(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102393
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220630BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20220630BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20220630BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20220630BHJP
B65D 75/04 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B29/00
D21H27/00 F
D21H27/30 C
B65D75/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217092
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219680
【氏名又は名称】株式会社トライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】羽明 駿
(72)【発明者】
【氏名】大坂 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 祐二
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
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4L055GA29
(57)【要約】
【課題】薄紙からなる包装袋を使用するにもかかわらず、包装袋の破れが抑制され、且つ、包装袋への衛生紙の引っかかりが抑制された、衛生紙の包装体を提供すること。
【解決手段】衛生紙、並びに、衛生紙を収容する包装袋を備えた包装体であって、包装袋が10g/m
2~90g/m
2の坪量を有する薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなり、熱可塑性樹脂層がJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂を含み、熱可塑性樹脂層が包装袋の内表面を形成する、包装体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生紙、並びに、
前記衛生紙を収容する包装袋
を備えた包装体であって、
前記包装袋が10g/m2~90g/m2の坪量を有する薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなり、
前記熱可塑性樹脂層がJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂層が前記包装袋の内表面を形成する、包装体。
【請求項2】
前記薄紙の厚みが20μm~200μmである、請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層の厚みが10μm~30μmである、請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記ラミネート紙の厚みが30μm~200μmである、請求項1乃至3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層がポリオレフィンを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の包装体。
【請求項6】
前記ポリオレフィンがエチレンのホモポリマー又はコポリマーである、請求項5記載の包装体。
【請求項7】
前記エチレンのコポリマーがエチレンとプロピレン及び/又はαオレフィンとのコポリマーである、請求項6記載の包装体。
【請求項8】
前記ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度が500kN/m以上である、請求項1乃至7のいずれかに記載の包装体。
【請求項9】
前記ラミネート紙が前記薄紙及び前記熱可塑性樹脂層のみからなる、請求項1乃至8のいずれかに記載の包装体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂層が押出コーティング層である、請求項1乃至9のいずれかに記載の包装体。
【請求項11】
前記薄紙が前記包装袋の外表面を形成する、請求項1乃至10のいずれかに記載の包装体。
【請求項12】
前記包装袋がヒートシールされている、請求項1乃至11のいずれかに記載の包装体。
【請求項13】
前記包装袋が少なくとも1つの空気孔を備える、請求項1乃至12のいずれかに記載の包装体。
【請求項14】
前記衛生紙がポップアップ式に前記包装袋に収容されている、請求項1乃至13のいずれかに記載の包装体。
【請求項15】
前記衛生紙がペーパータオルである、請求項1乃至14のいずれかに記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパータオル等の衛生紙の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生目的で使用される衛生紙としては、例えば、ティッシュペーパー、ペーパータオル等の使い捨て紙が広く使用されている。
【0003】
そして、ペーパータオルのうち、主にキッチンにおいて、肉、魚、野菜等の水切り、油切り;まな板の上敷;食器の拭き取り;フライパンの油拭き;ガスレンジ、換気扇等の手入れ;食卓の汚れ拭き、等の用途に使用されるものは、キッチンペーパー(クッキングペーパーも含む)とも称され、家庭用紙の一種として周知である。
【0004】
このような衛生紙は、通常、プラスチックフィルム製の包装袋によって包装されて市販されているが、プラスチックフィルムの焼却時に生じる二酸化炭素による地球温暖化等の環境問題、並びに、石油枯渇等の資源問題に対応すべく、紙をベースとする包装シート、例えば、紙基材とヒートシール用の薄い熱可塑性樹脂層とを備える積層体からなる包装シートを使用して包装袋とすることが提案されている。
【0005】
そのような包装シートに使用される紙基材としてはバリア性の観点から厚紙が一般に使用されている。例えば、特許文献1には、100~700g/m2の坪量を有する板紙基材及びポリオレフィン樹脂層を備える積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、厚紙は剛性が高いために、厚紙をベースとする平面状の包装シートを変形させて包装袋を形成する工程を迅速に行うことが比較的困難である。また、厚紙は断熱性が高いために、厚紙の裏面から熱を加えて厚紙の表面に存在する熱可塑性樹脂層を溶融させてヒートシールする工程も比較的困難である。
【0008】
そこで、紙基材として薄紙を使用することが考えられる。薄紙は変形性が高く且つ断熱性が低いために包装袋への変形及びヒートシールをより容易に実施することが可能となる。
【0009】
しかし、薄紙は強度が比較的低いために、薄紙からなる包装袋には破れが発生しやすい。
【0010】
また、衛生紙は比較的毛羽立ちやすいために、衛生紙に紙製の包装袋が接触すると当該包装袋に衛生紙が引っかかり易く、包装作業が困難となりやすい。
【0011】
本発明は、薄紙からなる包装袋を使用するにもかかわらず、包装袋の破れが抑制され、且つ、包装袋への衛生紙の引っかかりが抑制された、衛生紙の包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意検討の結果、本発明者らは、特定範囲の坪量を有する薄紙と特定値以上の融解温度を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなる包装袋を用いて、且つ、当該熱可塑性樹脂層が包装袋の内表面を形成するように、衛生紙を包装することによって、包装袋の破れが抑制され、また、包装袋への衛生紙の引っかかりも抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、
衛生紙、並びに、
前記衛生紙を包装する包装袋
を備えた包装体であって、
前記包装袋が10g/m2~90g/m2の坪量を有する薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなり、
前記熱可塑性樹脂層がJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂層が前記包装袋の内表面を形成する、包装体に関する。
【0014】
前記薄紙の厚みは20μm~200μmが好ましい。
【0015】
前記熱可塑性樹脂層の厚みは10μm~30μmが好ましい。
【0016】
前記ラミネート紙の厚みは30μm~200μmが好ましい。
【0017】
前記熱可塑性樹脂層がポリオレフィンを含むことが好ましい。
【0018】
前記ポリオレフィンがエチレンのホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。
【0019】
前記エチレンのコポリマーはエチレンとプロピレン及び/又はαオレフィンとのコポリマーであることが好ましい。
【0020】
前記ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度が500kN/m以上であることが好ましい。
【0021】
前記ラミネート紙が前記薄紙及び前記熱可塑性樹脂層のみからなることが好ましい。
【0022】
前記熱可塑性樹脂層が押出コーティング層であることが好ましい。
【0023】
前記薄紙が包装袋の外表面を形成することが好ましい。
【0024】
前記包装袋がヒートシールされていることが好ましい。
【0025】
前記包装袋が少なくとも1つの空気孔を備えることが好ましい。
【0026】
前記衛生紙がポップアップ式に前記包装袋に収容されていることが好ましい。
【0027】
前記衛生紙がペーパータオルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の包装体は、薄紙を基材とする包装シートからなる包装袋を使用するにもかかわらず、当該包装シートが特定の物性を備える熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を備えるために包装袋の強度が向上し、包装袋の破れを抑制することができ、また、当該熱可塑性樹脂層の平滑な表面が衛生紙と接触するので包装袋への衛生紙の引っかかりも抑制することができる。したがって、本発明の包装体は、被包装物の包装を良好に維持することができ、また、被包装物の包装が容易である。
【0029】
また、本発明では、紙を基材とする包装シートからなる包装袋を使用するので、加工性に優れており、例えば、ガゼット袋の製造が容易である。
【0030】
そして、本発明では、熱可塑性樹脂層を用いてヒートシールが可能となるために包装体の製造が容易である。
【0031】
本発明の包装体は、薄紙を基材とする包装シート製の包装袋を使用するので、プラスチックフィルム製の包装袋を使用する場合に比べて、廃棄時のプラスチックの環境中への残存による環境汚染等の環境問題により対応することができる。
【0032】
更に、前記包装シートに含まれる基材としての薄紙は、もともと、植物に由来する有機物であり、カーボンニュートラルな再生可能な資源であるので、環境への負荷を低減することができる。したがって、本発明の包装体は環境に優しいものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】
図1の包装袋を形成するラミネート紙の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は
衛生紙、並びに、
前記衛生紙を収容する包装袋
を備えた包装体であって、
前記包装袋が10g/m2~90g/m2の坪量を有する薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなり、
前記熱可塑性樹脂層がJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂層が前記包装袋の内表面を形成する、包装体に関する。
【0035】
[衛生紙]
本発明の包装体は衛生紙を含む。衛生紙とは衛生状態の向上を目的として使用される紙であり、例えば、ティッシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)等を挙げることができる。衛生紙は衛生用紙とも呼称される(JIS P0001:1998)。
【0036】
本発明における衛生紙としては、キッチンペーパー等のペーパータオルが好ましい。キッチンペーパー(クッキングペーパーも含む)は、主にキッチンにおいて、肉、魚、野菜等の水切り、油切り;まな板の上敷;食器の拭き取り;フライパンの油拭き;ガスレンジ、換気扇等の手入れ;食卓の汚れ拭き、等の用途に使用される。
【0037】
衛生紙は、多孔性であり、液体の吸収能を有する。液体としては、水、油等が挙げられる。したがって、本発明で使用される衛生紙は吸水性、吸油性を備えており、例えば、キッチンでの使用に適している。
【0038】
衛生紙を構成する繊維材料は特には限定されるものではなく、綿、木材パルプ、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成高分子から製造した合成繊維を挙げることができる。これら繊維は単独で用いてもよく、混合複合化してもよい。衛生紙を構成する繊維材料としては、木材パルプが好ましく、バージン木材パルプ若しくは古紙パルプ又はこれらの混合物を使用することができる。木材パルプとしては、例えば、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未晒しパルプ)等の針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未晒しパルプ)等の広葉樹パルプと、をそれぞれ単独で、或いは、適宜の比率で混合したものを使用することが可能であり、例えば、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比を1(25%):3(75%)~1(50%):1(50%)とすることができる。
【0039】
衛生紙の坪量は特には限定されるものではないが、坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])10g/m2~100g/m2が好ましく、30g/m2~50g/m2がより好ましい。また、衛生紙の紙厚も特には限定されるものではないが、紙厚(測定方法:JIS P 8118 [2014])50μm~300μmが好ましく、80μm~200μmがより好ましい。
【0040】
本発明で使用される衛生紙はその一方の表面又は両面に凹凸を有することが好ましい。凹凸は衛生紙の表面の一部に存在してもよく、或いは、表面の全面に存在してもよい。
【0041】
凹凸はエンボス加工により付与されることが好ましい。凹凸の高さ(凹部の最底面から凸部の頂点のレベルまでの垂直高さ)は特には限定されるものではないが、例えば、0.1mm~5mmでもよく、1mm~3mmでもよい。
【0042】
衛生紙の形態は特には限定されるものではなく、長尺の衛生紙を巻き取ったロールの形態であってもよいが、衛生紙は非ロール形態であることが好ましく、平面状の衛生紙を折り畳んで包装袋内に収容されることがより好ましい。衛生紙は、1枚(所謂、1プライ)を2つ折りにして利用する形態でも、また、2枚(所謂、2プライ)又は3枚(所謂、3プライ)以上の積層構造の一組を2つ折りにして1枚と同様に利用する形態のいずれでもよい。
【0043】
衛生紙がポップアップ式に包装袋に収容されることが好ましい。ポップアップ式であると、衛生紙を包装袋から取り出した後に次の衛生紙の一部が包装袋の外に出てきているので、次の衛生紙の取り出しが容易である。
【0044】
衛生紙は、おむつ、成人用失禁パンツ、幼児用トレーニングパンツ等の衣類ではない方が好ましい。
【0045】
[包装袋]
本発明の包装袋は薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなる。包装袋の形状は特には限定されるものではなく、例えば、非箱形又は箱形とすることが可能である。また、梱包運搬性等の取扱性を高めるために包装袋は変形性を有する方が好ましい。
【0046】
本発明の包装袋は少なくとも1つの空気孔を備えることが好ましい。空気孔は包装袋内の空気を外部に排出する機能を有しており、包装袋内の空気を外部に排出することによって包装袋の体積を低減し、例えば、包装袋の梱包を容易とすることができる。
【0047】
空気孔は、例えば、ラミネート紙又はラミネート紙により形成された包装袋を少なくとも1つの針等で貫通することにより形成可能である。
【0048】
空気孔の個数は特には限定されるものではないが、複数が好ましく、1包装袋当たり2~100個が好ましく、10~50個がより好ましい。
【0049】
空気孔の(断面)形状は限定されない。例えば、空気孔の形状は円形又は非円形であり、非円形の空気孔の形状の例としては短いスリットが挙げられる。
【0050】
空気孔の間隔は特には限定されない。例えば、空気孔の間隔は10mm~50mmの範囲とすることができ、15mm~40mmの範囲が好ましく、20mm~30mmの範囲がより好ましい。
【0051】
空気孔の設置密度も特には限定されない。例えば、空気孔の設置密度を、空気孔が存在する面について、1~10個/25cm2の範囲とすることができ、2~8個/25cm2の範囲が好ましく、3~6個/25cm2の範囲がより好ましい。
【0052】
空気孔の分布は均一又は不均一とすることができるが、例えば、包装袋が箱状の場合は包装袋の側面に形成することが好ましい。
【0053】
複数の空気孔を直線上に並べて列として、1列又は2列以上の空気孔列を形成してもよい。空気孔列の間隔は限定されるものではないが、例えば、5mm~50mm、10mm~40mm、又は、15mm~30mmの間隔とすることができる。
【0054】
[ラミネート紙]
本発明の包装袋は薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなる。ラミネート紙を構成する薄紙の枚数は特に限定されるものではないが、ラミネート紙は1枚の薄紙からなることが好ましい。本発明で使用されるラミネート紙の基材は柔軟性を備える薄紙であるために、当該ラミネート紙は高い変形性を有している。
【0055】
本発明で使用されるラミネート紙の厚み(測定方法:JIS P 8118 [2014])は30μm~200μmが好ましく、70μm~150μmがより好ましい。
【0056】
本発明で使用されるラミネート紙の坪量は30g/m2~120g/m2が好ましく、40g/m2~100g/m2がより好ましい。
【0057】
本発明で使用されるラミネート紙の密度は0.40g/cm3~1.00g/cm3が好ましく、0.50g/cm3~0.70g/cm3がより好ましい。
【0058】
(薄紙)
本発明の包装袋を構成するラミネート紙の基材となる薄紙は10g/m2~90g/m2の坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])を有する。薄紙の坪量は15g/m2~80g/m2が好ましく、20g/m2~70g/m2がより好ましい。
【0059】
薄紙の紙厚(測定方法:JIS P 8118 [2014])は20μm~200μmが好ましく、50μm~150μmがより好ましい。
【0060】
薄紙を構成する繊維材料は特には限定されるものではなく、綿、木材パルプ、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成高分子から製造した合成繊維を挙げることができる。これら繊維は単独で用いてもよく、混合複合化してもよい。
【0061】
薄紙を構成する繊維材料としては、木材パルプが好ましい。木材パルプとしては、例えば、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未晒しパルプ)等の針葉樹パルプ、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未晒しパルプ)等の広葉樹パルプ、並びに、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプの混合物を使用することができる。
【0062】
(熱可塑性樹脂層)
本発明で使用されるラミネート紙は薄紙上に熱可塑性樹脂層を備える。熱可塑製樹脂層の数は特には限定されるものではないが、熱可塑性樹脂層は1つ又は2つであることが好ましい。薄紙上の熱可塑性樹脂層を1つ又は2つに限定することにより、当該薄紙と熱可塑性樹脂層を合わせた厚みを抑制することができ、また、当該ラミネート紙の変形性を高めることができる。
【0063】
熱可塑性樹脂層は薄紙表面の全面に存在する必要はなく、薄紙表面の少なくとも一部(例えば端部)に存在すればよいが、薄紙表面の全面に存在することが好ましい。熱可塑性樹脂層は単一層であっても複数層であっても薄紙の一方の表面上に存在することが好ましい。
【0064】
本発明で使用されるラミネート紙は熱可塑性樹脂層を備えるので、当該熱可塑性樹脂層を溶融させてヒートシールすることにより包装体を容易に製造することができる。
【0065】
そして、本発明で使用されるラミネート紙は基材として断熱性が比較的小さい薄紙を使用するために、薄紙の裏面から熱を加えて薄紙の表面に存在する熱可塑性樹脂を溶融させてヒートシールする工程を容易に実施することができる。
【0066】
本発明では薄紙及び熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙によって包装袋を構成するので、薄紙のみで包装袋を構成する場合に比べて、包装袋の強度を向上可能である。
【0067】
更に、前記ラミネート紙は後述する特定の融解温度を有する熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を備えるので、当該ラミネート紙をヒートシールして得られた包装袋は特に優れた強度を備えており、包装袋の破れを抑制することができる。したがって、本発明の包装体は被包装物の包装を良好に維持することができる。
【0068】
また、本発明では、紙基材を使用するために、包装袋を所謂「マチ」を備えるガゼット袋の形態とすることが容易である。
【0069】
本発明の包装体では熱可塑性樹脂層が包装袋の内表面を形成する。熱可塑性樹脂層は包装袋の内表面の一部を形成してもよいが、当該内表面の全面を形成することが好ましい。
【0070】
本発明で使用する衛生紙は優れた吸水性、吸油性を備えるために高い多孔性を備えており、比較的毛羽立ちやすい。そのために、通常、衛生紙に紙製の包装袋が接触すると当該包装袋に衛生紙が引っかかり易く、包装作業が困難となりやすい。しかし、本発明の包装袋はその内面が熱可塑性樹脂層から形成されており、熱可塑性樹脂層の表面は紙と比べて平滑であるために、包装袋への衛生紙の引っかかりが抑制され、衛生紙の包装作業を容易に行うことができる。
【0071】
本発明で使用されるラミネート紙は薄紙及び熱可塑性樹脂以外の層を備えることが可能であり、例えば、薄紙と熱可塑性樹脂層の間に接着層等の任意の中間層を備えることができる。また、薄紙の熱可塑性樹脂が存在する表面の反対側の表面に保護層等の任意の層を備えることができる。しかし、ラミネート紙の厚みを抑制し、ラミネート紙の変形性を高めるためには、ラミネート紙は薄紙及び熱可塑性樹脂層のみからなることが好ましい。
【0072】
本発明の包装体では薄紙が包装袋の外表面を形成することが好ましい。これにより、本発明の包装袋が紙製であることを容易に認識することができる。
【0073】
(熱可塑性樹脂)
本発明の包装袋を構成するラミネート紙のラミネート層である熱可塑性樹脂層は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。単一種類の熱可塑性樹脂を使用してもよく、複数種類の樹脂を併用してもよい。
【0074】
熱可塑性樹脂の種類は特には限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。熱可塑性樹脂層がポリオレフィンを含むことが好ましい。
【0075】
ポリオレフィンは、炭素数2~10のオレフィンの少なくとも1種からなる。2種以上のオレフィンを併用してもよい。オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、αオレフィン等が挙げられる。
【0076】
ポリオレフィンとしては、例えば、エチレンのホモポリマー又はコポリマー、プロピレンのホモポリマー又はコポリマー、ブテンのホモポリマー又はコポリマー等が挙げられる。エチレン及びプロピレンのランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
【0077】
ポリオレフィンはエチレンのホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。前記エチレンのコポリマーとしてはエチレンとプロピレン及び/又はαオレフィンとのコポリマーが好ましく、エチレンとαオレフィンとのコポリマーがより好ましい。αオレフィンとしては炭素数3~20、好ましくは3~8のものが包含され、具体的には、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、ビニルシクロヘキサン等が例示されるが、1-ヘキセンが好ましい。ポリオレフィンとしてはエチレンと1-ヘキセンの共重合体又はエチレンとプロピレンと1-ヘキセンの共重合体が特に好ましい。
【0078】
ポリオレフィンとしては、メタロセン系触媒を用いて合成されたものが好ましく、気相法で合成されたものがより好ましい。メタロセン系触媒を用いて気相法で合成されたものとしては、例えば、日本ポリエチレン社製のハーモレックスNF324A、NF375B、NF366A、NF384A、NF444A、NF464A、NC564A、NF325N、NF464N、NF444N、NH645A、NH745N、NH845N、NJ744N、プライムポリマー社のエボリューSP0510、SP1020、SP1520、SP1510、SP2020、SP2320等が挙げられる。
【0079】
本発明の包装袋を構成するラミネート紙の熱可塑性樹脂層はJIS K7121により測定される融解温度(DSC法による)が110℃以上である熱可塑性樹脂を含む。前記熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂がJIS K7121により測定される融解温度(DSC法による)が110℃以上である熱可塑性樹脂のみからなることが好ましい。JIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂が前記ポリオレフィンであることがより好ましい。前記熱可塑性樹脂のJIS K7121により測定される融解温度は115℃以上がより好ましく、120℃以上が更により好ましい。本発明では、前記熱可塑性樹脂の融解温度が比較的高いことにより、包装袋の引裂強度を向上させることができる。
【0080】
そして、本発明の包装体は、JIS K7121により測定される融解温度が110℃以上の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙製の包装袋を使用することにより、当該ラミネート紙の基材が薄紙であるにもかかわらず、包装袋の破れを抑制することができる。
【0081】
前記熱可塑性樹脂層の厚みは10μm~30μmが好ましく、15~25μmがより好ましく、20~25μmが更により好ましい。
【0082】
前記熱可塑性樹脂層は、任意の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、各種の有機フィラー又は無機フィラー、粘着付与剤、酸化防止剤、防曇剤、各種の有機顔料又は無機顔料、難燃剤、架橋剤、紫外線防止剤、滑剤等を挙げることができる。
【0083】
(ラミネート紙の製造方法)
本発明で使用されるラミネート紙の製造方法は特には限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂の押出ラミネートによる薄紙と熱可塑性樹脂層との一体化、熱可塑性樹脂製のフィルムと薄紙との接着剤による一体化等の方法により製造することができる。押出ラミネートにより薄紙と熱可塑性樹脂層とを一体化する方法が好ましい。すなわち、前記熱可塑性樹脂が押出コーティング層であることが好ましい。
【0084】
ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引張強度(JIS P8113)はMD方向について1.1~1.7kN/mが好ましく、1.2~1.6kN/mがより好ましく、1.3~1.5kN/mが更により好ましい。また、ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引張強度はCD方向について0.5~1.0kN/mが好ましく、0.6~0.9kN/mがより好ましく、0.7~0.8kN/mが更により好ましい。
【0085】
ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度(JIS P8116)は500kN/m以上であることが好ましく、MD及びCD方向のいずれの引裂強度も500kN/m以上であることがより好ましい。ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度が500kN/m以上の場合は、当該ラミネート紙からなる包装紙は特に破れにくく、本発明の包装体は包装安定性に特に優れる。ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度はMD方向について530kN/m以上がより好ましく、550kN/m以上が更により好ましい。ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での引裂強度はCD方向について560kN/m以上がより好ましく、580kN/m以上が更により好ましい。
【0086】
ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での伸び(JIS P8113)はMD方向について8.0~13.0%が好ましく、9.0~12.0%がより好ましく、10.0~11.0%が更により好ましい。また、ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での伸びはCD方向について3.0~8.0%が好ましく、4.0~7.0%がより好ましく、5.0~6.0%が更により好ましい。
【0087】
ラミネート紙の23℃及び相対湿度50%での破裂強度(JIS P8112)は70~120kPaが好ましく、80~110kPaがより好ましく、90~100kPaが更により好ましい。
【0088】
[包装体の製造方法]
本発明の包装体の製造方法は特には限定されるものではなく、例えば、平面状のラミネート紙を変形して収容部を備える袋状とし、当該収容部に衛生紙を収容後に、収容部の開口部を接着剤等で封止して包装体を製造することができる。また、本発明の包装体を構成するラミネート紙は熱可塑性樹脂層を備えるので、収容部の開口部をヒートシールすることによって袋を密封して包装体を製造することもできる。
【0089】
ヒートシールの温度は熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の種類によるが、110℃~350℃が好ましく、150℃~300℃がより好ましく、200℃~250℃が更により好ましい。
【0090】
ヒートシールの時間も熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の種類によるが、5秒以下が好ましく、3秒以下がより好ましく、1秒以下が更により好ましい。
【0091】
[包装体例]
図1は本発明の包装体の一実施態様を示す図であり、
図1(A)及び
図1(B)は、それぞれ、本発明の包装体の一実施態様の表側及び裏側を示している。
図1(C)は
図1(A)のA-A線での断面図である。
【0092】
図1において、1は包装体を表し、2は包装体の包装袋であり、3は包装袋2内の収容部に収容されている衛生紙である。
図1に示す態様では、包装袋2は10g/m
2~90g/m
2の坪量を有する薄紙及び単一の熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙からなり、当該塑性樹脂層はJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂層からなる。
図1に示す態様では、包装袋2はラミネート紙の一部(端部)をヒートシールすることによって形成されており、衛生紙3を包装している。
【0093】
包装袋2には複数の空気孔4が形成されており、包装袋2内の空気を外界に排出可能とされている。包装袋2内の空気を空気孔4を介して外界に排出することにより、包装袋2の体積を低減して、例えば、包装袋2の梱包運搬を容易とすることができる。
【0094】
図1に示す態様では、包装袋2の表面の一部に衛生紙3を取り出すための取出口を形成可能なミシン目2-1が形成されており、衛生紙3を取り出す際にはミシン目2-1を破って取出口を形成し、当該取出口から衛生紙3を外部に取り出すことができる。
【0095】
図1に示す態様では衛生紙3は所謂ポップアップ式に重ねて包装袋2内に収容されている。したがって、取出口から1枚の衛生紙3を取り出すと、次の衛生紙3の一部が取出口から突出することができ、衛生紙3の取り出しを容易に実施することができる。
【0096】
図2は、
図1の包装袋2を形成するラミネート紙5の拡大断面図である。
図2に示すように、ラミネート紙5は、薄紙5-1及び薄紙5-1の一方の表面に存在する単一の熱可塑性樹脂層5-2を備えており、熱可塑性樹脂層5-2は薄紙5-1の表面に押出ラミネートを施されることによって形成される押出コーティング層である。
【0097】
図2に示すラミネート紙5は薄紙5-1及び熱可塑性樹脂層5-2のみからなり、熱可塑性樹脂層5-2が内表面を形成し、
図1に示す衛生紙3側に向いており、薄紙5-1が外表面を形成している。熱可塑性樹脂層5-2はJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂からなる。
【0098】
図1の包装体1は薄紙5-1及びJIS K7121により測定される融解温度が110℃以上である熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂層5-2からなるラミネート紙5製の包装袋2を使用しているので、薄紙5-1のみから包装袋2を使用する場合に比べて、包装袋2の強度が向上し、また、包装袋2の破れを抑制することができる。
【0099】
また、
図1に示す包装体1では、
図2に示す熱可塑性樹脂層5-2が衛生紙3側に向いているので、包装時に、衛生紙3は熱可塑性樹脂層5-2の平滑な表面と接触し、薄紙5-1とは接触しない。これにより、衛生紙3の包装袋2への引っかかりを抑制することができる。したがって、包装体1は、衛生紙3の包装を良好に維持することができ、また、包装が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明では薄紙及び特定の性質を備える熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層からなるラミネート紙を使用するので、薄紙のみを使用する場合に比べて、ラミネート紙製の包装袋の強度が向上し、当該ラミネート紙製の包装袋の破れを抑制することができる。
【0101】
したがって、本発明の包装体は、薄紙からなる包装袋を使用するにもかかわらず、包装袋の破れが抑制され、且つ、包装袋への衛生紙の引っかかりが抑制される。本発明は包装袋に引っかかりやすい衛生紙の包装に好適である。
【実施例0102】
[実施例1]
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)及びLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を40:60の重量比で混合した木材パルプ(フリーネス410cc)を含むスラリーに乾燥紙力剤(星光PMC社製DS4424及び湿潤紙力剤(星光PMC社製WS4052)をそれぞれ木材パルプに対して0.2重量%となる濃度で添加し、丸網ヤンキー抄紙機にて、厚み100μm及び坪量35g/m2の薄紙を製造した。
押出ラミネーターにて熱可塑性樹脂(JIS K7121により測定される融解温度120℃:日本ポリエチレン社製ハーモレックスNH845N)を押出し、上記薄紙上に樹脂厚みが20μmになるようにラミネートして上記薄紙上に熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙を製造した。
上記ラミネート紙のMD方向の引裂強度(23℃及び相対湿度50%)は503kN/mであった。
横型ピロー包装機にて上記ラミネート紙の熱可塑性樹脂層を内側に向けた状態で袋状にして、衛生紙を内部に収容し、200℃及び1秒のヒートシールによって開口部を密封して包装体を製造した。
上記包装体の側面に長さ3mmのスリット状の空気孔を25mmの間隔で2列設置した。
【0103】
[比較例1]
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)及びLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を40:60の重量比で混合した木材パルプ(フリーネス410cc)を含むスラリーに乾燥紙力剤(星光PMC社製DS4424)及び湿潤紙力剤(星光PMC社製WS4052)をそれぞれ木材パルプに対して0.2重量%となる濃度で添加し、丸網ヤンキー抄紙機にて、厚み100μm及び坪量35g/m2の薄紙を製造した。
押出ラミネーターにて熱可塑性樹脂(JIS K7121により測定される融解温度102℃:日本ポリエチレン社製カーネルKC577T)を押出し、上記薄紙上に樹脂厚みが20μmになるようにラミネートして上記薄紙上に熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙を製造した。
上記ラミネート紙のMD方向の引裂強度(23℃及び相対湿度50%)は398kN/mであった。
横型ピロー包装機にて上記ラミネート紙の熱可塑性樹脂層を内側に向けた状態で袋状にして、衛生紙を内部に収容し、200℃及び1秒のヒートシールによって開口部を密封して包装体を製造した。
上記包装体の側面に長さ3mmのスリット状の空気孔を25mmの間隔で2列設置した。
【0104】
比較例1で使用されるラミネート紙に比べて実施例1で使用されるラミネート紙の方が引裂強度が高く、比較例1の包装体に比べて実施例1の包装体の方が破れにくいものであった。