(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102479
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/10 20190101AFI20220630BHJP
【FI】
G07D11/10 101
G07D11/10 141Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217227
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓実
【テーマコード(参考)】
3E001
3E141
【Fターム(参考)】
3E001AB05
3E001BA01
3E001CA06
3E001CA09
3E001FA02
3E001FA11
3E001FA24
3E141AA08
3E141GB05
3E141HA06
3E141HA09
3E141LA02
3E141LA11
3E141LA24
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で小型化を図ることができる硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置は、硬貨を積んで収容し、硬貨が入る入口11eが上部に形成され、硬貨が出る出口11fが下部に形成された保留筒11と、出口11fから離れた位置に存在する中心13cから出口11fまでを半径とする円弧上を移動する硬貨載置面13fを有し、硬貨載置面13fが出口11fを塞ぐ位置にあるときに保留筒11の内部の硬貨を支えるシャッタ13と、板状の駆動板15と、駆動板15を回転させるモータと、シャッタ13に取り付けられ、駆動板15の回転に伴って回転することでシャッタ13を移動させる板状の従動板16と、を備え、駆動板15及び従動板16のうち、一方16に板状の面から突き出た突起18p、18qが設けられ、他方15に突起18p、18qが板状の面内に案内される溝15p、15qが形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を積んで収容し、前記硬貨が入る入口が上部に形成され、前記硬貨が出る出口が下部に形成された、保留筒と、
前記出口から離れた位置に存在する中心から前記出口までを半径とする円弧上を移動する硬貨載置面を有し、前記硬貨載置面が前記出口を塞ぐ位置にあるときに前記保留筒の内部の硬貨を支えるシャッタと、
板状の駆動板と、
前記駆動板を回転させるモータと、
前記シャッタに取り付けられ、前記駆動板の回転に伴って回転することで前記シャッタを移動させる板状の従動板と、を備え、
前記駆動板及び前記従動板のうち、一方に板状の面から突き出た突起が設けられ、他方に前記突起が板状の面内に案内される溝が形成された、
硬貨処理装置。
【請求項2】
前記突起が前記従動板の面に設けられていると共に前記溝が前記駆動板に形成されている、
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記駆動板は、
外縁の基本形状が円形であり、
前記溝が、第1の溝と、前記駆動板が回転する中心である駆動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の溝の反対側に存在する第2の溝とを含み、
前記第1の溝と前記第2の溝との間の外縁が、前記基本形状の半径よりも小さい半径の円弧である小円弧に形成されており、
前記従動板は、前記突起が、第1の突起と、前記従動板が回転する中心である従動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の突起の反対側に存在する第2の突起とを含み、
前記駆動板及び前記従動板は、前記シャッタが前記出口を塞ぐ位置のときに前記第1の突起及び前記第2の突起が前記小円弧に接する位置関係で配置されている、
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記第1の溝及び前記第2の溝が直線状に形成されている、
請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記突起が前記駆動板の面に設けられていると共に前記溝が前記従動板に形成されている、
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記駆動板は、
前記突起が、第1の突起と、前記駆動板が回転する中心である駆動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の突起の反対側に存在する第2の突起とを含み、
前記第1の突起が、前記駆動中心を中心とする第1の仮想円弧の上に設けられていると共に、前記第2の突起が、前記駆動中心を中心とする第2の仮想円弧の上に設けられており、
前記従動板は、前記溝が、第1の溝と、前記従動板が回転する中心である従動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の溝の反対側に存在する第2の溝とを含み、
前記駆動板及び前記従動板は、前記第1の溝と前記第2の溝との間の部分が、前記第1の突起と前記第2の突起との間の前記第1の仮想円弧及び前記第2の仮想円弧よりも前記駆動中心の側に突き出る位置関係で配置されている、
請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記駆動板は、前記駆動板の前記駆動中心まわりの回転に伴って前記駆動中心まわりに回転する面接触部材を有し、
前記面接触部材は、前記シャッタが前記出口を塞ぐ位置のときに、前記従動板の前記第1の溝と前記第2の溝との間の部分の外縁に所定の面積で接する、
請求項6に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記駆動板は、前記従動板に重ならない位置で外側に突き出たレバーを有する、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は硬貨処理装置に関し、特に投入された硬貨を一時的に保留する一時保留部を備える硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
循環式の硬貨処理装置は、投入された硬貨を循環させ、払い出す硬貨として用いる装置である。循環式の硬貨処理装置は、駅務機器(自動券売機、自動精算機等)として、あるいは銀行等で広く用いられている。このような硬貨処理装置には、投入された硬貨についての処理の継続中に、その投入された硬貨が払い出し用の硬貨として用いられるのに備えるため、投入された硬貨を当該処理が完了するまで一時的に保留する一時保留部が設けられているものがある。一時保留部の構成として、例えば、保留筒と、シャッタとを備えるものがある。保留筒は、上下に開口部を有する筒状の部材で、一時的に保留する硬貨を内部に収容する。シャッタは、保留筒の下側の開口を塞ぐことができる棒状の部材で、保留筒とは逆側の端部を中心として、保留筒の下部開口を塞ぐ部分の軌跡が円弧を描くように両方向に移動可能になっている。そして、保留筒の下部開口に対して、シャッタが移動する方向に応じて、保留筒に一時保留していた硬貨を、収納側及び返却側のどちらかに落下させることができるようになっている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-122692号公報
【特許文献2】特開2015-75852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャッタを動かす機構として、特許文献1に記載されているものはカムを用いており、特許文献2に記載されているものは伝動ベルトを用いている。特許文献1に記載されているカムは、モータの動力がギヤを介して伝達されて移動することで、カムに固定されたシャッタを移動させることができる。しかし、このカムには特殊な成型が施されているため、製造するための加工作業が煩雑となり、コストアップを招くこととなる。他方、特許文献2に記載されている伝動ベルトを用いる構成は、電動モータとシャッタとの間に距離が必要であり、装置の大型化を招来することとなる。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、簡便な構成で小型化を図ることができる硬貨処理装置を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る硬貨処理装置は、硬貨を積んで収容し、前記硬貨が入る入口が上部に形成され、前記硬貨が出る出口が下部に形成された、保留筒と、前記出口から離れた位置に存在する中心から前記出口までを半径とする円弧上を移動する硬貨載置面を有し、前記硬貨載置面が前記出口を塞ぐ位置にあるときに前記保留筒の内部の硬貨を支えるシャッタと、板状の駆動板と、前記駆動板を回転させるモータと、前記シャッタに取り付けられ、前記駆動板の回転に伴って回転することで前記シャッタを移動させる板状の従動板と、を備え、前記駆動板及び前記従動板のうち、一方に板状の面から突き出た突起が設けられ、他方に前記突起が板状の面内に案内される溝が形成されている。
【0007】
このように構成すると、駆動板及び従動板が板状であり、溝と突起との係わり合いで従動板の回転ひいてはシャッタの移動を規制できるので、簡便な構成で硬貨処理装置の小型化を図ることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第1の態様に係る硬貨処理装置において、前記突起が前記従動板の面に設けられていると共に前記溝が前記駆動板に形成されている。
【0009】
このように構成すると、駆動板の構成を簡素にすることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第2の態様に係る硬貨処理装置において、前記駆動板は、外縁の基本形状が円形であり、前記溝が、第1の溝と、前記駆動板が回転する中心である駆動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の溝の反対側に存在する第2の溝とを含み、前記第1の溝と前記第2の溝との間の外縁が、前記基本形状の半径よりも小さい半径の円弧である小円弧に形成されており、前記従動板は、前記突起が、第1の突起と、前記従動板が回転する中心である従動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の突起の反対側に存在する第2の突起とを含み、前記駆動板及び前記従動板は、前記シャッタが前記出口を塞ぐ位置のときに前記第1の突起及び前記第2の突起が前記小円弧に接する位置関係で配置されている。
【0011】
このように構成すると、シャッタを、出口を塞ぐ位置に対してどちらに移動した場合であってもシャッタの移動を規制することができる。加えて、シャッタが出口を塞ぐ位置のときに第1の突起及び第2の突起が離れた位置で小円弧に接することとなり、シャッタを当該位置に安定して維持することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第3の態様に係る硬貨処理装置において、前記第1の溝及び前記第2の溝が直線状に形成されている。
【0013】
このように構成すると、各溝を簡便に形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第1の態様に係る硬貨処理装置において、前記突起が前記駆動板の面に設けられていると共に前記溝が前記従動板に形成されている。
【0015】
このように構成すると、駆動板を比較的小型にすることができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第4の態様に係る硬貨処理装置において、前記駆動板は、前記突起が、第1の突起と、前記駆動板が回転する中心である駆動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の突起の反対側に存在する第2の突起とを含み、前記第1の突起が、前記駆動中心を中心とする第1の仮想円弧の上に設けられていると共に、前記第2の突起が、前記駆動中心を中心とする第2の仮想円弧の上に設けられており、前記従動板は、前記溝が、第1の溝と、前記従動板が回転する中心である従動中心を通り半径方向に延びる仮想直線を挟んで前記第1の溝の反対側に存在する第2の溝とを含み、前記駆動板及び前記従動板は、前記第1の溝と前記第2の溝との間の部分が、前記第1の突起と前記第2の突起との間の前記第1の仮想円弧及び前記第2の仮想円弧よりも前記駆動中心の側に突き出る位置関係で配置されている。
【0017】
このように構成すると、シャッタを、出口を塞ぐ位置に対してどちらに移動した場合であってもシャッタの移動を規制することができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第6の態様に係る硬貨処理装置において、前記駆動板は、前記駆動板の前記駆動中心まわりの回転に伴って前記駆動中心まわりに回転する面接触部材を有し、前記面接触部材は、前記シャッタが前記出口を塞ぐ位置のときに、前記従動板の前記第1の溝と前記第2の溝との間の部分の外縁に所定の面積で接する。
【0019】
このように構成すると、シャッタが出口を塞ぐ位置から意図せずに移動してしまうことを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る硬貨処理装置は、上記本開示の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つの態様に係る硬貨処理装置において、前記駆動板は、前記従動板に重ならない位置で外側に突き出たレバーを有する。
【0021】
このように構成すると、駆動板に直接アクセスして保留筒の異常に対応することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、駆動板及び従動板が板状であり、溝と突起との係わり合いで従動板の回転ひいてはシャッタの移動を規制できるので、簡便な構成で硬貨処理装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施の形態に係る硬貨処理装置の概略構成図である。
【
図2】一実施の形態に係る硬貨処理装置における一時保留部の正面図である。
【
図4】一時保留部の駆動板及び従動板の概略構成図である。
【
図5】駆動板が反時計回りに回転したときのシャッタの位置関係を示す断面図である。
【
図6】駆動板が時計回りに回転したときのシャッタの位置関係を示す断面図である。
【
図8】変形例に係る駆動板及び従動板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
まず
図1を参照して、一実施の形態に係る硬貨処理装置1を説明する。
図1は、硬貨処理装置1の概略構成図である。硬貨処理装置1は、主要な構成として、投入口2と、繰出部3と、識別部5と、振分部6と、一時保留部10と、収納部31と、出金搬送部35と、出金口39と、制御装置50と、を備えている。本実施の形態に係る硬貨処理装置1は、簡便な構成で小型化を可能にした一時保留部10に特徴があるが、まず、硬貨処理装置1の全体の構成を概説する。
【0026】
投入口2は、硬貨処理装置1で処理される硬貨を受け入れる開口である。投入口2は、種類が同じ又は異なる複数枚の硬貨を一括して投入することができる大きさに形成されている。投入口2の下方には、繰出部3が設けられている。繰出部3は、投入口2から投入された硬貨を受け入れて、受け入れた硬貨を所定の間隔で1枚ずつ繰り出す部位である。繰出部3は、硬貨を繰り出す速度に適合した量の硬貨を収納できる大きさに形成されている。また、繰出部3は、典型的には下部が解放する傾斜型が用いられる。傾斜型の場合、硬貨が複数枚一括投入された際に異物が混入したとしても、下部を開放することで、その異物を除去する等の対応がしやすくなる。繰出部3から繰り出された硬貨は、挿入路4を通って識別部5に導かれる。挿入路4は、変形した硬貨等の不適合な硬貨を排除できるように、開閉可能な扉が設けられていてもよい。
【0027】
識別部5は、硬貨の種類を識別する部位である。識別部5は、繰出部3から送られてきた硬貨が、正規の硬貨か否か(真正か否か)を識別することができると共に、正規の硬貨の種類(典型的には金種)を識別することができるように構成されている。識別部5は、識別した結果を、信号として、制御装置50に出力することができるように構成されている。
【0028】
振分部6は、識別部5から送られてきた硬貨を種類に応じて分ける部位である。振分部6は、収納可能な硬貨以外の硬貨(典型的には真正でない硬貨)を排除する振分爪を有している。振分爪は、典型的にはモータやギヤ等から構成された振分爪駆動機構によって駆動される。また、振分部6は、本実施の形態では、硬貨を外形で振り分けることができるように、対象とする硬貨を通すがその硬貨よりも一回り以上大きい硬貨は通さない振分孔が複数形成された振分板を有している。振分板には、振分爪によって排除されなかった硬貨が到達することになる。振分板に形成された複数の振分孔は、対象とする硬貨の径の小さいものから順に、硬貨が搬送される方向の上流から下流に向けて一列に(直線状に)配列されている。また、振分部6は、各振分孔を通過して振り分けられた硬貨を検知するセンサを有している。このセンサは、対象となる硬貨を計数して、その結果を信号として制御装置50に出力することができるように構成されている。
【0029】
繰出部3、挿入路4、識別部5及び振分部6の下方には、リジェクト返却シュート8が設けられている。リジェクト返却シュート8は、振分部6の振分板に到達しない硬貨を、出金搬送部35に導く通路を形成する部材である。リジェクト返却シュート8は、繰出部3から除去された異物、挿入路4から排除された不適合硬貨、振分部6において振分爪で振り分けられた収納可能硬貨以外の硬貨、のうちのいずれか又はすべてを受け入れることができる形状及び大きさに形成されている。また、リジェクト返却シュート8は、受け入れた異物又は硬貨を、他の部位に乱入させずに出金搬送部35に導くことができように構成されている。
【0030】
一時保留部10は、振分部6の振分板で振り分けられた硬貨を、収納部31に収納する前に一時的に収納する部位である。一時保留部10は、一つの手続きで投入口2から投入された硬貨を一時的に収納して保留し、手続き中に返却が必要になった場合は保留硬貨を返却し、返却の必要がなかった場合は手続き後に保留硬貨を収納部31に導くように構成されている。手続き中に保留硬貨の返却が必要になる場合の例として、手続きの取り消し指示があった場合や、識別部5で識別した情報と振分板での計数とに相違があった場合等が挙げられる。一時保留部10の構成については後述する。
【0031】
収納部31は、振分部6の振分板で振り分けられ、一時保留部10で一時的に収納されていた硬貨を収納する部位である。収納部31に収納される硬貨は循環硬貨である。循環硬貨とは、正規な硬貨であって、硬貨処理装置1に入金された硬貨が釣銭として硬貨処理装置1から出金されるように循環利用される硬貨である。収納部31は、硬貨を収納するホッパカセット32を有している。ホッパカセット32は、振分部6の振分板で振り分けられた複数種類の硬貨を種類ごとに収納できるように、複数が設けられている。複数のホッパカセット32は、カセットトレイ33に載置されている。本実施の形態では、カセットトレイ33を紙面の手前側に引き出すことにより、各ホッパカセット32を引き出すことができるように構成されている。また、収納部31は、各ホッパカセット32に収納されている硬貨を、必要に応じて出金搬送部35に放出することができるように構成されている。
【0032】
出金搬送部35は、硬貨を出金口39に向けて搬送する部位である。出金搬送部35は、本実施の形態では、水平搬送ベルト36と、垂直搬送ベルト37とを有している。水平搬送ベルト36は、リジェクト返却シュート8からの硬貨や異物、一時保留部10から返却された硬貨、収納部31から放出された硬貨を受けることができるように、これらの下方に配置されている。水平搬送ベルト36は、受けた硬貨や異物を、出金口39が設けられた側に向けて主として水平方向に搬送するように構成されている。垂直搬送ベルト37は、水平搬送ベルト36によって出金口39の下方まで搬送されてきた硬貨や異物を、出金口39の高さまで、主として垂直方向に搬送するものである。出金口39は、出金搬送部35によって搬送されてきた硬貨や異物を、硬貨処理装置1の外に放出するための開口である。
【0033】
制御装置50は、硬貨処理装置1を構成する各部の制御を行うものである。制御装置50は、繰出部3、識別部5、振分部6、一時保留部10、収納部31、出金搬送部35のそれぞれに対して有線又は無線で通信可能に接続されている。制御装置50は、投入口2から投入された硬貨が繰出部3に入ったときに、繰出部3を作動させ、繰出部3の硬貨を挿入路4に向けて1枚ずつ送ることができる。また、制御装置50は、識別部5で識別された硬貨の種類についての情報を受信することができる。また、制御装置50は、識別部5から受信した結果に応じて、振分部6の振分爪を作動させることができる。制御装置50は、さらに、振分部6の振分孔を通過した硬貨を計数した結果の情報を受信することができる。また、制御装置50は、一時保留部10を作動させて、一時保留部10に一時的に収納されている硬貨を、収納状態を維持するか、収納部31に導くか、出金搬送部35に導くか、を実行することができる。一時保留部10の動作例については後述する。また、制御装置50は、収納部31の各ホッパカセット32からの硬貨の放出の有無を制御することができる。また、制御装置50は、出金搬送部35の発停を制御して、水平搬送ベルト36に放出された硬貨や異物を出金口39へ搬送することができる。
【0034】
次に
図2~
図4を主として参照して、上述のような概略構成を備える硬貨処理装置1における一時保留部10の構成について説明する。
図2は、一時保留部10の正面図である。
図3は、
図2におけるIII-III断面図である。
図4は、制御装置50からの指令で作動する際に用いられるリンク構造の図である。一時保留部10は、主として、保留筒11と、通路形成部材12と、シャッタ13(
図3参照)と、モータ14と、駆動板15と、従動板16とを有している。なお、
図4に示すリンク構造は、駆動板15と従動板16とが組み合わされているものである。本実施の形態では、保留筒11と、通路形成部材12と、シャッタ13との一式が複数設けられているが、それぞれ同じ構成であるので重複した説明は省略する。
【0035】
保留筒11は、振分部6(
図1参照)の振分板で振り分けられた硬貨を、一時的に収納する部材である。保留筒11は、内部に硬貨を収容することができるように、筒状に形成されている。また、保留筒11は、硬貨を鉛直方向に積んで収容することができるように、筒の軸線が鉛直方向に延びるように配設されている。保留筒11は、上端面に入口11eが形成され、下端面に出口11fが形成されている。入口11eは硬貨が入る開口であり、出口11fは硬貨が出る開口である。保留筒11の断面形状(軸線に直交する断面の形状)は、本実施の形態では四角形に形成されている。保留筒11の断面形状の四角形は、典型的には正方形であるが、長方形でもよく、保留筒11が配置される場所の制約に応じて台形や菱形や多角形としてもよい。あるいは、保留筒11の断面形状は、円形や楕円形であってもよい。保留筒11は、軸線に直交する断面における空間の面積が、収容される硬貨のうちの最大のものを収容することができる大きさに形成されている。本実施の形態では、軸線に直交する断面における空間の面積が、入口11eから出口11fに進むに連れて徐々に大きくなるように形成されている。換言すれば、保留筒11の内部空間は、入口11eから出口11fに向けて末広がりに形成されている。
【0036】
通路形成部材12は、保留筒11の出口11fから出た硬貨を案内する通路を形成する部材である。通路形成部材12は、
図3に示すように、返却通路12rと、収納通路12sと、の2つの通路が形成されている。返却通路12rは、出口11fから出た硬貨を、返却のために出金搬送部35(
図1参照)へ導く通路である。収納通路12sは、出口11fから出た硬貨を収納部31(
図1参照)へ導く通路である。返却通路12rは、出口11fから、水平下向きに延びている。収納通路12sは、出口11fから、返却通路12rが延びる方向とは逆の方向へ、水平下向きに延びている。返却通路12r及び収納通路12sは、それぞれ、シャッタ13が後述するように動いたときにシャッタ13を受け入れることができる大きさに形成されている。通路形成部材12は、本実施の形態では、合成樹脂で保留筒11と一体に成形されている。なお、通路形成部材12及び保留筒11は、金属等、合成樹脂以外の材料で形成されていてもよいが、合成樹脂を採用すると軽量化を図ることができて成形しやすいという利点がある。また、通路形成部材12と保留筒11とは、別体に形成されていてもよいが、合成樹脂で一体に形成することで、製造効率を高めることができる。一体成形された通路形成部材12及び保留筒11は、内部を視認できるように透明であることが好ましい。また、通路形成部材12及び/又は保留筒11は、内部で硬貨詰まりが発生したときに当該硬貨に触れることができるように、硬貨は通過できない大きさの穴が形成されていてもよい。
【0037】
シャッタ13は、保留筒11の出口11fを塞ぐと共に、出口11fから出た硬貨を返却通路12r及び収納通路12sのどちらに導くかを切り換える機能を有する部材である。シャッタ13は、本実施の形態では、
図3に示すように、側面視において、概ね扇形(一つの円弧とその両端を通る二つの半径とで囲まれた図形)に形成されている。正面視(不図示)においては長方形に形成されている。シャッタ13は、扇形の円弧が存在する側の天面が、硬貨載置面13fとなっている。シャッタ13は、硬貨載置面13fの反対側に、回転中心13cがある。回転中心13cは、扇型を形成する二つの半径が交差する位置に存在している。回転中心13cの周囲は、回転中心13cを通る軸を囲むことができる厚さを有している。回転中心13cは、出口11fに対して、返却通路12r及び収納通路12sを挟んだ反対側の、通路形成部材12に設けられている。シャッタ13は、回転中心13cから硬貨載置面13fまでの距離が、側面視(
図3参照)における返却通路12rの幅(収納通路12sの幅も同じ)と実質的に同じになっている。このため、硬貨載置面13fが出口11fの下方にあるときに、出口11fを塞ぎ、保留筒11内に収容されている硬貨の重量を受ける(硬貨を支える)ことができるようになっている。シャッタ13は、硬貨載置面13fが、回転中心13cを中心として、扇型の円弧を延長した仮想円VC上を両方向に移動することができるように構成されている。硬貨載置面13fが移動する方向を移動方向Rということとする。仮想円VCは、出口11fから離れた位置に存在する回転中心13cから出口11fまでを半径とする円弧である。「回転中心13cから出口11fまで」には、シャッタ13が出口11fを塞ぐ位置のときに保留筒11内の硬貨が出口11fから出ない程度の近さで離れていることを含む。硬貨載置面13fは、保留筒11の直下にあるときに出口11fを包含する大きさに形成されている。硬貨載置面13fは、移動方向Rの長さが、同方向の出口11fの幅よりもある程度大きく形成されている(マージンを有する)とよい。マージンを有すると、シャッタ13の移動の位置制御に位置ズレが生じてしまったような場合にも、保留筒11から硬貨が脱落して落下してしまうことを防ぐことができる。シャッタ13は、硬貨載置面13fが出口11fの直下にある状態から、収納通路12sに入り込むように移動すると、保留筒11の内部と返却通路12rとが連絡する(
図5参照)。他方、シャッタ13が返却通路12rに入り込むように移動すると、保留筒11の内部と収納通路12sとが連絡する(
図6参照)。シャッタ13は、通路形成部材12と協働して、通路切換機構を構成する。
【0038】
モータ14は、駆動板15及び従動板16を介してシャッタ13を移動方向Rに移動させるために、駆動板15を回転させるものである。モータ14は、典型的にはDCモータ(直流モータ)が用いられる。モータ14として、DCモータを用いることで、高効率で制御性に優れた駆動力を得ることができる。しかしながら、状況に応じて、ステッピングモータや交流サーボモータを用いてもよい。モータ14は、軸14sの回転の発停及び回転方向が、制御装置50からの指令によって制御されるように構成されている。モータ14は、駆動板15を回転させることができるように、軸14sに駆動板15が取り付けられている。
【0039】
駆動板15は、主としてモータ14の動力を従動板16に伝達する部材である。駆動板15は、
図2に示すように、板状の部材となっている。駆動板15は、本実施の形態では、ステンレス鋼板で形成されており、厚さが0.8mm~1.5mm、好ましくは1.0mm~1.2mmになっている。駆動板15は、板状に形成されていることで、設置スペースが小さくて済み、硬貨処理装置1の小型化に寄与することとなる。駆動板15は、使用条件に応じて他の材質を用いることができ、採用する材質に応じて厚さを適宜変更することができる。駆動板15の材質として、めっき鋼板や合成樹脂板を用いてもよい。駆動板15の厚さは、設置スペースを確保できる範囲であれば制限はないが、小型化を図る観点から5mm以下や3mm以下とするのが好ましく、剛性を確保する観点から0.6mm以上とするのが好ましい。
【0040】
駆動板15は、
図4に示すように、外縁の基本形状が円形に形成されている。ここでいう基本形状が円形とは、細部には異なる点があるものの全体として見ると概ね円形と見ることができることを意味している。駆動板15は、基本形状の円形の中心に、モータ14の軸14sが、ボス15Bを介して固定されている。以下、駆動板15の基本形状の円形の中心を「駆動中心15c」という場合がある。駆動板15には、第1溝15pと、第2溝15qとが形成されている。第1溝15p及び第2溝15qは、本実施の形態では、共に、直線状に形成されていて、仮想直線VDと平行に延びている。仮想直線VDは、駆動中心15cを通り半径方向に延びる任意の一つの仮想の直線である。第1溝15p及び第2溝15qは、仮想直線VDに平行であるから、駆動中心15cを通らない。第1溝15p及び第2溝15qは、本実施の形態では、両者の中間に仮想直線VDが通る位置に設けられている。第1溝15p及び第2溝15qは、直線状に形成されていることで、加工が簡便となり、生産効率を向上させることができる。第1溝15p及び第2溝15qは、それぞれ、一端が基本形状の円形の中ほどにあり、他端が外縁に達している。駆動板15は、基本形状の円形の、第1溝15pと第2溝15qとの間の外縁を形成する円弧の半径が、他の部分の外縁を形成する円弧の半径よりも、小さくなっている。以下、第1溝15pと第2溝15qとの間の外縁を形成する円弧を「小円弧15a」ということとする。小円弧15aの半径は、典型的には、他の部分の円弧の半径よりも、第1溝15p及び第2溝15qの幅と同程度の分だけ小さくなっている。別の観点から目安を示せば、小円弧15aの半径は、他の部分の円弧の半径の0.7~0.8倍であってもよい。駆動板15は、駆動中心15cを挟んで小円弧15aの反対側の外縁に、レバー15rが設けられている。レバー15rは、典型的には駆動板15の外縁から外側に突き出ている。レバー15rが設けられていることで、保守などにおいてシャッタ13を移動させる必要があるときに、シャッタ13を手動で操作することが可能になる。
【0041】
従動板16は、駆動板15の回転に伴って回転することでシャッタ13を移動させる部材である。従動板16は、従動軸16sを介して、シャッタ13に接続されている。従動板16は、
図2に示すように、板状の部材となっている。従動板16は、本実施の形態では、ステンレス鋼板で形成されており、厚さが0.8mm~1.5mm、好ましくは1.0mm~1.2mmになっている。従動板16は、板状に形成されていることで、設置スペースが小さくて済み、硬貨処理装置1の小型化に寄与することとなる。従動板16は、使用条件に応じて他の材質を用いることができ、採用する材質に応じて厚さを適宜変更することができる。従動板16の材質として、めっき鋼板や合成樹脂板を用いてもよい。従動板16の厚さは、設置スペースを確保できる範囲であれば制限はないが、小型化を図る観点から5mm以下や3mm以下とするのが好ましく、剛性を確保する観点から0.6mm以上とするのが好ましい。
【0042】
従動板16は、
図4に示すように、外縁が円形に形成されている。従動板16は、円形の中心に、従動軸16sが、ボスを介して固定されている。従動板16の、従動軸16sの軸線が貫通する位置を、以下「従動中心16c」ということとする。従動軸16sには、また、シャッタ13が固定されている(
図3参照)。従動軸16sは、その軸線が、シャッタ13の回転中心13cを貫くように延びている。前述のように、本実施の形態では、保留筒11、通路形成部材12、シャッタ13の一式が複数設けられており、
図2に示すように、一本の従動軸16sには複数のシャッタ13が固定されている。従動板16は、その一部が駆動板15に重なる位置に配設されている。本実施の形態では、従動板16は、従動中心16cが仮想直線VD上に位置し、基準位置のときに従動軸16sが小円弧15aの外側(典型的には小円弧15aの近傍の外側)となる位置に設けられている。基準位置は、シャッタ13の硬貨載置面13fが保留筒11の出口11fと塞いでいるときの各部の位置である。
【0043】
従動板16の面には、
図4に示すように第1ローラ18pと、第2ローラ18qとが設けられている。第1ローラ18p及び第2ローラ18qは、従動板16の面から突き出ており、それぞれ、第1の突起及び第2の突起に相当する。第1ローラ18p及び第2ローラ18qは、従動板16が基準位置にある状態で、両者の中間に仮想直線VDが通り、それぞれが小円弧15aに接する位置に設けられている。第1ローラ18p及び第2ローラ18qは、それぞれ、従動板16の面に垂直な軸線まわりに回転することができる態様で、従動板16に設けられている。前述した駆動板15の小円弧15aの半径は、典型的には、第1ローラ18pの直径(第2ローラ18qの直径も同様)分だけ、他の部分の円弧の半径よりも小さくしてもよい。また、第1溝15p及び第2溝15qは、それぞれ、第1ローラ18p及び第2ローラ18qが、溝内を円滑に移動しつつ極力遊びが少なくなる幅に形成されているとよい。このように構成された従動板16は、基準位置にあるときに(
図4参照)、第1ローラ18p及び第2ローラ18qが小円弧15aに接しているので、シャッタ13が外力によって移動することを阻止することができる(デッドロック)。この状態から、駆動板15が反時計回りに回転すると、第1溝15pに第1ローラ18pが捕捉され、さらに駆動板15が反時計回りに回転するにつれて第1ローラ18pが第1溝15pの奥深くに入り込んで行くことに伴い、従動板16が時計回りに回転する。この状態を
図5に示す。他方、基準位置から駆動板15が時計回り回転すると、第2溝15qに第2ローラ18qが捕捉され、その後第2ローラ18qが第2溝15qの奥深くに入り込んで行くことに伴い、従動板16が反時計回りに回転する。この状態を
図6に示す。このような従動板16の回転に伴い、従動軸16sを介して従動板16に接続されている複数のシャッタ13は、従動板16と同方向に同時に回転する。なお、
図5及び
図6において、駆動板15及び従動板16とシャッタ13との位置関係を示すために、本来断面には表れない駆動板15及び従動板16を破線で示している。
【0044】
図7及び
図2に示すように、一時保留部10は、上記の構成のほか、シャッタ13の位置を検知する位置センサ20を備えていてもよい。位置センサ20は、検知片21と、3つの検知センサ22a、22b、22cとを有している。位置センサ20は、検知センサ22で出射した光が、透光するか、検知片21に遮光されるかによって、対象物の位置を検知することができるように構成されている。検知片21は、扇型に形成された薄板状の小片である。検知片21は、扇型の中心が従動軸16sに取り付けられており、従動軸16sの回転に伴って、扇型の円弧の部分が回転移動するようになっている。3つの検知センサ22a、22b、22cは、以下の位置に配置されている。シャッタ13が基準位置のときは、検知センサ22aが遮光となり、検知センサ22b、22cが透光となる。シャッタ13が収納通路12sに入ったとき(
図5参照)は、検知センサ22bが遮光となり、検知センサ22a、22cが透光となる。シャッタ13が返却通路12rに入ったとき(
図6参照)は、検知センサ22cが遮光となり、検知センサ22a、22bが透光となる。
【0045】
引き続き
図1を主として参照し、一時保留部10の構成に言及しているときは適宜
図2~
図7を参照して、硬貨処理装置1の作用を説明する。硬貨処理装置1は、通常、一時保留部10におけるシャッタ13が基準位置(保留筒11の出口11fをシャッタ13の硬貨載置面13fで塞ぐ位置)にある。このとき、
図4に示すように、駆動板15の小円弧15aの、第1溝15p及び第2溝15qに近接する部位と、従動板16に取り付けられている第1ローラ18p及び第2ローラ18qとが、デッドロック部となる。
【0046】
硬貨処理装置1は、作動中、投入口2からの硬貨の投入を待機している。投入口2から硬貨処理装置内1に1枚又は複数の硬貨が投入されると、投入された硬貨は、繰出部3に収納される。繰出部3に収納された硬貨は、1枚ずつ分離され、挿入路4へ1枚ずつ搬送される。投入口2に一括投入された硬貨の中に異物(所定以上の変形硬貨などを含む)が含まれていた場合、当該異物は挿入路4に搬送されずに繰出部3に残留する。繰出部3に残留した異物は、例えば下部に設けられている開閉可能な扉を適時に開放することにより、リジェクト返却シュート8に落下する。操出部3から繰り出されて挿入路4を通過しようした硬貨の中に、挿入路4を通過できない程度の変形硬貨等が含まれていた場合、開閉可能な扉を開けて変形硬貨等を取り出すとよい。変形硬貨等は、典型的には人手で取り出せばよいが、うまく排除できなかった場合はリジェクト返却シュート8に落下する。繰出部3からリジェクト返却シュート8に落下した異物、あるいは挿入路4からリジェクト返却シュート8に落下した変形硬貨等は、その後水平搬送ベルト36に落下し、出金搬送部35により搬送されて出金口39に放出される。
【0047】
挿入路4を通過した硬貨は、識別部5に搬送される。硬貨が識別部5を通過する際、識別部5は、硬貨の種類を識別し、識別した結果を制御装置50に送信する。識別部5で識別された硬貨が真正であるとみなされなかった場合、制御装置50は、当該硬貨が振分部6に到達したときに振分爪を作動させて、当該硬貨をリジェクト返却シュート8に落下させる。リジェクト返却シュート8に入った硬貨は、水平搬送ベルト36に落下し、出金搬送部35により搬送されて出金口39に放出される。他方、識別部5で識別された硬貨が真正であるとみなされた場合、振分部6に入った硬貨は振分爪に排除されず、振分板に至る。振分板に到達した硬貨は、該当する振分孔を通過し、センサで計数されて、種類ごとに一時保留部10に入る。このとき、一時保留部10は、シャッタ13が基準位置にあるので、入口11eから保留筒11に入った硬貨は、出口11fから流出せずにシャッタ13の硬貨載置面13f上に載置され、保留筒11内に積み上がる。
【0048】
硬貨処理装置1は、投入された硬貨の合計金額と取引金額とを制御装置50で比較し、釣銭(出金)が不要の場合は、硬貨を保留筒11に収納したまま、次の利用者による入金を待機する。他方、硬貨を投入した利用者の継続操作において返却操作がなされたときは、制御装置50は、
図4に示された状態の駆動板15が反時計回りに回転するようにモータ14を作動させる。駆動板15が反時計回りに回転すると、第1溝15pが従動板16の第1ローラ18pを捕捉し、さらに駆動板15が回転するにつれて第1ローラ18pが第1溝15pの奥深くに侵入して行き、これに伴って従動板16が時計回りに回転する。従動板16が時計回りに回転すると、従動板16に従動軸16sを介して接続されているシャッタ13が従動板16に同期して移動し、収納通路12sに入り込む。シャッタ13が収納通路12sに完全に入り込んで、位置センサ20における検知センサ22bが遮光かつ検知センサ22a、22cが透光となったら、制御装置50は、モータ14の作動を停止する。シャッタ13が収納通路12sに入り込むと、
図5に示すように、保留筒11の出口11fが開放され、保留筒11と返却通路12rとが連絡する。これにより、保留筒11内に収納されていた硬貨が出口11fから流出し、返却通路12rを通過して水平搬送ベルト36に至る。制御装置50は、返却操作がなされた際に出金搬送部35を起動しており、水平搬送ベルト36に到達した硬貨は、水平搬送ベルト36を経て、出金口39に放出される。
【0049】
シャッタ13が基準位置にあり、硬貨を保留筒11に収納したまま、次の利用者による入金を待機している状態で、硬貨を入金した利用者の操作が終了して次の利用者による投入口への硬貨の投入が行われた場合は、以下のようになる。次の利用者による入金を待機している状態で、硬貨を入金した利用者の操作が終了して次の利用者による投入口への硬貨の投入が行われると、制御装置50は、
図4に示された状態の駆動板15が時計回りに回転するようにモータ14を作動させる。駆動板15が時計回りに回転すると、第2溝15qが従動板16の第2ローラ18qを捕捉し、さらに駆動板15が回転するにつれて第2ローラ18qが第2溝15qの奥深くに侵入して行き、これに伴って従動板16が反時計回りに回転する。従動板16が反時計回りに回転すると、シャッタ13が従動板16に同期して移動し、返却通路12rに入り込む。シャッタ13が返却通路12rに完全に入り込んで、位置センサ20における検知センサ22cが遮光かつ検知センサ22a、22bが透光となったら、制御装置50は、モータ14の作動を停止する。シャッタ13が返却通路12rに入り込むと、
図6に示すように、保留筒11の出口11fが開放され、保留筒11と収納通路12sとが連絡する。これにより、保留筒11内に収納されていた硬貨が出口11fから流出し、収納通路12sを通過して収納部31の各ホッパカセット32に種類ごとに入る。
【0050】
少し戻って、投入された硬貨の合計金額と取引金額とを制御装置50が比較し、釣銭(出金)がある場合は、出金動作に移行する。出金動作が行われることになったら、制御装置50は、出金搬送部35の水平搬送ベルト36及び垂直搬送ベルト37を動かし、収納部31から出金分の硬貨を放出させ、出金口39に移動させる。釣銭を出金口39に放出したら、再び投入口2からの硬貨の投入を待機している状態に戻り、以降、上述の作用を繰り返す。
【0051】
なお、保留筒11に硬貨が収納される際、硬貨の面が上下方向に向かない立ち状態になったり、噛み込み状態になったりして、硬貨が保留筒11に詰まってしまうような異常が発生する場合がある。異常が発生すると、硬貨処理装置1が停止し、硬貨の詰まりを取り除く等のメンテナンスを行うこととなる。メンテナンスの際には駆動板15のレバー15rを利用して、駆動板15を動かすことで、保留筒11に残留していた硬貨を返却通路12r又は収納通路12sに導くことができる。メンテナンス後のリセット操作などにより、位置センサ20からの信号出力を制御装置50が確認した後、制御装置50は、シャッタ13を基準位置に移動させる。
【0052】
以上で説明したように、本実施の形態に係る硬貨処理装置1によれば、駆動板15及び従動板16が板状に形成されているので、一時保留部10の小型化を図ることができ、ひいては硬貨処理装置1の小型化を図ることができる。また、駆動板15に直線状の第1溝15p及び第2溝15qを形成し、この溝に入り込む第1ローラ18p及び第2ローラ18qを従動板16に設けることでリンク機構を構成しているため、製造が簡便になり、製造効率を高めることができる。
【0053】
次に
図8を参照して、駆動板及び従動板の変形例を説明する。変形例に係る駆動板115及び従動板116は、駆動板15及び従動板16(
図4参照)と比較して、溝の形成とローラの設置との位置関係が逆になっている点が主として異なっている。つまり、駆動板115には、第1ローラ118p及び第2ローラ118qが設けられている。従動板116には、第1溝116p及び第2溝116qが形成されている。本変形例に係る駆動板115及び従動板116は、硬貨処理装置1(
図1参照)の一時保留部10(
図2参照)における駆動板15及び従動板16(
図4参照)を代替する部材であり、シャッタ13や保留筒11等の一時保留部10の他の部材と協働して機能する。したがって、以下の変形例に係る駆動板115及び従動板116説明において、一時保留部10の他の部材に言及しているときは、該当する図を適宜参照することとする。
【0054】
駆動板115は、板状の部材であり、その材質及び厚さを駆動板15(
図4参照)と同様に決定することができる。駆動板115は、外縁の基本形状が円形に形成されている。駆動板115は、基本形状の円形の中心に、モータ14の軸14sが、ボス115Bを介して固定されている。ボス115Bは、外縁を形成する円周の一部に、半径方向外側に突き出た凸部115tが設けられている。凸部115tは、仮想直線VD上に設けられている。仮想直線VDは、駆動中心115cを通り半径方向に延びる任意の一つの仮想の直線である。駆動板115の面には、第1ローラ118pと、第2ローラ118qとが設けられている。第1ローラ118p及び第2ローラ118qは、駆動板115の面から突き出ており、それぞれ、第1の突起及び第2の突起に相当する。第1ローラ118p及び第2ローラ118qは、間に仮想直線VDを挟む位置に設けられている。第1ローラ118p及び第2ローラ118qは、本変形例では、基準位置において、両者を結ぶ仮想線分(不図示)の中点を仮想直線VDが通る位置に設けられている。しかしながら、シャッタ13の移動量の設計に応じて、仮想直線VDから第1ローラ118pまでの距離と仮想直線VDから第2ローラ118qまでの距離とが異なっていてもよい。
【0055】
第1ローラ118pは、第1仮想円弧VPの上に設けられている。第2ローラ118qは、第2仮想円弧VQの上に設けられている。第1仮想円弧VP及び第2仮想円弧VQは、共に、駆動中心115cを中心とし、駆動板115の外縁よりも半径が小さく、駆動中心115cから凸部115tの先端までの距離よりも半径が大きい、仮想の円弧である。第1仮想円弧VP及び第2仮想円弧VQは、本変形例では同じ半径となっているため、1つの仮想円弧に一体化することができる。しかしながら、設計によっては、第1仮想円弧VPと第2仮想円弧VQとが異なる半径を有していてもよい。第1ローラ118p及び第2ローラ118qは、それぞれ、駆動板115の面に垂直な軸線まわりに回転することができる態様で、駆動板115に設けられている。また、駆動板115は、レバー115rが設けられている。レバー115rは、保守などにおいてシャッタ13を移動させる必要があるときにシャッタ13を手動で操作することが可能になることを考慮して、適当な位置に設ければよい。
【0056】
従動板116は、板状の部材であり、その材質及び厚さを従動板16(
図4参照)と同様に決定することができる。従動板116は、外縁の基本形状が円形に形成されている。従動板116は、従動板16(
図4参照)と同様に、従動軸16sを介して、シャッタ13に接続されている。従動板116と従動軸16sとは、ボスを介して固定されている。従動板116は、従動中心116cが仮想直線VD上に存在する位置に配設されている。従動板116には、第1溝116pと、第2溝116qとが形成されている。第1溝116p及び第2溝116qは、仮想直線VDに沿って延びている。第1溝116p及び第2溝116qは、基準位置において、両者の中間に仮想直線VDが通る位置に設けられている。第1溝116p及び第2溝116qは、それぞれ、一端が基本形状の円形の中ほどにあり、他端が外縁に達している。また、第1溝116p及び第2溝116qは、それぞれ、第1ローラ118p及び第2ローラ118qが、溝内に入り込むことができつつ極力遊びが少なくなる幅に形成されているとよい。また、第1溝116p及び第2溝116qの深さは、意図する従動板116の移動度合いを勘案して、適当に決定すればよい。
【0057】
従動板116の、第1溝116pと第2溝116qとの間の部分を、溝間部116tということとする。従動板116は、溝間部116tの先端(溝間部116tにおける基本形状の円形の外縁部分)が、第1仮想円弧VP及び第2仮想円弧VQよりも駆動中心115cの側に突き出る位置関係で、従動板116の一部が駆動板115に重なる位置に配設されている。また、従動板116は、基準位置にあるときに、基本形状の円形の外縁に達している第1溝116pの部分が、第1仮想円弧VP上にあるように構成されている。同様に、従動板116は、基準位置にあるときに、基本形状の円形の外縁に達している第2溝116qの部分が、第2仮想円弧VQ上にあるように構成されている。また、従動板116は、基準位置にあるときに、溝間部116tの先端が、駆動板115の凸部115tの先端に、所定の面積で接している。ここでの所定の面積は、凸部115tの先端が溝間部116tの先端に接していることで、シャッタ13が外力によって移動することを阻止することができるデッドロック部を構成することができる面積である。溝間部116tの先端に所定の面積で接する駆動板115の凸部115tは、面接触部材に相当する。
【0058】
上述のように構成された、本変形例に係る駆動板115及び従動板116は、基準位置にある状態から、駆動板115が反時計回りに回転すると、第1ローラ118pが第1溝116pに入る。第1溝116pに入った第1ローラ118pは、溝間部116tの側壁(第1溝116pとの境界部分である溝間部116tの部分)に当たり、その後溝間部116tを押す。第1ローラ118pによって溝間部116tが押された従動板116は、時計回りに回転する。この従動板116の時計回りの回転に同期して、シャッタ13が移動し、収納通路12sに入り込む。シャッタ13が収納通路12sに完全に入り込んで、位置センサ20における検知センサ22bが遮光かつ検知センサ22a、22cが透光となったら、制御装置50によって、駆動板115の反時計回りの回転が停止する。シャッタ13が収納通路12sに入り込むと、保留筒11と返却通路12rとが連絡する。他方、駆動板115及び従動板116が基準位置にある状態から、駆動板115が時計回りに回転すると、第2ローラ118qが第2溝116qに入る。第2溝116qに入った第2ローラ118qは、溝間部116tの側壁に当たり、その後溝間部116tを押す。第2ローラ118qによって溝間部116tが押された従動板116は、反時計回りに回転する。この従動板116の反時計回りの回転に同期して、シャッタ13が移動し、返却通路12rに入り込む。シャッタ13が返却通路12rに完全に入り込んで、位置センサ20における検知センサ22cが遮光かつ検知センサ22a、22bが透光となったら、制御装置50によって、駆動板115の時計回りの回転が停止する。シャッタ13が返却通路12rに入り込むと、保留筒11と収納通路12sとが連絡する。
【0059】
このように、本変形例に係る駆動板115及び従動板116は、駆動板15及び従動板16(
図4参照)の代替となって、一時保留部10を適切に作動させることができる。本変形例に係る駆動板115及び従動板116においても、両者が板状に形成されているので一時保留部10の小型化を図ることができ、ひいては硬貨処理装置1の小型化を図ることができる。また、駆動板115に第1ローラ118p及び第2ローラ118qを設け、これらのローラが入り込む第1溝116p及び第2溝116qを従動板116に形成することでリンク機構を構成しているため、製造が簡便になり、製造効率を高めることができる。また、駆動板115には、第1ローラ118p及び第2ローラ118qを設けて、溝を形成していないので、駆動板15(
図4参照)に比べて駆動板115を小型にすることができる。なお、
図4に示す駆動板15及び従動板16の構成は、基準位置において小円弧15aに接する第1ローラ18pと第2ローラ18qとの距離を比較的大きく取ることができるため、デッドロックの性能を向上させることができるという利点がある。
【0060】
以上の説明では、
図4に示す駆動板15の第1溝15p及び第2溝15qが直線状に形成されていることとしたが、シャッタ13の移動態様の設計に応じて、円弧状や楕円弧状等の曲線状に形成されていてもよい。しかしながら、第1溝15p及び第2溝15qが直線状に形成されていると、加工が簡便になるという利点がある。
【0061】
以上の説明では、駆動板15、115の外縁の基本形状が、円形に形成されていることとしたが、円形以外の形状(例えば、矩形、六角形や八角形等の正多角形)に形成されていてもよい。しかしながら、円形に形成されていると、回転したときに必要となるスペースが最小となるため、好ましい。また、従動板16、116についても、外縁の基本形状は、円形以外の形状でもよいが、駆動板15、115と同様の理由から、円形に形成されていることが好ましい。
【0062】
以上の説明では、レバー15rが、駆動板15の駆動中心15cを挟んで小円弧15aの反対側に設けられていることとしたが、この位置に限らず、従動板16に重ならない位置で操作できる位置に設けられていればよい。また、レバー15r、115rは任意の構成であり、レバー15r、115rを設けなくても保守などにおいてシャッタ13を移動させることができる場合は、レバー15r、115rを省略することができる。
【0063】
以上の説明では、駆動中心15cを通る仮想直線と従動中心16cを通る仮想直線とが共通の仮想直線VDであるとしたが、それぞれ別の角度で延びる(一致しない)仮想直線であってもよい。駆動中心115cを通る仮想直線及び従動中心116cを通る仮想直線についても同様である。
【符号の説明】
【0064】
1 硬貨処理装置
11 保留筒
11e 入口
11f 出口
13 シャッタ
13c 回転中心
13f 硬貨載置面
14 モータ
15 駆動板
15a 小円弧
15c 駆動中心
15p 第1溝(第1の溝)
15q 第2溝(第2の溝)
15r レバー
16 従動板
16c 従動中心
18p 第1ローラ(第1の突起)
18q 第2ローラ(第2の突起)
115 駆動板
115c 駆動中心
115r レバー
116 従動板
116c 従動中心
116p 第1溝(第1の溝)
116q 第2溝(第2の溝)
118p 第1ローラ(第1の突起)
118q 第2ローラ(第2の突起)
VC 仮想円
VD 仮想直線
VP 第1仮想円弧(第1の仮想円弧)
VQ 第2仮想円弧(第2の仮想円弧)