(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102682
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】耐火用硬化性組成物およびその組成物を使用した耐火構造体形成工法。
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20220630BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220630BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220630BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K7/00
C08L101/02
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217554
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】石原 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 知紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕仁
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA032
4J002BB202
4J002BG021
4J002CD063
4J002CH002
4J002CP032
4J002DA026
4J002FA016
4J002FD136
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、優れた耐火性能を有する硬化物を形成し、硬化物の燃焼後であっても形状保持性、残渣硬さに優れる硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明の目的は、下記によって達成された。
少なくとも、
(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部、
(B)平均アスペクト比が20未満である熱膨張性黒鉛10~200質量部、とを含有する硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部、
(B)平均アスペクト比が20未満である熱膨張性黒鉛10~200質量部、とを含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)とは異なる、(C)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する有機重合体を1~200質量部含有する請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(D)エポキシ樹脂を前記(A)および(C)の総量100質量部に対し、1~50質量部含有する請求項1または2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記請求項1~3いずれか1項に記載の硬化性組成物を使用した耐火構造体形成工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火用硬化性組成物およびその組成物を使用した耐火構造体形成工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の構造物の内部や外部で火災が発生した場合に備え、構造物は、火災の延焼を防止する機能を有することが要求される。そこで、従来、様々な耐火材料を用いた防火構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、平均アスペクト比が20以上である熱膨張性黒鉛を使用する技術が提案されている。また特許文献2では、特定のポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛からなる熱可塑性樹脂シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6286004号公報
【特許文献2】特開2020-125395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の熱膨張性耐火材料は、膨張倍率が5倍を超えるような場合に、膨張残渣の強度が不十分となっており、硬化物が燃焼した後の形状を保持することが困難である。また特許文献2に記載の重合体では、ある程度の効果は得られるものの性能として不十分であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、優れた耐火性能を有する硬化物を形成し、硬化物の燃焼後であっても形状保持性、残渣硬さに優れる硬化性組成物およびその硬化性組成物を使用した耐火構造体形成工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくとも、
(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部、
(B)平均アスペクト比が20未満である熱膨張性黒鉛10~200質量部、とを含有する硬化性組成物。
2. 前記(A)とは異なる(C)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する有機重合体を1~200質量部含有する前記1記載の硬化性組成物。
3. (D)エポキシ樹脂を前記(A)および(C)の総量100質量部に対し、1~50質量部含有する前記1または2記載の硬化性組成物。
4. 前記1~3いずれか1に記載の硬化性組成物を使用した耐火構造体形成工法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化物の燃焼後に、優れた形状保持性、残渣硬さを有する硬化性組成物およびその組成物を使用した耐火構造体形成工法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、その実施態様には限定されない。
【0010】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、少なくとも、(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部、(B)平均アスペクト比が20未満である熱膨張性黒鉛10~200質量部、とを含有することを特徴とする。
【0011】
<(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個する(メタ)アクリル酸エステル系重合体>
本発明において、(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(以下(A)成分ともいう)は、主鎖が実質的に(メタ)アクリル酸エステル系重合体であり、架橋性ケイ素基を1分子中に平均して少なくとも1個以上含有する有機重合体をいう。
【0012】
ここで(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは、アクリル酸エステル系重合体およびメタクリル酸エステル系重合体を総称している。
【0013】
(A)成分の架橋性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、空気中等の湿分によりシロキサン結合を形成することで架橋し得る基である。架橋性ケイ素基としては、例えば、一般式(1)で示される基が挙げられる。
【0014】
【0015】
式(1)中、R1は、炭素数が1~20の炭化水素基、炭素数が1~20のアルキル基、炭素数が3~20のシクロアルキル基、炭素数が6~20のアリール基、炭素数が7~20のアラルキル基、R1
3SiO-(R1は、前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基、若しくは-CH2OR1基(R1は、前記と同じ)である。
【0016】
また、R1は、1位から3位の炭素原子上の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン、-OR2、-NR3R4、-N=R5、-SR6(R2、R3、R4、R6はそれぞれ水素原子、又は炭素数が1~20の置換基を有するか若しくは置換基を有さない炭化水素基、R5は炭素数が1~20の2価の置換基を有するか若しくは置換基を有さない炭化水素基である。)、炭素数が1~20のペルフルオロアルキル基、若しくはシアノ基で置換された炭素数が1~20の炭化水素基を示す。
【0017】
これらの中でR1は、メチル基が好ましい。R1が2個以上存在する場合、複数のR1は同一であっても、異なっていてもよい。Xは水酸基、又は加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3の整数のいずれかである。硬化性を考慮し、十分な硬化速度を有する硬化性組成物を得るためには、式(1)においてaは2以上が好ましく、3がより好ましい。
【0018】
加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができる。加水分解性基や水酸基が架橋性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であっても、異なっていてもよい。架橋性ケイ素基を形成するケイ素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結されたケイ素原子の場合には、20個程度あってもよい。
【0019】
Xで示される加水分解性基としては、F原子以外であれば特に限定されない。例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという観点からアルコキシ基が好ましい。
【0020】
アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほど反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。
【0021】
架橋性ケイ素基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、-Si(OR)3、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基、-SiR1(OR)2が挙げられる。
【0022】
ここでRはメチル基やエチル基等のアルキル基である。また、架橋性ケイ素基は1種で用いても、2種以上併用してもよい。
【0023】
架橋性ケイ素基は、主鎖又は側鎖、若しくは双方に結合していてもよいが、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在することが好ましい。
【0024】
また、(A)成分において、架橋性ケイ素基は、硬化後の引張接着性、モジュラス等の物性の観点から、重合体1分子中に平均して0.2個以上5個以下存在することが好ましく、0.5個以上3個以下存在することがより好ましい。
【0025】
高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物を得る観点からは、(A)成分に含有される架橋性ケイ素基は、有機重合体1分子中に平均して0.2個以上存在することが好ましく、0.5個以上5個以下存在することがより好ましく、1.0個以上5個以下存在することがさらに好ましい。なお、架橋密度を低下させる観点からは、分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が平均して1.0個以下の有機重合体を併用することもできる。
【0026】
(A)成分の主鎖骨格としては、具体的には、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体が挙げられる。これらの骨格は、(A)成分の中に単独で含まれていても、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、各種のモノマーを用いることができる。
【0028】
例えば、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー;脂環式(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;芳香族(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸の誘導体;フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共に、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
また、単量体単位(以下、他の単量体単位とも称する)として、これら以外にアクリル酸、グリシジルアクリレートを含有してもよい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、公知の通常の製造方法で得ることができる。
【0031】
本発明の(A)成分の重量平均分子量は、500~100000であり、1000~100000が好ましい。本発明の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量である。
【0032】
重量平均分子量をこの範囲とすることにより、複数の架橋性ケイ素基を有する重合体が含まれている場合、相溶性が向上する。(A)成分は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0033】
本発明の(A)成分としては、アクトフロー(綜研化学株式会社製)、ゼムラック(株式会社カネカ製)等の市販品を使用することができる。
【0034】
<(B)平均アスペクト比が20未満である熱膨張性黒鉛>
本発明の(B)平均アスペクト比が20未満の熱膨張性黒鉛(以下(B)成分ともいう)は、熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が20未満であることを特徴とする。
【0035】
そして、本発明の熱膨張性黒鉛は、グラファイトを硫酸、硝酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することによりグラファイトの層間に酸等がインターカレートされた層状物質である。熱膨張性黒鉛は、アンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和処理して用いることが好ましい。
【0036】
本発明における平均アスペクト比は、鉛直方向の厚さに対する水平方向の平均径の割合であり、鉛直方向が厚み方向、水平方向が径方向に一致するとし、水平方向の最大寸法を鉛直方向の厚みで除した値をアスペクト比とする。
【0037】
測定は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用い写真撮影し、その写真によりランダムに10個以上の黒鉛片につき熱膨張性黒鉛の水平方向における最大寸法及び薄片化黒鉛の厚みを測定しアスペクト比を算出、その平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の平均粒径も、水平方向の最大寸法の平均値として求めることができる。
【0038】
本発明の熱膨張性黒鉛の平均粒径は1~1000μmであり、100~800μmであることが好ましい。
【0039】
本発明においては、硬化性組成物に含まれる熱膨張性黒鉛全体として平均アスペクト比が20未満である。したがって熱膨張性黒鉛1種類だけ使用することもできるし、複数の平均アスペクト比および平均粒径を有する熱膨張性黒鉛を併用配合して、硬化性組成物に含まれる熱膨張性黒鉛全体として平均アスペクト比を20未満となるように調整して使用することもできる。
【0040】
複数の熱膨張性黒鉛を使用する場合、少なくとも1種は平均アスペクト比が20以上(以下、熱膨張性黒鉛Mともいう)であり、すくなくとも1種は平均アスペクト比が20未満(以下、熱膨張性黒鉛Dともいう)であることが好ましい。
【0041】
熱膨張性黒鉛Mは、平均アスペクト比が、20以上で平均粒径が100μm以上、さらには300μm以上であることが好ましく、熱膨張性黒鉛Dは、平均アスペクト比が1~15であることが好ましい。
【0042】
本発明では、熱膨張性黒鉛Mと熱膨張性黒鉛Dとを混合した平均アスペクト比が20未満であればよく、15~19であることが好ましい。熱膨張性黒鉛Mと熱膨張性黒鉛Dは、質量比で10/90~99.999/0.001で混合することが好ましい。
【0043】
本発明の熱膨張性黒鉛は、膨張黒鉛9532400A、同9950200(以上、製品名、伊藤黒鉛工業株式会社製)、GRAFGUARD160-50N、同160-80N、同220-50N、同220-80N、同250-50N、同180-60N、同200-100N、同210-140N(以上、製品名、巴工業株式会社製)等を製品として入手することができる。
【0044】
本発明の硬化性組成物において(B)熱膨張性黒鉛の含有割合は、(A)成分100質量部に対して10質量部以上200質量部以下が好ましい。
【0045】
<(C):(A)とは異なる、架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する有機重合体>
本発明の硬化性組成物は、(A)とは異なる、架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する有機重合体(以下(C)成分ともいう)を含有することが好ましい(C)成分は、架橋性ケイ素基を1分子中に平均して少なくとも1個含有する有機重合体であって、主鎖がポリシロキサンを含んでいてもよい有機重合体である。
【0046】
(C)成分は、(A)成分と異なり、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは異なる有機重合体が主鎖を構成する。なお、(C)成分の架橋性ケイ素基については、(A)成分の架橋性ケイ素基と同様である。
【0047】
(C)成分の主鎖としては、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系共重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ビニル系重合体等が挙げられる。
【0048】
これらの骨格は、オルガノシロキサンを含有していてもよく、(C)成分の中に単独で含まれていても、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。
【0049】
これらの架橋性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。具体的には、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、及び架橋性ケイ素基を有するポリオレフィン系重合体からなる群から選択される2種以上をブレンドした有機重合体も用いることができる。
【0050】
主鎖骨格がオキシアルキレン系重合体であり末端に加水分解性基等の官能基を有するポリマー(以下、「ポリオキシアルキレン系重合体」という。)は、一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0051】
一般式(2)
-R7-O-・・・(2)
一般式(2)中、R7は炭素数が1~14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基であり、炭素数が1~14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が好ましく、炭素数が2~4の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が更に好ましい。
【0052】
本発明においては、(C)成分の重量平均分子量は1000~100000であり、2000~100000が好ましい。
【0053】
(C)成分において架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.0個以上4.0個以下存在することが好ましく、1.1個以上3.0個以下存在することがより好ましく、1.2個以上2.4個以下存在することが更に好ましい。
【0054】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は直鎖状でも分岐を有してもよい。引張モジュラスを小さくする観点からは、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は直鎖状の重合体が好ましい。また、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布(重量平均分子量[Mw]/数平均分子量[Mn])は2以下、特には1.6以下が好ましい。
【0055】
本発明において(C)成分は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。(C)成分は、(A)成分に対し、1~200質量部の範囲で使用することが好ましく、10~150質量部であることが好ましい。
【0056】
本発明の(C)成分は、サイリルEST280、同EST250、同SAT030、同SAX220、カネカMSポリマーS203、同S303、(以上、株式会社カネカ製)等の製品を入手することができる。
【0057】
<(D)エポキシ樹脂>
本発明では、(D)エポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂としては、様々なエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂やこれらを水添したエポキシ樹脂を用いることがでる。
【0058】
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。これらの中でも、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0059】
≪(Dn)ノボラック型エポキシ樹脂≫
本発明の硬化性組成物は、エポキシ樹脂として(Dn)ノボラック型エポキシ樹脂を含有することが好ましい。(Dn)成分としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0060】
(Dn)ノボラック型エポキシ樹脂は、常温で液状の(Dn)ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
本発明の硬化性組成物において(D)エポキシ樹脂の配合割合は、(A)成分100質量部((C)成分を含有する場合には、(A)成分と(C)成分とを合わせた量を100質量部とする)に対して、0.01~100質量部であり、1~50質量部が好ましい。
(D)エポキシ樹脂は、jER152、同154(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON N-730A(以上、DIC株式会社製)等の製品を入手することができる。
【0062】
<(E)難燃剤>
本発明の硬化性組成物は、難燃剤を含有することが好ましく、特に限定されず、従来公知の化合物を用いることができるが、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、塩素化合物や臭素化合物等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、シリカフィラー等の無機酸化物等を用いることができる。これらの難燃剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0063】
難燃剤のうち、金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。
【0064】
本発明の硬化性組成物に難燃剤を配合する場合、硬化性組成物の総量に対して5~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。なお、当該全体量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分若しくは(Dn)成分、並びに必要に応じて配合される他の配合物の合計量である。
【0065】
<(F)形状保持剤>
本発明の硬化性組成物は、形状保持剤を含有することも好ましい。(形状保持剤としては、リン化合物、ホウ素化合物、及び/又はベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0066】
形状保持剤の配合割合は、(A)成分100質量部((C)成分を含有する場合には、(A)成分と(C)成分とを合わせた量を100質量部とする)に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましく、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、90質量部以下が特に好ましい。
【0067】
<その他の配合物>
本発明の耐火性の硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、エポキシ樹脂の硬化剤、フェノール樹脂、難燃剤以外の充填剤(炭酸カルシウム等)、水分吸収材、接着付与剤(シランカップリング剤等)、硬化触媒(有機スズ、アミン、ケチミン等)、希釈剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、物性調整剤、可塑剤、揺変剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、ラジカル重合開始剤、防カビ剤、着色剤等、及び/又はトルエンやアルコール等の溶剤等の各種物質を更に配合してもよく、また、相溶する他の重合体をブレンドしてもよい。これらの配合剤は単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0068】
≪充填剤≫
本発明の上記充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、およびカーボンブラックのような補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイトのような充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填剤等が挙げられる。充填剤を使用する場合、(A)架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体重合体(以下(A)重合体ともいう)100質量に対して1~400質量部、好ましくは10~300質量部である。
【0069】
≪接着付与剤≫
本発明の上記接着付与剤としては、シランカップリング剤、シランカップリング剤の反応物、またはシランカップリング剤以外の化合物を接着性付与剤として添加することができる。
【0070】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。
【0071】
また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0072】
本発明に用いるシランカップリング剤は、(A)重合体100質量部に対して、0.1~20質量部の範囲で使用することが好ましく、特に、0.5~10質量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0073】
≪硬化触媒≫
本発明の上記硬化触媒としては、成分(A)や成分(C)に対し硬化触媒の作用を示すものであれば、特に限定されないが、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられ、特にシラノール縮合触媒を用いることが好ましい。
【0074】
上記シラノール縮合触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジオクチル錫オキサイド、オクチル酸錫及びナフテン酸錫等の有機錫化合物;ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛;シラノール縮合触媒として公知のその他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられる。このうちジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドが特に好ましい。
【0075】
硬化触媒の使用量は、架橋速度、硬化物の物性などの点から、(A)重合体100質量部に対して、0.1~30質量部、特に0.5~20質量部用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0076】
≪光安定剤≫
本発明の上記光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。
【0077】
光安定剤の使用量は、(A)重合体100質量部に対して0.1~10質量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2~8質量部である。
【0078】
≪紫外線吸収剤≫
本発明の上記紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系およびトリアジン系が好ましい。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。
【0079】
紫外線吸収剤の使用量は、(A)重合体100質量部に対して0.1~10質量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2~5質量部である。ヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
【0080】
≪可塑剤≫
本発明の上記可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)などのフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレートなどのテレフタル酸エステル化合物(具体的には、商品名:EASTMAN168(EASTMAN CHEMICAL社製));1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの非フタル酸エステル化合物(具体的には、商品名:Hexamoll DINCH(BASF社製));アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチルなどの不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル(具体的には、商品名:Mesamoll(LANXESS社製));トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤、アクリル酸エステルなどのアクリル可塑剤、などをあげることができる。
【0081】
可塑剤を添加すると、硬化性組成物の粘度やスランプ性および硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できる。
【0082】
可塑剤として、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤を使用すると、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持することができる。
【0083】
高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;アクリル系モノマーを種々の方法で重合して得られるアクリル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上、さらには1,000以上のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリイソブチレン等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
可塑剤の使用量は、(A)重合体100質量部に対して5~300質量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは20~250質量部である。2種以上併用して使用してもよい。
【0085】
<硬化性組成物の特性>
本発明の硬化性組成物は常温環境下(例えば23℃)で塗布してもよく、塗布に適した粘度となるまで加熱して塗布してもよい。本発明において、塗布時に流動性を有するとは、一般的に流動性を有しているといえる物性であれば限定はないが、被塗布物への塗布時の粘度が0.1Pa・s以上3,000Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以上2,000Pa・s以下がより好ましく、1.0Pa・s以上1,000Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0086】
塗布工程に関しては公知のポンプを使用でき、ピストンポンプ、ギアポンプ、ねじポンプ等使用できるが、熱膨張性黒鉛を使用した塗布物に対して特に安定した塗布性能を得られる点で、ねじポンプが好ましい。
【0087】
<塗膜の特性>
本発明では、構造物の表面の少なくとも一部に、塗布時に流動性を有し、硬化性組成物を塗布する塗布工程と、硬化性組成物を硬化させて硬化物にする硬化工程とを備え、硬化物が、空気中、600℃の雰囲気下で30分間燃焼させた場合に、燃焼後の硬化物が形状保持性および高い残渣硬さを有する耐火構造体が提供される。
【0088】
本発明の硬化性組成物は、硬化して得られる硬化物が所定の硬度を有している。当該硬化物の硬度は、JIS K6253-3に準拠して求められるデュロメータタイプA硬度が30以上であり、40以上が好ましく、50以上がより好ましい。
【0089】
そして、本発明の硬化性組成物の硬化物は、(B)熱膨張性黒鉛を含有するため燃焼後の硬化物の体積が燃焼前の硬化物の体積の5倍を超えるような膨張倍率に設計した場合であっても、膨張した後の燃焼残渣が崩壊しづらく、膨張した状態を保持する形状保持性および残渣硬さに優れる。
【0090】
すなわち、本発明の硬化性組成物の硬化物は、10×10×2mmの試料硬化物を、空気中、600℃の雰囲気下で30分間燃焼させた後、燃焼残渣を速度2.0mm/sで持ち上げた場合であっても、持ち上げ前の燃焼残渣の体積に対する持ち上げ後の燃焼残渣の体積が50%以上残存するような形状保持性を有する。
【0091】
さらに、23℃50%RH雰囲気下、0.1cm/sの速度で圧縮し、3mm高さ時点の100mm2面積における荷重である残渣硬さは、0.80N/100mm2以上を有する。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、1液型若しくは2液型にすることもできるが、作業性の観点から1液型として用いることが好ましい。本発明の硬化性組成物は湿気硬化型であるため、塗布後、養生することで十分な耐火性を発揮することができる。
【0093】
本発明の硬化性組成物は、耐火性が要求される用途として用いることができ、例えば、接着剤、ポッティング材、コーティング材、シーリング材、粘着材、塗料、パテ材、及び/又はプライマー等として用いることができる。
【0094】
また、本発明の硬化性組成物は、当該硬化性組成物自体を耐火材として用いること、又は耐火性を有する部材に本発明の硬化性組成物を設けた耐火材として用いることもできる。本発明の硬化性組成物は、例えば、各種建築物等の構造物用、自動車用、土木用、各種電気・電子分野用等に適用できる。
【0095】
<耐火構造体形成工法>
本発明の硬化性組成物を用い、耐火構造体を形成できる。すなわち、本発明の耐火構造体形成工法は、構造物の表面の少なくとも一部に、本発明の硬化性組成物を塗布する塗布工程と、硬化性組成物を硬化させて硬化物にする硬化工程とを備える。
【0096】
一例として、本発明の硬化性組成物を含有するシーリング材と、耐火性を有する壁材とを組み合わせることで、燃焼性UL94規格に記載されているV-0級の耐火試験に合格し得る耐火構造体を形成できる。
【0097】
なお、本発明において構造物とは、複数の部材を用いて構成される建築物、建築物を構成する複数の部材自体、空調設備に用いる部材(排気ダクト等)、配電設備等の電気回線を有する部材、水道やガス管等を構成する部材、その他の火災・燃焼若しくは外部からの炎の延焼・類焼を防止することが要求される物体や部材等を含む。
【0098】
塗布工程は、例えば、耐火性を有する第1の構造部材(例えば、壁を構成する壁部材)と、第1の構造部材に組み合わされる第2の構造部材とが組み合わされる部分に本発明の硬化性組成物を塗布する工程である。
【0099】
また、構造部材が開口部を有する場合、開口部の内側に本発明の硬化性組成物を塗布することもできる。塗布工程後、硬化性組成物を硬化させることで、第1の構造部材と第2の構造部材とが組み合わされた部分に耐火性の硬化物が設けられる。
【0100】
なお、第1の構造部材の第2の構造部材が組合わされる領域に予め本発明の硬化性組成物を塗布し、硬化させておくこともできる。この場合、第1の構造部材の硬化物が設けられている領域を挟むように、第1の構造部材と第2の構造部材とが組み合わされ、一体化する。
【実施例0101】
以下、本発明の硬化性組成物、及び硬化物について、実施例を用いて詳細に説明する。
実施例の硬化性組成物を、表1のように材料を配合調製した。使用した材料は以下の通りである。なお比較例1、4は、表1のように材料を配合調製した後、170℃で加熱混合し、170℃にてプレス成型をした。表1において、各配合物質の配合量の単位は質量部である。
【0102】
[(A)成分]
1 架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体A1:製品名「アクトフローSE-09」(シリル基末端を有するアクリルポリマー)、綜研化学株式会社製
2 架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体A2:製品名「SA100S」(シリル基末端を有するアクリルポリマー)、株式会社カネカ製
3 塩素化塩化ビニル(CPVC)(特許文献1実施例1記載):製品名「耐熱カネビニールH711」、株式会社カネカ製
【0103】
[(B)成分]
1 熱膨張性黒鉛1:製品名「膨張黒鉛9532400A」(粒径大:+32mesh 75%以上、平均粒径500μmに該当、アスペクト比43.2)、伊藤黒鉛工業株式会社製
2 熱膨張性黒鉛2:製品名「GRAFGUARD180-60N」(平均粒径320μm、アスペクト比20.1)巴工業株式会社製
3 熱膨張性黒鉛3:製品名「GRAFGUARD200-100N」(平均粒径150μm、アスペクト比23.0)巴工業株式会社製
4 熱膨張性黒鉛4:製品名「GRAFGUARD220-50N」(平均粒径350μm、アスペクト比9.6)巴工業株式会社製
5 熱膨張性黒鉛5:製品名「GRAFGUARD160-50N」(平均粒径350μm、アスペクト比19.5)巴工業株式会社製
【0104】
[(C)成分]
1 (A)成分とは異なる、架橋性ケイ素基を1分子中に少なくとも1個含有する有機重合体:製品名「サイリルEST280」(シリル末端ポリマー)、株式会社カネカ製
[(D)成分]
1 エポキシ樹脂(ノボラック型):製品名「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル株式会社製
[(E)成分]
1 水酸化アルミニウム:製品名「アルモリックスB350」、巴工業株式会社製
【0105】
[硬化触媒]
1 硬化触媒:製品名「ネオスタンU-700ES」(ジブチル錫オキシドと正珪酸エチルとの反応生成物)、日東化成株式会社製
2 潜在性硬化剤:製品名「X12-812H」(メチルイソブチルケトン(MIBK)と3-アミノプロピルトリメトキシシランとの反応物)、信越化学工業株式会社製
【0106】
[充填剤]
1 炭酸カルシウム:製品名「ホワイトンSB青」、白石カルシウム株式会社製
2 炭酸カルシウム:製品名「カルファイン200」、丸尾カルシウム株式会社製
[脱水剤]
1 テトラエチルシリケート:製品名「エチルシリケート28P」、コルコート株式会社製
[可塑剤]
1 可塑剤:製品名「DINP」(フタル酸ジイソノニル)、株式会社ジェイ・プラス製
【0107】
【0108】
上記のように配合した硬化組成物について以下のように評価した。なお、評価は特に断りの無い限り、23℃50%RH雰囲気下で行った。
【0109】
<燃焼後の形状保持性>
表1記載の硬化性組成物を23℃50%RHで7日間養生し、硬化させ(以下、「硬化条件1」という。)、サイズが縦10mm×横10mm×厚さ2.0mmの硬化物を得た。ついで、この硬化物を電気炉(ヤマト科学株式会社製 品番:FO300型)内に載置し、空気中、600℃雰囲気下で30分間燃焼させた。燃焼後、電気炉内を23℃に保ち12時間放置した。その後、指で掴み、持ち上げて崩れやすさを目視で観察した。以下の基準で判断した。
P(PASS):崩れず持ち上げられ、燃焼残渣の体積が50%以上残存する。
F(FAIL):持ち上げた際崩れ、燃焼残渣の体積が50%未満しか残存しない。
【0110】
<膨張倍率>
形状保持性を観察した試料と同様にして試料を作製し、燃焼残渣の体積を算出した。体積は、23℃50%RH下で定規を用い、燃焼残渣のサイズ(縦、横、及び厚さ)を測定することにより算出した。なお、燃焼残渣に凹凸がある場合、凹部分と凸部分との平均値を測定結果にした。そして、以下の式のように、燃焼後の硬化物の体積(燃焼残渣の体積)を燃焼前の硬化物の体積で除すことにより、燃焼後の膨張倍率を算出した。3点で測定し、その平均を使用した。
燃焼後の膨張倍率=燃焼後の硬化物の体積/燃焼前の硬化物の体積
【0111】
<残渣硬さ>
形状保持性を観察した試料と同様にして試料を作製し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製 品番:RTF-2350)にて0.1cm/sの速度で圧縮した。3mm高さ時点の100mm2面積における荷重を測定し、残渣硬さとした。3点で測定し、その平均(Ave.)を使用した。レベルは下記の通り評価した。
RANK A:0.80N/100mm2以上
RANK B:0.40N/100mm2以上0.80N/100mm2未満
RANK C:0.40N/100mm2未満
【0112】
<接着性>
なお、接着性については、引張接着性試験(H型試験体)、及びはく離接着強さ試験で評価した。その結果、本発明はいずれも比較例よりも良好であり、実用的に問題の無いレベルであった。破壊状態も、本発明はいずれも凝集破壊が観察された。
【0113】
表1に示す試料の評価結果を、表2に示す。
【0114】
【0115】
表2の結果から明らかなように、(A)成分、(B)成分を含有する硬化組成物である本発明は、燃焼後の硬化物の体積が燃焼前の硬化物の体積の5倍を超えるような膨張倍率に設計した場合であっても、膨張した後の燃焼残渣が崩壊しづらく、膨張した状態を保持する形状保持性および残渣硬さに優れることが判る。
【0116】
また、実施例1と実施例2、7とを比較すると、成分C、Dのいずれかを含有させることで、これら成分C、Dのいずれかを含有させない場合よりも残渣形状保持性を維持しつつも、残渣硬さに優れているがわかる。
【0117】
さらに、実施例2、7と実施例3~6とを比較すると、成分C、D両方を含有させることで、これら成分C、Dのいずれかを含有させる場合よりも残渣形状保持性を維持しつつも、残渣硬さに優れていることがわかる。
【0118】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、燃焼残渣を持ち上げた場合であっても、持ち上げ前の燃焼残渣の体積に対する持ち上げ後の燃焼残渣の体積が50%以上残存するような形状保持性を有することが判る。