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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102419
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】水中油滴型乳化物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220630BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/00
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217133
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】木原 俊和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
(72)【発明者】
【氏名】三栖 大介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC352
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD242
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD572
4C083BB04
4C083BB07
4C083BB11
4C083CC01
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】 油性原料を多く配合していても安定性が高い水中油滴型乳化物を提供する。
【解決手段】 (a)糖鎖を含む水溶性高分子、(b)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤、(c)油性原料および(d)水を含有する水中油滴型乳化物。本発明によれば、油性原料を多く配合していても乳化安定性が高い水中油滴型乳化物を得ることができる。また、本発明によれば、塩を配合しても粘度低下が少なく、粘度安定性が高い水中油滴型乳化物を得ることができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)を含有する、水中油滴型乳化物;
(a)糖鎖を含む水溶性高分子、
(b)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤、
(c)油性原料、
(d)水。
【請求項2】
前記(c)油性原料を、前記水中油滴型乳化物100質量%に対して27.5質量%超80質量%未満含有する、請求項1に記載の水中油滴型乳化物。
【請求項3】
前記(b)界面活性剤を、質量比で、前記(c)油性原料1に対して0.0016超0.04以下含有する、請求項1または請求項2に記載の水中油滴型乳化物。
【請求項4】
前記(a)水溶性高分子を、前記水中油滴型乳化物100質量%に対して0.4質量%超4質量%未満含有する、請求項1~3のいずれかに記載の水中油滴型乳化物。
【請求項5】
単一円筒形回転粘度計で、M3ローターを用いて、回転数12rpm、測定時間1分間で測定した25℃における粘度が6000mPa・s以上である、請求項1~4のいずれかに記載の水中油滴型乳化物。
【請求項6】
化粧品に用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の水中油滴型乳化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性原料を多く配合していても安定性が高い水中油滴型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化物は、化粧品、医薬品、食品等の分野において、クリーム類などに用いられている。乳化物の中でも水中油滴型のものは、肌に塗布した際の感触の良さなどから化粧品として多用されている。
【0003】
化粧品として用いられる水中油滴型の乳化物においては、油性原料の配合量を多くすることにより、エモリエント効果や肌の乾燥防止効果の向上が期待できる。また、係る水中油滴型乳化物を日焼け止めに応用した場合には、紫外線吸収剤の析出や、紫外線吸収剤に由来するべたつきを抑えることができ、紫外線吸収剤を多く配合できる、あるいは紫外線散乱剤の軋みを抑えることができ、紫外線散乱剤を多く配合できることから、高い紫外線防止効果を実現できるといった利点もある。
【0004】
しかしながら、一般に、水中油滴型乳化物に油性原料を多量に配合すると、乳化安定性を得るために界面活性剤の配合量が多くなり、界面活性剤に起因するべたつきが生じて使用感を損ねるという課題がある。また一方で、係る場合に界面活性剤の配合量を抑えれば、水層と油層とに分離しやすくなるという課題がある。そこで、油性原料を多く含み、かつ乳化安定性が高い水中油滴型乳化物が研究開発されており、例えば、特許文献1には、水および油性原料に加えて、リン脂質、グリセリン、1,3-ブチレングリコールおよび25℃で固体の高級アルコールを含む水中油滴型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5833810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の水中油滴型乳化化粧料は、グリセリンおよび1,3-ブチレングリコールを所定の割合で含む必要があることや、固体の高級アルコールを配合する必要があることから、応用できる製品の範囲が限定されるといった課題がある。また、高級アルコールはブレーキ感などの好ましくない使用感をもたらし得るため、使用感について満足できるものではない。すなわち、係る特許文献を鑑みても、未だ、油性原料を多く配合していても安定性が高く、使用感が良く、広範囲の製品に応用可能な水中油滴型乳化物は十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、油性原料を多く配合していても安定性が高く、使用感が良く、広範囲の製品に応用可能な水中油滴型乳化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、糖鎖を含む水溶性高分子と、非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤とを配合することにより、油性原料を多く含有していても安定性が高い水中油滴型乳化物を製造できることを見出した。そこで、係る知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る水中油滴型乳化物は、下記(a)~(d)を含有する;
(a)糖鎖を含む水溶性高分子、
(b)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤、
(c)油性原料、
(d)水。
【0009】
(2)本発明に係る水中油滴型乳化物は、(c)油性原料を、水中油滴型乳化物100質量%に対して27.5質量%超80質量%未満の割合で含有するものであってもよい。
【0010】
(3)本発明に係る水中油滴型乳化物は、(b)界面活性剤を、質量比で、(c)油性原料1に対して0.0016超0.04以下の割合で含有するものであってもよい。
【0011】
(4)本発明に係る水中油滴型乳化物は、(a)水溶性高分子を、水中油滴型乳化物100質量%に対して0.4質量%超4質量%未満の割合で含有するものであってもよい。
【0012】
(5)本発明に係る水中油滴型乳化物は、単一円筒形回転粘度計で、M3ローターを用いて、回転数12rpm、測定時間1分間で測定した25℃における粘度が6000mPa・s以上であってもよい。
【0013】
(6)本発明に係る水中油滴型乳化物は、化粧品に用いられるものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油性原料を多く配合していても乳化安定性が高い水中油滴型乳化物を得ることができる。本発明によれば、塩を配合しても粘度低下が少なく、粘度安定性が高い水中油滴型乳化物を得ることができる。本発明の水中油滴型乳化物では、油性原料を多く配合していても界面活性剤の配合量が少量で足りることから、界面活性剤に由来するべたつきや、塗布した乳化物における耐水性の低下、あるいは界面活性剤に起因する皮膚刺激や安全性への懸念を低減することができる。本発明の水中油滴型乳化物を、所定の割合で水溶性高分子を含むものとすれば、油性原料を多く配合していてもべたつきが少なく、伸び、肌への付け心地、ないし使用感に優れた水中油滴型乳化物を得ることができる。
【0015】
本発明に係る水中油滴型乳化物を皮膚用化粧品や仕上げ用化粧品に応用した場合は、油性原料を多く配合できることから、エモリエント効果や肌の乾燥防止効果が向上した製品を製造することができる。本発明に係る水中油滴型乳化物を頭髪用化粧品に応用した場合は、油性原料を多く配合できることから、使用後の毛髪にしっとりした感触やまとまり感、良好な指通りを与える製品を製造することができる。
【0016】
本発明に係る水中油滴型乳化物を日やけ止め化粧品に応用した場合は、油性原料を多く配合できることから、紫外線吸収剤を多く配合しても紫外線吸収剤の析出を防ぎ、乳化安定性の高い製品を製造することができる。同様に、油性原料を多く配合できることから、紫外線散乱剤を多く配合しても紫外線散乱剤に由来するきしみ感を軽減でき、みずみずしい良好な付け心地や使用感を有する製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例で用いた原料を示す表である。
図2】各種の水溶性高分子を用いて製造した水中油滴型乳化物における、組成と乳化安定性の評価結果とを示す表である。
図3】水溶性高分子の配合量を変化させて製造した水中油滴型乳化物における、組成と乳化安定性の評価結果とを示す表である。
図4】(I)は、官能試験の評価項目および採点基準を示す表である。(II)は、5名(甲~戊)のパネルにおける採点結果およびその平均値(評価点)を示す表である。
図5】水溶性高分子の配合量を変化させて製造した水中油滴型乳化物における、組成と官能試験の評価結果とを示す表である。
図6】界面活性剤の配合量を変化させて製造した水中油滴型乳化物における、組成と乳化安定性の評価結果とを示す表である。
図7】各種の油性原料を用いて製造した水中油滴型乳化物における、組成と乳化安定性の評価結果とを示す表である。
図8】油性原料の配合量を変化させて製造した水中油滴型乳化物における、組成と乳化安定性の評価結果とを示す表である。
図9】水溶性高分子および油性原料の配合量を変化させて製造した水中油滴型乳化物における、組成と粘度および乳化安定性の評価結果とを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
水中油滴(O/W)型の乳化物とは、油と水または水溶液とが混ざり、油が水または水溶液中に細かい滴粒となって分散しているものをいう。乳化物が水中油滴型か油中水滴型かは、例えば、当該乳化物に粉末色素をふりかけて拡がり方を観察することにより確認することができる。具体的には、粉末状の水溶性色素(例えばメチレンブルー)または油溶性色素(例えばスダンIII)を乳化物にふりかける。前者をふりかけた場合に色素が拡がり、後者をふりかけた場合に色素が拡がらないものは、水中油滴型乳化物であると判断することができる。
【0020】
本発明において「乳化安定性」とは、乳化物を一定期間保存した場合の状態変化(主として油層と水層との分離)の程度をいう。すなわち、「乳化安定性がある」、「乳化安定性が高い」もしくは「乳化安定性が良い」とは、一定期間経過後の状態変化が無いもしくは少ないこと、または、状態変化を生じるまでの期間が長いことをいう。反対に、「乳化安定性が無い」、「乳化安定性が低い」もしくは「乳化安定性が悪い」とは、一定期間経過後の状態変化が大きいこと、または、状態変化を生じるまでの保存期間が短いことをいう。乳化安定性は、例えば、乳化物を密閉容器に入れ、常温~50℃程度の比較的高温下にて一定期間保存した後、その状態を目視や顕微鏡にて観察することにより評価することができる。
【0021】
本発明において、「粘度安定性」とは、乳化物に塩(えん)を添加した場合の粘度変化の程度をいう。すなわち、「粘度安定性がある」、「粘度安定性が高い」もしくは「粘度安定性が良い」とは、塩を添加した乳化物と添加していない乳化物とで粘度を比較した場合に、両者の粘度の値に差異が無いもしくは少ないことをいう。反対に、「粘度安定性が無い」、「粘度安定性が低い」もしくは「粘度安定性が悪い」とは、上記両者の粘度の値の差異が大きいことをいう。
【0022】
本発明に係る水中油滴型乳化物は、(a)糖鎖を含む水溶性高分子、(b)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤、(c)油性原料、ならびに(d)水を含有する。
【0023】
「糖鎖を含む水溶性高分子」は、分子量が大きく、水に溶ける性質をもつ分子であって、糖鎖を含むもの、あるいは糖鎖のみからなるものをいう。糖鎖を含む水溶性高分子には、非イオン性のもの、陰イオン性のもの、陽イオン性のものがあるが、本発明においてはこれのいずれも用いることができる。糖鎖を含む水溶性高分子は、化粧品や医薬部外品、医薬品、食品などに使用可能なものを例示することができ、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、グアーガム、タマリンドシードガム、ポリクオタニウム-10、キサンタンガム、寒天、クインスシードガム、ローカストビーンガム、スクレロチウムガム、カラギーナン、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ジェランガムなどを例示することができる。
【0024】
糖鎖を含む水溶性高分子は、1種類を単独で水中油滴型乳化物に配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。その配合量は、水溶性高分子の種類や乳化物の用途、上記(b)、(c)、(d)等の他原料の種類や配合量などに応じて適宜設定することができるが、例えば、乳化物全体を100とすると、下限は、乳化安定性の観点から0.4質量%超が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上または1.0質量%以上がさらに好ましい。また、上限は、優れた伸び、肌への付け心地、ないし使用感を得る観点から4.0質量%未満が好ましく、3.9質量%以下、3.8質量%以下、3.7質量%以下、3.6質量%以下、3.5質量%以下、3.4質量%以下、3.3質量%以下、3.2質量%以下、3.1質量%以下または3.0質量%以下がより好ましく、2.9質量%以下、2.8質量%以下、2.7質量%以下、2.6質量%以下、2.5質量%以下、2.4質量%以下、2.3質量%以下、2.2質量%以下、2.1質量%以下または2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
「非イオン性界面活性剤」は、本発明では、化粧品や医薬部外品、医薬品、食品などに使用可能なものを用いることができる。非イオン界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-10など)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸PEG-15グリセリルなど)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート80など)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-60水添ヒマシ油など)、ポリオキシエチレンヒマシ油(PEG-30ヒマシ油など)、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス30など)、グリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸グリセリルなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(ステアリン酸ソルビタンなど)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ステアリン酸ポリグリセリル-10など)、ショ糖脂肪酸エステル(ジステアリン酸スクロースなど)、アルキルポリグルコシド(ラウリルグルコシドなど)、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル(コレス-10など)、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル(PEG-20フィトステロールなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ステアレス-2、ステアレス-4、ステアレス-20、ステアレス-21など)、ポリエーテル変性シリコーン(PEG-10ジメチコンなど)等を例示することができる。
【0026】
「両性界面活性剤」は、本発明では、化粧品や医薬部外品、医薬品、食品などに使用可能なものを用いることができる。両性界面活性剤として、例えば、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リン脂質、卵黄水添レシチン、大豆水添レシチン、水酸化レシチン、リゾレシチンなど)、硫酸エステル塩型やスルホン酸塩型、リン酸エステル塩型、イミダゾリン型、ベタイン型、アミドアミンオキシド型の両性界面活性剤などを例示することができる。これらのうち、レシチンは、特に皮膚に対する刺激が小さく、安全性が高い。よって、本発明の乳化物をスキンケア化粧品等の皮膚や生体を適用対象とする製品に用いる場合、両性界面活性剤としてはレシチンを用いることが好ましい。
【0027】
非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤は、1種類を単独で乳化物に配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。これら界面活性剤の配合量は、界面活性剤の種類や乳化物の用途、上記(a)、(c)、(d)等の他原料の種類や配合量などに応じて適宜設定することができるが、後述する実施例で示すように、本発明では、多量の油性原料を含有するにもかかわらず、比較的少量の界面活性剤にて乳化安定性の高い乳化物を得ることができる。
【0028】
界面活性剤の具体的な配合量としては、乳化安定性の観点から、下限は、質量比で油性原料1に対して0.0016超が好ましく、0.0017以上、0.0018以上、0.0019以上または0.002以上がより好ましい。また、上限は、界面活性剤に由来するべたつき等が生じて触感や使用感が悪くなることを避ける観点や肌刺激を低減する観点、界面活性剤に由来する安全性への懸念を低減する観点から、質量比で油性原料1に対して0.08以下が好ましく、0.078以下、0.076以下、0.074以下、0.072以下、0.07以下、0.068以下、0.066以下、0.064以下、0.062以下又は0.06以下がより好ましく、0.058以下、0.056以下、0.054以下、0.052以下、0.05以下、0.048以下、0.046以下、0.044以下、0.042以下または0.04以下がさらに好ましい。
【0029】
「油性原料」とは、油に溶けて水に溶けない性質をもつ物質をいう。本発明では、化粧品や医薬部外品、医薬品、食品などに使用可能な油性原料を用いることができる。例えば、油性原料は、その化学構造に基づいて、油脂、高級脂肪酸、ロウ類、炭化水素、エステル類、高級アルコールおよびシリコーン油などに分けられる場合があるが、これらのうちのいずれも用いることができる。また、常温で液体状、固体状、半固体状(ペースト状など)のいずれの油性原料も用いることができる。また、紫外線吸収剤の機能を発揮する油性原料も用いることができる。
【0030】
例えば、油脂としては、馬油、ヤシ油、シア脂、シア脂油、コメ胚芽油、オリーブ果実油、ツバキ油、グレープシードオイル、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アプリコット油、トリエチルヘキサノイン等を例示することができ、高級脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、ベヘン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等を例示することができ、ロウ類としては、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等を例示することができ、炭化水素としては、水添ポリイソブテン、イソドデカン、テトラデセン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルオイル(流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等を例示することができ、エステル類としては、イソステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等を例示することができ、高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等を例示することができ、シリコーン油としては、ジメチコン等のストレートシリコーン油、アモジメチコン等のアミノ変性シリコーン油、ステアリルジメチコン等のアルキル変性シリコーン油、PEG-12ジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン油、メチルフェニルポリシロキサン等のフェニル変性シリコーン、シクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン等を例示することができる。また、紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコン-15、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等を例示することができる。
【0031】
油性原料は1種類を単独で乳化物に配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。油性成分の配合量は、乳化物の用途などに応じて適宜設定することができるが、乳化安定性の観点からは、乳化物全体を100とすると、下限は、27.5質量%超が好ましく、28質量%以上、28.5質量%以上、29質量%以上、29.5質量%以上または30質量%以上がより好ましく、31質量%以上、32質量%以上、33質量%以上、34質量%以上、35質量%以上、36質量%以上、37質量%以上、38質量%以上、39質量%以上または40質量%以上がさらに好ましい。また、上限は、80質量%未満が好ましく、79.5質量%以下または79質量%以下がより好ましく、77.5質量%以下、77質量%以下、76.5質量%以下、76質量%以下、75.5質量%以下または75質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明に係る水中油滴型乳化物の粘度は、下記条件にて測定した粘度が、6000mPa・s以上であることが好ましい。係る粘度であれば、後述する実施例で示すように、高い乳化安定性を得ることができる。なお、乳化物の粘度は、「第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日厚生労働省告示第64号)2.53粘度測定法 第2法 回転粘度計法」により測定することができる。
《粘度の測定条件》装置:市販の単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)、温度:25℃、測定時間:1分間、ローター:M3、回転数:12rpm。
【0033】
水中油滴型乳化物の粘度は、水溶性高分子および/または油性原料の配合量で調整することができる。すなわち、糖鎖を含む水溶性高分子の好適な配合量の第二の態様として、上記条件にて測定した水中油滴型乳化物の粘度が6000mPa・s以上となる配合量を例示することができる。同様に、油性原料の好適な配合量の第二の態様として、上記条件にて測定した水中油滴型乳化物の粘度が6000mPa・s以上となる配合量を例示することができる。
【0034】
本発明の乳化物は、上記(a)~(d)を常法に従って混合することにより製造することができる。より具体的には、後述する実施例で示すように、まず、(a)糖鎖を含む水溶性高分子を分散媒(水や1,3-ブチレングリコールなど)に分散させて分散物Aを得る。次に、原料の種類や形態により、必要に応じて加温しながら(c)油性原料に(b)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤を溶解する。続いて、これを(d)水に入れて、必要に応じて加温しながら分散させて分散物Bを得る。次に、分散物Bを必要に応じて加温・攪拌しながら分散物Aを添加して混合する製造手順を例示することができる。
【0035】
本発明の水中油滴型乳化物の形態は特に限定されないが、例えば、液状、クリーム状、ジェル状とすることができる。
【0036】
本発明の水中油滴型乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(a)~(d)以外の成分を配合することができる。係る他の成分としては、例えば、溶媒ないし分散媒、エタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール等の糖類、カチオン界面活性剤、pH調整剤、着色剤、動植物エキス、ビタミン及びその誘導体、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、無機又は有機塩類、可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤等を例示することができ、これら他の成分は、必要に応じて乳化物調製時または乳化物調製後に配合できる。
【0037】
本発明に係る水中油滴型乳化物は、化粧品、食品、医薬品、医薬部外品などに用いることができる。化粧品としては、油性原料を多く含むもの、例えば、化粧液(保湿液、美容液等)、クリーム、乳液、日やけ料、日やけ止め料、クレンジング、パック(洗い流すもの)、マッサージ料、ボディリンス、リキッドファンデーション、整髪料(ヘアクリーム等)、養毛料(ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアコンディショナー等)、頭皮料(頭皮用トリートメント等)、毛髪着色料(カラーリンス、ヘアマニュキュア等)、ヘアリンスなどを例示することができる。これらの化粧品に用いる場合は、本発明の水中油滴型乳化物における上記(a)、(b)および(c)を当該製品用途に適したものに設定してこれを基剤とし、製品用途に応じて、香料や品質保持原料(防腐剤、酸化防止剤等)、化粧品用薬剤(紫外線吸収剤、ビタミン剤、植物抽出物類、美白剤等)、イオン性界面活性剤などを添加して、当該化粧品を製造することができる。
【0038】
以下、本発明について各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。また、本実施例において、「%」は、特段の記載のない限り質量%((w/w)%)を表す。
【実施例0039】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)使用原料
図1に示す原料(全て市販品)を用いて水中油滴型乳化物を製造した。
【0040】
(2)水中油滴型乳化物の製造
以下1~6の手順で水中油滴型乳化物を製造した。
1.水溶性高分子を分散媒(精製水の一部、乳化物全体の約4%)に入れて分散させ、分散物Aを得た。
2.残りの精製水に、フェノキシエタノールを0.35%、ペンチレングリコールを1%(いずれも乳化物における最終濃度)となるように添加した。
3.約65℃~約80℃に加温しながら、油性原料に界面活性剤を入れて溶解した。
4.約65℃~約80℃に加温しながら、3の油性原料を2の精製水に入れて攪拌し、分散させて分散物Bを得た。
5.分散物Bを攪拌しながら、分散物Aを添加した。添加終了後に10分間攪拌した。
6.放冷して室温まで温度を下げ、製造完了とした。
【0041】
(3)乳化安定性の評価
乳化物を透明の密閉容器に入れ、40℃または50℃の環境下に1週間~1ヶ月置いた。または、-10℃~40℃の温度変化を24時間サイクルで繰り返す環境(温度変化サイクル)下に1ヶ月置いた。1週間後および1ヶ月後に外観を目視で観察し、下記の基準により評価した。
○:1層のままである(状態変化が無いか、極めて少ない)。
△:2層に分離する傾向が見られる。
×:2層に分離している。
-:未評価。
【0042】
<実施例1>水溶性高分子の種類の検討
(1)乳化安定性の評価
各種の水溶性高分子を用いてNo.1~8の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。水溶性高分子は、糖鎖を含むノニオン水溶性高分子に属するものとしてヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、グアーガム(ガラクトマンナン)およびタマリンドシードガム、糖鎖を含むカチオン水溶性高分子に属するものとしてポリクオタニウム-10(塩化O-(2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル)ヒドロキシエチルセルロース)、糖鎖を含むアニオン水溶性高分子に属するものとしてキサンタンガムおよび寒天、タンパク質ないしペプチドに属するものとして加水分解コラーゲンを用いた。グアーガム、タマリンドシードガム、ポリクオタニウム-10、キサンタンガムおよび寒天については、分散媒として、乳化物全体の約4%に相当する質量の精製水および/または1,3-ブチレングリコールを用いた。No.1~8の組成および評価結果を図2に示す。なお、ステアレス-2およびステアレス-21は、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が約10となる配合割合で併用した。
【0043】
図2に示すように、No.8(加水分解コラーゲン)は、40℃で1週間保存した場合に分離してしまったのに対して、No.1~No.7(糖鎖を含む、ノニオン性、カチオン性またはアニオン性の水溶性高分子)はいずれも、40℃で1週間以上および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。また、No.1およびNo.3~6は50℃で1ヶ月以上安定であった。この結果から、糖鎖を含む水溶性高分子を用いることにより、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。また、水溶性高分子は、糖鎖を含むものであれば、ノニオン性、カチオン性またはアニオン性のいずれであっても、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。
【0044】
(2)粘度安定性の評価
水溶性高分子として、ヒドロキシエチルセルロース(糖鎖を含むノニオン水溶性高分子)またはカルボマー(糖鎖を含まないアニオン水溶性高分子)を用いてNo.1~2の水中油滴型乳化物を製造した。続いて、最終濃度が0.5%または1%となるよう塩化ナトリウム(NaCl)を添加して混合した後、粘度を測定した。粘度の測定条件は、測定装置:VISCOMETER TVB-10M(東機産業)、25℃、測定時間:1分間、ローター:M3(No.1測定時)またはM4(No.2測定時)、回転数:3rpmとした。NaClを添加しない試料(NaCl濃度0%)の粘度を100%として、NaCl濃度が0.5%および1%の試料の粘度を百分率に換算し、これを粘度変化率とした。No.1~2の組成(ステアレス-2およびステアレス-21はHLBが約10となる配合割合で併用)、粘度の測定結果(単位はミリパスカル秒(mPa・s)(センチポアズ;cps))および粘度変化率(カッコ内)を表1に示す。
【表1】
【0045】
表1に示すように、No.2(カルボマー)の粘度変化率は、NaCl濃度が0.5%の時には32%、同1.0%の時には23%であり、NaCl濃度の上昇に伴って粘度が顕著に低下した。これに対して、No.1(ヒドロキシエチルセルロース)の粘度変化率は、NaCl濃度が0.5%の時には96%、同1.0%の時には103%であり、NaCl濃度にかかわらずほぼ一定であった。この結果から、糖鎖を含む水溶性高分子を用いることにより、塩を添加しても粘度変化が少なく、粘度安定性が高い水中油滴型乳化物が得られることが明らかになった。
【0046】
<実施例2>水溶性高分子の配合量および粘度の検討
(1)乳化安定性の評価
水溶性高分子(ヒドロキシエチルセルロース)の配合量を0.1%~1.0%に変化させてNo.1~6の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。No.1~6の組成(ステアレス-2およびステアレス-21はHLBが約10となる配合割合で併用)および評価結果を図3に示す。
【0047】
図3に示すように、No.5(ヒドロキシエチルセルロース0.5%)~No.6(同1.0%)において50℃で1週間以上および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であり、No.6(同1%)において50℃で1ヶ月以上安定であった。この結果から、水溶性高分子の配合量は、高い乳化安定性を得る観点から、0.4%超が好ましく、0.5%以上がより好ましく、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上または1.0%以上がさらに好ましいことが明らかになった。
【0048】
(2)官能評価
水溶性高分子(ヒドロキシエチルセルロース)の配合量を0.5%~6.0%に変化させてNo.1~7の水中油滴型乳化物を製造し、官能試験を行った。具体的には、乳化物を肌に塗布してなじませる時の「伸ばしやすさ」、「肌なじみ」および「使用感(使い心地の良さ)」について、5名(甲~戊)のパネルにより1~5点の5段階評価(絶対評価)で採点した。採点結果について、各試料ごとに全パネルによる採点の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入し、評価点とした。続いて、3つの評価項目の評価点について各試料ごとに平均値を求め、下記基準に基づき総合評価を行った。採点基準および各パネルによる採点結果を図4に、No.1~7の組成(ステアレス-2およびステアレス-21はHLBが約10となる配合割合で併用)、評価点および総合評価を図5に、それぞれ示す。
《総合評価の基準》
◎:3項目の評価点の平均値が3.0以上
○:3項目の評価点の平均値が2.5以上3.0未満
△:3項目の評価点の平均値が2.0以上2.5未満
×:3項目の評価点の平均値が2.0未満
【0049】
図4および図5に示すように、総合評価は、No.1(ヒドロキシエチルセルロース0.5%)~No.3(同2.0%)において◎であり、No.4(同3.0%)において○であった。この結果から、水溶性高分子の配合量は、優れた伸び、肌への付け心地、ないし使用感を得る観点から、4.0%未満が好ましく、3.9%以下、3.8%以下、3.7%以下、3.6%以下、3.5%以下、3.4%以下、3.3%以下、3.2%以下、3.1%以下または3.0%以下がより好ましく、2.9%以下、2.8%以下、2.7%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下または2.0%以下がさらに好ましいことが明らかになった。
【0050】
<実施例3>界面活性剤の種類の検討
(1)ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との比較
界面活性剤として、ステアレス-2およびステアレス-21(ノニオン性界面活性剤)(HLBが約10となる配合割合で併用)またはラウロイルアスパラギン酸Na(アニオン性界面活性剤)を用いてNo.1~2の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。No.1~2の組成および評価結果を表2に示す。
【表2】
【0051】
表2に示すように、No.2(ラウロイルアスパラギン酸Na)は、40℃および50℃で1週間保存した際に分離傾向を示したのに対して、No.1(ステアレス-2およびステアレス-21)は50℃および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。この結果から、ノニオン性界面活性剤を用いることにより、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。
【0052】
(2)ノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との比較
界面活性剤として、ステアレス-2およびステアレス-21(ノニオン性界面活性剤)(HLBが約10となる配合割合で併用)または水添レシチン(両性界面活性剤)を用いてNo.1~2の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。No.1~2の組成および評価結果を表3に示す。
【表3】
【0053】
表3に示すように、No.1(ステアレス-2およびステアレス-21)およびNo.2(水添レシチン)のいずれも、50℃で1週間以上および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。この結果から、ノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を用いることにより、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。
【0054】
(3)HLBの検討
界面活性剤として、ステアレス-2およびステアレス-21を用いてNo.1~2の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。ただし、両者の質量比は、No.1においてはステアレス-2:ステアレス-21=1.04:0.96(HLBが約10となる配合割合)、No.2においては同=0.09:1.91(HLBが約15となる配合割合)とした。なお、油性原料として用いたミネラルオイルの水中油滴型エマルションにおける所要HLBは、約10である。No.1~2の組成および評価結果を表4に示す。
【表4】
【0055】
表4に示すように、No.1(HLB約10)およびNo.2(HLB約15)のいずれも、50℃および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。すなわち、油性原料の所要HLBと一致しない界面活性剤を用いた場合(No.2)であっても、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。この結果から、本発明では、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤はその種類を問わず、水中油滴型乳化物に高い乳化安定性を付与できることが明らかになった。
【0056】
<実施例4>界面活性剤の配合量の検討
界面活性剤(ステアレス-2およびステアレス-21)(HLBが約10となる配合割合で併用)の配合量を、質量比で、油性原料1に対して0.0002~0.01に変化させてNo.1~6の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。No.1~6の組成および評価結果を図6に示す。
【0057】
図6に示すように、No.5(油性原料:界面活性剤=1:0.002)~No.6(油性原料:界面活性剤=1:0.01)において50℃および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。この結果から、界面活性剤の配合量は、高い乳化安定性を得る観点から、質量比で、油性原料1に対して、0.0016超が好ましく、0.0017以上、0.0018以上、0.0019以上または0.002以上がより好ましいことが明らかになった。
【0058】
<実施例5>油性原料の種類の検討
各種の油性原料を用いてNo.1~7の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。油性原料は、炭化水素に属するものとしてミネラルオイル(流動パラフィン)およびワセリン、エステルに属するものとしてパルミチン酸エチルヘキシル(パルミチン酸2-エチルヘキシル)、シリコーン油に属するものとしてジメチコン(メチルポリシロキサン)、油脂に属するものとしてオリーブ果実油、ロウに属するものとしてホホバ種子油およびミツロウを用いた。No.1~7の組成(ステアレス-2およびステアレス-21はHLBが約7~10となる配合割合で併用)および評価結果を図7に示す。
【0059】
図7に示すように、No.1~No.7はいずれも、50℃で1週間以上安定であった。また、No.1~No.6は、50℃および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。この結果から、本発明では、油性原料はその種類を問わず、高い乳化安定性を有する水中油滴型乳化物が得られることが明らかになった。
【0060】
<実施例6>油性原料の配合量の検討
油性原料(ミネラルオイル)の配合量を10%~80%に変化させてNo.1~11の水中油滴型乳化物を製造し、乳化安定性を評価した。界面活性剤(ステアレス-2およびステアレス-21をHLBが約10となる配合割合で併用)の配合量は、質量比で、油性原料1に対して0.04となる量とした。No.1~11の組成および評価結果を図8に示す。
【0061】
図8に示すように、No.5(ミネラルオイル30%)は40℃で1週間以上および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。また、No.6(ミネラルオイル40%)~No.10(同79%)はいずれも、50℃および温度変化サイクルで1ヶ月以上安定であった。
【0062】
この結果から、油性原料の配合量の下限は、高い乳化安定性を得る観点から、27.5%超が好ましく、28%以上、28.5%以上、29%以上、29.5%以上または30%以上がより好ましく、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上または40%以上がさらに好ましいことが明らかになった。また、油性原料の配合量の上限は、高い乳化安定性を得る観点から、80%未満が好ましく、79.9%以下、79.8%以下、79.7%以下、79.6%以下、79.5%以下、79.4%以下、79.3%以下、79.2%以下、79.1%以下または79%以下がより好ましいことが明らかになった。
【0063】
<実施例7>水中油滴型乳化物の粘度の検討
水溶性高分子(ヒドロキシエチルセルロース)の配合量を0.3%~0.5%に変化させてNo.1~3の水中油滴型乳化物を製造した。また、油性原料(ミネラルオイル)の配合量を27.5%~50%に変化させてNo.4~6の水中油滴型乳化物を製造した。これらの粘度を、実施例1(2)に記載の方法により測定した。ただし、回転数は3rpmに代えて12rpmとした。また、40℃で1週間および温度変化サイクルで1か月の乳化安定性を評価した。No.1~6の組成(ステアレス-2およびステアレス-21はHLBが約10となる配合割合で併用)および評価結果を図9に示す。
【0064】
図9に示すように、No.1、No.2およびNo.4では粘度がそれぞれ3470mPa・s、5120mPa・sおよび5450mPa・sであり、乳化安定性が低かった。これに対して、No.3、No.5およびNo.6では粘度がそれぞれ6870mPa・s、6790mPa・sおよび7530mPa・sであり、乳化安定性が高かった。すなわち、粘度が6000mPa・sの水中油滴型乳化物は、高い乳化安定性を示すことが明らかになった。
【0065】
この結果から、水中油滴型乳化物の粘度は、高い乳化安定性を得る観点から、単一円筒形回転粘度計で、M3ローターを用いて、回転数12rpm、測定時間1分間で測定した25℃における粘度が6000mPa・s以上であることが好ましいことが明らかになった。また、糖鎖を含む水溶性高分子および/または油性原料は、高い乳化安定性を得る観点から、当該条件で測定した水中油滴型乳化物の粘度が6000mPa・s以上となる量を配合することが好ましいことが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9