(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102704
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20220630BHJP
C07C 1/10 20060101ALI20220630BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220630BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20220630BHJP
B01J 8/04 20060101ALI20220630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
B01J23/80 M
C07C1/10
C07C9/04
C07C9/02
B01J8/04 311A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217589
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 行寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤司
(72)【発明者】
【氏名】梶田 琢也
【テーマコード(参考)】
4G070
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070AB07
4G070BA08
4G070BB06
4G070CA01
4G070CA17
4G070CB17
4G070CC02
4G070CC03
4G070DA11
4G070DA21
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC31B
4G169BC35B
4G169BC66B
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4G169CC26
4G169DA06
4G169EA02Y
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA02
4H006BA05
4H006BA19
4H006BA20
4H006BC18
4H006BC32
4H006BD70
4H006BD81
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA99
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】FT法による反応により炭化水素を生成する触媒部の温度の偏りを低減する新たな技術を提供する。
【解決手段】反応装置10は、上流側の入口12aから導入した原料ガスから生成された炭化水素を下流側の出口12bから排出するように構成された反応器12と、反応器12の内部に配置され、原料ガスに含まれる水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する第1の触媒部14と、反応器12の内部に配置され、第1の触媒部14で生成された一酸化炭素と水素とを用いて炭化水素を生成する第2の触媒部16と、を備える。反応装置10は、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部16に流入する前のガス温度と、炭化水素を生成する際に第2の触媒部16において最も高温となる高温領域の温度との差が30℃以下となるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の入口から導入した原料ガスから生成された炭化水素を下流側の出口から排出するように構成された反応器と、
前記反応器の内部に配置され、前記原料ガスに含まれる水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する第1の触媒部と、
前記反応器の内部に配置され、前記第1の触媒部で生成された一酸化炭素と前記水素とを用いて炭化水素を生成する第2の触媒部と、を備え、
前記一酸化炭素を含むガスが前記第2の触媒部に流入する前のガス温度と、炭化水素を生成する際に前記第2の触媒部において最も高温となる高温領域の温度との差が30℃以下となるように構成されていることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記第1の触媒部は、銅及び酸化銅のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記第2の触媒部は、鉄及び酸化鉄のうち少なくとも一方を含む担体と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であって、前記担体に添加される添加金属と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記第2の触媒部は、上流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]が、下流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]の30~60%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記第2の触媒部は、上流側半分の領域に10~50質量%の不活性触媒が混合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記第2の触媒部は、上流側半分の領域に、前記第1の触媒部に含まれる触媒が10~50質量%混合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記第2の触媒部は、上流側半分の領域における前記添加金属の量が10質量%未満であり、下流側半分の領域における前記添加金属の量が10質量%以上であることを特徴とする請求項3に記載の反応装置。
【請求項8】
前記第1の触媒部と、前記第2の触媒部とが離れていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記第1の触媒部と、前記第2の触媒部との間に、前記第1の触媒部から前記第2の触媒部へ向かう一酸化炭素の流れを整える整流部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記第1の触媒部と前記第2の触媒部との間に折り返し流路が設けられており、
前記第1の触媒部は、前記折り返し流路の上流側であって、前記反応器の外周側に配置され、
前記第2の触媒部は、前記折り返し流路の下流側であって、前記第1の触媒部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を製造する際に用いる触媒の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス等に含まれる二酸化炭素を有効利用する方法として、二酸化炭素と水素から、エネルギー密度の高い液状の炭化水素を触媒の存在下で生成させることが検討されている(例えば特許文献1)。また、水素と一酸化炭素とを用いて炭化水素を生成する方法として、フィッシャートロプシュ法(Fischer-Tropsch process:以下、適宜「FT法」という。)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Energy & Fuels, Vol. 23, 4195(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FT法に用いられる触媒は、主にコバルト、ルテニウム、鉄といった金属を含有する。また、FT法における触媒反応は発熱反応であり、触媒層の中でも上流側での発熱が多い傾向にある。そのため、FT触媒層全体で反応温度を均一化するためには何らかの工夫が必要である。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、FT法による反応により炭化水素を生成する触媒部の温度の偏りを低減する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の反応装置は、上流側の入口から導入した原料ガスから生成された炭化水素を下流側の出口から排出するように構成された反応器と、反応器の内部に配置され、原料ガスに含まれる水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する第1の触媒部と、反応器の内部に配置され、第1の触媒部で生成された一酸化炭素と水素とを用いて炭化水素を生成する第2の触媒部と、を備える。反応装置は、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部に流入する前のガス温度と、炭化水素を生成する際に第2の触媒部において最も高温となる高温領域の温度との差が30℃以下となるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、炭化水素を生成する触媒部の温度の偏りを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】第3の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。
【
図4】第4の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、本発明の態様を列挙する。本発明のある態様の反応装置は、上流側の入口から導入した原料ガスから生成された炭化水素を下流側の出口から排出するように構成された反応器と、反応器の内部に配置され、原料ガスに含まれる水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する第1の触媒部と、反応器の内部に配置され、第1の触媒部で生成された一酸化炭素と水素とを用いて炭化水素を生成する第2の触媒部と、を備える。反応装置は、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部に流入する前のガス温度と、炭化水素を生成する際に第2の触媒部において最も高温となる高温領域の温度との差が30℃以下となるように構成されている。
【0011】
第2の触媒部の一酸化炭素が流入する側の端部領域は発熱が集中しやすい。そのため、第2の触媒部における温度の偏りが大きくなる。この態様によると、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部に流入する前のガス温度に比べて、炭化水素を生成する際に第2の触媒部において最も高温となる高温領域の温度の上昇を30℃以下に抑えることで、第2の触媒部での温度の偏りを低減できる。その結果、第2の触媒部での安定した触媒反応が得られる。
【0012】
第1の触媒部は、銅及び酸化銅のうち少なくとも一方を含有してもよい。また、第1の触媒部は、いわゆる逆シフト反応により水素と二酸化炭素から一酸化炭素を生成する触媒を含有してもよい。
【0013】
第2の触媒部は、鉄及び酸化鉄のうち少なくとも一方を含む担体と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であって、担体に添加される添加金属と、を含んでもよい。担体は、例えば、鉄(Fe)、酸化第二鉄(Fe2O3)、四酸化三鉄(Fe3O4)等の中から選択される一種以上の物質が挙げられる。
【0014】
第2の触媒部は、上流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]が、下流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]の30~60%であってもよい。これにより、第2の触媒部で発熱が集中しがちな上流側での反応が下流側よりも抑えられるため、第2の触媒部での温度の偏りを低減できる。
【0015】
第2の触媒部は、上流側半分の領域に10~50質量%の不活性触媒が混合されていてもよい。これにより、第2の触媒部で発熱が集中しがちな上流側での反応が抑えられる。また、第2の触媒部は、上流側半分の領域の不活性触媒の量が、下流側半分の領域の不活性触媒の量よりも多いとよい。
【0016】
第2の触媒部は、上流側半分の領域に、前記第1の触媒部に含まれる触媒が10~50質量%混合されていてもよい。第1の触媒部での反応は吸熱反応のため、これにより、第2の触媒部で発熱が集中しがちな上流側での反応が抑えられる。
【0017】
第2の触媒部は、上流側半分の領域における添加金属の量が10質量%未満であり、下流側半分の領域における添加金属の量が10質量%以上であってもよい。通常、添加金属の割合が少ないと、活性が低くなり反応が抑制されることになる。これにより、第2の触媒部で発熱が集中しがちな上流側での反応が下流側よりも抑えられるため、第2の触媒部での温度の偏りを低減できる。
【0018】
第1の触媒部と、第2の触媒部とが離れていてもよい。これにより、第1の触媒部から出たガスが、均一に第2の触媒部に流入しやすくなる。
【0019】
第1の触媒部と、第2の触媒部との間に、第1の触媒部から第2の触媒部へ向かう一酸化炭素の流れを整える整流部が設けられていてもよい。第1の触媒部から出たガスが、均一に第2の触媒部に流入しやすくなる。
【0020】
第1の触媒部と第2の触媒部との間に折り返し流路が設けられており、第1の触媒部は、折り返し流路の上流側であって、反応器の外周側に配置され、第2の触媒部は、折り返し流路の下流側であって、第1の触媒部の内側に配置されていてもよい。これにより、第2の触媒部での発熱を第1の触媒部での吸熱に利用できる。また、第1の触媒部と第2の触媒部との間に熱伝達のための経路や熱交換器が不要となる。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。また、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、同一の部材であっても、各図面間で縮尺等が若干相違する場合もあり得る。また、本明細書又は請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0023】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る反応装置の概略構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示す反応装置10は、上流側の入口12aから導入した原料ガスから生成された炭化水素を下流側の出口12bから排出するように構成された反応器12と、反応器12の内部に配置され、原料ガスに含まれる水素と二酸化炭素とを用いて一酸化炭素を生成する第1の触媒部14と、反応器12の内部に配置され、第1の触媒部14で生成された一酸化炭素と、原料ガスに含まれている水素とを用いて炭化水素を生成する第2の触媒部16と、を備える。
【0024】
第1の触媒部14は、逆シフト反応を生じさせる、ペレット状の逆シフト触媒14aが充填されている。逆シフト触媒14aにおいては、逆シフト反応により水素と二酸化炭素から一酸化炭素が生成される。第2の触媒部16は、FT法による反応を生じさせる、ペレット状のFT触媒16aが充填されている。FT触媒16aにおいては、FT法による反応により一酸化炭素と水素から炭化水素が生成される。この触媒システムは、反応器12の入口側に二酸化炭素や水素、一酸化炭素を含む原料ガスを入れることで、ガス状あるいは液状の炭化水素を容易に生成できる。
【0025】
反応装置10は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンといった炭素数1~4のガス状の炭化水素であるCH4、C2-C4成分と、炭素数5以上の炭化水素であって、常圧で液状の油分成分であるC5+成分(例えば、直鎖アルカンにおいて炭素数nが5以上の成分)とを生成し、ガス成分と油分とを気液分離し、場合によっては分留することで、所望の成分を抽出することができる。
【0026】
第2の触媒部16に充填されているFT触媒16aは、FT法による反応が発熱反応であるため、第2の触媒部16の一酸化炭素が流入する側の端部領域Rは発熱が集中しやすい。そのため、第2の触媒部16の端部領域Rは温度が上昇しやすく、そのままでは第2の触媒部16全体で温度の偏りが大きくなる。そこで、第1の実施の形態に係る反応装置10は、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部16に流入する前のガス温度と、炭化水素を生成する際に第2の触媒部16において最も高温となる高温領域の温度との差が30℃以下となるように構成されている。
【0027】
これにより、一酸化炭素を含むガスが第2の触媒部16に流入する直前のガス温度に比べて、炭化水素を生成する際に第2の触媒部16において最も高温となる高温領域(例えば端部領域R)の温度の上昇を30℃以下に抑えることで、第2の触媒部16での温度の偏りを低減できる。その結果、第2の触媒部16での安定した触媒反応が得られる。
【0028】
本実施の形態に係る反応装置10では、端部領域Rにおける局部的な温度上昇を抑えるために、第2の触媒部16の上流側半分(又は1/3、若しくはそれ以下)の領域に10~50質量%(当該領域に充填した触媒全量基準。以下同様)の不活性触媒18が混合されている。不活性触媒18は、例えば、アルミナボールである。不活性触媒18の量は、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。あるいは、不活性触媒18の量は、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。なお、本明細書において「半分(又は1/3、若しくはそれ以下)の領域」とは、第2の触媒部16全体の容積を基準とする。
【0029】
これにより、第2の触媒部16で発熱が集中しがちな上流側(端部領域R)での反応が抑えられ、上流側での急激な発熱が防止される。また、第2の触媒部16は、上流側半分(又は1/3、若しくはそれ以下)の領域の不活性触媒の量が、下流側半分(又は1/3、若しくはそれ以下)の領域の不活性触媒の量よりも多いとよい。これにより、不活性触媒18の上流側と下流側の温度差を低減できる。
【0030】
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。なお、第1の実施の形態に係る反応装置10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。第2の実施の形態に係る反応装置20は、第2の触媒部16の上流側の発熱を抑えるために、第2の触媒部16の上流側半分の領域において、FT触媒16aとは別に逆シフト触媒14aが混合されている。換言すると、第1の触媒部14の一部と第2の触媒部16の一部とが重複している(重複領域R’)。第2の触媒部16は、重複領域R’を含む上流側半分の領域に、逆シフト触媒14aが10~50質量%混合されている。これにより、第2の触媒部16で発熱が集中しがちな上流側での反応が抑えられる。
【0031】
このように、第2の触媒部16の上流側端部の発熱を抑えるために、反応特性の異なる複数の触媒を用いてもよい。例えば、各実施の形態に係るFT触媒16aは、FT法による反応に用いられる第1のFT触媒と、FT法による反応に用いられ、第1のFT触媒とFT法における反応特性が異なる第2のFT触媒と、を有してもよい。また、第2のFT触媒に代えて、あるいは第2のFT触媒に加えて、FT法での反応を伴わない非FT触媒を用いてもよい。非FT触媒は、当然、第1のFT触媒や第2のFT触媒と反応特性は異なる。
【0032】
ここで、反応特性が異なるとは、触媒を構成する元素や組成の違い、形状(形態)の違いによって、活性が相違している場合が挙げられる。また、触媒の作用によるFT法での反応時に支配的な反応が異なる場合も反応特性が異なると言える。第1の実施の形態や第2の実施の形態では、特に触媒の反応時の発熱量が相違する複数種の触媒を第2の触媒部16が有することで、第2の触媒部16の局所的(特に上流側端部)な発熱を抑えることができる。
【0033】
各実施の形態に係る反応装置は、前述の通り、少なくとも逆シフト触媒14a及びFT触媒16aを含む。逆シフト触媒14aは、銅や酸化銅を含む銅系触媒体である。これにより、原料ガスに含まれる二酸化炭素から効率よく一酸化炭素を生成できる。また、各実施の形態に係る逆シフト触媒14aは、銅系触媒体の作用による反応は吸熱反応であり、逆シフト触媒14aをFT触媒16aの吸熱部として利用できる。なお、逆シフト触媒14aは、白金を含む白金系触媒体であってもよい。
【0034】
各実施の形態に係るFT触媒16aは、鉄や酸化鉄を含む鉄系触媒体や、コバルトを含むコバルト系触媒体が挙げられる。鉄系触媒体の場合、鉄及び酸化鉄のうち少なくとも一方を含む担体と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であって、担体に添加される添加金属と、を含んでいる。担体は、例えば、鉄(Fe)、酸化第二鉄(Fe2O3)、四酸化三鉄(Fe3O4)等の中から選択される一種以上の物質が挙げられる。添加金属としては、ナトリウムやカリウムが挙げられる。
【0035】
このように、第2の触媒部16が有するFT触媒16aを反応特性の異なる複数のFT触媒で構成することで、第2の触媒部16内での温度分布のばらつきを抑え、所望の炭化水素を効率よく生成することができる。例えば、第2の触媒部16の上流側(第1の触媒部14側)は、活性が比較的低いことで発熱が抑えられるFT触媒が含有される割合を多くし、下流側は活性が比較的高いことでFT法による反応が促進されるFT触媒が含有される割合を多くしてもよい。
【0036】
活性の違いは、鉄系触媒体の担体に添加する添加金属の量でも調整できる。例えば、第2の触媒部16は、上流側半分の領域における添加金属の量が下流側半分の領域における添加金属の量より少なく、この場合の上流側半分の領域における添加金属の量が0.5質量%以上20質量%以下であり、下流側半分の領域における添加金属の量が1質量%以上30質量%以下であってもよい。これにより、第2の触媒部16で発熱が集中しがちな上流側での反応が下流側よりも抑えられるため、第2の触媒部16での温度の偏りを低減できる。また、担体に添加する添加金属の種類を、第2の触媒部16の上流側と下流側とで異ならせることで、活性の違いを生じさせることもできる。
【0037】
また、第2の触媒部16は、上流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]が、下流側半分の領域における一酸化炭素転化速度[mol/s]の30~60%となるように構成してもよい。ここで、一酸化炭素転化速度とは、FT法による反応により一酸化炭素が転化されて減少する速度のことをいう。このような構成を実現するには、前述のように活性や反応特性の異なる複数種の触媒を用いればよい。これにより、第2の触媒部16で発熱が集中しがちな上流側での反応が下流側よりも抑えられるため、第2の触媒部16での温度の偏りを低減できる。
【0038】
[第3の実施の形態]
図3は、第3の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。なお、第1の実施の形態に係る反応装置10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
図3に示す第3の実施の形態に係る反応装置30は、第1の触媒部14と第2の触媒部16とが離れており、触媒部同士の間に空間Sが設けられている。第1の触媒部14と第2の触媒部16との距離は、反応装置の単位断面積あたり0.1mm/mm
2~0.5mm/mm
2とすることが好ましい。これにより、第1の触媒部14から出た反応ガス(一酸化炭素)Gが、均一に第2の触媒部16に流入しやすくなる。第2の触媒部16の上流側で発生する急激な発熱反応は、第1の触媒部14における逆シフト反応で生成した反応ガスが偏って第2の触媒部16に流入することも一因と考えられる。そのため、第1の触媒部14と第2の触媒部16との間に空間Sを設けることで、反応ガスが偏って第2の触媒部16に流入することを防止できる。
【0039】
また、第1の触媒部14と、第2の触媒部16との間に、第1の触媒部14から第2の触媒部16へ向かう反応ガスGの流れを整える整流部を設けてもよい。整流部は、例えば、規則的な穴の開いたパンチングメタルや整流板であってもよい。整流部を設けることで、第1の触媒部14から出た反応ガスGが、均一に第2の触媒部16に流入しやすくなる。
【0040】
[第4の実施の形態]
図4は、第4の実施の形態に係る反応装置の概略構成を示す模式図である。なお、第1の実施の形態に係る反応装置10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
図4に示す反応装置40は、円筒状の反応器42を有する。反応器42は、上流側の入口42aが下面に設けられている外筒44と、外筒44の内側に配置され、下流側の出口42bが下面に設けられている内筒46と、を有する。
【0041】
外筒44と内筒46との間の環状の隙間には、第1の触媒部14が環状に充填されている。また、内筒46の内部には、第2の触媒部16が円柱状に充填されている。また、第1の触媒部14から第2の触媒部16へ向かう経路には、折り返し流路48が設けられており、第1の触媒部14は、折り返し流路48の上流側であって、反応器42の外周側に配置され、第2の触媒部16は、折り返し流路48の下流側であって、第1の触媒部14の内側に配置されている。これにより、第2の触媒部16での発熱を第1の触媒部14を加熱するために利用でき、反応装置全体での熱の利用効率が向上する。また、第1の触媒部14と第2の触媒部16との間に熱伝達のための経路や熱交換器が不要となる。
【0042】
上述の各実施の形態において、各触媒体の形態は、特に限定されず、例えば粉体であってもよく、粉体の凝集体からなる粒状の成形体であってもよい。粒状の成形体である触媒体の形状は、特に制限されず、例えば円柱状、角柱状、球状又は不定形であってもよい。粒状の成形体の粒径(最大幅)は、1mm以上50mm以下であってもよい。触媒体の粉体の粒径(最大幅)は、1μm以上1000μm未満であってもよい。
【0043】
逆シフト触媒14aは、金属銅、若しくは酸化銅(CuO)、又はこれらの両方を含有してもよい。銅系触媒体が触媒として機能する間、銅系触媒体は少なくとも金属銅を含む。そのため、触媒は、反応に用いられる前に還元処理される。還元処理前の銅系触媒体は、酸化銅を含むことが多い。
【0044】
銅系触媒体における銅成分の含有量は、銅系触媒体に含まれる銅成分の量を全て金属銅の量に換算したときに、銅系触媒体全体の質量を基準として、20~100質量%であることが好ましい。
【0045】
銅系触媒体は、酸化亜鉛(ZnO)を更に含有していてもよい。銅系触媒体が酸化亜鉛を含有することにより、液状の炭化水素をより一層効率的に生成させることができる。銅系触媒体に含まれる銅元素の量を全て酸化銅の量に換算したときに、酸化亜鉛の量の割合が、酸化銅と酸化亜鉛の合計量を基準として、10~70質量%であることが好ましく、20~50質量%であることが更に好ましい。
【0046】
銅系触媒体は、銅成分を担持する担体を更に含有してもよい。銅系触媒体が酸化亜鉛を含有する場合、通常、酸化亜鉛も担体に担持される。担体は、例えばγ-アルミナ等のアルミナであることが好ましい。銅系触媒体における担体の含有量は、銅の含有量、酸化亜鉛の含有量及びアルミナの含有量の合計を基準として、例えば0.5~60質量%であり、好ましくは1~50質量%、更に好ましくは1~40質量%である。ここでの銅の含有量は、銅系触媒体に含まれる銅成分の量を全て金属銅の量に換算した量を意味する。
【0047】
銅成分と酸化亜鉛を含有する銅系触媒体は、例えば、銅と亜鉛を含む沈殿物を共沈法により生成させる工程と、生成した沈殿物を焼成する工程とを含む方法によって得ることができる。沈殿物は、例えば、銅と亜鉛の水酸化物、炭酸塩又はこれらの複合塩を含む。銅と亜鉛を含む沈殿物を担体(例えばアルミナ)を含む溶液からの共沈法によって生成させることにより、銅成分、酸化亜鉛と担体を含有する銅系触媒体を得ることができる。
【0048】
焼成によって形成された、銅成分と酸化亜鉛を含有する焼成体を、粉体化してもよく、更に粉体を成形して粒状の成形体を形成してもよい。粉体を成形する方法の例としては、押出成形と錠剤成形が挙げられる。焼成体の粉体とカーボンブラックを含む混合物を成形して、成形体を得ることもできる。
【0049】
FT触媒16aは、金属鉄、酸化鉄又はこれらの両方を含む鉄成分と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属とを含有する鉄系触媒体が好ましい。また、FT触媒16aは、鉄成分以外に銅成分を含んだ鉄系触媒体-銅系触媒体であってもよい。鉄系触媒体が触媒として機能する間、通常、鉄系触媒体は少なくとも金属鉄を含む。そのため、触媒は、通常、反応に用いられる前に還元処理される。還元処理前の鉄系触媒体は、通常、酸化鉄(例えばFe3O4やFe2O3)を含む。
【0050】
鉄系触媒体における鉄成分の含有量は、鉄系触媒体に含まれる鉄成分の量を全て酸化鉄の量に換算したときに、鉄系触媒体全体の質量を基準として、5~100質量%であることが好ましい。
【0051】
添加金属は、アルカリ金属から任意に選択される1種以上を含む。例えば、添加金属が、ナトリウム、カリウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。当然、添加金属が2種以上であってもよい。添加金属が、ナトリウム、カリウム、又はセシウムを含むことにより、液状の炭化水素をより一層効率的に生成させることができる。
【0052】
鉄系触媒体における添加金属の含有量は、鉄系触媒体のうち添加金属以外の部分の量を基準として、0.2~40質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。添加金属がナトリウムを含む場合、鉄系触媒体におけるナトリウムの含有量が、0.2~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。添加金属がカリウムを含む場合、鉄系触媒体におけるカリウムの含有量が、0.2~40質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。添加金属がセシウムを含む場合、鉄系触媒体におけるセシウムの含有量が、0.2~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。添加金属の含有量が上記範囲内であると、一酸化炭素から炭化水素への転化率がより向上する傾向がある。
【0053】
鉄系触媒体は、例えば、Fe3+を含有する水溶液から三価の鉄を含む水酸化物の沈殿物を生成させる工程と、沈殿物を焼成して酸化第二鉄を含有する粉体を形成する工程と、粉体を添加金属を含む水溶液に混ぜて、次いで添加金属を含む水溶液を乾燥させる工程とを含む方法によって、得ることができる。
【0054】
酸化第二鉄を含有する粉体を更に成形して粒状の成形体を形成してもよい。粉体を成形する方法の例としては、押出成形及び錠剤成形が挙げられる。焼成体の粉体とカーボンブラックを含む混合物を成形して、成形体を得ることもできる。
【0055】
原料ガスから炭化水素を生成する反応を進行させる間、各触媒を加熱してもよい。反応のための加熱温度は、例えば200~400℃である。また、原料ガスは、二酸化炭素又は一酸化炭素のうち一方のみを含んでいてもよいし、二酸化炭素と一酸化炭素を含む混合ガスであってもよい。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
[銅系触媒体の調製:逆シフト触媒14a]
γ-アルミナ(住友化学工業社製、BK-105)5.0gを、ホモミキサーで撹拌することによって純水1.0L中に懸濁させた。形成された懸濁液に、硝酸銅水和物(ナカライ試薬社製)31.7gと硝酸亜鉛水和物(ナカライ試薬社製)38.1gを含む水溶液300mLを室温で素早く加え、次いで室温で懸濁液を更に1時間撹拌した。その後、ホモミキサーによる撹拌を続けながら、炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)35.0gを含む水溶液300mLを、ローラーポンプを用いて室温にて5mL/分の滴下速度で滴下した。滴下により生成した沈殿物を含む懸濁液を、35℃で24時間放置することにより熟成させた。熟成後の懸濁液から、デキャント操作により上澄みを除去し、残った沈殿物を再び水で希釈した。このデキャントと希釈の操作を4回繰り返した。
【0058】
その後、吸引ろ過によって沈殿物を取り出し、これを再び純水中に懸濁させてから吸引ろ過により沈殿物を取り出す操作を4回繰り返した。この操作により沈殿物を十分に水洗した。得られた沈殿物を120℃で24時間の加熱により乾燥させた。乾燥後の沈殿物を、空気流通下で、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間、350℃で1時間、400℃で4時間の順で加熱することにより、焼成した。焼成により、銅成分と酸化亜鉛を含有する銅系触媒体である黒色粉体を得た。この黒色粉体を乳鉢で微粉化し、微粉体を40MPaの圧力で成形することにより、直径3mm、高さ3mmの円柱状の成形体である銅系触媒体を得た。
【0059】
[鉄系触媒体の調製:FT触媒16a]
硝酸鉄・九水和物(富士フイルム和光純薬製)146.9gを、純水120mLに70℃で撹拌しながら溶解させ、鉄イオンの濃度が3mol/Lの溶液を調整した。その溶液に、水酸化ナトリウム47.9gを純水70mLに融解させた水酸化ナトリウム溶液(16.6mol/L)を、溶液のpHが11~12になるように滴下し、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)の沈殿物を含有する溶液を作製した。この溶液に含まれる沈殿物を真空ポンプを用いてろ過し、得られたろ過物を、アルカリ金属が所定量以下となるように繰り返し洗浄した。その理由は、アルカリ金属が多く(不定量)残留していると、後のアルカリ金属添加工程において、担体である酸化第二鉄に担持させるアルカリ金属の添加量を調整することが難しくなるからである。
【0060】
その後、得られた沈殿物を120℃で12~20時間加熱し、乾燥した。乾燥後の沈殿物を、空気流通下で5℃/minの昇温速度で雰囲気温度を上げながら、最終的に400℃で5時間加熱することにより、焼成した。その結果、28.7gの酸化第二鉄(Fe2O3)が得られた。
【0061】
次に、得られた酸化第二鉄5gを水酸化ナトリウム水溶液又は硝酸ナトリウム水溶液に融解し、120℃で12~20時間乾燥し、空気流通下で5℃/minの昇温速度で雰囲気温度を上げながら、最終的に400℃で5時間加熱することにより、焼成した。これにより、酸化第二鉄を主成分とする担体と、担体に担持されたアルカリ金属とを含有する鉄系触媒体の粉末が得られる。なお、水酸化ナトリウム水溶液に酸化第二鉄を溶解する場合は、焼成工程を省略し、乾燥工程だけでもよい。そして、粉末を成形し所定形態の成形体が得られる。以下の各実施例における鉄系触媒体は、直径2~3mmのフレーク状の形態である。
【0062】
なお、アルカリ金属としてカリウムを酸化第二鉄に担持させる場合には、水酸化カリウム水溶液や硝酸カリウム水溶液を用いればよい。また、アルカリ金属としてセシウムを酸化第二鉄に担持させる場合には、水酸化セシウム水溶液や硝酸セシウム水溶液を用いればよい。
【0063】
[コバルト系触媒体の調整:FT触媒16a]
硝酸コバルト六水和物1.23gを純水1.50gに溶解させた。得られた水溶液を、球状アルミナ4g(住友化学製、KHA-24)に含侵し、110℃で一晩乾燥させた。この含浸及び乾燥を2回繰り返し、アルミナ担体に12.5質量%のコバルトが担持されたコバルト系触媒(Al担持Co系触媒)を得た。
【0064】
[各触媒の還元処理]
内径1.27cmの固定床式反応管に、各触媒体を順次充填し、反応管のガス入口側(上流側)から銅系触媒体、鉄系触媒体、コバルト系触媒体の順で配置した。続いて、大気圧下、1容量%の水素と窒素からなる流通ガスを、反応管内に200Ncc/分の流量で流通させながら、触媒の温度を室温から1時間かけて150℃まで昇温した。150℃に保ったまま、流通ガスに含まれる水素の濃度を2容量%、10容量%、20容量%、50容量%、及び100容量%の順に変更した。水素濃度100容量%の流通ガス(水素ガス)に変更してから、流通の状態を2時間保持した。その後、水素ガスの流通を継続しながら、触媒の温度を200℃/時間の速度で350℃まで昇温し、350℃で7時間保持することにより、触媒を還元処理した。
【0065】
(実施例2)
[鉄系触媒体の調製:FT触媒16a]
実施例2では、鉄系触媒体の担体として四酸化三鉄(Fe3O4)を調製した。三塩化鉄・六水和物(富士フイルム和光純薬製)15.8gと二塩化鉄・四水和物(富士フイルム和光純薬製)6.3gを、純水75mLと35%塩酸2.5mLの混合溶液に、60℃で撹拌しながら溶解させた。溶解後の溶液に、温度を60℃に保ったまま、5%アンモニア水336mLを滴下し、次いで溶液を1時間撹拌した。溶液中に沈殿物が生成した。デキャント操作により上澄みを除去し、残った沈殿物を400mLの純水で洗浄しながらろ過した。得られた沈殿物を70℃で6時間の加熱により乾燥させた。得られた黒色粉体を乳鉢で微粉化した。微粉体を40MPaの圧力で成形して、Fe3O4を含む直径2mm、高さ2mmの円柱状の成形体を得た。この成形体10gに、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)0.17gと純水4.63gを含む水溶液を含浸させ、成形体に含浸した水溶液を60℃、18時間の加熱により乾燥させて、鉄系触媒(NaFe3O4)を含有する成形体である鉄系触媒体を得た。Fe3O4に対するナトリウムの割合は約1質量%と計算される。
【0066】
(実施例3)
[鉄-銅系触媒体の調製:FT触媒16a]
実施例3では、鉄を含む触媒として鉄-銅系触媒を調製した。硝酸鉄九水和物34.6gと硝酸銅三水和物2.3gを蒸留水に溶解させて、全容100mLの溶液を調製した。続いて、温度を70℃に保ったまま、5%アンモニア水をpH=8となるまで滴下した。滴下量は212mLであった。溶液を更に室温で15時間撹拌した後、生成した沈殿物をろ過により取り出し、これを蒸留水で洗浄した。沈殿物を120℃で6時間の加熱により乾燥させた。得られた粉体8gに、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)0.55gと純水3gを含む水溶液を含浸させ、60℃、18時間乾燥した。その後、粉体を350℃で3時間焼成して、鉄、銅とナトリウムを含有する鉄-銅系触媒を得た。鉄-銅系触媒に対するナトリウムの割合は約4質量%と計算される。
【0067】
以上、本発明を上述の各実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、各実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態や各実施例における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた各実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
10 反応装置、 12 反応器、 14 第1の触媒部、 14a 逆シフト触媒、 16 第2の触媒部、 16a FT触媒、 18 不活性触媒、 20,30 反応装置、 40 反応装置、 42 反応器、 44 外筒、 46 内筒、 48 折り返し流路、 G 反応ガス、 R 端部領域、 S 空間。