(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102728
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/16 20060101AFI20220630BHJP
C09D 167/07 20060101ALI20220630BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220630BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220630BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20220630BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C09D175/16
C09D167/07
C09D7/61
B32B27/30 A
B05D5/00 B
B05D7/24 302P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217632
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】591163650
【氏名又は名称】日本化工塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸典
(72)【発明者】
【氏名】遠竹 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 賢優
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA02
4D075CA03
4D075DA04
4D075DB13
4D075DB31
4D075DB33
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4F100AA01A
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4J038PB08
4J038PB09
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来と比して、耐折り曲げ性及び耐擦り傷性に優れたハードコート層を形成できるコーティング組成物の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)2~6個の不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレート、(B)8~20個の不飽和基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、(C)無機微粒子、(D)光重合開始剤を含有する、コーティング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(D)を含有する、コーティング組成物。
(A)2~6個の不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレート
(B)8~20個の不飽和基を有するポリエステル(メタ)アクリレート
(C)無機微粒子
(D)光重合開始剤
【請求項2】
前記(A)及び前記(B)の含有比が、固形分質量比で70/30~20/80である請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記(C)がシリカ、アルミナから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
さらにパーフルオロポリエーテル変性のウレタン(メタ)アクリレートまたはパーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートであるパーフルオロポリエーテル変性物(E)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
基材上に請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング組成物を用いてハードコート層が形成された塗装物品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング組成物を用いて基材上にハードコート層を形成することを含む塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に耐折り曲げ性及び耐擦り傷性に優れたハードコート層を形成できるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット等の画像表示面は、通常、傷がつかないように、耐擦り傷性を付与することが求められる。このような要求に対しては、基材上にハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用することにより、軽量でありながら、これら画像表示装置の画像表示面の耐擦り傷性を向上させている。近年、これらの装置には、持ち運ぶ際に折り畳み、使用時には折り畳みを開いた状態とする形態のものがあり、そのため画像表示面は繰り返し折り曲げても破損せず復元する耐折り曲げ性を有することが求められる場合があった。
【0003】
例えば特許文献1では、高硬度を示しながらも、優れた柔軟性を有するフレキシブルプラスチックフィルムを製造できるコーティング組成物として、3~6官能性アクリレート系バインダー、7~20官能性ウレタンアクリレート系バインダー、光開始剤、並びにd50が20~35nmの第1無機微粒子群およびd50が40~130nmの第2無機微粒子群を含むコーティング組成物が提案されている。
【0004】
また特許文献2では、優れた屈曲性と高い硬度とを同時に有するハードコートフィルムとして、ハードコート層が、ベース樹脂と復元性ウレタン(メタ)アクリレートとのブレンドの固化層または硬化層であり、該ベース樹脂が、3個~9個の紫外線重合性官能基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む多官能(メタ)アクリレートである、ハードコートフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-525476号公報
【特許文献2】特開2020-064236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の組成物では、10万回の折り曲げ耐久試験に耐えても20万回の折り曲げ耐久試験には耐えられず復元不可となり、特許文献2に開示の組成物では、厳しい折り曲げ耐久試験には耐えられないという不具合があった。
【0007】
本発明は、従来と比して、耐折り曲げ性及び耐擦り傷性に優れたハードコート層を形成できるコーティング組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の(A)~(D)を含有するコーティング組成物に関する。
(A)2~6個の不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレート
(B)8~20個の不飽和基を有するポリエステル(メタ)アクリレート
(C)無機微粒子
(D)光重合開始剤
【発明の効果】
【0009】
本発明のコーティング組成物によれば、特定のウレタンアクリレートと特定のポリエステルアクリレートを含有することにより、耐折り曲げ性及び耐擦り傷性に優れたハードコート層を基材上に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について説明する。
【0011】
<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物(以下、本発明の組成物とも略す)は、(A)2~6個の不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレート、(B)8~20個の不飽和基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、(C)無機微粒子及び(D)光重合開始剤を含有する。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味するものである。
【0013】
<<ウレタン(メタ)アクリレート(A)>>
本発明においてウレタン(メタ)アクリレート(A)は、2~6個の不飽和基、好ましくは3~6個の不飽和基を有するものである。
【0014】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、以下の(1a)または(2a)等の反応により製造される反応生成物が挙げられる。
(1a)ポリイソシアネート化合物と水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させた反応生成物。
(2a)ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られるポリウレタンポリオールに、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを反応させた反応生成物。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートおよびリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、並びにこれらのジイソシアネートの2量体又は3量体(例えば、ビウレット付加物又はイソシアヌレート環タイプ付加物等)等が挙げられる。
【0016】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に使用される水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリセロールジ(メタ)アクリレート、並びに、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトン若しくはγ-ブチロラクトン等を付加して得られるアルキレンオキサイド変性又はラクトン変性の化合物等、またはこれらの化合物にポリイソシアネートを付加した化合物等を挙げることができる。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に使用されるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0018】
上記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の活性水素含有重合性モノマーにヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を付加してなる不飽和化合物等が挙げられる。
【0019】
上記のとおり得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、耐折り曲げ性付与の観点から、重量平均分子量(Mw)が1000~9000であることが好ましく、より好ましくは1500~6000、さらに好ましくは2000~4000である。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量の調整は、モノマー組成や重合反応条件等を適宜調整することにより行うことができる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値であり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ装置として「HLC/GPC150C」(Water社製、60cm×1)及び溶媒としてo-ジクロロベンゼンを使用し、カラム温度135℃、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o-ジクロロベンゼン3.4mlに対しウレタン(メタ)アクリレート5mgの溶液濃度となるようにして140℃で1~3時間溶解することにより調製した。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィのためのカラムとしては「GMHHR-H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を使用することができる。数平均分子量も上記と同様にして求めることができる。なお、本明細書においてウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の重量平均分子量についても同様にして求めることができる。
【0022】
本発明の組成物における上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、耐折り曲げ性の点から、該組成物中の全硬化被膜形成成分を基準として、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは25~70質量%、さらに好ましくは30~60質量%である。
【0023】
尚、本明細書において、本発明の組成物中の全硬化被膜形成成分とは、該組成物から、水、有機溶媒等の溶媒を除いた残渣(固形分)の合計質量を意味する。
【0024】
<<ポリエステル(メタ)アクリレート(B)>>
本発明においてポリエステル(メタ)アクリレート(B)は、耐折り曲げ性付与の点から、8~20個の不飽和基、好ましくは12~18個の不飽和基、より好ましくは15~18個の不飽和基を有し、分岐鎖状または樹枝状の構造を有することが好ましい。特に樹枝状、いわゆるハイパーブランチ構造を有することが、耐折り曲げ性付与の点から好ましい。
【0025】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート(B)としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ポリカプロラクトントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジグリセリン、デンドリマーポリオールまたはハイパーブランチポリオール等の分岐構造を有する水酸基含有化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸等の不飽和酸との付加反応によって得られるもの等が挙げられる。
【0026】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート(B)としては、具体的には例えば、下記構造式で表されるものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
【0028】
前記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、R´は炭素原子数1~4の炭化水素基である。
【0029】
上記ポリエステル(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量(Mw)は、耐折り曲げ性付与の観点から、500~50000であることが好ましく、より好ましくは1000~30000、さらに好ましくは1500~10000である。
【0030】
本発明の組成物における上記ポリエステル(メタ)アクリレート(B)の含有量は、耐折り曲げ性の点から、該組成物中の全硬化被膜形成成分を基準として、好ましくは10~70質量%であり、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。
【0031】
本発明では、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及びポリエステル(メタ)アクリレート(B)の含有比が、耐折り曲げ性の点から、固形分質量比で30/70~80/20であり、好ましくは40/60~70/30、より好ましくは40/60~60/40である。
【0032】
本発明では、性能に影響しない範囲で、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及びポリエステル(メタ)アクリレート(B)以外の重合性不飽和化合物を適宜併用でき、その種類としては特に限定されず、従来公知の単官能重合性不飽和化合物や多官能重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0033】
<<パーフルオロポリエーテル変性物(E)>>
本発明では、特に指紋等の汚染を防止する観点から撥水性付与のために、パーフルオロポリエーテル変性のウレタン(メタ)アクリレートやパーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレート等のパーフルオロポリエーテル変性物(E)を配合できる。パーフルオロポリエーテル変性のウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは6~20個の不飽和基、より好ましくは9~15個の不飽和基を有する。
【0034】
パーフルオロポリエーテル変性のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、以下の(1e)または(2e)等の反応により製造される反応生成物が挙げられる。
(1e)ポリイソシアネート化合物と水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とパーフルオロポリエーテルポリオールとの反応生成物。
(2e)パーフルオロポリエーテル(メタ)アクリレートは、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とパーフルオロポリエーテルポリオールとの反応生成物。
【0035】
(1e)におけるポリイソシアネート化合物並びに(2e)における水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、前述の(A)成分の説明で列記したものが使用できる。(1e)および(2e)におけるパーフルオロポリエーテルポリオールとしては、水酸基を含有し、且つその構造に、-[CF2CF2O]-、-[CF2O]-等で表される単位を含むものであり、例えば、下記式(I)で示されるもの等が挙げられる。
R1-[(O-R2)a-(O-R3)b]-OR1 (I)
【0036】
前記式(I)中、R1はヒドロキシアルキル基、R2及びR3は同一又は異なって、パーフルオロアルキレン基、a+bが1~30の整数、を示す。
【0037】
前記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、炭素数が1~6程度が好ましく、炭素数1又は2程度がより好ましい。具体的には例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基およびヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0038】
前記パーフルオロアルキレン基としては、例えば、炭素数が1~10程度が好ましく、特に1~4程度が好ましい。具体的には例えば、パーフルオロメチレン基、パーフルオロジメチレン基、パーフルオロトリメチレン基、パーフルオロテトラメチレン基、パーフルオロプロピレン基およびパーフルオロブチレン基等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物におけるパーフルオロポリエーテル変性物(E)の含有量は、撥水性付与の点から、該組成物中の全硬化被膜形成成分を基準として、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~35質量%である。
【0040】
<<無機微粒子(C)>>
本発明において無機微粒子(C)は、耐擦り傷性の観点から配合されるものであり、通常、平均一次粒子径が好ましくは1~400nmの範囲内、より好ましくは5~200nmの範囲内のものが使用できる。平均一次粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)であって、例えば日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて測定できる。また微粒子(C)は、表面が有機物により変性されていてもよい。
【0041】
無機微粒子(C)としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化チタン等の微粒子が挙げられ、特にシリカ、アルミナが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
本発明の化合物における無機微粒子(C)の含有量は、耐擦り傷性の点から、該組成物中の全硬化被膜形成成分を基準として、好ましくは0.1~50質量%の範囲内であり、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~25質量%である。
【0043】
<<光重合開始剤(D)>>
光重合開始剤(D)は、活性エネルギー線を吸収して、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物であり、2種以上の化合物の混合物であってもよい。光重合開始剤(D)としては、例えば、光化学的に活性化可能な化合物(例えば、ベンゾイン)、発色団と共開始剤(例えば、ベンゾフェノン及び第三級アミン)との組合せ及びこれらの混合物、増感剤と、共開始剤(例えば、チオキサントン及び第三級アミン)との又は発色団(例えば、チオキサントン及びアミノケトン)との組合せ、H2O2と鉄(II)塩との組合せ等のレドックス系、並びに染料とホウ酸塩及び/又はアミン等との電子輸送ペアー等を挙げることができる。
【0044】
光重合開始剤(D)として具体的には、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα-ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、o-メチルベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’-ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、α-イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’-ジクロル-4-フェノキシアセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4-ナフトキノン等のキノン;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン化合物;ジ-t-ブチルパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。
【0045】
上記光重合開始剤(D)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
本発明の組成物における光重合開始剤(D)の固形分含有量は、硬化性、被膜硬度の観点から、成分(A)及び成分(B)の合計固形分[成分(E)を使用する場合はこれを含む]100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部の範囲内であり、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは2~10質量部である。
【0047】
<<添加剤>>
本発明のコーティング組成物は、さらに必要に応じて各種添加剤を配合してもよく、所望により溶媒で希釈してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤(例えば、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、ビニル系表面調整剤等)、界面活性剤、樹脂粒子、易滑剤、脱泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤等が挙げられる。
【0048】
前記溶媒は、本発明の組成物の溶液粘度を適宜調整し、特に薄膜コーティングを行う際に膜厚を調整できるため適宜選択することが好ましい。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0049】
本発明のコーティング組成物は、以上に述べた(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須として主成分として含むものであり、さらに必要に応じて使用される添加成分を溶媒中に混合し、溶解又は分散せしめることができる。
【0050】
<基材>
本発明のコーティング組成物をフィルム基材などの基材上に塗装し、被膜を形成することにより、ハードコートフィルムを得ることができる。基材には特段の制限はなく、ハードコート用フィルムとして従来公知の基材から適宜選択して用いることができる。
【0051】
基材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等のフィルム基材やガラス基材が挙げられる。これら基材の厚さは、好ましくは20~250μm、より好ましくは30~200μmである。
【0052】
前記フィルム基材は適宜表面処理がなされていてもよく、例えばフィルム基材表面に対し予め、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理、プライマー組成物による塗装処理等の易接着処理がなされていてもよい。
【0053】
前記ガラス基材は通常のガラスのほか、各種の化学処理を施したガラスであってよく、例えばシランカップリング剤などによる薬品処理やエッチング処理等の前処理がなされていてもよい。
【0054】
<塗装方法>
本発明の組成物を基材上に塗装してハードコート層を形成することにより、耐折り曲げ性及び耐擦り傷性に優れたハードコート層を有する塗装物品が得られる。また本発明の組成物は、各種積層体を構成する一層として基材の片面もしくは両面に塗装して適宜使用することもできる。本発明の組成物を基材上に塗装する方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0055】
塗装膜厚は、硬化膜厚で通常1~100μm、好ましくは1~40μm、さらに好ましくは1~20μmである。
【0056】
基材上に塗装して得られた被膜は、セッティング及び/又は予備加熱を施した後、活性エネルギー線を照射してもよい。この、セッティング及び/又は予備加熱を施す工程は、塗装直後の被膜中の揮発分を減少させ又は揮発分を除去するために行なわれ、例えばエアブロー、IR炉等で行うことができる。
【0057】
セッティングは、通常、塗装された被塗物をほこりのない雰囲気に室温で好ましくは30秒間~600秒間放置することにより実施できる。予備加熱(プレヒート)は、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、好ましくは40~110℃、より好ましくは50~100℃の温度で好ましくは30秒間~30分間加熱することにより実施できる。
【0058】
また、エアブローを行う場合には、通常、被塗物の塗装面に好ましくは常温又は25℃~80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより実施できる。予備加熱時間は、好ましくは30秒間~600秒間である。
【0059】
また、加熱と後述する活性エネルギー線照射とを併せて行う際には、光線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に光照射を行う際には、被塗物が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で光照射を行なってもよい。
【0060】
照射される活性エネルギー線としては、公知のものを使用できる。具体的には、例えば、紫外線、可視光線、レーザー光(例えば、可視光レーザー、紫外線レーザー等)、電子ビーム、電磁波等が挙げられる。これらの活性エネルギー線のうち、経済性の観点から、紫外線が好ましい。
【0061】
活性エネルギー線の照射源としては、公知のものを使用できる。具体的には、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、LED(例えば、Light Emitting Diode、発光ダイオード)、太陽光等を使用できる。また、例えば、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用できる。
【0062】
また、活性エネルギー線の照射は、全領域及び/又は一部を、例えば、マスクを介して行っても、レーザービームを用いて行ってもよい。その手段によって特定の領域だけの被膜の硬化を行うことも可能である。活性エネルギー線の照射量は、照射源によって異なるが、活性エネルギー線硬化型組成物が重合し得る範囲であればよく、例えば、高圧水銀灯を使用した場合、積算照射量で100~1000mJ/cm2が好ましく、200~500mJ/cm2が特に好ましい。
【0063】
<塗装物品>
本発明の組成物によれば、内曲げ(Infold)はもちろん、特に外曲げ(Outfold)での20万回の折り曲げ耐久試験にも耐え得るハードコート層を基材上に形成し得る。本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、優れた耐折り曲げ特性と、良好な耐擦り傷性および撥水性を示し、次世代ディスプレイのカバーフィルムなどに用いられる。
【0064】
このような本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、多様な分野で活用し得る。該塗装物品の用途としては、例えば、平らな形態だけでなく、カーブド、ベンダブル、フレキシブル、ローラブルまたはフォールダブル形態の移動通信端末、スマートフォンまたはタブレットPCのタッチパネル、および各種ディスプレイのカバー基板または素子基板が挙げられる。
【0065】
本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、例えば、JIS K 5600-5-1:1999[耐屈曲性(円筒形マンドレル法)]に準拠して、1回/1秒の速度で20万回繰り返し折り曲げを行う折り曲げ耐久試験において、好ましくは15万回、より好ましくは20万回まで異常が発生しない程度の柔軟性を示し得る。該試験において、「異常が発生する」とは、例えば、復元不可となる場合等をいう。
【0066】
本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、例えば、ハードコート層に約200g重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で10往復、擦ることにより目視にて評価する耐擦り傷性試験において、好ましくは、わずかに傷が認められるが実用上問題ないレベル(例えば、傷数が0~20本/mm2)、より好ましくは傷が全く認められない耐擦り傷性を示し得る。
【0067】
本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、例えば、ハードコート層に約200g重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で1,000往復、擦ることにより目視にて評価する耐擦り傷性試験において、好ましくは、わずかに傷が認められるが実用上問題ないレベル(例えば、傷数が0~20本/mm2)、より好ましくは傷が全く認められない耐擦り傷性を示し得る。
【0068】
本発明の組成物を用いて製造された塗装物品は、例えば、ハードコート層の水接触角が、好ましくは70~120度であり、より好ましくは90~120度の撥水性を示し得る。ハードコート層の水接触角は、硬化被膜の表面に純水1.0μLを1滴滴下し、接触角計(DS-501、協和界面科学株式会社製)を使用し、滴下より1秒後の接触角をθ/2法により算出できる。
【実施例0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0070】
実施例1
ウレタンアクリレート(A-1)を42部(固形分)、重合性不飽和化合物(B-1)を42部(固形分)、無機微粒子(C-1)の分散液を10部(固形分で)、光重合開始剤として、DAIDO UV-CURE♯174を4部(固形分)、Photocure50を1部(固形分)、及び表面調整剤としてBYK-333を1.0部(固形分)配合し、酢酸エチルで固形分含有率40%まで希釈し攪拌し、ハードコート用コーティング組成物No.1を製造した。表1に各成分の配合量を固形分質量比で示す。
【0071】
実施例2~7及び比較例1~4
実施例1において、各成分の配合を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1~4の、固形分含有率40%のハードコート用コーティング組成物No.2~11を得た。表1に示す各組成物の配合は各成分の固形分質量比である。
【0072】
実施例8
ウレタンアクリレート(A-1)を35部(固形分)、重合性不飽和化合物(B-1)を35部(固形分)、パーフルオロポリエーテル変性のウレタン(メタ)アクリレート(E-1) を15部(固形分)、無機微粒子(C-1)の分散液を9部(固形分で)、光重合開始剤として、DAIDO UV-CURE♯174を4部(固形分)、Photocure50を1部(固形分)、及び表面調整剤としてBYK-333を1.0部(固形分)配合し、酢酸エチルで固形分含有率40%まで希釈し攪拌し、ハードコート用コーティング組成物No.12を製造した。表2に各成分の配合量を固形分質量比で示す。
【0073】
実施例9~15
実施例8において、各成分の配合を表2に示すものとする以外は実施例8と同様にして、実施例9~15の、固形分含有率40%のハードコート用コーティング組成物No.13~19を得た。表2に示す各組成物の配合は各成分の固形分質量比である。
【0074】
表1及び表2中の(*1)~(*14)は下記のとおりである。
(*1)A-1:5個の不飽和基を有するウレタンアクリレート、Mw3600
(*2)A-2:3個の不飽和基を有するウレタンアクリレート、Mw3100
(*3)A-3:3個の不飽和基を有するウレタンアクリレート、Mw1500
(*4)A-4:9個の不飽和基を有するウレタンアクリレート、Mw1800
(*5)A-5:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
(*6)B-1:15~18個の不飽和基を有するハイパーブランチポリエステルアクリレート
(*7)B-2:18個の不飽和基を有するハイパーブランチポリエステルアクリレート
(*8)B-3:6個の不飽和基を有するハイパーブランチポリエステルアクリレート
(*9)C-1:平均一次粒子径15nmのアルミナ
(*10)C-2:平均一次粒子径30nmのシリカ
(*11)DAIDO UV-CURE♯174、(実施例表中DAIDO♯174と記載)商品名、大同化成工業株式会社製、光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、固形分100%、
(*12)Photocure 50、商品名、大同化成工業株式会社製、光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、固形分100%、
(*13)BYK-333、商品名、ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系表面調整剤、固形分100質量%。
(*14)E-1:パーフルオロポリエーテル変性の15個の不飽和基を有するウレタンアクリレート
【0075】
<ハードコートフィルムの製造>
透明基材である厚さ100μmのPETフィルム基材に、各組成物をバーコーターで硬化後の膜厚が約15μmとなる条件で塗装し、100℃で30秒プレヒートして溶媒を除去した後、紫外線照射装置で、紫外線(ピークトップ波長365nm)を照度150mW/cm2で積算照射量500mJ/cm2となる条件で照射し、塗膜を硬化させてハードコートフィルムを作製した。得られたハードコートフィルムを試験サンプルとし、下記の試験方法に従って各試験に供した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0076】
<試験項目>
試験項目1:折り曲げ耐久試験
JIS K 5600-5-1:1999[耐屈曲性(円筒形マンドレル法)]に準拠し、温度25℃において、面状体無負荷U字伸縮試験機「DMLHB-FS-C」(ユアサシステム機器株式会社製)にハードコート層が下側になるように試験サンプルをセットし、1回/1秒の速度で20万回繰り返し折り曲げを行った。
〇:20万回まで異常なし
〇-:15万回まで異常なし
△:10万回まで異常なし
×:クラック発生
【0077】
試験項目2:耐擦り傷性試験(1)
各試験板のハードコート層に約200g重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で10往復、擦ることにより行い、目視で評価した。
◎:傷が全く認められない
〇:わずかに傷が認められるが、実用上問題ないレベル
△:傷が認められる
×:著しく傷ついている
【0078】
試験項目3:撥水性
各試験板のハードコート層の水接触角により、初期の撥水性を評価した。測定は、硬化被膜の表面に純水1.0μLを1滴滴下し、接触角計(DS-501、協和界面科学株式会社製)を使用し、滴下より1秒後の接触角をθ/2法により算出した。
【0079】
試験項目4:耐擦り傷性試験(2)
各試験板のハードコート層に約200g重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で1,000往復、擦ることにより行い、目視で評価した。
◎:傷が全く認められない
〇:わずかに傷が認められるが、実用上問題ないレベル
△:傷が認められる
×:著しく傷ついている
【0080】
【0081】
【0082】
表1に示すように、本発明の規定を満たす実施例1~7の組成物は、比較例1~4と比較して、優れた耐折り曲げ性及び耐擦り傷性を示した。また、表2に示すように、本発明の組成物は、パーフルオロポリエーテル変性物(E)をさらに含有することにより、優れた撥水性が示すことがわかった。
【0083】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。