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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102656
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ラップド結合ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/10 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B29D29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217514
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜也
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA45
4F213AC03
4F213AD16
4F213AG03
4F213AG17
4F213WA03
4F213WA63
4F213WA74
4F213WA87
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】ラップドVベルトとタイバンドとの接着力を向上させる。
【解決手段】マントルに、ゴムシート及び心線14を巻き付けて円筒状の積層構造体10’を作製し所定幅に輪切りにした後マントルから取り外し、輪切りされた環状の積層構造体10’の両エッジを斜めにカットしてV形状にスカイビング加工し、加工した環状の積層構造体10’の外周を包むように、ベルト形成用布15’によりラッピングし、ラッピングされた環状の積層構造体10’を加圧及び加熱し、塑性変形する未加硫状態と完全に加硫された加硫状態の間の半加硫状態にし、その上部を砥石又はサンドペーパ30でバフ加工してベルト形成用布15’を除去し、バフ加工した複数の環状の積層構造体10’の凹凸のある表面にタイバンド用帆布40’を貼り付け、タイバンド用帆布40’が貼り付けられた半加硫状態の複数の環状の積層構造体10’を完全に加硫してラップド結合ベルトを製造する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップド結合ベルトの製造方法であって、
未加硫状態の複数のゴムシートを準備し、
マントルに、上記ゴムシートを巻き付け、該ゴムシートの上に、心線を螺旋状に巻き付け、該心線の上に、上記ゴムシートを巻き付けて、円筒状の積層構造体を作成し、
上記円筒状の積層構造体を上記マントル上で所定幅に輪切りにした後、それらを該マントルから取り外し、
上記輪切りされた環状の積層構造体の両エッジを斜めにカットしてV形状にスカイビング加工し、
上記V形状にスカイビング加工した環状の積層構造体の外周を包むように、補強布によりラッピングし、
上記ラッピングされた環状の積層構造体を加圧及び加熱し、塑性変形する未加硫状態と完全に加硫された加硫状態の間の半加硫状態にし、
上記半加硫状態にした環状の積層構造体の上部を砥石又はサンドペーパでバフ加工して上記補強布を除去して半加硫状態の積層構造体を露出させ、
上記バフ加工した複数の環状の積層構造体の凹凸のある表面にタイバンドを貼り付け、
上記タイバンドが貼り付けられた半加硫状態の複数の環状の積層構造体を完全に加硫する
ことを特徴とするラップド結合ベルトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラップド結合ベルトの製造方法であって、
上記タイバンドは、未加硫又は半加硫の接着ゴムが含浸又はコーティングされた帆布よりなり、
上記未加硫又は半加硫の接着ゴムが上記積層構造体の凹凸のある表面に加硫により接着される
ことを特徴とするラップド結合ベルトの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のラップド結合ベルトの製造方法であって、
上記タイバンドは、未加硫又は半加硫のゴムシートよりなり、
上記未加硫又は半加硫のゴムシートが上記積層構造体の凹凸のある表面に加硫により接着される
ことを特徴とするラップド結合ベルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のラップド結合ベルトの製造方法であって、
上記半加硫状態にした複数の環状の積層構造体を、V溝を外表面に有する一対のプーリに巻き付けた状態で、複数の環状の積層構造体の上部を同時にバフ加工して上記補強布を除去する
ことを特徴とするラップド結合ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のラップド結合ベルトの製造方法であって、
60番手以上100番手以下の粗さの砥石又はサンドペーパを用いてバフ加工する
ことを特徴とするラップド結合ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップドVベルトをタイバンドで結合したラップド結合ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すように、心線114を含むベルト本体110と、このベルト本体110を被覆する外被帆布115とを備え、プーリに巻き掛けられて動力を伝達する、複数のラップドVベルト116をタイバンド140で結合したラップド結合ベルト101は知られている。このラップド結合ベルト101は、複数のラップドVベルト116をタイバンドで結合しているので、単体のラップドVベルト116に比べて横転やプーリからの離脱を防ぐことができる。
【0003】
このラップド結合ベルト101では、ラップドVベルト116の外被帆布115とタイバンド140に含浸又はコーティングされたゴム141との接着により結合されているが、両者間の接着力が弱いため、剥離が生じやすいという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1のように、内周側の角部が切除された未加硫の円環状のゴム層の周囲表面に外被布が被覆された環状の未加硫ゴムベルトが複数作製されるゴムベルト作製工程と、外被布で被覆された前記未加硫ゴムベルトの外周側の部分を周方向に亘って切除し、未加硫ゴムベルトからゴム層を露出させるゴムベルト切除工程と、ゴム層が露出した未加硫ゴムベルトを並列に複数並べた状態で未加硫ゴムベルトの外周側に補強布を配置して加硫することにより筒状のベルトスリーブを作製する加硫工程と、加硫工程において作製されたベルトスリーブの補強布を周方向に切断することで、少なくとも2つの環状の加硫ゴムベルト部が結合された状態の結合ベルトをベルトスリーブから切り出して生成する結合ベルト生成工程とを含む結合ベルトの製造方法が知られている。
【0005】
同様に特許文献2のように、ゴム層が露出した未加硫ゴムベルトを並列に複数並べた状態で未加硫ゴムベルトの外周側に短繊維を含有する未加硫のゴムシートとして構成された結合部材を配置して加硫することにより筒状のベルトスリーブを作製する工程を含む結合ベルトの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-37257号公報
【特許文献2】特開2020-51617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2のように、未加硫の芯体の背面帆布を切除する場合、未加硫の芯体では塑性変形が生じるので、形状が定まらず、芯体内部の張力帯(心線)の乱れなどが生じやすい。このため、製品特性が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラップドVベルトとタイバンドとの接着力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、半加硫状態のラップドVベルトの外被帆布を削除した上で、タイバンドで結合するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、ラップド結合ベルトの製造方法を対象とし、
上記ラップド結合ベルトの製造方法は、
未加硫状態の複数のゴムシートを準備し、
マントルに、上記ゴムシートを巻き付け、該ゴムシートの上に、心線を螺旋状に巻き付け、該心線の上に、上記ゴムシートを巻き付けて、円筒状の積層構造体を作成し、
上記円筒状の積層構造体を上記マントル上で所定幅に輪切りにした後、それらを該マントルから取り外し、
上記輪切りされた環状の積層構造体の両エッジを斜めにカットしてV形状にスカイビング加工し、
上記V形状にスカイビング加工した環状の積層構造体の外周を包むように、補強布によりラッピングし、
上記ラッピングされた環状の積層構造体を加圧及び加熱し、塑性変形する未加硫状態と完全に加硫された加硫状態の間の半加硫状態にし、
上記半加硫状態にした環状の積層構造体の上部を砥石又はサンドペーパでバフ加工して上記補強布を除去して半加硫状態の積層構造体を露出させ、
上記バフ加工した複数の環状の積層構造体の凹凸のある表面にタイバンドを貼り付け、
上記タイバンドが貼り付けられた半加硫状態の複数の環状の積層構造体を完全に加硫する構成とする。
【0011】
すなわち、特許文献1及び2のような未加硫ゴムからの補強布の切断では、塑性変形が生じるので積層構造体内の心線の乱れが生じやすく、また、ワイヤーによる未加硫ゴムの切断面は、凹凸が少なく必要な接着強度が得られにくい。しかし、上記の構成によると、塑性変形する未加硫状態と完全に加硫された加硫状態との間の適度な弾性を有する半加硫状態において、砥石又はサンドペーパによるバフ加工を行っているので、心線が乱れにくい上、接着面に適度な凹凸が入りやすい。このため、タイバンドとの接触面積が増えるので、半加硫状態からの加硫によりタイバンドを接着する場合でも、接着強度の向上が得られやすい。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記タイバンドは、未加硫又は半加硫の接着ゴムが含浸又はコーティングされた帆布よりなり、
上記未加硫又は半加硫の接着ゴムが上記積層構造体の凹凸のある表面に加硫により接着される。
【0013】
上記の構成によると、タイバンドの接着ゴムが半加硫の積層構造体に接着される際に、適度な凹凸により接触面積が増えているので、半加硫状態からの加硫であっても、十分な接着強度が得られる。
【0014】
第3の発明では、第1の発明において、
上記タイバンドは、未加硫又は半加硫のゴムシートよりなり、
上記未加硫又は半加硫のゴムシートが上記積層構造体の凹凸のある表面に加硫により接着される。
【0015】
上記の構成によると、未加硫又は半加硫のゴムシートよりなるタイバンドが、半加硫の積層構造体に接着される際に、適度な凹凸により接触面積が増えているので、半加硫状態からの加硫であっても、十分か接着強度が得られる。
【0016】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記半加硫状態にした複数の環状の積層構造体を、V溝を外表面に有する一対のプーリに巻き付けた状態で、複数の環状の積層構造体の上部を同時にバフ加工して上記補強布を除去する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、複数の環状の積層構造体を同時に加工でき、しかも、半加硫状態の積層構造体は、未加硫状態のものに比べて弾性を有し、バフ加工時に変形しても元に戻るので、加硫後の仕上がり形状が安定する。
【0018】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
60番手以上100番手以下の粗さの砥石又はサンドペーパを用いてバフ加工する。
【0019】
すなわち、60番手よりも小さい番手の粗い砥石又はサンドペーパであると、凹凸が大きくなりすぎて、積層構造体とタイバンドの接触面に空気が入り気泡などで接着強度が低下するおそれがあり、逆に100番手よりも大きい番手の粗さの小さい砥石又はサンドペーパであると、凹凸が小さすぎてタイバンドとの接触面積を増やす効果が十分に得られない。しかし、上記の構成によると、適度な凹凸を有する接着面が得られ、タイバンドとの接触面積が増え、半加硫状態からの加硫であってもタイバンドとの間で十分な接着強度が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ラップドVベルトとタイバンドとの接着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るラップド結合ベルトを示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るラップド結合ベルトの製造工程を示す断面図であり、(a)がゴム成形工程を示し、(b)がスカイブ工程を示し、(c)が外被帆布工程を示す。
図3】本発明の実施形態に係るラップド結合ベルトの製造工程を示す断面図であり、(d)が半加硫工程を示し、(e)がベルトバフ工程を示し、(f)がタイバンド工程を示す。
図4】本発明の実施形態に係るラップド結合ベルトの製造工程を示すフローチャートである。
図5】ベルト背面バフ加工図を示す平面図であり、(a)が一対のプーリを示し、(b)が半加硫状態の環状の積層構造体が掛けられた一対のプーリを示し、(c)が砥石又はサンドペーパによる外被帆布除去工程を示し、(d)が外被帆布除去後の状態を示す。
図6】半加硫状態を説明するための、加硫時間とトルクとの関係を示すグラフである。
図7】ベルトバフ工程における砥石の目の粗さとタイバンド接着力との関係を示す表である。
図8】従来のラップド結合ベルトにかかる図1相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の例示的ラップド結合ベルト1を示す断面図である。このラップド結合ベルト1は、例えば、脈動負荷のかかるピストンポンプ・クラッシャー、スクリーン等衝撃負荷のかかるグラインダー、粉砕機、ハンマーミル、往復のこぎり、チッパー等、水平掛で使用する液体攪拌機、遠心分離機、ミキサー等に使用されるものである。また、ラップド結合ベルト1の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば、ベルト周長700~5000mm、ベルト幅34~140mm、及びベルト厚さ12~18mmである。
【0024】
ラップド結合ベルト1は、複数のラップドVベルト2にタイバンド40が結合されたものである。本実施形態では、1本のラップド結合ベルト1に対して結合されるラップドVベルト2の本数は特に限定されない。
【0025】
それぞれのラップドVベルト2は、ベルト内周側(プーリ接触側)の底部ゴム層11と、中間の接着ゴム層12と、ベルト外周側の背面ゴム層13との三重の層に構成されたベルト本体10を備える。接着ゴム層12には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。
【0026】
後述するように、ベルト本体10の全体が補強布15によって覆われた複数本のラップドVベルト2からラップド結合ベルト1が製造される。
【0027】
底部ゴム層11を構成するゴム組成物のポリマー成分は、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM)等よりなる。ポリマー成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0028】
また、接着ゴム層12についても、前記のゴム組成物からなるものとすることができる。更に、補強布15の少なくとも一方の面が、前記のゴム組成物により被覆されていてもよい。
【0029】
詳しい説明は省略するが、前記のゴム組成物は、ポリマー成分と、これに配合されたカーボンブラックなどの補強材、架橋剤、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、軟化剤等からなる。
【0030】
次に、接着ゴム層12及び背面ゴム層13は、断面横長矩形の帯状に構成されている。接着ゴム層12及び背面ゴム層13は、ポリマー成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。
【0031】
接着ゴム層12及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物のポリマー成分は、底部ゴム層11と同様に、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)、エチレン-α-オレフィンエラストマー、等が挙げられる。ポリマー成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0032】
配合剤としては、底部ゴム層11と同様、例えば、カーボンブラックなどの補強材、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤、軟化剤等が挙げられる。
【0033】
また、心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14は、ベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
【0034】
また、補強布15を構成するベルト形成用布15’は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等によって構成されている。ベルト形成用布15’は、ベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及び/又は、ベルト本体10側となる表面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理が施されてもよい。
【0035】
また、ベルト形成用布15’を被覆するゴムは、摩擦係数低減材を含有していてもよい。摩擦係数低減材としては、例えば、ナイロン短繊維、ビニロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、綿短繊維などの短繊維や超高分子量ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
【0036】
そして、タイバンド用帆布40’としては、上記ベルト形成用布15’と同様に、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等によって構成されている。タイバンド用帆布40’は、ベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及び/又は、ベルト本体10側となる表面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理が施されてもよい。
【0037】
(ラップド結合ベルトの製造方法の製造方法)
以下、ラップドVベルトであるラップド結合ベルト1の製造方法について、図2(a)~(c)、図3(d)~(f)及び図4を参照して説明する。
【0038】
まず、圧縮ゴム層用、接着ゴム層用及び伸張ゴム層用の各ゴムシート22を準備する。これは、実施形態にて説明した未架橋ゴム組成物を、カレンダロール等を用いてシート状に加工することにより得る。また、心線14用の撚り糸、補強布15用のベルト形成用布15’、タイバンド用帆布40’には含浸及び/又はコーティングにより接着処理を施す。
【0039】
次に、芯体ベルト作成工程に進む。まず、ゴム層成形工程S01において、図示しないマントルに、圧縮ゴム層用のクロロプレンゴム組成物等のゴムシート22を複数回巻き付け、その上に、接着ゴム層用のゴムシート22を巻き付ける。更にその上に、接着剤を付着させたポリエステルコード等の心線14を螺旋状に巻き付ける。その上に、接着ゴム層用及び背面ゴム層用のゴムシート22を巻き付けて、円筒状の積層構造体10’を作製する。
【0040】
次いで、図2(a)に示すように、円筒状の積層構造体10’をマントル上で所定幅に輪切りにした後、それらをマントルから取り外す。
【0041】
次いで、スカイブ工程S02において、図2(b)に示すように、環状の積層構造体10’を、ゴム層の厚い側を外側にして一対のプーリ間に巻き掛け、回転させながら両エッジを斜めにカットしてV形状の面取22aを形成するようにスカイビング加工する。これにより体積を調整する。
【0042】
続いて、外被帆布工程S03において、図2(c)に示すように、V形状にスカイビング加工した環状の積層構造体10’の外周を包むように、補強布15となるベルト形成用布15’によりラッピングする。
【0043】
そして、半加硫工程S04において、図3(d)に示すように、ラッピングした環状の積層構造体10’を円筒金型21に外嵌めする。積層構造体10'は未加硫状態であるため、適度に変形しながら円筒金型21に嵌まり込む。その後、円筒金型21ごと加硫缶に入れて加熱及び加圧する。このとき、環状の積層構造体10’のゴム成分の一部が架橋して一体化する。この段階で、ベルト形成用布15’が完全に加硫して補強布15となってもよいし、半加硫状態のままでもよい。これにより、半加硫状態のラップドVベルト2’が製造される。
【0044】
次いで、図3(e)に示すベルトバフ工程S05に移る。
【0045】
具体的には、図5(a)に示すように、例えば3本の溝24付きの一対のバフ用プーリ23を準備する。溝24の本数はこれに限定されない。
【0046】
次に、図5(b)に示すように、一対のバフ用プーリ23の溝24に半加硫状態のラップドVベルト2’をそれぞれ嵌め込む。
【0047】
続いて図5(c)に示すように、半加硫状態のラップドVベルト2’のベルト形成用布15’を砥石又はサンドペーパ30で取り除く。このとき、60番手以上100番手以下の粗さの砥石又はサンドペーパ30を用いてバフ加工するのが望ましい。本実施形態のような半加硫状態の積層構造体10’は、特許文献1及び2のような未加硫状態のものに比べて弾性を有し、バフ加工時に多少変形しても元に戻るので、加硫後の仕上がり形状が安定する。
【0048】
すると、図5(d)に示すように、ゴムシート22が露出した状態となる。
【0049】
次いで、図3(f)に示すタイバンド工程S06に移る。予め、未加硫状態又は半加硫状態の接着ゴム41’が含浸又はコーティングされたタイバンド用帆布40’を準備しておく。
【0050】
このタイバンド用帆布40’でゴムシート22が露出した複数のラップドVベルト2’を覆う。
【0051】
最後に加硫工程S07において、タイバンド用帆布40’で覆われた状態で、半加硫状態のゴムシート22を含め、完全にゴム成分が加硫されるように、加熱及び加圧を行う。これにより、半加硫の積層構造体10’が完全に加硫され、底部ゴム層11、接着ゴム層13、背面ゴム層13が得られ、接着ゴム41も加硫されて接着される。
【0052】
本実施形態では、タイバンド用帆布40’に含浸された又はコーティングされた接着ゴム41’が半加硫の積層構造体10’に接着される際に、適度な凹凸により接触面積が増えているので、半加硫状態からの加硫であっても、十分か接着強度が得られる。
【0053】
ここで、上述した半加硫状態について図6を用いて詳しく説明する。ゴム成分を加硫する場合、図6に示す加硫曲線のように、未加硫状態の塑性域から、弾性域に変化する。このトルク変化は、JIS-K6300-2(2001)に準拠した方法により測定する。具体的には、ALPHA Technologies社のレオメーターMDR2000を用いて計測した。
【0054】
図6のトルクMが、ゴムが塑性から弾性に変化する点で、このM以降、ゴムは、弾性となる。トルクMは、完全に加硫が完了した点を示す。
【0055】
本実施形態における半加硫状態というのは、このトルクMとMとの間(トルクM)を10等分した場合の、10%M以上80%M以下の範囲を示す。すなわち、80%Mよりも大きくなると、ゴム硬度が高くなりすぎてバフ加工による適度な凹凸が出にくくなる。逆に10%Mよりも小さいと、ゴム硬度が低すぎて、柔らかすぎ、砥石又はサンドペーパが目詰まりしたり、粘着粉が発生したりする可能性がある。粘着粉がゴム表面にあると、接着が悪くなり、接着力低下の原因となる。上記10%M以上80%M以下の範囲であれば、適度な弾性を有するので、そのような懸念が少なくなる。この10%M以上80%M以下の範囲は、加熱時間や圧力の調整によって行う。
【0056】
(タイバンド剥離試験)
以下に、ラップド結合ベルト1のタイバンド剥離試験について説明する。ここでは、試験機として、一般的なロードセル型万能引張試験機を用いる。室温23(-3~+7)℃で、試料長さが150mm、剥離角度180±10°で、引張スピード50±1mm/minとした。
【0057】
比較例としてラップドVベルト2をバフ処理することなくタイバンド40に接着剤により接着したものを用意した。
【0058】
実施例1~3として、上記実施形態のベルトバフ工程S05において、砥石又はサンドペーパの粗さを60番手、80番手、100番手に変更した実施例1~3を準備した。
【0059】
その試験結果を図7に示す。比較例のタイバンド接着力が、20~30N/cmとかなり弱いが、実施例1~3では、タイバンド接着力が35~70N/cmに向上した。
【0060】
すなわち、60番手よりも小さい番手の粗さの粗い砥石又はサンドペーパ30であると、凹凸が大きくなりすぎて、積層構造体10’とタイバンド用帆布40’の接触面に空気が入り気泡などで接着強度が低下するおそれがあり、100番手よりも大きい番手の粗さの細かい砥石又はサンドペーパ30であると、凹凸が小さすぎてタイバンド用帆布40’との接触面積を増やす効果が十分に得られない。しかし、実施例1~3では、適度な凹凸により、タイバンド用帆布40’との接触面積が増え、半加硫状態からの加硫であってもタイバンド40との間で十分な接着強度が得られることがわかる。
【0061】
また、特許文献1及び2のようなワイヤーによる切断面は、凹凸が少なく必要な接着強度が得られにくいが、本実施形態によると、砥石又はサンドペーパ30によるバフ加工を行っているので、適度な凹凸が入りやすく、それにより、タイバンド用帆布40’との接触面積が増え、接着強度の向上が得られやすい。
【0062】
したがって、本実施形態に係るラップド結合ベルト1の製造方法によると、ラップドVベルト2とタイバンド40との接着力を向上させることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0064】
すなわち、上記実施形態では、タイバンド用帆布40’は、未加硫又は半加硫の接着ゴム41’が含浸又はコーティングされた帆布で構成され、その未加硫又は半加硫の接着ゴム41’が積層構造体10’の凹凸のある表面に、加硫により接着されるようにしたが、タイバンド40を未加硫又は半加硫のゴムシートで構成し、この未加硫又は半加硫のゴムシートよりなるタイバンドが積層構造体10’の凹凸のある表面に、加硫により接着されるようにしてもよい。
【0065】
この場合、タイバンド用ゴムシートとして、上述したナイロン短繊維などの摩擦係数低減材等を含むゴム組成物で構成されてもよい。そのポリマー成分は、底部ゴム層11と同様に、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)等が挙げられる。ポリマー成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0066】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 ラップド結合ベルト
2 ラップドVベルト
2’ ラップドVベルト(半加硫状態)
10 ベルト本体
10’ 積層構造体
11 底部ゴム層
12 接着ゴム層
13 背面ゴム層
14 心線
15 補強布
15’ ベルト形成用布(加硫前)
21 円筒金型
22 ゴムシート
22a 面取
23 バフ用プーリ
24 溝
30 サンドペーパ
40 タイバンド
40’ タイバンド用帆布
41 接着ゴム
41’ 接着ゴム(加硫前)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8