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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102428
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】浚渫ポンプ
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
E02F3/88 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217150
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 秀城
(57)【要約】
【課題】インペラのロック若しくは閉塞が生じた際に、そのロック若しくは閉塞を解消するとともに送泥管路内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制する。
【解決手段】浚渫ポンプ10は、インペラ2の駆動状態を検出する閉塞検出手段40A、40Bと、ケーシング1の送泥管路13から分岐される分岐管路14と、分岐管路14に装着された第一の逆止弁11と、送泥管路13に分岐部分よりも下流に装着された第二の逆止弁12と、閉塞解消処理を実行するコントローラ30と、を備える。コントローラ30は、閉塞検出手段40A、40Bからの閉塞情報が取得されたときは、第一の逆止弁11が開とされ第二の逆止弁12が閉とされた状態でインペラ2を逆転駆動する閉塞解消制御を実行し、閉塞情報が取得されていないときは、第一の逆止弁11が閉とされ第二の逆止弁12が開とされた状態でインペラ2を正転駆動する通常制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に回転自在に配置されたインペラと、を備える浚渫ポンプであって、
前記インペラのロックまたは閉塞状態を検出する閉塞検出手段と、
前記ケーシングの吐出側に接続される送泥管路から分岐されて水中に開口される分岐管路と、
該分岐管路の開口部に装着された第一の弁と、
前記送泥管路の途中であって前記分岐部分よりも下流に介装されるとともに前記第一の逆止弁とは逆の開閉動作をする第二の弁と、
前記閉塞検出手段から取得された閉塞情報に基づいて閉塞解消処理を実行するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
閉塞情報が取得されたときは、前記第一の弁が開かれた状態で且つ前記第二の弁が閉じられた状態で前記インペラを逆転駆動する閉塞解消制御を実行し、
閉塞情報が取得されていないときは、前記第一の弁が閉じられた状態で且つ前記第二の弁が開かれた状態で前記インペラを正転駆動する通常制御を実行する、
ことを特徴とする浚渫ポンプ。
【請求項2】
前記第一の弁および前記第二の弁は、逆止弁である請求項1に記載の浚渫ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖等の水底に堆積した堆積物を浚渫するための浚渫技術に係り、特に、この種の用途に好適な浚渫ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダムでは、ダム湖の水底に堆積した泥や土砂、玉石、礫、沈木等の堆積物を排出するための浚渫作業がダムの貯水能力維持のために必要である。
これに対し、例えば特許文献1には、浚渫ポンプにより水底の堆積物を吸引するとともに送泥する、ポンプ浚渫方式の浚渫装置が開示されている。同文献記載の浚渫装置は、浚渫ポンプと、浚渫ポンプの吸込み側に対向する位置に設けられた破砕機と、を備える。
【0003】
特に、同文献記載の浚渫装置は、破砕機として、二基の二軸破砕機を上下2段に配置している。これにより、同文献記載の浚渫装置によれば、堆積物に玉石や沈木が含まれる場合であっても、二段構えの破砕工程により、浚渫ポンプで吸引・吐出できる大きさまで堆積物をより確実に破砕できる。そのため、浚渫ポンプの閉塞を未然に防止または抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-178566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1記載の技術は、浚渫ポンプでの吸引・吐出工程に至る前の工程、つまり、破砕工程での工夫によって、後工程の浚渫ポンプでの閉塞を未然に防止または抑制する技術である。
【0006】
そのため、浚渫ポンプ自体および送泥管路内での閉塞性については従来同様の構成なので、ポンプ浚渫方式におけるポンプ自身および送泥管路内での閉塞を防止または抑制し得る浚渫技術を提供する上で、未だ検討の余地が残されている。
【0007】
ここで、ポンプ浚渫においては、浚渫ポンプの吐出側に配管される送泥管路内での土砂の沈殿による閉塞を回避するために、送泥液中の含砂率を所定割合以下に抑えて浚渫ポンプを運転する方策が一般的にとられている。
【0008】
一方、特許文献1記載の技術のように、破砕機を用いた場合であっても、玉石や沈木をケーシング内に吸い込むと、ケーシング内で回転するインペラがロック若しくは閉塞してしまう可能性がある。通常、インペラがロック若しくは閉塞状態にあるとオペレータが判断した場合、インペラを逆転させてロック若しくは閉塞を解消する方策がとられる。
【0009】
しかしながら、ポンプ浚渫においては、単にインペラを逆転駆動すると、送泥管路内で吐出中の土砂の逆流が生じ、これにより、送泥管路内の吐出側近傍での含砂率が所定割合よりも増してしまうと、送泥管路内で土砂の閉塞が生じて再起動が困難となるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ポンプ浚渫方式において、ケーシング内でインペラのロック若しくは閉塞が生じた際に、インペラを逆転させてケーシング内でのインペラのロック若しくは閉塞を解消するとともに、送泥管路内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制し得る浚渫ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る浚渫ポンプは、ケーシングと、該ケーシング内に回転自在に配置されたインペラと、を備える浚渫ポンプであって、前記インペラのロックまたは閉塞状態を検出する閉塞検出手段と、前記ケーシングの吐出側に接続される送泥管路から分岐されて水中に開口される分岐管路と、該分岐管路の開口部に装着された第一の弁と、前記送泥管路の途中であって前記分岐部分よりも下流に介装されるとともに前記第一の弁とは逆の開閉動作をする第二の弁と、前記閉塞検出手段から取得された閉塞情報に基づいて閉塞解消処理を実行するコントローラと、を備え、前記コントローラは、閉塞情報が取得されたときは、前記第一の弁が開かれた状態で且つ前記第二の弁が閉じられた状態で前記インペラを逆転駆動する閉塞解消制御を実行し、閉塞情報が取得されていないときは、前記第一の弁が閉じられた状態で且つ前記第二の弁が開かれた状態で前記インペラを正転駆動する通常制御を実行する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る浚渫ポンプによれば、ケーシング内でインペラのロックまたは閉塞状態が検出された際は、インペラを逆転させてインペラのロック若しくは閉塞状態を解消することができる。
さらに、本発明の一態様に係る浚渫ポンプによれば、インペラを逆転駆動するときには、第一の弁を開く一方第二の弁を閉じた状態で逆転駆動する。これにより、インペラの逆転駆動時には、分岐管路の開口部から取水された水が送泥管路の途中部分から導入される一方、送泥管路内の土砂は逆転駆動前の位置に留まったままの状態に維持される。
【0013】
そのため、送泥管路内で吐出状態にあった土砂の逆流が防止され、円滑な逆転制御により迅速かつ確実なインペラのロック若しくは閉塞状態の解除が可能となる。
よって、本発明の一態様に係る浚渫ポンプによれば、ケーシング内でインペラのロック若しくは閉塞が生じた際に、インペラを逆転させてケーシング内でのインペラのロック若しくは閉塞を解消しつつ、送泥管路内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制できるのである。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明によれば、ケーシング内でインペラのロック若しくは閉塞が生じた際に、インペラを逆転させてケーシング内でのインペラのロック若しくは閉塞を解消するとともに、送泥管路内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様に係る浚渫ポンプを用いた浚渫システムの一実施形態を説明する模式図である。
図2】本発明の一態様に係る浚渫ポンプの一実施形態の説明図であり、同図では、ポンプ本体部分は軸線に沿った縦断面を示すとともに、閉塞検出手段係る構成については、ポンプ本体部分に対して模式的に付記して示している。
図3図1に示す実施形態での管理コンピュータ(コントローラ)が実行する閉塞解消処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0017】
図1に、本実施形態の浚渫ポンプ10を備える浚渫システムを示す。
同図に示すように、この浚渫システムは、ダム湖等の水上SLに配置される水上基地50と、水上基地50からワイヤ57で垂下されて水底に配備される浚渫装置100と、を備えて構成される。
【0018】
水上基地50には、発電機51と、ウインチ等を含む作業機54と、油圧源として内燃機関で駆動される可変容量タイプの油圧ポンプ55と、コントローラを構成する管理コンピュータ30と、が装備される。管理コンピュータ30および発電機51並びに油圧ポンプ55は、アンビリカルケーブル56を介してダム湖の湖底SBに配置された浚渫装置100に接続される。
【0019】
浚渫装置100は、水上基地50側から、浚渫装置100の作動に必要な電力や制御信号の供給並びに圧油の供給がアンビリカルケーブル56を介して可能になっている。本実施形態の浚渫装置100は、ダム湖の湖底SBに立設可能な浚渫矢倉53と、浚渫矢倉53の中央に装備された浚渫ポンプ10と、を備える。本実施形態の浚渫ポンプ10では、水中サンドポンプを採用しており、掘削された堆積物を泥水とともに送泥ホース7に送り出すポンプ浚渫が可能になっている。
【0020】
詳しくは、本実施形態の浚渫ポンプ10は、図2に示すように、ポンプ駆動部3と、ポンプ駆動部3の下部に設けられたケーシング1とを備える。ケーシング1には、底面に吸込口1sが設けられ、吸込口1sには、不図示のサクションホッパが装着される。本実施形態の浚渫ポンプ10を用いた浚渫装置として構成する際には、浚渫ポンプ10の吸込口1s側のサクションホッパの部分に破砕機を設けることができる。同図の例では、多孔パイプ型のストレーナ15が装着されている。
【0021】
ポンプ駆動部3には水中モータ5が内蔵されている。ポンプ駆動部3の上部には、制御ユニット6からキャプタイヤケーブル52が接続され、湖上の水上基地50に設けられた発電機51から供給される電力が、キャプタイヤケーブル52から制御ユニット6を介して水中モータ5に供給される。なお、キャプタイヤケーブル52は、図1でのアンビリカルケーブル56の内部に設けられる。
【0022】
水中モータ5の駆動軸8は、駆動軸8上下が軸受9A、9Bで回転自在に支持されるとともに、駆動軸8下端が、ケーシング1の上部中央から下方に向けて突設されている。ケーシング1内には、駆動軸8の先端にインペラ2が同軸に装着されている。ポンプ駆動部3とケーシング1との間は、水中モータ5の駆動軸8の周囲の位置にメカニカルシールやオイルシール等の軸封部4が設けられている。
【0023】
ケーシング1の側面には吐出口1tが設けられ、送泥管路13が吐出口1tに接続されている。送泥管路13は、湖底に沿って延設された可撓性を有する送泥ホース7に連結される。これにより、本実施形態の浚渫ポンプ10は、水中モータ5が駆動されると、インペラ2が所定方向に正転駆動されてケーシング1内で渦流を発生させ、湖底側を向くサクションホッパからポンプ排水量に応じて破砕された浚渫物とともに泥水を吸引し、吸込口1sから送泥管路13を介して送泥ホース7に排出可能になっている。
【0024】
ここで、本実施形態の浚渫ポンプ10では、送泥管路13と送泥ホース7との接続部分にエルボが介装されて分岐管路14が設けられている。これにより、分岐管路14は、ケーシング1の吐出側に接続される送泥管路13から分岐されて水中に開口される。
また、本実施形態の浚渫ポンプ10では、分岐管路14の開口部に、第一の弁としての第一の逆止弁11が装着されている。同図では、第一の逆止弁11による吸込側の開口部には、丸鋼を網状に組んだストレーナ16が装着されている。さらに、送泥管路13の途中であって分岐管路14の分岐部分よりも下流の位置に、第二の弁としての第二の逆止弁12が装着されている。
【0025】
本実施形態の第一の逆止弁11は、分岐管路14の開口側からケーシング1側に向かう方向が流体を流す順方向とされ、流体が逆方向に流れようとすると自動的に閉弁する逆止弁である。他方、本実施形態の第二の逆止弁12は、ケーシング1側から送泥管路13側に向かう方向が流体を流す順方向とされ、流体が逆方向に流れようとすると自動的に閉弁する逆止弁である。
【0026】
さらに、本実施形態の浚渫ポンプ10では、インペラのロックまたは閉塞状態を検出する閉塞検出手段として、ケーシング1の吸込口1sおよび吐出口1tに圧力検出センサ40A、40Bがそれぞれ付設されている。そして、上記管理コンピュータ30は、浚渫物の移送状態を監視して閉塞を防止または抑制する閉塞解消処理を実行し、閉塞状態と判定したときには、インペラ2を逆転駆動して逆転排水をする閉塞解消制御を実行するようになっている。
【0027】
詳しくは、管理コンピュータ30は、以下不図示の、中央処理装置(CPU)並びにこれに接続されるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)やROM(リード・オンリ・メモリ)などの記憶部および入出力装置などを備える。記憶部には、浚渫物の種類(例えば玉石、沈木)に応じた浚渫ポンプ10での排水に必要なトルク情報等を予め記憶した複数の駆動パターンが格納されている。
【0028】
管理コンピュータ30は、圧力検出センサ40A、40Bと、水中モータ5が定馬力制御されるための回路等から取得された電流情報と、に基づいて、浚渫物の状況に応じた浚渫ポンプ10の駆動パターンを選択して、例えばレギュレータを用いて適切な制御が可能になっている。
【0029】
閉塞解消処理は、インペラ2を正転駆動する通常制御処理へのタイマ割り込み処理となっており、管理コンピュータ30は、閉塞解消処理が実行されると、図3に示すように、ステップS10に移行して、閉塞情報が取得されているか否かを監視する。
【0030】
本実施形態では、圧力検出センサ40A、40Bからの圧力情報と、水中モータ5からの電流情報と、に基づいて、予め設定された閾値との比較により閉塞情報を取得する。そして、管理コンピュータ30は、その監視下において、閉塞情報が取得されていればステップS20に移行し、そうでなければステップS30に移行する。
【0031】
ここで、閉塞検出手段から取得される閉塞情報とは、本実施形態では、圧力検出センサ40A、40Bによる各計測値を圧力情報とし、この計測値に対して任意の閾値をそれぞれ定めるとともに、仮想運転点での水中モータ5の電流値をモニターして、この電流値に対しても任意の閾値を定めている。そして、管理コンピュータ30は、これらの値が予め設定された下限値もしくは上限値を超えたときに閉塞情報が取得されたものとし、浚渫ポンプ10に閉塞が生じたと判断するように構成されている。
【0032】
より具体的には、例えば、ダム湖の湖底SBの水深が5mであり、浚渫ポンプ10のポンプ全揚程が15mの場合において(液比重は1とする)、このとき、通常運転時であれば、吸込口1sの圧力検出センサ40Aの圧力情報として5m、吐出口1tの圧力検出センサ40Bの圧力情報として20m、また、仮想運転点での水中モータ5の電流値として50Aが、それぞれの計測値として管理コンピュータ30に送られる(但し、圧力の単位は水柱m)とする。
【0033】
これに対して、上記閾値として、吸込口1sでの圧力情報として例えば2m、吐出口1tでの圧力情報として例えば10m、また、仮想運転点での水中モータ5の電流値として例えば30Aが予め設定されているものとする。よって、上記の計測値はいずれも通常値の範囲内と判断されるので、管理コンピュータ30は、運転状態が正常と判定して通常運転が継続される。
【0034】
一方、閉塞時の一例として、吸込口1sの圧力検出センサ40Aの圧力情報として1m、吐出口1tの圧力検出センサ40Bの圧力情報として5m、また、仮想運転点での水中モータ5の電流値として20Aが、それぞれの計測値として管理コンピュータ30に送られたとする。
【0035】
管理コンピュータ30は、上記閾値と取得された計測値との比較を行い、この例であれば、吸込口1sでの圧力情報1m、吸込口1sでの圧力情報5m、および仮想運転点での水中モータ5の電流値20Aのいずれもが所定の閾値よりも小さいことから、圧力低下が同時に発生しており、閉塞情報が取得されたものと判断する。これにより、管理コンピュータ30は、ステップS20では、インペラを逆転駆動する閉塞解消制御を実行してから、ステップS10に処理を戻す。ステップS30では、インペラを正転駆動する通常制御を継続して処理を戻す。
【0036】
これにより、管理コンピュータ30は、閉塞情報が取得されたときは、第一の逆止弁11が開かれた状態で且つ第二の逆止弁12が閉じられた状態でインペラ2を逆転駆動する閉塞解消制御を実行可能になっている。
また、管理コンピュータ30は、閉塞情報が取得されていないときは、第一の逆止弁11が閉じられた状態で且つ第二の逆止弁12が開かれた状態でインペラ2を正転駆動する通常制御を実行可能になっている。
【0037】
次に、上述した浚渫ポンプ10を備える浚渫装置100によって、ダム湖の湖底から堆積物を浚渫する手順、並びにこの浚渫ポンプ10の作用・効果について説明する。
まず、図1に示すように、浚渫装置100を垂下した水上基地50を湖上の目的とする位置に停泊する。次いで、水上基地50に設置されている作業機54を用いてワイヤ57を繰り出し、浚渫装置100を水中に降ろして、浚渫装置100が所望する配置となるようにダム湖の湖底の適切な位置に浚渫矢倉53を設置する。
【0038】
浚渫装置100の設置後、不図示の破砕機および浚渫ポンプ10を駆動する。浚渫装置100が駆動されると、破砕機が浚渫物を破砕しつつ上部の浚渫ポンプ10に向けて浚渫物を送り出す。
浚渫ポンプ10は、掘削された堆積物を泥水とともに吸引し、例えば、図1において、浚渫装置100の配置位置Sから、水中に配設された送泥ホース7を介して水上の移設位置Mに移動する。浚渫装置100を垂下した水上基地50を移動して、ダム湖の湖底にて堆積物の浚渫を継続できる。
【0039】
ここで、浚渫ポンプ10の性能に基づくポンプ浚渫では、浚渫ポンプ10の制御が適正に行われていないと、破砕された浚渫物を含有する土砂等の割合(含砂率)が多くなり、送泥ホース7の圧送距離が長くなれば、送泥管路13や送泥ホース7が閉塞し、破砕された浚渫物を安定的に搬送できなくなるおそれがある。
【0040】
ポンプ浚渫においては、配管内での土砂の沈殿を回避するために、スラリ液の含砂率を所定割合以下に抑えて水中ポンプ等の浚渫ポンプ10を運転する手法が一般的にとられる。
これに対し、本実施形態の浚渫装置100では、管理コンピュータ30が、圧力検出センサ40A、40Bと、水中モータ5が定馬力制御されるための回路等から取得された電流情報と、に基づいて、閉塞情報が取得されていないときは、第一の逆止弁11が閉じられた状態で且つ第二の逆止弁12が開かれた状態でインペラ2を正転駆動する通常制御を実行する。
【0041】
通常制御においては、管理コンピュータ30は、浚渫物の状況に応じた浚渫ポンプ10の駆動パターンを選択し、例えばレギュレータを用いて、圧送液の含砂率を所定値以下に抑制するように浚渫ポンプ10の吸込み流量を増減する。
【0042】
これにより、本実施形態の浚渫装置100は、浚渫ポンプ10の閉塞をより好適に防止または抑制しつつ、インペラを正転駆動する通常制御を継続できる。したがって、本実施形態の浚渫装置100は、浚渫ポンプ10で圧送するスラリ液中の含砂率を所定値以下に抑えることで、送泥管路13および送泥ホース7内での土砂の沈殿を回避する上で好適である。
【0043】
ここで、堆積物に玉石や沈木が含まれる浚渫物の性状によっては、浚渫ポンプ10に閉塞が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態の浚渫ポンプ10は、管理コンピュータ30が、閉塞解消処理を実行し、浚渫物の移送状態を監視して閉塞状態と判定したときには、二つの逆止弁11、12の開閉作動との協働によりインペラを逆転駆動する閉塞解消制御が実行されるので、インペラのロック若しくは閉塞が生じた際に、インペラのロック若しくは閉塞を迅速に解消するとともに、送泥管路内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制できる。
【0044】
つまり、ダムや湖等で湖底に堆積する土砂を取り除くために浚渫ポンプが用いられるところ、湖底には流木などが沈んでいる。そのため、これをインペラ2に吸い込むとインペラ2がロックしたり若しくはケーシング1が閉塞したりしてしまう。従来から、インペラ部でのロック若しくは閉塞が生じた場合、インペラを逆流させてこれを解消している。
【0045】
しかし、上述したように、ポンプ浚渫においては、単純にインペラを逆転駆動するのみであると、送泥ホース7や送泥管路13内で吐出中の土砂の逆流が生じ、これにより、送泥管路13内の吐出側近傍での含砂率が所定割合よりも増してしまうと、送泥管路13内で土砂の閉塞が生じて再起動が困難となるおそれがある。
【0046】
これに対し、本実施形態の浚渫ポンプ10は、吸い込み部に設けた圧力検出センサ40A、掃き出し部に設けた圧力検出センサ40B、および、水中モータ5の駆動電流値、を管理コンピュータ30が監視し、管理コンピュータ30は、ロック若しくは閉塞状態と判断したときには閉塞解消制御を実行するので、円滑な逆転制御により迅速かつ確実なロック解除ができる。よって、浚渫ポンプ10の閉塞を防止または抑制できる。
【0047】
特に、本実施形態の浚渫ポンプ10では、上述したように、吐出側の送泥管路13には、第一の逆止弁11が介装され、逆転制御時の吐出口側からの浚渫土砂の逆流を防止できる。そして、逆転制御時の戻り流路は、分岐管路14によって送泥管路13から分岐されるとともに、分岐管路14には、第一の逆止弁11とは逆の動作を行う第二の逆止弁12が装備されている。
【0048】
そのため、閉塞解消制御時には、第一の逆止弁11が開かれた状態で且つ第二の逆止弁12が閉じられた状態でインペラ2を逆転駆動する閉塞解消制御を実行できる。これにより、本実施形態の浚渫ポンプ10によれば、インペラ2の逆転駆動時には、分岐管路14の開口部から取水された水が送泥管路13の途中部分から導入される一方、送泥ホース7および送泥管路13内の土砂は逆転駆動前の位置に留まったままの状態に維持される。
【0049】
よって、本実施形態の浚渫ポンプ10によれば、インペラ2を逆転させてケーシング1内でのインペラ2のロック若しくは閉塞を解消するとともに、送泥管路13内での土砂の閉塞をも併せて防止または抑制できるのである。
なお、本発明に係る浚渫ポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、送泥管路13と分岐管路14とに、逆止弁11、12をそれぞれ設けた例を示したが、これに限らず、逆止弁に替えて、例えば電磁開閉式のバルブをそれぞれの管路に設け、この電磁開閉式のバルブを管理コンピュータ30(コントローラ)によって開閉制御するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ケーシング
2 インペラ
3 ポンプ駆動部
4 軸封部
5 水中モータ
6 制御ユニット
7 送泥ホース
8 駆動軸
9A、9B 軸受
10 浚渫ポンプ
11 第一の逆止弁(第一の弁)
12 第二の逆止弁(第二の弁)
13 送泥管路
14 分岐管路
15 ストレーナ
16 ストレーナ
30 管理コンピュータ(コントローラ)
40A、40B 圧力センサ(閉塞検出手段)
50 水上基地
51 発電機
52 キャプタイヤケーブル
53 浚渫矢倉
54 作業機
55 油圧ポンプ
56 アンビリカルケーブル
57 ワイヤ
100 浚渫装置
図1
図2
図3