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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102475
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220630BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20220630BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217217
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】杉本 陽
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】内山 直己
(72)【発明者】
【氏名】栗田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉村 涼
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD04
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB23
4E168EA11
5F063AA07
5F063BA07
5F063CB07
5F063CB20
5F063CB26
5F063CB29
5F063CC29
5F063DD26
5F063DD27
5F063DD59
5F063DD64
5F063DD68
5F063DE14
5F063DE34
5F063DF24
5F063DG04
5F063DG05
(57)【要約】
【課題】ウェハを機能素子ごとに確実にチップ化することを可能にするレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ加工方法は、ストリート23を介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子22aを含むウェハ20を用意する第1工程と、第1工程の後に、ストリート23を通るライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する第2工程と、第2工程の後に、ストリート23の表層が除去され、且つ、表層が除去されてなる溝MZの底面に改質領域11から伸展した亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する第3工程と、を備える。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリートを介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子を含むウェハを用意する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記ストリートを通るラインに沿って前記ウェハの内部に改質領域を形成する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記ストリートの表層が除去され、且つ、前記表層が除去されてなる凹部の底面に前記改質領域から伸展した亀裂が前記ラインに沿って到達するように、前記ストリートにレーザ光を照射する第3工程と、を備える、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記ウェハを研削して薄化する研削工程を備える、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記研削工程は、前記第1工程の後で且つ前記第2工程の前に実施される、請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記研削工程は、前記第2工程の後で且つ前記第3工程の前に実施される、請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記研削工程は、前記第3工程の後に実施される、請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第3工程の前に、前記亀裂の伸展に関する亀裂伸展情報を取得する情報取得工程を備え、
前記第3工程では、前記亀裂伸展情報に基づいて、前記表層が除去され且つ前記凹部の底面に前記亀裂が前記ラインに沿って到達するように、前記ストリートにレーザ光を照射する、請求項1~5の何れか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記情報取得工程では、前記第2工程で前記改質領域を形成した後の前記ウェハを内部観察カメラにより撮影した撮影結果に基づいて、前記亀裂伸展情報を取得する、請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記亀裂伸展情報は、前記亀裂が前記ストリートに到達しているか否かに関する情報を含む、請求項6又は7に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第3工程では、前記亀裂伸展情報に基づいて、前記ストリートにおいて前記亀裂が前記ラインに沿って到達していない領域のみに、前記表層が除去され且つ前記凹部の底面に前記亀裂が前記ラインに沿って到達するように、前記ラインに沿ってレーザ光を照射する、請求項8に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記第2工程の前に、前記ウェハにおける少なくとも前記ストリート上に保護膜を塗布する保護膜塗布工程を備える、請求項6~9の何れか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記第2工程では、前記亀裂が前記ストリートに到達しないように、前記ラインに沿って前記ウェハの内部に前記改質領域を形成する、請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
ストリートを介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子を含むウェハを用意する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記ストリートを通るラインに沿って前記ウェハの内部に改質領域を形成する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記ストリートの表層が除去されるように前記ストリートにレーザ光を照射する第3工程と、
前記第3工程の後、前記ウェハを処理する第4工程と、を備え、
前記第3工程では、前記表層が除去されてなる凹部の底面に前記改質領域から伸展した亀裂が、前記第4工程の後において前記ラインに沿って到達するように、前記ストリートにレーザ光を照射する、レーザ加工方法。
【請求項13】
前記第4工程は、前記ウェハを研削して薄化する研削工程である、請求項12に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリートを介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子を含むウェハでは、絶縁膜(Low-k膜等)及び金属構造物(金属杭、金属パッド等)がストリートの表層に形成されている場合がある。そのような場合に、ストリートを通るラインに沿ってウェハの内部に改質領域を形成し、改質領域から亀裂を伸展させることでウェハを機能素子ごとにチップ化すると、ストリートに沿った部分において膜剥がれが生じる等、チップの品質が劣化することがある。そこで、ウェハを機能素子ごとにチップ化するに際し、ストリートにレーザ光を照射することでストリートの表層を除去するグルービング加工が実施される場合がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-173475号公報
【特許文献2】特開2017-011040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、例えば改質領域からの亀裂の伸展量の大小によって、ウェハを機能素子ごとにチップ化することが困難になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、ウェハを機能素子ごとに確実にチップ化することを可能にするレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工方法は、ストリートを介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子を含むウェハを用意する第1工程と、第1工程の後に、ストリートを通るラインに沿ってウェハの内部に改質領域を形成する第2工程と、第2工程の後に、ストリートの表層が除去され、且つ、表層が除去されてなる凹部の底面に改質領域から伸展した亀裂がラインに沿って到達するように、ストリートにレーザ光を照射する第3工程と、を備える。
【0007】
このレーザ加工方法では、第2工程によりウェハの内部にラインに沿って改質領域を形成した後に、第3工程によりストリートの表層を除去するレーザ加工(以下、「グルービング加工」ともいう)が行われる。グルービング加工においては、第2工程で形成したウェハの内部の改質領域から伸展した亀裂が、ストリートの表層が除去されてなる凹部の底面にラインに沿って到達する。したがって、凹部の底面に到達させた当該亀裂により、ウェハを機能素子ごとに確実にチップ化させることが可能となる。
【0008】
本発明のレーザ加工方法は、ウェハを研削して薄化する研削工程を備えていてもよい。この場合、所望の厚さのウェハを得ることが可能となる。
【0009】
本発明のレーザ加工方法では、研削工程は、第1工程の後で且つ第2工程の前に実施されてもよい。例えば、用意したウェハが一定以上に厚い場合には、ウェハの内部に改質領域を形成しにくくなる可能性がある。この点、研削工程を第2工程の前に実施することで、用意したウェハが一定以上に厚い場合であっても、薄化したウェハの内部に改質領域を形成することができるため、ウェハの内部に改質領域を形成しにくくなるのを抑制することが可能となる。
【0010】
本発明のレーザ加工方法では、研削工程は、第2工程の後で且つ第3工程の前に実施されてもよい。例えば、内部に改質領域が形成されたウェハを搬送する場合、その厚さが薄いと、ウェハに意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、研削工程を第2工程の後に実施することで、ウェハに意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法では、研削工程は、第3工程の後に実施されてもよい。例えば、内部に改質領域が形成され且つストリートの表層が除去されたウェハを搬送する場合、その厚さが薄いと、ウェハに意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、研削工程を第3工程の後に実施することで、ウェハに意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、前記第3工程の前に、亀裂の伸展に関する亀裂伸展情報を取得する情報取得工程を備え、第3工程では、亀裂伸展情報に基づいて、表層が除去され且つ凹部の底面に亀裂がラインに沿って到達するように、ストリートにレーザ光を照射してもよい。この場合、亀裂伸展情報を取得し、その亀裂伸展情報を利用してグルービング加工を実施することができる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法において、情報取得工程では、第2工程で改質領域を形成した後のウェハを内部観察カメラにより撮影した撮影結果に基づいて、亀裂伸展情報を取得してもよい。この場合、内部観察カメラの撮影結果から亀裂伸展情報を取得することができる。
【0014】
本発明のレーザ加工方法では、亀裂伸展情報は、亀裂がストリートに到達しているか否かに関する情報を含んでいてもよい。この場合、亀裂がストリートに到達しているか否かに関する情報を亀裂伸展情報として利用して、グルービング加工を実施することができる。
【0015】
本発明のレーザ加工方法において、第3工程では、亀裂伸展情報に基づいて、ストリートにおいて亀裂がラインに沿って到達していない領域のみに、表層が除去され且つ凹部の底面に亀裂がラインに沿って到達するように、ラインに沿ってレーザ光を照射してもよい。この場合、ストリートにおいて亀裂がラインに沿って到達していない領域のみに、グルービング加工が行われる。これにより、グルービング加工を効率よく実施することができる。
【0016】
本発明のレーザ加工方法は、第2工程の前に、ウェハにおける少なくともストリート上に保護膜を塗布する保護膜塗布工程を備えていてもよい。この場合、保護膜によりストリートの反射率を一定にすることができるため、亀裂伸展情報を精度よく取得することが可能となる。
【0017】
本発明のレーザ加工方法において、第2工程では、亀裂がストリートに到達しないように、ラインに沿ってウェハの内部に改質領域を形成してもよい。例えば、第2工程後のウェハを搬送する場合、亀裂がストリートに到達していると、その亀裂に起因してウェハが反り、当該反りによってウェハに意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、第2工程において亀裂がストリートに到達しないようにすることで、ウェハに意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0018】
本発明のレーザ加工方法は、ストリートを介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子を含むウェハを用意する第1工程と、第1工程の後に、ストリートを通るラインに沿ってウェハの内部に改質領域を形成する第2工程と、第2工程の後に、ストリートの表層が除去されるようにストリートにレーザ光を照射する第3工程と、第3工程の後、ウェハを処理する第4工程と、を備え、第3工程では、表層が除去されてなる凹部の底面に改質領域から伸展した亀裂が、第4工程の後においてラインに沿って到達するように、ストリートにレーザ光を照射する。
【0019】
このレーザ加工方法では、第4工程の後において、第2工程で形成したウェハの内部の改質領域から伸展した亀裂が、ストリートの表層が除去されてなる凹部の底面にラインに沿って到達する。したがって、凹部の底面に到達させた当該亀裂により、ウェハを機能素子ごとに確実にチップ化させることが可能となる。
【0020】
本発明のレーザ加工方法では、第4工程は、ウェハを研削して薄化する研削工程であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウェハを機能素子ごとに確実にチップ化することが可能なレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ウェハの内部に改質領域を形成するレーザ加工装置の構成図である。
図2】グルービング加工を実施するレーザ加工装置の構成図である。
図3】加工対象となるウェハの平面図である。
図4図3に示されるウェハの一部分の断面図である。
図5図3に示されるストリートの一部分の平面図である。
図6】第1実施形態のレーザ加工方法のフローチャートである。
図7】(a)は、第1実施形態のレーザ加工方法を説明するためのウェハの断面図である。(b)は、図7(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図8】(a)は、図7(b)の続きを示すウェハの断面図である。(b)は、図8(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図9】(a)は、図8(b)の続きを示すウェハの断面図である。(b)は、図9(a)のA-A線に沿った断面図である。
図10】(a)は、図9(a)の続きを示すウェハの断面図である。(b)は、図10(a)のB-B線に沿った断面図である。
図11図10(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図12】第2実施形態のレーザ加工方法のフローチャートである。
図13】(a)は、第2実施形態のレーザ加工方法を説明するためのウェハの断面図である。(b)は、図13(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図14】(a)は、図13(b)の続きを示すウェハの断面図である。(b)は、図14(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図15】第3実施形態のレーザ加工方法のフローチャートである。
図16】(a)は、第3実施形態のレーザ加工方法を説明するためのウェハの断面図である。(b)は、図16(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図17】(a)は、図16(b)の続きを示すウェハの断面図である。(b)は、図17(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図18図17(b)の続きを示すウェハの断面図である。
図19】第4実施形態のレーザ加工方法のフローチャートである。
図20】(a)は、第4実施形態のレーザ加工方法を説明するためのウェハの断面図である。(b)は、図20(a)の続きを示すウェハの断面図である。
図21図20(b)の続きを示すウェハの断面図である。
図22】(a)は、変形例に係るレーザ加工方法を説明するための図9(b)に対応する断面図である。(b)は、変形例に係るレーザ加工方法を説明するための図10(b)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0024】
実施形態のレーザ加工方法では、ウェハの内部に改質領域を形成する。ウェハの内部に改質領域を形成する装置として、例えば図1に示されるレーザ加工装置100を用いることができる。
【0025】
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、支持部102と、光源103と、光軸調整部104と、空間光変調器105と、集光部106と、光軸モニタ部107と、可視撮像部108Aと、赤外撮像部108Bと、移動機構109と、管理ユニット150と、を備えている。レーザ加工装置100は、ウェハ20にレーザ光L0を照射することでウェハ20に改質領域11を形成する装置である。以下の説明では、互いに直交する3方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向という。一例として、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第1水平方向に垂直な第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0026】
支持部102は、例えばウェハ20を吸着することでウェハ20を支持する。支持部102は、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って移動可能である。支持部102は、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能である。光源103は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光L0を出射する。レーザ光L0は、ウェハ20に対して透過性を有している。光軸調整部104は、光源103から出射されたレーザ光L0の光軸を調整する。光軸調整部104は、例えば、位置及び角度の調整が可能な複数の反射ミラーによって構成されている。
【0027】
空間光変調器105は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。空間光変調器105は、光源103から出射されたレーザ光L0を変調する。空間光変調器105は、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。空間光変調器105では、その液晶層に表示する変調パターンを適宜設定することで、レーザ光L0の変調が可能である。本実施形態では、光軸調整部104からZ方向に沿って下側に進行したレーザ光L0は、レーザ加工ヘッドH内に入射し、ミラーM1によって反射され、空間光変調器105に入射する。空間光変調器105は、そのように入射したレーザ光L0を反射しつつ変調する。
【0028】
集光部106は、レーザ加工ヘッドHの底壁に取り付けられている。集光部106は、空間光変調器105によって変調されたレーザ光L0を、支持部102によって支持されたウェハ20に集光する。本実施形態では、空間光変調器105によって反射されたレーザ光L0は、ダイクロイックミラーM2によって反射され、集光部106に入射する。集光部106は、そのように入射したレーザ光L0をウェハ20に集光する。集光部106は、集光レンズユニット161が駆動機構162を介してレーザ加工ヘッドHの底壁に取り付けられることで構成されている。駆動機構162は、例えば圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニット161をZ方向に沿って移動させる。
【0029】
なお、レーザ加工ヘッドH内において、空間光変調器105と集光部106との間には、結像光学系(図示省略)が配置されている。結像光学系は、空間光変調器105の反射面と集光部106の入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、空間光変調器105の反射面でのレーザ光L0の像(空間光変調器105によって変調されたレーザ光L0の像)が集光部106の入射瞳面に転像(結像)される。レーザ加工ヘッドHの底壁には、X方向において集光レンズユニット161の両側に位置するように一対の測距センサS1,S2が取り付けられている。各測距センサS1,S2は、ウェハ20のレーザ光入射面に対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、レーザ光入射面で反射された測距用の光を検出することで、レーザ光入射面の変位データを取得する。
【0030】
光軸モニタ部107は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。光軸モニタ部107は、ダイクロイックミラーM2を透過したレーザ光L0の一部を検出する。光軸モニタ部107による検出結果は、例えば、集光レンズユニット161に入射するレーザ光L0の光軸と集光レンズユニット161の光軸との関係を示す。可視撮像部108Aは、可視光V0を出射し、可視光V0によるウェハ20の像を画像として取得する。可視撮像部108Aは、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。赤外撮像部108Bは、赤外光を出射し、赤外光によるウェハ20の像を赤外線画像として取得する。赤外撮像部108Bは、レーザ加工ヘッドHの側壁に取り付けられている。
【0031】
移動機構109は、レーザ加工ヘッドH及び支持部102の少なくとも何れかをX方向、Y方向及びZ方向に移動させる機構を含む。移動機構109は、レーザ光L0の集光点CがX方向、Y方向及びZ方向に移動するように、モータ等の公知の駆動装置の駆動力によりレーザ加工ヘッドH及び支持部102の少なくとも何れかを駆動する。移動機構109は、支持部102を回転させる機構を含む。移動機構109は、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により支持部102を回転駆動する。
【0032】
管理ユニット150は、制御部151と、ユーザインタフェース152と、記憶部153と、を有する。制御部151は、レーザ加工装置100の各部の動作を制御する。制御部151は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部151では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。ユーザインタフェース152は、各種データの表示及び入力を行う。ユーザインタフェース152は、グラフィックベースの操作体系を有するGUI(Graphical User Interface)を構成する。
【0033】
ユーザインタフェース152は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス、マイク、タブレット型端末、モニタ等の少なくとも何れかを含む。ユーザインタフェース152は、例えばタッチ入力、キーボード入力、マウス操作、音声入力等により、各種の入力を受付け可能である。ユーザインタフェース152は、その表示画面上に各種の情報を表示可能である。ユーザインタフェース152は、入力を受け付ける入力受付部、及び、受け付けた入力に基づき設定画面を表示可能な表示部に相当する。記憶部153は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。
【0034】
以上のように構成されたレーザ加工装置100では、ウェハ20の内部にレーザ光L0が集光されると、レーザ光L0の集光点(少なくとも集光領域の一部)Cに対応する部分においてレーザ光Lが吸収され、ウェハ20の内部に改質領域11が形成される。改質領域11は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域11としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域11は、複数の改質スポット11s及び複数の改質スポット11sから伸展する亀裂を含む。
【0035】
一例として、ウェハ20を切断するためのライン15に沿って、ウェハ20の内部に改質領域11を形成する場合におけるレーザ加工装置100の動作について説明する。
【0036】
まず、レーザ加工装置100は、ウェハ20に設定されたライン15がX方向に平行となるように支持部102を回転させる。レーザ加工装置100は、赤外撮像部108Bによって取得された画像(例えば、ウェハ20が有する機能素子層の像)に基づいて、Z方向から見た場合にレーザ光L0の集光点Cがライン15上に位置するように、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って支持部102を移動させる。レーザ加工装置100は、可視撮像部108Aによって取得された画像(例えば、ウェハ20のレーザ光入射面の像)に基づいて、レーザ光L0の集光点Cがレーザ光入射面上に位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドH(すなわち、集光部106)を移動させる(ハイトセット)。レーザ加工装置100は、その位置を基準として、レーザ光L0の集光点Cがレーザ光入射面から所定深さに位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドHを移動させる。
【0037】
続いて、レーザ加工装置100は、光源103からレーザ光L0を出射させると共に、レーザ光L0の集光点Cがライン15に沿って相対的に移動するように、X方向に沿って支持部102を移動させる。このとき、レーザ加工装置100は、1対の測距センサS1,S2のうちのレーザ光L0の加工進行方向における前側に位置する一方によって取得されたレーザ光入射面の変位データに基づいて、レーザ光L0の集光点Cがレーザ光入射面から所定深さに位置するように、集光部106の駆動機構162を動作させる。
【0038】
以上により、ライン15に沿って且つウェハ20のレーザ光入射面から一定深さに、1列の改質領域11が形成される。パルス発振方式によって光源103からレーザ光L0が出射されると、複数の改質スポット11sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット11sは、1パルスのレーザ光L0の照射によって形成される。1列の改質領域11は、1列に並んだ複数の改質スポット11sの集合である。隣り合う改質スポット11sは、レーザ光L0のパルスピッチ(ウェハ20に対する集光点Cの相対的な移動速度をレーザ光L0の繰り返し周波数で除した値)によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0039】
実施形態のレーザ加工方法では、ウェハ20のストリートの表層が除去されるようにストリートにレーザ光を照射する。ウェハ20のストリートの表層が除去されるようにストリートにレーザ光を照射する装置として、例えば図2に示されるレーザ加工装置1を用いることができる。
【0040】
図2に示されるように、レーザ加工装置1は、支持部2と、照射部3と、撮像部4と、制御部5と、を備えている。レーザ加工装置1は、ウェハ20のストリート(詳細については後述する)にレーザ光Lを照射することでウェハ20のストリートの表層を除去するグルービング加工を実施する装置である。
【0041】
支持部2は、ウェハ20を支持する。支持部2は、例えばウェハ20を吸着することで、ストリートを含むウェハ20の表面が照射部3及び撮像部4と向かい合うようにウェハ20を保持する。一例として、支持部2は、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って移動可能であり、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
【0042】
照射部3は、支持部2によって支持されたウェハ20のストリートにレーザ光Lを照射する。照射部3は、光源31と、整形光学系32と、ダイクロイックミラー33と、集光部34と、を含んでいる。光源31は、レーザ光Lを出射する。整形光学系32は、光源31から出射されたレーザ光Lを調整する。一例として、整形光学系32は、レーザ光Lの出力を調整するアッテネータ、レーザ光Lの径を拡大するビームエキスパンダ、レーザ光Lの位相を変調する空間光変調器の少なくとも一つを含んでいる。整形光学系32は、空間光変調器を含む場合、空間光変調器の変調面と集光部34の入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成する結像光学系を含んでいてもよい。ダイクロイックミラー33は、整形光学系32から出射されたレーザ光Lを反射して集光部34に入射させる。集光部34は、ダイクロイックミラー33によって反射されたレーザ光Lを、支持部2によって支持されたウェハ20のストリートに集光する。
【0043】
照射部3は、光源35と、ハーフミラー36と、撮像素子37と、を更に含んでいる。光源35は、可視光V1を出射する。ハーフミラー36は、光源35から出射された可視光V1を反射して集光部34に入射させる。ダイクロイックミラー33は、ハーフミラー36と集光部34との間において可視光V1を透過させる。集光部34は、ハーフミラー36によって反射された可視光V1を、支持部2によって支持されたウェハ20のストリートに集光する。撮像素子37は、ウェハ20のストリートによって反射されて集光部34、ダイクロイックミラー33及びハーフミラー36を透過した可視光V1を検出する。レーザ加工装置1では、制御部5が、撮像素子37による検出結果に基づいて、例えばレーザ光Lの集光点がウェハ20のストリートに位置するように、Z方向に沿って集光部34を移動させる。
【0044】
撮像部4は、支持部2によって支持されたウェハ20のストリートの画像データを取得する。撮像部4は、レーザ加工装置100により改質領域11が形成されたウェハ20の内部を観察する内部観察カメラである。撮像部4は、改質領域11から伸展する亀裂13(図9(b)参照)の伸展に関する亀裂伸展情報を取得するための画像データを撮影する。撮像部4は、改質領域11から伸展する亀裂13の先端を検出する。撮像部4は、ウェハ20に対して赤外光を出射し、赤外光によるウェハ20の像を画像データとして取得する。撮像部4としては、InGaAsカメラを用いることができる。
【0045】
制御部5は、レーザ加工装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、処理部51と、記憶部52と、入力受付部53と、を含んでいる。処理部51は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置である。処理部51では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。記憶部52は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。入力受付部53は、オペレータから各種データの入力を受け付けるインターフェース部である。一例として、入力受付部53は、キーボード、マウス、GUI(Graphical User Interface)の少なくとも一つである。
【0046】
レーザ加工装置1は、各ストリートにレーザ光Lを照射することで各ストリートの表層を除去するグルービング加工を実施する。具体的には、支持部2によって支持されたウェハ20の各ストリートにレーザ光Lが照射されるように、制御部5が照射部3を制御し、レーザ光Lが各ストリートに沿って相対的に移動するように、制御部5が支持部2を制御する。このとき、制御部5は、ストリートの表層が除去され、且つ、ストリートの表層が除去されてなる溝(凹部)の底面に改質領域11から伸展した亀裂がラインに沿って到達するように、ストリートにレーザ光Lを照射する(図10参照)(詳しくは後述)。
[ウェハの構成]
【0047】
図3及び図4に示されるように、ウェハ20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を含んでいる。半導体基板21は、表面21a及び裏面21bを有している。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられている。半導体基板21には、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、複数の機能素子22aを含んでいる。複数の機能素子22aは、半導体基板21の表面21aに沿って二次元に配置されている。各機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。各機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。
【0048】
ウェハ20には、複数のストリート23が形成されている。複数のストリート23は、隣り合う機能素子22aの間において外部に露出した領域である。つまり、複数の機能素子22aは、ストリート23を介して互いに隣り合うように配置されている。一例として、複数のストリート23は、マトリックス状に配列された複数の機能素子22aに対して、隣り合う機能素子22aの間を通るように格子状に延在している。図5に示されるように、ストリート23の表層には、絶縁膜24及び複数の金属構造物25,26が形成されている。絶縁膜24は、例えば、Low-k膜である。各金属構造物25,26は、例えば、金属パッドである。金属構造物25と金属構造物26とは、例えば、厚さ、面積、材料の少なくとも一つにおいて、互いに相違している。
【0049】
図3及び図4に示されるように、ウェハ20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断されること(すなわち、機能素子22aごとにチップ化されること)が予定されているものである。各ライン15は、ウェハ20の厚さ方向から見た場合に、各ストリート23を通っている。一例として、各ライン15は、ウェハ20の厚さ方向から見た場合に、各ストリート23の中央を通るように延在している。各ライン15は、レーザ加工装置1,100によってウェハ20に設定された仮想的なラインである。各ライン15は、ウェハ20に実際に引かれたラインであってもよい。
[レーザ加工方法]
【0050】
レーザ加工装置100及びレーザ加工装置1を用いた第1実施形態に係るレーザ加工方法について、図6に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。
【0051】
まず、図7(a)に示されるように、ウェハ20を用意する(ステップS1:第1工程)。図7(b)に示されるように、ウェハ20の機能素子22a側の表面に研削用テープT1を貼付する。図8(a)に示されるように、砥石BGを有する研削装置においてウェハ20の半導体基板21の裏面21b側を研削し、所望の厚さまでウェハ20を薄化する(ステップS2:研削工程)。図8(b)に示されるように、研削用テープT1を透明ダイシング用テープ12に貼り替える。透明ダイシング用テープ12は、エキスパンドフィルムとも称される。
【0052】
続いて、図9(a)及び図9(b)に示されるように、レーザ加工装置100において、各ライン15に沿ってウェハ20にレーザ光L0を照射することで、各ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する(ステップS3:第2工程)。なお、図9(a)の図示上方は、図9(b)の図示下方に対応する。
【0053】
上記ステップS3では、半導体基板21の裏面21bに透明ダイシング用テープ12が貼り付けられた状態で、透明ダイシング用テープ12を介して半導体基板21の内部にレーザ光L0の集光点を合わせて、ウェハ20にレーザ光L0を照射する。レーザ光L0は、透明ダイシング用テープ12及び半導体基板21に対して透過性を有している。半導体基板21の内部にレーザ光L0が集光されると、レーザ光L0の集光点に対応する部分においてレーザ光L0が吸収され、半導体基板21の内部に改質領域11が形成される。改質領域11は、改質領域11からレーザ光L0の入射側及びその反対側に亀裂13が延び易いという特性を有している。
【0054】
上記ステップS3では、改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達しないように、ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する。なお、上記ステップS3において改質領域11を形成する加工条件は、特に限定されず、公知の種々の知見に基づき設定することができる。当該加工条件は、ユーザインタフェース152(図1参照)を介して適宜に入力され得る。
【0055】
続いて、レーザ加工装置1において、支持部2によってウェハ20が支持された状態で、撮像部4によってウェハ20の各ストリート23の画像データを取得する。制御部5は、撮像部4の撮像結果に基づいて、亀裂13の亀裂伸展情報を取得する(ステップS4:情報取得工程)。亀裂伸展情報は、亀裂13の先端のストリート23までの距離に関する情報を含む。亀裂伸展情報は、亀裂13がストリート23に到達しているか否かに関する情報を含んでいてもよい。亀裂伸展情報は、亀裂13の伸展量に関する情報を含んでいてもよい。亀裂伸展情報では、亀裂13の伸展に関する各種の情報が、例えば各ストリート23のX方向及びY方向の各位置に関連付けられている。取得した亀裂伸展情報は、制御部5の記憶部52に記憶される。
【0056】
続いて、図10(a)及び図10(b)に示されるように、レーザ加工装置1において、ウェハ20に対してグルービング加工を実施する(ステップS5)(第3工程)。上記ステップS5では、支持部2によって支持されたウェハ20の各ストリート23にレーザ光Lが照射されるように、制御部5が照射部3を制御し、レーザ光Lが各ストリート23に沿って相対的に移動するように、制御部5が支持部2を制御する。このとき、制御部5は、亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23の表層が除去され、且つ、ストリート23の表層が除去されてなる溝(凹部)MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する。
【0057】
例えば上記ステップS5では、伸展量が最も小さい亀裂13であっても溝MZの底面から露出するように、亀裂伸展情報に基づきストリート23の表層の除去深さ(溝MZの深さ)を決定する。そして、ライン15に沿って、決定した除去深さでストリート23の表層が除去される加工条件でレーザ光Lをストリート23に照射し、溝MZをストリート23に形成する。
【0058】
例えば上記ステップS5では、図9(b)に示される例においては、改質領域11からの伸展量が異なる亀裂13a,13b、13cのうち最もストリート23から先端が離れている亀裂13aについてのストリート23からの距離に基づいて、亀裂13aが溝MZの底面に露出するような溝MZの深さが設定される。そして、図10(b)に示されるように、設定した深さの溝MZが形成されるようにストリート23の表層が除去される。その結果、溝MZの底面には、亀裂13a,13b、13cの全てが到達させられる。グルービング加工の加工条件は、特に限定されず、公知の種々の知見に基づき設定することができる。当該加工条件は、入力受付部53(図2参照)を介して適宜に入力され得る。
【0059】
続いて、図11に示されるように、エキスパンド装置(図示省略)において、透明ダイシング用テープ12を拡張することで、各ライン15に沿って半導体基板21の内部に形成された改質領域11からウェハ20の厚さ方向に亀裂を伸展させ、ウェハ20を機能素子22aごとにチップ化する(ステップS6)。
【0060】
以上、本実施形態のレーザ加工方法では、グービング加工の前には必ず、ウェハ20の内部に改質領域11が形成される。換言すると、グルービング加工は、必ず改質領域11をウェハ20に内部に形成した後に実施される。すなわち、上記ステップS3によりウェハ20の内部にライン15に沿って改質領域11を形成した後に、上記ステップS5により、ストリート23の表層を除去するグルービング加工が行われる。グルービング加工においては、上記ステップS3で形成したウェハ20の内部の改質領域11から伸展した亀裂13が、ストリート23の表層が除去されてなる溝MZの底面にライン15に沿って到達する。したがって、当該亀裂13により、ウェハ20を機能素子22aごとに確実にチップ化させることが可能となる。
【0061】
本実施形態のレーザ加工方法では、上記ステップS2において、ウェハ20を研削して薄化する。これにより、所望の厚さのウェハ20を得ることが可能となる。
【0062】
本実施形態のレーザ加工方法では、研削工程である上記ステップS2が、ウェハ20を用意する上記ステップS1の後で、且つ、改質領域11をウェハ20の内部に形成する上記ステップS3の前に実施される。例えば、用意したウェハ20が一定以上に厚い場合には、ウェハ20の内部に改質領域11を形成しにくくなる可能性がある。この点、研削工程を上記ステップS3の前に実施することで、用意したウェハ20が一定以上に厚い場合であっても、薄化したウェハ20の内部に改質領域11を形成することができるため、ウェハ20の内部に改質領域11を形成しにくくなるのを抑制することが可能となる。
【0063】
本実施形態のレーザ加工方法は、グルービング加工を実施する前に、亀裂伸展情報を取得する上記ステップS4を備える。グルービング加工では、取得した亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23の表層が除去され且つ溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する。この場合、亀裂伸展情報を取得し、その亀裂伸展情報を利用してグルービング加工を実施することができる。
【0064】
本実施形態のレーザ加工方法において、亀裂伸展情報を取得する上記ステップS4では、改質領域を形成した上記ステップS3後のウェハ20を撮像部4により撮影した撮影結果に基づいて、亀裂伸展情報を取得する。この場合、撮像部4の撮影結果から亀裂伸展情報を取得することができる。
【0065】
本実施形態のレーザ加工方法において、上記ステップS3では、亀裂13がストリート23に到達しないように、ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する。例えば、上記ステップS3後のウェハ20を搬送する場合、亀裂13がストリート23に到達していると、その亀裂13に起因してウェハ20が反り、当該反りによってウェハ20に意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、上記ステップS3にて亀裂13がストリート23に到達しないようにすることで、ウェハ20に意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0066】
次に、レーザ加工装置100及びレーザ加工装置1を用いた第2実施形態に係るレーザ加工方法について、図12に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明では、上記第1実施形態と重複する内容について適宜に説明を省略する。
【0067】
まず、ウェハ20を用意する(ステップS21:第1工程)。ウェハ20の機能素子22a側の表面に研削用テープT1を貼付する。図13(a)に示されるように、レーザ加工装置100において、各ライン15に沿ってウェハ20にレーザ光L0を照射することで、各ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する(ステップS22:第2工程)。
【0068】
上記ステップS22では、ウェハ20の機能素子22a側に研削用テープT1が貼り付けられた状態で、裏面21b側から半導体基板21の内部にレーザ光L0の集光点を合わせて、ウェハ20にレーザ光L0を照射する。上記ステップS22では、改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達しないように、ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する。
【0069】
続いて、図13(b)に示されるように、砥石BGを有する研削装置においてウェハ20の半導体基板21の裏面21b側を研削し、所望の厚さまでウェハ20を薄化する(ステップS23:研削工程)。図14(a)に示されるように、研削用テープT1を透明ダイシング用テープ12に貼り替える。
【0070】
続いて、レーザ加工装置1において、支持部2によってウェハ20が支持された状態で、撮像部4によってウェハ20の各ストリート23の画像データを取得する。制御部5は、撮像部4の撮像結果に基づいて、亀裂13の亀裂伸展情報を取得する(ステップS24:情報取得工程)。図14(b)に示されるように、レーザ加工装置1において、ウェハ20に対してグルービング加工を実施する(ステップS25)(第3工程)。上記ステップS25では、亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23の表層が除去され、且つ、ストリート23の表層が除去されてなる溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する。
【0071】
続いて、エキスパンド装置において、透明ダイシング用テープ12を拡張することで、各ライン15に沿って半導体基板21の内部に形成された改質領域11からウェハ20の厚さ方向に亀裂を伸展させ、ウェハ20を機能素子22aごとにチップ化する(ステップS26)。
【0072】
以上、本実施形態のレーザ加工方法においても、上記実施形態と同様に、ウェハ20を機能素子22aごとに確実にチップ化させることができる等の作用効果が奏される。本実施形態のレーザ加工方法では、研削工程である上記ステップS23が、改質領域11をウェハ20の内部に形成する上記ステップS22の後で且つグルービング加工に係る上記ステップS25の前に実施される。例えば、内部に改質領域11が形成されたウェハ20を搬送する場合、その厚さが薄いと、ウェハ20に意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、研削工程を上記ステップS22の後に実施することで、内部に改質領域11が形成されたウェハ20を薄化する前に搬送でき、ウェハ20に意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0073】
次に、レーザ加工装置100及びレーザ加工装置1を用いた第3実施形態に係るレーザ加工方法について、図15に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明では、上記第1実施形態と重複する内容について適宜に説明を省略する。
【0074】
まず、ウェハ20を用意する(ステップS31:第1工程)。図16(a)に示されるように、レーザ加工装置100において、各ライン15に沿ってウェハ20にレーザ光L0を照射することで、各ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する(ステップS32:第2工程)。上記ステップS32では、裏面21b側から半導体基板21の内部にレーザ光L0の集光点を合わせて、ウェハ20にレーザ光L0を照射する。上記ステップS32では、改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達しないように、ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する。なお、上記ステップS32では、例えばウェハ20の機能素子22a側の表面の凹凸が大きい場合、その表面にテープ材を貼り付けられていてもよいし、ウェハ20を支持する支持部102で当該凹凸に応じてウェハ20を吸着させてもよい。
【0075】
続いて、レーザ加工装置1において、支持部2によってウェハ20が支持された状態で、撮像部4によってウェハ20の各ストリート23の画像データを取得する。制御部5は、撮像部4の撮像結果に基づいて、亀裂13の亀裂伸展情報を取得する(ステップS33:情報取得工程)。続いて、図16(b)に示されるように、レーザ加工装置1において、ウェハ20に対してグルービング加工を実施する(ステップS34)(第3工程)。上記ステップS34では、亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23の表層が除去され、且つ、ストリート23の表層が除去されてなる溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する。
【0076】
続いて、図17(a)に示されるように、ウェハ20の機能素子22a側の表面に研削用テープT1を貼付する。図17(b)に示されるように、砥石BGを有する研削装置においてウェハ20の半導体基板21の裏面21b側を研削し、所望の厚さまでウェハ20を薄化する(ステップS35:研削工程)。図18に示されるように、研削用テープT1を透明ダイシング用テープ12に貼り替える。
【0077】
続いて、エキスパンド装置において、透明ダイシング用テープ12を拡張することで、各ライン15に沿って半導体基板21の内部に形成された改質領域11からウェハ20の厚さ方向に亀裂を伸展させ、ウェハ20を機能素子22aごとにチップ化する(ステップS36)。
【0078】
以上、本実施形態のレーザ加工方法においても、上記実施形態と同様に、ウェハ20を機能素子22aごとに確実にチップ化させることができる等の作用効果が奏される。本実施形態のレーザ加工方法では、研削工程である上記ステップS23が、グルービング加工に係る上記ステップS34の後に実施される。例えば、グルービング加工後のウェハ20を搬送する場合、その厚さが薄いと、ウェハ20に意図しない割れが生じやすくなる可能性がある。この点、研削工程を上記ステップS34の後に実施することで、グルーピング加工後のウェハ20を薄化する前に搬送でき、ウェハ20に意図しない割れが生じやすくなるのを抑制することが可能となる。
【0079】
次に、レーザ加工装置100及びレーザ加工装置1を用いた第4実施形態に係るレーザ加工方法について、図19に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明では、上記第3実施形態と重複する内容について適宜に説明を省略する。
【0080】
まず、ウェハ20を用意する(ステップS41:第1工程)。図20(a)に示されるように、機能素子22a側の表面(ウェハ20における少なくともストリート23上)に保護膜HMを塗布する(ステップS42:保護膜塗布工程)。保護膜HMとしては、特に限定されず、ウェハ20の保護用の種々の保護膜を利用することができる。
【0081】
図20(b)に示されるように、レーザ加工装置100において、各ライン15に沿ってウェハ20にレーザ光L0を照射することで、各ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する(ステップS43:第2工程)。上記ステップS43では、ウェハ20の機能素子22a側に研削用テープT1が貼り付けられた状態で、裏面21b側から半導体基板21の内部にレーザ光L0の集光点を合わせて、ウェハ20にレーザ光L0を照射する。上記ステップS43では、改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達しないように、ライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する。
【0082】
続いて、レーザ加工装置1において、支持部2によってウェハ20が支持された状態で、撮像部4によってウェハ20の各ストリート23の画像データを取得する。制御部5は、撮像部4の撮像結果に基づいて、亀裂13の亀裂伸展情報を取得する(ステップS44:情報取得工程)。図21に示されるように、レーザ加工装置1において、ウェハ20に対してグルービング加工を実施する(ステップS45)(第3工程)。上記ステップS45では、亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23の表層が除去され、且つ、ストリート23の表層が除去されてなる溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射する。
【0083】
続いて、保護膜HMを除去する。なお、保護膜HMを除去するタイミングは、上記ステップS45の後であれば、いずれのタイミングであってもよい。ウェハ20の機能素子22a側の表面に研削用テープT1を貼付する。砥石BGを有する研削装置においてウェハ20の半導体基板21の裏面21b側を研削し、所望の厚さまでウェハ20を薄化する(ステップS46:研削工程)。研削用テープT1を透明ダイシング用テープ12に貼り替える。
【0084】
続いて、エキスパンド装置において、透明ダイシング用テープ12を拡張することで、各ライン15に沿って半導体基板21の内部に形成された改質領域11からウェハ20の厚さ方向に亀裂を伸展させ、ウェハ20を機能素子22aごとにチップ化する(ステップS47)。
【0085】
以上、本実施形態のレーザ加工方法においても、上記実施形態と同様に、ウェハ20を機能素子22aごとに確実にチップ化させることができる等の作用効果が奏される。本実施形態のレーザ加工方法は、改質領域11をウェハ20の内部に形成する上記ステップS43の前に、ウェハ20における少なくともストリート23上に保護膜HMを塗布する。この場合、保護膜HMによりストリート23の反射率を一定にすることができるため、上記ステップS44において亀裂伸展情報を精度よく取得することが可能となる。なお、上記ステップS43による改質領域11の形成には、保護膜HMがあっても影響がない。
[変形例]
【0086】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0087】
上記実施形態において、亀裂伸展情報は、上述したように、亀裂13がストリート23に到達しているか否かに関する情報を含んでいてもよい。この場合、グルービング加工では、亀裂13がストリート23に到達しているか否かに関する情報を利用して、グルービング加工を実施することができる。
【0088】
例えば、グルービング加工では、亀裂13がストリート23に到達しているか否かに関する情報を含む亀裂伸展情報に基づいて、ストリート23において亀裂13がライン15に沿って到達していない領域のみに、ストリート23の表層が除去され且つ溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するようにレーザ光Lを照射してもよい。これにより、ストリート23において亀裂13がライン15に沿って到達していない領域のみに、グルービング加工が行われる。グルービング加工を効率よく実施することができる。なお、この場合、上記第4実施形態と同様に保護膜HMを塗布すると、ウェハ20の内部に改質領域11を形成した後、保護膜HM越しに亀裂13がストリート23に露出することになる。保護膜HMがあることで反射率が一定になることから、当該亀裂13がストリート23に到達した否かを判定しやすい。
【0089】
図22(a)に示される例では、亀裂伸展情報は、「改質領域11から伸展した亀裂13が、第1領域R1ではライン15に沿ってストリート23に到達せず、第2領域R2ではライン15に沿ってストリート23に到達する」との情報を含む。第1領域R1は、各ストリート23において金属構造物26(図5参照)に対応する領域であり、第2領域R2は、各ストリート23において第1領域R1以外の領域である。この場合、グルービング加工では、ストリート23の第1領域R1のみにレーザ光Lを照射し、ストリート23の第2領域R2にはレーザ光Lを照射しなくてもよい。具体的には、レーザ光Lが第1領域R1上を相対的に移動する際にレーザ光Lの出力がONとなり、且つレーザ光Lが第2領域R2上を相対的に移動する際にレーザ光Lの出力がOFFとなるように、制御部5により照射部3を制御してもよい。これにより、図22(b)に示される例のように、各ストリート23の第1領域R1では、ストリート23の表層(すなわち、金属構造物26)が除去され、溝MZの底面にライン15に沿って亀裂13が到達している一方で、各ストリート23の第2領域R2では、ストリート23の表層が残存させられる。
【0090】
なお、「改質領域11から伸展した亀裂13が、ライン15に沿ってストリート23に到達する」とは、「改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達し、且つ切断されたストリート23の両エッジ23aのそれぞれの蛇行が所定幅(ライン15に垂直な方向における所定幅)内に収まっている」との意味である。また、「改質領域11から伸展した亀裂13が、ライン15に沿ってストリート23に到達しない」とは、「改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達しないか、或いは、改質領域11から伸展した亀裂13がストリート23に到達したとしても、切断されたストリート23の両エッジ23aのそれぞれの蛇行が所定幅を超えている」との意味である。所定幅は、例えば、10μm程度である。
【0091】
上記実施形態は、レーザ加工装置1において亀裂伸展情報を取得する情報取得工程を備えているが、レーザ加工装置100において亀裂伸展情報を取得してもよいし、その他の装置により亀裂伸展情報を取得してもよい。上記実施形態は、情報取得工程を備えていなくてもよく、この場合、事前に取得された亀裂伸展情報が記憶部52に記憶されていてもよい。例えば亀裂伸展情報は、テスト用のウェハで事前に確認された情報であってもよい。上記実施形態では、グリービング加工により溝MZを形成したが、溝MZに代えて孔又は窪みを形成してもよく、要は凹部を形成すればよい。
【0092】
上記実施形態では、例えば亀裂13の伸展にストリート23の高さ及び光量が一定の相関があることから、亀裂伸展情報は、ストリート23の高さ及び光量に関する情報を含んでいてもよい。例えばレーザ加工装置1は、撮像部4に代えてもしくは加えて測距部を備え、測距部により、ストリート23の高さに関する情報を取得してもよい。測距部としては、例えば、三角測距タイプ、分光干渉タイプ、マルチカラー共焦点タイプ、単色共焦点タイプ等のレーザ変位計を用いることができる。
【0093】
上記実施形態では、撮像部4は、可視光を利用してウェハ20のストリートの画像データを取得するカメラを備えていてもよい。上記実施形態では、切断後のストリート23の少なくとも表層を撮像した画像や、赤外線を利用した透視画像を利用して、ストリート23の各領域におけるレーザ光Lの照射条件(レーザON/OFF制御、レーザパワー)をコントロールする情報を作成して、その情報に基づいてグルービング加工をコントロールできる。上記実施形態では、ストリート23に対する複数回のレーザ光Lの走査によって、ストリート23の表層を除去してもよい。上記実施形態では、レーザ光L0が各ライン15に沿って相対的に移動するように、支持部102のみを制御してもよいし、レーザ加工ヘッドHのみを制御してもよいし、或いは、支持部102及びレーザ加工ヘッドHの両方を制御してもよい。上記実施形態では、レーザ光Lが各ストリート23に沿って相対的に移動するように、支持部2のみを制御してもよいし、照射部3のみを制御してもよいし、或いは、支持部2及び照射部3の両方を制御してもよい。
【0094】
上記実施形態では、溝MZの底面に改質領域11から伸展した亀裂13がライン15に沿って到達するようにグルービング加工(第3工程)を行っているが、これに限定されない。例えばグルービング加工は、その直後には溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達せずに、その後の第4工程の後において、溝MZの底面に亀裂13がライン15に沿って到達するように行われてもよい。
【0095】
すなわち、一態様に係るレーザ加工方法は、ストリート23を介して互いに隣り合うように配置された複数の機能素子22aを含むウェハ20を用意する第1工程と、第1工程の後に、ストリート23を通るライン15に沿ってウェハ20の内部に改質領域11を形成する第2工程と、第2工程の後に、ストリート23の表層が除去されるようにストリート23にレーザ光Lを照射する第3工程と、第3工程の後、ウェハ20を処理する第4工程と、を備え、第3工程では、ストリート23の表層が除去されてなる溝MZの底面に改質領域11から伸展した亀裂13が、第4工程の後においてライン15に沿って到達するように、ストリート23にレーザ光Lを照射してもよい。このような加工は、改質領域11の形成後でグルービング加工前の亀裂13の長さと、第4工程により亀裂13が伸展する伸展量と、を実測、計算及び経験に基づいて予め把握することで実現できる。グルービング加工による溝MZの深さは、第4工程の後に亀裂13が溝MZの底面から露出する深さである。
【0096】
このようなレーザ加工方法によれば、第4工程の後において、ウェハ20の内部の改質領域11から伸展した亀裂13が溝MZの底面にライン15に沿って到達する。したがって、当該亀裂13によりウェハ20を機能素子22aごとに確実にチップ化できるという上記と同様な作用効果が奏される。このとき、第4工程は、研削工程であってもよい。なお、他の第4工程としては、例えば搬送工程及び洗浄工程等が挙げられる。
【0097】
上記実施形態及び上記変形例において、「溝MZの底面に改質領域11から伸展した亀裂13がライン15に沿って到達するように」とは、例えば後段の工程にてウェハ20をチップ化することを目的に加工が行われていれば、ライン15の一部分で亀裂13が溝MZの底面に到達していない場合も含まれる。
【符号の説明】
【0098】
4…撮像部(内部観察カメラ)、11…改質領域、13,13a,13b,13c…亀裂、15…ライン、20…ウェハ、22a…機能素子、23…ストリート、HM…保護膜、L…レーザ光、MZ…溝(凹部)。
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