(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102727
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220630BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217631
(22)【出願日】2020-12-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】518427856
【氏名又は名称】楽天カード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美智子
(72)【発明者】
【氏名】松本 里奈
(72)【発明者】
【氏名】原口 潤平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】給与支払い日より前の利用者が指定するタイミングで給与の一部相当額を定期的に受け取ることのできるサービスにおいて、処理負荷の集中を回避することのできる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】サーバ装置10が、インターネット等の通信ネットワークを介して雇用者端末20及び利用者端末30の夫々と接続される情報処理システム1において、サーバ装置は、労働者から給与相当額の前払いの申請として、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付け、当該申請に基づいて、支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録し、当該支払い日に、記録されている事前データに基づいて申請に応じた支払い処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付ける申請受付部であって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付ける申請受付部と、
前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録する事前データ生成部と、
前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行する支払い処理部と、
を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記支払い時期に応じて定められる支払い日が所与の生成対象期間内に含まれる場合に、当該支払い日の情報を含む事前データを生成する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記生成対象期間に対応する実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記事前データを記録するデータベースの空き容量に応じた実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記労働者に対して給与を支払う雇用者ごとに異なる実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記労働者ごとに異なる実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記申請が受け付けられるごとに、当該申請に基づいて前記事前データを生成する処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記労働者の労働時間の実績を含む勤務データに基づいて算出される、当該労働者に給与相当額の前払いとして支払い可能な上限額を取得する上限額取得部をさらに含み、
前記支払い処理部は、前記申請に応じて支払うべき支払い金額が前記上限額以下の場合に前記申請に応じた支払い処理を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記申請受付部が受け付ける申請は、前記支払い時期が到来したときに支払うべき金額の決定方法として、支払い金額と、前記労働者の労働時間の実績を含む勤務データに基づいて算出される、当該労働者に給与相当額の前払いとして支払い可能な上限額に対する割合と、のいずれかの指定を含み、
前記事前データ生成部は、予め前記事前データを生成する場合に、前記支払い金額の指定が含まれる申請については前記事前データを生成し、前記上限額に対する割合の指定が含まれる申請については前記事前データを生成しない
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記労働者からの提供要求に応じて、当該労働者の申請に基づく支払い予定日の情報を提供する支払い予定日提供部をさらに含み、
前記支払い予定日提供部は、前記事前データを生成済みの支払い予定日については、前記事前データを参照して取得した支払い予定日の情報を提供する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理装置において、
前記事前データ生成部は、前記事前データを生成済みでない未生成期間が前記提供要求の対象期間に含まれる場合、当該未生成期間を対象として前記事前データを生成する処理を実行し、
前記支払い予定日提供部は、前記未生成期間を対象として生成された前記事前データを参照して取得した支払い予定日の情報を提供する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項12】
申請受付部が、労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付けるステップであって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付けるステップと、
事前データ生成部が、前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録するステップと、
支払い処理部が、前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行するステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付けるステップであって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付けるステップと、
前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録するステップと、
前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働者(雇用者から労働の対価として給与の支払いを受ける被雇用者)が、予め定められた給与支払い日より前にその給与の一部に相当する金額を受け取ることのできるサービスが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなサービスを利用者(労働者)が利用する際に、給与相当額の支払いを受けようとするたびに都度申請を行うのは手間になる場合がある。そこで、利用者が予め指定したタイミングで、定期的にその利用者の勤務実績に応じて支払い可能な額を指定された支払い先に支払うという定期払いのサービスが考えられる。このようなサービスを実現する場合、通常、支払い金額を確定して実際に振り込む支払い処理は支払い日当日に実行することになる。しかしながら、申請時における支払い時期の指定方法によっては支払い日がいつになるかは必ずしも明確でない。そのため、支払い日当日には、その日が支払い日であるかを判定し、支払い日であれば実際に支払いを行うという処理を行う必要がある。しかしながら、このような処理を全てまとめて実行することとすると、システムの処理負荷が高くなるおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、給与支払い日より前の利用者が指定するタイミングで給与の一部相当額を定期的に受け取ることのできるサービスにおいて、処理負荷の集中を回避することのできる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付ける申請受付部であって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付ける申請受付部と、前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録する事前データ生成部と、前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行する支払い処理部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記支払い時期に応じて定められる支払い日が所与の生成対象期間内に含まれる場合に、当該支払い日の情報を含む事前データを生成することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記生成対象期間に対応する実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記事前データを記録するデータベースの空き容量に応じた実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記労働者に対して給与を支払う雇用者ごとに異なる実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記労働者ごとに異なる実行頻度で、前記事前データを生成する処理を実行することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記申請が受け付けられるごとに、当該申請に基づいて前記事前データを生成する処理を実行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置は、前記労働者の労働時間の実績を含む勤務データに基づいて算出される、当該労働者に給与相当額の前払いとして支払い可能な上限額を取得する上限額取得部をさらに含み、前記支払い処理部は、前記申請に応じて支払うべき支払い金額が前記上限額以下の場合に前記申請に応じた支払い処理を実行することを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の一態様において、前記申請受付部が受け付ける申請は、前記支払い時期が到来したときに支払うべき金額の決定方法として、支払い金額と、前記労働者の労働時間の実績を含む勤務データに基づいて算出される、当該労働者に給与相当額の前払いとして支払い可能な上限額に対する割合と、のいずれかの指定を含み、前記事前データ生成部は、予め前記事前データを生成する場合に、前記支払い金額の指定が含まれる申請については前記事前データを生成し、前記上限額に対する割合の指定が含まれる申請については前記事前データを生成しないことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置は、前記労働者からの提供要求に応じて、当該労働者の申請に基づく支払い予定日の情報を提供する支払い予定日提供部をさらに含み、前記支払い予定日提供部は、前記事前データを生成済みの支払い予定日については、前記事前データを参照して取得した支払い予定日の情報を提供することを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の一態様において、前記事前データ生成部は、前記事前データを生成済みでない未生成期間が前記提供要求の対象期間に含まれる場合、当該未生成期間を対象として前記事前データを生成する処理を実行し、前記支払い予定日提供部は、前記未生成期間を対象として生成された前記事前データを参照して取得した支払い予定日の情報を提供することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様に係る情報処理方法は、申請受付部が、労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付けるステップであって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付けるステップと、事前データ生成部が、前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録するステップと、支払い処理部が、前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、労働者から給与相当額の前払いの申請を受け付けるステップであって、定期的に到来する支払い時期の指定を含む申請を受け付けるステップと、前記申請に基づいて、前記支払い時期に応じて定められる支払い日を特定し、当該支払い日の情報を含む事前データを生成して記録するステップと、前記支払い日に、前記記録されている事前データに基づいて前記申請に応じた支払い処理を実行するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能で非一時的な情報記憶媒体に格納されて提供されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成を示す構成ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図5】事前データ生成処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】事前データを用いた支払い処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】支払い予定日表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を含む情報処理システム1の全体概要を示す構成ブロック図である。同図に示されるように、情報処理システム1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置として機能するサーバ装置10と、雇用者端末20と、利用者端末30と、を含んで構成されている。サーバ装置10は、インターネット等の通信ネットワークを介して雇用者端末20及び利用者端末30のそれぞれと接続される。
【0022】
本情報処理システム1は、給与相当額の前払いサービスを実現する。本サービスは、雇用者(会社等)に雇用されている労働者が、労働の対価として支払いを受ける権利を有する給与の一部相当額を、予め定められた給与支払い日より前に受け取ることのできるサービスである。
【0023】
サーバ装置10は、サーバコンピュータ等の情報処理装置であって、本サービスの提供者によって管理される。サーバ装置10は、
図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を含んで構成されている。
【0024】
制御部11は、少なくとも一つのプロセッサーを含んで構成され、記憶部12に記憶されているプログラムに従って各種の情報処理を実行する。制御部11が実行する処理の具体例については、後述する。
【0025】
記憶部12は、RAM等のメモリデバイスを少なくとも一つ含み、制御部11が実行するプログラム、及び当該プログラムによる処理の対象となるデータを記憶する。特に本実施形態において記憶部12は、本サービスの提供のために必要な各種のデータを格納したデータベースDを記憶しているものとする。データベースDに格納されるデータの内容については、後述する。
【0026】
通信部13は、無線又は有線で通信ネットワークに接続するためのインターフェースである。この通信部13によって、サーバ装置10は雇用者端末20及び利用者端末30とデータ通信可能に接続される。
【0027】
雇用者端末20は、雇用者が利用する情報処理装置であって、パーソナルコンピュータ等であってよい。雇用者は、雇用者端末20を用いてサーバ装置10に対して労働者の勤務データを定期的に提供する。なお、実際に雇用者端末20を操作して勤務データを提供するのは、雇用者本人ではなく雇用者の指示を受けた者(例えば会社の労務担当者など)である場合が一般的だが、以下ではこれらの者を総称して単に雇用者という。
【0028】
利用者端末30は、情報処理システム1によって実現されるサービスの利用者(労働者)が利用する情報処理装置であって、デスクトップコンピュータ等の据え置き型の装置であってもよいし、スマートフォンやタブレット等の携帯型の装置であってもよい。
【0029】
利用者端末30には、表示装置31及び操作デバイス32が接続されている。表示装置31は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどであって、利用者端末30が描画した各種の画面を表示する。操作デバイス32はキーボードやマウス、あるいはタッチパネルなどであって、利用者からの操作入力を受け付けて、その内容を示す操作信号を利用者端末30に対して出力する。なお、表示装置31及び操作デバイス32は、利用者端末30と有線又は無線通信によって接続される別体の装置であってもよいし、利用者端末30の筐体内に内蔵される装置であってもよい。本サービスの利用者は、表示装置31が表示する画面を閲覧しながら操作デバイス32を操作することによって、利用者端末30からサーバ装置10に対して給与相当額の前払い申請を行う。
【0030】
以下、本実施形態においてサーバ装置10が実現する機能について、
図2の機能ブロック図を用いて説明する。
図2に示すように、サーバ装置10は機能的に、勤務データ取得部51と、上限額取得部52と、申請受付部53と、事前データ生成部54と、支払い処理部55と、支払い予定日提供部56と、を含んで構成されている。これらの機能は、制御部11が記憶部12に格納されているプログラムを実行することによって実現される。このプログラムは、インターネット等の通信ネットワークを介してサーバ装置10に提供されてもよいし、光ディスク等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されてサーバ装置10に提供されてもよい。
【0031】
勤務データ取得部51は、雇用者端末20から送信される勤務データを取得し、記憶部12内に格納する。勤務データは、雇用者に雇用されている本サービスの利用者のそれぞれについて、過去の所定期間に実際にその利用者が働いた総労働時間を示す勤務実績データを含んでいる。また、過去その利用者がどの程度の時間働く予定だったかを示す予定労働時間のデータ(勤務予定データ)を含んでもよい。なお、残業時間などのように時間単価が異なる複数種類の労働時間が総労働時間に含まれている場合、勤務実績データは時間単価ごとの労働時間を示すデータを含んでもよい。
【0032】
雇用者は、定期的に、例えば毎日、あるいは週1回などの頻度で、自身が雇用している本サービスの利用者のそれぞれについて、それまでの勤務データを送信するものとする。雇用者が送信する勤務データは、前回送信時以降の勤務実績についてのデータのみを含んでもよいし、前回の給与締め日以降の全ての勤務実績のデータを含んでもよい。
【0033】
上限額取得部52は、本サービスの利用者のそれぞれに対する支払い可能上限額を取得する。上限額取得部52が取得する支払い可能上限額は、勤務データ取得部51が取得する勤務データに基づいて算出される金額であって、本サービスの利用者から給与相当額の前払い申請があった場合に支払い可能な最大の金額である。本実施形態では、上限額取得部52自身が、勤務データ取得部51によって取得された勤務データに含まれる勤務実績データを用いて各利用者の支払い可能上限額を算出することによって、支払い可能上限額を取得するものとする。さらに上限額取得部52は、取得した各利用者の支払い可能上限額のデータを記憶部12内に格納しておく。
【0034】
具体的に、例えば上限額取得部52は、各利用者の過去の総労働時間に対して予め定められた時間単価を乗じることによって、それまでの労働時間に応じて次回の給与支払い時に支払われる予定給与額を算出する。そして、算出された予定給与額に対して所与の安全率(例えば70%)を乗じることによって、支払い可能上限額を算出する。なお、時間単価の情報は、予め雇用者から提供を受けて記憶部12内に記憶しておくこととしてもよいし、労働時間の情報とともに勤務データ内に含まれて提供されることとしてもよい。ここで、安全率は100%以下の値であって、サービス提供者又は雇用者によって任意に決定される値であってよい。また、各利用者の過去の総労働時間とは、集計対象期間の開始日以降における給与支払いの対象となる労働時間の合計値である。この労働時間には、その労働者が実際に労働した時間のほか、給与支払いの対象となる有給休暇に対応する時間などが含まれてもよい。また、利用者の総労働時間に労働単価が異なる複数種類の時間(通常勤務時間や残業時間など)が含まれる場合には、それぞれの時間に対して対応する労働単価を乗じてから合算することによって、予定給与額を算出してもよい。
【0035】
ここで集計対象期間は、支払い可能上限額を算出するために使用される勤務実績の対象期間であって、例えば1ヶ月などの期間であってよい。この期間は、雇用者が給与額を算定する際の基準期間と対応することが望ましい。具体的に集計対象期間は、雇用者の毎月の給与締め日が集計対象期間の末日となるように設定される。この場合、上限額取得部52は、毎月給与締め日以降の所定のタイミング(例えば給与締め日の翌日)で集計対象期間を切り替えることとし、そのタイミングでこれまで取得した勤務データに基づいて算出された支払い可能上限額を0円にリセットする。その後は、次の集計対象期間について新たに取得された勤務データに基づいて、次に受け取り申請があった場合に使用する支払い可能上限額を算出する。
【0036】
さらに上限額取得部52は、現在の集計対象期間内に後述する支払い処理部55が利用者に対して給与相当額の支払い処理を行った場合、その支払い金額を控除した額に支払い可能上限額を更新する。これにより支払い処理部55は、一つの集計対象期間内に利用者に対して複数回の支払い処理を行う場合に、複数回にわたって支払われる金額の総計がその集計対象期間内の総労働時間に応じた支払い可能上限額を超えないようにすることができる。
【0037】
なお、上限額取得部52は、勤務データ取得部51が雇用者端末20から新たな勤務データを取得するごとに、最新の勤務実績データを用いて支払い可能上限額を更新してもよい。あるいは、日次、週次などの頻度で定期的にそれまでに取得された勤務実績データを用いて支払い可能上限額を更新してもよい。また、後述する支払い処理部55による支払い処理を実行するタイミングなど、支払い可能上限額の情報が必要になったタイミングでその時点における支払い可能上限額を取得することとしてもよい。
【0038】
申請受付部53は、本サービスの利用者から、給与相当額の受け取り申請を受け付ける。特に本実施形態では、利用者は定期支払いの申請を行うことが可能となっている。定期支払いとは、定期的に到来する支払い時期に給与相当額の支払いを受けることのできるサービスである。
【0039】
以下、申請受付部53が定期支払いの申請を利用者から受け付ける場合に、利用者が指定する情報について説明する。少なくとも申請受付部53は、定期支払い申請を受け付ける場合、利用者から支払い時期の指定を受け付ける。支払い時期は、例えば毎月10日、毎月第3金曜日、あるいは毎月末日など、所定周期で繰り返し到来する時期である。この場合の周期は、前述した支払い可能上限額の算出に用いられる集計対象期間と同じ期間であってよい。なお、申請受付部53は、互いに異なる複数の支払い時期の指定を受け付けることとしてもよい。
【0040】
また、申請受付部53は、利用者から支払い時期が到来した際に支払いを希望する金額(申請金額)の指定を利用者から受け付ける。ここでは申請受付部53は、1回の支払いにおいて支払うべき金額を直接指定する情報を利用者から受け付けるものとする。
【0041】
また、申請受付部53は、定期支払いの支払い先の情報を利用者から受け付ける。本サービスにおける支払いの方法は、銀行口座への振り込みや電子マネーへのチャージなど、予め定められた複数の方法の中から利用者によって選択される方法であってよい。支払い先の情報は、利用者が希望する支払い方法、及びその支払い方法による支払い先(例えば口座振り込みの場合における口座番号など)を特定する情報である。
【0042】
さらに申請受付部53は、定期支払いの支払い開始時期、及び支払い終了時期の指定を利用者から受け付けることとしてもよい。支払い開始時期及び支払い終了時期は、それぞれ年月、あるいは年月日によって特定される時期であってよく、これらの情報によってその利用者に対する定期支払いを実行する期間が特定される。なお、利用者は支払い開始時期及び支払い終了時期の一方、または両方を指定しないこととしてもよい。利用者が支払い開始時期を指定しない場合、例えば翌日以降など、本サービスがその利用者に対して定期支払いを開始可能なタイミングで直ちに定期支払いが開始される。また、支払い終了時期が指定されない場合、利用者があらためて定期支払いの終了を指示するまで定期支払いを継続してもよい。あるいは、本サービスにおいて予め定められたデフォルトの支払い終了時期(例えば申請日から1年後など)が指定されたものとしてもよい。
【0043】
図3は、申請内容の入力画面の一例を示す図である。この図において、前払い申請可能額は申請時点において上限額取得部52が取得している支払い可能上限額を、毎月の受け取り予定日は支払い時期を、受け取り方法は支払い先を、それぞれ示している。受け取り予定日については1か月の範囲内で複数の日付を選択可能になっている。また、申請金額、支払い開始時期、及び支払い終了時期の指定も受け付け可能になっている。
【0044】
この入力画面は、利用者が自身の利用者端末30に接続された操作デバイス32に対して行った要求操作に応じて、表示装置31に表示される。このような入力画面が表示された状態において利用者は、1又は複数の支払い時期、申請金額、支払い方法などの情報を指定する操作入力を行う。そして、定期支払いの申請操作を行うことで、利用者端末30からサーバ装置10に対して指定された情報を含む申請データが送信される。
【0045】
このような入力画面の提示は、ウェブサービスなどによって実現されてよい。この場合申請受付部53は、利用者端末30から送信されるHTTPリクエストに応じて、入力画面のウェブページを描画するために必要なHTMLデータやJavaScriptデータを入力画面描画データとして送信する。利用者端末30のブラウザプログラムは、サーバ装置10から受信した入力画面描画データを用いてウェブページをレンダリングすることによって入力画面を描画し、表示装置31に表示させる。
【0046】
なお、申請受付部53は、利用者から受け付けた定期支払いの申請をそのまま受理するのではなく、一旦雇用者端末20に対して受け取り申請の内容を通知し、雇用者が雇用者端末20を操作して申請内容を承諾する旨の意思表示を行った場合のみ申請の内容を受理することとしてもよい。
【0047】
申請受付部53は、利用者から新たな定期支払いの申請を受理するごとに、その申請内容を示すデータ(以下では申請データと表記する)をデータベースD内の申請データテーブルに格納する。具体例として、申請データテーブルは、一人の利用者による定期支払いの申請を1レコードの申請データとして格納する。1レコード分の申請データは、申請を行った利用者の識別情報(ユーザーIDなど)に対して、その利用者を雇用する雇用者の識別情報(企業IDなど)、支払い時期、申請金額、支払い先、支払い開始時期、及び支払い終了時期の情報が関連づけられたデータである。なお、この申請データに含まれる支払い時期の情報は、前述したように支払い日を決定するためのルール(毎月1日、毎月第3金曜日、毎月末日など)を示すものであって、支払い日の現実の日にちを直接示すデータではない。
【0048】
なお、利用者が一旦定期支払いの申請を行った後、支払い時期などの内容を変更して新たな定期支払いの申請を行った場合、申請受付部53はその利用者に関連づけて申請データテーブルに格納されている申請データを新たに申請された内容で更新する。
【0049】
事前データ生成部54は、申請受付部53が受け付けた定期支払い申請の内容に基づいて、事前データを生成し、データベースD内の事前データテーブルに格納する。この事前データは、利用者の識別情報、支払い日、支払い先、及び支払い金額を互いに関連づけた情報である。また、事前データは、実際に支払いが行われたか否かを示す支払い完了ステータスの情報を含んでもよい。事前データテーブル内の各レコードは、1回の支払い処理に対応する。すなわち、同じ利用者に対して行われる複数回の支払い処理について、互いに独立した複数のレコードが生成される。
【0050】
本実施形態において事前データ生成部54は、定期的に、所定の生成対象期間に実行すべき支払いについて事前データ生成処理を実行する。例えば事前データ生成部54は、毎月1回、処理を実行する日の翌日から次回の事前データ生成処理の実行日までの1か月を生成対象期間として事前データ生成処理を実行する。
図4は、事前データテーブルに格納される事前データの一例を示している。この図の例では、利用者Aは毎月2回第1金曜日と第3金曜日を支払い時期と指定したものとし、事前データ生成部54が2020年12月の1か月間を生成対象期間とした場合に生成される事前データの例を示している。この場合、生成対象期間内に利用者Aに対して定期支払いを行うべき支払い日は第1金曜日の12月4日と第3金曜日の12月18日なので、これら2回の支払い処理に対応する2件のレコードが生成される。
【0051】
以下、事前データ生成処理の流れの一例について、
図5のフロー図を用いて説明する。まず事前データ生成部54は、申請データテーブルを参照して、生成対象期間内に支払い日が到来する申請データを抽出する(S1)。具体的には、生成対象期間が申請データに含まれる支払い開始時期と支払い終了時期の間の期間に含まれ、かつその生成対象期間の間に支払い時期に合致する日にちが存在する場合に、その申請データを処理対象として抽出する。特に支払い時期が毎月第3金曜日や毎週火曜日などのように曜日によって指定されている場合、事前データ生成部54は、生成対象期間内において指定された曜日に合致する日が何日になるか計算する必要がある。
【0052】
続いて事前データ生成部54は、S1で抽出された申請データのそれぞれに基づいて、事前データを生成する(S2)。具体的に事前データ生成部54は、申請データに含まれる支払い時期に合致する日を支払い日とし、申請データに含まれる申請金額を支払い金額とし、申請データに含まれる支払い先を支払い先とする事前データを生成する。そして、生成した事前データを事前データテーブルに格納する(S3)。前述したように、支払い時期に合致する日が生成対象期間内に複数存在する場合、事前データ生成部54はそのそれぞれを支払い日として、事前データのレコードを複数生成する。
【0053】
なお、以上の説明では、事前データ生成部54は例えば月1回など、所定の頻度で全ての利用者について事前データ生成処理を実行することとした。しかしながら事前データ生成部54は、申請受付部53が新たな定期支払いの申請を受け付けるごとに事前データ生成処理を実行してもよい。この例では事前データ生成部54は、新たな定期支払いの申請が受け付けられた場合、その申請において指定された支払い開始時期から支払い終了時期までの間の全期間を生成対象期間として、その申請を行った利用者についての事前データ生成処理を行う。このように定期支払いの申請が受け付けられるごとに都度事前データ生成処理を実行することとすれば、定期的に全利用者を対象とした事前データ生成処理を実行する必要はなくなる。
【0054】
また、定期的に全利用者について事前データ生成処理を実行する場合であっても、利用者から新たな定期支払いの申請を受け付けたタイミングによっては、その利用者に対して実行するべき初期の支払いについて定期的な事前データ生成処理が間に合わない場合がある。そこで事前データ生成部54は、申請受付部53が新たな定期支払いの申請を受け付けた場合、すでに過去の事前データ生成処理によって事前データを生成済みの生成対象期間に新たに受け付けた定期支払い申請による支払いが必要になるか判定してもよい。そして、支払いが必要な場合、その事前データを生成し、事前データテーブルに追加してもよい。
【0055】
以上説明したような事前データ生成処理を、処理実行日より未来の期間を生成対象期間として実行することによって、サーバ装置10は支払い日が到来するより早いタイミングで個々の支払い処理に対応する事前データを準備し、記録しておくことができる。これによりサーバ装置10は、支払い日当日に実際の支払いを行うために必要な処理量を減らすことができる。
【0056】
ただし、事前データを準備して記録しておくためには、その分だけデータベースDの容量が必要となる。特に事前データ生成処理の実行頻度が低い場合、生成対象期間が長くなり、その分事前データの件数も増加するので、より必要なデータベースDの容量が大きくなる。そのため、事前データ生成処理の実行頻度は、確保可能なデータベースDの容量の大きさや支払い処理の件数などに応じて決定される必要がある。前述した例では、事前データ生成部54は毎月1回月次で事前データ生成処理を実行することとしたが、週次(週1回)、あるいは日次(1日1回)など、異なる頻度で事前データ生成処理を実行してもよい。なお、日次で事前データ生成処理を実行する場合にも、例えば夜間などの処理負荷が比較的軽い時間帯に翌日分の事前データを生成するなど、支払い日当日が到来するより前のタイミングで事前データ生成処理を実行することで、処理負荷の集中を軽減することができる。
【0057】
事前データを格納するために必要な容量を確保するために、事前データ生成部54は、データベースDの空き容量が所定の容量以下になった場合、自動的に空き容量を増加させる処理を実行してもよい。
【0058】
また、事前データ生成部54は、データベースDの空き容量に応じて動的に事前データ生成処理の実行頻度を変化させてもよい。例えば月次で事前データ生成処理を実行してデータベースDの空き容量が所定容量以下になった場合、事前データ生成部54は、次に事前データ生成処理を実行すべきタイミングで、新たに実行する事前データ生成処理の生成対象期間を1か月よりも短い期間(例えば1週間)に変更する。これにより、1回の事前データ生成処理で生成される事前データのレコード件数を減らすことができる。その代わりに次回の事前データ生成処理は、1か月後ではなく1週間後などのように、前回の事前データ生成処理における生成対象期間が満了する前に実行する必要が生じる。すなわち、事前データ生成部54は事前データ生成処理の実行周期を短くし、実行頻度を上昇させることになる。このように事前データ生成処理の実行頻度を動的に変化させることで、データベースDの容量が不足する状態を避けるように事前データのレコード件数を調整することができる。
【0059】
なお、事前データ生成部54は、雇用者ごと、および/または利用者ごとに事前データ生成処理の実行頻度を変化させてもよい。一例として事前データ生成部54は、雇用者ごとの定期支払いの申請率や申請者数に応じて、事前データ生成処理の実行頻度を決定してもよい。本サービスの契約を結ぶ雇用者は通常複数の従業員を雇用しており、これらの従業員が本サービスの利用者として登録されることになる。しかしながら、従業員の全てが定期支払いのサービスを利用するとは限らず、どの程度の数の従業員が本サービスを実際に利用するかは雇用者ごとに相違する。そして、実際に定期支払いの申請を行う利用者の数が多くなるほど、事前データの件数も増え、データベースDの容量を圧迫するおそれが高くなる。そこで事前データ生成部54は、例えば雇用者ごとの申請率を算出し、算出された申請率が所定の比率以上の場合、その雇用者に雇用されている利用者については事前データ生成処理の実行周期を短くする。ここで申請率は、その雇用者に雇用されている全利用者に対する定期支払いの申請を行っている利用者の割合である。また、申請率が所定の比率未満の場合、申請受付部53が定期支払いの申請を受け付けたタイミングで全期間を生成対象期間として事前データを生成することとしてもよい。また、申請率ではなく申請者数の絶対値を判断基準として、各雇用者についての事前データ生成処理の実行頻度を決定してもよい。
【0060】
また、事前データ生成部54は、利用者ごとの定期支払いの申請内容に基づいて、利用者ごとに事前データ生成処理の実行頻度を変化させてもよい。例えば新たな定期支払いの申請が受け付けられた際に、その申請において指定された支払い開始時期及び支払い終了時期に応じて決まる期間が所定の期間よりも短い場合、それほどデータベースDの容量を必要としないため、事前データ生成部54は事前データ生成処理の実行頻度を上げてもよい。具体的に、例えば事前データ生成部54は、利用者が指定する定期支払いの期間が所定の期間よりも短い場合、申請が受け付けられた時点で指定された全期間を生成対象期間として事前データ生成処理を実行してもよい。また、支払い時期によって特定される一つの集計対象期間内における支払い回数が所定回数以上になる場合、事前データ生成部54は事前データ生成処理の実行頻度を下げてもよい。このような制御によれば、データベースDの容量不足が発生しにくい状態を保ちながら、生成すべき事前データの件数が比較的少ない雇用者や利用者については長期間にわたって事前データを予め生成しておくことができる。
【0061】
支払い処理部55は、申請受付部53が受け付けた申請内容にしたがって、給与相当額の支払い処理を行う。特に本実施形態では、事前データが予め生成されている場合、支払い処理部55はその事前データを用いて支払い処理用のデータ(以下、支払い処理データと表記する)を生成する。そして、生成した支払い処理データに従って個々の支払い処理を実行する。
【0062】
本実施形態において支払い処理部55は、日次でその日に支払うべき支払い処理を実行する。すなわち、支払い処理部55は、1日に1回、その実行の日当日を処理対象日として支払い処理を実行する。以下、支払い処理部55が実行する支払い処理の流れの一例について、
図6のフロー図を用いて説明する。
【0063】
まず支払い処理部55は、支払い日が処理対象日(当日)となっている事前データを事前データテーブルから抽出する(S11)。前述したように、事前データは支払いを実行すべき日ごとに1件のレコードとして事前データテーブル内に格納されている。そのため、単純に処理対象日をキーとしたレコード抽出処理を行うことで、支払い処理部55は容易にその日に処理すべきレコードを事前データテーブルから抽出することができる。
【0064】
ただし、事前データは支払い日より前に生成されたデータであり、生成時点では勤務実績に応じて実際に支払いが可能かどうかの判定を行っているわけではない。そのため支払い処理部55は、抽出された事前データのレコードについて、実際に支払いが可能か否かの判定を行う。具体的に支払い処理部55は、事前データに含まれる支払い金額が、上限額取得部52が取得する支払い可能上限額以下であるかを判定する(S12)。判定の結果、支払い金額が支払い可能上限額以下であれば支払い処理を継続するが、支払い可能上限額を超過している場合にはそのレコードの支払い処理を中止する(S13)。なお、ここでは支払い金額が支払い可能上限額を超過している場合支払い処理自体を中止することとしたが、支払い可能上限額を実際の支払い額として支払い処理を継続してもよい。
【0065】
続いて支払い処理部55は、S12で支払い可能と判定された事前データについて支払い元の情報を取得する(S14)。この支払い元の情報は、雇用者が支払いの原資を準備しておく口座の情報であって、予め記憶部12内に雇用者の識別情報と関連づけて記憶されているものとする。その後、支払い処理部55は、S11で抽出された事前データとS14で取得した支払い元の情報を用いて振込データを生成する(S15)。そして、生成した振込データに基づく振込指示を行う(S16)。これは、利用者が指定する支払い先に支払い金額を振り込む振込処理を実行するよう支払い元の金融機関に要求する処理である。この振込指示に基づく振込処理が正常に完了した場合、支払い処理部55はS11で抽出された対応する事前データのレコードに対して、その支払い完了ステータスを「完了」状態に更新する(S17)。
【0066】
S11で抽出された全ての事前データレコードについてS12からS17までの処理が完了すれば、支払い処理部55はその日の支払い処理を終了する。なお、S12で支払い可能上限額が不足していると判定されてS13で支払い処理を中止したレコードや、S16の指示に応じた振込処理に失敗したレコードなど、支払い処理が正常に完了しなかった事前データが存在する場合、支払い処理部55は、その利用者に支払いの失敗を通知するなどのエラー処理を実行してもよい。また、支払い処理によって支払い完了ステータスが「完了」に更新されなかった事前データを所定のタイミングであらためて抽出し、支払い処理の再試行を行うこととしてもよい。
【0067】
支払い予定日提供部56は、利用者から支払い予定日の提供要求を受け付けた場合に、支払い予定日の情報を要求元の利用者に対して提供する。提供された支払い予定日の情報は、利用者端末30に接続された表示装置31の画面に表示される。支払い予定日の提供要求には、提供対象期間を指定する情報が含まれているものとする。支払い予定日提供部56は、指定された提供対象期間内に到来する支払い予定日を特定し、その情報を要求元の利用者端末30に対して送信する。
【0068】
図7は、支払い予定日の情報を表示する支払い予定日表示画面の一例を示している。この例では支払い予定日表示画面はカレンダー形式で月ごとに支払い予定日を表示可能になっており、利用者の申請内容によって決定される支払い日が他の日と区別できるように強調表示されている。利用者端末30は、利用者が表示月を切り替える操作を行うごとに、切り替え後の1か月間を提供対象期間とする新たな提供要求をサーバ装置10に対して送信する。具体的に
図7の例では、提供対象期間として2020年12月のカレンダーが画面に表示されており、12月4日と12月18日が支払い日として網がけで示されている。
【0069】
支払い予定日提供部56は、提供要求によって指定された提供対象期間が過去に実行済みの事前データ生成処理の生成対象期間(以下、生成済み期間という)を含んでいる場合、その生成済み期間内の支払い予定日については事前データを参照して特定する。事前データが生成されていれば、その生成対象期間については既に支払い日が特定されていることになる。そのため、事前データテーブルを参照することで、支払い予定日提供部56はあらためて申請データを用いて支払い予定日を特定するための計算を行う必要がなく、比較的短時間で容易に生成済み期間内の支払い予定日の情報を取得し、利用者端末30に提供することができる。
【0070】
逆に、まだ事前データが生成されていない期間(以下、未生成期間という)が提供対象期間として指定された場合、支払い予定日提供部56は、申請データテーブルに格納されている申請データを参照して未生成期間内に到来する支払い予定日を特定する必要がある。支払い予定日を特定するためには、事前データ生成部54が事前データを生成する際と同様に申請データに含まれる支払い時期の情報を元に特定を行うことになる。そこで、未生成期間を提供対象期間として含む支払い予定日の提供要求が受け付けられた場合、事前データ生成部54はその未生成期間を生成対象期間として事前データ生成処理を実行してもよい。そして、支払い予定日提供部56は、未生成期間の事前データ生成処理によって新たに特定された支払い予定日の情報を利用者端末30に提供する。このような制御によれば、同じ期間について支払い日を特定する処理を重複して実行することを回避できる。
【0071】
このような制御を行う場合、各利用者が支払い予定日の提供要求を行ったか否か、またどの提供対象期間について提供要求を行ったかなどに応じて、利用者ごとに生成済み期間や未生成期間が異なることになる。そこで事前データ生成部54は、利用者ごとに生成済み期間を特定する情報をデータベースD内に記録しておくものとする。支払い予定日提供部56は、この生成済み期間の情報を参照することによって、提供対象期間に未生成期間が含まれるか否か判定し、含まれる場合にはその未生成期間について事前データの生成を事前データ生成部54に要求する。逆に提供対象期間が生成済み期間を含んでいれば、事前データテーブルを参照してその生成済み期間内の支払い予定日を直ちに取得する。
【0072】
以上説明したように、支払い予定日の提供要求を受け付けた場合に、未生成期間を対象とした事前データ生成処理を実行することとすれば、支払い予定日だけでなく、支払い予定日ごとの支払い金額についても事前データを参照して特定することができる。そこで支払い予定日提供部56は、支払い予定日とともに支払い金額の情報を提供してもよい。利用者端末30は、サーバ装置10から提供される支払い予定日のそれぞれに関連づけて支払い金額の情報を表示することで、利用者は容易にいつ、いくらの金額を受け取る予定になっているかを確認することができる。
【0073】
なお、利用者が頻繁に支払い予定日を確認する場合、比較的長い期間を生成対象期間として予め事前データを生成しておけば、その利用者が支払い予定日の提供要求を行った時点で未生成期間の事前データを生成する必要がなくなる可能性が高くなる。そこで事前データ生成部54は、事前データ生成処理の実行頻度を、利用者ごとの支払い予定日表示画面の表示頻度に応じて変化させてもよい。具体的に、例えば頻繁に支払い予定日表示画面を表示する利用者については、定期支払いの申請において対象とされている全期間について事前データを予め生成してもよい。また、支払い予定日表示画面の利用頻度が低い利用者については、事前データ生成処理の生成対象期間を短くする変更を行ってもよい。
【0074】
以上説明した本実施形態に係るサーバ装置10によれば、利用者は一度定期支払いの申請を行えば、雇用者から給与が支払われる日とは別に、定期的に自身の勤務実績に応じた給与相当額を受け取ることができるようになる。そして、サーバ装置10は予め所定のタイミングで事前データを生成することで、支払い日当日に処理負荷が集中しないようにすることができる。
【0075】
以上の説明では、利用者は毎回の支払いで受け取りたい金額を申請時に直接指定することとしたが、支払い金額はそれ以外の方法で決定されてもよい。例えば利用者は利用可能上限額に対する割合(支払い金額率)を指定することとしてもよい。この場合、支払いを行う時点で、それまでの勤務実績に基づいて算出される支払い可能上限額に対して利用者が予め指定した支払い金額率を乗じた金額を支払い金額とする。そのため、まだ最新の勤務実績データが雇用者から提供されていない支払い日より前のタイミングでは、支払い金額を確定できない場合がある。そこで、このような申請を行った利用者については、事前データ生成部54は事前データの生成を行わないこととしてもよい。この場合、事前データ生成部54は、事前データ生成処理を実行する際に、支払い金額を直接指定する申請については事前データを生成し、支払い金額に代えて支払い金額率が指定されている申請については事前データを生成しないこととする。この場合、事前データ生成部54は、支払い当日に、申請データテーブルを参照してその日が支払い日であり、かつ支払い金額率が指定されている申請データを抽出し、その内容に基づいて事前データを生成、登録する。これは、生成対象期間が当日1日分であることを除けば、定期的に実行する事前データの生成処理と同様の処理であってよい。この場合、支払い処理部55は、事前データ生成部54が生成した事前データを直ちに利用して、そのまま支払い処理を実行する。
【0076】
あるいは事前データ生成部54は、新たな勤務実績データが雇用者から提供されたタイミングで事前データ生成処理を実行してもよい。こうすれば、新たに取得された勤務実績データに基づいて算出される支払い可能上限額を利用して支払い金額を算出できるため、支払い金額が支払い金額率に応じて算出される場合にも、その時点で支払い可能な金額を反映した事前データを生成することができる。
【0077】
また、支払い金額率を指定する定期支払いの申請が受け付けられた場合、事前データ生成部54はこれまでの説明における支払い金額に代えて、支払い金額率の情報を含む事前データを生成することとしてもよい。この場合支払い処理部55は、事前データに含まれる支払い金額率と、支払い処理実行時点における支払い可能上限額とを用いて実際の支払い金額を算出することができる。さらに、このように支払い金額率を含む事前データを保持しておくこととすれば、支払い予定日提供部56は、支払い日とともにその支払い日に支払うべき支払い金額を算出するために用いる支払い金額率の情報を利用者端末30に対して提供することができる。
【0078】
また、事前データ生成部54は、データベースの空き容量が不足している場合などにおいても、支払い日より前に事前データの生成を行わず、支払い日当日に事前データの生成処理を実行することとしてもよい。これにより、事前データがデータベースDの容量を圧迫する状態を避けることができる。
【0079】
また、以上の説明ではサーバ装置10の勤務データ取得部51が取得した勤務データに基づいて上限額取得部52が支払い可能上限額を算出することとしたが、上限額取得部52は別の情報処理装置によって算出された支払い可能上限額の情報をその情報処理装置から受信することによって取得してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 サーバ装置、11 制御部、12 記憶部、13 通信部、20 雇用者端末、30 利用者端末、31 表示装置、32 操作デバイス、51 勤務データ取得部、52 上限額取得部、53 申請受付部、54 事前データ生成部、55 支払い処理部、56 支払い予定日提供部。