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特開2022-102607自動車フロア材用不織布及び自動車フロア材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102607
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】自動車フロア材用不織布及び自動車フロア材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20220630BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20220630BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20220630BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220630BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H1/4374
D04H1/559
B32B27/12
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217440
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3D023BB12
3D023BD04
3D023BE06
4F100AK01C
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA08A
4F100CA08B
4F100DG06A
4F100DG06B
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100GB32
4F100JA13
4F100JD02
4F100YY00A
4F100YY00B
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA07
4L047CA19
4L047CB08
4L047CC09
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性が優れ、かつ自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、成型時に付与した樹脂の染み出しを防ぐことができる自動車フロア材用不織布、及び自動車フロア材を提供すること。
【解決手段】本発明の自動車フロア材用不織布は、5.0dtex以上の繊維を含む太繊維層を有することにより、自動車フロア材用不織布の耐摩耗性及び強度が優れ、また、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層により、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に樹脂を付与した面の反対面からの樹脂の染み出しが起こりにくい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.0dtex以上の繊維を含む太繊維層と、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層を有する不織布であり、不織布における5.0dtex以上の繊維の割合が、11~22mass%であり、不織布における1.5dtex以下の繊維の割合が、36~89mass%である、自動車フロア材用不織布。
【請求項2】
目付が230g/m以上である、請求項1に記載の自動車フロア材用不織布。
【請求項3】
通気度が60~90cm/cm・sec.である、請求項1又は2に記載の自動車フロア材用不織布。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車フロア材用不織布に有する細繊維層に隣接して樹脂層を有する、自動車フロア材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材の一種である自動車フロア材に用いる不織布、及び前記自動車フロア材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車内装材の一種である自動車フロア材には、防音、遮音性能が求められていることから、特開2010-260490号公報(特許文献1)に記載されているように、一般的に不織布などの繊維構造体が用いられている。また、薄く軽量である自動車フロア材を実現するために、不織布などの繊維構造体そのものに圧力を掛けて成型して自動車フロア材を製造する他に、繊維構造体の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて繊維構造体と樹脂を成型することで自動車フロア材を製造することも一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-260490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の燃費向上や、自動車フロア材の厚みを低減させ車室内を広くするために、自動車フロア材として、薄く軽量でありながら、耐摩耗性及び吸音性に優れるものが要望されている。このような自動車フロア材を製造するために、不織布などの繊維構造体の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて繊維構造体と樹脂を成型することで自動車フロア材を製造することから、自動車フロア材を製造する際に樹脂の染み出しが発生しない自動車フロア材用不織布が要望されている。従来の自動車フロア材用不織布では耐摩耗性を向上させるために太い繊維を用いるため、耐摩耗性に優れる一方、太い繊維のみで自動車フロア材用不織布が構成されていると、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、成型時に付与した樹脂が自動車フロア材用不織布の空隙を通り抜けることによって、樹脂を付与した面の反対面からの樹脂の染み出しが起こることから、樹脂の染み出しを抑制するため前記反対面に目留めとなる粒子層や別途作成した緻密な層を配しなければならず、相対的に重く厚みのあるものであった。
【0005】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、耐摩耗性が優れ、かつ自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、成型時に付与した樹脂の染み出しを防ぐことができる自動車フロア材用不織布、及び自動車フロア材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、「5.0dtex以上の繊維を含む太繊維層と、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層を有する不織布であり、不織布における5.0dtex以上の繊維の割合が、11~22mass%であり、不織布における1.5dtex以下の繊維の割合が、36~89mass%である、自動車フロア材用不織布。」である。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、「目付が230g/m以上である、請求項1に記載の自動車フロア材用不織布。」である。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、「通気度が60~90cm/cm・sec.である、請求項1又は2に記載の自動車フロア材用不織布。」である。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明は、「請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車フロア材用不織布に有する細繊維層に隣接して樹脂層を有する、自動車フロア材。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る自動車フロア材用不織布は、5.0dtex以上の繊維を含む太繊維層を有することにより、自動車フロア材用不織布の耐摩耗性及び強度が優れ、また、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層により、自動車フロア材の強度向上のために自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、成型時に付与した樹脂が自動車フロア材用不織布の空隙を通り抜けることによって、樹脂を付与した面の反対面からの樹脂の染み出しが起こりにくい。更に、自動車フロア材用不織布における5.0dtex以上の繊維の割合が、11~22mass%であり、かつ、自動車フロア材用不織布における1.5dtex以下の繊維の割合が、36~89mass%であることにより、自動車フロア材用不織布が耐摩耗性と、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくいことの両方を満たすことができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る自動車フロア材用不織布は、目付が230g/m以上と自動車フロア材用不織布の繊維量が多いことから、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくい。
【0012】
本発明の請求項3に係る自動車フロア材用不織布は、通気度が60~90cm/cm・sであることで、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくいことと、自動車フロア材用不織布がある程度の通気性を有していることにより不織布内部で音を減衰できることから、自動車フロア材が高い吸音性能を有することの両方を満たすことができる。
【0013】
本発明の請求項4に係る自動車フロア材は、耐摩耗性及び強度が優れ、また、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくい自動車フロア材用不織布から構成された自動車フロア材であることから、耐摩耗性及び強度が優れ、また、品位のよい自動車フロア材である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の自動車フロア材用不織布(以下、単に「不織布」と表記することがある)の構成繊維の構成成分は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を用いて構成できる。
【0015】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0016】
また、自動車フロア材に難燃性が求められる場合には、不織布の構成繊維として難燃性の有機樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の有機樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、不織布は構成繊維として、レーヨン繊維などの難燃性繊維を含んでも良い。
【0017】
本発明の不織布の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0018】
構成繊維は、一種類の有機樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の有機樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0019】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0020】
本発明の不織布は、5.0dtex以上の繊維を含む太繊維層、及び、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層を有する。太繊維層を有していることによって、不織布の耐摩耗性が優れ、また、細繊維層を有していることによって、不織布の細繊維層側に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくいためである。また、不織布の耐摩耗性をより向上させるため、及び、樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂を付与した面の反対面からの樹脂の染み出しがより起こりにくいように、不織布は、太繊維層と、太繊維層に隣接した細繊維層の2層構造であるのがより好ましい。
【0021】
本発明の不織布を構成する太繊維層に含まれる5.0dtex以上の繊維の繊度は、大きければ大きいほど、より不織布の耐摩耗性及び強度が優れることから、6.0dtex以上がより好ましく、6.5dtex以上が更に好ましい。前記繊維の繊度の上限としては、繊度が大きすぎる、すなわち太すぎる繊維は繊維同士が絡合しにくくなり、不織布の耐摩耗性及び強度が劣るおそれがあることから、10dtex以下が現実的である。また、太繊維層における5.0dtex以上の繊維の割合は、大きければ大きいほど、より不織布の耐摩耗性及び強度が優れることから、60mass%以上が好ましく、70mass%以上がより好ましく、80mass%以上が更に好ましい。
【0022】
太繊維層には、5.0dtex以上の繊維の他に、熱接着性繊維を含んでいるのが好ましい。熱接着性繊維を含んでいることで、不織布の構成繊維同士が熱接着性繊維由来の接着成分により接着し、不織布の耐摩耗性及び強度が優れ、また、自動車フロア材の耐摩耗性及び強度が優れるためである。熱接着性繊維は周知のものを採用でき、例えば、全溶融型の熱接着性繊維や、複数種類の樹脂から構成された芯鞘型やサイドバイサイド型などの複合繊維に含まれる低融点の樹脂が融着する部分溶融型の熱接着性繊維を採用できるが、溶融して接着した後も未溶融部分があることで繊維強度が優れ、結果として不織布の強度が優れることから、部分溶融型の熱接着性繊維が好ましく、部分溶融型の熱接着性繊維の中でも芯鞘型複合繊維が更に好ましい。熱接着性繊維において熱接着性を発揮する成分として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱接着性維維を適宜選択して使用できる。また、太繊維層に含まれる熱接着性繊維は、後述の細繊維層に含まれる熱接着性繊維と同種であるのがより好ましい。これにより、太繊維層と細繊維層が隣接する際に太繊維層と細繊維層が一体化しやすいためである。太繊維層に含まれる熱接着性繊維の割合は、高ければ高いほど、不織布及び自動車フロア材の耐摩耗性及び強度が優れることから、10mass%以上が好ましく、15mass%以上がより好ましく、20mass%以上が更に好ましい。一方、熱接着性繊維は通常の繊維よりも燃焼しやすい傾向があり、熱接着性繊維の割合が高いと、不織布の難燃性が劣るおそれがあることから、太繊維層に含まれる熱接着性繊維の割合は、50mass%以下が現実的である。
【0023】
太繊維層には、上述の5.0dtex以上の繊維、上述の熱接着性繊維の他に繊維を含んでいてもよい。例えば、5.0dtex未満の熱接着性を有しない繊維などが挙げられる。しかし、不織布の耐摩耗性及び強度が優れることから、太繊維層は5.0dtex以上の繊維と熱接着性繊維のみで構成されているのが好ましい。
【0024】
太繊維層の目付は、高ければ高いほど、不織布の耐摩耗性及び強度が優れ、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくいことから、40g/m以上が好ましく、50g/m以上がより好ましく、60g/m以上が更に好ましい。目付の上限としては、目付が大きすぎると自動車用フロア材の質量が大きくなりすぎるおそれがあることから、100g/m以下が現実的である。なお、本発明の「目付」とは、最も広い面である主面1mあたりの質量である。
【0025】
本発明の不織布を構成する太繊維層の質量割合は、不織布の耐摩耗性及び強度が優れるように、15mass%以上が好ましく、20mass%以上がより好ましく、22mass%以上が更に好ましい。不織布に占める太繊維層の質量割合が高すぎると、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布を成型した際に、樹脂の染み出しが起こりやすいおそれがあることから、40mass%以下が現実的である。
【0026】
本発明の不織布は、上述の通り、太繊維層に隣接して、1.5dtex以下の繊維を含む細繊維層を有している。この細繊維層により、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくい。細繊維層に含まれる1.5dtex以下の繊維の繊度は、小さければ小さいほど細繊維層が緻密になり、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、より樹脂の染み出しが起こりにくいことから、1.4dtex以下がより好ましく、1.3dtex以下が更に好ましい。一方、前記繊維の繊度が小さすぎると不織布の強度が低下するおそれがあることから、0.5dtex以上が現実的であり、0.8dtex以上がより現実的である。また、細繊維層における1.5dtex以下の繊維の割合は、大きければ大きいほど、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、より樹脂の染み出しが起こりにくいことから、40mass%以上が好ましく、50mass%以上がより好ましく、60mass%以上が更に好ましい。
【0027】
細繊維層には、太繊維層と同様に、1.5dtex以下の繊維の他に、上述の熱接着性繊維と同様の熱接着性繊維を含んでいるのが好ましい。これにより、細繊維層の構成繊維同士が熱接着性繊維由来の接着成分により接着し、不織布の耐摩耗性及び強度が優れるためである。また、細繊維層に含まれる熱接着性繊維は、太繊維層に含まれる熱接着性繊維と同種であるのがより好ましい。これにより、隣接している太繊維層と細繊維層が一体化しやすい傾向があり、層間剥離が起こりにくいためである。細繊維層に含まれる熱接着性繊維の割合は、高ければ高いほど、不織布及び自動車フロア材の耐摩耗性及び強度が優れることから、30mass%以上が好ましく、40mass%以上がより好ましく、50mass%以上が更に好ましい。一方、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こるおそれがあることから、細繊維層に含まれる熱接着性繊維の割合は、60mass%以下が現実的である。
【0028】
細繊維層には、1.5dtex以下の繊維、熱接着性繊維の他に繊維を含んでいてもよい。例えば、1.5dtexを超える太い繊維などが挙げられる。しかし、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくいように、細繊維層は1.5dtex以下の繊維と熱接着性繊維のみで構成されているのが好ましい。
【0029】
細繊維層の目付は、高ければ高いほど、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、より樹脂の染み出しが起こりにくいことから、120g/m以上が好ましく、150g/m以上がより好ましく、170g/m以上が更に好ましい。目付の上限としては、目付が大きすぎると自動車用フロア材の質量が大きくなりすぎるおそれがあることから、300g/m以下が現実的である。
【0030】
本発明の不織布は、5.0dtex以上の繊維を11~22mass%含む。不織布に含まれる5.0dtex以上の繊維の割合が11mass%以上であると、不織布の耐摩耗性及び強度が優れる。より不織布の耐摩耗性及び強度が優れるように、不織布に含まれる5.0dtex以上の繊維の割合は、15mass%以上がより好ましく、18mass%以上が更に好ましい。一方、不織布に含まれる5.0dtex以上の繊維の割合が高すぎると、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こるおそれがあることから、22mass%以下が好ましい。
【0031】
本発明の不織布は、1.5dtex以下の繊維を36~89mass%含む。不織布に含まれる1.5dtex以下の繊維の割合が36mass%以上であると、不織布がより緻密になり、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくい。より樹脂の染み出しが起こりにくいように、不織布に含まれる1.5dtex以下の繊維の割合は、37mass%以上がより好ましく、38mass%以上が更に好ましい。一方、不織布に含まれる1.5dtex以下の繊維の割合が高すぎると、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に不織布が破れるおそれがあること、また、不織布の耐摩耗性が劣るおそれがあることから、89mass%以下が好ましく、60mass%以下がより好ましく、45mass%以下が更に好ましい。
【0032】
本発明の不織布は、上述のように太繊維層と、太繊維層に隣接して細繊維層を有しているが、ニードルパンチ処理により太繊維層と細繊維層とが一体化しているのが好ましい。ニードルパンチ処理により太繊維層の構成繊維と細繊維層の構成繊維が十分に絡み合うことから、不織布の層間剥離が起こりにくく、また、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくい。なお、ニードルパンチ処理は、不織布の外観品位が優れるように、細繊維層からニードルパンチ処理を行い、細繊維層の構成繊維の一部が太繊維層に入り込む態様であるのが好ましい。
【0033】
本発明の不織布の通気度は、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、成型時に付与した樹脂の染み出しが起こりにくいように、また、不織布がある程度の通気性を有していることにより不織布内部で音を減衰できることで不織布の吸音性能が優れ、結果として自動車フロア材の吸音性能が優れるように、60~90cm/cm・sec.であるのが好ましい。この通気度は、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、より樹脂の染み出しが起こりにくいように、また、自動車フロア材の吸音性能がより優れるように、70~90cm/cm・sec.であるのがより好ましく、70~80cm/cm・sec.であるのが更に好ましい。なお、本発明の通気量は、JIS L1096(2010)の8.26「通気性」のA法(フラジール形法)により測定した値である。
【0034】
本発明の不織布には、繊維の他にも、例えば、繊維同士を接着する繊維接着バインダや、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗カビ剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加物を含有していてもよい。
【0035】
本発明の不織布の目付は、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくいように、230g/m以上であるのが好ましい。不織布の目付が大きいほど、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、より樹脂の染み出しが起こりにくいことから、250g/m以上がより好ましく、270g/m以上が更に好ましい。不織布の目付の上限としては、自動車フロア材を車に取り付けた際に車室内が広くなるように自動車フロア材の厚みを低減させる必要があることから、400g/m以下が現実的である。
【0036】
本発明の不織布の厚さは、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくいように、また、自動車フロア材を車に取り付けた際に車室内が広くなるように自動車フロア材の厚みを低減させる必要があることから、1.8~3.0mmが好ましく、2.0~2.8mmがより好ましく、2.2~2.6mmが更に好ましい。なお、本発明の「厚さ」は、100g/5cm荷重時の2つの主面間の長さの値をいい、無作為に選んだ10点における厚さの算術平均値を意味する。
【0037】
本発明の自動車フロア材は、上述の不織布に隣接して樹脂層を有する。この樹脂層は、自動車フロア材の強度が優れるように、不織布の主面全面を被覆しているのが好ましい。また、不織布が太繊維層と細繊維層を有している場合、樹脂層の構成樹脂による染み出しが起こりにくいように、不織布の細繊維層に隣接して樹脂層を有するのが好ましい。樹脂層の樹脂組成は特に限定するものではなく、不織布の構成繊維の構成成分で例示した有機樹脂と同様の有機樹脂で構成することができる。
【0038】
次に、本発明の不織布及び自動車フロア材の製造方法について説明する。
【0039】
まず、不織布の太繊維層を構成する、5.0dtex以上の繊維を含む太繊維シート層、及び、不織布の細繊維層を構成する、1.5dtexの繊維を含む細繊維シート層を準備する。この太繊維シート層、細繊維シート層には、先述の熱接着性繊維を含んでいるのが好ましい。この太繊維シート層、細繊維シート層は、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法[メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法など)を用いて、繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法]などによって製造出来るが、不織布及びフロア材の強度向上のために、また、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布と樹脂を成型して自動車フロア材を製造する際に、樹脂の染み出しが起こりにくいように、更に、成型加工性に優れるようにある程度の嵩がある方が好ましいため、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法を採用するのが好ましい。
【0040】
次いで、太繊維シート層と細繊維シート層を重ね合わせ、太繊維シート層と細繊維シート層を一体化させ、本発明の不織布を製造する。太繊維シート層と細繊維シート層を一体化させる方法は、太繊維シート層と細繊維シート層をニードルパンチ処理する方法や、太繊維シート層と細繊維シート層の少なくとも一方にホットメルト樹脂などの接着樹脂を塗布等の方法で付与して接着する方法や、太繊維シート層と細繊維シート層の間にシート状の接着樹脂を積層して熱圧着する方法などが採用できるが、太繊維シート層と細繊維シート層をニードルパンチ処理すると、ニードルパンチ処理により太繊維層の構成繊維と細繊維層の構成繊維が十分に絡み合うことから、不織布の層間剥離が起こりにくく、また、不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて不織布を成型した際に、樹脂の染み出しが起こりにくいことから好ましい。太繊維シート層と細繊維シート層を一体化させる際にニードルパンチ処理する場合は、不織布の品位が優れるように、細繊維シート層側からニードルパンチ処理するのが好ましい。また、この時のニードルパンチ処理の針密度は特に限定するものではないが、300~600本/cmであることができる。
【0041】
なお、太繊維シート層、細繊維シート層をそれぞれニードルパンチ処理した後に積層させ、さらにニードルパンチ処理や熱接着などにより一体化させても本発明の不織布は得られるが、樹脂を細繊維シート層からなる細繊維層側から含浸した場合、太繊維シート層からなる太繊維層にまで達せずに剥離しやすい態様であるため、太繊維シート層と細繊維シート層を重ね合わせ、積層させたものをニードルパンチ処理にて一体化するのが好ましい。
【0042】
繊維シート層(太繊維シート層、細繊維シート層も含む)に熱接着性繊維が含まれている場合、繊維シート層準備後、または、ニードルパンチ処理等による太繊維シートと細繊維シートの一体化後、熱処理することで繊維シート(太繊維シート、細繊維シートも含む)に含まれる熱接着性繊維を溶解させて構成繊維同士を接着させることで本発明の不織布を製造する。このとき繊維シートを熱処理する方法は適宜選択でき、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供する方法を選択できる。熱処理する際の温度は、使用する繊維、不織布の接着方法(熱接着性繊維か、バインダによる接着か、そのほかの方法による接着か)などにより適宜調整できる。
【0043】
上述のように製造した不織布はそのまま用いても良いが、必要に応じて、カレンダーロールなどにより表面を平滑にするための加圧処理を行ってもよい。
【0044】
不織布から、不織布に隣接して樹脂層を有する自動車用フロア材を製造する方法としては、例えば、不織布の細繊維層側に樹脂層を構成できる樹脂を溶融させ、溶融した樹脂を不織布の細繊維層側に付与して加圧成形する方法、金型の中で、不織布の細繊維層側に隣接して樹脂層を構成する発泡ウレタンなどの発泡有機樹脂を付与し加圧成型する方法、樹脂層を構成するウレタンシートなどの有機樹脂シートを不織布の細繊維層側に隣接するように積層してホットプレスする方法、樹脂層を構成するスタンパブルシートを不織布の細繊維層側に隣接するように積層してコールドプレスする方法などで自動車用フロア材を製造することができる。その中でも、不織布の細繊維層側に樹脂層を構成できる樹脂を溶融させ、溶融した樹脂を不織布の細繊維層側に付与して加圧成形する方法、金型の中で、不織布の細繊維層側に隣接して樹脂層を構成する発泡ウレタンなどの発泡有機樹脂を付与し加圧成型する方法で自動車用フロア材を製造すると、不織布と樹脂層が一体化しているため層間剥離が発生しにくく、また高い吸音性能が得られやすいことから好ましい。
【実施例0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
リン系難燃剤が練りこまれている、原着難燃ポリエステル繊維A(繊度:6.6dtex、繊維長:76mm、色:黒)を80mass%と、芯成分がポリエステル樹脂(融点:245℃)、鞘成分が低融点ポリエステル樹脂(融点:70℃)から構成された芯鞘型の複合繊維である熱接着性ポリエステル繊維A(繊度:4.4dtex、繊維長:38mm、芯成分と鞘成分の体積比率=85:15)を20mass%用いて、カード機により開繊して太繊維シート層A(目付:60g/m)を形成した。
次いで、リン系難燃剤が練りこまれている、原着難燃ポリエステル繊維B(繊度:1.3dtex、繊維長:51mm、色:黒)を60mass%と、熱接着性ポリエステル繊維Aを40mass%用いて、カード機により開繊して細繊維シート層A(目付:170g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Aを積層し、細繊維シート層A側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Aを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Aに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同じ太繊維シート層Aを準備した。
次いで、実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを50mass%と熱接着性ポリエステル繊維Aを50mass%用いて、カード機により開繊し細繊維シート層B(目付:170g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Bを積層し、細繊維シート層B側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Bを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Bに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0048】
(実施例3)
実施例1と同じ太繊維シート層Aを準備した。
次いで、実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを50mass%と熱接着性ポリエステル繊維Aを50mass%用いて、カード機により開繊し細繊維シート層C(目付:190g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Cを積層し、細繊維シート層C側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Cを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Cに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0049】
(実施例4)
実施例1と同じ太繊維シート層Aを準備した。
次いで、実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを50mass%と熱接着性ポリエステル繊維Aを50mass%用いて、カード機により開繊し細繊維シート層D(目付:210g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Dを積層し、細繊維シート層D側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Dを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Dに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0050】
(実施例5)
実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Aを60mass%と、実施例1と同じ熱接着性ポリエステル繊維Aを40mass%用いて、カード機により開繊して太繊維シート層B(目付:60g/m)を形成した。
次いで、実施例2と同じ細繊維シート層Bを準備した。
その後、太繊維シート層Bと細繊維シート層Bを積層し、細繊維シート層B側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Bと細繊維シート層Bを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Bと細繊維シート層Bに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Aを40mass%と、実施例1と同じ熱接着性ポリエステル繊維Aを60mass%用いて、カード機により開繊して太繊維シート層C(目付:60g/m)を形成した。
次いで、実施例2と同じ細繊維シート層Bを準備した。
その後、太繊維シート層Cと細繊維シート層Bを積層し、細繊維シート層B側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Cと細繊維シート層Bを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Cと細繊維シート層Bに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同じ太繊維シート層Aを準備した。
次いで、実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを50mass%と熱接着性ポリエステル繊維Aを50mass%用いて、カード機により開繊し細繊維シート層E(目付:150g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Eを積層し、細繊維シート層E側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Eを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Eに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0053】
(比較例3)
実施例1と同じ太繊維シート層Aを準備した。
次いで、実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを40mass%と熱接着性ポリエステル繊維Aを60mass%用いて、カード機により開繊し細繊維シート層F(目付:190g/m)を形成した。
その後、太繊維シート層Aと細繊維シート層Fを積層し、細繊維シート層F側からニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして太繊維シート層Aと細繊維シート層Fを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Aと細繊維シート層Fに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0054】
(比較例4)
実施例1と同じ原着ポリエステル繊維Aを20mass%と、実施例1と同じ原着ポリエステル繊維Bを45mass%と、実施例1と同じ熱接着性ポリエステル繊維Aを35mass%用いて、カード機により開繊して繊維シート層A(目付:230g/m)を形成した。
その後、ニードルパンチ処理(針密度:400本/cm)をして繊維シートAを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して繊維シートAに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0055】
(比較例5)
実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Aを80mass%と、実施例1と同じ熱接着性ポリエステル繊維Aを20mass%用いて、カード機により開繊して太繊維シート層D(目付:280g/m)を形成した。その後、ニードルパンチ処理をして太繊維シート層Dを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して太繊維シート層Dに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル樹脂を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0056】
(比較例6)
実施例1と同じ原着難燃ポリエステル繊維Bを60mass%と、実施例1と同じ熱接着性ポリエステル繊維Aを40mass%用いて、カード機により開繊して細繊維シート層F(目付:230g/m)を形成した。その後、ニードルパンチ処理をして細繊維シート層Fを絡合一体化し、160℃のドライヤーに供して細繊維シート層Fに含まれる熱接着性ポリエステル繊維Aを構成する低融点ポリエステル繊維を溶融して構成繊維同士を接着させ、不織布シートを製造した。
【0057】
実施例1~5の不織布の繊維組成、目付、厚さ、通気度を以下の表1に、比較例1~3の不織布(太繊維層と細繊維層の2層構造)の繊維組成、目付、厚さ、通気度を以下の表2に、比較例4~6の不織布(1層構造)の繊維組成、目付、厚さ、通気度を以下の表3に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
実施例及び比較例の不織布シートを、以下の方法により評価した。
【0062】
(耐摩耗性試験A)
実施例及び比較例の不織布シートの太繊維層側の主面(1層構造の比較例4~6は不織布シートのいずれかの主面)に、テーバー式ロータリーアブレッサにより、摩耗輪CS-10に4.9Nの荷重をかけて摩耗輪と前記主面と接触させ、60rpmの速度で300回摩耗輪を回転させたのち、前記主面の表面状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
5:摩耗輪の回転輪を回転させる前と比較し、表面に全く変化がないもの。
4:表面に部分的に毛羽が確認できるもの。
3:表面全体で毛羽が確認できるが、毛羽の長さが1mm以下と短いもの。
2:表面全体で毛羽が確認でき、毛羽の長さが1mmを超え長く、表面に部分的に毛羽が絡み合い、糸引きが確認できるもの。
1:表面全体で毛羽が確認でき、毛羽の長さが1mmを超え長く、表面全体で毛羽が絡み合い、糸引きが確認できるもの。
【0063】
(耐摩耗性試験B)
実施例及び比較例の不織布シートの太繊維層側の主面(1層構造の比較例4~6は不織布シートのいずれかの主面)に、テーバー式ロータリーアブレッサにより、摩耗輪H-18に9.8Nの荷重をかけて摩耗輪と前記主面と接触させ、60rpmの速度で100回摩耗輪を回転させたのち、前記主面の摩耗輪と接触していた部分の表面状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
〇:不織布シートが摩耗輪の摩滅により貫通していない
×:不織布シートが摩耗輪の摩滅により貫通している
【0064】
(染み出し試験)
発泡ポリウレタンを調製するため、市販されている、ポリオール成分溶液を46.4g、及びイソシアネート成分溶液を18.6g準備した。
次に、前記2液を混合攪拌して混合液を調製し、すぐにたて25cm、よこ25cm、深さ2cmの容器に流し入れ、その後すぐに25cm角の実施例及び比較例の不織布シートを混合液の上に細繊維層側の主面全面が前記混合液に接するように(1層構造の比較例4~6は不織布シートのいずれかの主面全面と混合液が接するように)載せ、容器にふたをした。
次に、混合液の反応によって二酸化炭素による発泡、ポリウレタンの生成、及び化学反応による硬化が起こるので、反応終了まで容器にふたをして待つことで、不織布シートの一方の主面に圧力を掛けて、不織布に発泡ポリウレタンを付与した。
最後に前記反応終了後、容器から不織布シートと一体化された発泡ポリウレタンを取り出して、不織布シートと混合液が接していない、不織布シートの太繊維層側の主面(1層構造の比較例4~6は混合液と接していない不織布シートの主面)を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、このときの発泡ポリウレタン密度は0.07g/cmであった。
〇:不織布シートの主面に大きさが1mm以上の発泡ポリウレタンが染み出していない
×:不織布シートの主面に大きさが1mm以上の発泡ポリウレタンが染み出している
【0065】
(燃焼試験)
自動車内装材料の燃焼試験であるJIS D 1201に則って評価を実施した。燃焼試験に用いるサンプル片サイズは幅100mm、長さ355mmとし、実施例及び比較例の不織布シートのタテ方向(不織布の製造方向)及びヨコ方向(不織布の製造方向に直交する幅方向)からそれぞれ5点ずつ採取した。
サンプル端から38mm部分を標線Aとし、サンプル端から292mm部分を標線Bとした。(標線Aと標線B間は254mm)。評価は以下の基準にて実施した。
試験片が燃焼しない、もしくは標線Aを超える前に燃焼が停止した場合は、燃焼速度0(mm/分)とし、燃焼距離が標線Aを超えて燃焼した場合は、標線Aと燃焼が停止した距離と燃焼が標線Aを超えてから停止するまでの燃焼時間から、以下の<燃焼速度計算式>により燃焼速度v(mm/分)を算出した。燃焼速度v(mm/分)は、タテ方向及びヨコ方向それぞれ5点測定したもの計10点の最大値をとった。なお標線Bを超えた場合は非難燃とした。
<燃焼速度計算式>
【0066】
【数1】
【0067】
実施例の不織布シートの評価結果を以下の表4に示し、比較例の不織布シートの評価結果を以下の表5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
耐摩耗性試験A、Bの結果、本発明の構成を満たす実施例の不織布シートは、比較例1の不織布シートに含まれる5.0dtex以上の繊維が少ない不織布シート、比較例4、6の太繊維層を有しない繊維シートと比較して、耐摩耗性が優れる不織布であった。
【0071】
また、染み出し試験の結果、本発明の構成を満たす実施例の不織布シートは、比較例2の不織布シートに含まれる5.0dtex以上の繊維が多い不織布シート、比較例3の不織布シートに含まれる1.5dtex以下の繊維が少ない不織布シート、比較例4、5の細繊維層を有しない繊維シートと比較して、樹脂が染み出しにくい不織布であった。
【0072】
更に、燃焼試験の結果、実施例の不織布シートは、難燃ポリエステル繊維を含むことから燃焼しにくく、自動車フロア材に用いるのに好適な不織布であった。なお、比較例3、5の繊維シートのみ難燃ポリエステル繊維を含んでいるにもかかわらず燃焼した理由としては、比較例3は不織布シートにおける熱融着性繊維の割合が高かったため、比較例5は不織布シートが比較的太い繊維のみで構成されていることから不織布シートの空隙が大きく、外部から空気を取り込みやすかったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の自動車フロア材用不織布は軽量で薄くても耐摩耗性が優れ、また不織布の成型時に樹脂を付与し、圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型した際に、樹脂の染み出しを防ぐことができることから、自動車フロア材用不織布の成型時に樹脂を付与して圧力を掛けて自動車フロア材用不織布と樹脂を成型することで製造する、自動車内装材の一種である自動車フロア材に用いることができる。