(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102693
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】メガホン
(51)【国際特許分類】
G10K 11/08 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
G10K11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217570
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】520514517
【氏名又は名称】株式会社インペックス
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
(57)【要約】
【課題】ホーンとしての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止することができるメガホンを提供する。
【解決手段】
所定の大きさ、所定の形状の口当て部と、この口当て部の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に所定の長さ伸びる拡声部と、この拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁によりメガホンを構成し、ホーンとしての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止するようにした。
同構成の場合、口当て部に口を当てて拡声部内の拡声口方向に声を出すと、拡声部を通して声が増強されると共に、増強された声の音圧変化に応じて拡声口部のシール壁が振動して目標方向に効率良く送音される。一方、同時に拡声部内には飛沫も排出される。しかし、シール壁は、同時に飛沫の排出を防止する。したがって、飛沫は外部に放出されない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の大きさ、所定の形状の口当て部と、この口当て部の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に所定の長さ伸びる拡声部と、この拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁とからなり、ホーンとしての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止できるようにしたことを特徴とするメガホン。
【請求項2】
口当て部、拡声部、シール壁を、それぞれ合成樹脂材により相互に一体に成形したことを特徴とする請求項1記載のメガホン。
【請求項3】
拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁が、空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材により形成されていることを特徴とする請求項1記載のメガホン。
【請求項4】
拡声部の内周面には、抗菌剤又は殺菌剤がコーティングされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のメガホン。
【請求項5】
拡声部の外周には、消毒剤の入った消毒剤容器を吊り下げる吊り下げ部が設けられていることを特徴とする請求項1、2,3又は4記載のメガホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、口からの飛沫の拡散が生じないようにしたメガホンの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サッカーや野球、ラグビーなどのスポーツ競技会場での応援、音楽ライブ会場での声援など、メガホンはサポーターやファンの思いをプレイヤーに伝える必須のアイテムである。しかし、最近の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、多くのイベントが、無観客か、又は相当に制限された人数での開催となっており、入場が許された場合にも会場内でのメガホンの使用は禁止されている。
【0003】
新型コロナウイルスなどの感染症ウイルスによる感染は人から人への飛沫感染が主原因とされており、人が大声を出したりすると、口から多量の飛沫(細かい水滴)が飛び散る。この飛沫中に感染症の原因となるウイルスや細菌が含まれていた場合、それを吸い込んだ相手が感染してしまうことになる。
【0004】
すなわち、従来のメガホンは、たとえば
図10に示すように、所定の直径、所定の長さの口当て部(吹き口部)1と、この口当て部1の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に所定の長さ伸びる拡声部(コーン部)2とからなっており、拡声部2先端の拡声口3は完全に外部に開放されている。また、口当て部1と拡声部2は、そのまま相互に連通している(たとえば特許文献1の構成を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示す従来のメガホンの構成の場合、口当て部1を口に当てて大声を出し、拡声部2を通して声を増強して目標方向に送音すると、拡声部2を介して増強された声が指向性を有して目標方向に効率良く届けられることになるが、それと同時に拡声口3から多量の飛沫(
図10中の仮想線を参照)が放出されることになる。上記メガホンの拡声部(コーン部)2は、三次元形状の単純な拡大コーンであり、先端側大径の拡声口3はそのまま外部に開口されている。
【0007】
そのため、大声に伴う所定圧以上の空気圧(音圧)を伴って拡声口3に達した飛沫流は、拡声口3を出た途端に周方向外方に拡散するようになり、拡声口3の周縁部(エッジ部)外側では壁面側へ逆流するカルマン渦が発生する。その結果、拡声口3を出た飛沫流がより周囲に拡散しやすくなる。したがって、観客席で大勢の観客がメガホンを使用すると、観客席全体に多量の飛沫が拡散し、飛沫感染の恐れが高くなる。
【0008】
この出願の発明は、このような課題を解決するためになされたもので、所定の大きさ、所定の形状の口当て部と、この口当て部の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に所定の長さ伸びる拡声部と、この拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁とからなり、ホーンとしての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止できるようにしたメガホンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願の発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0010】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この請求項1の発明の課題解決手段は、所定の大きさ、所定の形状の口当て部と、この口当て部の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に所定の長さ伸びる拡声部と、この拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁とからなり、ホーンとしての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止できるようにしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成の場合、口当て部に口を当てて拡声部内の拡声口方向に大声を出すと、拡声部を通して出された声が有効に増強(増幅)されると共に、増強された声の音圧周波数に応じて拡声口部の振動壁が振動して目標方向に効率良く送音される。そして、それと同時に拡声部内に口からの飛沫が放出されるが、拡声部先端の拡声口部には当該拡声口を塞ぎ、飛沫の排出を防止するシール壁が設けられている。
【0012】
したがって、大声に伴って拡声部内に流入した飛沫流は拡声部内に滞留し、やがて底部に落下する。したがって、従来のように、そのまま拡声口から外部に放出されて周方向外方に拡散するようなことはなくなる。その結果、このような構成のメガホンは、飛沫感染の心配をすることなく使用することができる。
【0013】
ところで、上記シール壁は、拡声部先端の拡声口部分ではなく、拡声部の途中に設けることも可能である。しかし、そのようにした場合、すでに述べた従来のメガホンと同様に拡声部先端の拡声口が開放されたものとなってしまう。したがって、たとえば使用者以外の第三者から見た場合、従来のメガホンと区別がつかず、飛沫が放出されるのではないかとの大きな不安を与えてしまう。そこで、以上のように敢えて拡声部先端側の拡声口部分に振動壁部を設けて、確実な飛沫防止機能を備えたメガホンであることを周囲の第三者にも明確に分かるようにしている。その意味では、シール壁部分は透明体でなく、口当て部および拡声部と同様のカラー部材であることが望ましい。
【0014】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この請求項2の発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、上記口当て部、拡声部、シール壁を、それぞれ合成樹脂材により相互に一体に成形したことを特徴としている。
【0015】
この合成樹脂材(たとえばポリエチレン等)による上記口当て部、拡声部、シール壁の一体成形は、上記口当て部、拡声部、シール壁の全体を一定の厚さにした成形構造、上記シール壁全体の厚さを上記口当て部および拡声部の厚さよりも薄くした成形構造、上記シール壁の厚さを基本的には上記口当て部、拡声部の厚さと同じ一定の厚さにするが、特にシール壁外周部における上記拡声部壁との連接部のみを部分的に薄くした成形構造などが採用される。
【0016】
そして、上記口当て部、拡声部、シール壁の全体を一定の厚さにした成形構造の場合には、拍子木としての強度を維持しながら、上記シール壁を送音用の振動板として利用するために、同シール壁が有効な振動性能を発揮し得る板厚に設定される。
【0017】
この成形構造の場合、上記シール壁の振動性能(送音性能)を考慮すると、厚さは薄い方が好ましい。この発明の課題解決手段の場合、従来のメガホンと異なって、拡声部先端の拡声口部分にシール壁が一体成形されており、完全な閉断面構造体となっている。したがって、上記口当て部、拡声部、シール壁の全体をシール壁の振動性能を考慮した通常よりも薄目の一定の厚さに成形したとしても、十分に強度の高いものとなり、それ自体の構成でも十分に有効な拍子木機能を得ることができる。したがって、軽量で、スポーツ応援グッズとしてのメガホンに適したものとなる。
【0018】
次に、上記シール壁の全体を上記口当て部および拡声部よりも薄くした成形構造の場合には、上記口当て部および拡声部部分で十分に拍子木に必要な強度を実現することができるし、相対的に薄いとは言え、シール壁が拡声口部全体を閉断面構造体に形成するので、同部分の強度がさらに向上する。しかも、その上で、厚さの薄いシール壁が有効に送音用の振動板として作用するので、送音性能も向上する。したがって、やはりスポーツ応援グッズとしてのメガホンに適したものとなる。
【0019】
次に、上記シール壁の厚さを基本的には上記口当て部、拡声部の厚さと同じ一定の厚さにするが、特にシール壁外周部における上記拡声部壁との連接部のみを部分的に薄くした成形構造の場合、基本的には、上記口当て部、拡声部、シール壁の全体を同じ一定の厚さに成形できるので、まず全体の強度を有効に向上させることができる。しかも、それでいながら、シール壁外周部における拡声部壁との連接部が部分的に薄くなっているので、相対的に厚さの厚いシール壁主板部分(振動板部分)が振動しやすくなり、より有効に声が増強される。したがって、メガホンとしての送音性能が高くなる。
【0020】
このような構成で一体成形すると、何れの成形構造の場合にも、拍子木としての使用を可能としながら、シール壁による有効な飛沫拡散防止機能、同シール壁の有効な振動板機能を実現することができ、拡声部で増幅された声の目標方向への送音性能を有効に向上させることができる。
【0021】
(3)請求項3の発明の課題解決手段
この請求項3の発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、拡声部先端の拡声口部に在って飛沫の排出を防止するシール壁が、空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材により形成されていることを特徴としている。
【0022】
空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材としては、種々のものの採用が可能である。たとえば、その一つとしてフッ素樹脂多孔質フィルム(PTFE多孔質フィルム)がある。フッ素樹脂は、引き延ばすことによってミクロな孔を作ることができ、1平方センチ当たり数億個のミクロの孔を形成することができる。しかも、その大きさを任意に調整することができ、ウイルス捕集に有効なナノサイズの孔径にすることも可能である。また、発水性が高く、水滴をはじく。そして、それによって、空気はスムーズに通過させる一方、水分は確実にカットするエアフィルタ部材を形成することができる。
【0023】
同エアフィルタ部材は、フッ素樹脂多孔質フィルム支持層の強度、剛性を高くすることによって、合成樹脂製メガホンの拡声口部内に嵌合し、固定するようにすることも容易である。
【0024】
すでに述べたように新型コロナウイルス(COVID-19)などの感染症ウイルスは、人の口から排出される飛沫中に混入されている。飛沫は微細ではあっても基本的に水滴である。したがって、飛沫は、上記フッ素樹脂多孔質フィルムを素材として構成したエアフィルタ部材により確実にカットすることができる。一方、上記フッ素樹脂多孔質フィルムは、分子的に小さい空気(酸素や窒素)は効率良く通過させる。したがって、口当て部で集音され、拡声部で増強された音圧振動を伴う空気は、当該エアフィルタ部材部分で大きく減衰することなく、同増強された音圧振動を伴ったまま効率良く外部に放出され、十分に高い指向性を持って目標とする部分に有効に届けられる。
【0025】
そのため、この発明の課題解決手段の場合には、上記請求項2の発明の課題解決手段の場合のように、ユーザーが発した声の音圧でシール壁を振動させて、間接的に声を外部に放出するのと異なり、拡声部で増強されたユーザーの声がシール壁がない従来のメガホンと同様の状態で目標位置に届けられるようになり、従来同様の臨場感にあふれた使用が可能となる。
【0026】
しかも、第三者から見れば、上記請求項2の発明の課題解決手段の場合と同様に、拡声部先端の拡声口部には確実にシール壁が設けられているのであるから、周囲の観客に飛沫拡散の不安を抱かせることもなくなる。
【0027】
このような空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材には、ほかにも、たとえば3次元多層構造のナノファイバーフィルタなどがあり、同様の作用を実現することができる。
【0028】
これら各エアフィルタ部材のフィルタ組織には、必要に応じてウイルスに対応した抗菌剤や、殺菌剤が混合される。そのようにすると、フィルタ組織で捕捉されたウイルが確実に不活性化され、より確実な感染防止機能を実現することができる。
【0029】
(4)請求項4の発明の課題解決手段
この請求項4の発明の課題解決手段は、上記請求項1、2又は3の発明の課題解決手段の構成において、拡声部の内周面には抗菌剤又は殺菌剤がコーティングされていることを特徴としている。
【0030】
このような構成によれば、拡声部の拡声空間内に滞留し、その後底部に落下した飛沫(細かな水滴)中のウイルスや細菌が抗菌剤又は殺菌剤の作用によって確実に不活性化される。したがって、より感染防止機能が高くなる。
【0031】
(5)請求項5の発明の課題解決手段
この請求項5の発明の課題解決手段は、上記請求項1、2、3又は4の発明の課題解決手段の構成において、拡声部の外周には、消毒剤の入った消毒剤容器を吊り下げる吊り下げ部が設けられていることを特徴としている。この消毒剤容器を吊り下げる吊り下げ部は、たとえば拡声部に一体成形することによって設けられる。そして、消毒剤容器には、たとえばスプレー方式の小型消毒剤容器が採用される。
【0032】
このような構成の場合、メガホンと一緒に消毒剤の入った消毒剤容器を携帯することができ、使用のたびにメガホン内に消毒剤を散布してメガホン内を消毒することができる。その結果、メガホン内に溜まった飛沫の消毒、殺菌を可能とすることができる。また、同消毒剤は、その他の一般的な消毒用途にも汎用的に使用することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上の結果、この出願の発明のメガホンによると、従来同様のホーンとしての有効な拡声機能、送音機能を維持しながら、さらに確実な飛沫拡散防止機能を実現することができ、従来使用できなかったスポーツ競技会場での応援や音楽ライブ会場での声援などでの使用が可能となる。そのため、これまで失われていた各種イベントのエンターテイメント性を回復させることができる。
【0034】
また、シール壁や拡声部の内面に抗菌機能又は殺菌機能を付加した場合、拡声部内で確実にウイルス等を不活性化することができ、より安全となる。
【0035】
さらに、メガホン本体に消毒剤の入った消毒剤容器を吊り下げる吊り下げ部を設けた場合、消毒剤の携帯が可能となり、より有効な感染防止機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】この出願の発明の実施の形態1に係るメガホンの拡声部側から見た斜視図である。
【
図2】同メガホンの中央部で上方から下方に切断した断面図である。
【
図3】同メガホンの使用状態における作用を示す説明図である。
【
図4】この出願の発明の実施の形態2に係るメガホンの中央部で上方から下方に切断した断面図である。
【
図5】この出願の発明の実施の形態3に係るメガホンの中央部で上方から下方に切断した断面図である。
【
図6】この出願の発明の実施の形態4に係るメガホンの中央部で上方から下方に切断した断面図である。
【
図7】この出願の発明の実施の形態5に係るメガホンの中央部で上方から下方に切断した断面図である。
【
図8】同メガホンの要部の構成を示す一部を切欠いた拡大側面図である。
【
図9】同メガホンにおいて使用される消毒剤スプレーの構成を示す正面図である。
【
図10】従来のメガホンの構成における問題点(飛沫拡散作用)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、
図1~
図9を参照して、この出願の発明を実施するための幾つかの形態に係るメガホンの構成について詳細に説明する。
【0038】
<実施の形態1>
先ず、
図1~
図3は、この出願の発明の実施の形態1に係るメガホンの構成および作用を示している。
【0039】
この実施の形態1に係るメガホンMは、口部を包み得るに十分な直径から、次第に直径を縮小する縮小コーン形状の口当て部1と、この口当て部1の先端から、次第に直径を拡大しながら送音方向に向けて所定の長さ伸びる拡大コーン形状の拡声部2と、この拡声部2先端の拡声口3を密閉する平板形状のシール壁(振動壁)4とからなり、ホーン(拡声手段)としての拡声機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止できるように構成されている。
【0040】
縮小コーン形状の口当て部1、拡大コーン形状の拡声部2、平板形状のシール壁4は、それぞれ所定の合成樹脂材(たとえばポリエチレン)により、全体に亘って同一の板厚で一体に成形されており、この実施の形態の場合には、一例として、スポーツ応援グッズとしての拍子木機能(強度)と拡声手段における拡声板としてのシール壁(振動板)4の有効な振動性能を考慮した最適な板厚に成形されている。
【0041】
この実施の形態の場合、一例として、上記拡大コーン形状の拡声部2の内周面2bおよびシール壁(振動板)4の内周面全体には、それぞれ必要に応じて、抗菌機能を持った抗菌剤又は殺菌機能を持った殺菌剤の何れかがコーティングされている。ここで使用される抗菌剤又は殺菌剤としては、たとえば可視光型の各種光触媒が採用されている。
【0042】
縮小コーン形状の口当て部1と拡大コーン形状の拡声部2との連接部は、所定の内外径の縊れ部5となっており、この縊れ部5およびこの縊れ部5から拡声部2の所定寸法先端寄り位置が使用時におけるメガホンMの通常の把持位置となっている。縊れ部5の内径は、口当て部1からの有効な集音機能、同口当て部1で集音された音声を拡声部2で効果的に拡声(増強)するに適した寸法に設定されている。
【0043】
このような構成の場合、たとえば
図3に示すように、口当て部1に口を当てて拡声部2先端の拡声口3方向に大声(応援メッセージ)を出すと、口当て部1内の集音空間1aで有効に集音された音声(仮想線矢印参照)が、縊れ部5を経て、拡声部2内の拡声空間2aに入り、同拡声空間2a部分でホーンの原理により効果的に増強(増幅)される。そして、同効果的に増強された音声がその音圧変化に応じて拡声口3部分におけるシール壁(振動板)4を振動させ、同シール壁(振動板)4を介して目標対象(送音対象)P方向に効率良く送音される。
【0044】
そして、それと同時に、上記口当て部1から拡声部2内に相当量の飛沫(細かい水滴)が放出されるが、この実施の形態の場合には、上記のように拡声部2先端の拡声口3部分には、上記のようにシール壁(振動板)4が設けられており、同シール壁(振動板)4によって拡声部2内の拡声空間2aが完全に密閉されている。
【0045】
したがって、大声に伴う所定圧以上の空気圧を伴って拡声部2内に流入した飛沫流は拡声部2の拡声空間2a内に滞留し、やがて内周面2bの底部に落下する。したがって、従来のメガホン(
図10参照)のように、そのまま拡声口3から外部に放出されて、周方向外方に拡散するようなことはなくなる。その結果、同構成のメガホンMは、飛沫感染の心配をすることなく使用することができる。
【0046】
しかも、この実施の形態の場合、一例として、上記拡声部2の内周面2bおよびシール壁(振動板)4の内面には、たとえば可視光型の光触媒よりなる抗菌剤又は殺菌剤がコーティングされている。したがって、上記拡声部2内に滞留し、その後底部に落下した飛沫(細かな水滴)中のウイルスや細菌が、同可視光型の光触媒よりなる抗菌剤又は殺菌剤の作用によって確実に不活性化される。したがって、より感染防止機能が高くなる。また、当該メガホンMのユーザーにとっても安全なものとなる。
【0047】
ところで、上記シール壁(振動板)4は、拡声部2先端の拡声口3部分ではなく、拡声部2の途中に設けることも可能である。しかし、そのようにした場合、すでに述べた従来のメガホン(
図10参照)と同様に拡声部2先端側の拡声口3が開放されたものとなってしまう。したがって、たとえば使用者以外の第三者から見た場合、従来のメガホンと区別がつかず、飛沫が放出されるのではないかとの大きな不安を与えてしまう。そこで、以上のように敢えて拡声部2先端側の拡声口3部分にシール壁(振動板)4を設けて、確実な飛沫防止機能を備えたメガホンであることを周囲の第三者にも明確に分かるようにしている。
【0048】
このような構成の場合、競技場やライブ会場だけでなく、ネット通販等の掲載ページ上でも容易に飛沫防止機能を備えたメガホンであることが分かるので、商品販売のための訴求力も向上する。
【0049】
そして、この実施の形態の場合、たとえば
図1および
図2から明らかなように、上記口当て部1、拡声部2、シール壁(振動板)4は、それぞれ所定の合成樹脂材(たとえばポリエチレン)を用いた一体成形によって、全体が共通な一定の板厚となるように形成されている。したがって、成形は容易である。
【0050】
しかし、このように、口当て部1、拡声部2、シール壁(振動板)4の全体を一定の厚さに成形する場合には、シール壁(振動板)4の有効な振動性能(音響振動板としての振動性能)を発揮できるような寸法(厚さ)に設定することが必要である。そうでないと、飛沫感染は防止することができても、肝心なメガホンとしての有効な拡声機能、送音機能を実現することができない。このメガホンとしての拡声機能、送音機能実現の見地からは、所定厚さ以上に薄いことが望ましい。しかし、応援グッズとしてのメガホンは、拍子木として使用されることも多く、所定レベル以上の強度も必要である。
【0051】
そこで、この実施の形態では、拍子木としての使用を可能としながらも、確実にシール壁(振動板)4の有効な振動性能を実現することができる、可能な限り板厚の薄い成形体としている。この実施の形態の場合、上記振動壁部4の振動性能を考慮して、口当て部1、拡声部2、シール壁(振動板)4の全体を通常よりも薄目の一定の厚さに成形したとしても、従来のメガホンの構成(
図10参照)と違って、拡声口3がシール壁(振動板)4によって完全に閉じられているので、拡声部2全体が閉断面構造体となって変形しにくく、それ自体の構成でも十分に有効な強度を得ることができるようになっている。
【0052】
したがって、拍子木に対応した強度も実現し、かつシール壁(振動板)4の有効な振動性能も実現することができ、軽量、かつ安価で、スポーツ応援グッズとしてのメガホンに適している。
【0053】
<実施の形態2>
次に、
図4は、この出願の発明の実施の形態2に係るメガホンの構成を示している。
【0054】
この実施の形態2に係るメガホンMは、上記実施の形態1におけるメガホンMの構成において、口当て部1および拡声部2の厚さを厚くすることによりメガホンM全体の強度を向上させる一方、シール壁(振動板)4の厚さをより薄くすることによって、より振動しやすくしたことを特徴としている。
【0055】
このような構成によると、メガホンMの拍子木としての強度が十分に高くなると共に、シール壁(振動板)4の一層有効な振動性能(音響振動板としての振動性能)を実現することができ、また、拡声部2で増強された音声の目標対象方向への送音性能がより有効に向上する。
【0056】
<実施の形態3>
次に、
図5は、この出願の発明の実施の形態3に係るメガホンの構成を示している。
【0057】
この実施の形態3に係るメガホンMは、上記実施の形態1におけるメガホンMの構成と同様に、シール壁(振動板)4の厚さを、基本的には口当て部1、拡声部2の厚さと同じ一定の厚さに成形しているが、同シール壁(振動板)4の厚さを同シール壁(振動板)4外周部における拡声口3内周壁との連接部4aでは部分的に薄く成形したことを特徴としている。
【0058】
このような成形構造の場合、基本的には、上記口当て部1、拡声部2、シール壁(振動板)4の全体を同じ一定の厚さに成形できるので、まずメガホン全体の強度を有効に向上させることができる(拍子木機能向上)。しかも、それでいながら、シール壁(振動板)4外周部における拡声口3内周壁との連接部4aが部分的に薄くなっているので、相対的に厚さの厚いシール壁(振動板)4主板部分(振動板部分)が振動しやすくなり、より有効に声が増強される。したがって、メガホンとしての送音性能が高くなる。
【0059】
<実施の形態4>
次に、
図6は、この出願の発明の実施の形態4に係るメガホンの構成を示している。
【0060】
この実施の形態4に係るメガホンMは、
図6に示すように、口部を包み得るに十分な直径から次第に直径を縮小する縮小コーン形状の口当て部1と、この口当て部1の先端から次第に直径を拡大しながら送音方向に向けて所定の長さ伸びる拡大コーン形状の拡声部2と、この拡声部2先端の拡声口3内に嵌合固定された空気は通すがウイルス類は通さないエアフィルタ部材よりなるシール壁14とからなり、空気は通すがウイルス類は通さないエアフィルタ部材よりなるシール壁14のフィルタおよびシール機能によって、ホーン(拡声手段)としての拡声機能、送音機能を低下させることなく、外部への飛沫の拡散を防止するように構成されている。
【0061】
すなわち、この実施の形態の場合、縮小コーン形状の口当て部1、拡大コーン形状の拡声部2部分は、実施の形態1の場合と同様に、所定の合成樹脂材(たとえばポリエチレン)により、全体に亘って同一の板厚で一体に成形されている。しかし、拡声部2先端側の拡声口3部分において拡声部2内を密閉する合成樹脂製のシール壁(振動板)4は一体に成形されておらず、代わりに、空気は通すがウイルス類は通さないエアフィルタ部材よりなるシール壁14が嵌合固定されている。そして、この空気は通すがウイルス類は通さないエアフィルタ部材よりなるシール壁14によって、拡声部2先端の拡声口3からの飛沫の拡散を確実に防止するようになっている。
【0062】
空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材としては、種々のものの採用が可能である。たとえば、その一つとしてフッ素樹脂多孔質フィルム(PTFE多孔質フィルム)がある。フッ素樹脂は、引き延ばすことによってミクロな孔を作ることができ、1平方センチ当たり数億個のミクロの孔を形成することができる。しかも、その大きさを任意に調整することができ、ウイルス捕集に有効なナノサイズの孔径にすることも可能である。また、発水性が高く、水滴をはじく。そして、それによって、空気はスムーズに通過させる一方、水分は確実にカットするエアフィルタ部材を形成することができる。
【0063】
しかも、同エアフィルタ部材は、フッ素樹脂多孔質フィルム支持層の強度、剛性を高くすることによって、合成樹脂製メガホンの拡声口3内にシール性良く嵌合し、固定することも容易である。たとえば拡声口3の内壁面に嵌合用のリング溝を形成し、同リング溝内に円板状のシール壁14の外周端をシール用の接着剤を介して嵌め込めば、容易にシール状態で嵌合固定することができる。
図6の構成は、そのようにして固定したものである。
【0064】
すでに述べたように新型コロナウイルス(COVID-19)などの感染症ウイルスは、人の口から排出される飛沫中に混入されている。飛沫は微細ではあっても基本的に水滴である。したがって、飛沫は、上記フッ素樹脂多孔質フィルムを素材として構成したエアフィルタ部材により確実にカットすることができる。一方、上記フッ素樹脂多孔質フィルムは、分子的に小さい空気(酸素や窒素)は効率良く通過させる。したがって、口当て部1で集音され、拡声部2で増強された音圧振動を伴う空気は、当該シール壁14のエアフィルタ部材部分で大きく減衰することなく、同増強された音圧振動を伴ったまま効率良く外部に放出され、十分に高い指向性を持って目標とする部分に有効に届けられる。
【0065】
そのため、この実施の形態4のメガホンの場合には、上記実施の形態1~3のメガホンのように、ユーザーが発した声の音圧でシール壁(振動板)4を振動させて、間接的に声を外部に放出するのと異なり、拡声部2で増強されたユーザーの声がシール壁がない従来のメガホンと同様の状態で目標位置に届けられるようになり、従来同様の臨場感にあふれた使用が可能となる。
【0066】
しかも、第三者から見れば、上記実施の形態1~3の場合と同様に、拡声部2先端の拡声口3部分には外観的に同様のシール壁14が設けられているのであるから、周囲の観客に飛沫拡散の不安を抱かせることもなくなる。
【0067】
このような空気を通すがウイルス類を通さないエアフィルタ部材には、ほかにも、たとえば3次元多層構造のナノファイバーフィルタなどがあり、同様の作用を実現することができる。
【0068】
これら各エアフィルタ部材のフィルタ組織には、必要に応じてウイルスに対応した抗菌剤や、殺菌剤が混合される。そのようにすると、フィルタ組織で捕捉されたウイルが確実に不活性化され、より確実な感染防止機能を実現することができる。
【0069】
<実施の形態5>
次に、
図7~
図9は、この出願の発明の実施の形態5に係るメガホンの構成を示している。
【0070】
この実施の形態5に係るメガホンMは、上記実施の形態1におけるメガホンMの構成において、拡声部2の外周壁部分に消毒剤の入った消毒剤容器9を吊り下げる吊り下げ部6を設けたことを特徴としている。
【0071】
消毒剤容器9を吊り下げる吊り下げ部6は、たとえば
図7に示すように、コーン形状の拡声部2の外周壁基端側部分に一体成形されたリング状の紐通し部(紐通し穴)によって構成されている。そして、この紐通し部よりなる消毒剤容器吊り下げ部6に対しては、たとえば
図8に示すような巾着構造の消毒剤容器収納袋8が吊り下げ紐7を介して吊り下げられ、同吊り下げ紐7の下端で消毒剤容器収納袋8の口部8aを開閉可能に閉じるようになっている。
【0072】
この実施の形態の場合、消毒剤容器収納袋8に収納される消毒剤容器としては、たとえば
図9に示すような消毒剤スプレー9が採用されている。この消毒剤スプレー9は、エタノール等の外皮用殺菌消毒剤(第3類医薬品)を収納したプラスチック製の容器本体9aと、この容器本体9a上部の開口部に着脱可能に固定され、内部に消毒剤吸い上げチューブを備えたポンプユニット9bと、このポンプユニット9bを容器本体9a上部の開口部に対して着脱可能に螺合固定しているポンプユニット取付キャップ9cと、ポンプユニット9bのポンプ部をON,OFF操作する操作部9dと、操作部9dの上端位置正面に設けられた消毒剤吐出部(吐出孔)9eと、操作部9dおよびポンプユニット9bの上端部分に着脱可能に冠合されるシールキャップ11とからなっている。なお、符号10は容器本体9aの製品名(薬剤名)等を表示したラベル部である。
【0073】
そして、上記シールキャップ11を取り(上方に外し)、操作部9dを下方に押すと、消毒剤吐出部9eから消毒剤(エタノール)が霧吹き状態で吐出され、メガホンMの内部、又は手や指を消毒することができる。この消毒剤スプレー9は、たとえば直径3cm、高さ8cm程度のコンパクトなものであり、60mL程度のエタノールが容器本体9a内に収容されている。
【0074】
このような構成の場合、上記消毒剤容器収納袋8を利用して、メガホンM自体に消毒剤スプレー9を吊り下げることができ、常時携帯することができる。したがって、常に消毒機能をも維持することができるようになり、よりウイルス等に対する感染予防効果が高くなる。特に、一定時間使用したメガホンMの内部には、飛沫が溜まるので、これを殺菌消毒するのに適している。
【0075】
もちろん、この消毒剤スプレー9の収納手段は、上記のような収納袋構造に限らず、種々の変更が可能である。
【0076】
<実施の形態6>
以上の実施の形態1~5の構成では、何れの場合にも、口当て部1の構成をユーザーの口の周りを覆うに十分な直径の円形コーン型のもので構成した。しかし、この口当て部1の構成、特に形状及び大きさは、たとえば高精度に口部の形状にフィットするような形状及び大きさ、また医療用の人工呼吸器に見られるような口及び鼻の全体を覆うようなものとすることもできる。また、口部に当たる部分の素材を柔らかく、ソフトなものにするなど、種々の変形が可能である。
【0077】
そのようにすると、より確実に飛沫の漏れを解消することができ、また使用感が向上する。
【0078】
<この出願の発明の実施の形態に係るメガホンの特徴>
以上の結果、この出願の発明の実施の形態に係るメガホンによると、従来同様のホーンとしての拡声機能、送音機能を維持しながら、さらに確実な飛沫拡散防止機能を実現することができ、従来使用できなかったスポーツ競技会場での応援や音楽ライブ会場での声援などでの使用が可能となる。
【0079】
そのため、これまで失われていた各種イベントのエンターテイメント性を有効に回復させることができる。
【0080】
また、拡声部の内周面に抗菌剤又は殺菌剤をコーティングした場合、拡声部内でウイルス等を殺菌又は不活性化処理することができ、より安全となる。
【0081】
さらに、メガホン本体に消毒剤の入った消毒剤容器を吊り下げる吊り下げ部を設けた場合、消毒液の携行が可能となり、より有効な感染防止機能を付加することができる。
【符号の説明】
【0082】
1は口当て部、1aは集音空間、2は拡声部、2aは拡声空間、2bは拡声部内周面、3は拡声口、4はシール壁(振動板)、5は縊れ部、6は消毒剤吊り下げ部、7は消毒剤吊り下げ紐、8は消毒剤収納袋、9は消毒剤スプレー、14はエアフィルタ部材よりなるシール壁、Mはメガホンである。