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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102528
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220630BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217318
(22)【出願日】2020-12-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】亀田 正人
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】飛沫拡散を抑制しつつ、自然なブレス及び発声を行いやすいマスクを提供する。
【解決手段】使用者が装着するマスクは、マスク本体と、維持部と、形状保持部と、を備える。マスク本体は、使用者の鼻及び口元周辺を覆う顔面部と、顔面部の下方側において首元周辺を覆うドレープ状のドレープ部と、を有する。維持部は、使用者が当該マスクを装着した装着状態を維持する。形状保持部は、装着状態において、マスク本体の口元周辺の部分を使用者の口元から押し出すようにして、使用者の口元周辺とマスク本体との間に空間を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が装着するマスクであって、
前記使用者の鼻及び口元周辺を覆う顔面部と、前記顔面部の下方側において首元周辺を覆うドレープ状のドレープ部と、を有するマスク本体と、
前記使用者が当該マスクを装着した装着状態を維持する維持部と、
前記装着状態において、前記マスク本体の口元周辺の部分を前記使用者の口元から押し出すようにして、前記使用者の口元周辺と前記マスク本体との間に空間を形成する形状保持部と、
を備える、マスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクであって、
前記形状保持部は、前記顔面部の上方側の左右方向における中央に左右方向に沿って配置される第1形状保持部と、前記顔面部における前記第1形状保持部の下方側に上下方向に沿って配置される少なくとも1つの第2形状保持部と、を有する、マスク。
【請求項3】
請求項2に記載のマスクであって、
前記少なくとも1つの第2形状保持部は、前記顔面部を左右方向に2つ折りにした場合の中心線を境に2つ並んで配置される、マスク。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のマスクであって、
前記少なくとも1つの第2形状保持部の上下方向における長さは、前記顔面部の上下方向における長さよりも短い、マスク。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のマスクであって、
前記第1形状保持部は、前記顔面部の当該第1形状保持部を有する部分を、前記顔面部の前記使用者の顔面側に折り返したときに、前記少なくとも1つの第2形状保持部と重なる、マスク。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のマスクであって、
前記第1形状保持部は、前記少なくとも1つの第2形状保持部よりも前記使用者の顔面側に位置するように、前記少なくとも1つの第2形状保持部と重なる、マスク。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のマスクであって、
前記形状保持部は、板状である、マスク。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のマスクであって、
当該マスクは、発声用として用いられる、マスク。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のマスクであって、
前記顔面部は、下方側の左右方向の長さが上方側の左右方向の長さよりも長くなるように、当該顔面部の左右方向における両側端部が下方側に向かって広がる形状を有する、マスク。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のマスクであって、
前記維持部は、紐状の紐状部を有し、
前記顔面部は、前記紐状部が挿入される筒状の挿入部と、前記紐状部を前記挿入部に挿入する挿入口である孔と、を有し、
前記挿入部は、前記顔面部の左右方向における両側端部に設けられ、
前記孔は、前記挿入部の下方側の端部であって、前記顔面部における前記使用者の顔面側とは反対側の面に設けられる、マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ファッション性を高めるために、マスクとは別にマスクの上に装着するスカーフマスクカバーが開示されている。このスカーフマスクカバーは、当該カバーの上方側の中央に左右方向に延びるワイヤを有し、下側が大きく開放するように形成されている。
【0003】
また、特許文献2には、個人の顔の形状や目的に応じてより自由に変形、調整可能に、上下方向に沿って設けられる形状保持部材と、左右方向に沿って設けられる第2の形状保持部材と、を有するマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登実第3139644号公報
【特許文献2】特開2006-333972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、人から人への飛沫感染による感染力が高いウイルス等が蔓延する中、飛沫拡散を予防しつつ、安全に例えば歌唱等の発声を行えることが求められている。
しかしながら、上述したスカーフマスクカバー及びマスクは、ファッション性の向上及び飛沫拡散の予防において装着時の形状の調整を目的としており、歌唱等の発声を行うことが十分に考慮されていない。このため、スカーフマスク及びマスクを装着した状態で口を大きく動かして歌唱等の発声を行うと、当該スカーフマスク及びマスクがずれてしまったり、息苦しかったりして、自然なブレス及び発声が難しいという課題がある。
【0006】
本開示の一局面は、飛沫拡散を抑制しつつ、自然なブレス及び発声を行いやすいマスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、使用者が装着するマスクであって、マスク本体と、維持部と、形状保持部と、を備える。マスク本体は、使用者の鼻及び口元周辺を覆う顔面部と、顔面部の下方側において首元周辺を覆うドレープ状のドレープ部と、を有する。維持部は、使用者が当該マスクを装着した装着状態を維持する。形状保持部は、装着状態において、マスク本体の口元周辺の部分を使用者の口元から押し出すようにして、使用者の口元周辺とマスク本体との間に空間を形成する。
【0008】
このような構成では、使用者がマスクを装着した装着状態において、形状保持部によって、マスク本体と使用者の口との間に空間が確保されつつ、ドレープ部によって、口元よりも下方側の領域が広く覆われる。これにより、歌唱等の発声を行ったとしても、口元周辺に空間が形成されるため、口元にマスク本体が引っ付きにくく、息苦しさを緩和することができる。また、歌唱等の発声により使用者の飛沫が飛んだとしても、口元周辺及び首元周辺の広い範囲がマスク本体によって覆われているため、マスク下方向への飛沫拡散を抑制することができる。また、ドレープ部は、首元周辺まで長さを有するようにドレープ状にゆったりとした設計である。このため、顎周辺がフリーな状態となることから、マスクを装着した装着状態で使用者が口を大きく動かしても、当該マスクがずれてしまうことが起こりにくい。したがって、飛沫拡散を抑制しつつ、自然なブレス及び発声を行いやすくすることができる。
【0009】
本開示の一態様では、形状保持部は、第1形状保持部と、少なくとも1つの第2形状保持部と、を有してもよい。第1形状保持部は、顔面部の上方側の左右方向における中央に左右方向に沿って配置される。少なくとも1つの第2形状保持部は、顔面部における第1形状保持部の下方側に上下方向に沿って配置される。このような構成によれば、第1形状保持部によってマスク本体を使用者の鼻の形状に沿わせやすくすることができる。また、マスク本体における使用者の顔面と対向する側の面である裏面とは反対側の面である表面側に向かって第2形状保持部を屈曲させた場合、使用者がマスクを装着した装着状態において、口元周辺に空間を形成しやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの第2形状保持部は、顔面部を左右方向に2つ折りにした場合の中心線を境に2つ並んで配置されてもよい。このような構成によれば、例えば第2形状保持部が1つの場合と比較して、強度を上げることができる。また、第2形状保持部に左右方向の幅を持たせることができる。このため、第2形状保持部を屈曲させた場合、その屈曲された形状を維持しやすくすることができる。したがって、使用者がマスクを装着した装着状態で口元周辺に形成される空間を維持しやすくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、少なくとも1つの第2形状保持部の上下方向における長さは、顔面部の上下方向における長さよりも短くてもよい。このような構成によれば、使用者のマスクの装着状態において、顎に第2形状保持部が当たりにくいため、第2形状保持部が発声時の邪魔になりにくくすることができる。また、マスク本体が装着時に後ろに引っ張られた場合にも、第2形状保持部が長すぎることによりマスク本体と共に後ろに引っ張られることで生じやすい形状の崩れが起こりにくい。その結果、第2形状保持部によって口元周辺に形成された空間が狭まったり、第2形状保持部が使用者の口元に当たって不快感を生じさせることを抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様では、第1形状保持部は、顔面部の当該第1形状保持部を有する部分を、顔面部の使用者の顔面側に折り返したときに、少なくとも1つの第2形状保持部と重なってもよい。このような構成では、第1形状保持部によって第2形状保持部がマスク本体における裏面側から保持される。このため、第2形状保持部が第1形状保持部によって使用者の顔面側に下がりにくくすることができる。その結果、第2形状保持部を屈曲させて口元周辺に空間を形成した場合、その屈曲された形状が維持されやすいため、当該空間を潰れにくくすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、第1形状保持部は、少なくとも1つの第2形状保持部よりも使用者の顔面側に位置するように、少なくとも1つの第2形状保持部と重なってもよい。
本開示の一態様では、形状保持部は、板状であってもよい。このような構成によれば、形状保持部(具体的には、第1形状保持部及び第2形状保持部)が板状であるため、マスク本体に形成された形状保持部を収納する空間に形状保持部が収納された状態で、例えば形状保持部が棒状の場合と比較して、当該空間内での形状保持部の回転等の動きが抑制される。その結果、形状保持部を屈曲させた場合、その屈曲された形状を維持しやすくすることができる。
【0014】
本開示の一態様では、当該マスクは、発声用として用いられてもよい。このような構成によれば、例えば、歌唱等の発声を行う場合に用いることができる。
本開示の一態様では、顔面部は、下方側の左右方向の長さが上方側の左右方向の長さよりも長くなるように、当該顔面部の左右方向における両側端部が下方側に向かって広がる形状を有してもよい。このような構成では、使用者の口元周辺をより後方まで覆うことが可能である。このように、顔面部が顔と密着した状態で使用者の口元周辺が広い範囲で顔面部によって覆われるため、飛沫拡散を抑制しやすくすることができる。また、マスクの装着時に、顔面部の下方側を使用者の顔の後方側に引っ張った場合にも、当該下方側の左右方向の長さが長いため、使用者の口元周辺と顔面部との間にゆとりを持って空間が形成されやすく、形状保持部により形成される口元周辺の空間を潰れにくくすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、維持部は、紐状の紐状部を有してもよい。顔面部は、挿入部と、孔と、を有してもよい。挿入部は、紐状部が挿入される筒状である。孔は、紐状部を挿入部に挿入する挿入口である。挿入部は、顔面部の左右方向における両側端部に設けられてもよい。孔は、挿入部の下方側の端部であって、顔面部における使用者の顔面側とは反対側の面に設けられてもよい。このような構成によれば、例えば、顔面部における使用者の顔面側に孔が設けられる構成と比較して、孔周辺のマスクの一部を顔に密着させやすくすることができる。その結果、飛沫拡散の予防の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】マスクを使用者が装着した装着状態を示す図である。
図2】マスクを表面側から見た正面図である。
図3】マスクを裏面側から見た背面図である。
図4】第1形状保持部の裏面側への折り曲げ状態を模式的に示す側面図である。
図5】第1形状保持部及び第2形状保持部により口元周辺の空間を形成した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示すマスク100は、使用者の鼻及び口元周辺を覆うように使用者が装着した装着状態において、使用者の口元よりも下方側に向かって長さを有する。マスク100は、例えば、口元から飛沫が飛散しやすい、歌唱等の発声用として用いられることが好ましい。ここで、発声には、歌唱の他にも、口を大きく動かして声を出すような朗読、アナウンス、司会等が含まれる。
【0018】
図2及び図3に示すように、マスク100は、マスク本体1と、維持部2と、第1形状保持部3と、第2形状保持部4と、を備える。図2に示す表面102側から見たマスク100の上下方向及び左右方向は、マスク100を装着する使用者の顔面を基準とした上下方向及び左右方向に対応する。また、使用者がマスク100を装着した装着状態において、使用者の顔面と対向する後方側に配置されるマスク100の内側の面を裏面101とし、使用者の顔面と対向しない前方側に配置されるマスク100の外側の面を表面102とする。
マスク本体1は、表面102側の生地と、裏面101側の生地と、の2枚の生地を貼り合わせることにより形成されている。本実施形態では、マスク本体1の表面102側の生地にはナイロン製のものが用いられており、マスク本体1の裏面101側の生地にはポリエステル製のものが用いられている。つまり、マスク本体1は、表面102と裏面101とで素材が異なる1枚仕立てのものである。
【0019】
本実施形態では、マスク本体1の色は、表面102と裏面101とで濃さが異なるシャンパンゴールドである。裏面101の生地は、汚れ等が目立たないように、表面102の生地よりも色が濃い設計である。マスク本体1は、水洗いが可能である。
【0020】
本実施形態では、マスク本体1の上方側の端部から下方側の端部までの上下方向の長さは、最も長いところで340mmに設計されている。また、マスク本体1の上方側の端部における左右方向の長さは、マスク本体1の左右方向における最短の長さとなる215mmに設計されている。そして、マスク本体1の下方側の端部周辺の左右方向の長さは、最も長いところで320mmに設計されている。
【0021】
マスク本体1は、顔面部11と、ドレープ部12と、を有する。
顔面部11は、マスク本体1における、使用者の鼻及び口元周辺を覆う部分である。具体的には、マスク本体1において、上方側の端部から上下方向における中央付近よりも上方側周辺までの領域が顔面部11である。本実施形態では、顔面部11は、上下方向において、上方側の端部から後述する孔112周辺の位置までの領域である。顔面部11は、下方側の左右方向の長さが上方側の左右方向の長さよりも長くなるように、当該顔面部11の左右方向における両側端部が下方側に向かって広がる形状を有する。本実施形態では、顔面部11は、正面から見て略台形状を有する。
【0022】
顔面部11は、挿入部111と、孔112と、有する。
挿入部111は、顔面部11に設けられる筒状の部分であり、顔面部11の左右方向における両側端部に設けられる。本実施形態では、挿入部111は、顔面部11の左右方向の両側端部が、それぞれ表面102側から裏面101側に数ミリ程度折り返えされ、筒状の部分を有するように縫われて固定されることにより形成される。本実施形態では、挿入部111の上方側の端部及び下方側の端部は、共には縫われずに開放された状態である。挿入部111の長さは、当該挿入部111の下方側の端部が上方側の端部から斜めに直線距離で120mmに設計されている。挿入部111には、維持部2の一部が挿入される。
【0023】
維持部2は、使用者のマスク100の装着状態を維持する。本実施形態では、維持部2は、紐である。維持部2は、挿入部111に貫通するように挿入された状態で、使用者の耳に掛けるようにして用いられる。
【0024】
孔112は、挿入部111の下方側の端部に設けられ、維持部2を挿入部111に挿入する挿入口である。孔112は、顔面部11における表面102側に設けられる。
【0025】
ドレープ部12は、マスク本体1における、顔面部11の下方側おいて、使用者の首元周辺を覆う部分である。具体的には、マスク本体1において、上下方向における中央付近よりも上方側周辺から下方側の端部までの領域がドレープ部12である。換言すると、マスク本体1において、顔面部11よりも下方側の領域がドレープ部12である。本実施形態では、ドレープ部12は、上下方向において、孔112周辺の位置から下方側の端部までの領域である。ドレープ部12は、使用者のマスク100の装着状態において、ゆったりとしたドレープ状に設計されている。ドレープ部12は、少なくとも顔面部11寄りの部分における左右方向の長さが、顔面部11における下方側の左右方向の長さ以上となるように形成されている。本実施形態では、ドレープ部12は、使用者のマスク100の図1に示す装着状態における美観性を高めるために、図2及び図3に示すように表面102側及び裏面101側から見て、左右方向の長さが略一定となる部分を所定の長さを有しながら、下方側の端部が曲線を描くような形状に形成されている。
【0026】
第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、板状の部材である。ここで、板状とは、平たいものであればよく、幅が一定であっても一定でなくてもよい。本実施形態では、第1形状保持部3として、幅が5mm、長さが120mmの扁平状のワイヤが用いられる。そして、第2形状保持部4として、幅が5mm、長さが80mmの扁平状のワイヤが用いられる。本実施形態では、第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、自在に形状を調整可能である。
【0027】
第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、顔面部11において、T字状に配置される。具体的には、第1形状保持部3は、顔面部11の上方側の端部の左右方向における中央付近に、左右方向に沿って配置される。第2形状保持部4は、顔面部11における第1形状保持部3の下方側に、第1形状保持部3と重ならないように、上下方向に沿って配置される。本実施形態では、第2形状保持部4は、顔面部11を左右方向に2つ折りにした場合の中心線Aを境に2つ並んで配置される。
【0028】
第2形状保持部4の上下方向における長さは、顔面部11の上下方向における長さよりも短い。本実施形態では、上下方向において、第2形状保持部4の下方側の端部は、顔面部11に設けられる孔112の位置よりも上方側に位置する。
【0029】
第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、その外周に沿った縫い目31,41により上下方向及び左右方向の動きが抑制されるように顔面部11に固定される。具体的には、2つの第2形状保持部4は、マスク本体1の表面102側の生地と裏面101側の生地との間に挟み込まれ、それぞれの第2形状保持部4の外周に沿って縫い目41のように縫われて顔面部11に固定される。なお、マスク本体1の裏面101に、第2形状保持部4と別の布とを重ね合わせて、例えば、縫い合わせたり、接着したりすることで、第2形状保持部4を顔面部11に固定してもよい。また、第1形状保持部3は、顔面部11の上方側の端部の表面102側から裏面101側に数ミリ程度折り返された部分に挟み込まれ、第1形状保持部3の外周に沿って縫い目31のように縫われて顔面部11に固定される。なお、第1形状保持部3及び第2形状保持部4を顔面部11に固定するために、縫い目31,41以外の箇所、例えば第1形状保持部3及び第2形状保持部4のそれぞれの端部周辺の箇所が縫われていてもよい。具体的には、第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、それぞれ第1形状保持部3及び第2形状保持部4をマスク本体1に固定するために各2箇所において、第1形状保持部3及び第2形状保持部4とマスク本体1とが縫い合わされていてもよい。第1形状保持部3は、第1形状保持部3の左右方向の長さがほぼ4等分にされた位置に、中ほど2箇所の縫い目32において、マスク本体1と縫い合わされていてもよい。また、第2形状保持部4は、当該第2形状保持部4の上方側の端部及び下方側の端部からそれぞれ約8mmの位置の縫い目42において、マスク本体1と縫い合わされていてもよい。
【0030】
[2.マスクの装着状態における使用方法の一例]
図4に示すように、使用者がマスク100を装着するときは、まず、第1形状保持部3が第2形状保持部4より後方側に位置するように、顔面部11の第1形状保持部3が配置される部分を裏面101側に半回転折り返して、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重なる状態とする。次に、マスク本体1の上方側の端部において、使用者の顔との間に隙間を有しないようにするために、図5に示すように、第1形状保持部3を使用者の鼻の形状に沿わせるように、第1形状保持部3を前方側に向かって湾曲するように屈曲させる。次に、マスク100が使用者によって装着される。その後、マスク本体1の口元周辺の部分を使用者の口元から離すように、マスク本体1を前方側に押し出すようにして、使用者の口元周辺とマスク本体1との間に空間200を形成するために、第2形状保持部4を前方側に向かって湾曲するように屈曲させる。
【0031】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、使用者のマスク100の装着状態において、第1形状保持部3及び第2形状保持部4によって、マスク本体1と使用者の口との間に空間200が確保されつつ、ドレープ部12によって、口元よりも下方側の領域が広く覆われる。これにより、歌唱等の発声を行ったとしても、口元周辺に空間200が形成されるため、口元にマスク本体1が引っ付きにくく、息苦しさを緩和することができる。また、歌唱等の発声により使用者の飛沫が飛んだとしても、口元周辺及び首元周辺の広い範囲がマスク本体1によって覆われているため、飛沫拡散を抑制することができる。また、ドレープ部12は、首元周辺まで長さを有するようにドレープ状にゆったりとした設計である。このため、顎周辺がフリーな状態となることから、マスク100の装着状態で使用者が口を大きく動かしても、当該マスク100がずれてしまうことが起こりにくい。したがって、第1形状保持部3、第2形状保持部4及びドレープ部12は、飛沫拡散を抑制しつつ、自然なブレス及び発声を行いやすくすることができる。
【0032】
(3b)本実施形態では、第1形状保持部3を前方側に向かって湾曲するように屈曲させることによって、顔面部11の上方側の端部を使用者の鼻の形状に沿わせやすくすることができる。その結果、マスク本体1の上方側の端部が使用者の顔と密着するため、マスク本体1の上方側から飛沫が拡散するのを抑制することができる。また、第2形状保持部4を前方側に向かって湾曲するように屈曲させて、マスク本体1の口元周辺の部分を使用者の口元から離すように、マスク本体1を前方側に押し出すことによって、使用者のマスク100の装着状態において、口元周辺に空間200を形成しやすくすることができる。なお、第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、自在に形状を調整可能であるため、例えば空間200の大きさを調整し、使用者の顔の形状や発声のしやすさ等の好みによってマスク100の装着状態を調整することができる。
【0033】
(3c)本実施形態では、第2形状保持部4が2つ並んで配置される。これにより、例えば第2形状保持部4が1つの場合と比較して、強度を上げることができる。また、第2形状保持部4に左右方向の幅を持たせることができる。このため、第2形状保持部4を屈曲させた場合、その屈曲された形状を維持しやすくすることができる。したがって、使用者のマスク100の装着状態で、口元周辺に形成される空間200を維持しやすくすることができる。
【0034】
(3d)本実施形態では、第2形状保持部4の上下方向における長さが、顔面部11の上下方向における長さよりも短いため、使用者のマスク100の装着状態において、顎に第2形状保持部4が当たりにくい。このため、第2形状保持部4が発声時の邪魔になりにくくすることができる。また、マスク本体1が装着時に後ろに引っ張られた場合にも、第2形状保持部4が長すぎることによりマスク本体1と共に後ろに引っ張られることで生じやすい形状の崩れが起こりにくい。その結果、第2形状保持部4を前方側に屈曲させることによって口元周辺に形成された空間200が狭まったり、第2形状保持部4が使用者の口元に当たって不快感を生じさせることを抑制することができる。
【0035】
(3e)本実施形態では、使用者がマスク100を装着するとき、第1形状保持部3が第2形状保持部4より後方側に位置するように、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重なる状態とする。これにより、第1形状保持部3によって第2形状保持部4がマスク本体1における裏面101側から保持される。なお、図4に示すように、第1形状保持部3及び第2形状保持部4は、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重なる前の折り返し前の状態で、上下方向において近接して配置される。このため、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重なる状態において、第1形状保持部3の上方側の端部と、第2形状保持部4の上方側の端部と、が離れにくい状態となる。これにより、第1形状保持部3によって第2形状保持部4がマスク本体1における裏面101側からより良好に保持されやすい。したがって、第2形状保持部4が第1形状保持部3によって後方側に下がりにくくすることができる。その結果、口元周辺に空間200を形成するために前方側に屈曲させた第2形状保持部4の形状が維持されやすいため、当該空間200を潰れにくくすることができる。
【0036】
(3f)本実施形態では、第1形状保持部3及び第2形状保持部4が板状である。このため、縫い目31,41によって第1形状保持部3及び第2形状保持部4がマスク本体1に固定された状態で、例えば第1形状保持部及び第2形状保持部が棒状の場合と比較して、第1形状保持部3及び第2形状保持部4の縫い目31,41内の空間における回転等の動きが抑制される。その結果、第1形状保持部3及び第2形状保持部4を屈曲させた場合、その屈曲された形状を維持しやすくすることができる。
【0037】
(3g)本実施形態では、顔面部11の両側端部が下方側に向かって広がる形状を有するため、顔面部11の両側端部が下方側に向かって真っ直ぐ延びる形状と比較して、使用者の口元周辺をより後方まで覆うことが可能である。このように、顔面部11が顔と密着した状態で使用者の口元周辺が広い範囲で顔面部11によって覆われるため、飛沫拡散を抑制しやすくすることができる。また、マスク100の装着時に、顔面部11の下方側を使用者の顔の後方側に引っ張った場合にも、当該下方側の左右方向の長さが長いため、使用者の口元周辺と顔面部11との間にゆとりを持って空間200が形成されやすく、第2形状保持部4により形成される口元周辺の空間200を潰れにくくすることができる。
【0038】
(3h)本実施形態では、顔面部11における表面102に孔112が設けられるため、例えば、顔面部11における裏面101に孔112が設けられる構成と比較して、孔112周辺のマスク100の一部を顔に密着させやすくすることができる。その結果、飛沫拡散の予防の効果を高めることができる。
【0039】
なお、維持部2における挿入部111に挿入された部分が紐状部に相当する。
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0040】
(4a)上記実施形態では、使用者の口元周辺とマスク本体1との間に空間200を形成する構成として、第1形状保持部3及び第2形状保持部4を有する構成を例示したが、当該空間200を形成する構成はこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部は、自在に形状を調整可能でなくてもよく、使用者の口元周辺とマスク本体1との間に予め空間200が形成されるような構成であれば、様々な形状を有してもよい。
【0042】
また、例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部は、一体に構成されていてもよい。
また、例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部は、棒状の部材であってもよい。
また、例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部は、T字状に配置されていなくてもよい。
また、例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部の幅は、5mmに限定されるものではなく、例えば5mm未満又は5mmよりも大きくてもよい。
【0043】
(4b)上記実施形態では、第2形状保持部4が2つ配置される構成を例示したが、例えば、第2形状保持部は、1つ又は3つ以上配置されていてもよい。
(4c)上記実施形態では、顔面部11の第1形状保持部3が配置される部分を裏面101側に折り返すことで、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重なる構成を例示したが、例えば、第1形状保持部及び第2形状保持部は、一部が重なった状態で、予め顔面部11に固定されていてもよい。また、顔面部11の第1形状保持部3が配置される部分を裏面101側に折り返さずに、第1形状保持部3と第2形状保持部4とが重ならない状態で使用者に装着されてもよい。
【0044】
(4d)上記実施形態では、維持部2は、挿入部111に挿入可能な紐である構成を例示したが、維持部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、維持部は、少なくとも一部が挿入部111に挿入可能な紐状であって、それ以外の部分が他の構成であってもよい。また、例えば、顔面部が挿入部を有しない構成において、維持部が顔面部に直接接着等により固定されていてもよいし、顔面部が予め維持部の機能を有するように構成されていてもよい。また、維持部2は、耳に掛けられる構成に限定されず、例えば、頭部の後方に回して結ぶような構成であってもよい。
【0045】
(4e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0046】
1…マスク本体、2…維持部、3…第1形状保持部、4…第2形状保持部、11…顔面部、12…ドレープ部、31,32,41,42…縫い目、100…マスク、101…裏面、102…表面、111…挿入部、112…孔、200…空間、A…中心線。
図1
図2
図3
図4
図5