(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102424
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】構台杭に回転杭を用いた仮設構台
(51)【国際特許分類】
E02D 5/28 20060101AFI20220630BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20220630BHJP
E02D 7/22 20060101ALI20220630BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D5/56
E02D7/22
E02D27/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217144
(22)【出願日】2020-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開日:令和2年 7月17日~令和2年 8月19日(施工期間) 令和2年 8月19日~令和2年11月 9日(本仮設構台の利用期間) (2)公開場所:(仮称)馬車道計画新築工事現場(神奈川県横浜市中区海岸通2-8-1)
(71)【出願人】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592198404
【氏名又は名称】千代田工営株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】里城 義武
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤則
(72)【発明者】
【氏名】芥川 博昭
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CA05
2D041DB02
2D041FA14
2D046AA15
2D046CA01
2D050AA06
2D050CB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本来の支持層が深い地盤であっても、本来の支持層よりN値が低く浅い中間層で必要な支持力を得て構築できる仮設構台を提供する。
【解決手段】仮設構台の桁行方向および梁間方向に、複数の構台杭1を所定間隔おきに立設する。隣接する各構台杭1,1間に大引き2、水平継ぎ材3および水平、垂直ブレース5,4をそれぞれ架設する。大引2の上に根太6を架設し、根太6の上に覆工板7を敷設する。構台杭1の一部または全部として、杭本体8の先端支持部に一または複数の羽根9が取り付けられた回転杭を用いる。構台杭1は、当該杭の先端が本来の支持層深度の40~80%の深さであって、N値が40以下の中間層に位置するように設置する。構台杭1の羽根9は、構台杭1の杭本体8における中間層の区間内に位置するように取り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁行方向および梁間方向に所定間隔おきに立設された複数の構台杭と、前記複数の構台杭によって支持された覆工板を備えてなる仮設構台において、前記構台杭の一部または全部として、杭本体の先端支持部に一または複数の羽根が取り付けられた回転杭が用いられていることを特徴とする仮設構台。
【請求項2】
請求項1記載の仮設構台において、隣接する各構台杭間に大引き、水平継ぎ材およびブレース材が架設されていることを特徴とする仮設構台。
【請求項3】
請求項1または2記載の仮設構台において、前記回転杭の先端が本来の支持層深度の40~80%の深さであって、N値が40以下の中間層に位置するように設置されていることを特徴とする仮設構台。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の仮設構台において、前記羽根は、3枚以上取り付けられていることを特徴とする仮設構台。
【請求項5】
請求項3または4記載の仮設構台において、前記羽根は、前記回転杭の杭本体における前記中間層の区間内に取り付けられていることを特徴とする仮設構台。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の仮設構台において、前記羽根は、脱着可能に取り付けられていることを特徴とする仮設構台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構台杭に回転杭を用いた仮設構台に関し、例えば、N値が50以上といった本来の支持層が深い地盤であっても、本来の支持層よりN値が低く浅い中間層で必要な支持力を確保して構築できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木の分野では、主体工事に先行して建設機械の作業スペースや各種資材の仮置き等のスペースを確保する目的で仮設構台が構築される(
図1(a),(b)参照)。
【0003】
この種の仮設構台は、一般に桁行方向と梁間(スパン)方向に、それぞれ所定間隔おきに立設された構台杭(支持杭)の上端部間と中間部間に、それぞれ大引き(桁受)と水平継ぎ材およびブレース材を架設し、さらに大引きの上に根太を架設し根太の上に覆工板を敷設することにより構築され、構台杭には一般にH形鋼杭が用いられる。また、構台杭が上載荷重で沈まないように、杭の先端支持部に根固め材を注入して根固め処理がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-079619号公報
【特許文献2】特開2015-129386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、支持層の深い地盤では杭を継ぎ足して杭長を延長することが行われ、また、杭の根固め材が予定通りに硬化していないと、杭が上載荷重で沈んでしまうことがあるため、このような場合も杭を継いで杭長を必要な長さに嵩上げする必要があった。
【0006】
また、杭長の長い構台杭は、三点式杭打機などの大型重機によって施工する必要があり、そのため広い作業スペースと搬入路を確保する必要があり、さらに大型運搬車両を手配する必要がある等、工事が大規模化しコストが嵩む等の課題があった。
【0007】
また、杭長の長い杭の施工は、プレボーリングにより杭孔の掘削残土が大量に発生し、その処理に費用が嵩む等の課題もあった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、本来の支持層が、例えばN値が50以上といった深い地盤であっても、本来の支持層よりN値が低く浅い中間層で必要な支持力を確保して構築できるようにした、構台杭に回転杭を用いた仮設構台を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、桁行方向および梁間方向に所定間隔おきに立設される複数の構台杭と、前記複数の構台杭によって支持される覆工板を備えた仮設構台の発明であり、前記構台杭の一部または全部として、杭本体の先端支持部に一または複数の羽根が取り付けられた回転杭が用いられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、例えば、N値が50以上といった本来の支持層が深い地盤であっても、本来の支持層よりN値が低く浅い中間層で必要な支持力を確保して構築できるようにしたものである。
【0011】
前記構台杭としての回転杭は、杭の先端が本来の支持層深度の40~80%、好ましくは50~70%の深さであって、N値が40以下、好ましくは10~40以下、さらに好ましくは10~30以下の中間層の区間内に位置するように設置されていることが好ましい。
【0012】
また、根切底深度(掘削深さ)から杭先端深さまでの距離(杭先端の根入れ深さ)DPを2π/3・β以上とすることにより、必要な水平抵抗力を確保できて好ましい(
図2(a)参照)。
【0013】
なお、この場合の杭の特性値βは、水平地盤反力係数をKh、杭径をB、Ieを断面二次モーメントとして、β=(Kh・B/Es・Ie)0.25の式から求めることができる。
【0014】
また、前記羽根は、N値が40以下、好ましくは10~40以下、さらに好ましくは10~30以下の中間層の区間内に複数枚取り付け、特に3枚乃至4枚の羽根が取り付けてあれば、N値が10程度でも充分な支持力を得ることができると考えられ好ましい。特に中間層は、本来の支持層よりもN値が小さいため、これを補うためにも複数の羽根を取り付けるのが望ましい。
【0015】
さらに、羽根が脱着可能に取り付けてあれば、現地においても中間支持層の実際の支持力や深さに応じて数量、間隔および各羽根の外径を変えて必要な支持力を得ることができ、きわめて効率的な施工が可能になる。
【0016】
施工に際しては、上部構造体を支える本設杭の施工後に、構台杭を施工することにより本設杭への悪影響を最小限に留めることができ、また、地中障害撤去範囲から翼径の3倍以上の離隔を確保して施工するのが好ましい。
【0017】
また、杭施工時のねじ込み作用と供用時の支持機能を持つ各杭の羽根のストロークを一定に揃えることで、施工に伴う地盤の乱れを少なくすることができる。
【0018】
また、隣接する各構台杭間に大引き、水平継ぎ材およびブレース材を架設することにより、仮設構台の水平剛性を著しく高めることができる。
【0019】
また、構台杭には回転杭を用い、大引き、水平継ぎ材およびブレース材などの軸組材には、回転杭より廉価なH形鋼や溝形鋼などの形鋼を用いることにより、きわめて経済的に構築することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の仮設構台は、特に隣接する構台杭の一部または全部に、鋼管からなる杭本体の先端支持部に一または複数の羽根を備えた回転杭が用いられているため、N値が50以上といった本来の支持層よりN値が低く浅い中間層に、構台杭の先端支持部が位置していても、必要な支持力を得ることができ、きわめて安全に構築することができる。
【0021】
また、構台杭は、中間層内まで施工すればよく、中間層より深い本来の支持層まで施工する必要がないため、材料費(杭材費)の削減が可能であり、また、工期短縮および工期短縮による工事費の削減等を図ることができる。
【0022】
また、構台杭として回転杭が用いられているため、セメントの使用がなく、しかも掘削残土が発生しないため環境にも配慮することができる。
【0023】
さらに、羽根は、杭本体の先端支持部の外周に脱着可能に取り付けられているため、中間層の支持力に応じて羽根の外径、数量および間隔を変えて取り付けることにより必要な支持力を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態であって、図(a)は構台杭に回転杭を用いた仮設構台の一部斜視図、図(b)は仮設構台の一部平面図である。
【
図2】回転杭からなる構台杭を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は平面図である。
【
図3】構台杭の他の実施形態であり、複数の羽根を有する下部杭と、下部杭の上端部に接合される上部杭の正面図である。
【
図4】構台杭の他の実施形態であり、図(a)は回転杭からなる下部杭とH形鋼からなる上部杭とからなるハイブリット回転杭の正面図、図(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図3は、本発明の一実施形態であって、構台杭として回転杭が用いられた仮設構台を図示したものである。
【0026】
図において、仮設構台の桁行方向および梁間(スパン)方向に、複数の構台杭1が所定間隔おきに立設され、当該構台杭1,1の上端部間に大引き2、中間部間に水平継ぎ材3がそれぞれ架設され、各構台杭1と大引き2および水平継材3は互いに接合されている。
【0027】
大引き2は、桁行方向に隣接する構台杭1,1の上端部間に架設され、水平継ぎ材3は桁行方向および梁間方向に隣接する構台杭1,1の各中間部間に架設され、特に大引き2の桁下が高い位置には複数段に架設されている。
【0028】
また、桁行方向および梁間方向に隣接する各構台杭1,1間に垂直ブレース4と水平ブレース5がそれぞれX形状に架設され、各構台杭1と垂直ブレース4および水平ブレース5は互いに接合されている。
【0029】
また、梁間方向に隣接する大引き2,2間に複数の根太6,6が架設され、さらに、根太6,6の上に複数の覆工板7が桁行方向に互いに隣接して敷設されている。
【0030】
構台杭1には後述する多翼式回転が用いられ、大引き2、水平継ぎ材3、水平ブレース4および垂直ブレース5には、それぞれH形鋼や溝形鋼、或は山形鋼(アングル材)などの形鋼が用いられている。なお、回転杭の径(翼部)は特に限定されないが、概ねφ250mm以上の杭が用いられている。
【0031】
また、構台杭1は、杭本体8の先端が本来の支持層深度の40~80%、好ましくは50~70%の深さであって、N値が40以下、好ましくは10~40以下、さらに好ましくは10~30以下の中間層に位置するように設置され、また、根切底深度(掘削深さ)から杭先端深さまでの距離(根入れ深さ)DPは、2π/3・β以上確保されている(
図2(a)参照)。
【0032】
なお、この場合の特性値βは、水平地盤反力係数をKh、杭径をB、Ieを断面二次モーメントとして、β=(Kh・B/Es・Ie)0.25の式から求められる。
【0033】
構台杭1についてさらに説明すると、杭本体8は鋼管から形成され、当該杭本体8における杭の先端から概ね2π/3・βの範囲以内で、かつN値40以下、好ましくは10~40以下、さらに好ましくは10~30以下の中間層の区間内に、1または複数の羽根9が杭本体8の軸方向に間隔をおいて取り付けられている。
【0034】
羽根9の枚数、形状および設置間隔等は特に限定されるものではないが、特に中間層は本来の支持層よりN値が小さいため、これを補うためにも、羽根9は複数取り付けられているのが望ましく、通常、図示するように杭本体8の先端部に1枚、先端より上方に間隔をおいて3枚の計4枚の羽根が取り付けられている。
【0035】
また、羽根9は、杭本体8の円周方向に一回転連続する円盤状に取り付けられるが、杭本体8の円周方向に数回転連続するスパイラル状に取り付けられることもある。
【0036】
さらに、杭本体8の外周に溶接または取付けボルトによって取り付けられ、特に取付けボルトによる取付けは、脱着可能なことにより現地での付替えが可能となる。
【0037】
また、中間層の支持力に応じて必要とする支持力が得られるように枚数、間隔および各羽根の外径などが変更可能とされている。
【0038】
なお、
図3に図示するように、杭本体8は、中間層の深さにより羽根9を有する下部杭8aと、当該下部杭8aの上端部に接合された一または複数の上部杭8bとから一体に形成され、上部杭8bは支持層となる中間層の深さにより必要数接合され、特に中間層が浅い場合は下部杭8aのみが設置されることもある。
【0039】
この場合、羽根9は、下部杭8aの先端から概ね2π/3・β以内の外周、すなわち下部杭8aの外周に、当該下部杭8aの軸方向に間隔をおいて少なくとも2枚以上取り付けられている。
【0040】
また、羽根9の形状、数量および設置間隔等は特に限定されるものではなく、例えば、図示するように下部杭8aの先端部に1枚、先端より上方に間隔をおいて3枚の羽根9が取り付けられている。
【0041】
また、羽根9は、下部杭8aの円周方向に一回転連続する円盤状、または下部杭8aの円周方向に数回転連続するスパイラル状に取り付けられることもある。
【0042】
さらに、杭本体8の外周に溶接または取付けボルトによって取り付けられ、取付けボルトによる取付けは脱着可能で、現地での付替えが可能とされ、中間層の支持力に応じて必要とする支持力が得られるように枚数、間隔および各羽根の外径などが変更可能とされている。
【0043】
このような構成において、構台杭1は、本来の支持層より浅い中間層にあっても、羽根9と各羽根9,9間の土とが一体となり、必要な支持力を確保することができる。
【0044】
図4は、構台杭1の他の実施形態を図示したものであり、多翼式回転杭からなる下部杭10と、当該下部杭10の上端部に接合された上部杭11とから形成され、上部杭11はH形鋼などの形鋼や十字形鋼などから形成されている。
【0045】
下部杭10は、
図3で説明した下部杭8aと同じく、鋼管本体10aの外周に羽根12が杭本体10aの先端から概ね2π/3・β以内の外周に、少なくとも2枚以上取り付けられている。
【0046】
また、上部杭11がH形鋼などの形鋼から形成されていることで、鋼管使用量の節約によるコスト低減と、大引き3や水平材4等の横架材との接合部の簡単化等を図ることができる。
【0047】
施工に際しては、先に下部杭10をその上端部の一部を地盤面上に残して施工し、その後、下部杭10の上端部に上部杭11を接合してもよい。
【0048】
このようにして施工された構台杭1は、本来の支持層よりN値が低く浅い中間層にあっても、羽根12と各羽根12,12間の土が一体となり、必要な支持力を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の仮設構台は、本来の支持層が深い地盤であっても、本来の支持層より浅い中間層で必要な支持力を確保して構築することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 構台杭
2 大引き
3 水平継ぎ材
4 垂直ブレース
5 水平ブレース
6 根太
7 覆工板
8 杭本体
8a杭本体
9 羽根
10 下部杭
10a 杭本体
11 上部杭
12 羽根
【手続補正書】
【提出日】2021-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁行方向および梁間方向に所定間隔おきに立設された複数の構台杭と、隣接する各構台杭間に架設された大引き、水平継ぎ材およびブレース材と、前記複数の構台杭によって支持された覆工板を備えてなる仮設構台において、前記構台杭の一部または全部として、杭本体の先端部および先端部より上方に複数の羽根が取り付けられた回転杭が用いられ、前記回転杭の先端は、N値が50以上といった本来の支持層深度の40~80%の深さであって、N値が40以下の中間層に位置するように設置され、かつ根切底深度から前記回転杭の杭先端深さまでの距離が、2π/3・β以上確保されていることを特徴とする仮設構台。
但し、β=(Kh・B/Es・Ie)
0.25
Kh:水平地盤反力係数
B:杭径
Ie:断面二次モーメント
【請求項2】
請求項1記載の仮設構台において、前記羽根は、3枚以上取り付けられていることを特徴とする仮設構台。
【請求項3】
請求項1または2記載の仮設構台において、前記羽根は、前記回転杭の先端から2π/3・βの範囲以内で、かつN値が40以下の前記中間層の区間内に取り付けられていることを特徴とする仮設構台。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の仮設構台において、前記羽根は、脱着可能に取り付けられていることを特徴とする仮設構台。