース10の上部に取り外し可能に取り付けられている場合であっても、外部からの水がケース10の上部とシール部材12の嵌入溝122との間を通ってケース10内に水が浸入することが防止される。
【0042】
また、上述の実施形態において、ケースカバー11は、回動支点Xを中心に上下方向に回動してケース10の開口部10aを開閉するように構成されており、回動支点Xは、ケース10の後端部から後方に離隔した位置に設けられている。具体的には、ケースカバー11は、一端側がケース10に取り付けられると共にケース10から後方に延在する支持部材30によって上下方向に回動自在に支持されている。このため、シール部材12の全体を概ね上下方向から圧縮することが可能になり、特にシール部材12における回動支点Xに近い側の部位によじれ等が発生してしまうことが抑制される。したがって、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時にケース10とケースカバー11との間のさらに良好なシール性が得られる。
【0043】
なお、上述の実施形態においては、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時に複数の上向突条部121の全てがケースカバー11によって押圧されている。しかし、これに限られるものではない。ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時に複数の上向突条部121の少なくとも一つがケースカバー11によって押圧されればよい。
【0044】
また、上述の実施形態において、嵌入溝122の底部122aには、並列した複数の下向突条部123が形成されている。しかし、これに限られるものではない。嵌入溝122の底部122aに一つの下向突条部123が形成されてもよい。この場合、一つの下向突条部123は、シール部材12の断面中心線CL(=嵌入溝122の中心線)上又はその近傍に配置されるのが好ましい。すなわち、嵌入溝122の底部122aには、少なくとも一つの下向突条部123が形成されていればよい。
【0045】
また、上述の実施形態において、シール部材12は、ケース10の上部に取り外し可能に取り付けられている。しかし、これに限られるものではない。シール部材12は、接着剤などにより、ケース10の上部に取り外しできないように取り付けられ(固定され)てもよい。例えば、シール部材12は、嵌入溝122の底部122aがケース10の上部の上端面10bに接着されてケース10の上部に取り付けられる。この場合、嵌入溝122の底部122aに下向突条部123が形成されなくてもよい。このようにしても上述の実施形態と同様の効果が得られる。但し、上述の実施形態では、シール部材12の交換によってケース10とケースカバー11との間の良好なシール性を長期間にわたって維持することが可能であり、この点で上述の実施形態の方が有利である。
【0046】
また、
図7に示されるように、シール部材12において、嵌入溝122の側面122bに、溝内方に突出すると共に全周にわたって延びる少なくも一つ(ここでは嵌入溝122の両側面122bに二つずつの計四つ)の突条部(以下「横向突条部」という)125が形成されてもよい。横向突条部125の先端部は、溝内側に凸となる円弧状の断面形状を有している。このようにすると、シール部材12がケース10の上部に取り外し可能に取り付けられている場合であっても、外部からの水がケース10の上部とシール部材12の嵌入溝122との間を通ってケース10内に水が浸入することがさらに効果的に防止され得る。
【0047】
また、上述の実施形態において、シール部材12は、ケース10の上部に取り付けられている。しかし、これに限られるものではない。
図8に示されるように、シール部材12がケースカバー11の下部に取り付けられてもよい。この場合、上述の実施形態におけるシール部材12の上下が逆になる。すなわち、上述の実施形態におけるシール部材12の上部(下部)がシール部材12の下部(上部)になり、上向突条部121が下向突条部になり、下向突条部123が上向突条部になる。そして、ケースカバー11によるケース10の開口部10aの閉塞時に複数の下向突条部(上述の実施形態における上向突条部121)の少なくとも一つがケース10に押し付けられることになる。このようにしても上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1…電気転てつ機、10…ケース(筐体)、10a…開口部、11…ケースカバー(蓋体)、12…シール部材、20…モータ、24…動作かん、25…鎖錠かん、30…支持部材、30a…フック部、31…アーム部、32…軸部材、40…手回しノブ、40a…手回しノブのハンドル、121…上向突条部、122…嵌入溝(取付部)、122a…嵌入溝の底部、123…下向突条部、124…空洞部、X…回動支点