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▶ ゾール サーキュレイション インコーポレイテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010276
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】熱交換器および熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61F7/00 310F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185248
(22)【出願日】2021-11-12
(62)【分割の表示】P 2019049184の分割
【原出願日】2012-09-28
(31)【優先権主張番号】61/542,004
(32)【優先日】2011-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510034982
【氏名又は名称】ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デイブロワイアック、ジェレミー トーマス
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA05
4C099CA01
4C099CA20
4C099EA05
4C099GA30
4C099LA01
4C099LA03
4C099PA04
(57)【要約】
【課題】熱交換カテーテル装置およびその製造法を提供すること。
【解決手段】 熱交換に使用可能な閉ループカテーテルは、可撓性多管腔カテーテル本体を通る複数のほぼ横断方向の穿孔を形成し、チューブのループがカテーテル本体から突出するように、チューブを穿孔に通し、チューブの一端をカテーテルの流入管腔に接続し、チューブのもう一端をカテーテルの流出管腔に接続することによって製造される。次に、カテーテルが対象者の脈管構造に挿入される間に、加熱または冷却された熱交換媒体をチューブ内に循環させ、対象者の血流と、チューブ内を循環している熱交換媒体との間で熱交換をもたらす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル装置であって、
基端側部分および先端側部分を有する長尺状本体であって、前記長尺状本体の前記基端側部分が流入管腔および流出管腔を有する長尺状本体を備え、さらに、
前記流入管腔に接続された第1端部と、前記流出管腔に接続された第2端部とを有するチューブであって、前記第1端部と前記第2端部との間の複数の位置は、前記先端側部分から外側に突出する一連のループを、前記チューブが形成するように、前記先端側部分上の一連の離間した位置を通り抜ける、チューブを備え、
前記チューブのループを有する、前記長尺状本体の前記先端側部分は、加熱または冷却された熱交換流体が前記チューブを通って循環されている間、患者の血液が前記チューブのループを通って流れるように、前記患者の脈管構造に挿入可能であり、それにより、前記熱交換流体と前記患者の血流との間の熱交換をもたらす、カテーテル装置。
【請求項2】
貫通管腔であって、a)ガイドワイヤ上における前記カテーテル装置の前進を容易にすること、および、b)前記カテーテル装置を介して対象者の身体への治療物質または装置を送達するための通路として、から選択された少なくとも1つの目的のために利用可能な貫通管腔をさらに備える、請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項3】
前記チューブのループが略U字形状をなす、請求項1又は2に記載のカテーテル装置。
【請求項4】
前記チューブが、0.0254mm(約0.001インチ)の壁厚を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項5】
前記チューブが、689KPa(約100psi)までの圧力に耐える、請求項1~4のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項6】
前記チューブが、該チューブ内の流体圧に応じて限られた拡張のみを行う硬質の材料または半硬質の材料から形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記チューブが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエーテルブロックアミド材料から形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
前記流入管腔への窓が第1位置に形成されており、前記チューブの前記第1端部が前記流入管腔への窓を介して延びているとともに、該流入管腔の壁に取り付けられており、
前記流出管腔への窓が第2位置に形成されており、前記チューブの前記第2端部が前記流出管腔への窓を介して延びているとともに、該流出管腔の壁に取り付けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項9】
前記流出管腔への前記窓が、流体が前記チューブのループを通って先端方向に進むように、前記流入管腔への前記窓よりも先端側に位置する、請求項8に記載のカテーテル装置。
【請求項10】
前記流出管腔への前記窓が、流体が前記チューブのループを通って基端方向に進むように、前記流入管腔への前記窓よりも基端側に位置する、請求項8に記載のカテーテル装置。
【請求項11】
前記チューブの前記第1端部および前記第2端部が、接着剤によって流入管腔および流出管腔に対してそれぞれ固定されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項12】
前記長尺状本体上の前記一連の離間した位置においてチューブ受け構造が形成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項13】
前記チューブ受け構造は、前記チューブが挿通される横断方向の開口を有する、請求項12に記載のカテーテル装置。
【請求項14】
前記カテーテル装置を介して加熱または冷却された熱交換流体を循環させるための装置と組み合わされた、請求項1~13のいずれか一項に記載のカテーテル装置を含むシステム。
【請求項15】
前記加熱または冷却された熱交換流体を循環させるための装置が、前記カテーテル装置を介して循環される熱交換流体の温度および流量の少なくとも一方を制御する制御装置を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御装置が、a)入力目標体温と、b)感知した体温を示す温度センサーからの信号とを受信し、かつ、前記感知した体温を前記入力目標体温と同じか、または前記入力目標体温の許容範囲内にするようにさせるか、またはしようとする方法で、前記熱交換流体の温度および流量の少なくとも一方を変化させるようにプログラムされている、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学および生物医学工学に関し、より具体的には、熱交換カテーテル装置並びにその製造法および使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許法施行規則(37CFR)第1.71条(e)項に準じて、この特許文書は、著作権保護を受ける内容を含む。版権所有者は、それが特許商標庁の包袋または記録に掲載されている通りに、特許文書または特許情報開示全体の複写に異議はないが、他の場合には如何なる著作権の権利もすべて留保する。
【0003】
低体温は、虚血、酸素欠乏、または中毒による損傷(toxic insult)の作用から様々な器官および組織(例えば、毛髪、脳、腎臓)を保護する目的で、ヒトおよび一部の動物において誘発され得る。例えば、動物研究および/または臨床試験により、軽度の低体温は、虚血性心イベント(例えば、心筋梗塞(myocardial infract)、急性冠動脈症候群など)、心肺蘇生術後の無酸素後昏睡(postanoxic coma)、外傷性脳損傷、卒中、クモ膜下出血、熱および神経学的損傷に罹患している動物またはヒトにおいて、神経保護作用および/または心臓保護作用を有し得ることが示唆されている。また、研究により、全身低体温が血管造影術処置を受ける腎機能障害の既往がある患者の腎臓に対するX線造影剤の毒性作用(例えば造影剤ネフロパシー)を改善し得ることが示されている。
【0004】
低体温を誘発する1つの方法は、熱交換カテーテルを血管内に挿入し、次に前記熱交換カテーテル中に熱交換流体を循環させる血管内温度管理(endovascular temperature management:ETM)によるものである。この技術は、対象者の脈管構造を通って流れる血液を効果的に冷却し、その結果として対象者の深部体温を所望の目標温度に低下させることができる。またETMは、監視している体温を選択した温度で維持するために、身体を暖めたり、かつ/または、体温を制御したりすることもできる。選択した目標温度からの再加温または再冷却の制御された速度が所望される場合には、それは身体に加えられる熱量または身体から除去される熱量を慎重に制御し、それにより患者の温度変化を制御することによって行うこともできる。
【0005】
ETMに使用するために多数の熱交換カテーテルが現在入手可能である。そのような1つのカテーテルであるカリフォルニア州サニーヴェール所在のゾール サーキュレイション インコーポレイテッド(ZOLL Circulation, Inc.)から入手可能なSolex(商標)カテーテルは、概して、カテーテルの先端側部分の両側から突出する湾曲したチュービングループ(curved loops of tubing)を有する可撓性カテーテルシャフトを備える。術中、Solex(商標)カテーテルの先端側部分を対象者の脈管構造に挿入し、次いで加熱または冷却した熱交換媒体を湾曲したチュービングループ中に循環させる。これは、対象者の血流中に熱交換媒体を注入することなく、循環する熱交換媒体と、対象者の脈管構造を通って流れる血液との間で熱の交換をもたらす。
【0006】
現在のSolex(商標)カテーテルは、2つのサブアセンブリ、すなわち基端側部分と先端側部分とから形成されている。基端側部分は、熱交換流体が先端方向に流れる流入管腔と、熱交換流体が基端方向に流れる流出管腔とを有する二重管腔管(dual lumen tube)である。先端側部分はコイル状シャフトであり、コイル状シャフトは、それに「縫いつけられ」て、突出する湾曲したチュービングループを形成する薄壁チュービングを有する。これらの基端側部分および先端側部分は、次に接合されて最終的なカテーテルを形成する。この二部品構造は、カテーテルシャフトに沿った中間に接合または接続を必要とし、比較的労働集約的である。
【0007】
加えて、Solex(商標)カテーテルの先端側部分上のコイル状シャフトは、対象者の身体からカテーテルを除去する間のような、血管イントロデューサを介して抜去される際に、「がたつき(bumpy)」感を生じる。より滑らかな一体型シャフト(one-piece shaft)に有利となるコイル状先端側シャフトの排除は、カテーテルが患者から除去されている最中のそのような「がたつき」感を低減または排除することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当業において、Solex(商標)カテーテルおよび/または同様の構造を有するカテーテルの製造に用いられ得るカテーテル製造のための新たな方法を開発する必要性があり、それによりカテーテルシャフトに沿った中間における接合または接続の形成の必要をなくし、下記のような他の潜在的な利点、すなわち、1)カテーテルの製造に用いられる部品点数の削減、および/または、2)カテーテルの製造に必要とされる労働力および手動努力(manual endeavor)の低減、例えば、薄壁チュービングをコイル状シャフトに取り付けるための繊細な縫製工程の必要性の排除、および/または、3)患者から除去されるときにカテーテルが有する「がたつき」感の低減または排除を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、熱交換流体または他の流動可能物が循環し得る閉ループ再循環回路を形成する突出したチュービングループ(protruding loops of tubing)を備えた一体型(one-piece)または単一(unitary)のカテーテルシャフトを有するカテーテル装置が提供される。
【0010】
さらに本発明によれば、a)基端部、先端部、流入管腔および流出管腔を有する長尺状カテーテル本体と、b)離間した位置において前記カテーテル本体を通って横断方向に延びる(extending transversely)複数の孔と、c)前記流入管腔に接続された第1端部と、前記流出管腔に接続された第2端部とを有するチューブとを備えるカテーテル装置が提供される。前記チューブは、チュービングループが前記カテーテル本体の両側から外側に突出する前記チューブの部分を備えるように、前記孔のうちの隣り合った孔を互い違いの横断方向に通過する。
【0011】
さらに本発明によれば、カテーテル装置を製造する方法が提供される。前記方法は、a)基端部、先端部、流入管腔および流出管腔を有する長尺状カテーテル本体を提供するか、または得る工程と、b)離間した位置で前記カテーテル本体を通って横断方向に延びる複数の孔を形成する工程と、c)チューブを該チューブのループがカテーテル本体の両側から外側に突出するように、前記孔のうちの隣り合った孔を互い違いの横断方向に通過させる工程と、d)前記チューブの第1端部を前記流入管腔に接続する工程と、e)前記チューブの第2端部を前記流出管腔へ接続する工程とを含む。前記孔は、ドリル加工(drilling)、パンチング(punching)、レーザー切断、ブレード切断、ウォータジェット切断、または当業において既知の他の手動技術または自動技術のような任意の適当な手段によって形成され得る。いくつかの実施形態において、前記孔は、前記カテーテル本体の長手軸線に対して一定の角度(例えばほぼ直角または他の所望角度)で前記カテーテル本体内に穴あけ器(punch)を進めることによって形成され得る。楕円形または卵形の孔が所望の場合、そのような穴あけ器は楕円形または卵形のものであり得る。
【0012】
さらに本発明の態様および詳細は、以下に述べる詳細な説明および実施例を読むと理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の血管内温度管理システムの概略図。
図2】本発明のカテーテル装置の製造中において、内部に形成された複数の横断方向の孔を有するカテーテル本体の一部の部分的斜視図。
図3】本発明のカテーテル装置の製造中において、前記チューブのループがカテーテル本体の両側で突出するように、横断方向の孔を互い違いの方向に通過するチューブを有する図2のカテーテル本体部分の部分斜視図。
図3A図3の線3A-3Aによる横断面図。
図3B図3の線3B-3Bによる横断面図。
図3C図3の線3C-3Cによる横断面図。
図4】本発明の完全に組み立てられたカテーテル装置の側面図。
図4A図4のカテーテル装置の先端図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明およびそれが参照する添付図面は、本発明のいくつかの例または実施形態を記載しているが、それらの例または実施形態は必ずしもすべてではないことが意図される。記載する実施形態は、あらゆる点で、単に例示および非限定的なものとして見なされるべきである。この詳細な説明の内容および添付図面は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0015】
図1は、熱交換チュービングループ14、体外制御卓C、および少なくとも1つの体温センサーTSを有するタイプの熱交換カテーテル12を備えた血管内温度管理システム10の概略図である。この例において、体外制御卓Cは、制御装置(例えばマイクロプロセッサー制御装置)、前記制御装置にデータを入力するためのユーザーインタフェースUI、熱交換媒体(例えば0.9%の塩化ナトリウム溶液)の温度を調節するための加熱器/冷却器、および熱交換媒体をポンプ輸送するためのポンプを収容している。
【0016】
カテーテル12は、制御卓C内のポンプが、熱交換カテーテル12の先端側部分から突出する熱交換チュービングループ14を介して、温度制御された熱交換媒体を循環させることができるように、流入ラインILおよび流出ラインOLによって体外制御卓Cに接続されている。術中、カテーテル12は、対象者の脈管構造を通って流れる血液が熱交換チュービングループ14の上を通過して、該熱交換ループ14と熱交換できるように近接する(in heat exchange proximity with)ことによって、循環する熱交換媒体と対象者の血流との間で熱が交換されることが可能となるように、対象者の脈管構造内に挿入される。対象者の血流の加温または冷却は、次いで対象者の身体のすべてまたは所望部分の加温または冷却をもたらす。図1に示す特定の限定されない例では、カテーテル12の先端側部分は、熱交換チュービングループ14が対象者の下大静脈IVCの内に存在するように配置されている。そのようなカテーテルの配置は、全身温度管理が所望される用途に適している。
【0017】
温度センサーTSは、温度調節または抑制を実施することが所望される身体の全体または一部の温度を測定するために、対象者の身体の上または中に配置され得る。制御卓C内の制御装置は、現在感知した体温を示す温度センサーTSからの信号を受信する。所望の目標温度がユーザーインタフェースUIによって入力されてもよく、次に制御装置は、目標体温を達成および/または維持するために、熱交換媒体の温度および/また流量(flowate)を調節するように、加熱冷却器および/またはポンプに制御信号を発するであろう。図1に示したこの例で述べられているタイプの制御卓は、カリフォルニア州サニーヴェール所在のゾール サーキュレーションからThermogard XPS(商標)温度管理システムとして市販されている。他の潜在的に使用可能な制御卓は、他の供給元から入手可能であり、かつ/または、以下の米国特許および公開特許出願に記載されており、それらの特許文献の全開示は、参照によって余すところなく本願に明示的に援用される。
【0018】
この例のカテーテル12は図2図4Aに示す方法で構成され製造される。この例では、一体型カテーテル本体12が用いられている。図3A図3Cの断面図から認識され得るように、この例のカテーテル本体12は、流入管腔17、流出管腔15、随意の先端側注入またはガイドワイヤ管腔16、随意の内側注入管腔18、および随意の基端側注入管腔19を有する。個々の管腔15,16,17,18,19は、カテーテル本体12内に一体的に形成され(例えば、押し出され)得るか、またはカテーテル本体12の管腔内を通過する1本以上の独立したチューブからなり得る。この特定の例では、一体型カテーテル本体は押出し多管腔チューブ(extruded multilumen tube)から形成されている。また、この例において、カテーテル本体12は、その先端部に取り付けられた随意の非外傷性先端チップ部材11を有する。
【0019】
製造時、一連の横断方向の孔(transverse bores)13は、図2に示すように、カテーテル本体12を介して形成される。これらの横断方向の孔13は、カテーテル本体12の長手軸線LAに対して任意の適当な角度で形成され得る。示した特定の例において、孔13は、楕円形または卵形の穴あけ器を所定の軌道でカテーテル本体12を通して進めることによって形成された楕円形または卵形の孔である。そのような孔は、カテーテル本体12の長手軸線LAに対してほぼ直角にカテーテル本体12を通って延びている。孔13の軌道は、カテーテル本体12のその部分を介して装置または熱交換媒体を運ぶために、原形を保つこと(remain in tact)を必要とされる任意の管腔を閉塞しないようにする。この例では、随意の内側注入管腔18および随意の基端側注入管腔19は、基端側注入管腔出口開口および内側注入管腔出口開口44,46(図4に図示照)に終端においてシール(terminally sealed)される。前記開口は孔13が形成されている場所よりも基端側に位置する。従って、内側注入管腔18および基端側注入管腔19は、孔13が形成されている領域では機能しない。また、この例において、流出管腔15は、窓20でチューブ14の基端部に終端においてシールされる。したがって、孔13が形成される領域を通って延びる流出管腔15の部分は機能しない。よって、この例では、カテーテル本体12の配置および穴あけ器の軌道は、各孔13が、流入管腔15、随意の先端側注入またはガイドワイヤ管腔16を原形のままにしながら、流出管腔15、随意の内側注入管腔18、および随意の基端側注入管腔19の未使用分のみを閉塞させるように制御されている。
【0020】
カテーテル本体12は、対象とする用途に対して適切な大きさであり、かつ、前記用途に適した任意の材料から形成されている。例えば、多くの用途において、カテーテル本体12は、意図した血管または他の体管腔を介して対象者の体内の所望の位置に誘導するために十分に可撓性でありながら、約100psi(689KPa)までの使用圧に耐えるために充分な剛性および壁厚を有することが望ましい。典型的には、これは、6Fr(0.080インチ(2.032mm))~14Fr(0.180インチ(4.572mm))の外径を有し、かつ、生体適合性ポリウレタン(例えばニュージャージー州フォーハムパーク(Florham Park)所在のバスフ コーポレイション(BASF Corporation)から入手可能なElastollan(商標)、またはオハイオ州ウィクリフ所在のルーブリゾール コーポレイション(Lubrizol Corporation)から入手可能なTecothane(商標))、またはポリエーテルブロックアミド(例えばペンシルベニア州フィラデルフィア所在のアルケマ インコーポレイテッド(Arkema,Inc.)から入手可能なPebax(商標))から形成されたカテーテル本体によって達成され得る。
【0021】
熱交換チューブ14は、カテーテル装置の対象とする用途に適切な大きさであり、かつ、前記用途に適した任意の材料から形成され得る。例えば、多くの用途において、熱交換チューブ14は、a)熱伝導を最良に促進するために薄い壁厚(典型的には約0.001インチ(0.0254mm))を有すること、b)約100psi(689KPa)までの圧力に耐えるために十分な引張強度を有すること、c)圧力下で抑制できないほど拡張しないように十分に硬質または半硬質であることが望ましい。したがって、チューブ14がそのような壁厚および特性を有するチューブに押し出しおよび/または吹き込み可能な材料から形成されることが望ましい。チューブ14を形成するのに適し得る材料の例としては、様々な供給元から入手可能なポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエーテルブロックアミド(例えばペンシルベニア州フィラデルフィア所在のアルケマ インコーポレイテッドから入手可能なPebax(商標))が挙げられる。
【0022】
また、図2に見られるように、カテーテル本体12の壁の第1位置には流入管腔への窓22が削られるか、または他の方法で形成され、カテーテル本体12の壁の第2位置には流出管腔への窓20が削られるか、または他の方法で形成される。その後、図3に例示したように、チューブ14の一端を、チューブ14の略U字形ループがカテーテル本体の両側から外側に突出するように、孔13のうちの隣り合った孔を互い違いの横断方向に(例えば往復して)通過させる。次に、チューブ14の第1端部(この例では先端部)は、窓22を通って流入管腔17内に挿入され、流入管腔17の壁に固定される。これは、流入熱交換媒体が流入管腔17から前記チューブの第1端部(例えば先端部)へ流れる密封接続を形成する。流入管腔17の管腔壁へのチューブ14の取付けのシールは、熱シールのような任意の適当な手段、または接着によって行われ得る。この目的のために使用可能な接着剤の例としては、シアノアクリレート接着剤(例えば、オハイオ州ウェストレーク所在のヘンケル コーポレイト(Henkel Corporate)から入手可能なロックタイト(Loctite)4011)、UV硬化性アクリル接着剤(例えば、オハイオ州ウェストレーク所在のヘンケル コーポレイトから入手可能なロックタイト3311)、およびエポキシ系接着剤(例えば、オハイオ州ウェストレーク所在のヘンケル コーポレイトから入手可能なロックタイト3981)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。チューブ14の第2端部(この例では基端部)は、流出管腔15への窓20を通って挿入され、上述と同じ方法で流出管腔15の壁に固定される。これは、熱交換媒体がチューブ14から流出管腔15へ流れる密封接続を形成する。この構成によって、熱交換流体は、チューブ14の先端部に進入し、チューブ14の基端部から退出する。しかしながら、いくつかの実施形態では、チューブ14の基端部が流入管腔17に接続され、チューブ14の先端部が流出管腔15に接続されるように、前記接続を逆転させることが望ましいことがある。そのような代替実施形態では、孔13の軌道は、流出管腔15のその部分を原形のままにしながら、流入管腔17の先端側(未使用)部分を閉塞させ得る。
【0023】
実施形態によっては、突出したU字形チュービングループを熱硬化または他の適当な成形技術によって所望形状に形成することが望ましい。図4および図4Aに示すように、この例では、突出したU字形チュービングループ14は、示したようにカテーテル本体12の片側のまわりに周方向に湾曲するように形成される。また図4および図4Aに示すように、完全に組み立てられたときに、この発明のカテーテル装置は、その基端部上にハブ30を備える。ハブ30は、ハブ30から延びる流出管腔コネクター32(流出管腔17に接続される)と、流入管腔コネクター34(流入管腔15に接続される)と、内側注入管腔コネクター36(内側注入管腔18に接続される)、先端側注入またはガイドワイヤ管腔コネクター(distal infusion of guidewire lumen connector)36(先端側注入/ガイドワイヤ管腔16に接続される)と、基端側注入管腔コネクター36(基端側注入管腔19に接続される)とを備える。カテーテル本体12の基端領域上には、随意の目盛り付距離標識(graduated distance markings)42が、任意の特定時間において体内に留置したカテーテルの長さを示すために形成されている。また、随意の基端側X線写真マーカー48および随意の先端側X線写真マーカー50は、対象者の体内で熱を交換する領域(例えば、突出するチューブループ14)の位置のX線写真判定(radiographic determination)を容易にするためにカテーテル本体上に位置する。
【0024】
本願では、本発明の特定の実施例または実施形態に関して上述してきたが、それらの実施例および実施形態に対して、本発明の意図した趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な追加、削除、変更および改変がなされてもよいことが理解されるはずである。例えば、一実施形態または実施例の任意の要素または特質は、特に他に規定がないか、そうすることが実施形態または実施例をその目的の用途に適さないようにしない限り、別の実施形態または実施例に組み込まれてもよいし、またはそれらと共に用いられてもよい。また、方法またはプロセスの工程が特定の順序で記載または列記されている場合、特に他に規定されていない限り、またはそうすることが前記方法およびプロセスその意図した目的に対して実行不可能にしない限り、そのような工程の順序は変更されてもよい。適当な追加、削除、改変および変更はすべて、記載された実施例および実施形態の均等物と見なされ、以下の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図3C
図4
図4A
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
基端側部分および先端側部分を有する長尺状本体であって、前記長尺状本体の前記基端側部分が流入管腔および流出管腔を有する、長尺状本体と、
前記長尺状本体の前記先端側部分にある先端チップ部材と、
前記基端側部分から前記先端チップ部材における先端側開口へと延びる貫通管腔と、
前記長尺状本体の前記先端側部分に沿って、複数の位置に形成される複数の開口であって、前記貫通管腔を閉塞しないように構成される複数の開口と、
前記流入管腔に接続された第1端部と、前記流出管腔に接続された第2端部とを有する熱交換チューブであって、前記熱交換チューブは、互い違いの横断方向において前記複数の開口のそれぞれを通じて配置されており、前記先端側部分から突出する熱交換チュービングループを形成する、熱交換チューブと
備え
記長尺状本体の前記先端側部分は、患者の脈管構造に挿入可能である、熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換チュービングループは、加熱または冷却された熱交換流体が前記熱交換チューブを通って循環されている間、患者の血液が前記熱交換チュービングループの上を流れ、前記熱交換チュービングループと近接して熱交換することを可能にし、前記熱交換流体と前記患者の血流との間の熱交換をもたらすように構成される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記貫通管腔は、ガイドワイヤ上における前記熱交換器の前進を容易にすること、または、記熱交換器をした前記患者への治療物質または治療装の配送のための通路であること、のうちの少なくとも1つのために構成される、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
記熱交換チュービングルプは略U字形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
記熱交換チューブが約0.001インチ(0.025mm)の壁厚を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
記熱交換チューブが約100psi(689KPa)までの圧力に耐えるように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
記熱交換チューブが、前記熱交換チューブ内の流体圧に応じて限られた拡張のみを行うように構成される硬質の材料または半硬質の材料から形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
記熱交換チューブが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエーテルブロックアミド材料から形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
1位置に形成される前記流入管腔への窓であって、記熱交換チューブの前記第1端部が前記流入管腔への前記窓を介して延びているとともに、前記流入管腔の壁に取り付けられている、前記流入管腔への窓と、
2位置に形成される前記流出管腔への窓であって、記熱交換チューブの前記第2端部が前記流出管腔への前記窓を介して延びているとともに、前記流出管腔の壁に取り付けられている、前記流出管腔への窓と
をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記流出管腔への前記窓が、流体が前記熱交換チュービングループを通って先端方向に進むことを可能にするように、前記流入管腔への前記窓よりも先端側に位置する、請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記流出管腔への前記窓が、流体が前記熱交換チュービングループを通って基端方向に進むことを可能にするように、前記流入管腔への前記窓よりも基端側に位置する、請求項9に記載の熱交換器。
【請求項12】
記熱交換チューブの前記第1端部および前記第2端部が、接着剤によって流入管腔および流出管腔に対してそれぞれ固定されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項13】
熱交換器と流体連通するカテーテル装置であって、前記カテーテル装置は、
基端側部分および先端側部分を有する長尺状本体であって、前記長尺状本体の前記基端側部分が流入管腔および流出管腔を有する、長尺状本体と、
前記長尺状本体の前記先端側部分にある先端チップ部材と、
前記基端側部分から前記先端チップ部材における先端側開口へと延びる貫通管腔と、
前記長尺状本体の前記先端側部分に沿って、複数の位置に形成される複数の開口であって、前記貫通管腔を閉塞しないように構成される複数の開口と、
前記流入管腔に接続された第1端部と、前記流出管腔に接続された第2端部とを有する熱交換チューブであって、前記熱交換チューブは、互い違いの横断方向において前記複数の開口のそれぞれを通じて配置されており、前記先端側部分から突出する一連の熱交換チュービングループを形成する、熱交換チューブと
を有し、
前記長尺状本体の前記先端側部分は、患者の脈管構造に挿入可能である、カテーテル装置と、
前記カテーテル装置を介して加熱または冷却された熱交換流体を循環させるように構成される熱交換制御卓と
を備える熱交換システム。
【請求項14】
記熱換制御卓は、前記カテーテル装置を介して循環される熱交換流体の温度、流量またはその両方を制御するように構成される制御装置を有する、請求項13に記載の熱交換システム。
【請求項15】
前記制御装置が、入力された目標体温と、感知した体温を示す温度センサーからの1つ又は複数の信号とを受信するように構成され、前記制御装置は、前記感知した体温を前記目標体温と同じか、または前記目標体温の許容範囲内にするようにさせるか、またはしようとする方法で、前記熱交換流体の前記温度、流量またはその両方を変化させるようにプログラムされている、請求項14に記載の熱交換システム。
【請求項16】
前記熱交換チュービングループは、加熱または冷却された熱交換流体が前記熱交換チューブを通って循環されている間、患者の血液が前記熱交換チュービングループの上を流れ、前記熱交換チュービングループと近接して熱交換することを可能にし、前記熱交換流体と前記患者の血流との間の熱交換をもたらすように構成される、請求項13~15のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項17】
前記貫通管腔は、ガイドワイヤ上における前記カテーテル装置の前進を容易にすること、または、前記カテーテル装置を介した前記患者への治療物質または治療装置の配送のための通路であること、のうちの少なくとも1つのために構成される、請求項13~16のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項18】
前記熱交換チューブが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエーテルブロックアミド材料から形成されている、請求項13~17のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項19】
第1位置に形成される前記流入管腔への窓であって、前記熱交換チューブの前記第1端部が前記流入管腔への前記窓を介して延びているとともに、前記流入管腔の壁に取り付けられている、前記流入管腔への窓と、
第2位置に形成される前記流出管腔への窓であって、前記熱交換チューブの前記第2端部が前記流出管腔への前記窓を介して延びているとともに、前記流出管腔の壁に取り付けられている、前記流出管腔への窓と
をさらに備える、請求項13~18のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【請求項20】
前記流出管腔への前記窓が、流体が前記熱交換チュービングループを通って先端方向に進むことを可能にするように、前記流入管腔への前記窓よりも先端側に位置する、請求項19に記載の熱交換システム。