IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ 三井化学株式会社の特許一覧 ▶ 鬼怒川ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2022-102670エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む自動車用ゴム部品およびその製造方法
<>
  • 特開-エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む自動車用ゴム部品およびその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102670
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む自動車用ゴム部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20220630BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220630BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/22
C08K5/14
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217542
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】太田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BB151
4J002DE076
4J002EK027
4J002FD022
4J002FD147
4J002GN00
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS15R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA49
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物からなる耐熱老化性に優れる自動車用ラジエータホースなどの自動車ゴム部品を得ることにある。
【解決手段】本発明は、
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、
(B)可塑剤、
(C)水酸化マグネシウム、および
(D)有機過酸化物、
を含有することを特徴とする自動車用ゴム部品に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、
(B)可塑剤、
(C)水酸化マグネシウム、および
(D)有機過酸化物、
を含有することを特徴とする自動車用ゴム部品。
【請求項2】
請求項1に記載の(B)可塑剤がパラフィン系炭化水素であり、40℃における動粘度が300mm2/s~500mm2/sであることを特徴とする、請求項1記載の自動車用ゴム部品。
【請求項3】
請求項1に記載の(B)可塑剤が30質量部以下であることを特徴とする、請求項1~2記載の自動車用ゴム部品。
【請求項4】
請求項1に記載の(C)水酸化マグネシウムが、7~20質量部であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品。
【請求項5】
請求項1に記載の(D)有機過酸化物がジクミルパーオキサイドであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品。
【請求項6】
請求項1に記載の(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、エチレン(a1)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(a3)とに由来する構成単位を有し、かつ、下記要件(i)~(vii)を満たすことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品。
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である;
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である;
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす;
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす;
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)が8~30の範囲にある;
(vi)前記数平均分子量(Mn)が30,000以下である;
(vii)GPC測定によって得られるチャートが2つ以上のピークを示し、最も分子量が小さい側に現れるピークの面積が、全体のピーク面積の1~20%の範囲である。
【請求項7】
請求項1に記載の(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の極限粘度[η]が0.1~5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)が10,000~600,000であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品。
【請求項8】
請求項1に記載の(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の非共役ポリエン(a3)が、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品から得られる自動車用ゴムホース。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の自動車用ゴム部品から得られる自動車用シール部品。
【請求項11】
自動車用ゴム部品の製造方法であって、
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、
(B)可塑剤、
(C)水酸化マグネシウム、および
(D)有機過酸化物、
を混合した後に、押出し工法により成形することを特徴とする自動車用ゴム部品の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の(D)有機過酸化物がジクミルパーオキサイドであることを特徴とする、請求項11に記載の自動車用ゴム部品の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の(D)有機過酸化物が0.1~4.0質量部であることを特徴とする、請求項11に記載の自動車用ゴム部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含む耐熱老化性に優れる自動車用ラジエータホースなどの自動車ゴム部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、産業機械、建設機械、モーターバイク、農業機械等にはエンジンを冷却するためのラジエータホース、ラジエーターオーバーフロー用ドレインホース、室内暖房用ヒーターホース、エアコンドレインホース、ワイパー送水ホース、ルーフドレインホース、プロラクトホース等の各種ホースなどのゴム部品が装着されている。これらのホースは耐オゾン性、耐候性、耐熱性の良いエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)が使用されている。
【0003】
例えば、自動車用ラジエータホースでは、車体に流れる微電流によりホース自身が腐食劣化する現象が発生し、水漏れの原因となることが知られている。この解決方法として、特許文献1および2に記載されているように、ホース材料の体積固有抵抗の向上および酸化亜鉛の無添加が有効であるとされている。
【0004】
一方、ラジエータホースなどの自動車用ゴム部品はエンジンルームが高温になることから、高強度で加水分解性にすぐれると共に、エチレングリコール系溶媒、アルカリ性溶媒、酸性溶媒に対するすぐれた耐久性を有しつつ、耐熱老化性をより改良することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-031813号公報
【特許文献2】特開2012-72291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物からなる耐熱老化性に優れる自動車用ラジエータホースなどの自動車ゴム部品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、
(B)可塑剤、
(C)水酸化マグネシウム、および
(D)有機過酸化物、
を含有することを特徴とする自動車用ゴム部品に係る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車用ゴム部品は、耐熱老化性が顕著に改善されており、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例で用いたエチレン・プロピレン・VNB共重合体(A-1)の製造を行った連続重合装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)》
本発明の自動車用ゴム部品に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)〔以下、「共重合体(A)」と呼称する場合がある。〕は、エチレン(a1)、α-オレフィン(a2)および非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0011】
共重合体(A)を構成するα-オレフィン(a2)は、通常炭素数が3~20のα-オレフィンであり、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(A)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った自動車用ゴム部品を得ることができるため好ましい。
【0012】
本発明に係る共重合体(A)を構成するα-オレフィン(a2)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。すなわち、上記共重合体(A)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係る共重合体(A)を構成する非共役ポリエン(a3)は、非共役不飽和結合を2個以上有する化合物であれば特に制限されないが、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエンが好ましい。
【0014】
【化1】
上記非共役ポリエン(a3)としては、具体的には、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に過酸化物との反応性が良好で、エチレン系共重合体組成物の耐熱老化性が向上しやすいことから、非共役ポリエン(a3)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(a3)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(a3)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0015】
本発明に係る共重合体(A)は、上記(a1)、(a2)、(a3)に由来する構造単位に加えて、さらに上記般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0016】
上記非共役ポリエン(a4)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に硫黄や加硫促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(a4)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0017】
本発明に係る共重合体(A)が、上記非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0018】
本発明に係る共重合体(A)は、下記(i)~(v)の要件(以下、それぞれ要件(i)~(v)とも記す。)を満たすことが好ましい。
(i)エチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(a3)の分子量((a3)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(a3)の重量分率/100/(a3)の分子量≦40・・・(1)
(iv)レオメーターを用いた線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(a3)の重量分率×6・・・・(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・・(3)
【0019】
≪要件(i)≫
要件(i)は、上記共重合体(A)中のエチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22である。
【0020】
要件(i)を満たす共重合体(A)を用いることにより、ゴム弾性、機械的強度および柔軟性に優れた自動車用ゴム部品を得ることができる。なお、共重合体(A)中のエチレン量(エチレン(a1)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(a2)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0021】
≪要件(ii)≫
要件(ii)は、本発明に係る共重合体(A)中において、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、共重合体(A)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
【0022】
要件(ii)を満たす共重合体(A)は、充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなり、また、過酸化物を用いて架橋した場合、早い架橋速度を示すものとなる。なお、共重合体(A)中の非共役ポリエン(a3)量(非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0023】
≪要件(iii)≫
要件(iii)は、本発明に係る共重合体(A)において、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と、共重合体(A)中における非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率:重量%)と、非共役ポリエン(a3)の分子量((a3)の分子量)とが、上記式(1)を満たすことを特定するものである。要件(iii)の上記式(1)は、下記式(1')であることが好ましい。
4.5≦Mw×(a3)の重量分率/100/(a3)の分子量≦35・・・・(1')
【0024】
本発明に係る共重合体(A)が、要件(iii)を満たすことにより、非共役ポリエン(a3)に由来する構造単位の含有量が適切であり、十分な架橋性能を示し、架橋速度に優れるとともに、優れた機械特性を示す自動車用ゴム部品を製造することができる。なお、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値として求めることができる。
【0025】
本発明に係る共重合体(A)において、「Mw×(a3)の重量分率/100/(a3)の分子量」が上記式(1)又は(1')を満たす場合、架橋程度が適切となり、機械的物性と耐熱老化性とがバランスよく優れた自動車用ゴム部品を製造することができる。「Mw×(a3)の重量分率/100/(a3)の分子量」の値が低すぎると、架橋性が不足して架橋速度が遅くなることなることがあり、また該値が高すぎると、過度に架橋が生じて機械的物性が悪化することがある。
【0026】
≪要件(iv)≫
要件(iv)は、上記共重合体(A)の、レオメーターを用いた線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率:重量%)とが、上記式(2)を満たすことを特定するものである。要件(iv)の上記式(2)は、下記式(2')であることが好ましい。
P/([η]2.9)≦(a3)の重量分率×5.7・・・・(2')
【0027】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係る共重合体(A)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより、上記式(2)を満たすことができると考えられる。
【0028】
本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定された値を意味する。
【0029】
≪要件(v)≫
要件(v)は、本発明に係る共重合体(A)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが、上記式(3)を満たすことを特定するものである。要件(v)の上記式(3)は、下記式(3')であることが好ましい。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・・(3')
【0030】
上記式(3)又は(3')により、本発明に係る共重合体(A)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
【0031】
本発明に係る共重合体(A)が要件(v)を満たすことにより、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、耐熱老化性に優れた自動車用ゴム部品を得ることができる。
【0032】
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いた構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0033】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
上記において、絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
【0034】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを下記式(v-1)から算出した。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、[η]=KMv;v=0.725の関係式を適用した。
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0037】
【数2】
【0038】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの下記式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は下記式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0039】
【数3】
【0040】
λ=BrNo/M…(V-6)
LCB1000C=λ×14000…(V-7)
式(V-7)中、「14000」はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0041】
本発明に係る共重合体(A)の極限粘度[η]は、好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.5~5.0dL/g、さらに好ましくは0.9~4.0dL/gである。
【0042】
また、本発明に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~600,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~400,000である。
【0043】
本発明に係る共重合体(A)は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
本発明に係る共重合体(A)では、上述したように、非共役ポリエン(a3)がVNBを含むことが好ましく、VNBであることがより好ましい。すなわち、上述した式(1)、式(2)および後述する式(4)等において、「(a3)の重量分率」が「VNBの重量分率」(重量%)であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る共重合体(A)は、上述したように、上記(a1)、(a2)および(a3)に由来する構造単位に加えて、さらに、上記非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。この場合には、下記(vi)の要件を満たすことが好ましい。
【0045】
≪要件(vi)≫
本発明に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位の重量分率((a4)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(a3)の分子量((a3)の分子量)と、非共役ポリエン(a4)の分子量((a4)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。
4.5≦Mw×{((a3)の重量分率/100/(a3)の分子量)+((a4)の重量分率/100/(a4)の分子量)}≦45・・・・(4)
式(4)では、共重合体1分子中の非共役ジエン((a3)と(a4)の合計)の含量を特定している。
【0046】
上記(a4)に由来する構造単位を含む共重合体(A)が式(4)を満たすことにより、機械物性および耐熱老化性に優れた自動車用ゴム部品を得ることができる。
要件(vi)を満たさず、式(4)中の「Mw×{((a3)の重量分率/100/(a3)の分子量)+((a4)の重量分率/100/(a4)の分子量)}」の値が低すぎると、すなわち非共役ジエンの含量が少なすぎると、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られないことがあり、該値が高すぎると、すなわち非共役ジエンの含量が多すぎると、架橋が過剰となり機械物性が悪化することがあり、さらに耐熱老化性が悪化することもある。
【0047】
≪要件(vii)≫
本発明に係る共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、レオメーターを用いた線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η* (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η* (ω=10)(Pa・sec)と、非共役ポリエン(a3)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
Log{η* (ω=0.01)}/Log{η* (ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(a3)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42・・・・(5)
【0048】
ここで、複素粘度η* (ω=0.01)および複素粘度η* (ω=10)は、要件(iv)における複素粘度η* (ω=0.1)および複素粘度η* (ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。また、非共役ポリエン(a3)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(a3)に由来する見かけのヨウ素価=(a3)の重量分率×253.81/(A3)の分子量
【0049】
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(a3)の含有量の指標を表す。上記共重合体(A)が上記式(5)を満たすと、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。一方、上記式(5)を満たさない場合、共重合した非共役ポリエン(a3)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いこと分かる。
【0050】
さらに、本発明に係る共重合体(A)は、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位を十分な量で含有することが好ましく、共重合体中における非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とが、下記式(6)を満たすことがより好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(a3)の重量分率≦10・・・・(6)
【0051】
また、本発明に係る共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の数(na3)が、好ましくは6個以上、より好ましくは6個以上40個以下、さらに好ましくは7個以上39個以下、特に好ましくは10個以上38個以下である。
【0052】
本発明に係る共重合体(A)は、VNBなどの非共役ポリエン(a3)から導かれる構成単位を十分な量で含有し、かつ、長鎖分岐含有量が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、特に耐熱老化性に優れる。
【0053】
また、本発明に係る共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位の数(na4)が、好ましくは29個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは1個未満である。
【0054】
このような共重合体(A)は、ENBなどの非共役ポリエン(a4)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有する。
【0055】
ここで、本発明に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の数(na3)または非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位の数(na4)は、非共役ポリエン(a3)または(a4)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(a3)または(a4)に由来する構成単位の重量分率((a3)または(a4)の重量分率(重量%))と、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
【0056】
(na3)=(Mw)×{(a3)の重量分率/100}/非共役ポリエン(a3)の分子量
(na4)=(Mw)×{(a4)の重量分率/100}/非共役ポリエン(a4)の分子量
【0057】
本発明に係る共重合体(A)において、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(a3)および(a4)に由来するそれぞれの構成単位の数(na3)および(na4)が、いずれも上記の範囲を満たす場合、共重合体(A)は、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0058】
≪エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造方法≫
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン(a1)と、α-オレフィン(a2)と、非共役ポリエン(a3)と、必要に応じて非共役ポリエン(a4)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0059】
本発明に係わる上記共重合体(A)は、上記要件(i)~(iv)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0060】
本発明に係わる上記共重合体(A)の具体的な製造方法としては、例えば、特開平2018-119096号公報、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒を用いた製造方法を採用することにより製造することができる。
【0061】
《エチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン)共重合体(F)》
本発明の自動車用ゴム部品には、上記共重合体(A)に加え、エチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン共重合体)(F)〔以下、「共重合体(F)」と略称する場合がある。〕は、エチレン(b1)およびα-オレフィン(b2)、あるいはエチレン(b1)、α-オレフィン(b2)および非共役ポリエン(b3)をランダム共重合して得られるエチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン)共重合体であり、非共役ポリエンを含まない共重合体であっても、非共役ポリエンを含む共重合体であってもよい。
【0062】
共重合体(F)を構成するα-オレフィン(b2)は、通常、上記本発明に係る共重合体(A)を構成するα-オレフィン(a2)と同じ炭素数3~20のα-オレフィンであり、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(F)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った自動車用ゴム部品を得ることができるため好ましい。
【0063】
本発明に係る共重合体(F)を構成するα-オレフィン(b2)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。すなわち、上記共重合体(F)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(b2)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(b2)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0064】
本発明に係る共重合体(F)を構成する非共役ポリエン(b3)は、本発明に係る共重合体(A)を構成する非共役ポリエン(a4)と同じ範疇の非共役不飽和結合を2個以上有する化合物であり、具体的には、上記一般式(I)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に一つ含む非共役ポリエンであり、具体的には、非共役ポリエン(b3)として、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に硫黄や加硫促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(b3)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0065】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(F)は、エチレンとα-オレフィンとのモル比(エチレン/α-オレフィン)が通常、40/60~90/10、好ましくは50/50~80/20、特に好ましくは55/45~70/30の範囲にあるものが望ましい。
【0066】
これらの非共役ポリエン(b3)は、単独または2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で1~40、好ましくは2~35、より好ましくは3~30であることが望ましい。
【0067】
これら非共役ポリエンの中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が好ましい。
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(F)は、135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.5~5.0dL/g、さらに好ましくは0.9~4.0dL/gである。
【0068】
本発明に係わる共重合体(F)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体、例えば酸無水物などがグラフト共重合した変性物であってもよい。
本発明に係わる共重合体(F)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体およびエチレン・1-ブテン・非共役ポリエン共重合体が好ましい。
【0069】
本発明に係わる重合体(F)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン)共重合体(F)は、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会発行、P.309~330)」などに記載されているような公知の方法により調製することができる。
【0070】
《可塑剤(B)》
本発明に係る自動車用ゴム部品に含まれる成分の一つである可塑剤(B)の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、液状エチレン・プロピレン共重合体、液状エチレン・1-ブテン共重合体等の石油系軟化剤などの鉱物油;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)などが挙げられ、石油系軟化剤などの鉱物油が好ましく、さらに好ましくはプロセスオイルなどパラフィン系炭化水素であり、特に40℃における動粘度が300mm2/s~500mm2/sの範囲にあるパラフィン系炭化水素が好ましい。
【0071】
《水酸化マグネシウム(C)》
本発明の自動車用ゴム部品に含まれる成分の一つである水酸化マグネシウム(C)は、ゴム、プラスチック用添加剤の一種である。本発明に係る水酸化マグネシウム(C)は、その形状は特に限定はされないが、好ましくは粒子の平均アスペクト比が10以上、より好ましくは15~200、さらに好ましくは20~200の範囲にある。
【0072】
本発明に係わる水酸化マグネシウム(C)は、例えば、ステアリン酸、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シリコーン系処理剤、水ガラス、シリカ、及びカチオン系界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の化合物などで表面処理されていてもよい。
【0073】
本発明に係わる水酸化マグネシウム(C)は、例えば、協和化学工業株式会社から、キスマ5、キスマ8、キスマ10Aなどの商品名で製造、販売されている。
【0074】
《有機過酸化物(D)》
本発明の自動車用ゴム部品に含まれる成分の一つである有機過酸化物(D)は、架橋剤に一種であり、具体的には、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0075】
このうちでは、ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の有機過酸化物が好ましい。
【0076】
<自動車用ゴム部品>
本発明の自動車用ゴム部品は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、上記可塑剤(B)、上記水酸化マグネシウム(C)、および上記有機過酸化物(D)を含む。
【0077】
以下、本発明の自動車用ゴム部品を構成する上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に加え、上記可塑剤(B)、上記水酸化マグネシウム(C)、および上記有機過酸化物(D)を含む組成物を「共重合体組成物」と呼称する場合がある。
【0078】
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物は、上記可塑剤(B)、上記水酸化マグネシウム(C)を含むので、ロール加工性が良好である。
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物は、好ましくは上記共重合体(A):100質量部に対して、上記可塑剤(B)を30質量部以下、より好ましくは10~30質量部、上記(C)水酸化マグネシウムを7~20質量部、より好ましくは8~15質量部、さらに好ましくは9~11質量部、および上記有機過酸化物(D)を0.1~4重量部、より好ましくは2.0~3.5質量部、さらに好ましくは2.5~3質量部の範囲で含む組成物である。
【0079】
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物が上記共重合体(A)に加え、上記共重合体(F)を含む場合は、上記可塑剤(B)などの配合量は、上記共重合体(A)と上記共重合体(F)との合計量:100質量部に対する配合量である。
【0080】
また、本発明の自動車用ゴム部品を構成するエチレン系共重合体組成物が上記共重合体(A)に加え、上記共重合体(F)を含む場合は、上記共重合体(A)と上記共重合体(F)の量は、0~50重量部、好ましくは15~50重量部、さらに好ましくは30~50重量部の範囲にある。
【0081】
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物は、上記共重合体(A)、上記可塑剤(B)、上記水酸化マグネシウム(C)、および上記有機過酸化物(D)に加え、必要に応じて、上記共重合体(F)および他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、その他重合体、カーボンブラック、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、無機充填剤。軟化剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、脂肪酸アミド、活性剤、吸湿剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤などから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの重合体および添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、公知の発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤等もその他の成分として用いうる。
【0082】
〈架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
【0083】
架橋助剤を用いる場合、共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0084】
〈カーボンブラック〉
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物に配合し得るカーボンブラックは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤の一種であり通常、カーボンブラックと呼称されている無機物である。
【0085】
本発明に係わるカーボンブラックとしては、具体的には、旭#55G、旭#60G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したものである。
【0086】
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物がカーボンブラックを含む場合はその配合量は、共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、一般に30~50質量部、好ましくは35~45質量部である。
【0087】
〈無機充填剤〉
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物に配合し得る無機充填剤の具体例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの1種類または2種類以上が使用され、これらのうちでは、「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等の重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0088】
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物が無機充填剤を含む場合はその配合量は、共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、一般に70~90質量部、好ましくは75~85質量部である。
【0089】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明の自動車用ゴム部品を構成する共重合体組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成される成形体の寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0090】
さらに、老化防止剤として、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン(商品名:イルガノックス1010、BASF製)等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0091】
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、その配合量は、共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、通常は0.3~15質量部、好ましくは0.5~10質量部である。このような範囲内とすることにより、共重合体組成物の架橋物から得られる自動車用ゴム部品の耐熱老化性がより顕著に改善され、且つ、自動車用ゴム部品の表面のブルームがなく、さらに架橋阻害が発生を抑制することができる。
【0092】
〈加工助剤〉
本発明に係る加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く用いることができる。
【0093】
加工助剤の具体例としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、エステル類などが挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0094】
加工助剤の配合量は、共重合体組成物に含まれる共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、通常は10質量部以下、好ましくは8.0質量部以下である。
【0095】
〈活性剤〉
活性剤の具体例としては、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0096】
活性剤を含有する場合は、その配合量は、共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0097】
〈吸湿剤〉
吸湿剤の具体例としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0098】
吸湿剤を含有する場合は、その配合量は、共重合体(A)100質量部、あるいは共重合体(A)と共重合体(F)の合計量100質量部に対して、通常は0.5~15質量部、好ましくは1.0~12質量部である。
本発明の自動車用ゴム部品は単層であっても、繊維補強層を含む多層であってもよい。
【0099】
〈繊維補強層〉
本発明の自動車用ゴム部品を構成する繊維補強層に用いる繊維基材は、ポリアミド単独からなるものでも、あるいはポリアミドと他の補強用繊維、例えばガラス繊維、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ホウ酸アルミ繊維、ポリエステル繊維等との組合せからなるものでもよい。
【0100】
繊維基材を構成するポリアミド類としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10のような脂肪族ポリアミド;ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、或いはこれらの単位を含む共重合ポリアミドのような半芳香族ポリアミド;ポリベンズアミド、ポリpフェニレンテレフタラミド、ポリmフェニレンイソフタラミドのような全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0101】
これらのポリアミド繊維はフィラメント或いはステープル繊維の形で繊維基材として使用され、例えばコード糸、紡績糸、織布、編み物、不織布などのそれ自体公知の形態で基材として使用される。勿論、これらの基材は単層で用いても、或いは2層以上の多層で用いてもよい。
【0102】
<自動車用ゴム部品の製造方法>
本発明の自動車用ゴム部品は、種々公知の製造方法で製造し得る。本発明の自動車用ゴム部品の好ましい製造方法は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、上記可塑剤(B)、上記水酸化マグネシウム(C)、および上記有機過酸化物(D)を混合した後に、押出し工法により成形する方法である。
【0103】
本発明の自動車用ゴム部品が繊維補強層を有するラジエータホース、ヒーターホースなどのホースであれば、内層用の押出機により上記エチレン系共重合体組成物を押出し工法で管状の内層を成形し、スパイラル装置を用いてその外周に補強糸をスパイラル状に編成して補強糸層を設けた後、外層用の押出機により補強糸を覆うように上記エチレン系共重合体組成物を押出し工法で外層を成形することにより製造し得る。
【実施例0104】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例では、下記の共重合体を用いた。
【0105】
(1)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)として、製造例1で得られたエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(A‐1)を用いた。
【0106】
[製造例1]
図1に示す連続重合装置を用いて、以下のようにしてエチレン・プロピレン・VNB共重合体(A-1)の製造を行った。
【0107】
容積300リットルの重合反応器Cに、管6より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、管7よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C65)3CB(C65)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に重合反応器C内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々管2、3、4、5より連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0108】
重合反応器Cで生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、管8を介して流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器Dに供給した。このとき、管8には重合禁止剤であるエタノールを、重合反応器Cから抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0109】
相分離器Dにおいて、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下相部)と少量のポリマーを含む希薄相(上相部)とに分離した。
【0110】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで、管11を介して熱交換器Kに導き、さらにホッパーE内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0111】
得られたエチレン・プロピレン・VNB共重合体(A-1)の物性を上記の通り評価した。結果を表1に示す。なお、得られた共重合体(A-1)の分子量分布は二峰性を示した。
【0112】
【表1】
【0113】
(2)エチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン)共重合体(F)
エチレン・α-オレフィン・(非共役ポリエン)共重合体(F)として、以下のエチレン・プロピレン共重合体〔三井化学(株)社製 商品名 三井EPT 0045〕:エチレン含量=51質量%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃=40〕を用いた。
【0114】
〔未架橋共重合体組成物の物性〕
(ムーニー粘度(ML(1+4)100℃))
100℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、100℃の条件下で測定した。
【0115】
(ロール加工性)
14インチロ-ル(日本ロール(株)社製)を用い、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm、ロール間隙5mmとし、コンパウンドをロ-ルに巻き付けて、シートの状態を観察した。実施例および比較例の第一段階で得られた配合物をロールで混練した際における未架橋共重合体組成物(組成物)の状態から未架橋共重合体組成物(組成物)のエッジと耐バギング性を評価した。
【0116】
未架橋共重合体組成物(組成物)のエッジは、次の評点1~5により評価した。
評点1:組成物のエッジ部に大きなひび割れがあり、組成物の一部が脱落する。
評点2:組成物のエッジ部に大きなひび割れあり。
評点3:組成物のエッジ部に小さなひび割れあり。
評点4:組成物のエッジ部に微小ひび割れあり。
評点5:組成物のエッジ部にひび割れなし。
【0117】
未架橋共重合体組成物(組成物)の耐バギング性は、次の評点1~5により評価した。
評点1:組成物がロールに全く巻き付かず、すぐバギングする。
評点2:組成物がロールに一時的に巻き付くが、すぐにロールから剥がれ、バギングする。
評点3:組成物がロールに巻き付き、度々バンク部分から剥がれるが、バギングしない。
評点4:組成物がロールに容易に巻き付き、極まれにバンク部分から剥がれるが、バギングしない。
評点5:組成物がロールに容易に巻き付き、全くバンク部分から剥がれず、バギングしない。
【0118】
<自動車用ゴム部品(架橋物)の物性>
(引張破断点応力、引張破断点伸び)
シートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
【0119】
シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0120】
(デュロメーターA硬度)
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0121】
(耐熱老化性)
シートを、JIS K 6257に従い、180℃で72h、168h、336hの各時間保持する熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの硬度、引張破断点応力、引張破断点伸びを、前記[硬度(Durometer-A)]の項目、前記[モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]の項目と同様の方法で測定した。
【0122】
熱老化試験前後の硬度の差より、AH(Duro-A)を求め、熱老化試験前後の引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)から、熱老化試験前の値に対する試験後の変化率をそれぞれ、AC(TB)、AC(EB)として求めた。
【0123】
〔実施例1〕
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得たエチレン・プロピレン・VNB共重合体(A-1)60質量部とエチレン・プロピレン共重合体(三井EPT 0045)40質量部を1分間素練りし、次いでこれに、アスペクト比が67である高アスペクト比水酸化マグネシウム(キスマ10、協和化学工業(株)製)10質量部、亜鉛華(ZnO#1、ハクスイテック(株)製)5質量部、タルク〔ミストロンべーパータルク(M.V.T)、日本ミストロン(株)製)80質量部、カーボンブラック(旭#60UG、旭カーボン(株)製)40質量部、パラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスPW-380、出光興産(株)製)33質量部、一次老化防止剤(商品名 イルガノックス1010、BASF製)〔老防1010〕3質量部、二次老化防止剤(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)〔老防MB〕6質量部、ステアリン酸1質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で混練物を排出し、第一段階の配合物を得た。
【0124】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、6インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、ジクミルパーオキシド(パークミルD-40C、日油製)〔DCP-40C〕6.8質量部を加え10分間混練して未架橋のエチレン系共重合体組成物を得た。この共重合体組成物を用いて、その物性を評価した。
【0125】
この未架橋の共重合体組成物をシート状に押出成形した後、100トンプレス成形機を用いて160℃で20分間プレスし、厚み2mmの架橋シートを調製した。これを用いて、架橋シートの物性を測定した。結果を表2に示す。
【0126】
〔実施例2~8〕
表2に示した配合で実施例1と同様に、共重合体組成物および架橋シートを製造し、さらに実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
〔比較例1〕
表3に示した配合で実施例1と同様に、共重合体組成物および架橋シートを製造し、さらに実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0129】
比較例1で用いたエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(F)および配合剤等を以下に示す。
【0130】
〈エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(F)〉
(1)三井化学(株)製 三井EPTTM 銘柄名 3090EM:エチレン含量=48質量%、ムーニー粘度ML(1+4)125℃=59
(2)三井化学(株)製 三井EPTTM 銘柄名 3072EM:エチレン含量=64質量%、ムーニー粘度ML(1+4)125℃=51
【0131】
〈フィラー、可塑剤〉
カーボンブラック:旭#52(商品名)[旭カーボン株式会社製]
可塑剤:ダイアナ プロセスオイルPW-90(商品名)[出光興産株式会社製]
クレー:BURGESS NO.30(商品名)[BURGESS PIGMENT社製]
活性剤:ポリエチレングリコール:商品名 PEG#4000(商品名)[日油株式会社製]
【0132】
〈加硫促進剤、加硫剤〉
加硫促進剤:サンセラーCZ(商品名)[三新化学工業(株)製]、サンセラーBZ(商品名)[三新化学工業(株)]、サンセラーTT(商品名)[三新化学工業(株)]、サンセラーTRA(商品名)[三新化学工業(株)]、サンセラーTE(商品名)[三新化学工業(株)]、サンフェルR(商品名)[三新化学工業(株)]
加硫剤:硫黄
【0133】
【表3】
【符号の説明】
【0134】
C 重合反応器
D 相分離器
E ホッパー
F ポンプ
G 熱交換器
H 熱交換器
図1