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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102547
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ファスナー付きマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217349
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】520514366
【氏名又は名称】Archer Consulting合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172306
【弁理士】
【氏名又は名称】知念 芳文
(72)【発明者】
【氏名】福山 佳樹
(57)【要約】
【課題】ファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクにおいて、ファスナーによる金属アレルギーへの対策を講じたマスクを提供する。
【解決手段】マスク(10)は、マスク本体部(11)と、マスク本体部の横方向の両端である左端部(111)及び右端部(112)にそれぞれ連結された2つの耳掛け部(12a、12b)と、使用者がマスクを装着している状態でマスク本体部を開閉可能であるように、マスク本体部に設けられたファスナー部(13)と、マスク本体部の裏面においてファスナー部の両端のそれぞれに対応する位置に設けられ、ファスナー部のスライダー(132)が使用者に接触することを防ぐための保護部(14a、14b)とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体部と、
前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、
使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部と、
前記マスク本体部の裏面において前記ファスナー部の両端のそれぞれに対応する位置に設けられ、前記ファスナー部のスライダーが使用者に接触することを防ぐための保護部と、を有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記保護部は、前記スライダーが開位置及び閉位置にあるときに使用者に接触することを防ぐための小片であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記ファスナー部の前記スライダーは、金属からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
マスク本体部と、
前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、
使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部と、
前記マスク本体部の裏面に設けられ、開口を介して不織布又はフィルターを収納可能な収納部と、を有し、
前記マスク本体部の少なくとも一部は、前記ファスナー部により第1の本体部と第2の本体部とに分離され、
前記収納部は、
前記第1の本体部の裏面に設けられた第1の収納部と、
前記第1の収納部とは独立して前記第2の本体部の裏面に設けられた第2の収納部と、を有することを特徴とするマスク。
【請求項5】
前記マスク本体部は、表面から裏面に向かって、表布、内布、およびポケット布の3層構造を有し、
前記ポケット布は、前記収納部を構成することを特徴とする請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
マスク本体部と、
前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、
使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部と、を有し、
前記マスク本体部の布は、前記ファスナー部により伸ばされており、前記マスク本体部の裏面側から表面側に向けて前記ファスナー部に沿って滑らかな隆起形状を有することを特徴とするマスク。
【請求項7】
前記ファスナー部は、前記マスク本体部を縦方向に開閉可能であるように、前記マスク本体部の横方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記ファスナー部は、前記マスク本体部を横方向に開閉可能であるように、前記マスク本体部の縦方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項9】
前記マスク本体部の上辺及び下辺の両方に設けられたノーズワイヤーを更に有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項10】
マスクの製造方法であって、
マスク本体部を準備する工程と、
前記マスク本体部の布の幅よりも長いファスナー部を準備する工程と、
使用者が前記マスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付ける工程と、
前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ2つの耳掛け部を連結する工程と、を有し、
前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付ける工程において、前記ファスナー部の長さよりも短い前記マスク本体部の布を伸ばして前記マスク本体部の布の幅と前記ファスナー部の長さとを略一致させた状態で、前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付けることを特徴とするマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者がマスクを装着した状態でも飲食等を可能にするため、マスク本体にファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクが知られている。特許文献1には、使用者の顔面の少なくとも一部を覆うためのマスク本体と、マスク本体の左側に位置する左側耳掛け部と、マスク本体の右側に位置する右側耳掛け部とを備えたマスクであって、マスク本体に開口部を設け、開口部を開閉するファスナーをマスク本体に取り付けたマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3228247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスクに設けられたファスナーのスライダーは、通常、金属から構成されているため、特許文献1に開示されたファスナー付きマスクを金属アレルギーの使用者が使用することはできない。
【0005】
また、飛沫防止効果を高めるためにマスク本体に不織布やフィルター等を収納したいという要望があるが、特許文献1に開示されたマスク本体にはファスナーが設けられているため、マスク本体の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納することができない。
【0006】
また、特許文献1に開示されたファスナー付きマスクを使用者に装着した場合、使用者の肌とマスク本体との間に適切な空間が形成されないため、使用者の肌とファスナーとの距離を設けることができない。このため、マスクを装着した使用者は呼吸しにくく、マスク本体の生地が肌に貼りついてしまう。また使用者は、マスクを装着した状態でファスナーを開けにくい。
【0007】
そこで本発明の目的の一つは、ファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクにおいて、ファスナーによる金属アレルギーへの対策を講じたマスクを提供することである。また、本発明の他の目的の一つは、マスク本体部の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納することが可能なマスクを提供することである。また、本発明の他の目的の一つは、使用者の肌とマスク本体との間に適切な空間を形成して適切な距離を設けることで、使用者が呼吸しやすく、かつファスナーを容易に開けることが可能なマスク及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの側面としてのマスクは、マスク本体部と、前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部と、前記マスク本体部の裏面において前記ファスナー部の両端のそれぞれに対応する位置に設けられ、前記ファスナー部のスライダーが使用者に接触することを防ぐための保護部とを有する。
【0009】
本発明の他の側面としてのマスクは、マスク本体部と、前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部と、前記マスク本体部の裏面に設けられ、開口を介して不織布又はフィルターを収納可能な収納部とを有し、前記マスク本体部の少なくとも一部は、前記ファスナー部により第1の本体部と第2の本体部とに分離され、前記収納部は、前記第1の本体部の裏面に設けられた第1の収納部と、前記第1の収納部とは独立して前記第2の本体部の裏面に設けられた第2の収納部とを有する。
【0010】
本発明の他の側面としてのマスクは、マスク本体部と、前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ連結された2つの耳掛け部と、使用者がマスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記マスク本体部に設けられたファスナー部とを有し、前記マスク本体部の布は、前記ファスナー部により伸ばされており、前記マスク本体部の裏面側から表面側に向けて前記ファスナー部に沿って滑らかな隆起形状を有する。
【0011】
本発明の他の側面としてのマスクの製造方法は、マスク本体部を準備する工程と、前記マスク本体部の布の幅よりも長いファスナー部を準備する工程と、使用者が前記マスクを装着している状態で前記マスク本体部を開閉可能であるように、前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付ける工程と、前記マスク本体部の横方向の両端である左端部及び右端部にそれぞれ2つの耳掛け部を連結する工程とを有し、前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付ける工程において、前記ファスナー部の長さよりも短い前記マスク本体部の布を伸ばして前記マスク本体部の布の幅と前記ファスナー部の長さとを略一致させた状態で、前記ファスナー部を前記マスク本体部に取り付ける。
【0012】
本発明の他の目的や特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクにおいて、ファスナーによる金属アレルギーへの対策を講じたマスクを提供することができる。また、本発明によれば、マスク本体部の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納することが可能なマスクを提供することができる。また、本発明によれば、使用者が呼吸しやすく、かつファスナーを容易に開けることが可能なマスク及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】各実施形態に係るファスナー部が閉じた状態のマスクを表面から見た図である。
図2】各実施形態に係るファスナー部が閉じた状態のマスクを裏面から見た図である。
図3】各実施形態に係るファスナー部が開いた状態のマスクを表面から見た図である。
図4】各実施形態に係るマスク本体部の裏面に設けられた収納部の説明図である。
図5】第1の実施形態に係るマスク本体部の説明図である。
図6】第1の実施形態に係るマスクに設けられたノーズワイヤーの説明図である。
図7】第1の実施形態に係るマスクの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に関し、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、図1(a)乃至図3(a)を用いて、本発明の第1の実施形態に係るマスク10の構成について説明する。図1(a)は、本実施形態に係るファスナー部13が閉じた状態のマスク10を表面から見た図である。図2(a)は、ファスナー部13が閉じた状態のマスク10を裏面から見た図である。図2(c)は、本実施形態に係る保護部の変形例を示す図である。図3(a)は、ファスナー部13が開いた状態のマスク10を表面から見た図である。
【0017】
図1(a)乃至図3(a)に示されるように、マスク10は、マスク本体部11、マスク本体部11の横方向(左右方向)の両端である左端部111及び右端部112にそれぞれ連結された2つの耳掛け部12a、12b、及び、使用者がマスク10を装着している状態でマスク本体部11を縦方向(上下方向)に開閉可能に設けられたファスナー部13を有する。ファスナー部13は、左端部111から右端部112に至るまで、マスク本体部11の横方向に沿って設けられている。
【0018】
耳掛け部12a、12bにはそれぞれ、耳掛け部12a、12bの長さを調整する調整部128a、128bが設けられている。調整部128a、128bは、金属アレルギー等の肌の敏感な使用者を考慮して、樹脂で形成されることが好ましい。このような構成により、任意の使用者の顔の大きさや形にフィットしてマスク10を装着することができる。このため、使用者の頬とマスク本体部11との隙間を少なくすることで、感染防止効果を高めることが可能である。
【0019】
ファスナー部13は、エレメント(務歯)131と、エレメント131に対して開位置と閉位置との間で移動可能なスライダー132とを有する。スライダー132には、使用者がスライダー132を移動させるために保持する引手部133が設けられている。使用者は、マスク本体部11の表面側から引手部133を保持してスライダー132を移動させることで、エレメント131を噛み合わせ又は分離させてファスナー部13を開閉することができる。本実施形態において、エレメント131は樹脂からなり、スライダー132は金属からなる。本実施形態において、ファスナー部13はコンシールファスナーであり、マスク本体部11の表面において縫い目が見えないように取り付けられている。
【0020】
図2(a)に示されるように、マスク本体部11の裏面において、ファスナー部13の両端のそれぞれに対応する位置に保護部14a、14bが設けられている。保護部14a、14bは、ファスナー部13のスライダー132が開位置及び閉位置にあるときに使用者に接触することを防ぐように機能する。本実施形態において、保護部14a、14bはそれぞれ小片(隠し布)であるが、これに限定されるものではなく、横長のフラップポケット(比翼仕立て)等の他の構造を有していても良い。
【0021】
本実施形態の変形例として、図2(c)に示されるように、保護部14a、14bとして、マスク本体部11のポケット布116(図5参照)と内布115(図5参照)をファスナー部13に縫い付けた後、ポケット布116の開口端から例えば1cm程度、上下のポケット布同士を縫った構造を用いても良い。このような構造によれば、ポケット布116でトンネルができてスライダー132を隠すことができる。
【0022】
このように本実施形態において、マスク本体部11の裏面のファスナー部13の両端位置に保護部14a、14bが配置されているため、ファスナー部13のスライダー132が開位置及び閉位置のそれぞれにあるとき、スライダー132が使用者に接触することを防ぐことができるため、金属アレルギー等の肌が敏感な使用者でも本実施形態のマスク10を使用することが可能である。なお本実施形態において、ファスナー部13のエレメント131等のスライダー132以外の部位は、樹脂や布であって金属ではない。また、後述のように本実施形態のマスク本体11は立体形状(滑らかな隆起形状)を有する。このため、ファスナー部13の全体に保護部を設ける必要は無い。通常のマスク装着時にはファスナー部13のスライダー132は閉位置にあり、飲食等の際にはファスナー部13のスライダー132は開位置(全開位置)にあるため、保護部はファスナー部13の両端位置にのみ配置されていれば良い。仮に、ファスナー部13の全体を覆うように保護部を配置すると、ファスナー部13の開閉動作を行うことができなくなるため、好ましくない。
【0023】
本実施形態の保護部14a、14bは、ファスナー部13の両端にそれぞれ配置された小片(隠し布)である。保護部14a、14bの大きさは、スライダー132(例えば、横幅1cm、縦幅9mm)と略同一であるか、スライダー132よりも大きいことが好ましい。ただし、布の素材によって厚みを出す等により使用者との接触を防ぐように構成した場合は、保護部14a、14bの横幅は、スライダー132の横幅よりも小さくてもよい。例えばスライダー132の横幅が1cmの場合、小片の横幅の最小値は約3mmであるが、好ましくは、小片の横幅は1cm以上である。また、小片の縦幅の最大値はマスク本体11の縦幅であり、横幅の最大値は、少なくともファスナー部13の一部が露出していれば良い。
【0024】
図3(a)に示されるように、使用者は、ファスナー13を開ける(スライダー132を開位置(全開位置)へ移動させる)ことにより、マスク10を装着したまま、マスク本体部11の一部(口元)を開けて(上下に分離させて)食事等を行うことができる。
【0025】
次に、図4(a)を用いて、マスク本体部11の裏面に設けられた収納部(ポケット部)15a、15bの構成について説明する。図4(a)は、マスク本体部11の裏面に設けられた収納部15a、15bの説明図である。図4(a)に示されるように、収納部15a、15bは、マスク本体部11の左端部111及び右端部112の両辺に開口151a1、151a2、151b1、151b2が形成されており、その他の部分(上辺及び下辺)は閉じられている。このため使用者は、開口151a1、151a2、151b1、151b2を介して、収納部15a、15bに不織布やフィルター等の収納物の出し入れが可能(収納可能)である。
【0026】
図4(a)において、点線部40a、40bは、収納部15a、15bに収納された不織布をそれぞれ示している。収納部15a、15bに使い捨てマスク等に採用されている不織布を挿入することで、一般的な感染防止目的のマスクと同等以上の感染防止効果を得ることができる。また、マスク本体部11の端まで収納部15a、15bが配置されているため、マスク本体部11の全面において感染防止効果が得られる。なお本実施形態において、収納部15a、15bにはそれぞれ、マスク本体部11の両端に開口が形成されているが、これに限定されるものではなく、マスク本体部11の左端部111又は右端部112のいずれか一辺のみに開口を形成しても良い。
【0027】
本実施形態において、マスク本体部11の少なくとも一部は、ファスナー部13により第1の本体部113aと第2の本体部113bとに分離される。収納部15a、15bはそれぞれ、第1の本体部113aの裏面に設けられた第1の収納部、及び、第1の収納部とは独立して第2の本体部113bの裏面に設けられた第2の収納部である。このように本実施形態では、マスク本体部11の中央部に横方向に沿ってファスナー部13が配置されているため、マスク本体部11の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納可能であるように、マスク本体部11には、互いに独立した2つの収納部15a、15bが上下に設けられている。
【0028】
次に、図5(a)、(b)を用いて、マスク本体部11の断面構造について説明する。図5(a)は、マスク本体部11の平面図である。図5(b)は、マスク本体部11の断面図であり、図5(a)中の線A-A’に沿った断面を示している。マスク本体部11は、表面から裏面に向かって、表布114、内布115、ポケット布116の3層構造を有する。後述のように、表布114は、上下の二つの表布114a、114bからなる。同様に、内布115は二つの内布115a、115bからなり、ポケット布116は二つのポケット布116a、116bからなる。内布115aとポケット布116aとにより収納部15aが構成され、内布115bとポケット布116bとにより収納部15bが構成される。
【0029】
内布115を備えていることにより、例えば、以下の3つのうち少なくとも1つの効果が得られることが期待される。第一に、内布115とポケット布116を設けることで、マスク本体部11の裏面におけるファスナー部13のテープ部分(エレメント131の両側の生地の部分) を隠すことができるため、ファスナー部13が使用者の肌に直接触れないように配慮してあり、肌当たりと高級感を出すことができる。第二に、飛沫防止効果が高まる。仮に不織布が無い場合でも、3枚以上の布を重ねていることにより、飛沫防止効果が高まる。第三に、不織布を収納する際に邪魔にならないようにすることができる。ファスナー部13のテープ部分がむき出しの場合、テープ部分が邪魔になってそのテープ部分の領域に不織布を収納することができない。一方、本実施形態のように三層構造(三枚仕立て)にすることにより、不織布を挿入する空間(ポケット部分)内でもファスナー部13のテープ部分がむき出しにならないため、不織布を入れるスペースが確保される。
【0030】
次に、図6を用いて、マスク本体部11に設けられたノーズワイヤー16a、16bについて説明する。図6は、マスク本体部11に設けられたノーズワイヤー16a、16bの説明図である。図6に示されるように、マスク本体部11の上辺及び下辺にはそれぞれ、ノーズワイヤー16a、16bが設けられている。本実施形態のようにマスク本体部11の横方向に沿ってファスナー部13を設けた場合、右利きの使用者と左利きの使用者とで、ファスナー部13の開閉方向を逆向きにすることが望まれる。このため本実施形態では、マスク本体部11の上下両方にノーズワイヤー16a、16bをそれぞれ挿入したことにより、マスク10を上下反転させて(すなわち、ファスナー部13の開閉方向を左右反転させて)使用することができる。その結果、右利き又は左利きのいずれの使用者にとっても、違和感なくマスク10を使用することが可能である。
【0031】
次に、図7(a)~(f)を用いて、マスク10の製造方法及びマスク本体部11の滑らかな隆起形状(立体形状)について説明する。図7(a)~(f)は、マスク10の製造方法を示す図である。まず、図7(a)に示されるように、マスク本体部11を構成する2つの表布114a、114bと、ファスナー部13を準備する。本実施形態において、表布114a、114bのそれぞれの横幅(マスク本体部11の横幅)は16.5cm、ファスナー部の長さは18cmである。
【0032】
従来のファスナー付きマスクでは、マスク本体部の幅と同じ長さのファスナー部が取り付けられていた。一方、本実施形態のマスク10では、図7(a)に示されるように、ファスナー部13がマスク本体部11に取り付けられる前の状態(分離している状態)において、ファスナー部13は、伸縮性が高い布からなるマスク本体部11の幅(横幅)よりも長い。
【0033】
続いて、図7(b)に示されるように、ファスナー部13の長さに合わせて2つの表布114a、114bを伸ばし(すなわち、上側の表布114aの下辺及び下側の表布114bの上辺をそれぞれ長さが18cmになるまで伸ばし)、これらを縫い付ける。
【0034】
続いて、図7(c)に示されるように、上側の表布114aの裏側に、内布115aとポケット布116aとを重ねてファスナー部13の長さに合わせて伸ばして縫い付ける。同様に、下側の表布114bの裏側に、内布115bとポケット布116bとを重ねてファスナー部13の長さに合わせて伸ばして縫い付ける。
【0035】
続いて、図7(d)に示されるように、上側の表布114aと内布115aとを重ねた状態でまとめてギャザー(布を縫い縮めたひだ)を寄せる。同様に、下側の表布114bと内布115bとを重ねた状態でまとめてギャザーを寄せる。本実施形態において、表布114a、114b及び内布115a、115bの縦幅はそれぞれ6cmであるが、図7(d)の工程を経ることによりこれらの縦幅が3.5cmとなる。
【0036】
続いて、図7(e)に示されるように、マスク本体部11の左端部111及び右端部112(左右の縦辺)をそれぞれ縁取りテープ(四つ折りテープ)17a、17bで包み、真っ直ぐにする。このとき、図7(d)の工程でマスク本体部11の両端にギャザーが入っているため、縁取りテープ17a、17bで包んだ際に、厚みが増して強度が上がり内側に押す力がかかる。また、図7(a)を参照して説明したように、ファスナー部13はマスク本体部11の横幅よりも長い。その結果、逃げ場の無くなったファスナー部13の長い分が立体的に浮き上がる(隆起形状が形成される)。このとき、マスク本体部11の両端にギャザーが入っているため、マスク本体部11の隆起形状がなだらかになる。なお本実施形態において、縁取りテープ17a、17bはマスク本体部11の生地を四つ折りにして構成されているが、これに限定されるものではなく、マスク本体部11の生地とは別の生地(当て布)を用いて縁取りテープを形成しても良い。
【0037】
続いて、図7(f)に示されるように、マスク本体部11の上端部及び下端部(上下の横辺)を縁取りテープ(四つ折りテープ)17c、17dで包む。これにより、マスク本体部11は、四方から支えられ、隆起形状を保つ。最後に、マスク本体部11の左端部111及び右端部112の両端に2つの耳掛け部12a、12bを連結して、マスク10が完成する。
【0038】
このように、本実施形態のマスク10を製造する際には、マスク本体部11を伸ばしてマスク本体部11の幅とファスナー部13の長さとを略一致させた状態で、ファスナー部13をマスク本体部11に取り付ける(縫い付ける)。これによりファスナー部13は、マスク本体部11の裏面側から表面側に向けて隆起した形状を有する状態で、マスク本体部11に取り付けられる。すなわちマスク本体部11のうちファスナー部13が取り付けられている部分は、裏面側から表面側へ向けて隆起した形状(隆起形状部18)を有する。隆起形状部18は、マスク本体部11の左端部111及び右端部112の両端から中央部に向けて滑らかに隆起している。
【0039】
このため本実施形態のマスク10によれば、使用者がマスク10を装着した状態において、使用者の肌とマスク本体部11との間に空間が形成されるため、使用者の肌とファスナー部13との距離を設けることができるとともに、使用者が呼吸しやすくなる。また、このような構成によれば、ファスナー部13のスライダー132が動きやすくなり、使用者が僅かな力を与えるだけでファスナー部13が開くようにすることが可能である。また、ファスナー部13が開くことで、伸縮性が高い布からなるマスク本体部11が縮む力が働くため、ファスナー部13が開きやすい。また、マスク本体部11の上部の布として固い生地を用い、マスク本体部11の下部の布として柔らかい生地を用いることにより、ファスナー部13を開いたとき、マスク本体部11の上部の布が原型を留める一方で、マスク本体部11の下部の布が生地の重み(自重)と柔らかさで下方向に下がるため、ファスナー部13が開きやすくなる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、図1(b)乃至図3(b)を用いて、本発明の第2の実施形態に係るマスク20の構成について説明する。図1(b)は、本実施形態に係るファスナー部23が閉じた状態のマスク20を表面から見た図である。図2(b)は、ファスナー部23が閉じた状態のマスク20を裏面から見た図である。図3(b)は、ファスナー部23が開いた状態のマスク20を表面から見た図である。
【0041】
図1(b)乃至図3(b)に示されるように、マスク20は、マスク本体部21、マスク本体部21の横方向(左右方向)の両端である左端部211及び右端部212にそれぞれ連結された2つの耳掛け部22a、22b、及び、使用者がマスク20を装着している状態でマスク本体部21を横方向(左右方向)に開閉可能に設けられたファスナー部23を有する。
【0042】
耳掛け部22a、22bにはそれぞれ、耳掛け部22a、22bの長さを調整する調整部228a、228bが設けられている。調整部228a、228bは、金属アレルギー等の肌の敏感な使用者を考慮して、樹脂で形成されることが好ましい。このような構成により、任意の使用者の顔の大きさや形にフィットしてマスク20を装着することができる。このため、使用者の頬とマスク本体部21との隙間を少なくすることで、感染防止効果を高めることが可能である。
【0043】
ファスナー部23は、エレメント(務歯)231と、エレメント231に対して開位置と閉位置との間で移動可能なスライダー232とを有する。スライダー232には、使用者がスライダー232を移動させるために保持する引手部233が設けられている。使用者は、マスク本体部21の表面側から引手部233を保持してスライダー232を移動させることで、エレメント231を噛み合わせ又は分離させてファスナー部23を開閉することができる。本実施形態において、エレメント231は樹脂からなり、スライダー232は金属からなる。ファスナー部23は、マスク本体部21の上端部221から下端部222に至るまで、マスク本体部21の縦方向に沿って設けられている。図1(b)に示されるように、マスク本体部21の下端部222は開放されている。
【0044】
図2(b)に示されるように、マスク本体部21の裏面において、ファスナー部23の両端のそれぞれに対応する位置に保護部24a、24bが設けられている。保護部24a、24bは、ファスナー部23のスライダー232が開位置及び閉位置にあるときに使用者に接触することを防ぐように機能する。本実施形態において、保護部24a、24bはそれぞれ小片(隠し布)であるが、これに限定されるものではなく、横長のフラップポケット(比翼仕立て)等の他の構造を有していても良い。また本実施形態において、マスク本体部21の下側の保護部24bは、片方の端が面ファスナーによってマスク本体部21のポケット布に接着する構造(分離可能)になっている。
【0045】
図3(b)に示されるように、使用者は、ファスナー部23を開けることにより、マスク20を装着したまま、マスク本体部21の一部(口元)を開けて(左右に分離させて)食事等を行うことができる。
【0046】
次に、図4(b)を用いて、マスク本体部21の裏面に設けられた収納部25a、25bの構成について説明する。図4(b)は、マスク本体部21の裏面に設けられた収納部25a、25bの説明図である。図4(b)に示されるように、マスク本体部21の裏面には、左右に2つの収納部25a、25bが設けられている。収納部25aは、マスク本体部21の左端部211に開口251aが形成されており、その他の部分は閉じられている。収納部25bは、マスク本体部21の右端部212に開口251bが形成されており、その他の部分は閉じられている。このため使用者は、開口251a、251bを介して、収納部25a、25bに不織布やフィルター等の収納物の出し入れが可能である。
【0047】
本実施形態において、マスク本体部21の少なくとも一部は、ファスナー部23により第1の本体部213aと第2の本体部213bとに分離される。収納部25a、25bはそれぞれ、第1の本体部213aの裏面に設けられた第1の収納部、及び、第1の収納部とは独立して第2の本体部213bの裏面に設けられた第2の収納部である。このように本実施形態では、マスク本体部21の中央部に縦方向に沿ってファスナー部23が配置されているため、マスク本体部21の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納可能であるように、マスク本体部21には、互いに独立した2つの収納部25a、25bが左右に設けられている。
【0048】
次に、マスク20の製造方法及びマスク本体部21の滑らかな隆起形状(立体形状)について説明する。まず、ファスナー部23がマスク本体部21に取り付けられる前の状態(分離している状態)において、ファスナー部23の長さは、第1の本体部213aと第2の本体部213bの上端部221から下端部222までの長さ(ファスナー部23を取り付ける箇所に沿った長さ)と略同一である。
【0049】
続いて、第1の本体部213aと第2の本体部213bに使用する生地について、ダーツに相当する部分(生地を立体化するために生地に取る摘みの部分)を切り抜いた生地とファスナー部23を縫い合わせることにより、裏面側から表面側へ向けて隆起した形状(隆起形状)を形成する。このとき、マスク本体部21の中心に縦方向にファスナー部23が取り付けられることによって、隆起形状を維持しやすくする。また、マスク本体部21に固い生地を採用することにより、ファスナー部23が開いた際、元の原形を留めようとする力によってマスク本体部が開く。
【0050】
なお本実施形態のマスク本体部21は、第1の実施形態のマスク本体部11と同様の製造方法により、マスク本体部21のうちファスナー部23が取り付けられている部分が裏面側から表面側へ向けて隆起した形状(隆起形状部)を有するように構成することができる。
【0051】
各実施形態によれば、ファスナーを設けて口元の開閉動作が可能なマスクにおいて、ファスナーによる金属アレルギーへの対策を講じたマスクを提供することができる。また、各実施形態によれば、マスク本体部の裏面全体に不織布やフィルター等を適切に収納することが可能なマスクを提供することができる。また、各実施形態によれば、使用者が呼吸しやすく、かつファスナーを容易に開けることが可能なマスク及びその製造方法を提供することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10、20 マスク
11、21 マスク本体部
12a、12b、22a、22b 耳掛け部
13、23 ファスナー部
14a、14b、24a、24b 保護部
15a、15b、25a、25b 収納部
16a、16b ノーズワイヤー
17a、17b 縁取りテープ
18 隆起形状部
151、251 開口
111、211 左端部
112、212 右端部
113a、213a 第1の本体部
113b、213b 第2の本体部
114a、114b 表布
115a、115b 内布
116a、116b ポケット布
131、231 エレメント
132、232 スライダー
133、233 引手部
221 上端部
222 下端部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7