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特開2022-102604イメージセンサ及び画像認識システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102604
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】イメージセンサ及び画像認識システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/3745 20110101AFI20220630BHJP
【FI】
H04N5/3745
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217433
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】大倉 俊介
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY26
5C024CY42
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
5C024HX23
5C024HX29
(57)【要約】
【課題】イメージセンサ内で行われる演算において、消費電力の増大を抑制する。
【解決手段】開示のイメージセンサは、画像認識のための特徴量を出力するイメージセンサであって、複数の画素回路と、前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、を備え、前記複数の画素回路それぞれは、光電変換素子と、前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、を備えており、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成され、前記第1モード制御は、前記特徴量を求める演算のために、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像認識のための特徴量を出力するイメージセンサであって、
複数の画素回路と、
前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記複数の画素回路それぞれは、
光電変換素子と、
前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、
を備えており、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成され、
前記第1モード制御は、前記特徴量を求める演算のために、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含む
イメージセンサ。
【請求項2】
前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、n個(nは1以上の自然数)以上の光電変換素子において生じた電荷を、m個(mは2以上の自然数)以上の前記電荷蓄積部に分配することを含む
請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記複数の画素回路は、第1画素回路と、第2画素回路と、を有し、
前記第1画素回路は、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子から第1電荷の転送を受ける第1電荷蓄積部と、を備え、
前記第2画素回路は、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子から第2電荷の転送を受ける第2電荷蓄積部と、を備え、
前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記特徴量を求める演算のために、前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子を含む複数の光電変換素子と、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部と、の間における前記第1電荷及び前記第2電荷の転送を制御することを含む
請求項1又は請求項2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記第2電荷を含む電荷を、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部に分配することを含む
請求項3に記載のイメージセンサ。
【請求項5】
前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記第2電荷を含む電荷を、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部に分配し、
前記複数の電荷蓄積部のいずれか一つの電荷蓄積部の電荷をリセットし、
リセットされた前記電荷蓄積部に前記第1電荷を転送すること
を含む請求項3に記載のイメージセンサ。
【請求項6】
前記第1モード制御は、前記第1電荷に応じた第1電圧と、前記複数の電荷蓄積部のうちのいずれか一つの電荷蓄積部に蓄積された電荷に応じた第2電圧と、の差に応じた出力信号を得ることを含む
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第1モード制御とは異なる第2モード制御を更に実行するよう構成され、
前記第2モード制御は、前記光電変換素子において生じた電荷量に応じた画素信号が出力されるように、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含む
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項8】
前記コントローラは、切替信号が与えられると、前記第1モード制御から前記第2モード制御に切り替えるよう構成されている
請求項7に記載のイメージセンサ。
【請求項9】
前記電荷蓄積部の電荷量に応じた電圧をソース電圧として生じさせるトランジスタを含むソースフォロア回路を備え、
前記ソースフォロア回路は、前記トランジスタのソースに接続されたスイッチング回路を有する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項10】
前記画素信号をデジタル信号に変換するアナログデジタルコンバータを備え、
前記アナログデジタルコンバータは、前記画素信号と参照信号との差分を出力するアンプと、前記差分が与えられるラッチ型比較器と、を備え、
前記アナログデジタルコンバータは、
前記第2モード制御においては、前記アンプを用いて前記差分を出力し、前記差分を前記ラッチ型比較器に与えるよう動作し、
前記第1モード制御においては、前記アンプを用いずに前記画素信号と前記参照信号を前記ラッチ型比較器に与えるよう動作する
よう構成されている
請求項7又は請求項8に記載のイメージセンサ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のイメージセンサと、
前記イメージセンサから出力された特徴量に基づいて画像認識をする画像認識器と、を備える画像認識システム。
【請求項12】
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のイメージセンサと、
前記イメージセンサから出力された特徴量に基づいて画像認識をすることでイベントを検知する画像認識器と、
を備え、
前記イメージセンサが備える前記コントローラは、前記イベントが検知されると、前記第1モード制御から前記第2モード制御に切り替えられるよう構成されている
画像認識システム。
【請求項13】
複数の画素回路と、
前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記複数の画素回路それぞれは、
光電変換素子と、
前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、
を備え、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成され、
前記第1モード制御は、n個(nは1以上の自然数)以上の光電変換素子において光電変換によって生じた電荷を、m個(mは2以上の自然数)以上の前記電荷蓄積部に分配することを含む
イメージセンサ。
【請求項14】
複数の画素回路と、
前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記複数の画素回路は、第1画素回路と、第2画素回路と、を有し、
前記第1画素回路は、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子から第1電荷の転送を受ける第1電荷蓄積部と、を備え、
前記第2画素回路は、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子から第2電荷の転送を受ける第2電荷蓄積部と、を備え、
前記第1モード制御は、前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子を含む複数の光電変換素子と、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部と、の間における前記第1電荷及び前記第2電荷の転送を制御することを含む
イメージセンサ。
【請求項15】
前記第1モード制御は、前記第1電荷に応じた第1電圧と、前記第2電荷を含む電荷が分配された前記複数の電荷蓄積部のうちのいずれか一つの電荷蓄積部に蓄積された電荷に応じた第2電圧と、の差に応じた出力電圧を得ることを含む
請求項14に記載のイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イメージセンサ及び画像認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像認識では、画像の特徴量抽出がなされる。画像認識には、例えば、機械学習モデルを用いる方式がある。機械学習モデルを用いた画像認識の場合、一例として、入力画像としての高解像度画像の特徴量が抽出され、特徴量に基づいて画像のクラス分けがなされる。
【0003】
非特許文献1は、チップ内部で特徴量演算(畳み込み演算)を行うイメージセンサを開示している。イメージセンサは、複数の画素を備える。各画素は、光電変換素子であるフォトダイオード及び読み出し回路を備える。各画素の読み出し回路は、受光強度に応じた電気信号である画素信号を出力する。非特許文献1に開示されたイメージセンサは、畳み込み演算を行うための光電変換素子の蓄積及び乗算のために、特殊な製造プロセス(IGZO)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-219857号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Seiichi Yoneda et al., ”Image Sensor Capable of Analog Convolution for Real-time Image Recognition System Using Crystalline Oxide Semiconductor FET”, International Image Sensor Workshop(IISW), 2019, pp.322-325.
【発明の概要】
【0006】
画像認識の対象となる画像は、データ量が多い。このため、画像認識器において画像の特徴量抽出をする場合、画像認識器における演算負荷が大きくなる。したがって、画像認識器における特徴量抽出のための計算負荷の軽減が望まれる。
【0007】
ここで、非特許文献1のように、イメージセンサ内で特徴量演算が行われる場合、画像認識器における特徴量演算の不要化又は演算負荷軽減が期待される。
【0008】
しかし、非特許文献1において、特徴量演算は、イメージセンサ内部で行われるものの、読み出し回路から出力された画素信号を用いて、オペアンプを用いた演算回路によって行われる。オペアンプを用いた演算回路で特徴量演算が実行される際に、画素信号の大きさに対応した電流が、イメージセンサ内で流れる。このため、イメージセンサの消費電力が大きくなる。
【0009】
イメージセンサにおいて特徴量演算などの演算をする場合であっても、消費電力の増大を抑制することが望まれる。ここで、画像に対する演算は、特徴量の演算に限られず、他の演算も考えられる。したがって、特徴量演算に限られず、イメージセンサ内で行われる演算において、消費電力の増大を抑制することが望まれる。
【0010】
かかる課題は、光電変換によって生じた電荷(光電変換電荷)を用いて演算をすることで解決される。実施形態においては、イメージセンサの画素回路内において、演算のために、光電変換電荷の転送が制御される。更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、画像認識システムの構成図である。
図2図2は、画素部の構成図である。
図3図3は、画素回路の回路図である。
図4図4は、フィルタとフィルタを用いた演算の説明図である。
図5図5は、第1モード制御のフローチャートである。
図6図6は、第1モード制御のタイミングチャートである。
図7図7は、第1モード制御における画素回路の動作説明図である。
図8図8は、第1モード制御における画素回路の動作説明図である。
図9図9は、画素回路の回路図である。
図10図10は、特徴量画像の生成の説明図である。
図11図11は、第2モード制御のフローチャートである。
図12図12は、第2モード制御のタイミングチャートである。
図13図13は、定電流源を有するソースフォロア回路の回路図である。
図14図14は、定電流源を用いた画素信号の読み出しを示すタイミングチャートである。
図15図15は、スイッチング回路を有するソースフォロア回路の回路図である。
図16図16は、スイッチング回路を有するソースフォロア回路における画素信号の読み出しを示すタイミングチャートである。
図17図17は、アナログデジタルコンバータを含む読み出し回路の回路図であるである。
図18図18は、第2モード制御時の読み出し回路の動作を示すタイミングチャートである。
図19図19は、アナログデジタルコンバータを含む読み出し回路の回路図である。
図20図20は、第1モード制御時の読み出し回路の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.イメージセンサ及び画像認識システムの概要>
【0013】
(1)実施形態に係るイメージセンサは、画像認識のための特徴量を出力する。実施形態に係るイメージセンサは、複数の画素回路と、前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、を備える。前記複数の画素回路それぞれは、光電変換素子と、前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、を備えており、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成されている。前記第1モード制御は、前記特徴量を求める演算のために、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含む。実施形態に係るイメージセンサによれば、電荷の転送を制御することで、画素回路において演算が行われる。つまり、画素回路は演算回路としても機能する。
【0014】
(2)前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、n個(nは1以上の自然数)以上の光電変換素子において生じた電荷を、m個(mは2以上の自然数)以上の前記電荷蓄積部に分配することを含むのが好ましい。この場合、n個の光電変換素子において生じた電荷をmで除する演算が行われる。
【0015】
(3)前記複数の画素回路は、第1画素回路と、第2画素回路と、を有するのが好ましい。前記第1画素回路は、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子から第1電荷の転送を受ける第1電荷蓄積部と、を備えるのが好ましい。前記第2画素回路は、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子から第2電荷の転送を受ける第2電荷蓄積部と、を備えるのが好ましい。前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記特徴量を求める演算のために、前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子を含む複数の光電変換素子と、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部と、の間における前記第1電荷及び前記第2電荷の転送を制御することを含むのが好ましい。
【0016】
(4)前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記第2電荷を含む電荷を、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部に分配することを含むのが好ましい。この場合、前記第2電荷を含む電荷に対する除算が画素回路において実行される。
【0017】
(5)前記第1モード制御において前記電荷の転送を制御することは、前記第2電荷を含む電荷を、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部に分配し、前記複数の電荷蓄積部のいずれか一つの電荷蓄積部の電荷をリセットし、リセットされた前記電荷蓄積部に前記第1電荷を転送することを含むのが好ましい。
【0018】
(6)前記第1モード制御は、前記第1電荷に応じた第1電圧と、前記複数の電荷蓄積部のうちのいずれか一つの電荷蓄積部に蓄積された電荷に応じた第2電圧と、の差に応じた出力信号を得ることを含むのが好ましい。
【0019】
(7)前記コントローラは、前記第1モード制御とは異なる第2モード制御を更に実行するよう構成され、前記第2モード制御は、前記光電変換素子において生じた電荷量に応じた画素信号が出力されるように、前記光電変換素子と前記電荷蓄積部との間における前記電荷の転送を制御することを含むのが好ましい。第2モード制御では、特徴量ではなく、一般的な画像が得られる。
【0020】
(8)前記コントローラは、切替信号が与えられると、前記第1モード制御から前記第2モード制御に切り替えるよう構成されているのが好ましい。
【0021】
(9)イメージセンサは、前記電荷蓄積部の電荷量に応じた電圧をソース電圧として生じさせるトランジスタを含むソースフォロア回路を備えるのが好ましい。前記ソースフォロア回路は、前記トランジスタのソースに接続されたスイッチング回路を有するのが好ましい。この場合、ソースフォロア回路における消費電力を低減できる。
【0022】
(10)イメージセンサは、前記画素信号をデジタル信号に変換するアナログデジタルコンバータを備えるのが好ましい。前記アナログデジタルコンバータは、前記画素信号と参照信号との差分を出力するアンプと、前記差分が与えられるラッチ型比較器と、を備えるのが好ましい。前記アナログデジタルコンバータは、前記第2モード制御においては、前記アンプを用いて前記差分を出力し、前記差分を前記ラッチ型比較器に与えるよう動作するのが好ましい。前記アナログデジタルコンバータは、前記第1モード制御においては、前記アンプを用いずに前記画素信号と前記参照信号を前記ラッチ型比較器に与えるよう動作するのが好ましい。
【0023】
(11)実施形態に係る画像認識システムは、前記(1)から前記(10)のいずれか1項に記載のイメージセンサと、前記イメージセンサから出力された特徴量に基づいて画像認識をする画像認識器と、を備えるのが好ましい。
【0024】
(12)実施形態に係る画像認識システムは、前記(8)から前記(10)のいずれか1項に記載のイメージセンサと、前記イメージセンサから出力された特徴量に基づいて画像認識をすることでイベントを検知する画像認識器と、を備えるのが好ましい。前記イメージセンサが備える前記コントローラは、前記イベントが検知されると、前記第1モード制御から前記第2モード制御に切り替えられるよう構成されているのが好ましい。
【0025】
(13)実施形態に係るイメージセンサは、複数の画素回路と、前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、を備えるのが好ましい。前記複数の画素回路それぞれは、光電変換素子と、前記光電変換素子から電荷の転送を受ける電荷蓄積部と、を備え、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷量に応じた画素信号を出力するよう構成されているのが好ましい。前記第1モード制御は、n個(nは1以上の自然数)以上の光電変換素子において光電変換によって生じた電荷を、m個(mは2以上の自然数)以上の前記電荷蓄積部に分配することを含むのが好ましい。
【0026】
(14)実施形態に係るイメージセンサは、複数の画素回路と、前記複数の画素回路を制御する第1モード制御を実行するよう構成されたコントローラと、を備えるのが好ましい。前記複数の画素回路は、第1画素回路と、第2画素回路と、を有するのが好ましい。前記第1画素回路は、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子から第1電荷の転送を受ける第1電荷蓄積部と、を備えるのが好ましい。前記第2画素回路は、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子から第2電荷の転送を受ける第2電荷蓄積部と、を備えるのが好ましい。前記第1モード制御は、前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子を含む複数の光電変換素子と、前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部を含む複数の電荷蓄積部と、の間における前記第1電荷及び前記第2電荷の転送を制御することを含むのが好ましい。
【0027】
(15)前記第1モード制御は、前記第1電荷に応じた第1電圧と、前記第2電荷を含む電荷が分配された前記複数の電荷蓄積部のうちのいずれか一つの電荷蓄積部に蓄積された電荷に応じた第2電圧と、の差に応じた出力電圧を得ることを含むのが好ましい。
【0028】
<2.イメージセンサ及び画像認識システムの概要の例>
【0029】
図1は、実施形態に係るイメージセンサ100を備えるシステム10を示している。システム10は、一例として、画像認識システム10であり、画像認識器200を備える。システム10は、イメージセンサ100が利用される他のシステムであってもよい。システム10において、イメージセンサ100の後段に設けられる装置は、画像認識器200以外の装置であってもよい。画像認識器200以外の装置は、例えば、画像処理装置である。
【0030】
Trillion Sensor社会では、低消費電力化が求められる。ここで、実施形態に係るイメージセンサ100は、後述のように消費電力が少なく、また、イメージセンサ100の後段に設けられた画像認識器200(人工知能;AI)の消費電力も低減できる。したがって、システム10全体の低消費電力化が可能であり、Trillion Sensor社会に好適である。
【0031】
実施形態に係るイメージセンサ100は、イベント検知に用いられる。検知されるイベントは、例えば、監視対象の異常、又は変化である。監視対象は、建物・橋などの構造物、人・動物などの生物、又は、自動車・オートバイ・自転車・電車などの乗物である。監視対象は、特に限定されない。イベントの種類も特に限定されない。
【0032】
実施形態に係るイメージセンサ100は、イベント検知のため、通常動作121(第1モード制御121)時においては、データ量の小さい特徴量画像(第1画像)を低消費電力で出力する。特徴量画像は、画像認識器200に与えられる。
【0033】
画像認識器200は、例えば、画像認識用の機械学習モデル210を用いて行われる。機械学習モデル210は、入力画像から画像認識結果(画像のクラス分け結果)を出力する。通常動作121時においては、画像認識器200は、イメージセンサ100から出力された特徴量画像を入力画像として、画像認識をする。画像認識器200は、一例として、画像認識結果に基づいて、イベントを検知するイベント検出器220を備える。イベント検出器220は、イベントの発生を検知すると、通常動作121からイベント動作122への切替信号(第1切替信号)を出力する。第1切替信号は、イメージセンサ100に与えられる。
【0034】
イメージセンサ100は、第1切替信号が与えられると、イベント動作122(第2モード制御122)に切り替わる。イメージセンサ100は、イベント動作122(第2モード制御122)時においては、データ量の大きい高解像度画像(第2画像)を出力する。ここでの高解像度画像は、特徴量画像ではない通常の画像を意味する。高解像度画像は、各画素が、イメージセンサ100が有する光電変換素子PDにおいて生じた電荷量に応じた画素値を持つ。これに対して、特徴量画像は、各画素が、光電変換素子PDにおいて生じた電荷を利用した特徴量演算が行われた結果としての画素値を持つ。電荷を利用した演算については後述する。
【0035】
前述のように、イベント動作122(第2モード制御122)時においては、イメージセンサ100は高解像度画像を出力する。高解像度画像は、例えば、発生したイベント(監視対象の異常、又は変化)の記録のため、記憶装置に保存される。高解像度画像は、画像認識器200に与えられてもよい。
【0036】
イベント動作122時においては、画像認識器200は、イメージセンサ100から出力された高解像度画像を入力画像として、画像認識をする。イベント検出器220は、画像認識結果に基づいて、イベントが継続しているか、若しくは終了したかを検知できる。イベント検出器220は、イベントの非発生を検知すると、イベント動作122から通常動作121への切替信号(第2切替信号)を出力する。第2切替信号は、イメージセンサ100に与えられる。イメージセンサ100は、第2切替信号が与えられると、通常動作121(第1モード制御121)に復帰する。
【0037】
ここで、一般的な機械学習モデルを用いた画像認識では、高解像度画像が入力画像として与えられ、その高解像度画像の特徴量が抽出され、その特徴量に基づいて分類(クラス分け)がなされる。つまり、機械学習モデルは、特徴量抽出部と分類部とを備える。特徴量抽出部は高解像度画像から特徴量を抽出する。分類部は、特徴量に基づいて画像を分類する。機械学習モデルに入力画像として与えられる高解像度画像は、データ量が多いため、機械学習モデルにおける特徴量抽出部における演算負荷は大きく、消費電力も大きい。
【0038】
しかし、実施形態に係るイメージセンサ100は、通常動作121(第1モード制御121)時においては、特徴量画像を出力するため、機械学習モデル210には特徴量画像が入力画像として与えられる。したがって、機械学習モデル210は、特徴量抽出演算を行う必要がなく、入力画像として与えられた特徴量画像からクラス分けの演算をすればよい。したがって、通常動作121時においては、機械学習モデル210における特徴量抽出演算を省略又は軽減でき、画像認識器200における低消費電力化が図られる。
【0039】
実施形態に係るイメージセンサ100は、一例として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ100は、撮像部としての画素部110及びコントローラ120を備える。イメージセンサ100は、さらに、読み出し回路130、垂直走査回路140、及び水平走査回路150を備える。読み出し回路130は、画素部110からの画素信号の読み出しをする。垂直走査回路140及び水平走査回路150は、画素部110に含まれる画素回路111(画素)のうち、画素信号が読みされる対象画素回路(対象画素)を選択するための信号を画素部110に与える。
【0040】
コントローラ120は、垂直走査回路140及び水平走査回路150を介して画素部110の動作を制御する。すなわち、「コントローラ」は、前述のコントローラ120だけでなく、垂直走査回路140及び水平走査回路150をも含む概念であってもよい。
【0041】
実施形態のコントローラ120は、画素部110を制御することで、第1モード制御121においては、特徴量画像をイメージセンサ100から出力させる。また、コントローラ120は、第2モード制御122においては、高解像度画像をイメージセンサ100から出力させる。コントローラ120は、外部から切替信号を受信して、コントローラ120による制御を、第1モード制御121から第2モード制御122に切り替えたり、第2モード制御122から第1モード制御121に切り替えたりすることができる。すなわち、コントローラ120は、切替信号に基づき、コントローラ120のモードを、第1モード制御121と第2モード制御122との間で切り替える切替器125を備える。
【0042】
図2に示すように、画素部110は、2次元アレイ状に配置された複数の画素回路111,111A,111B,111Cを備える。なお、画素回路は、単に、画素とも呼ばれる。
【0043】
図3は、画素部110に含まれる画素回路の一例を示す。図3においては、J-1行目の1つの画素回路111B、J行目の1つの画素回路111A、及びJ+1行目の一つの画素回路111Cが示されている。画素部110に含まれる複数の画素回路111,111A,111B,111Cは、共通の構造を有している。なお、図3では、画素回路111B及び画素回路111Cは、便宜的に、画素回路111Aに比べて簡略化されて描かれているが、実際には、画素回路111Aと同様の構造を有する。
【0044】
以下では、画素回路の構造について、J行目の画素回路111Aを例にして説明する。画素回路111Aは、光電変換素子PDを備える。光電変換素子PDは、例えば、フォトダイオードである。光電変換素子PDは、光量に応じた量の電荷を蓄積する。電荷は、例えば、電子である。光電変換によって発生した電荷を、光電変換電荷という。また、光電変換によって発生した電子を光電変換電子という。
【0045】
画素回路111Aは、光電変換素子PDに接続された転送ゲートTGを備える。転送ゲートTGは、光電変換素子PDに蓄積された電荷を転送する。転送ゲートTGは、例えば、トランジスタ(転送トランジスタ)によって構成されている。トランジスタは、例えば、MOSFETである。なお、以下に説明される他のトランジスタも、同様に、MOSFETでよい。MOSFETは、ゲート-ソース間にHigh信号が与えられると、ドレイン-ソース間が導通状態になり、ゲート-ソース間にLow信号が印加されると、ドレイン-ソース間が非導通状態になる。以下では、ゲート-ソース間にHigh信号を印加することを、「オン」といい、Low信号を印加することを「オフ」という。
【0046】
転送ゲートTGは、オンされると導通状態になり、光電変換素子PDに蓄積された電荷を、後述の電荷蓄積部へ転送する。転送ゲートTGは、オフされると非導通状態になり、光電変換素子PDに蓄積された電荷の転送が阻止される。
【0047】
画素回路111Aは、光電変換素子PDから、転送ゲートTGを介して、電荷の転送を受ける電荷蓄積部を備える。実施形態において、電荷蓄積部は、少なくとも、転送ゲートTGに接続された第1キャパシタであるフローティングディフュージョンFD1(浮遊拡散層)を有する。フローティングディフュージョンFD1は第1容量CFD[F]を有する。フローティングディフュージョンFD1は、光電変換素子PDからの電荷の転送を受けられるように転送ゲートTGに接続されている。
【0048】
実施形態において、電荷蓄積部は、フローティングディフュージョンFD1に接続された第2キャパシタである第2スイッチングゲートSG2を更に有する。第2スイッチングゲートSG2は、例えば、トランジスタ(第2スイッチングトランジスタ)によって構成されている。第2スイッチングゲートSG2は、オンされると、第2キャパシタとして働き、転送されてきた電荷(電子)を蓄積することができる。第2スイッチングゲートSG2は、フローティングディフュージョンFD1とともに、光電変換素子PDからの電荷の転送を受けられるように転送ゲートTGに接続されている。
【0049】
第2キャパシタとして働く第2スイッチングゲートSG2は、第2容量[F]を有する。第2容量は、例えば、0.5CFDである。第2スイッチングゲートSG2がオンされたときの電荷蓄積部の容量は、第1容量+第2容量であり、一例として、CFD+0.5CF=1.5CFD[F]である。第2スイッチングゲートSG2がオンされているときに、電荷が転送されてくると、電荷は、フローティングディフュージョンFD1と第2スイッチングゲートSG2とに分配して蓄積される。
【0050】
第2スイッチングゲートSG2は、オフされていると、電荷(電子)を蓄積しない。したがって、第2スイッチングゲートSG2がオフされているときの電荷蓄積部の容量は、第1容量と同じ、CFD[F]である。
【0051】
このように、実施形態に係る電荷蓄積部の容量は可変である。すなわち、実施形態に係る電荷蓄積部は、可変キャパシタである。電荷蓄積部の容量を変化させることで、光電変換素子PDから転送される電荷量が同じでも、フローティングディフュージョンFD1における電圧VFDを変化させることができる。すなわち、電荷が蓄積される電荷蓄積部の容量を大きくすると、フローティングディフュージョンFD1に現れる電圧VFDを低くでき、容量を小さくすると、フローティングディフュージョンFD1に現れる電圧VFDを高くできる。
【0052】
画素回路111Aは、電荷蓄積部に接続されたリセットゲートRSTを備える。実施形態において、電荷蓄積部は、フローティングディフュージョンFD1及び第2スイッチングゲートSG2に接続されている。リセットゲートRSTは、電荷蓄積部に蓄積された電荷を排出する。リセットゲートRSTは、フローティングディフュージョンFD1と電源(電圧:VDD)の間に接続されている。
【0053】
リセットゲートRSTは、オンされると、導通状態になり、電荷蓄積部であるフローティングディフュージョンFD1又は第2スイッチングゲートSG2に蓄積された電荷を電源へ排出する。このような電荷の排出をリセットという。リセットにより、電荷蓄積部の電位は、電源電圧VDDになる。リセットゲートRSTは、オフされると、非導通状態になり、電荷の排出が阻止される。
【0054】
画素回路111Aは、後述の定電流源CSとともにソースフォロア回路40を構成するトランジスタ20を備える。トランジスタ20は、増幅トランジスタ又はソースフォロアトランジスタとも呼ばれる。トランジスタ20は、ゲート端子がフローティングディフュージョンFD1(電荷蓄積部)に接続され、ドレイン端子が電源(電圧:VDD)に接続されている。トランジスタ20は、電荷蓄積部に蓄積された電荷量(及び電荷蓄積部の容量)に応じた電圧vx(画素信号)を、ソース端子に生じさせる。トランジスタ20のソース端子に生じる電圧vx(画素信号)は、電源電圧VDDから、フローティングディフュージョンFD1における電圧VFD及びトランジスタのドレイン-ソース間電圧VGS分、低下した電圧(VDD-VFD-VGS)である。
【0055】
画素回路111Aは、選択ゲートSELを備える。選択ゲートSELは、例えば、トランジスタ(選択トランジスタ)によって構成されている。選択ゲートSELは、オンされると、導通状態になり、トランジスタ20のソース端子と画素信号の読み出しのための信号線135とを接続する。選択ゲートSELは、複数の画素回路111A,111B,111C,111のうち、電荷蓄積部における電圧の読み出しの対象となる対象画素回路(対象画素)の選択のための素子である。対象画素回路が備える電荷蓄積部における電圧が、読み出し回路130によって読み出される。選択ゲートSELは、オフされると、非導通状態となり、トランジスタ20と信号線135との間を非接続にする。
【0056】
画素回路111Aは、第1スイッチングゲートSGを備える。第1スイッチングゲートSGは、例えば、トランジスタ(第1スイッチングトランジスタ)によって構成されている。第1スイッチングゲートSGは、オンされると、導通状態になり、画素回路111Aの電荷蓄積部と、他の画素回路111Cの電荷蓄積部と、を接続する。第1スイッチングゲートSGは、オフされると、非導通状態になり、画素回路111Aの電荷蓄積部と、他の画素回路111Cの電荷蓄積部と、を非接続にする。
【0057】
すなわち、第1スイッチングゲートSGは、その第1スイッチングゲートSGが設けられている画素回路111Aに設けられた電荷蓄積部と、画素回路111Aに隣接する他の画素回路111Cに設けられた電荷蓄積部と、の接続/非接続とを切り替えるための素子である。
【0058】
画素回路111Aの第1スイッチングゲートSGが導通状態になると、画素回路111Aの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD1)と、画素回路111Cの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD3)と、が接続される。
【0059】
また、画素回路111Bの第1スイッチングゲートSGが導通状態になると、画素回路111Bの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD2)と、画素回路111Aの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD1)と、が接続される。
【0060】
画素回路111Aの第1スイッチングゲートSG及び画素回路111Bの第1スイッチングゲートSGの両方が導通状態になると、画素回路111Bの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD2)と、画素回路111Aの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD1)と、画素回路111Cの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD3)と、が接続される。
【0061】
読み出し回路130は、前述のトランジスタ20とともにソースフォロア回路40を構成する定電流源CSを備える。定電流源CSは、信号線135に接続されている。読み出し回路130は、定電流源CSに対して並列に、信号線135の中途に介在して設けられたキャパシタCCDSを備える。キャパシタCCDSは、後述の相関二重サンプリングに用いられる。
【0062】
読み出し回路130は、クリップゲートCLPを備える。クリップゲートCLPは、例えば、トランジスタ(クリップトランジスタ)によって構成されている。クリップゲートCLPは、オンされると、導通状態になり、信号線135とグランドGNDとを接続する。クリップゲートCLPは、オフされると、非導通状態になり、信号線135とグランドGNDとを非接続にする。クリップゲートCLPの動作については後述する。
【0063】
なお、前述の各ゲートは、コントローラ120によって、駆動制御される。各ゲートの制御については後述する。
【0064】
図4は、実施形態に係る画素回路111A,111B,111Cによって実現される特徴量演算のための畳み込み演算のためのフィルタK及びそのフィルタKを用いた畳み込み演算を示している。注目画素(対象画素)における画素値をI(1)とし、I(1)に対して垂直方向に隣接する画素の画素値I(2),I(3)とした場合、注目画素(対象画素)における特徴量I’(1)は、水平ストライプフィルタKを用いて、図4に示すように演算される。ここで、フィルタK=(-0.5,1,-0.5)である。一般的には、画像認識器200などで、このような特徴量抽出演算が行われるが、本実施形態では、イメージセンサ100内部で、このような特徴量演算が行われる。
【0065】
図5及び図6は、コントローラ120が第1モード制御121時において、特徴量演算のために、コントローラ120が画素部110を制御する手順を示している。ここでは、図4に示す水平ストライプフィルタKに対応して3画素分の演算を行うため、J-1行目の画素回路111B、J行目の画素回路111A、及びJ-1行目の画素回路111Cの計3つの画素回路の駆動方法について説明する。図5及び図6に示す駆動方法によって、図4に示すフィルタKの畳み込み演算に相当する演算が、イメージセンサ100内で実行される。
【0066】
まず、コントローラ120は、J行目の画素回路111Aの選択ゲートSEL(J)及びクリップゲートCLPをオンする(ステップS11)。ここでは、J行目の画素回路111Aが対象画素回路である。
【0067】
続いて、コントローラ120は、J-1行目の画素回路111BのリセットゲートRST(J-1)、J行目の画素回路111AのリセットゲートRST(J),J+1行目の画素回路111CのリセットゲートRST(J+1)を全てオンする(ステップS12)。これにより、J-1行目、J行目、J+1行目それぞれのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3がリセットされる。フローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3の電位は、電源電圧VDDになる。
【0068】
その後、コントローラ120は、J行目の画素回路111Aの第1スイッチングゲートSG(J)及びJ-1行目の画素回路の第1スイッチングゲートSG(J-1)をオンするとともに、J-1行目の画素回路111Bの転送ゲートTG(J-1)及びJ+1行目の画素回路111Cの転送ゲートTG(J+1)をオンする(ステップS13)。
【0069】
J行目の画素回路111Aの第1スイッチングゲートSG(J)及びJ-1行目の画素回路の第1スイッチングゲートSG(J-1)がオンされることで、3つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3が接続される。これにより、3つのフローティングディフュージョンFDが、協働して電荷を蓄積できる。
【0070】
また、J-1行目の画素回路111Bの転送ゲートTG(J-1)及びJ+1行目の画素回路111Cの転送ゲートTG(J+1)がオンされることで、J-1行目の画素回路111Bの光電変換素子PDの第2電荷Q(J-1)及びJ+1行目の光電変換素子PDの第3電荷Q(J+1)が転送される。
【0071】
図7に示すように、第2電荷Q(J-1)及び第3電荷Q(J+1)は、互いに接続された3つのフローティングディフュージョンFD1、FD2,FD3へ分配されるよう転送される。第2電荷Q(J-1)及び第3電荷Q(J+1)の和{Q(J-1)+Q(J+1)}は、3つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3へ均等に分配される。
【0072】
なお、ステップS13の時点において、第2スイッチングゲートSG2(J)は、オフされているため、各画素回路111A,111B,111Cの電荷蓄積部の容量は、フローティングディフュージョンFDの第1容量=CFDである。
【0073】
ここでは、電荷を、3つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3(第1電荷蓄積部FD1、第2電荷蓄積部FD2、第3電荷蓄積部FD3)に分配したことで、各フローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3には、それぞれ、{Q(J-1)+Q(J+1)}/3の電荷が蓄積されている。つまり、フローティングディフュージョンFD1には、{Q(J-1)+Q(J+1)}/3の電荷が蓄積される(図7参照)。
【0074】
電荷を3か所に分配して蓄積することで、{Q(J-1)+Q(J+1)}を「3」で除した値に相当する電荷量の蓄積が実現される。つまり、分配数(ここでは、3)に応じた除算が実現される。このように、複数のフローティングディフュージョンFD(電荷蓄積部)へ電荷が分配されるよう、電荷の転送が制御されることで、電荷{Q(J-1)+Q(J+1)}の除算が実現される。
【0075】
ここでは、2個(n=2)の光電変換素子PDにおいて生じた電荷を、3個(m=3)の電荷蓄積部に分配したが、これに限られるものではない。除算を実現する場合、nは、1以上の自然数であればよく、mは2以上の自然数であればよい。例えば、1個(n=1)の光電変換素子PDにおいて生じた電荷を、m個の電荷蓄積部に分配してもよい。また、3個(m=3)以上の光電変換素子において生じた電荷を、m個の電荷蓄積部に分配してもよい。mは、nより大きいのが好ましい。
【0076】
ステップS13の時点で、クリップゲートCLP(及び画素回路111Aの選択ゲートSEL(J))はオンされているため、フローティングディフュージョンFD1の電圧VFD={Q(J-1)+Q(J+1)}/3CFDに応じた電位差が、キャパシタCCDSの両端において生じる。ここで生じるキャパシタCCDSの両端電位差は、VDD-{Q(J-1)+Q(J+1)}/3CFD-VGSである。
【0077】
そして、コントローラ120は、クリップゲートCLPをオフする(ステップS14)。クリップゲートCLPがオフされることで、キャパシタCCDSの両端電位差が保持される。すなわち、キャパシタCCDSに、前述の除算結果{Q(J-1)+Q(J+1)}/3に応じた信号が保持される。
【0078】
続いて、コントローラ120は、J行目の画素回路111AのリセットゲートRST(J)をオンする(ステップS15)。これにより、画素回路111AのフローティングディフュージョンFDがリセットされる。また、ステップS15に先立って、第2スイッチングゲートSG2(J)がオンされている。第2スイッチングゲートSG2(J)がオンされることで、第2キャパシタとしての第2スイッチングゲートSG2(J)も、画素回路111Aの電荷蓄積部を構成する。つまり、ステップS15(及び次のステップS16)の時点において、画素回路111Aの電荷蓄積部の容量は、第1容量+第2容量=CFD+0.5CF=1.5CFD[F]である。なお、ステップS15では、第2スイッチングゲートSG2(J)もリセットされる。
【0079】
そして、コントローラ120は、J行目の画素回路111Aの転送ゲートTG(J)をオンする(ステップS16)。転送ゲートTGがオンされることで、画素回路111Aの光電変換素子PDに蓄積された第1電荷Q(J)が、画素回路111Aの電荷蓄積部へ転送される。第1電荷Q(J)は、電荷蓄積部を構成するフローティングディフュージョンFD1及び第2スイッチングゲートSG2へ、電荷が分配されるよう転送される(図8参照)。
【0080】
なお、ステップS16の時点では、画素回路111Aの第1スイッチングゲートSG(J)及び画素回路111Bの第1スイッチングゲートSG(J-1)は、オフされているため、第1電荷Q(J)は、画素回路111Aの電荷蓄積部にだけ転送される。
【0081】
ステップS16の時点において、画素回路111Aの電荷蓄積部の容量は、1.5CFD[F]であるため、第1電荷Q(J)が電荷蓄積部に蓄積されると、フローティングディフュージョンFD1の電圧VFDは、VFD=Q(J)/1.5CFDになる。
【0082】
したがって、画素信号vx=VDD-Q(J)/1.5CFD-VGSとなる(図8参照)。読み出し回路130の出力信号voutは、キャパシタCCDSの両端電位差(第2電圧)と、画素信号vx(第1電圧)と、の差分となるため、出力信号vout=2{Q(J)-0.5Q(J-1)-0.5Q(J+1)}/3CFDが得られる(図8参照)。すなわち、出力信号voutは、第1電荷量Q(J)に応じた第1電圧と、3つ電荷蓄積部のうち画素回路111Aの電荷蓄積部に蓄積された電荷量{Q(J-1)+Q(J+1)}/3に応じた第2電圧と、の差に応じた信号である。
【0083】
実施形態においては、一例として、出力信号voutとして、{Q(J)-0.5Q(J-1)-0.5Q(J+1)}に応じた信号が得られる。{Q(J)-0.5Q(J-1)-0.5Q(J+1)}は、第1電荷Q(J)に1を乗じたものと、Q(J-1)に-0.5を乗じたものと、Q(J+1)に-0.5を乗じたものと、の和である。したがって、{Q(J)-0.5Q(J-1)-0.5Q(J+1)}は、Q(J),Q(J-1),Q(J+1)に図4に示すフィルタKを乗じた結果(特徴量)と等価である。したがって、電荷の転送の制御の結果として得られる出力信号voutとして、特徴量が得られる。なお、出力信号voutも画素信号である。
【0084】
以上のように、実施形態に係る特徴量演算は、電荷の転送の制御によって実現される。電荷の転送の制御は、画素回路111等に含まれるゲートのスイッチングで足りるため、非特許文献1のようにオペアンプを用いた演算に比べて、消費電力が小さい。実施形態に係るイメージセンサ100は、標準的なCMOSイメージセンサ製造プロセスで製造でき、非特許文献1のように特殊な製造プロセス(IGZO)を必要としないため、製造コストが低い。
【0085】
以上の説明では、垂直方向の3つの画素(画素回路111A,111B,111C)に対する演算を例示的に説明したが、演算対象となる画素の数は、3つに限定されるものではなく、例えば、5つ又はそれ以上であってもよい。
【0086】
また、演算対象となる複数の画素は、垂直方向の複数の画素に限られず、水平方向の複数の画素であってもよい。水平方向の複数の画素が演算対象となる場合、垂直ストライプフィルタの演算が可能である。さらに、演算対象となる複数の画素は、垂直方向及び水平方向の2次元範囲に含まれる複数の画素であってもよく、この場合、ラプラシアンフィルタの演算が可能である。
【0087】
垂直ストライプフィルタの演算をするためには、前述のステップS13において、水平方向に複数の画素回路111(のフローティングディフュージョン)が接続される必要がある。また、ラプラシアンフィルタの演算をするためには、前述のステップS13において、垂直方向及び水平方向に複数の画素回路111(のフローティングディフュージョン)が接続される必要がある。
【0088】
図9は、垂直方向及び水平方向における接続のための画素回路111の構成を示している。図9では、図3に示す第1スイッチングゲートSGが、垂直方向第1スイッチングゲートSGとして表されている。垂直方向第1スイッチングゲートSGは、垂直方向に隣接する他の画素回路111の電荷蓄積部との接続を担う。また、図9では、図3に示す画素回路111Aに、水平方向第1スイッチングゲートSGが追加されている。水平方向第1スイッチングゲートSGは、水平方向に隣接する他の画素回路111の電荷蓄積部との接続を担う。図9において、その他の構成は、図3と同様である。
【0089】
水平方向第1スイッチングゲートSGは、例えば、トランジスタによって構成されている。水平方向第1スイッチングゲートSGは、オンされると、導通状態になり、水平方向第1スイッチングゲートSGが設けられている画素回路111の電荷蓄積部と、水平方向にある他の画素回路111の電荷蓄積部と、を接続する。水平方向第1スイッチングゲートSGは、オフされると、非導通状態になり、水平方向第1スイッチングゲートSGが設けられている画素回路111の電荷蓄積部と、水平方向にある他の画素回路111の電荷蓄積部と、を非接続にする。
【0090】
垂直方向第1スイッチングゲートSGをオンにした場合、垂直方向の複数の画素回路111が接続され、水平ストライプフィルタの演算が可能である。水平方向第1スイッチングゲートSGをオンにした場合、水平方向の複数の画素回路111が接続され、垂直ストライプフィルタの演算が可能である。垂直方向第1スイッチングゲートSG及び水平方向第1スイッチングゲートSGをオンにした場合、垂直方向及び水平方向の複数の画素回路111が接続され、ラプラシアンフィルタの演算が可能である。
【0091】
図10は、特徴量画像の求め方の例を示している。前述の説明では、1つの対象画素の特徴量=2{Q(J)-0.5Q(J-1)-0.5Q(J+1)}/3CFDの求め方を説明した。特徴量画像は、前述の特徴量が全画素について求められたものである。
【0092】
実施形態においては、図10に示すように、1つの特徴量画像の取得は、第1フレーム、第2フレーム、及び第3フレームの計3つのフレームで行われる。一例として、図10に示すように、第1フレームでは、2行目、5行目、8行目・・・の画素回路111から読み出しをするべく、選択ゲートSEL(2),SEL(5),SEL(8)・・・がオンされる。第2フレームでは、3行目、6行目、9行目・・・の画素回路111から読み出しをするべく、選択ゲートSEL(3),SEL(6),SEL(9)がオンされる。第3フレームでは、4行目、7行目、10行目・・・の画素回路111から読み出しをするべく、選択ゲートSEL(4),SEL(7),SEL(10)・・・がオンされる。3つのフレームにおいて読み出しをすることで、1つの特徴量画像が得られる。
【0093】
異なるフレーム(異なる時間)において、光電変換素子PDに蓄積された電荷は、異なるため、動体ブレが発生するおそれがある。ただし、イメージセンサ100を十分に高速動作させることで、動体ブレを十分に軽減できる。例えば、30フレーム/秒でイメージセンサ100を動作させれば、33ミリ秒で水平ストライプフィルタの畳み込み演算が可能である。また、3×3のラプラシアンfilterの場合は、90フレーム/秒でイメージセンサ100を動作させれば、33ミリ秒で畳み込み演算が可能である。また、特徴量の抽出時には、後述のように低分解能信号を読み出すことで、高速動作が可能である。また、低消費電力で動作が可能である。
【0094】
図11及び図12は、コントローラ120が第2モード制御122時において、高解像度画像を得るために、コントローラ120が画素部110を制御する手順を示している。第2モード制御122では、相関二重サンプリング方により画素信号が読み出される。
【0095】
まず、コントローラ120は、対象画素回路であるJ行目の画素回路111Aの選択ゲートSEL(J)及びクリップゲートCLPをオンする(ステップS21)。
【0096】
続いて、コントローラ120は、J行目の画素回路111AのリセットゲートRST(J)をオンする(ステップS22)。これにより、J行目のフローティングディフュージョンFD1がリセットされる。このときの画素回路111Aの画素信号の電圧vxを、リセット電圧VRSTという。
【0097】
そして、コントローラ120は、クリップゲートCLPをオフする(ステップS23)。これにより、キャパシタCCDSの両端電位差としてリセット電圧VRSTが保持される。
【0098】
コントローラ120は、J行目の画素回路111Aの転送ゲートTG(J)をオンする(ステップS24)。転送ゲートTGがオンされることで、画素回路111Aの光電変換素子PDに蓄積された第1電荷Q(J)が、画素回路111Aの電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD1)へ転送される。画素回路111Aの画素信号の電圧vxは、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷に応じた信号電圧VSIGになる。読み出し回路130の出力信号voutは、キャパシタCCDSの両端電位差と、画素信号vxと、の差分となるため、出力信号vout=として、VSIGとVRSTとの差分信号が得られる。VSIGとVRSTとの差分信号は、光電変換素子PDにおいて生じた電荷量に応じた大きさを持つ。VSIGとVRSTとの差分信号は、高解像度画像を構成する1画素の値を示す。
【0099】
さて、図13は、図3に示すソースフォロア回路40に含まれる定電流源CSの構成を示している。図13に示す定電流源CSは、直流電源31(定電圧源)とトランジスタ32とを備える。トランジスタ32は、トランジスタ20のソースに、選択ゲートSELを介して、接続されている。定電流源CSを含むソースフォロア回路40を用いた相関二重サンプリングによって、高解像度画像のための画素信号vxを読み出す場合、vxは、図14に示すような波形になる。前述のようにVSIGとVRSTとの差分信号が画素値になる。
【0100】
図13のような定電流源CSを用いて画素信号vxを読み出すと高分解能出力が得られるため、イベント動作122(第2モード制御)時における高解像度画像の取得には有利である。しかし、定電流源CSを用いているために、ソースフォロア回路40に直流電流が流れ、消費電力が大きくなる。
【0101】
そこで、図15に示すように、トランジスタ32のゲートに、定電圧ではなく、クロックCLK(パルス信号)を与える。したがって、トランジスタ32は、トランジスタ20のソースに接続されたスイッチング回路50を構成する。トランジスタ32にクロックCLKが与えられることにより、トランジスタ32が定電流源CSとして機能する場合に比べて、消費電力を小さくできる。図15に示すソースフォロア回路40をプリチャージ(pre-charge)型と呼ぶ。
【0102】
図16は、プリチャージ型ソースフォロア回路40の動作のためのタイミングチャートを示している。まず、コントローラ120は、画素回路111の選択ゲートSELをオフにした状態で、リセットゲートRSTをオンする。これにより、フローティングディフュージョンFDがリセットされる。
【0103】
そして、コントローラ120は、クロックCLKをHighにし、トランジスタ32をオンにする(ステップS32)。これにより、トランジスタ32が導通状態になり、vxがグランド電位になる。
【0104】
続いて、コントローラ120は、クロックCLKをLowにするとともに、選択ゲートSELをオンにする(ステップS32)。これにより、vxがグランドから切り離され、トランジスタ20に接続されるため、vxの電位が、グランド電位から徐々に上昇する。vxは、フローティングディフュージョンFDの電圧VFDに応じた電圧V1まで上昇する。電圧V1は、例えば、リセット電圧VRST又は前述の電圧{VDD-{Q(J-1)+Q(J+1)}/3CFD-VGS}である(ステップS13参照)。
【0105】
さらに、コントローラ120は、選択ゲートSELをオフし、転送ゲートTGをオンするとともにクロックをHighにする(ステップS33)。これにより、光電変換素子PDに蓄積された電荷が、電荷蓄積部(フローティングディフュージョンFD)へ転送される。また、クロックCLKがHighにされることで、vxがグランド電位になる。
【0106】
コントローラ120は、クロックCLKをLowにするとともに、選択ゲートSELをオンにする(ステップS34)。これにより、vxの電位が、グランド電位から徐々に上昇する。vxは、フローティングディフュージョンFDの電圧VFDに応じた電圧V2まで上昇する。vxは、フローティングディフュージョンFDに蓄積された電荷に応じた電圧V2まで上昇する。電圧V2は、例えば、信号電圧VSIG又は前述の電圧{VDD-Q(J)/1.5CFD-VGS}である。
【0107】
ソースフォロア回路40が、図15に示すように構成されていることで、スイッチング動作で読み出しを行えるため、定電流源CSを用いたソースフォロア回路40に比べて消費電力を低減できる。
【0108】
なお、図15に示す回路の場合、定電流源CSを用いないため、整定誤差が大きくなる。すなわち、V1,V2の誤差が大きくなる。ただし、特徴量は、高分解能出力を必要としないため、誤差の発生はさほど問題にならない。
【0109】
コントローラ120は、通常動作121(第1モード制御121)のときは、トランジスタ32のゲートにクロックCLKを与えて、低消費電力で特徴量を読み出すことができる。また、コントローラ120は、イベント動作122(第2モード制御122)のときは、トランジスタ32のゲートに定電圧を与えて、トランジスタ32を定電流源CSとして動作させて、高解像度画像のための画素値を高精度で読み出すことができる。
【0110】
図17及び図19は、読み出し回路130に含まれるアナログデジタルアナログコンバータ60(ADC60)を示している。なお、図17及び図19に示されるvyは、図3のvoutに相当する。ADC60は、画素信号vy(図3の出力信号vout)を、デジタル信号に変換する。
【0111】
ADC60は、アンプ61(プリアンプ61)と比較器62とを備える。アンプ61は、画素信号vyと参照信号VDACとの差分を増幅して出力するオペアンプである。参照信号VDACは、デジタルアナログコンバータ63(DAC63)から出力される。画素信号vyは、例えば、アンプ61の反転入力(-)に与えられ、参照信号VDACは、アンプ61の非反転入力(+)に与えられる。アンプ61の非反転入力とアンプ61の出力とは、スイッチング素子AZ(トランジスタ)を介して接続されている。アンプ61の出力は、2入力の比較器62の一方の入力として与えられる。比較器62の他方の入力は、スイッチング素子CTR(トランジスタ)を介して、DAC63に接続されている。比較器62は、ラッチ型比較器であり、比較結果を保持できる。
【0112】
ADC60は、高解像度画像を出力する際には、アンプ61とラッチ型比較器62とを用いて画素信号vyと参照信号VDACとを比較することで、画素信号vyをデジタル信号に変換する。
【0113】
すなわち、高解像度画像を出力するイベント動作122(第2モード制御122)においては、図17及び図18に示すように、コントローラ120は、まず、クリップゲートCLPをオフし、スイッチング素子AZをオンする(ステップS41)。これにより、vxが読み出され、vyがvxに応じた電位まで状況する。
【0114】
続いて、コントローラ120は、スイッチング素子AZをオフする(ステップS42)。これにより、アンプ61が比較器として動作する。つまり、アンプ61は、画素信号vyと参照信号VDACとの差分を出力する。差分は、ラッチ型比較器62の一方の入力に与えられ、ラッチ型比較器62によって保持される。差分が小さくなるように、参照信号VDACの大きさを調整する二分探索が行われることで、画素信号vyがデジタル信号に変換される。高解像度画像を出力する場合、アンプ61が動作するため、アンプ61による電力消費が大きくなる。
【0115】
なお、以上の場合において、スイッチング素子CTRは、グランド側に切り替えられている。したがって、ラッチ型比較器62の他方の入力にはグランド電位が与えられる。
【0116】
一方、特徴量画像は高分解能出力を必要としないため、特徴量画像を出力する通常動作121(第1モード制御121)においては、アンプ61がオフされており、ADC60は、図19及び図20に示すように動作する。
【0117】
すなわち、特徴量画像を出力する通常動作121(第1モード制御121)においては、コントローラ120は、まず、クリップゲートCLPをオンする(ステップS51)。このとき、スイッチング素子AZはオンされている。これにより、vxが読み出され、vyがvxに応じた電位まで上昇する。
【0118】
続いて、コントローラ120は、クリップゲートCLPをオフする(ステップS51)。これにより、画素信号vyが保持される。
【0119】
このとき、スイッチング素子AZがオンされているため、画素信号vyは、スイッチング素子AZを介して、ラッチ型比較器62の一方の入力に与えられる。このとき、スイッチング素子CTRは、DAC63に接続されているため、ラッチ型比較器62の他方の入力には、DAC63から出力された参照信号VDACが与えられる。
【0120】
したがって、通常動作121(第1モード制御121)においては、ラッチ型比較器62が、画素信号vyと参照信号VDACとの差分を出力する。差分が小さくなるように、参照信号VDACの大きさを調整する二分探索が行われることで、画素信号vyがデジタル信号に変換される。通常動作121(第1モード制御121)においては、アンプ61が用いられないため、アンプ61への電力供給を停止できる。したがって、消費電力が少なくなる。
【0121】
<3.付記>
【0122】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0123】
10 :画像認識システム
20 :トランジスタ
31 :直流電源
32 :トランジスタ
40 :ソースフォロア回路
50 :スイッチング回路
60 :アナログデジタルアナログコンバータ
61 :アンプ
62 :ラッチ型比較器
63 :デジタルアナログコンバータ
100 :イメージセンサ
110 :画素部
111 :画素回路
111A :画素回路
111B :画素回路
111C :画素回路
120 :コントローラ
121 :第1モード制御
122 :第2モード制御
125 :切替器
130 :読み出し回路
135 :信号線
140 :垂直走査回路
150 :水平走査回路
200 :画像認識器
210 :機械学習モデル
220 :イベント検出器
AZ :スイッチング素子
FD :第1容量
CLK :クロック
CLP :クリップゲート
CS :定電流源
CTR :スイッチング素子
FD :フローティングディフュージョン
FD1 :フローティングディフュージョン
FD2 :フローティングディフュージョン
FD3 :第3電荷蓄積部
GND :グランド
K :水平ストライプフィルタ
PD :光電変換素子
Q(J) :第1電荷
Q(J-1):第2電荷
Q(J+1):第3電荷
RST :リセットゲート
SEL :選択ゲート
SG :第1スイッチングゲート
SG2 :第2スイッチングゲート
SG :水平方向第1スイッチングゲート
SG :垂直方向第1スイッチングゲート
TG :転送ゲート
V1 :電圧
V2 :電圧
DD :電源電圧
FD :電圧
RST :リセット電圧
SIG :信号電圧
vout :出力信号(画素信号)
vx :画素信号
vy :画素信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
図19
図20