(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102566
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】食材保管庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20220630BHJP
A23L 3/3409 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
A23L3/3409
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217376
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅司
(72)【発明者】
【氏名】原 輝道
(72)【発明者】
【氏名】淺野 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一
(72)【発明者】
【氏名】土江 秀樹
【テーマコード(参考)】
3L345
4B021
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA25
3L345DD42
3L345EE13
3L345EE45
3L345FF04
3L345FF35
3L345GG21
3L345HH12
3L345HH32
3L345HH36
3L345HH42
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
4B021LT03
4B021MC01
4B021MK13
(57)【要約】
【課題】より低コストに庫内の雰囲気を調整することができる食材保管庫の提供
【解決手段】食材保管庫1は、保管庫本体10と、雰囲気調整ユニット40(ガス分離部の一例)と、を備えている。雰囲気調整ユニット40は、貯蔵室15(保管庫本体の一例)の内部の気体を取り入れて成分分離に供することと、貯蔵室15の外部の気体を取り入れて成分分離に供することと、を切り替え可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を保管することができる保管庫本体と、
気体を取り入れて成分分離することで、前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスを前記保管庫本体に供給するガス分離部と、
を備え、
前記ガス分離部は、
前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて前記成分分離に供することと、
前記保管庫本体の外部の気体を取り入れて前記成分分離に供することと、
を切り替え可能な構成を備えている、食材保管庫。
【請求項2】
前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくとも酸素を分離することができるものであって、前記第1成分は酸素を含み、前記第1ガスは前記気体よりも酸素の濃度が低減された酸素プアガスである、請求項1に記載の食材保管庫。
【請求項3】
前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくともエチレンを分離することができるものであって、前記第1成分はエチレンを含み、前記第1ガスは前記気体よりもエチレンの濃度が低減されたエチレンプアガスである、請求項1または2に記載の食材保管庫。
【請求項4】
前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくとも水分を分離することができるものであって、前記第1成分は水分を含み、前記第1ガスは前記気体よりも水分の濃度が低減されたドライガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項5】
前記ガス分離部は、気体を取り入れて成分分離することで、
前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスを前記保管庫本体に供給することと、
前記気体から前記第1ガスを取り除いた残りのガスであって、前記第1成分の濃度が高められた第2ガスを前記保管庫本体に供給することと、
を切り替え可能な構成を備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項6】
前記保管庫本体の内部の圧力を検知する圧力検知部を備え、
前記圧力検知部によって検知される前記保管庫本体の内部の圧力が予め設定されていた下閾値以下となったときに、前記保管庫本体の外部の気体を取り入れて前記成分分離に供し、
前記圧力検知部によって検知される前記保管庫本体の内部の圧力が予め設定されていた上閾値以上となったときに、前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて前記成分分離に供する構成を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項7】
前記ガス分離部は、気体を取り入れて成分分離するときに、
前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスの生成量と、
前記気体から前記第1ガスを取り除いた残りのガスであって、前記第1成分の濃度が高められた第2ガスの生成量と、
が等しくなるように前記成分分離を行う構成を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項8】
前記保管庫本体の内部の気体に除去対象である第3成分が含まれているとき、
前記ガス分離部は、
前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて成分分離することで、前記第3成分の濃度が低減された第3ガスを前記保管庫本体に供給するとともに、前記第3成分の濃度の高められた第4ガスを前記保管庫本体から排出することと、
前記保管庫本体の外部の気体であって、前記保管庫本体の内部の前記気体よりも前記第3成分の含有量が低い気体を取り入れて、前記成分分離に供することで、前記第4ガスに対して前記第3成分の濃度が低減されているガスを生成し、前記保管庫本体に供給すること、
を実行する構成を備えている、請求項1~7のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項9】
前記ガス分離部は、空気を成分分離することによって、前記空気よりも窒素濃度が高められた窒素リッチガスを生成することができる窒素分離膜を備えている、請求項1~8のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項10】
前記保管庫本体は、一の面が開口した箱体と、前記開口を開閉する扉とを備え、
前記箱体および前記扉は、前記扉を閉じた状態において密閉構造を実現するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項11】
前記保管庫本体の内部の空気を冷却することができる冷却装置を備えている、請求項1~10のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【請求項12】
前記保管庫本体との間に隙間をもって配置される内装箱と、
前記保管庫本体と前記内装箱との間の空間の空気を冷却することができる冷却装置と、
を備え、
前記ガス分離部は、前記第1ガスを前記保管庫本体と前記内装箱との間の空間に供給することが可能な構成を備えている、請求項1~11のいずれか1項に記載の食材保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、食材保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食材を保管する食材保管庫の一例として、庫内空気の組成を調節する庫内空気調節装置を備えたものが知られている。下記の特許文献1には、例えば、倉庫や輸送コンテナ内の空気の組成を収容される農産物等の貨物の貯蔵に適したものに調節する庫内空気調節装置が開示されている。この庫内空気調節装置は、農産物等の呼吸によって濃度が高められる庫内の二酸化炭素を外部へ排出し、庫内空気の二酸化炭素濃度を低下させる構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の庫内空気調節装置は、供給用空気を分離する第1分離部と、排出用空気を分離する第2分離部の2つの分離部を備える必要があり、コストがかさむことに加え、設置のためのスペースを要するという課題がある。
本技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、より低コストに庫内の雰囲気を調整することができるを食材保管庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本技術に係る食材保管庫は、食材を保管することができる保管庫本体と、気体を取り入れて成分分離することで、前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスを前記保管庫本体に供給するガス分離部と、を備え、前記ガス分離部は、前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて前記成分分離に供することと、前記保管庫本体の外部の気体を取り入れて前記成分分離に供することと、を切り替え可能な構成を備えている。
【0006】
(2)また、本技術の一実施形態では、上記(1)の構成に加え、前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくとも酸素を分離することができるものであって、前記第1成分は酸素を含み、前記第1ガスは前記気体よりも酸素の濃度が低減された酸素プアガスであってよい。
【0007】
(3)また、本技術の一実施形態では、上記(1)または(2)の構成に加え、前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくともエチレンを分離することができるものであって、前記第1成分はエチレンを含み、前記第1ガスは前記気体よりもエチレンの濃度が低減されたエチレンプアガスであってよい。
【0008】
(4)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(3)のいずれか1つの構成に加え、前記ガス分離部は、気体を取り入れて少なくとも水分を分離することができるものであって、前記第1成分は水分を含み、前記第1ガスは前記気体よりも水分の濃度が低減されたドライガスであであってよい。
【0009】
(5)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(4)のいずれか1つの構成に加え、前記ガス分離部は、気体を取り入れて成分分離することで、前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスを前記保管庫本体に供給することと、前記気体から前記第1ガスを取り除いた残りのガスであって、前記第1成分の濃度が高められた第2ガスを前記保管庫本体に供給することと、を切り替え可能な構成を備えていてもよい。
【0010】
(6)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(5)のいずれか1つの構成に加え、前記保管庫本体の内部の圧力を検知する圧力検知部を備え、前記圧力検知部によって検知される前記保管庫本体の内部の圧力が予め設定されていた下閾値以下となったときに、前記保管庫本体の外部の気体を取り入れて前記成分分離に供し、前記圧力検知部によって検知される前記保管庫本体の内部の圧力が予め設定されていた上閾値以上となったときに、前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて前記成分分離に供する構成を備えていてもよい。
【0011】
(7)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(6)のいずれか1つの構成に加え、前記ガス分離部は、気体を取り入れて成分分離するときに、前記気体に含まれる第1成分の濃度が低減された第1ガスの生成量と、前記気体から前記第1ガスを取り除いた残りのガスであって、前記第1成分の濃度が高められた第2ガスの生成量と、が等しくなるように前記成分分離を行う構成を備えていてもよい。
【0012】
(8)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(7)のいずれか1つの構成に加え、前記保管庫本体の内部の気体に除去対象である第3成分が含まれているとき、前記ガス分離部は、前記保管庫本体の内部の気体を取り入れて成分分離することで、前記第3成分の濃度が低減された第3ガスを前記保管庫本体に供給するとともに、前記第3成分の濃度の高められた第4ガスを前記保管庫本体から排出することと、前記保管庫本体の外部の気体であって、前記保管庫本体の内部の前記気体よりも前記第3成分の含有量が低い気体を取り入れて、前記成分分離に供することで、前記第4ガスに対して前記第3成分の濃度が低減されているガスを生成し、前記保管庫本体に供給すること、を実行する構成を備えていてもよい。
【0013】
(9)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(8)のいずれか1つの構成に加え、前記ガス分離部は、空気を成分分離することによって、前記空気よりも窒素濃度が高められた窒素リッチガスを生成することができる窒素分離膜を備えていてもよい。
【0014】
(10)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(9)のいずれか1つの構成に加え、前記保管庫本体は、一の面が開口した箱体と、前記開口を開閉する扉とを備え、前記箱体および前記扉は、前記扉を閉じた状態において密閉構造を実現するように構成されていてもよい。
【0015】
(11)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(10)のいずれか1つの構成に加え、前記保管庫本体の内部の空気を冷却することができる冷却装置を備えていてもよい。
【0016】
(12)また、本技術の一実施形態では、上記(1)~(11)のいずれか1つの構成に加え、前記保管庫本体との間に隙間をもって配置される内装箱と、前記保管庫本体と前記内装箱との間の空間の空気を冷却することができる冷却装置と、を備え、前記ガス分離部は、前記第1ガスを前記保管庫本体と前記内装箱との間の空間に供給することが可能な構成を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、より低コストに庫内の雰囲気を調整することができる食材保管庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1の食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図7】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図9】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図14】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図15】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図16】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図17】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【
図18】他の実施形態に係る食材保管庫の構成を概念的に示す正断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪実施形態1≫
一実施形態に係る食材保管庫について、
図1ないし
図6に基づいて説明する。本実施形態では、ホテルやレストラン等の調理場において使用される、テーブル型の食材保管庫1を例示している。この食材保管庫1は、保管庫内の雰囲気を保管する食材等に適した状態に保つ機能を有している。
図1に示す符号U,D,L,Rはそれぞれ、食材保管庫1を正面から視たときの上,下,左,右を表す。ただし、これらの方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。また、
図2等に示す雰囲気調整ユニット40は、その構成を分かりやすく説明するために、便宜的に食材保管庫1の上方に概念図として示している。
【0020】
食材保管庫1は、
図1および
図2に示すように、全体として横長の直方体形状をなし、上面を調理台として利用できるようにその形状等が設計されている。食材保管庫1は、前面が開口した横長の断熱箱体からなる本体10とこの開口を閉じる扉14,14とを備えている。この本体10は、ステンレス鋼板製の外箱11内に、ABS樹脂等の合成樹脂製の内箱12が嵌められ、外箱11と内箱12との間には発泡樹脂等の断熱材13が充填されている。本体10の前面開口には、一対の断熱扉14,14が観音開き式に装着されており、開口を扉14,14で閉じることで貯蔵室15が画成される。扉14,14の断熱構造は、概ね本体10と同様である。このように、一つの開口を二つの扉14,14によって開閉することで、貯蔵室15の雰囲気の変動を抑制して、食品等の保管物を貯蔵室15に出し入れすることができる。なお、本体10および扉14,14が、本技術の保管庫本体の一例である。
【0021】
扉14,14は、本体10の前面の開口縁部10A(前面開口の周縁部)のうち左側部と右側部とに対し、上下一対のヒンジ機構Hを介して取付けられている。扉14,14を閉じたときに貯蔵室15の側を向く背面14Aの周縁部には、枠状に磁性パッキン16が装着されている。磁性パッキン16は、扉14,14を閉じたときに開口縁部10Aと対向する位置と、一対の扉14,14の間とに取り付けられ、閉扉時の貯蔵室15の気密性を確保できるようになっている。磁性パッキン16は、磁性材料が混ぜられた弾性体からなるシール部材であり、本体10の開口縁部に埋設された磁気部材に吸着されて扉14,14と開口縁部10Aとを密閉する。なお、扉14,14の下縁にはそれぞれマグネット17Aが備えられ、開口縁部10Aのうち閉扉時にマグネット17Aに近接する位置には磁気感応型の近接スイッチ17B(例えば、リードスイッチ)が備えられている。そして、例えば、扉14,14が正常に閉じられたときに、扉14,14のマグネット17Aに感応して近接スイッチ17Bが閉じることにより、閉扉状態が検知されるようになっている。近接スイッチ17Bとマグネット17Aとは、扉センサ17の一例であり、扉センサ17は後述する制御装置60に電気的に接続されている。
【0022】
この貯蔵室15には、貯蔵室15の内外を連通する導入口15Aおよび排出口15Bと、圧力センサ18(圧力検知部の一例)と、が設けられている。導入口15Aおよび排出口15Bは、後述する雰囲気調整ユニット40と接続され、本実施形態において、導入口15Aは、後述する冷却器室20に設けられており、排出口15Bは貯蔵室15の右上方に設けられている。圧力センサ18は、貯蔵室15の圧力を検知する要素であり、これに限定されるものではないが、例えば、半導体隔膜式圧力センサを用いることができる。半導体隔膜式圧力センサは、庫内の空気にさらされる金属ダイアフラムとシリコンゲージを有するシリコンダイアフラムとの間にシリコンオイルが封入されており、庫内圧に応じてシリコンチップが撓むことに伴い変化するシリコンゲージの抵抗を、電気信号に変換して検出することができる。
【0023】
本体10の正面から見た左側には機械室30が設けられている。機械室30の前面上部には、操作部65が設置されている。操作部65は、制御装置60に電気的に接続されており、図示しない入力部(例えば、操作ボタン)および表示部(液晶パネル)などが設けられている。この入力部によって、例えば、食材保管庫1の各種動作の指示および設定を行ったりすることができ、表示部によって、食材保管庫1の各部のステータス情報や運転条件等を表示したりすることができる。機械室30の上部後方には、貯蔵室15が機械室30に張り出す形で設けられた断熱性の冷却器室20が配されており、この冷却器室20には冷却器21と冷却ファン22と庫内サーミスタ23とが設置されている。機械室30のうち、冷却器室20の左方および下方にわたる空間が収納スペースとされ、この収納スペースには、圧縮機32、凝縮器33、凝縮器ファン34(
図1参照)、および膨張弁(図示せず)等と、後述する雰囲気調整ユニット40および制御装置60が収納されている。圧縮機32、凝縮器33、および冷却器21の間は冷媒管35で繋がれており、各部に冷媒を循環させることで既知の冷凍サイクルを実現する冷凍装置31を構成している。冷凍装置31の各要素(冷却器21、冷却ファン22、庫内サーミスタ23、圧縮機32、凝縮器ファン34、および膨張弁等)は制御装置60に電気的に接続されている。
【0024】
貯蔵室15の左方には、冷却器室20の開口および貯蔵室15の左下側壁を覆う形で板状の合成樹脂からなるダクト24が設けられている。ダクト24の上端と貯蔵室15の天井との隙間が吹出口26となり、ダクト24の下端と貯蔵室15の底面との隙間が吸入口25となり、庫内の空気を貯蔵室15の下方から冷却器21の下方にまで導くことができるようになっている。冷却ファン22は、冷却器21に対して貯蔵室15の側であって、このダクト24の上方に取り付けられ、回転駆動することで、冷却器21の側から貯蔵室15に向かう気流を発生できるように構成されている。また、導入口15Aは、この気流における冷却器21の上流側に配されている。
【0025】
雰囲気調整ユニット40は、空気を取り入れて成分分離することで、少なくとも、取り入れる前の空気よりも酸素濃度が高められた酸素リッチガスと、取り入れる前の空気よりも酸素濃度が低減された酸素プアガスとを生成する要素である。雰囲気調整ユニット40は、機械室30の内部に設置されているが、
図2においては、食材保管庫1の上方に、その構成を模式的に示している。本実施形態の雰囲気調整ユニット40(ガス分離部の一例)は、送気部Pと、フィルタユニットFと、分離体41と、酸素プア流路42(第1流路の一例)、酸素リッチ流路43(第2流路の一例)、空気流路44、弁体45、庫内流路46、および庫外流路47を備えている。以下、各要素について説明する。
【0026】
分離体41は、雰囲気調整ユニット40の主体となる要素であり、空気を取り入れて成分分離することで酸素濃度が低減された酸素プアガスを分離することができる各種の空気分離装置を利用することができる。空気分離装置における成分分離プロセス等は特に制限されず、例えば、いわゆる深冷分離法、吸着分離法、および膜分離法等であってよい。なかでも、比較的コンパクトに装置を構成でき、運転操作およびメンテナンスが容易であり、比較的小容量の気体の処理に適する等の特徴を有する、膜分離法による空気分離装置を採用するとよい。空気分離装置は、酸素を選択的に分離する分離膜を用いたものであってよいし、その他の成分を選択的に分離する分離膜を用いたものであってもよい。ここで、庫内で食材を保管するにあたり、庫内の空気(雰囲気)は、食材の劣化を促進する酸素の含有量が低いことが望ましい。また、食材によっては、呼吸に伴い食材の保管に適さない成分(例えば、エチレンガス等)や異臭成分(例えば、アルコールやアセトアルデヒド等)を分泌・排出することがあり、これらの成分の含有量を低減できることも望まれる。かかる観点において、本実施形態における分離体41としては、不活性ガスである窒素を選択的に分離する分離膜を用いている。分離体41は、例えば、窒素富化ガスの生成に利用される窒素分離膜を好ましく用いることができる。空気の組成は、凡そ窒素78.1体積%、酸素20.9体積%、アルゴン0.93体積%、二酸化炭素0.04体積%、および水蒸気0.0~3.0体積%等となっており、例えば、
図3に示すように、空気(雰囲気)から窒素を分離することで自然と酸素プアガスを得ることができ、残余のガスとして、比較的酸素濃度の高い酸素リッチガスを効率よく取り除くことができるためである。また、窒素を選択的に分離することで、間接的に、上記の食材の保管に適さない成分や異臭成分を取り除くこともできる。
【0027】
窒素分離膜は、これに限定されるものではないが、熱的安定性、化学的安定性、および機械的特性に優れたポリイミド等の高分子を中空糸状に形成した膜を主体とする高分子分離膜であってよい。窒素分離膜は、例えば窒素と強い親和性を有する低分子化合物を保持体(キャリア)としてポリイミド膜に担持させることで、ポリイミドの一次構造(高分子鎖間隙)に基づく高い透過性と、キャリアに基づく選択性と、が同時に得られるようにしたものであってよい。また、窒素分離膜は、オキシエチレン基等の極性基を高分子鎖中に導入して溶解度選択性を向上させたものであってよい。このような窒素分離膜としては、例えば、23℃において空気から窒素ガス濃度が95体積%以上、例えば99.5体積%以上の窒素富化ガスを生成することができるダイセル・エボニック株式会社製の「SEPURUN(登録商標) N2メンブラン」等を好適例として挙げられる。分離体41は、成分分離対象である空気を導入するための導入口41A(本技術における導入部の一例)と、成分分離された酸素プアガスが送られる第1送気口41Bと、成分分離後の酸素リッチガスが送られるの第2送気口41Cと、を備えている。
【0028】
酸素プア流路42は、酸素プアガスを送る流路であり、例えばシリコンチューブ等により構成されている。酸素プア流路42は、一端が分離体41の第1送気口41Bに接続され、他端が貯蔵室15の導入口15Aに接続されている。酸素リッチ流路43は、酸素リッチガスを送る流路であり、例えばシリコンチューブ等により構成されている。酸素リッチ流路43は、一端が分離体41の第2送気口41Cに接続され、他端が食材保管庫1の外部に開放されている。酸素リッチ流路43の分離体41に接続されていない側の端部は、本技術における外部排出口の一例である。空気流路44は、分離体41に成分分離する空気を送るための流路であり、例えばステンレス等の金属管などにより構成されている。空気流路44は、一端が分離体41の導入口41Aに接続され、他端が弁体45に接続されている。空気流路44には、弁体45の側から順に、フィルタユニットFと、送気部Pと、が介装されている。フィルタユニットFは、分離体41に送られる空気から埃やゴミ等の異物および水分を除去する要素であり、分離体41の性能低下を抑制するために設けられる。フィルタユニットFは、例えば、粒径が1μm以上の粒子の捕集率が30%以上(典型的には、30~95%)の中性能フィルタ等と呼ばれるものであってよい。送気部Pは、分離体41に所定の流量で空気を送るための要素であり、例えば所定の流量で空気を送ることができるエアポンプ等により構成される。
【0029】
弁体45は、分離体41に接続する空気流路44に送る空気を、貯蔵室15の内部の空気(庫内空気)と、貯蔵室15の外部の空気(庫外空気)と、で切り替える要素である。本実施形態における弁体45は、電磁三方弁であり、例えば、空気流路44と、貯蔵室15の排出口15Bに接続される庫内流路46と、貯蔵室15の外部に開放されている庫外流路47と、に接続されている。庫外流路47は、本技術における外気導入口の一例である。弁体45は、例えば
図2に示すように、内部に屈曲した流路を一つ有する回転体を備えており、この回転体を回転させることにより、内部流路の連通先を切り替えられるようになっている。弁体45は、制御装置60に電気的に接続されており、空気流路44の連通先を、庫内流路46と庫外流路47とで電磁的に切り替えることができる流路切換弁として構成されている。弁体45が、空気流路44の連通先を庫内流路46としている状態を「内気換気」といい、空気流路44の連通先を庫外流路47としている状態を「外気換気」という。
【0030】
制御装置60は、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種の情報を記憶する記憶部Mと、計時機能を有するタイマT等とを有するマイクロコンピュータを主体として構成され、有線または無線を介して食材保管庫1の各部(扉センサ17、冷凍装置31、弁体45等)と通信可能に接続されている。本実施形態における制御装置60は、
図4に示すように、食材保管庫1の貯蔵室15の温度を所定の温度に保つ温度制御部61と、食材保管庫1の貯蔵室15の雰囲気を所定の条件に保つ雰囲気制御部62と、を備えている。これらの温度制御部61および雰囲気制御部62は、例えば、電子回路やマイクロコンピュータ等のハードウェアで構成されていてもよいし、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されるように構成されていてもよい。
【0031】
温度制御部61は、例えば、食材保管庫1の主電源(図示せず)がONに入力されると冷凍装置31を駆動して、庫内の温度を予め設定された冷蔵温度に保つように構成されている。冷凍装置31が運転を開始すると、冷却ファン22が回転することにより、
図2の矢線に示すように、貯蔵室15の内部の空気が吸入口25から冷却器室20内に引かれ、冷却器21の下方に導入される。そして、冷却器室20の空気は、冷却器21を通過する間に冷却されて、冷気となって吹出口26から庫内に吹き出される。このように、庫内の空気は貯蔵室15および冷却器室20の循環を重ねることで、所定の冷蔵温度にまで冷却される。温度制御部61は、庫内サーミスタ23によって検知された庫内の空気の温度が予め設定された冷蔵温度に到達すると、庫内の温度がこの冷蔵温度を維持するように冷凍装置31を駆動させる(例えば、冷蔵温度±1度程度の範囲を保つように間欠運転する)。これにより、保管する食材等に適した温度に貯蔵室15の庫内温度を保つことができる。
【0032】
雰囲気制御部62は、例えば、食材保管庫1の主電源(図示せず)がONに入力されると庫内の雰囲気制御運転を開始する。すなわち、例えば
図5に示すように、工程S1において弁体45を内気換気の状態(
図2参照)として、送気部Pの運転を開始する。すると、貯蔵室15内の空気は、排出口15B、庫内流路46、弁体45、および空気流路44(送気部PおよびフィルタユニットF)を通って分離体41に送られる。分離体41では、送られた空気を酸素プアガスと酸素リッチガスとに分離する。酸素プアガスは、第1送気口41B、酸素プア流路42、および導入口15Aを通って、貯蔵室15に戻される。酸素リッチガスは、第2送気口41C、酸素リッチ流路43を通って食材保管庫1の外部に排出される。これにより、庫内の雰囲気を直接的に酸素プアガスに換気することができる。なおこのとき、導入口15Aは冷却器21の上流側に配されていることから、庫外から庫内に導入する相対的に暖かいガスは、冷却器21で効率よく冷却されるため、貯蔵室15内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0033】
なお、内気換気によると、貯蔵室15から排出される空気よりも貯蔵室15に戻される酸素プアガスの方が量が少ないため、内気換気を継続すると貯蔵室15の空気が薄くなって圧力が低下する。その結果、食材保管庫1の扉14,14を開けづらい等の不都合が生じ得る。また、庫内の洗浄メンテナンスを容易にするために排水口(図示せず)を貯蔵室15の底面に備えた食材保管庫1においては、衛生状態を管理しづらい排水管内の空気や排水が逆流するなどし、庫内の衛生状態を著しく悪化させることが懸念される。そこで、雰囲気制御部62は、工程S2に示すように、圧力センサ18によって貯蔵室15雰囲気の圧力を監視する。そして、雰囲気制御部62は、庫内の圧力が予め定められた所定の圧力P1(下閾値)以下となったことを検知すると(工程S2においてYES)、さらに内気換気を行うと庫内の雰囲気が適切でなくなる恐れがあると判断して、工程S3に示すように、弁体45を外気喚起に切り替える(
図5参照)。圧力P1は、これに限定されるものではないが、食材保管庫1の設置場所(高度等)を考慮して、例えば、「外気圧-(20~50)hPa」程度と設定することができる。圧力P1は、例えば予め記憶部Mに記憶される。
【0034】
外気換気においては、食材保管庫1の外部の空気が、庫外流路47、弁体45、および空気流路44(送気部PおよびフィルタユニットF)を通って分離体41に送られる。分離体41では、上記と同様に、送られた空気を酸素プアガスと酸素リッチガスとに分離し、生成された酸素プアガスは、第1送気口41B、酸素プア流路42、および導入口15Aを通って、貯蔵室15に供給される。生成された酸素リッチガスは、第2送気口41C、酸素リッチ流路43を通って食材保管庫1の外部に排出される。これにより、内気換気によって低下された庫内の圧力が回復される。
【0035】
外気換気によると、貯蔵室15からの空気の排出がない状態で外部の空気から生成された酸素プアガスが供給されるため、外気換気を継続すると貯蔵室15の空気が過剰となって圧力が高められる。しかしこの間、貯蔵室15の内部で発生した食材の保管に適さない成分を庫外に排出することができない。そこで、雰囲気制御部62は、工程S4に示すように、圧力センサ18によって貯蔵室15雰囲気の圧力を監視する。そして、雰囲気制御部62は、庫内の圧力が予め定められた所定の圧力P2(上閾値)以上となったことを検知すると(工程S4においてYES)、庫内圧力が十分に回復されていると判断し、工程S5に示すように、弁体45を内気喚起に切り替える(
図5参照)。圧力P2は、これに限定されるものではないが、食材保管庫1の設置場所(高度等)を考慮して、例えば、「外気圧+(10~30)hPa」程度に設定することができる。圧力P2は、例えば予め記憶部Mに記憶される。雰囲気制御部62は、工程S5の後は、再び工程1の後に戻り、工程S2から工程S5までを繰り返し実行することができる。雰囲気制御部62は、例えば操作部65を介して、雰囲気制御運転の停止の指示(例えば、工程SS1,工程SS2)がなされたときは、雰囲気制御運転を停止する。
【0036】
なお、雰囲気制御部62は、扉センサ17によって扉14,14の開閉状態を監視し、扉14,14が閉状態にあるときに上記雰囲気制御運転を実行し、扉14,14が開状態にあるときは上記雰囲気制御運転を停止するように構成されていてもよい。また、雰囲気制御部62は、扉14,14が開状態から閉状態に変わったときに、雰囲気制御運転を工程S1から開始するように構成されていてもよい。
【0037】
以上の食材保管庫1は、保管庫本体10と、雰囲気調整ユニット40(ガス分離部の一例)と、を備えている。雰囲気調整ユニット40は、貯蔵室15(保管庫本体の一例)の内部の気体を取り入れて成分分離に供することと、貯蔵室15の外部の気体を取り入れて成分分離に供することと、を切り替え可能に構成されている。
【0038】
上記構成によると、食材保管庫1の内部の空気(庫内の空気)と外部の空気(庫外の空気)とを選択して、いずれかの空気から雰囲気調整ユニット40によって酸素プアガスを生成して庫内に供給することができる。これにより、2つの雰囲気調整ユニットを用いる必要がなく、低コストに庫内の雰囲気を調整することができる。また、例えば弁体45の切り替えによって、導入部の連通先を排出口15Bとすることで、庫内の空気から直接的に酸素を取り除くことができ、庫内をダイレクトかつ迅速に酸素プア雰囲気とすることができる。なお、このとき、庫内のガス量が減少するため陰圧となり得るが、弁体45によって導入口41Aの連通先を外気導入口である庫外流路47に切り替えることで、庫外の空気から酸素プアガスを生成して食材保管庫に供給し、陰圧を解消することができる。これにより、食材保管庫1内の雰囲気を効率よく調整することができる。また、上記の構成の雰囲気調整ユニット40によると、例えば、庫内の空気および庫外の空気の分離に1つの分離体41を使用できるため、雰囲気調整ユニット40をコンパクトに構成することができる。
【0039】
また、上記の食材保管庫1において、雰囲気調整ユニット40は、気体を取り入れて少なくとも酸素を分離することができるものであって、第1成分は酸素を含み、第1ガスは上記気体よりも酸素の濃度が低減された酸素プアガスである。このような構成によると、庫内に食材の劣化(例えば、腐敗)を促す酸素の濃度が低い酸素プアガスを供給することができ、庫内の雰囲気を酸素プア雰囲気に換えることができる。これにより、保管対象である食材の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、上記の食材保管庫1において、貯蔵室15(保管庫本体の一例)の内部の圧力を検知する圧力センサ18(圧力検知部の一例)を備えている。そして食材保管庫1は、圧力センサ18によって検知される貯蔵室15の内部の圧力が予め設定されていた下閾値以下となったときに、貯蔵室15の外部の気体を取り入れて成分分離に供し、圧力センサ18によって検知される貯蔵室15の内部の圧力が予め設定されていた上閾値以上となったときに、貯蔵室15の内部の気体を取り入れて成分分離に供する構成を備えている。このような構成によると、弁体45の切り替えは、制御装置60が庫内圧力に基づいて自動的に実行することができる。これにより、人手を要することなく簡便かつ適切に庫内の雰囲気を制御することができる。
【0041】
以上の食材保管庫1において、雰囲気調整ユニット40は、空気を成分分離することによって、空気よりも窒素濃度が高められた窒素リッチガスを生成することができる窒素分離膜を備えている。空気における最大成分は窒素であることから、空気から窒素を選択的に取り出して酸素プアガスとすることで、当該酸素プアガスにおける酸素含有量を高いレベルで低減することができる。また、空気を成分分離する方法のうちでも、窒素分離膜を用いる膜分離法は、比較的コンパクトな構成で空気から窒素を分離することができ、分離の始動と停止の切り替えが容易、かつ、騒音が生じ難い等の利点がある。そのため、膜分離法により空気からの窒素分離を行う窒素分離膜を食材保管庫に適用することで、上記利点を好適に発揮できるために好ましい。
【0042】
以上の食材保管庫1において、保管庫本体10は、一の面が開口した貯蔵室15(箱体の一例)と、上記開口を開閉する扉14,14とを備え、貯蔵室15は、扉14,14を閉じた状態において密閉構造を実現するように構成されている。具体的には、扉14,14には、扉14,14を閉じたときに開口縁部10Aと対向する位置と、一対の扉14,14の間とに磁性パッキン16が取り付けられており、閉扉状態において貯蔵室15を密閉状態に保つことができるようになっている。このような食材保管庫1は、気密性が高いために、雰囲気制御によって庫内の圧力が敏感に増減し得る。したがって、このような気密性の高い食材保管庫1にここに開示される技術を適用すると、その効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0043】
以上の食材保管庫1は、貯蔵室15の内部の空気を冷却することができる冷却装置を備えている。食材保管庫は、冷蔵または冷凍保存が必要な食材を保管する冷蔵貯蔵庫や冷凍貯蔵庫であってもよい。そのような食材は、一般的に、酸素を含む雰囲気において劣化が促進されるものが多い。これに対し、ここに開示される食材保管庫1は、庫内の雰囲気を酸素プア雰囲気とするように雰囲気制御することができる。とくに、分離体41として窒素分離膜を用いた食材保管庫1については、庫内を不活性ガスである窒素の含有量の高い酸素プア雰囲気とすることができ、例えば、保管環境において菌等の繁殖を抑制することができる。したがって、このような食材を保管する用途の食材保管庫1にここに開示される技術を適用すると、その効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0044】
≪実施形態2≫
実施形態2に係る食材保管庫101について、
図7および
図8を参照しつつ説明する。食材保管庫101に備えらえる雰囲気調整ユニット140(ガス分離部の一例)において、分離体41によって酸素濃度が低減された酸素プアガスを送る酸素プア流路42(第1流路の一例)と、分離体41によって酸素濃度が高められた酸素リッチガスを送る酸素リッチ流路43(第2流路の一例)は、その端部が第2弁体48に接続されている。第2弁体48は、さらに、貯蔵室15(箱体)の導入口15Aに接続する供給流路49Aと、食材保管庫101の外部に開放される外部流路49Bと、にも接続されている。そして、第2弁体48は、供給流路49Aの連通先を酸素プア流路42と酸素リッチ流路43との間で切り替え可能な流路切換弁として構成されている。その他の構成については上記実施形態1と同様であり、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0045】
第2弁体48は、内部に屈曲した流路を二つ有する回転体を備えている。そして第2弁体48は、この回転体を回転させることにより、(1)酸素プア流路42と供給流路49A、酸素リッチ流路43と外部流路49Bを連通して、庫内に酸素プアガスを送る第1の状態(
図7参照)と、(2)酸素プア流路42と外部流路49B、酸素リッチ流路43と供給流路49Aを連通して、庫内に酸素リッチガスを送る第2の状態(
図8参照)と、に切り替えられるようになっている。第2弁体48は、制御装置160に電気的に接続されており、制御装置160は、第2弁体48を電磁的に回転させることで、供給流路49Aの連通先を酸素プア流路42(第1の状態)と外部流路49B(第2の状態)とで切り替える。
【0046】
上記構成の食材保管庫101によると、貯蔵室15に酸素プアガスだけでなく、酸素リッチガスを送ることができる。そのため、例えば、分離体41の構成によって、酸素プアガスに含まれる成分が保管対象である食材にとって望ましくない場合、第2弁体48を切り替えることで、貯蔵室15に酸素リッチガスを送ることができる。また、例えば、保管対象である食材を酸素リッチ雰囲気で保存したい場合は、第2弁体48を切り替えることで、貯蔵室15を酸素リッチ雰囲気にすることができる。
【0047】
≪実施形態3≫
実施形態3に係る倉庫型の食材保管庫201について、
図9~
図13を参照しつつ説明する。青果等の呼吸により発生するエチレン(C
2H
4)は、周囲の青果等の食材の熟成を促進し得ることから、保管対象である食材が青果等を含む場合であって、当該食材を長期にわたって保管する場合には、庫内の雰囲気からエチレン(第1成分の一例)を除去することが好ましい。そこで、食材保管庫201における雰囲気調整ユニット240は、分離体241として、ポリアミドを含む窒素分離膜を備えており、貯蔵室15には酸素濃度センサ19(酸素濃度検知部の一例)が備えられている。ここで、本実施形態で用いたポリアミドを含む窒素分離膜において、エチレンは分離体241を構成するポリアミドへの浸透が速いことから、酸素リッチガスの側に分離されて、酸素プアガスにおいてはその量が低減される。その他の構成については上記実施形態2と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0048】
制御装置260(
図4参照)において、雰囲気制御部262は、例えば、食材保管庫1の主電源(図示せず)がONに入力されると庫内の雰囲気制御運転を開始する。すなわち、例えば
図10のフロー図に示すように、工程S201において弁体45を内気換気の状態とし、第2弁体48は、酸素プア流路42と供給流路49A、酸素リッチ流路43と外部流路49Bをそれぞれ連通し、庫内に酸素プアガスを送る第1の状態(
図9参照)として、送気部Pの運転を開始する。これを「内気酸素排出」という。すると、貯蔵室15内の空気は、排出口15B、庫内流路46、弁体45、および空気流路44(送気部PおよびフィルタユニットF)を通って分離体241に送られる。分離体241では、送られた空気を酸素プアガス(すなわち、エチレンプアガスでもある)と酸素リッチガス(すなわち、エチレンリッチガスでもある)とに分離する。酸素プアガスは、第1送気口41B、酸素プア流路42、第2弁体48、供給流路49A、および導入口15Aを通って、貯蔵室15に戻される。酸素リッチガスは、第2送気口41C、酸素リッチ流路43、第2弁体48、および外部流路49Bを通って食材保管庫201の外部に排出される。これにより、庫内のエチレンガスを酸素リッチとして貯蔵室15から直接的に排出し、庫内をエチレンの量が低減された酸素プアガスに換気することができる。
【0049】
なお、内気酸素排出によると、貯蔵室15から排出される空気よりも貯蔵室15に戻される酸素プアガスの方が量が少ないために庫内の圧力が低下し、扉14,14が開けづらかったり、排水口(図示せず)を通じて排水管内の空気や排水が逆流する等の不都合が生じることが懸念される。また、エチレンガスを庫外に排出するのに伴い、酸素までもが庫外に排出されて、貯蔵室15内の酸素濃度が低下してしまう。そこで、雰囲気制御部262は、工程S202に示すように、圧力センサ18によって貯蔵室15内の圧力を監視する。そして、雰囲気制御部262は、庫内の圧力が予め定められた所定の圧力P11(下閾値)以下になったことを検知すると(工程S202においてYES)、さらに内気換気を行うと庫内の雰囲気が適切でなくなる恐れがあると判断して、工程S203において、弁体45を外気喚起に、第2弁体48を第2の状態に切り替える「外気酸素導入」として雰囲気制御を実行する(
図11参照)。
【0050】
外気酸素導入においては、食材保管庫1の外部の空気が、庫外流路47、弁体45、および空気流路44(送気部PおよびフィルタユニットF)を通って分離体241に送られる。分離体241では、上記と同様に、送られた空気を酸素プアガスと酸素リッチガスとに分離し、生成された酸素リッチガスは、第2送気口41C、酸素リッチ流路43、第2弁体48、供給流路49A、および導入口15Aを通って、貯蔵室15に供給される。生成された酸素プアガスは、第1送気口41B、酸素プア流路42、第2弁体48、および外部流路49Bを通って食材保管庫201の外部に排出される。これにより、内気酸素排出によって低下された庫内の圧力が回復されるとともに、庫外の空気から生成した酸素リッチガスを、エチレンの量が低減された形で貯蔵室15に導入することができる。圧力P11は、例えば実施形態1の圧力P1と同様に設定し、記憶部Mに記憶することができる。
【0051】
この外気酸素導入によると、貯蔵室15からの空気の排出がない状態で外部の空気から生成された酸素プアガスが供給されるため、外気酸素導入を継続すると貯蔵室15の空気が過剰となって圧力が高められる。しかしこの間、貯蔵室15の内部で発生した食材の保管に適さない成分を庫外に排出することができない。そこで、雰囲気制御部262は、工程S204に示すように、圧力センサ18によって貯蔵室15雰囲気の圧力を監視する。そして、雰囲気制御部262は、庫内の圧力が予め定められた所定の圧力P12(上閾値)以上になったことを検知すると(工程S204においてYES)、庫内圧力が十分に回復されていると判断し、工程S205に示すように、弁体45を内気喚起に切り替える(
図9参照)。圧力P12は、これに限定されるものではないが、食材保管庫1の設置場所(高度等)を考慮して、例えば、「外気圧+(10~30)hPa」程度に設定することができる。雰囲気制御部262は、工程S205の後は、再び工程201の後に戻り、工程S202から工程S205までを繰り返し実行することができる。雰囲気制御部262は、例えば操作部65を介して、雰囲気制御運転の停止の指示(例えば、工程SS1,工程SS2)がなされたときは、雰囲気制御運転を停止することができる。
【0052】
一方で、工程201,205に示される、貯蔵室15の内部の雰囲気からエチレンとともに酸素を取り除く内気酸素排出において、貯蔵室15内に保管している食材(例えば青果)によっては呼吸等により貯蔵室15の内部の酸素を消費しているため、貯蔵室15の内部の酸素濃度が著しく低下する事態が生じ得る。したがって、雰囲気制御部262は、例えば
図12のフロー図に示すように、酸素濃度監視を行うように構成されている。この酸素濃度監視において、雰囲気制御部262は、工程S206に示すように、酸素濃度センサ19によって貯蔵室15の内部の酸素濃度を監視する。そして、雰囲気制御部262は、酸素濃度センサ19が予め定められた所定の酸素濃度D1(下閾値)以下になったことを検知すると(工程S206においてYES)、工程S207に示す上記の「外気酸素導入」と、工程S208に示す下記の「内気プア酸素排出」とを、例えば所定の時間ごとに繰り返し実行する。
【0053】
工程S208の内気プア酸素排出においては、
図13に示すように、弁体45を内気喚起に切り替えるとともに、第2弁体48については第2の状態を維持する。これにより、食材保管庫1の内部の空気が、排出口15B、庫内流路46、弁体45、および空気流路44(送気部PおよびフィルタユニットF)を通って分離体41に送られる。分離体41では、送られた空気を酸素プアガスと酸素リッチガスとに分離する。酸素プアガスは、第1送気口41B、酸素プア流路42、第2弁体48、および外部流路49Bを通って食材保管庫201の外部に排出される。酸素リッチガスは、第2送気口41C、酸素リッチ流路43、第2弁体48、供給流路49A、および導入口15Aを通って、貯蔵室15に戻される。「外気酸素導入」においては、貯蔵室15に外部から酸素リッチエアが導入されるため、庫内の圧力が上昇し得るが、「内気プア酸素排出」を行うことでその圧力上昇が緩和される。この「外気酸素導入」と「内気プア酸素排出」とは、例えば、工程209において、酸素濃度センサ19が予め定められた所定の酸素濃度D2(上閾値)以上になったことを検知するまで繰り返し実行することができる(工程S209においてYES)。これにより、エチレンの排出(延いては、酸素の排出)よりも優先的に、貯蔵室15に酸素を供給することができる。
【0054】
なお、個体差はあるものの、一般に大気中の酸素濃度が18体積%を下回ると、人間や小動物に酸欠の症状が現れ得る。したがって、酸素濃度D1は、これに限定されるものではないが、例えば18体積%ないしは18.5体積%程度を目安に設定することができる。また、酸素濃度D2は、これに限定されるものではないが、例えば21体積%ないしは22体積%程度を目安に設定することができる。これらの酸素濃度D1およびD2は、例えば操作部65を介して、記憶部Mに記憶することができる。
【0055】
上記構成の食材保管庫201によると、分離体41として、空気からエチレンを分離する性能を有する高分子分離膜を使用していることから、制御装置260は、庫内の空気と庫外の空気とを、分離体41によってエチレンの濃度が高められた酸素リッチガスとエチレンの濃度が低減された酸素プアガスとに分離し、エチレンの濃度が低減された酸素プアガスを庫内に戻すことで、エチレンガスの庫内からの排出を実行することができる。また、制御装置260は、次いで、エチレンの量が低減された酸素リッチガスを庫内に導入し、エチレンの排出に伴って低減した庫内の酸素濃度および圧力を回復させることができる。これらは、庫内の圧力を監視して、適切な庫内圧を保つように実行される。また、制御装置260は、不測の酸素濃度の低下に備えて庫内の酸素濃度を監視し、庫内の酸素濃度を人が呼吸するに適した状態に維持することができる。これにより、食材保管庫201の内部の雰囲気を、保管する食材の特性に合わせてより適切に制御することができる。
【0056】
≪実施形態4≫
実施形態4に係る食材保管庫301について、
図14を参照しつつ説明する。食材保管庫301は、貯蔵室315に直接冷気を送らずに断熱箱体の壁内に冷気を流し、壁面を介して間接的に貯蔵室315を冷却するようにした、いわゆる間接冷却方式の冷却貯蔵庫(恒温高湿庫ともいう)である。間接冷却方式の冷却貯蔵庫の一般的な構成については、例えば、特開2020-115066号公報に説明されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。すなわち、食材保管庫301は、大まかには
図14に示すように、本体10を構成する内箱12の内側に、内箱12との間に隙間を形成しつつ内部が貯蔵室315とされる、ステンレス鋼板製の内装箱12Aが設けられている。この内装箱12Aは、内箱12との間に冷却ダクトを画成するものであり、ダクト24の吹出口26および吸入口25は、この内装箱12Aと内箱12との隙間に連通するように構成されている。また、導入口15Aおよび排出口15Bはそれぞれ、内装箱12Aと内箱12との隙間に連通するように構成され、圧力センサ18は冷却ダクト内に取付けられている。その他の構成(例えば、雰囲気調整ユニット40)については上記実施形態1と同様であり、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
【0057】
このような食材保管庫301は、庫内に直接風を送り込むことがないために保管する食材の乾燥が起こり難く、また、貯蔵室315の内部の湿度を高い状態に保つことができるという利点がある。しかしながら、その背反として、空気中の水分が冷却器21に付着して凍り付く「霜付き」を解消するためのデフロスト運転が必要となり、このデフロスト運転が冷却効率を著しく低下させてしまうというデメリットがある。また、内装箱12Aと内箱12との隙間は清掃性が悪く、例えばこの空間にカビ等の菌やが増殖すると、清掃のために多くの時間と手間と費用とを要するという課題がある。
【0058】
これに対し、ここに開示される食材保管庫301は、窒素分離膜からなる分離体41を備える雰囲気調整ユニット40を備えている。この窒素分離膜は、例えば、23℃において空気から窒素ガス濃度が95体積%以上、例えば99.5体積%以上の窒素富化ガス(酸素プアガス)を生成することができるものであり、空気中の水分は酸素とともに酸素リッチガスとして分離することができる。換言すると、酸素プアガスは水分が分離されたよりドライなガスとして生成される。また、カビ(糸状菌)は、ほとんどが好気性で生育には酸素を必要とする。したがって、この食材保管庫301において、制御装置60によって実施形態1と同様の雰囲気制御運転を実施することで、冷却ダクトに水分と酸素の濃度が低減された酸素プアガスを送ることができ、ダクト内空間をドライな酸素プア雰囲気にすることができる。これにより、ダクト内でのカビ等の菌の生育を抑制することができる。また、冷却器21に結露して霜となる水分を減らすことができ、冷却器21のデフロスト運転の頻度を低減したり、運転時間を短縮したりすることができる。これにより、食材保管庫301のデフロスト運転に伴う冷却効率の低下を効果的に低減することができる。
【0059】
なお、窒素分離膜は、取り入れた空気から分離する酸素リッチガスと酸素プアガス(窒素リッチガス)との流量比を調節する機能が備えられているものがある。例えば、実施形態1,4で用いた「SEPURUN N2メンブラン」については、酸素リッチガスと酸素プアガスとの流量比を体積比で1:1に設定したとき、酸素プアガスに含まれる酸素の濃度は約6%に低減される。このような流量比の設定は、酸素プアガスにおける酸素濃度を通常の大気に比べてカビの繁殖および育成を十分に抑制できるものに変化させるものであることに加え、例えば、ダクト内空間の圧力の管理を容易にするものとなる。例えば、内気換気に伴いダクト内空間から外部に排出される酸素リッチガスの体積は、酸素プアガスの体積と同じになるため、内気換気によるダクト内空間の圧力の低下は、内気換気と同じ時間だけ外気喚起を行うことにより回復させることができる。したがって、分離体41における流量比(分離比)を体積比で1:1とすることで、制御装置60は、圧力センサ18によるダクト内空間の圧力を監視をすることなく、タイマTに基づいて内気換気と外気喚起を所定の時間ずつ行う時間管理によって、弁体45を切り替えることができる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1において、雰囲気制御部は、内気換気を先に実行し、次いで外気喚起を後から実行するように構成されていたが、内気換気と外気喚起はいずれを先に実行してもよい。
(2)上記実施形態では、分離体として高分子分離膜を用いたが、分離体としては、シリカ膜やゼオライト膜、分子ふるい炭素膜等の無機膜を用いてもよいし、この無機膜と高分子分離膜とのハイブリット膜を用いてもよい。また、分離体としては、2つ以上の分離膜を組み合わせて用いてもよい。
(3)上記実施形態1,2において、分離体は、ポリイミドまたはポリアミドを主体とする高分子分離膜であった。しかしながら、高分子分離膜を主として構成する材料はこれに限定されず、例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、セルロース等のセルロース樹脂、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、シリコーン等であってよく、これらはいずれか1種または2種以上の組み合わせ(複合体を含む)であってよい。
【0061】
(4)上記実施形態1において、制御装置は、圧力検知部が検知した庫内圧力に基づいて弁体の切り替えを行っていたが、弁体の切り替えのタイミングはこれに限定されない。例えば食材保管庫においては、用いる分離体の種類や使用条件等によって、生成される酸素プアガスの酸素濃度や単位時間当たりの酸素プアガスの生成量等を予め知得することができる。また、庫内の空気をダイレクトに酸素プアガスに換えるのに必要な時間(減圧時間)と、これによる減圧を回復するために必要な庫外の空気由来の酸素プアガスを庫内に供給する時間(回復時間)と、を予め設定することができる。したがって、制御装置は、弁体が導入口(導入部)と排出口とを連通する時間が、庫内の圧力を所定量低減する減圧時間に到達したことを検知すると、導入口の連通先が庫外流路(外気導入口)となるように弁体を制御し、弁体が導入口(導入部)と庫外流路(外気導入口)とを連通する時間が、庫内の圧力を所定量回復する回復時間に到達したことを検知すると、導入口(導入部)の連通先が排出口となるように弁体を制御するように構成されていてもよい。具体的な一例として、分離体として、酸素プアガスと酸素リッチガスとを体積比で1:1の割合で生成する空気分離膜を用いた場合、減圧時間と回復時間とは同じとすることができ、所定の時間ごとに内気換気と外気喚起とを切り替えればよい。このような構成によると、制御装置は、弁体の切り替えのタイミングを減圧時間および回復時間に基づいて時間管理することができる。また、食材保管庫は、必ずしも圧力検知器を備える必要はない。このような構成によっても、人手を要することなく簡便かつ適切に庫内の雰囲気を制御することができる。
【0062】
(5)上記実施形態の食材保管庫によると、貯蔵室15の内部を酸素プア雰囲気に維持する運転を行うことができる。また、分離体41として窒素分離膜を用いることで、例えば、酸素濃度が約6体積%以下の酸素プアガスを貯蔵室15に導入して酸素プア雰囲気とすることができる。ここで、貯蔵室15の内部の圧力を外部の圧力とほぼ同等に維持しておくと、扉14,14を僅かに開いたときに、本体10の前面開口と扉14,14の隙間から酸素プアガスが流出し、場合によっては、庫外にいるユーザが酸素プアガスを吸うなどして酸欠状態に陥ることが懸念される。そこで食材保管庫の制御装置は、例えば
図5のフロー図にしたがって、雰囲気制御部が雰囲気制御運転を行うに際し、外気換気を停止する圧力(上閾値)として、外気圧よりもやや負圧となる圧力P2’を採用することができる。圧力P2’は、これに限定されるものではないが、食材保管庫の設置場所(高度等)を考慮して、例えば、(外気圧-5hPa)程度に設定することができる。圧力P2’は、例えば予め記憶部Mに記憶される。このような構成の食材保管庫によると、扉を開けたときに、庫内から庫外に向けて酸素プアガスが流出することを抑制でき、ユーザ等の窒息のリスクを回避することができる。
【0063】
<他の参考例>
また、食材保管庫は、上記実施形態に示した構成のものに限定されず、例えば次のような構成であってもよい。
【0064】
(6)上記実施形態2において、食材保管庫101の雰囲気調製ユニット140は、弁体45に加えて、第2弁体48を備えていた。しかしながら、食材保管庫401における雰囲気調整ユニット440は、例えば
図15に示すように、弁体45を備えることなく、第2弁体48のみを備えていてもよい。ここで、本体10には、導入口15Aが設けられているものの、排出口はない。そして、雰囲気調整ユニット440において、分離体41に成分分離する空気を送るための空気流路44は、送気部PおよびフィルタユニットFを介装させた先の端部が、食材保管庫401の外部に開放されている。このような構成によると、送気部Pを駆動させることにより、分離体41によって、外部から取り入れた空気を、空気よりも第1成分(例えば酸素)の濃度が低減された第1ガス(例えば酸素プアガス)と、空気よりも第1成分(例えば酸素)の濃度が高められた第2ガス(例えば酸素リッチガス)とに分離することができる。また、第2弁体48の制御によって、第1ガスおよび第2ガスのいずれか一方のガスを効率よく冷却して庫内に導入することができる。
【0065】
(7)上記実施形態2において、食材保管庫の雰囲気制御部は、弁体45に加えて、第2弁体48を備えていた。しかしながら、食材保管庫501における雰囲気調整ユニット540は、例えば
図16に示すように、弁体45を備えることなく、第2弁体48のみを備えていてもよい。ここで、雰囲気調整ユニット540において、分離体41に成分分離する空気を送るための空気流路44は、送気部PおよびフィルタユニットFを介装させた先の端部が、排出口15Bに直接接続されている。また、雰囲気調整ユニット540は、エアフィルタ545Aおよび逆止弁545Bを介装している外気導入路545を備えている。この外気導入路545は、貯蔵室15の内部と外部とを接続する流路であって、その一端は冷却器21の上流側であって、導入口15Aの近傍に配されている。また、逆止弁545Bは、外気導入路545において貯蔵室15の外部から内部に向かう気体の流れを許容し、逆向きの気体の流れを規制する。
【0066】
このような構成によると、分離体41によって、貯蔵室15の内部から取り入れた空気を、空気よりも第1成分(例えば酸素)の濃度が低減された第1ガス(酸素プアガス)と、空気よりも第1成分(例えば酸素)の濃度が高められた第2ガス(酸素リッチガス)とに分離することができる。また、第2弁体48の制御によって、第1ガスおよび第2ガスのいずれか一方のガスを効率よく冷却して庫内に導入することができる。なおこのとき、他方のガスが庫外に排出されることにより、貯蔵室15の圧力が低下することが懸念されるが、雰囲気調整ユニット540は外気導入路545を備えていることから、貯蔵室15の外部と内部の圧力差に基づいて、庫内で低下した圧力を補う分量の空気が庫外から自然に導入される。また、庫外からの空気は冷却器21の上流側に供給されることから、冷却器21により効率よく冷却して庫内に導入することができる。
【0067】
(8)上記食材保管庫501において、外気導入路545は、エアフィルタ545Aおよび逆止弁545Bを介装していた。ここで、食材保管庫601の雰囲気調整ユニット640は、例えば
図17に示すように、エアフィルタ645Aと、逆止弁に換えて電磁弁645Bと、を介装している外気導入路645を備えていてもよい。ここで、電磁弁645Bは、制御装置660(
図4参照)に電気的に接続され、送気部Pの駆動に連動して外気導入路645を開放し、送気部Pの停止に連動して外気導入路645を封止するように構成されている。したがって、この雰囲気調整ユニット640によると、雰囲気制御運転を行っているときのみ外気導入路645が解放されて、外気導入路645を通じた気体の移動が許容される。このような構成によっても、他方のガスを庫外に排出することによる庫内の圧力低下を補うことができる。
【0068】
(9)上記食材保管庫501において、外気導入路545は、エアフィルタ545Aおよび逆止弁545Bを介装していた。ここで、食材保管庫701の雰囲気制御部740は、例えば
図18に示すように、エアフィルタ745Aと、逆止弁に換えて電磁弁745Bと、を介装している外気導入路745を備えていてもよい。ここで、電磁弁745Bは、制御装置760(
図4参照)に電気的に接続されており、圧力センサ18が所定の通常圧力よりも庫内が減圧されていると判断したときに外気導入路745を開放し、圧力センサ18が所定の通常圧力であると判断したときに外気導入路745を封止するように構成されている。したがって、この雰囲気制御部740によると、雰囲気制御運転に伴って庫内の圧力が低下しているときのみ外気導入路745が解放されて、外気導入路745を通じた気体の移動が許容される。このような構成によっても、他方のガスを庫外に排出することによる庫内の圧力低下を補うことができる。なお、庫内が減圧されているかどうかの判断は、これに限定されるものではないが、食材保管庫701の設置環境(例えば高度)における平均気圧を通常外気圧P0としたとき、例えば、庫内の圧力が(P0-10)hPa程度以下の場合に減圧されていると判断することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,101,201,301,401,501,601,701…食材保管庫、10…保管庫本体(本体)、12A…内装箱、14…扉、15,315…貯蔵室(箱体)、15A…導入口、15B…排出口、18…圧力センサ、19…酸素濃度センサ、24…ダクト、31…冷凍装置、40,140,240,440,540,640,740…雰囲気調整ユニット(ガス分離部)、41,241…分離体、41A…導入口(導入部)、41B…第1送気口、41C…第2送気口、42…酸素プア流路(第1流路)、43…酸素リッチ流路(第2流路)、44…空気流路、45…弁体、46…庫内流路、47…庫外流路(外気導入口)、48…第2弁体、49A…供給流路、49B…外部流路、60,160,260,660,760…制御装置、61…温度制御部、62,262…雰囲気制御部、545,645,745…外気導入路、545A,645A,745A…エアフィルタ、545B…逆止弁、645B,745B…電磁弁