(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102546
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】オリーブエキス、及びヒドロキシチロソール含有コーティング錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20220630BHJP
A61K 36/63 20060101ALI20220630BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20220630BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220630BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220630BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220630BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220630BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220630BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220630BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K36/63
A61K9/36
A61K47/36
A61P39/06
A61P3/06
A61P17/18
A61P25/00
A23L5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217348
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 香織
(72)【発明者】
【氏名】永盛 友樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 朋美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC04
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4B035LG04
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4C206NA11
4C206ZA02
4C206ZA89
4C206ZC37
(57)【要約】
【課題】本発明は、崩壊時間を早めることができ、エキス特有の苦味が抑制されている、オリーブエキス含有製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、(A)オリーブ葉エキス等のオリーブエキス、(B)デンプン及びその誘導体を含有する素錠、及び、前記素錠の表面を被覆するコーティング層を有し、ヒドロキシチロソールを含有するコーティング錠剤を提供する。トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体が好ましく、素錠は、(C)崩壊剤及び/又は(D)マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールをさらに含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オリーブエキス、及び
(B)デンプン及びその誘導体
を含有する素錠、並びに
前記素錠の表面を被覆するコーティング層
を有し、ヒドロキシチロソールを含有するコーティング錠剤。
【請求項2】
(B)成分が、トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体より選ばれる1種以上である、請求項1に記載のコーティング錠剤。
【請求項3】
トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体が、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプン、及びアルファ化デンプンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項2に記載のコーティング錠剤。
【請求項4】
素錠は、(C)崩壊剤をさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
【請求項5】
素錠は、(D)糖アルコールをさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
【請求項6】
(D)成分が、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、及びエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項5に記載の錠剤。
【請求項7】
(A)成分の含有量が、コーティング錠剤全質量に対し10質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
【請求項8】
(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する比率(B/A)が0.1~3である、請求項1~7のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項9】
ヒドロキシチロソール含有量が、コーティング錠剤全質量に対し2質量%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項10】
コーティング率が、コーティング錠剤全質量に対し0.3~4質量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブエキス、及びヒドロキシチロソールを含有するコーティング錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブエキスは、オリーブの植物体に含まれる生理活性成分を含み、健康食品として用いられている。中でも、オリーブ葉エキスは、ポリフェノールであるヒドロキシチロソールやオレウロペインを含有し、睡眠改善作用(例えば、中途覚醒の抑制作用)、美白作用、抗コレステロールや抗酸化作用が知られている。
【0003】
特許文献1には、オリーブ果実抽出物、およびステアリン酸塩および/またはグリセリン脂肪酸エステルを配合し、さらにデンプンを含む、変色の抑制された錠剤が記載されている。特許文献2には、ヒドロキシチロソール0.5~50mg/100mLとカフェインとを含む飲料が、ヒドロキシチロソール特有のエグ味及び異臭(例えば、収斂味)が抑制され飲みやすいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-104100号公報
【特許文献2】特開2017-099322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ヒドロキシチロソール独特のにおいと強い苦味を抑制する手段について、特許文献1には記載がなく、特許文献2は飲料における方法であり、錠剤では十分に抑制することが困難であった。また、オリーブエキスを含む錠剤において、エキスの生理活性(例えば、睡眠改善作用)の早期発現を期待する場合、崩壊時間の短縮が望まれるところ、従来のオリーブエキスの錠剤は崩壊時間が長いことが課題であった。
【0006】
本発明は、崩壊時間を早めることができ、エキス特有の苦味が抑制されている、オリーブエキス含有製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の〔1〕~〔10〕を提供する。
〔1〕(A)オリーブエキス、及び
(B)デンプン及びその誘導体
を含有する素錠、並びに
前記素錠の表面を被覆するコーティング層
を有し、ヒドロキシチロソールを含有するコーティング錠剤。
〔2〕(B)成分が、トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体より選ばれる1種以上である、〔1〕に記載のコーティング錠剤。
〔3〕トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体が、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプン、及びアルファ化デンプンからなる群より選ばれる1種以上である、〔2〕に記載のコーティング錠剤。
〔4〕素錠は、(C)崩壊剤をさらに含有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
〔5〕素錠は、(D)糖アルコールをさらに含有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
〔6〕(D)成分が、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、及びエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、〔5〕に記載の錠剤。
〔7〕(A)成分の含有量が、コーティング錠剤全質量に対し10質量%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
〔8〕(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する比率(B/A)が0.1~3である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の錠剤。
〔9〕ヒドロキシチロソール含有量が、コーティング錠剤全質量に対し2質量%以上である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の錠剤。
〔10〕コーティング率が、コーティング錠剤全質量に対し0.3~4質量%である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、崩壊時間を早めることができ、エキス特有の苦味が抑制され得るので、オリーブエキスの生理活性を効率よく発揮し得る、コーティング錠剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔1.コーティング錠剤〕
本発明において、コーティング錠剤は、素錠と、これを被覆するコーティング層から構成される。
【0010】
〔1.1 素錠〕
素錠は、(A)及び(B)成分を含み、好ましくは(C)及び/又は(D)成分を更に含む。
【0011】
〔(A)成分〕
(A)成分は、オリーブエキスである。オリーブエキスは、オリーブ(Olea europaea L.)の植物体の少なくとも一部から調製されるエキスである。本発明のコーティング錠剤は、(A)成分を含有することにより、オリーブエキスが有する生理活性を発揮できる。
【0012】
-原料-
オリーブエキスの原料は、オリーブ(Olea europaea)の植物体の少なくとも一部である。オリーブの品種、原産地、生育条件、収穫時期は、特に限定されない。抽出部位としては、例えば、葉、花、果実、茎、のうち一種、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、少なくとも葉を含むことが好ましい。抽出原料は、抽出前に細断等の前処理が施されていてもよい。オリーブエキスは、オリーブ葉エキスが好ましい。本明細書においてオリーブ葉エキスは、少なくとも葉を含む抽出部位から抽出されたオリーブエキスを意味する。オリーブ葉エキスは、抗酸化活性、心疾患および癌の予防効果、抗炎症作用、成長ホルモン分泌促進、中でも中途覚醒の抑制効果等の生理活性を有することが知られている。
【0013】
-抽出方法-
オリーブエキスは、上述の抽出原料から抽出して得ることができる。抽出方法としては、例えば、溶媒を用いて抽出する方法、二酸化炭素等による超臨界抽出法を用いて抽出する方法、圧搾する方法があり、これらのうちの1つ又は2つ以上を組み合わせる方法が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒を用いて抽出する方法において用いられる抽出溶媒はとしては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、プロピオン酸等の水性溶媒を単独、またはこれらから選ばれる2種以上の組み合わせが挙げられ、水、エタノールまたはこれらを少なくとも含む水性溶媒の混合液(例えば、含水エタノール)が好ましい。含水エタノールのアルコール濃度は、限定されないが、20~90容量%が好ましく、40~80容量%がより好ましい。
【0014】
抽出回数は、1回(抽出溶媒1種を用いて、又は2種以上の混合溶媒を用いて)又は2回以上(共通の抽出溶媒(混合溶媒でもよい)による2回以上の抽出、又は別個の抽出溶媒による2回以上の抽出)行ってもよい。
【0015】
抽出温度は、抽出原料、抽出部位、溶媒の種類等の条件により適宜定めることができるが、通常、常温~溶媒の沸点で適宜選択できる。抽出後は、酸性化処理、pH調整処理、濃縮、濾過、溶媒の留去、精製処理(例えば、イオン交換樹脂、カラムなどを利用して吸着処理後、溶媒による溶出、その後必要によりさらに濃縮処理)、乾燥(例えば、噴霧乾燥)、粉砕、脱臭、脱色処理を行ってもよい。なお、酸性化処理(例えば、抽出後に酸を添加する処理)を経て得られるオリーブ葉エキスは、酸性化前のエキス中のオレウロペインが酸化後にはヒドロキシチロソールへ変換されるので、ヒドロキシチロソールを豊富に含む。
【0016】
オリーブエキスの剤形は、溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状のいずれでもよい。また、必要に応じて保存剤、安定化剤(例えば、デキストリン等の粉末安定化剤)等の任意成分を含有してもよい。
【0017】
(A)成分は、オリーブエキスを少なくとも1種含めばよく、抽出条件、ヒドロキシチロソール含量等組成の異なる2種以上のオリーブエキスの組み合わせでもよい。
【0018】
-(A)成分の含有量-
(A)成分の含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、25質量%以上である。これにより、オリーブエキスの生理活性を効率よく発揮できる。上限は、通常、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。これにより、錠剤の硬度を十分に低くくし、崩壊時間を早めることができる。また、服用時に苦味や渋みが生じにくくなる。従って、(A)成分の含有量は、通常、10~50質量%、好ましくは、15~40質量%、より好ましくは、25~35質量%である。
【0019】
(A)成分の1錠中の含有量は、通常、20~1300mg、好ましくは30~1000mg、より好ましくは50~880mgである。前記下限以上、上限以下とする理由は、前記含有量(質量%)と同様である。
【0020】
〔ヒドロキシチロソール〕
コーティング錠剤は、ヒドロキシチロソールを含む。ヒドロキシチロソールは、通常は素錠に含まれる。ヒドロキシチロソールは、オリーブエキスの成分として含有されることが好ましい。オリーブエキスは、通常、ヒドロキシチロソールを含み、ヒドロキシチロソールを多量に含むこと(例えば、15質量%以上、好ましくは17質量%以上、より好ましくは20質量%以上)が好ましい。オリーブエキスは、ヒドロキシチロソールまで精製(ヒドロキシチロソール含有量100質量%)されていてもよい。ヒドロキシチロソールは、オリーブエキスにおいて、中途覚醒を抑制する機能関与成分であり、美白効果、動脈硬化症の予防効果等の生理活性を有することが知られている。
【0021】
ヒドロキシチロソールの含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、2質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上である。これにより、ヒドロキシチロソールの上記生理活性、中でも中途覚醒の抑制効果が得られやすくなる。上限は、通常、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。これにより、服用時に苦味や渋みが生じにくくなる。従って、ヒドロキシチロソールの含有量は、通常、2~15質量%、好ましくは、3~10質量%、より好ましくは、5~10質量%である。
【0022】
ヒドロキシチロソールの1錠中の含有量は、通常、2~300mg、好ましくは5~200mg、より好ましくは10~200mgである。前記下限以上、上限以下とする理由は、前記含有量(質量%)と同様である。
【0023】
〔(B)成分〕
(B)成分は、デンプン及びその誘導体である。(B)成分を含有することにより、崩壊性を向上させることができる。また、錠剤の硬度上昇を抑制し、打錠機への負担を軽減でき、打錠障害(バインディング、スティッキング、ピッキング、キャッピング)の発生を抑制できる。
【0024】
-デンプン及びその誘導体の例-
デンプンは、天然由来でも人工的に製造されたものでもよく、前者としては、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、タピオカデンプンが挙げられる。デンプンの誘導体としては、例えば、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンが挙げられる。デンプン及びその誘導体は、崩壊性がより向上する観点から、トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体が好ましい。トウモロコシを起源とするデンプン及びその誘導体として具体的には、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、アセチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、酸化デンプン、オクテニルコハク酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンが好ましく、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプンがより好ましく、部分アルファ化デンプンがより一層好ましい。(B)成分は、デンプン又はその誘導体を少なくとも1種含めばよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0025】
-(B)成分の含有量-
(B)成分の含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、3質量%以上、好ましくは、7質量%以上、より好ましくは、8質量%以上である。これにより、崩壊性が向上し、崩壊時間を早めることができる。上限は、通常、50質量%以下、好ましくは、19質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。これにより、錠剤の硬度が高まり、成形性が向上し得るので、錠剤成型後の割れ欠けが生じ難くなる。従って、(B)成分の含有量は、通常、3~50質量%、好ましくは、7~19質量%、より好ましくは、8~15質量%である。
【0026】
-B/A(質量比)-
(B)成分の含有量の(A)成分の含有量に対する比率(B/A)は、通常、0.1以上、好ましくは、0.18以上、より好ましくは、0.2以上である。これにより、崩壊性が向上し、崩壊時間を短縮できる。上限は、通常3以下、好ましくは、1.1以下、より好ましくは、0.6以下、更により好ましくは、0.55以下である。これにより、錠剤の硬度が高まり、成形性が向上し得るので、錠剤成型後の割れ欠けが生じ難くなる。従って、B/Aは、通常、0.1~3、好ましくは0.18~1.1、より好ましくは0.18~0.6、更により好ましくは0.2~0.55である。
【0027】
〔(C)成分〕
(C)成分は、崩壊剤である。(C)成分を含有することにより、崩壊性をより向上させることができる。
【0028】
-崩壊剤の例-
崩壊剤としては、(B)成分以外の崩壊剤であればよく、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム、CMC-Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(別名:カルメロースカルシウム、CMC-Ca)、クロスカルメロースナトリウム、クロスリンクドインソルブルポリビニルピロリドン、クロスポビドンが挙げられ、崩壊性がより向上する観点から、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。(C)成分は、1種類の崩壊剤でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0029】
-(C)成分の含有量-
(C)成分を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、1質量%以上である。これにより、崩壊性が向上し、服用しやすい錠剤の大きさ(例えば、1錠あたりの質量200~500mg)を確保できる。上限は、通常、3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下である。これにより、錠剤の硬度が高まり、成形性が向上し得るので、錠剤成型後の割れ欠けが生じ難くなる。従って、(B)成分の含有量は、通常、1~3質量%、好ましくは、1~2.5質量%、より好ましくは、1~2質量%である。
【0030】
〔(D)成分〕
(D)成分は、糖アルコールである。(D)成分を含有することにより、錠剤の硬度上昇を抑制し、打錠機への負担をより軽減でき、打錠障害(バインディング、スティッキング、ピッキング、キャッピング)の発生をより抑制できる。
【0031】
-糖アルコールの例-
糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、イソマルト、スクロースが挙げられ、錠剤の硬度上昇をより抑制する観点から、マルチトール、ソルビトール、還元水飴、キシリトール、エリスリトールが好ましく、マルチトールがより好ましい。(D)成分は、1種類の糖アルコールでもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0032】
-(D)成分の含有量-
(D)成分を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。これにより、錠剤の硬度の抑制が容易となり、崩壊時間を早めることができる。上限は、通常、60質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下である。これにより、錠剤の硬度が高まり、成形性が向上し得るので、錠剤成型後の割れ欠けが生じ難くなる。従って、(D)成分の含有量は、通常、3~60質量%、好ましくは、5~30質量%、より好ましくは、10~25質量%である。
【0033】
(D)成分の1錠中の含有量は、通常、10~400mg、好ましくは15~200mg、より好ましくは15~170mgである。前記下限以上、上限以下とする理由は、前記含有量(質量%)と同様である。
【0034】
〔(C)成分、(D)成分以外の任意成分〕
素錠は、上記で説明した成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、賦形剤、流動化剤、滑沢剤、結合剤、矯味剤、着色剤、界面活性剤、吸着剤、帯電防止剤・崩壊延長剤が挙げられる。
【0035】
-賦形剤-
賦形剤を含有することにより、成形性を向上させることができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、乳糖造粒物、グラニュウ糖、マンニトール、結晶セルロース(別名:微結晶セルロース)、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、精製白糖、ブドウ糖、含水ブドウ糖、二酸化ケイ素(別名:無水ケイ酸、微粒二酸化ケイ素)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、L-システイン、メチルエチルセルロースが挙げられ、成形性をより向上させる観点から、乳糖、乳糖造粒物、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルエチルセルロースが好ましい。
賦形剤を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。これにより、成形性がより向上し得る。上限は、通常、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。これにより、錠剤のサイズが大きくなり過ぎず、服用性が向上し得る。従って、賦形剤の含有量は、通常、20~80質量%、好ましくは、25~70質量%、より好ましくは、30~60質量%である。
【0036】
賦形剤の1錠中の含有量は、通常、20~400mg、好ましくは50~300mg、より好ましくは80~200mgである。前記下限以上、上限以下とする理由は、前記含有量(質量%)と同様である。
【0037】
-流動化剤-
流動化剤を含有することにより、粉体粒子間の付着を抑制し流動性を促進できる。流動化剤としては、例えば、二酸化ケイ素(例、微粒二酸化ケイ素(シリカ)、軽質無水ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水二酸化ケイ素)、ケイ酸カルシウム、タルクが挙げられ、粉体流動性をより向上させる観点から、微粒二酸化ケイ素が好ましく、多孔性の微粒二酸化ケイ素がより好ましい。
流動化剤を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、1質量%以上である。これにより、打錠時の粉の供給などの製造性が向上し得る。上限は、通常、3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下である。これにより、成形性が向上し得る。従って、流動化剤の含有量は、通常、1~3質量%、好ましくは、1~2.5質量%、より好ましくは、1~2質量%である。
【0038】
-滑沢剤-
滑沢剤を含有することにより、摩擦を低減でき、これにより打錠機への粉体粒子付着を抑制できる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸金属塩(例、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられ、打錠機への付着防止、打錠障害(例えば、バインディング、スティッキング、ピッキング)を抑制させ得る観点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
滑沢剤を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、1質量%以上である。これにより、打錠障害を抑制できる。上限は、通常、3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下である。これにより、錠剤硬度を向上させ(脆くなり難い)、コーティング層の剥離が生じ難くなり得る。従って、滑沢剤の含有量は、通常、1~3質量%、好ましくは、1~2.5質量%、より好ましくは、1~2質量%である。
【0039】
-結合剤-
結合剤を含有することにより、錠剤の割れ欠けを抑制できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールが挙げられ、錠剤の割れ欠けをより抑制させ得る観点から、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
結合剤を含む場合その含有量は、コーティング錠剤全質量に対し、通常、0.01質量%以上である。これにより、錠剤の割れ欠けを抑制できる。上限は、通常、50質量%以下である。これにより、崩壊遅延が生じ難くなり得る。従って、結合剤の含有量は、通常、0.01~50質量%である。
【0040】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0041】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、タール色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン、リボフラビン類、緑茶抽出物、銅クロロフィリンナトリウム、食用黄色5号,食用黄色4号,食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102,食用青色2号、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号、オレンジエッセンス、カラメル、カルミン、β-カロテンなどの食用色素、アルミニウムレーキなどの食用レーキ色素銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビンなどの有機顔料、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、金箔、薬用炭などの無機顔料、カンゾウエキス、アセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、緑茶末などの動植物抽出物などが挙げられる。
【0042】
-矯味剤-
矯味剤としては、例えば、甘味剤(例、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールなどの人工甘味料など)、香料(例、レモン、レモンライム、オレンジ、l-メントール、ハッカ油、ペパーミントミクロンX-8277-T、ドライコート抹茶#421、リモネン、ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等の植物精油など)、酸味料(例、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸など)、緑茶末などが挙げられる。
【0043】
-吸着剤-
吸着剤としては、例えば、特殊ケイ酸カルシウム(フローライト(登録商標))などが挙げられる。
【0044】
-帯電防止剤・崩壊延長剤-
帯電防止剤、崩壊延長剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0045】
〔1.2 コーティング層〕
本発明において、コーティング錠剤は、コーティング層を有することにより、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においを抑制でき、服用性を向上させ得る。
【0046】
〔コーティング層の構成成分〕
コーティング層の構成成分としては、例えば、皮膜形成成分、可塑剤、その他成分が挙げられる。
【0047】
-皮膜形成成分-
皮膜形成成分としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース類;シェラック、プルラン、アラビアゴム等の天然物質;カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(例えば、オイドラギッド(登録商標)E、オイドラギッド(登録商標)RS等)、メタクリル酸コポリマー(例えば、オイドラギット(登録商標)L30-55等)が挙げられる。中でも、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においの抑制、服用性の向上を効率よくなし得、かつ、ヒドロキシチロソールの経時安定性を発揮し得る観点から、セルロース類、天然物質が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シェラックがより好ましい。
【0048】
-可塑剤-
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル等の合成エステル、カルナウバロウが挙げられる。中でも、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においの抑制、服用性の向上を効率よくなし得、かつ、ヒドロキシチロソールの経時安定性を発揮し得る観点から、多価アルコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0049】
-他の成分-
他の成分としては、例えば、単糖類、二糖類以上の多糖類(例えば、砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(例えば、パラチニット(登録商標)、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、酸化チタン、酸化鉄などの顔料、着色料、香料、セタノール、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0050】
コーティング層は、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においの抑制、服用性の向上をより効率よくなし得、かつ、ヒドロキシチロソールの経時安定性をより発揮し得る観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとグリセリンの組み合わせを少なくとも含むことが好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量のグリセリンの含有量に対する比率(質量比:ヒドロキシプロピルメチルセルロース/グリセリン)は、通常、2以上、好ましくは、4以上、より好ましくは、8以上である。上限は、通常、20以下、好ましくは、10以下である。
【0051】
〔コーティング率〕
素錠に対するコーティング率(素錠質量に対するコーティング層の質量割合)は、通常、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上である。これにより、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においの抑制、服用性の向上を効率よくなし得る。上限は、通常、4質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下である。これにより、コーティング障害(コーティング錠同士の付着やコーティングムラ)の発生、経時変色の発生を抑制でき、かつ、ヒドロキシチロソールの安定性を維持できる。従って、コーティング率は、通常、0.3~4質量%、好ましくは、0.5~2.5質量%、より好ましくは、0.5~1.5質量%である。また、コーティング錠剤全質量に対し、コーティング層は、通常、0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上であり、上限は、通常4質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは1.5質量%である。前記下限以上、上限以下とする理由は、前記コーティング率と同様である。
【0052】
ヒドロキシチロソールに対するコーティング率(ヒドロキシチロソール含有質量に対するコーティング層の質量割合)は、通常、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。これにより、(A)成分の、主にヒドロキシチロソールに起因する苦味や渋み、においの抑制、服用性の向上を効率よくなし得る。上限は、通常、55質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、23質量%以下である。これにより、コーティング障害(コーティング錠同士の付着やコーティングムラ)の発生、経時変色の発生を抑制でき、かつ、ヒドロキシチロソールの安定性を維持できる。従って、コーティング率は、通常、2~53質量%、好ましくは、5~30質量%、より好ましくは、10~23質量%である。
【0053】
〔2.コーティング錠剤の製造方法〕
コーティング錠剤は、素錠を調製後、素錠の表面にコーティング層を形成する方法により製造できる。素錠の製造方法としては、例えば、必須成分及び任意成分を混合し、打錠することにより、得ることができる。打錠の方法としては、混合した必須成分及び任意成分の原料を混合してそのまま打錠する直接打錠法、混合した必須成分及び任意成分の原料の全て、又は一部の混合物を造粒して顆粒にしてから打錠する間接打錠法(顆粒打錠法)が挙げられる。前記顆粒を得る造粒の方法としては、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法が挙げられる。本発明のコーティング錠剤は、中でも直接打錠法が好ましい。コーティング層の形成は、常法によりコーティング処理すればよい。
【0054】
〔3.コーティング錠剤の用途〕
本発明のコーティング錠剤は、経口投与剤として、食品、医薬、医薬部外品、及びそれらの構成材料として利用できる。食品としては、健康食品、機能性食品、栄養補助食品(サプリメント)、特定保健用食品、医療用食品、病者用食品、乳児用食品、介護用食品、及び高齢者用食品のいずれでもよい。
【0055】
本発明のコーティング錠剤の摂取対象は、ヒトを含む動物であればよく、通常はヒトであるが、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、サル等の哺乳類)でもよい。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下、「%」は、特に説明がなければ「質量%」を意味し、ヒドロキシチロソールの含有量は、オリーブ葉エキスに由来する量である。
【0057】
〔実施例で使用した原料〕
-(A)成分-
・オリーブエキス
オリーブ葉エキス:三菱ケミカルフーズ(株)製、「オラリス(登録商標)」(ヒドロキシチロソール 21.4%含有)
【0058】
-(B)成分-
デンプン(トウモロコシを起源とする部分α化デンプン):旭化成(株)製、「セオラス(登録商標)PCS FC-30」
【0059】
-任意成分-
(C)成分:カルボキシメチルセルロースカルシウム:ニチリン化学工業(株)製、「E.C.G(登録商標)-FA」
(D)成分:マルチトール:三菱商事フードテック(株)、「粉末マルチトールG-3」
結晶セルロース:旭化成(株)製、「セオラス(登録商標)UF-702」
微粒二酸化ケイ素:DSLジャパン(株)製、「カープレックス(登録商標) FPS-500」
ステアリン酸カルシウム:太平化学産業(株)製、「ステアリン酸カルシウム」
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学工業(株)製、「メトローズ(登録商標)SE-06」
グリセリン:阪本薬品工業(株)製、「食品添加物グリセリン」
水
【0060】
〔素錠の製造〕
素錠の製造方法は、以下の通りとした。オリーブ葉エキス及び微粒酸化ケイ素を混合した後、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、マルチトールを添加混合し、次いでステアリン酸カルシウムを添加混合し、直接打錠法により平均9kgN(素錠の錠剤硬度が8kgf以上20kgf未満となるように前記の打錠範囲において調整して打錠)で打錠した。打錠には、ロータリー式打錠機(FETTE2090、FETTE社製)を用いた。
【0061】
表中のコーティング剤を水に溶解し、コーティング液を調製した(ヒドロキシプロピルメチルセルロース:グリセリン=1:9、5.56%水溶液)。別途、コーティング機(HICOATER、フロイント産業(株)製)に素錠10kgを仕込み、給気温度55℃で予熱後、噴霧液速度10g/minでコーティング液を噴霧した。噴霧終了後、排気温度56℃まで乾燥し、コーティングを終了した。
【0062】
〔評価方法〕
-崩壊性の評価-
製造直後のサンプルについて、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じて崩壊試験を行い、崩壊時間(分)を測定した。崩壊試験液はイオン交換水を使用し、水浴温度は37℃とした。測定回数6回の平均値を算出した。この評価条件における崩壊時間は、60分未満が好ましく、即効性の観点からは、短いほうがより好ましく、30分以下が更に好ましく、25分以下が更により好ましい。
【0063】
-錠剤硬度の評価-
錠剤硬度は全自動錠剤測定装置(WHT-4MJ、デンコム株式会社製)を用いて評価した。(10錠を測定し、平均値を求めた。)
【0064】
製造性は、打錠工程(打錠開始から終了まで60分の間)において特に問題が生じなかったものを○、問題(例えば、バインディング、スティッキング、ピッキング)が生じたものを△と評価した。この評価条件における錠剤硬度は、8kgf以上が好ましく、14kgf以上がより好ましい。これにより、錠剤成型後の割れや欠けの発生を抑制できると評価できる。上限は、20kgf以下が好ましく、19kgf以下がより好ましい。これにより、崩壊時間を早めることができ、打錠機への負担が低減され得ると評価できる。
【0065】
-味の評価-
製造直後のサンプルについて、成人男女6人により以下の評価を行い、最も多かった評価を表に示した。
◎:口に入れ、なめても苦味を全く感じない
○:口に入れた直後に苦味を感じない
△:口に入れた直後に苦味をわずかに感じる
×:口に入れた直後に苦味を感じる
【0066】
<色の評価>
5℃と40℃で各2カ月経過した保存品を、成人男女6人が対比評価し、最も多かった評価を表に示した。
◎:外観の色の違いが全く認められないか、ほとんど認められない
〇:外観の色の違いがやや認められる
△:外観の色の変化が認められる
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
(B)成分を含まない比較例1~3では、崩壊時間が長く、また硬度が高すぎて製造性に問題があったのに対し、(A)及び(B)成分を含む実施例1~18では、いずれも、錠剤製造の際の打錠圧を下げて硬度を低く(例えば、20kgf以下)に調整でき、打錠機への負担を軽減できるだけでなく、崩壊時間が短かった。なお、実施例8の製造性の評価が△であるのは、ピッキングの傾向がみられたためであるが、バインディング、スティッキングは見られず、コーティング錠剤としては許容範囲であった。コーティング層が無い比較例4~6の錠剤は、(A)成分に由来し、特にヒドロキシチロソールに起因する苦味が評価者6人全員に感じられた。
これらの結果は、本発明のコーティング錠剤が、崩壊時間を早めることができ、エキス特有の苦味が抑制され得るので、オリーブエキスの生理活性を効率よく発揮し得ることを示している。
【0071】
処方例
下記組成としたほかは、実施例と同様の方法でコーティング錠剤を製造した。
処方例1
(A)オリーブ葉エキス 100 mg
ヒドロキシチロソール(オリーブ葉エキス由来)21.4mg
(B)トウモロコシデンプン 30 mg
(C)カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
(D)マルチトール 60 mg
結晶セルロース 95.6mg
微粒二酸化ケイ素 5.4mg
ステアリン酸カルシウム 4.5mg
素錠合計 300 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.7mg
グリセリン 0.3mg
コーティング錠剤合計 303 mg
素錠に対するコーティング率 1.0%
処方例2
(A)オリーブ葉エキス 100 mg
ヒドロキシチロソール(オリーブ葉エキス由来)21.4mg
(B)α化デンプン(トウモロコシ起源) 30 mg
(C)カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
(D)マルチトール 60 mg
結晶セルロース 95.6mg
微粒二酸化ケイ素 5.4mg
ステアリン酸カルシウム 4.5mg
素錠合計 300 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.7mg
グリセリン 0.3mg
コーティング錠剤合計 303 mg
素錠に対するコーティング率 1.0%