(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102655
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】静電座標入力装置および静電座標算出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220630BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/041 512
G06F3/044 120
G06F3/041 590
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217513
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 新一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 実
(72)【発明者】
【氏名】ハリャディ ハリー
(57)【要約】
【課題】操作面に対して操作者の2本の指による近接操作が同時になされた場合、当該2本の指の各々の近接位置の検出精度を高めること。
【解決手段】静電座標入力装置は、静電容量方式により、操作面に対する操作者の指の近接位置を検出する指検出部と、指検出部によって2本の指に対応する2つの近接位置が検出された場合、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、2つの近接位置を補正する補正部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式により、操作面に対する操作者の指の近接位置を検出する指検出部と、
前記指検出部によって2本の前記指に対応する2つの前記近接位置が検出された場合、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、前記2つの近接位置を補正する補正部と
を備えることを特徴とする静電座標入力装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記2つの近接位置間の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、前記2つの近接位置を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電座標入力装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記2つの近接位置間の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、当該2つの近接位置間の距離よりも大きい所定の距離に補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の静電座標入力装置。
【請求項4】
前記補正部は、
前記2つの近接位置間の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、当該2つの近接位置間の距離が長いほど、当該2つの近接位置間の距離よりも大きい所定の距離との差が小さくなるように補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の静電座標入力装置。
【請求項5】
前記補正部は、
前記2つの近接位置間の距離が短いほど、補正量が多くなるように、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、前記2つの近接位置を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電座標入力装置。
【請求項6】
前記指検出部は、
静電容量値の変化量が極大値である検出電極の位置に基づいて、曲線近似計算法により、2つの前記近接位置の各々の座標を算出する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の静電座標入力装置。
【請求項7】
前記指検出部は、
静電容量値の変化量が極大値である検出電極の位置に基づいて、重心計算法により、2つの前記近接位置の各々の座標を算出する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の静電座標入力装置。
【請求項8】
静電容量方式により、操作面に対する操作者の指の近接位置を検出する指検出工程と、
前記指検出工程によって2本の前記指に対応する2つの前記近接位置が検出された場合、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、前記2つの近接位置を補正する補正工程と
を含むことを特徴とする静電座標算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電座標入力装置および静電座標算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量方式によって指の近接位置を検出する静電座標入力装置において、静電容量の変化量が極大値となる検出電極の座標と、それに隣接する検出電極の座標とを通過する2次曲線のピークの座標を、指の近接位置の座標として補完的に算出する技術が用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、特に解像度が低い製品(例えば、検出電極数が少ない製品、検出電極から離れた指を検出する製品等)において、操作面に対して操作者の2本の指による近接操作が同時になされた場合、2本の指の各々による静電容量の変化が、相互に影響を及ぼしてしまうため、2次曲線における2つのピークの座標が互いに近づく方向に変動し、2本の指の各々の近接位置の検出精度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る静電座標入力装置は、静電容量方式により、操作面に対する操作者の指の近接位置を検出する指検出部と、指検出部によって2本の指に対応する2つの近接位置が検出された場合、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に、2つの近接位置を補正する補正部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、操作面に対して操作者の2本の指による近接操作が同時になされた場合、当該2本の指の各々の近接位置の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る静電座標入力装置の構成を示すブロック図
【
図2】一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図
【
図3】一実施形態に係る制御装置による処理の手順を示すフローチャート
【
図4】一実施形態に係る制御装置(指検出部)による2つの近接位置の算出例を示す図
【
図5】一実施形態に係る静電座標入力装置において生じ得る静電容量の変化量の誤差の一例を示す図
【
図6】一実施形態に係る制御装置(補正部)による各補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る静電座標入力装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示す静電座標入力装置10は、操作者の指による操作面10Aに対する近接操作が可能な装置であり、静電容量方式(自己容量検出方式または相互容量検出方式)により、操作面10Aに対する操作者の指の近接位置を検出可能な装置である。
【0010】
図1に示すように、静電座標入力装置10は、センサ基板11、X軸側検出部14、Y軸側検出部15、A/D変換部16、記憶部17、制御装置20、およびインタフェース部19を備える。
【0011】
センサ基板11は、操作面10A(
図4参照)の裏側に重ねて設けられている。センサ基板11には、X軸方向(
図1の横方向)の静電容量を検出するための複数のX軸電極12と、Y軸方向(
図1の縦方向)の静電容量を検出するための複数のY軸電極13とがマトリクス状に並設されている。
【0012】
X軸側検出部14は、複数のX軸電極12の各々の静電容量を検出する。また、X軸側検出部14は、検出された複数のX軸電極12の各々の静電容量を示す検出信号(アナログ信号)を出力する。
【0013】
Y軸側検出部15は、複数のY軸電極13の各々の静電容量を検出する。また、Y軸側検出部15は、検出された複数のY軸電極13の各々の静電容量を示す検出信号(アナログ信号)を出力する。
【0014】
A/D(アナログ/デジタル)変換部16は、X軸側検出部14から出力された検出信号およびY軸側検出部15から出力された検出信号をデジタル信号に変換し、制御装置20へ供給する。
【0015】
記憶部17は、各種情報を記憶する。記憶部17に記憶される情報としては、例えば、X軸側検出部14によって検出された複数のX軸電極12の各々の静電容量値、Y軸側検出部15によって検出された複数のY軸電極13の各々の静電容量値、制御装置20によって実行されるプログラム、等が挙げられる。
【0016】
制御装置20は、X軸側検出部14からA/D変換部16を介して供給された検出信号によって特定される、複数のX軸電極12の各々の静電容量の変化に基づいて、操作面10Aに対する指のX軸方向の近接位置を検出する。また、制御装置20は、Y軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給された検出信号によって特定される、複数のY軸電極13の各々の静電容量の変化に基づいて、操作面10Aに対する指のY軸方向の近接位置を検出する。そして、制御装置20は、特定された指の近接位置を示す座標情報を出力する。なお、制御装置20の機能の詳細については、
図2を用いて後述する。
【0017】
インタフェース部19は、制御装置20から出力された指の近接位置を示す座標情報を、外部機器(図示省略)に出力する。例えば、外部機器は、インタフェース部19から出力された、指の近接位置を示す座標情報に応じて、当該座標に対応する所定の処理を実行する。
【0018】
(制御装置20の機能構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置20の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置20は、静電容量算出部21、指検出部22、補正部23、および出力部24を備える。
【0019】
静電容量算出部21は、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する。
【0020】
指検出部22は、静電容量算出部21によって検出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、操作者の指の近接位置を検出する。
【0021】
本実施形態では、指検出部22は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、曲線近似計算法を用いて、操作者の指の近接位置を検出することができる。具体的には、指検出部22は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、下記数式(1)により、静電容量の変化量が最も大きい電極をピーク電極として、ピーク電極と、ピーク電極よりも1つ前の電極と、ピーク電極よりも1つ後の電極とを通る2次曲線の頂点を、操作者の指の近接位置として算出することができる。
【0022】
【0023】
但し、上記数式(1)において、XQは、操作者の指の近接位置の座標を示す。また、Xpkは、ピーク電極における静電容量の変化量を示す。また、Xpk-1は、ピーク電極よりも1つ前の検出電極における静電容量の変化量を示す。また、Xpk+1は、ピーク電極よりも1つ後の検出電極における静電容量の変化量を示す。また、RESOは、電極間分解能を示す。また、XOFSは、ピーク電極の座標を示す。
【0024】
また、本実施形態では、指検出部22は、操作面10Aに対して操作者の2本の指による近接操作がなされた場合、制御装置20は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、操作者の2本の指の各々の近接位置を特定することができる。
【0025】
補正部23は、指検出部22によって検出された2つの近接位置の距離が、所定の閾値よりも短い場合、当該2つの近接位置の距離を広げる方向に、当該2つの近接位置を補正する。特に、本実施形態では、補正部23は、指検出部22によって検出された2つの近接位置の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、当該2つの近接位置間の距離よりも大きい所定の距離に補正する。例えば、補正部23は、指検出部22によって検出された2つの近接位置の距離が、「21mm」(「所定の閾値」の一例)未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、「21mm」(「所定の距離」の一例)に補正する。
【0026】
出力部24は、指検出部22によって検出された操作者の指の近接位置を示す座標情報を出力する。または、出力部24は、補正部23によって補正された操作者の指の近接位置を示す座標情報を出力する。
【0027】
なお、制御装置20は、ハードウェア構成として、プロセッサ(例えば、CPU)、記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)等)、通信インタフェース等を備えて構成されている。例えば、
図2に示す制御装置20の各機能部は、記憶媒体に記憶されているプログラムを、プロセッサが実行することによって実現される。また、A/D変換部16、記憶部17、およびインタフェース部19の少なくともいずれか一つは、制御装置20に設けられてもよい。
【0028】
(制御装置20による処理の手順)
図3は、一実施形態に係る制御装置20による処理の手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、制御装置20の静電容量算出部21が、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する(ステップS301)。
【0030】
次に、制御装置20の指検出部22が、ステップS301で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、操作面10Aにおける指近接領域を特定する(ステップS302)。例えば、指検出部22は、静電容量の変化量が所定の閾値よりも大きい複数の検出電極を含む領域を、指近接領域として検出する。
【0031】
次に、制御装置20の指検出部22が、ステップS302で特定された指近接領域に含まれる複数の検出電極の静電容量の変化量を比較することにより、当該複数の検出電極のうち、静電容量の変化量が極大値となる検出電極を特定する(ステップS303)。
【0032】
次に、制御装置20の指検出部22が、ステップS303で特定された静電容量の変化量が極大値となる検出電極に基づいて、2つの近接位置が検出されたか否か(すなわち、2本の指が検出されたか否か)を判断する(ステップS304)。例えば、ステップS303において、2つの検出電極が特定された場合、指検出部22は、2つの近接位置が検出されたと判断する。
【0033】
ステップS304において、2つの近接位置が検出されていないと判断された場合(ステップS304:No)、すなわち、1つの近接位置が検出されていないと判断した場合、指検出部22が、曲線近似計算法を用いて、1つの近接位置の座標を算出する(ステップS305)。そして、出力部24が、ステップS305で算出された1つ座標を含む座標情報を出力する(ステップS310)。その後、制御装置20は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0034】
一方、ステップS304において、2つの近接位置が検出されたと判断された場合(ステップS304:Yes)、指検出部22が、曲線近似計算法を用いて、2つの近接位置の各々の座標を算出する(ステップS306)。
【0035】
次に、補正部23が、ステップS306で算出された2つの座標間の距離を算出する(ステップS307)。そして、補正部23が、ステップS307で算出された距離が所定の閾値(例えば、「21mm」)未満であるか否かを判断する(ステップS308)。
【0036】
ステップS308において、2つの座標間の距離が所定の閾値未満ではないと判断された場合(ステップS308:No)、出力部24が、ステップS306で算出された2つの座標を含む座標情報を出力する(ステップS310)。その後、制御装置20は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0037】
一方、ステップS308において、2つの座標間の距離が所定の閾値未満であると判断された場合(ステップS308:Yes)、補正部23が、2つの座標間の距離が広がる方向の所定の距離(例えば、「21mm」)となるように、且つ、2つの座標を補正する(ステップS309)。例えば、補正部23は、2つの座標を結ぶ線分と、その線分の中心点とを求め、その中心点から2つの座標までの距離が等しくなるように、2つの座標を補正する。
【0038】
そして、出力部24が、ステップS309で補正されることによって得られた2つの座標を含む座標情報を出力する(ステップS310)。その後、制御装置20は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0039】
この実施形態では、2本の指を21mm以下に接近させて回転させると、同一間隔(21mm)で指を回転させたものとして出力される。
【0040】
(2つの近接位置の算出例)
図4は、一実施形態に係る制御装置20(指検出部22)による2つの近接位置の算出例を示す図である。
【0041】
図4に示す例では、センサ基板11には、15本のX軸電極12(X0~X14)と、15本のY軸電極13(Y0~Y14)とが、マトリクス状に、且つ、操作面10Aに重ねて設けられている。また、
図4に示す例では、操作面10Aに対して、操作者の2本の指30A,30Bによる近接操作がなされている。
【0042】
図4に示すように、X軸方向においては、指30Aと重なるX軸電極X4と、指30Bと重なるX軸電極X10とのそれぞれにおいて、静電容量の変化量のピークが生じている。
【0043】
例えば、制御装置20の指検出部22は、曲線近似計算法を用いて、X軸電極X4と、その前後のX軸電極X3,X5とを通過する二次曲線の頂点位置のX軸座標を、指30Aの近接位置のX軸座標として算出することができる。
【0044】
同様に、制御装置20の指検出部22は、曲線近似計算法を用いて、X軸電極X10と、その前後のX軸電極X9,X11とを通過する二次曲線の頂点位置のX軸座標を、指30Bの近接位置のX軸座標として算出することができる。
【0045】
また、
図4に示すように、Y軸方向においては、指30Aと重なるY軸電極Y10と、指30Bと重なるY軸電極Y4とのそれぞれにおいて、静電容量の変化量のピークが生じている。
【0046】
例えば、制御装置20の指検出部22は、曲線近似計算法を用いて、Y軸電極Y10と、その前後のY軸電極Y9,Y11とを通過する二次曲線の頂点位置のY軸座標を、指30Aの近接位置のY軸座標として算出することができる。
【0047】
同様に、制御装置20の指検出部22は、曲線近似計算法を用いて、Y軸電極Y4と、その前後のY軸電極Y3,Y5とを通過する二次曲線の頂点位置のY軸座標を、指30Bの近接位置のY軸座標として算出することができる。
【0048】
(静電容量の変化量の誤差の一例)
図5は、一実施形態に係る静電座標入力装置10において生じ得る静電容量の変化量の誤差の一例を示す図である。
【0049】
図5において、破線は、2本の指間の距離を「20mm」とした場合において、2つの指の各々を個別に検出したときの、各検出電極の静電容量の変化量を示している。一方、
図5において、実線は、2つの指間の距離を「20mm」とした場合において、2つの指の各々を同時に検出したときの、各検出電極の静電容量の変化量を示している。また、
図5に示すグラフにおいて、横軸は、検出電極の番号および位置を示し、縦軸は、静電容量値の変化量を示す。また、
図5に示すグラフでは、電極間の間隔が「5mm」であることを前提としている。
【0050】
図5にて破線で示すように、2本の指を個別に検出した場合には、一方の指による静電容量の変化が、他方の指による静電容量の変化を与えないため、2つのピーク電極間の距離が、実際の2本の指間の距離(「20mm」)と略等しくなる。一方、
図5にて実線で示すように、2本の指を同時に検出した場合には、2本の指による静電容量の変化が合成されるため、2つのピーク電極間の距離が、実際の2本の指間の距離(「20mm」)よりも短くなる虞がある。この場合、指検出部22によって算出される2つの近接位置間の距離は、実際の2本の指間の距離よりも短くなる虞がある。
【0051】
そこで、一実施形態に係る制御装置20は、指検出部22によって算出された2つの近接位置間の距離が、所定の閾値(例えば、「21mm」)未満の場合、2つの近接位置の距離を、所定の距離(例えば、「21mm」)に補正する。これにより、一実施形態に係る制御装置20は、2つの近接位置間の距離が、実際の2本の指間の距離と略等しくなるように、2つの近接位置の各々の座標を補正することができる。その結果、一実施形態に係る制御装置20は、操作面10Aに対して操作者の2本の指による近接操作がなされた場合、当該2本の指の各々の近接位置の検出精度を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態において、所定の距離を「21mm」としているのは、一般的に、隣接する2本指(例えば、人差し指および中指)を密着させた状態で、2本の指の中心同士の間隔が「21mm」よりも小さくなることが考え難いからである。
【0053】
(補正方法の比較例)
図6は、一実施形態に係る制御装置20(補正部23)による各補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係を示す図である。
【0054】
図6では、補正部23による第1の補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係が、実線で表されている。
図6に示すグラフにおいて、横軸は、2つの近接位置間の距離の補正前の算出値を示し、縦軸は、2つの近接位置間の距離の補正後の算出値を示す。
【0055】
図6では、補正部23による第1の補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係が、実線で表されている。第1の補正方法は、2つの近接位置間の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、当該2つの近接位置間の距離よりも大きい所定の距離に補正する補正方法である。例えば、
図6では、第1の補正方法として、2つの近接位置間の距離が、「21mm」(「所定の閾値」の一例)未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、「21mm」(「所定の距離」の一例)に補正する例を表している。
【0056】
また、
図6では、補正部23による第2の補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係が、破線で表されている。第2の補正方法は、2つの近接位置間の距離が、所定の閾値未満の場合、当該2つの近接位置間の距離を、当該2つの近接位置間の距離が長いほど、当該2つの近接位置間の距離よりも大きい所定の距離との差が小さくなるように補正する方法である。例えば、
図6では、第2の補正方法として、2つの近接位置間の距離が、「21mm」(「所定の閾値」の一例)未満の場合、当該2つの近接位置間の距離が長いほど、「21mm」(「所定の距離」の一例)との差が小さくなるように、当該2つの近接位置間の距離を補正する例を表している。例えば、第2の補正方法では、2つの近接位置間の距離の補正後の算出値を、xを補正前の算出値として、式{x/定数1+定数2}によって求めることができる。但し、この式は一例であり、他の式を用いて補正後の算出値を求めてもよい。定数1,2は、シミュレーション等によって予め適切な値が設定され得る。
【0057】
また、
図6では、制御装置20による第2の補正方法の補正前の算出値と補正後の算出値との関係が、一点鎖線で表されている。第3の補正方法は、2つの近接位置間の距離が短いほど、補正量が多くなるように、当該2つの近接位置間の距離を広げる方向に補正する補正方法である。例えば、第3の補正方法では、2つの近接位置間の距離の補正後の算出値を、Xを補正前の算出値として、式{(X+定数3/(X*定数4+定数5)^2}によって求めることができる。但し、この式は一例であり、他の式を用いて補正後の算出値を求めてもよい。定数3~5は、シミュレーション等によって予め適切な値が設定され得る。
【0058】
補正部23は、2つの近接位置間の距離の補正方法として、第1の方法、第2の方法、および第3の方法のいずれを用いてもよい。補正部23は、いずれの補正方法によっても、2つの近接位置間の距離が異常値とならないように、2つの近接位置間の距離を適切に補正して、2つの近接位置の各々の検出精度を高めることができる。特に、2本の指で操作を行う場合、2つの位置の中心座標と、2つの位置を結ぶ線分の方向(角度)と、2つの位置の間隔とが重要である。本発明は、2つの位置の中心座標の精度と、2つの位置を結ぶ線分の方向(角度)の精度とを悪化させることなく、2つの位置の間隔の精度を高めることができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0060】
例えば、一実施形態では、指検出部22は、静電容量値の変化量が極大値である検出電極の位置に基づいて、曲線近似計算法により、2つの近接位置の各々の座標を算出するが、これに限らない。例えば、指検出部22は、静電容量値の変化量が極大値である検出電極の位置に基づいて、重心計算法により、2つの近接位置の各々の座標を算出してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 静電座標入力装置
10A 操作面
11 センサ基板
12 X軸電極
13 Y軸電極
14 X軸側検出部
15 Y軸側検出部
16 A/D変換部
17 記憶部
19 インタフェース部
20 制御装置
21 静電容量算出部
22 指検出部
23 補正部
24 出力部
30A,30B 指