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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102703
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】炭化水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/04 20060101AFI20220630BHJP
   C07C 9/02 20060101ALI20220630BHJP
   C07C 9/14 20060101ALI20220630BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20220630BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20220630BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20220630BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20220630BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20220630BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20220630BHJP
   B01J 23/94 20060101ALI20220630BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
C07C1/04
C07C9/02
C07C9/14
B01J38/02
B01J38/10 B
B01J38/12 B
C01B32/40
B01J23/72 M
B01J23/78 Z
B01J23/94 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217588
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 行寛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】梶田 琢也
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JB10
4G146JC01
4G146JC23
4G146JD02
4G169AA03
4G169AA10
4G169BB04A
4G169BC01A
4G169BC08A
4G169BC31A
4G169BC66A
4G169CB81
4G169CC23
4G169DA06
4G169EE07
4G169EE09
4G169GA01
4G169GA05
4G169GA06
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006AC29
4H006BA02
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA19
4H006BA24
4H006BA26
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA84
4H006BC10
4H006BD81
4H006BD84
4H006BE30
4H039CA10
4H039CB20
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】FT法による反応に用いられる触媒の寿命を延ばす新たな技術を提供する。
【解決手段】炭化水素製造方法は、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第1の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第1の反応工程と、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第2の反応器に、ガスを供給し炭化水素を製造する第2の反応工程と、第1の反応器へのガスの供給を停止し、該第1の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第1の再生工程と、第2の反応器へのガスの供給を停止し、該第2の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第2の再生工程と、を含む。第1の再生工程及び第2の再生工程は、互いが異なる期間で実行される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FT法(Fischer-Tropsch process)による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第1の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第1の反応工程と、
FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第2の反応器に、前記ガスを供給し炭化水素を製造する第2の反応工程と、
前記第1の反応器への前記ガスの供給を停止し、該第1の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第1の再生工程と、
前記第2の反応器への前記ガスの供給を停止し、該第2の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第2の再生工程と、を含み、
前記第1の再生工程及び前記第2の再生工程は、互いが異なる期間で実行されることを特徴とする炭化水素製造方法。
【請求項2】
前記第2の再生工程は、前記第1の反応工程が実行されている期間と重複して実行され、
前記第1の再生工程は、前記第2の反応工程が実行されている期間と重複して実行されていることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素製造方法。
【請求項3】
前記第1の再生工程が実行されている期間と前記第2の再生工程が実行されている期間との間に、前記第1の反応工程及び前記第2の反応工程の少なくとも一方が実行されていることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素製造方法。
【請求項4】
前記第1の再生工程及び前記第2の再生工程の少なくとも一方は、
前記FT触媒の温度を300~400℃に昇温する昇温工程と、
昇温した前記FT触媒に酸素を含むガスを接触させ、堆積したコークを燃焼する燃焼工程と、
燃焼した前記FT触媒を水素と接触させて還元する還元工程と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭化水素製造方法。
【請求項5】
前記FT触媒は、鉄及び酸化鉄のうち少なくとも一方を含む担体と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であって、前記担体に添加される添加金属と、を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炭化水素製造方法。
【請求項6】
前記第1の反応器及び前記第2の反応器は、水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する逆シフト触媒を更に収容し、
前記逆シフト触媒は、銅及び酸化銅のうち少なくとも一方を含有し、
前記FT触媒の上流側に前記逆シフト触媒が充填されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の炭化水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス等に含まれる二酸化炭素を有効利用する方法として、二酸化炭素と水素から、エネルギー密度の高い液状の炭化水素を触媒の存在下で生成させることが検討されている(例えば特許文献1)。また、水素と一酸化炭素とを用いて炭化水素を生成する方法として、フィッシャートロプシュ法(Fischer-Tropsch process:以下、適宜「FT法」という。)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-80309号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Energy & Fuels, Vol. 23, 4195(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FT法に用いられる触媒は、主にコバルト、ルテニウム、鉄といった金属を含有する。また、FT法における触媒反応において、触媒上にコークが析出することがある。この場合、触媒活性が低下し触媒寿命の低下を招くことになる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、FT法による反応に用いられる触媒の寿命を延ばす新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の炭化水素製造方法は、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第1の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第1の反応工程と、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第2の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第2の反応工程と、第1の反応器へのガスの供給を停止し、該第1の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第1の再生工程と、第2の反応器へのガスの供給を停止し、該第2の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第2の再生工程と、を含む。第1の再生工程及び第2の再生工程は、互いが異なる期間で実行される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、FT法による反応に用いられる触媒の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る反応装置を含む触媒システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2(a)~図2(d)は、本実施の形態に係る炭化水素製造方法を説明するための模式図である。
図3】各反応器にガスが導入されるタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、FT法を用いた炭化水素製造装置におけるFT触媒の寿命について説明する。通常のFT法を用いた炭化水素製造装置は、スラリー床又は固定床を用いている。FT触媒が劣化したとき、スラリー床を用いた場合は劣化したFT触媒の分を補填するために新たなFT触媒を投入している。一方、固定床を用いた場合は劣化したFT触媒を交換するためには、製造装置を停止させる必要がある。そのため、製造装置停止期間の分、炭化水素製造量が減少するというデメリットが生じていた。
【0011】
そこで、本願発明者らが鋭意検討した結果、固定床を用いた場合において、炭化水素製造装置のダウンタイムを増やさずにFT触媒の寿命を向上する新たな技術に想到した。
【0012】
次に、本発明の態様を列挙する。本発明のある態様の炭化水素製造方法は、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第1の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第1の反応工程と、FT法による反応により炭化水素を生成するFT触媒を収容する第2の反応器に、一酸化炭素と水素とを含むガスを供給し炭化水素を製造する第2の反応工程と、第1の反応器へのガスの供給を停止し、該第1の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第1の再生工程と、第2の反応器へのガスの供給を停止し、該第2の反応器が収容するFT触媒の性能を再生する第2の再生工程と、を含む。第1の再生工程及び第2の再生工程は、互いが異なる期間で実行される。
【0013】
この態様によると、第1の反応器と第2の反応器に含まれるFT触媒の性能を交互に再生することができる。その結果、複数の反応器を用いた炭化水素製造装置において、装置の停止期間を極力抑えながら、FT触媒の寿命を延ばすことができる。ここで、触媒の性能とは、触媒反応により炭化水素が生成される効率として把握できるが、例えば、活性の高低としても規定できる。そして、触媒の性能の再生の一例としては、FT法による反応により生じた目的外生成物(例えばコーク)がFT触媒表面を覆うことにより低下した活性を上げることでもある。
【0014】
第2の再生工程は、第1の反応工程が実行されている期間と重複して実行され、第1の再生工程は、第2の反応工程が実行されている期間と重複して実行されていてもよい。第2の再生工程が実行されている期間も、第1の反応工程が実行されているため、複数の反応器を用いた炭化水素製造装置において、炭化水素を生成し続けながら、一部の反応器の触媒を再生できる。同様に、第1の再生工程が実行されている期間も、第2の反応工程が実行されているため、複数の反応器を用いた炭化水素製造装置において、炭化水素を生成し続けながら、一部の反応器の触媒を再生できる。
【0015】
第1の再生工程が実行されている期間と第2の再生工程が実行されている期間との間に、第1の反応工程及び第2の反応工程の少なくとも一方が実行されていてもよい。これにより、炭化水素を常に生成しながら反応器内のFT触媒の再生を実行できる。
【0016】
第1の再生工程及び第2の再生工程の少なくとも一方は、FT触媒の温度を300~400℃に昇温する昇温工程と、昇温したFT触媒に酸素を含むガスを接触させ、堆積したコークを燃焼する燃焼工程と、燃焼したFT触媒を水素と接触させて還元する還元工程と、を含んでもよい。これにより、FT触媒を反応器から出さずに再生できる。
【0017】
FT触媒は、鉄及び酸化鉄のうち少なくとも一方を含む担体と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であって、担体に添加される添加金属と、を含んでもよい。
【0018】
第1の反応器及び第2の反応器は、水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する逆シフト触媒を更に収容し、逆シフト触媒は、銅及び酸化銅のうち少なくとも一方を含有してもよい。FT触媒の上流側に逆シフト触媒が充填されていてもよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。また、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、同一の部材であっても、各図面間で縮尺等が若干相違する場合もあり得る。また、本明細書又は請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0021】
(触媒システム)
はじめに、本実施の形態に係る反応装置を用いて炭化水素を製造する触媒システムの一例について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る反応装置を含む触媒システムの概略構成を示す模式図である。図1に示す触媒システム10は、上流側に配置された逆シフト反応装置12と、逆シフト反応装置12の下流側に配置されたFT反応装置14と、を備える。
【0022】
逆シフト反応装置12は、上流側から水素と二酸化炭素を含む原料ガスが導入され、収容されている逆シフト触媒を用いて、逆シフト反応により二酸化炭素から一酸化炭素が生成される。FT反応装置14は、逆シフト反応装置12で生成された一酸化炭素と、水素を含むガスが導入され、収容されているFT触媒を用いて、FT法による反応によりガス状あるいは液状の炭化水素が生成される。
【0023】
FT反応装置14は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンといった炭素数1~4のガス状の炭化水素であるCH、C2-C4成分と、炭素数5以上の炭化水素であって、常圧で液状の油分成分であるC5+成分(例えば、直鎖アルカンにおいて炭素数nが5以上の成分)とを生成し、ガス成分と油分とを気液分離し、場合によっては分留することで、所望の成分を抽出することができる。
【0024】
以下の各実施の形態で説明する反応装置は、前述のFT反応装置14に相当する。なお、各実施の形態に係る反応装置は、逆シフト反応装置12とFT反応装置14とが一体となった反応装置であってもよい。
【0025】
図2(a)~図2(d)は、本実施の形態に係る炭化水素製造方法を説明するための模式図である。図3は、各反応器にガスが導入されるタイミングを示す図である。図2(a)~図2(d)に示すように、本実施の形態に係るFT反応装置14は、複数の反応器14a,14bとを備える。反応器14a,14bは、図2(a)に示す状態(図3の時間T)では、一酸化炭素と水素とを含むガスが供給され、炭化水素を製造する第1の反応工程及び第2の反応工程が行われている。
【0026】
第1の反応工程や第2の反応工程においては、炭化水素を製造する際にコークが生成されることがあり、コークがFT触媒に堆積することで、FT触媒の性能を低下させることがある。この場合、FT触媒を再生させる必要があるが、FT反応装置14全体を停止することはなるべく避けたい。
【0027】
そこで、図2(b)に示すように、複数の反応器のうち、一部の反応器14bへの一酸化炭素と水素とを含むガス(以下、適宜「原料ガス」という。)の供給を停止する(時間T)。その際、原料ガスの反応器14aへの供給は継続し、第1の反応工程は継続する。これにより、FT反応装置14としては炭化水素を製造し続けることができる。
【0028】
その後、反応器14bのFT触媒の温度を300~400℃まで昇温し(昇温工程)、時間Tにおいて反応器14bに酸素又は空気(以下、適宜「酸素含有ガス」という。)を供給し、昇温したFT触媒に酸素含有ガスを接触させ、堆積したコークを燃焼する(燃焼行程)。次に、時間Tにおいて酸素含有ガスの供給を停止し、時間Tにおいて反応器14bに水素を供給し、燃焼したFT触媒を水素と接触させて還元する(還元工程)。そして、時間Tにおいて水素の供給を停止し、時間Tにおいて原料ガスを再度反応器14bに供給し、第2の反応工程を再開する(図2(c)参照)。
【0029】
これにより、堆積したコークによって活性が低くなったFT触媒の活性が再び高められ、FT触媒を反応器14bから出さずに再生できる。なお、第2の反応工程が実行されていない時間T~Tの期間において実行される、反応器14bが収容するFT触媒の性能の再生が第2の再生工程に相当する。
【0030】
次に、図2(d)に示すように、複数の反応器のうち、一部の反応器14aへの原料ガスの供給を停止する(時間T)。その際、原料ガスの反応器14bへの供給は継続し、第2の反応工程は継続する。これにより、FT反応装置14としては炭化水素を製造し続けることができる。
【0031】
その後、反応器14aのFT触媒の温度を300~400℃まで昇温し(昇温工程)、時間Tにおいて反応器14aに酸素含有ガスを供給し、昇温したFT触媒に酸素含有ガスを接触させ、堆積したコークを燃焼する(燃焼行程)。次に、時間Tにおいて酸素含有ガスの供給を停止し、時間T10において反応器14aに水素を供給し、燃焼したFT触媒を水素と接触させて還元する(還元工程)。そして、時間T11において水素の供給を停止し、時間T12において原料ガスを再度反応器14aに供給し、第1の反応工程を再開する(図2(a)参照)。以後、図2(a)~図2(d)の工程が適宜繰り返される。
【0032】
これにより、堆積したコークによって活性が低くなったFT触媒の活性が再び高められ、FT触媒を反応器14aから出さずに再生できる。なお、第1の反応工程が実行されていない時間T~T12の期間において実行される、反応器14aが収容するFT触媒の性能の再生が第1の再生工程に相当する。
【0033】
上述のように、本実施の形態に係る炭化水素製造方法は、反応器14aへのガスの供給を停止し、反応器14aが収容するFT触媒の性能を再生する第1の再生工程と、反応器14bへのガスの供給を停止し、反応器14bが収容するFT触媒の性能を再生する第2の再生工程と、を含む。そして、第1の再生工程及び第2の再生工程は、互いが重複しないように異なる期間で実行される。
【0034】
これにより、反応器14aと反応器14bに含まれるFT触媒の性能を交互に再生することができる。その結果、複数の反応器を用いた炭化水素製造装置であるFT反応装置14において、装置の停止期間を極力抑えながら、FT触媒の寿命を延ばすことができる。
【0035】
第2の再生工程は、第1の反応工程が実行されている期間(時間T~T)と重複して実行され、第1の再生工程は、第2の反応工程が実行されている期間(時間T~T12)と重複して実行されている。第2の再生工程が実行されている期間(時間T~T)も、第1の反応工程が実行されているため、複数の反応器を用いたFT反応装置14において、炭化水素を生成し続けながら、一部の反応器14bの触媒を再生できる。同様に、第1の再生工程が実行されている期間(時間T~T12)も、第2の反応工程が実行されているため、複数の反応器を用いたFT反応装置14において、炭化水素を生成し続けながら、一部の反応器14aの触媒を再生できる。
【0036】
また、本実施の形態に係る炭化水素製造方法では、第1の再生工程が実行されている期間(時間T~T12)と第2の再生工程が実行されている期間(時間T~T)との間に、第1の反応工程及び第2の反応工程が実行されている(例えば時間T~T)。これにより、炭化水素を常に生成しながら反応器14a,14b内のFT触媒の再生を実行できる。
【0037】
また、本実施の形態に係る反応器14a,14bは、FT触媒のみを収容しているが、FT触媒の上流側に逆シフト触媒が充填されていてもよい。この場合、原料ガスには二酸化多炭素を含ませればよい。
【0038】
なお、FT反応装置14が備える反応器の数は上述のような2つに限られず、3つ以上であってもよい。また、全体の反応容器の数がN(Nは2以上の整数)であれば、再生工程を行う反応容器の数はN-1以下であればよく、必ずしも1つでなくてよい。
【0039】
逆シフト触媒は、金属銅、若しくは酸化銅(CuO)、又はこれらの両方を含有してもよい。銅系触媒体が触媒として機能する間、銅系触媒体は少なくとも金属銅を含む。そのため、触媒は、反応に用いられる前に還元処理される。還元処理前の銅系触媒体は、酸化銅を含むことが多い。
【0040】
銅系触媒体における銅成分の含有量は、銅系触媒体に含まれる銅成分の量を全て金属銅の量に換算したときに、銅系触媒体全体の質量を基準として、20~100質量%であることが好ましい。
【0041】
銅系触媒体は、酸化亜鉛(ZnO)を更に含有していてもよい。銅系触媒体が酸化亜鉛を含有することにより、液状の炭化水素をより一層効率的に生成させることができる。銅系触媒体に含まれる銅元素の量を全て酸化銅の量に換算したときに、酸化亜鉛の量の割合が、酸化銅と酸化亜鉛の合計量を基準として、10~70質量%であることが好ましく、20~50質量%であることが更に好ましい。
【0042】
逆シフト触媒は、ロジウム、白金、又は鉄-クロムからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有していてもよい。これらの金属を含有することにより、原料ガスに含まれる二酸化炭素から更に効率よく一酸化炭素を生成できる。
【0043】
銅系触媒体は、銅成分を担持する担体を更に含有してもよい。銅系触媒体が酸化亜鉛を含有する場合、通常、酸化亜鉛も担体に担持される。担体は、例えばγ-アルミナ等のアルミナであることが好ましい。銅系触媒体における担体の含有量は、銅の含有量、酸化亜鉛の含有量及びアルミナの含有量の合計を基準として、例えば0.5~60質量%であり、好ましくは1~50質量%、更に好ましくは1~40質量%である。ここでの銅の含有量は、銅系触媒体に含まれる銅成分の量を全て金属銅の量に換算した量を意味する。
【0044】
銅成分と酸化亜鉛を含有する銅系触媒体は、例えば、銅と亜鉛を含む沈殿物を共沈法により生成させる工程と、生成した沈殿物を焼成する工程とを含む方法によって得ることができる。沈殿物は、例えば、銅と亜鉛の水酸化物、炭酸塩又はこれらの複合塩を含む。銅と亜鉛を含む沈殿物を担体(例えばアルミナ)を含む溶液からの共沈法によって生成させることにより、銅成分、酸化亜鉛と担体を含有する銅系触媒体を得ることができる。
【0045】
焼成によって形成された、銅成分と酸化亜鉛を含有する焼成体を、粉体化してもよく、更に粉体を成形して粒状の成形体を形成してもよい。粉体を成形する方法の例としては、押出成形と錠剤成形が挙げられる。焼成体の粉体とカーボンブラックを含む混合物を成形して、成形体を得ることもできる。
【0046】
FT触媒は、金属鉄、酸化鉄又はこれらの両方を含む鉄成分と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属とを含有する鉄系触媒体が好ましい。また、FT触媒は、鉄成分以外に銅成分を含んだ鉄系触媒体-銅系触媒体であってもよい。鉄系触媒体が触媒として機能する間、通常、鉄系触媒体は少なくとも金属鉄を含む。そのため、触媒は、通常、反応に用いられる前に還元処理される。還元処理前の鉄系触媒体は、通常、酸化鉄(例えばFeやFe)を含む。
【0047】
鉄系触媒体における鉄成分の含有量は、鉄系触媒体に含まれる鉄成分の量を全て酸化鉄の量に換算したときに、鉄系触媒体全体の質量を基準として、5~100質量%であることが好ましい。
【0048】
添加金属は、アルカリ金属から任意に選択される1種以上を含む。例えば、添加金属が、ナトリウム、カリウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。当然、添加金属が2種以上であってもよい。添加金属が、ナトリウム、カリウム、又はセシウムを含むことにより、液状の炭化水素をより一層効率的に生成させることができる。
【0049】
鉄系触媒体における添加金属の含有量は、鉄系触媒体のうち添加金属以外の部分の量を基準として、0.2~40質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。添加金属がナトリウムを含む場合、鉄系触媒体におけるナトリウムの含有量が、0.2~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。添加金属がカリウムを含む場合、鉄系触媒体におけるカリウムの含有量が、0.2~40質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。添加金属がセシウムを含む場合、鉄系触媒体におけるセシウムの含有量が、0.2~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。添加金属の含有量が上記範囲内であると、一酸化炭素から炭化水素への転化率がより向上する傾向がある。
【0050】
鉄系触媒体は、例えば、Fe3+を含有する水溶液から三価の鉄を含む水酸化物の沈殿物を生成させる工程と、沈殿物を焼成して酸化第二鉄を含有する粉体を形成する工程と、粉体を添加金属を含む水溶液に混ぜて、次いで添加金属を含む水溶液を乾燥させる工程とを含む方法によって、得ることができる。
【0051】
酸化第二鉄を含有する粉体を更に成形して粒状の成形体を形成してもよい。粉体を成形する方法の例としては、押出成形及び錠剤成形が挙げられる。焼成体の粉体とカーボンブラックを含む混合物を成形して、成形体を得ることもできる。
【0052】
原料ガスから炭化水素を生成する反応を進行させる間、各触媒を加熱してもよい。反応のための加熱温度は、例えば200~400℃である。また、原料ガスは、二酸化炭素又は一酸化炭素のうち一方のみを含んでいてもよいし、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスであってもよい。
【0053】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0054】
10 触媒システム、 12 逆シフト反応装置、 14 反応装置、 14a,14b 反応器。
図1
図2
図3