(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102778
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20220630BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20220630BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F04B39/00 106B
F04C29/00 T
H02K3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217725
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 寛之
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
5H604
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003CE03
3H003CF03
3H129AA02
3H129AA13
3H129AB03
3H129BB35
3H129CC27
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604PC05
(57)【要約】
【課題】ヒュージングにより生じた異物が他の部位に入り込むのを抑制できる電動圧縮機を提供すること。
【解決手段】熱収縮チューブ70の第1端部70aを含んだ所定の長さの部位は、モータ配線30に沿うよう収縮している。また、熱収縮チューブ70の第2端部70bを含んだ所定の長さの部位は、熱収縮チューブ70が接続端子50だけでなくモータ配線30に沿うよう収縮している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動回路と電気的に接続された導電部材と、
前記電動モータから引き出されたモータ配線と、
前記導電部材と前記モータ配線とを電気的に接続する接続端子と、を備え、
前記モータ配線は、絶縁被膜を有する複数の導線を束ねることで形成されており、
前記接続端子は、前記モータ配線と電気的に接続される接続部を有し、
前記接続部において、前記絶縁被膜が溶融されつつ前記導線と前記接続端子が圧着されている電動圧縮機であって、
開口を両端に有する筒状であるとともに前記接続部を覆う熱収縮チューブを備え、
前記熱収縮チューブは、前記両端を含み所定の長さに渡って前記モータ配線に沿うよう収縮されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動回路と電気的に接続された導電部材と、
前記電動モータから引き出されたモータ配線と、
前記導電部材と前記モータ配線とを電気的に接続する接続端子と、を備え、
前記モータ配線は、絶縁被膜を有する複数の導線を束ねることで形成されており、
前記接続端子は、前記モータ配線と電気的に接続される接続部を有し、
前記接続部において、前記絶縁被膜が溶融されつつ前記導線と前記接続端子が圧着されている電動圧縮機であって、
前記モータ配線を覆う保護チューブと、開口を両端に有する筒状であるとともに前記接続部を覆う熱収縮チューブを備え、
前記熱収縮チューブは、前記両端のうち前記導電部材側の一端を含んで所定の長さに渡って前記モータ配線に沿うよう収縮されているとともに、前記両端のうち前記電動モータ側の他端を含んで所定の長さに渡って前記保護チューブに沿うよう収縮されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項3】
前記熱収縮チューブは、開口を両端に有する筒状であるチューブ本体と、前記チューブ本体の内周面に設けられた接着剤からなる接着層と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、冷媒をはじめとする流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するモータ駆動回路と、モータ駆動回路と電気的に接続された導電部材と、電動モータから引き出されたモータ配線と、導電部材とモータ配線とを電気的に接続する接続端子と、を備える。
【0003】
モータ配線は、電動モータのコイルから引き出されている。モータ配線の先端部は、接続端子と電気的に接続されている。モータ配線は、複数の導線と、導線を被覆する絶縁被膜とを有する。接続端子に接続されたモータ配線の先端部では、絶縁被膜が除去され、導線が露出している。そして、一つの接続端子に接続されたモータ配線において、先端部における導線と接続端子とが電気的に接続されている。例えば、接続端子から延設されるかしめ部によって、モータ配線の複数の導線をかしめる(圧着する)ことにより、導線と接続端子とが機械的に接続されるとともに、電気的に接続されている。
【0004】
近年、電動圧縮機においては、電動モータに大電流を供給して駆動させることが要求されるのに伴い、コイルから引き出されるモータ配線の導線の本数が増えている。しかし、導線の本数が増えるほど、絶縁被膜を除去する作業に手間がかかる。このため、例えば、ヒュージングによって、モータ配線の先端部における絶縁被膜の各々を熱で溶融しつつ、露出した導線の全てを接続端子とかしめて(圧着して)電気的に接続することで、絶縁被膜を除去する作業を簡略化している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ヒュージングを採用した場合、モータ配線の先端部における導線と接続端子との接続箇所において、溶融した絶縁被膜が異物となって発生しやすく、この異物が、例えば電動圧縮機の振動を原因として接続箇所から動いてモータなどの摺動箇所に入り込む虞や圧縮部に入り込む虞などがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、前記モータ駆動回路と電気的に接続された導電部材と、前記電動モータから引き出されたモータ配線と、前記導電部材と前記モータ配線とを電気的に接続する接続端子と、を備え、前記モータ配線は、絶縁被膜を有する複数の導線を束ねることで形成されており、前記接続端子は、前記モータ配線と電気的に接続される接続部を有し、前記接続部において、前記絶縁被膜が溶融されつつ前記導線と前記接続端子が圧着されている電動圧縮機であって、開口を両端に有する筒状であるとともに前記接続部を覆う熱収縮チューブを備え、前記熱収縮チューブは、前記両端を含み所定の長さに渡って前記モータ配線に沿うよう収縮されている。
【0008】
これによれば、熱収縮チューブの中には、接続部が収容される。接続部付近には、モータ配線の絶縁被膜を熱により除去して接続部と電気的に接続する際、絶縁被膜が溶融して異物が発生しても、熱収縮チューブの電動モータ側の端部を含んだ所定の長さの部位は、モータ配線に沿うよう収縮することで、配線との隙間を狭めてこの端部を通じて熱収縮チューブの外に異物が出ることを抑制できる。また、熱収縮チューブの導電部材側の端部を含んだ所定の長さの部位は、熱収縮チューブが接続端子だけでなくモータ配線に沿うよう収縮することで、モータ配線及び接続端子との隙間を狭めている。つまり、熱収縮チューブの導電部材側の端部では隙間を狭めるためにモータ配線を利用しており、隙間が狭まりやすく、この端部を通じて熱収縮チューブの外に異物が出ることを抑制できる。このように熱収縮チューブの両端における隙間を縮めて、その内部を接続部を収容する空間とすることで、熱収縮チューブの両端から異物が出ることを抑制できる。なお、電動モータに大電流を供給して駆動させることが要求される背景から、導線の本数の増加によるモータ配線の大径化に伴い、熱収縮前の熱収縮チューブが大径化しても、モータ配線と熱収縮チューブとの隙間は相対的に大きく変化しない。このため、熱収縮チューブの両端における隙間を好適に縮めることが可能である。
【0009】
上記課題を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、前記モータ駆動回路と電気的に接続された導電部材と、前記電動モータから引き出されたモータ配線と、前記導電部材と前記モータ配線とを電気的に接続する接続端子と、を備え、前記モータ配線は、絶縁被膜を有する複数の導線を束ねることで形成されており、前記接続端子は、前記モータ配線と電気的に接続される接続部を有し、前記接続部において、前記絶縁被膜が溶融されつつ前記導線と前記接続端子が圧着されている電動圧縮機であって、前記モータ配線を覆う保護チューブと、開口を両端に有する筒状であるとともに前記接続部を覆う熱収縮チューブを備え、前記熱収縮チューブは、前記両端のうち前記導電部材側の一端を含んで所定の長さに渡って前記モータ配線に沿うよう収縮されているとともに、前記両端のうち前記電動モータ側の他端を含んで所定の長さに渡って前記保護チューブに沿うよう収縮されている。
【0010】
これによれば、熱収縮チューブの中には、接続部が収容される。接続部付近には、モータ配線の絶縁被膜を熱により除去して接続部と電気的に接続する際、絶縁被膜が溶融して異物が発生しても、熱収縮チューブの電動モータ側の端部を含んだ所定の長さの部位は、保護チューブに沿うよう収縮することで、保護チューブとの隙間を狭めてこの端部を通じて熱収縮チューブの外に異物が出ることを抑制できる。また、熱収縮チューブの導電部材側の端部を含んだ所定の長さの部位は、熱収縮チューブが接続端子だけでなくモータ配線に沿うよう収縮することで、モータ配線及び接続端子との隙間を狭めている。つまり、熱収縮チューブの導電部材側の端部では隙間を狭めるためにモータ配線を利用しており、隙間が狭まりやすく、この端部を通じて熱収縮チューブの外に異物が出ることを抑制できる。このように熱収縮チューブの両端における隙間を縮めて、その内部を接続部を収容する空間とすることで、熱収縮チューブの両端から異物が出ることを抑制できる。なお、電動モータに大電流を供給して駆動させることが要求される背景から、導線の本数の増加によるモータ配線の大径化に伴い、熱収縮前の熱収縮チューブや保護チューブが大径化しても、モータ配線と熱収縮チューブとの隙間や保護チューブと熱収縮チューブとの隙間は相対的に大きく変化しない。このため、熱収縮チューブの両端における隙間を好適に縮めることが可能である。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記熱収縮チューブは、開口を両端に有する筒状であるチューブ本体と、前記チューブ本体の内周面に設けられた接着剤からなる接着層と、を有するとよい。
【0012】
これによれば、熱収縮チューブの中では、接着層に異物を接着させることができるため、異物が熱収縮チューブの中に留めやすくなる。したがって、異物が熱収縮チューブの外へ出ることを抑制しやすくできる。
【発明の効果】
【0013】
ヒュージングにより生じた異物が他の部位に入り込むのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を模式的に示す側断面図。
【
図3】熱収縮前の熱収縮チューブと接続端子及びモータ配線との関係について模式的に示す断面図。
【
図8】別の実施形態におけるコネクタを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、モータハウジング12と、吐出ハウジング13とを有する。モータハウジング12は、吐出ハウジング13寄りに開口12aが形成された有底筒状をなしている。吐出ハウジング13は、モータハウジング12に連結された有底筒状をなしている。モータハウジング12は、底板121と、底板121の外周部から筒状に延びる周壁122とを有する。モータハウジング12の底板121には、有底筒状のインバータカバー14が取り付けられている。モータハウジング12と吐出ハウジング13との間には、吐出室S1が区画されている。吐出ハウジング13の底壁131には、吐出ポート15が形成されている。吐出ポート15には、図示しない外部冷媒回路が接続されている。モータハウジング12の周壁122には、吸入ポート123が形成されている。吸入ポート123には、図示しない外部冷媒回路が接続されている。
【0016】
モータハウジング12内には、回転軸16が収容されている。モータハウジング12内には、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部17と、圧縮部17を駆動する電動モータ18とが収容されている。電動モータ18は、回転軸16を駆動させる。圧縮部17は、回転軸16が回転することにより駆動する。電動モータ18は、圧縮部17よりもモータハウジング12の底板121寄りに位置している。
【0017】
モータハウジング12内において、圧縮部17と電動モータ18との間には、軸支部材19が設けられている。軸支部材19の中央部には、回転軸の第1端部16aが挿通される挿通孔19aが形成されている。挿通孔19aと回転軸16の第1端部16aとの間には、ラジアルベアリング16cが設けられている。回転軸16の第1端部16aは、ラジアルベアリング16cを介して軸支部材19に回転可能に支持されている。モータハウジング12の底板121及び周壁122と軸支部材19とによってモータ収容室S2が区画されている。モータ収容室S2は、吸入ポート123から導入された冷媒が圧縮部17に吸入される吸入室として機能する。軸支部材19には、モータ収容室S2と圧縮部17とを連通する連通路19bが形成されている。
【0018】
モータハウジング12の底板121には、軸受部121aが設けられている。軸受部121aの内側には、回転軸16の第2端部16bが挿入されている。軸受部121aと回転軸16の第2端部16bとの間には、ラジアルベアリング16dが設けられている。回転軸16の第2端部16bは、ラジアルベアリング16dを介して軸受部121aに回転可能に支持されている。
【0019】
モータハウジング12の底板121とインバータカバー14とによって収容空間S3が区画されている。収容空間S3において、底板121におけるインバータカバー14寄りの外面には、電動モータ18を駆動するモータ駆動回路20が取り付けられている。よって、本実施形態では、圧縮部17、電動モータ18、及びモータ駆動回路20がこの順序で、回転軸16の軸線Lの延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。
【0020】
圧縮部17は、モータハウジング12内に固定された固定スクロール17aと、固定スクロール17aに対向するように配置された可動スクロール17bとを備える。固定スクロール17aと可動スクロール17bとの間には、容積を変更可能な圧縮室S4が区画されている。モータ収容室S2から吸入され、圧縮室S4において圧縮された冷媒は、吐出室S1に吐出される。
【0021】
電動モータ18は、回転軸16と一体的に回転するロータ21と、ロータ21を取り囲むようにモータハウジング12の内周面に固定されたステータ22とから構成されている。
【0022】
ロータ21は、円筒形状をなすロータコア23を有する。ロータコア23は、回転軸16に止着されている。ロータコア23内には、複数の永久磁石24が埋設されている。複数の永久磁石24は、ロータコア23の周方向に等間隔おきに設けられている。ステータ22は、ステータコア25と、U相、V相、及びW相のコイル26と、を有する。ステータコア25は、モータハウジング12の内周面に固定された環状をなしている。
【0023】
ステータコア25の第1端面251からは、各相の第1コイルエンド261が突出している。ステータコア25の第2端面252からは、各相の第2コイルエンド262が突出している。第1コイルエンド261は、圧縮部17寄りに位置している。第2コイルエンド262は、モータ駆動回路20寄りに位置している。
【0024】
各相の第2コイルエンド262からは、モータ配線30が引き出されている。
図3に示すように、モータ配線30は、8本の導線30a、及び導線30aを覆う絶縁被膜Hを含んでいる。8本の導線30aは束ねられている。つまり、モータ配線30は、絶縁被膜Hを有する複数の導線30aを束ねることで形成されている。
【0025】
図1又は
図2に示すように、モータハウジング12の底板121には孔121bが形成されている。孔121bには気密端子33が配設されている。気密端子33は、U相、V相、及びW相のコイル26に対応して3つの導電部材34を有する。なお、
図1では、1つの導電部材34のみを図示している。各導電部材34は、直線状に延びる円柱状の金属端子である。各導電部材34は、孔121bに挿通されるとともに第1端部34aがモータ駆動回路20に電気的に接続されている。各導電部材34の第2端部34bは、収容空間S3から孔121bを介してモータハウジング12内に突出している。また、気密端子33は、3つの絶縁部材35を有する。なお、
図1では、1つの絶縁部材35のみを図示している。各絶縁部材35は、各導電部材34を底板121に対し絶縁しつつ固定している。各絶縁部材35は、ガラス製である。
【0026】
モータハウジング12内には、モータ配線30と導電部材34とを接続するコネクタ40が収容されている。コネクタ40は、回転軸16の軸線方向において電動モータ18と底板121との間に配置されている。
【0027】
図2又は
図4に示すように、コネクタ40は、U相、V相、及びW相のコイル26に対応する3つの接続端子50と、絶縁性を有する樹脂で形成されたクラスタブロック60とを備える。なお、
図4では、U相のコイル26に対応する1つの接続端子50のみを図示している。また、3つの接続端子50は全て構造が共通しているため、1つの接続端子50の構造を説明し、他の2つの接続端子50の構造の説明は省略する。
【0028】
接続端子50は、各相の導電部材34と、各相の導電部材34と個別に電気的に接続されるモータ配線30とを電気的に接続する。接続端子50は、導電性を有する材料製である。例えば、接続端子50は銅製である。接続端子50は、モータ配線30と電気的に接続されたモータ配線用接続部51、及び導電部材34と電気的に接続された導電部材用接続部52を有する。接続端子50において、モータ配線用接続部51は細長であり、導電部材用接続部52は、モータ配線用接続部51の長手方向の一つの端部に連続する。モータ配線用接続部51は、1つの接続端子50に接続されるモータ配線30と電気的に接続されている。導電部材用接続部52は、導電部材34と電気的に接続されている。モータ配線用接続部51は、請求項における接続部に対応する。
【0029】
図4又は
図6に示すように、接続端子50において、モータ配線用接続部51は、細長板状の支持板51aと、支持板51aに一体の2つの側壁51bと、支持板51aに一体のかしめ部51cとを有する。2つの側壁51bは、支持板51aの長手方向における導電部材用接続部52寄りに配置されている。2つの側壁51bは、支持板51aの長手方向における、かしめ部51cよりも導電部材用接続部52寄りに配置されている。
【0030】
図6に示すように、2つの側壁51bのうちの1つの側壁51bは、支持板51aの2つの長縁のうちの一方から立ち上がり、もう1つの側壁51bは、支持板51aの他方の長縁から立ち上がる。2つの側壁51bにより、支持板51aに載置されたモータ配線30が支持板51aに支持された状態が保持される。
【0031】
図7に示すように、かしめ部51cは、モータ配線30における導電部材用接続部52寄りの先端部をかしめている。かしめ部51cは、モータ配線30を互いに接触させた状態に取り囲むとともに、モータ配線30をモータ配線用接続部51に向けて押し付けている。モータ配線30は、かしめ部51cによってかしめられることにより、接続端子50に機械的に接続されている。
【0032】
図4に示すように、モータ配線30がモータ配線用接続部51と機械的に接続されている箇所において、絶縁被膜Hが熱により除去されて8本の導線30aが露出している。電動圧縮機10は、モータ配線30の先端部で露出した8本の導線30aが束ねられた結束部36を有する。結束部36では、隣り合う導線30a同士が接触している。また、結束部36では、8本の導線30aのうちの数本の導線30aがモータ配線用接続部51に接触している。このため、結束部36は、モータ配線用接続部51に電気的に接続されており、モータ配線30とモータ配線用接続部51とは、電気的に接続されている。したがって、モータ配線用接続部51には、モータ配線30の絶縁被膜Hが熱により除去されることで露出した導線30aが束ねられている結束部36が電気的に接続されている。
【0033】
電動圧縮機10は、モータ配線30とモータ配線用接続部51との機械的な接続箇所Sを有する。この接続箇所Sは、モータ配線30とモータ配線用接続部51との電気的な接続箇所でもある。本実施形態では、接続箇所Sはかしめ部51cが設けられた箇所である。結束部36は、接続箇所Sを構成するかしめ部51cから導電部材用接続部52に向けて突出している。本実施形態では、結束部36の先端面36aは、導電部材用接続部52の近傍に位置しているが、導電部材用接続部52に接触はしていない。また、接続箇所Sには、絶縁被膜Hを熱により除去した際に発生する異物Gが付着して残る場合がある。
【0034】
各相において、モータ配線30の束の外周側には、熱収縮チューブ70が設けられている。熱収縮チューブ70は、開口を両端に有する筒状である。熱収縮チューブ70は、結束部36とモータ配線用接続部51との電気的な接続箇所Sを含んでモータ配線30及び接続端子50を外周側から覆う。熱収縮チューブ70は、当該熱収縮チューブ70の長手方向の両端部のうちの一方に第1端部70aを有し、他方に第2端部70bを有する。熱収縮チューブ70の第1端部70aは、接続箇所Sよりもモータ配線30に沿った電動モータ18寄りの端部である。
図5において、熱収縮チューブ70の第1端部70aは、接続箇所Sよりもモータ配線30に沿った電動モータ18寄りの位置において、導線30aの束の絶縁被膜Hに接触している。よって、熱収縮チューブ70の第1端部70aを含んだ所定の長さの部位は、モータ配線30に沿うよう収縮されている。したがって、熱収縮チューブ70の第1端部70aでの内面と、導線30aの束の外面との間には僅かな隙間しかない。また、導線30a同士の間においても僅かな隙間しかない。
【0035】
熱収縮チューブ70の第2端部70bは、接続箇所Sよりもモータ配線30に沿った導電部材用接続部52寄りの端部であり、第1端部70aとは反対側に位置する端部である。
【0036】
図6に示すように、熱収縮チューブ70の第2端部70bは、接続箇所Sから突出した結束部36の外面のうち支持板51aとは反対側に位置する外面、モータ配線用接続部51の支持板51aの外面、及び2つの側壁51bの外面に接触している。つまり、第2端部70bは、結束部36の先端面36a付近で結束部36及び接続端子50に接触している。したがって、熱収縮チューブ70の第2端部70bを含んだ所定の長さの部位は、モータ配線30に沿うよう収縮されている。また、熱収縮チューブ70の第2端部70bの先端面70cは、結束部36の先端面36aと面一になっている。したがって、結束部36の先端面36aは、熱収縮チューブ70に覆われておらず、熱収縮チューブ70の外部に露出している。
【0037】
このため、熱収縮チューブ70の第2端部70bでの内面と、結束部36の外面、モータ配線用接続部51の支持板51aの外面、及び2つの側壁51bの外面との間には僅かな隙間しかない。また、結束部36における導線30a同士の間においても僅かな隙間しかない。なお、第1端部70a及び第2端部70bに形成される僅かな隙間とは、異物Gが通過できない微小な隙間である。
【0038】
したがって、熱収縮チューブ70の中の空間は、第1端部70a及び第2端部70bにおいてほぼ密閉されている。接続端子50に接続されるモータ配線30とモータ配線用接続部51との接続箇所Sは、熱収縮チューブ70の中に閉じ込められている。このため、接続箇所Sに発生した異物Gも熱収縮チューブ70の中に閉じ込められている。
【0039】
図2又は
図4に示すように、導電部材用接続部52は、モータ配線用接続部51に連続している。導電部材用接続部52は、例えば、略四角筒状をなしている。
導電部材用接続部52は、モータ配線用接続部51の支持板51aの長手方向に沿って、当該支持板51aと連続する底壁52aと、底壁52aの外周部から立ち上がる周壁52bとを備えている。周壁52bによって囲まれた部位に導電部材34が挿入される。導電部材用接続部52に挿入された導電部材34が導電部材用接続部52に接触することにより、導電部材用接続部52と導電部材34とが電気的に接続されている。したがって、接続端子50に接続されるモータ配線30と導電部材34とは、モータ配線用接続部51及び導電部材用接続部52を介して電気的に接続されている。
【0040】
クラスタブロック60は、3つの収容孔64を有する。各収容孔64により、クラスタブロック60は、外部に開口している。クラスタブロック60には、各収容孔64の内部とクラスタブロック60の外部とを連通させる貫通孔63が形成されている。貫通孔63の径は、貫通孔63に挿入される導電部材34の外径よりも大きい。
【0041】
次に、コネクタ40の組付け手順の一例について説明する。なお、接続端子50において、かしめ部51cはかしめられていない。
8本の導線30aの各々について、絶縁被膜Hが除去されていない状態で、8本の導線30aを2つの側壁51bの間に保持させつつ支持板51aに支持させる。このとき、モータ配線30の先端部は、かしめ部51cによるかしめ位置よりも、導電部材用接続部52寄りに突出している。その後、かしめ部51cをかしめて、かしめ部51cによってモータ配線30の先端部をモータ配線用接続部51と機械的に接続する。次に、図示しない抵抗溶接電源を用いて、かしめ部51cに電気を流し、かしめ部51cを含むモータ配線用接続部51及びモータ配線30を加熱しながら加圧する。所謂ヒュージングを行う。すると、絶縁被膜Hが溶融して導線30aが露出するとともに、かしめ部51c及び支持板51aと、導線30aとがかしめられる。8本の導線30aがモータ配線用接続部51と電気的に接続される。このとき、接続箇所Sには結束部36が形成される。
【0042】
次に、
図3に示すように、熱収縮前の熱収縮チューブ70の第1端部70a寄りの開口から、接続端子50に接続されるモータ配線30及び接続端子50を熱収縮チューブ70に挿通する。そして、熱収縮前の熱収縮チューブ70の内側に接続箇所Sが位置し、かつモータ配線30に沿って、第1端部70aが接続端子50を越える位置に熱収縮チューブ70を配置する。このとき、熱収縮前の熱収縮チューブ70の第2端部70bは、当該第2端部70bの先端面70cが結束部36の先端面36aとほぼ面一になる。
【0043】
熱収縮前の熱収縮チューブ70の内径は、導電部材用接続部52が通過できる寸法である。また、熱収縮前の熱収縮チューブ70の内径は、8本の導線30aと、モータ配線用接続部51とが通過できる寸法である。したがって、接続端子50に接続されるモータ配線30の導線30aの本数が増えるほど、熱収縮前の熱収縮チューブ70の内径は大径化する。
【0044】
次に、熱収縮前の熱収縮チューブ70の第1端部70aが、8本の導線30aの絶縁被膜Hと重なる状態で熱収縮チューブ70を加熱する。すると、
図4に示すように、熱収縮チューブ70が熱収縮して、熱収縮チューブ70の第1端部70aが導線30aの束の絶縁被膜Hに接触する。また、熱収縮チューブ70の第2端部70bが結束部36及びモータ配線用接続部51に接触する。このとき、結束部36の先端面36aは、熱収縮チューブ70の外部に露出している。
【0045】
上記実施形態では以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)熱収縮チューブの中には、モータ配線用接続部51が収容される。モータ配線用接続部51付近には、モータ配線30の絶縁被膜Hを熱により除去してモータ配線用接続部51と電気的に接続する際、絶縁被膜Hが溶融して異物Gが発生しても、熱収縮チューブ70の第1端部70aを含んだ所定の長さの部位は、モータ配線30に沿うよう収縮する。したがって、モータ配線30との隙間を狭めてこの端部を通じて熱収縮チューブ70の外に異物Gが出ることを抑制できる。また、熱収縮チューブ70の第2端部70bを含んだ所定の長さの部位は、熱収縮チューブ70が接続端子50だけでなくモータ配線30に沿うよう収縮することで、モータ配線30や接続端子50との隙間を狭めている。つまり、熱収縮チューブの第2端部70bでは隙間を狭めるためにモータ配線30を利用しており、隙間が狭まりやすく、この端部を通じて熱収縮チューブ70の外に異物Gが出ることを抑制できる。このように熱収縮チューブ70の両側における隙間を縮めて、その内部をモータ配線用接続部51を収容する空間とすることで、熱収縮チューブ70の両端から異物Gが出ることを抑制できる。なお、電動モータ18に大電流を供給して駆動させることが要求される背景から、導線30aの本数の増加によるモータ配線30の大径化に伴い、熱収縮チューブ70が大径化しても、モータ配線30と熱収縮チューブ70との隙間は相対的に大きく変化しない。このため、熱収縮チューブ70の両端における隙間を好適に縮めることが可能である。
【0046】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
○
図8に示すように、接続端子50に接続されるモータ配線30は、保護チューブ80に挿通されていてもよい。保護チューブ80は、モータ配線30を形成する8本の導線30aの全てを外周側から覆う。この場合、熱収縮チューブ70の第1端部70aが、保護チューブ80の外面81に沿うよう収縮することで、保護チューブ80と熱収縮チューブ70の第1端部70aとの隙間を狭めて第1端部70aを通じて熱収縮チューブ70の外に異物Gが出ることを抑制できる。このように熱収縮チューブ70の両側における隙間を縮めて、その内部をモータ配線用接続部51を収容する空間とすることで、熱収縮チューブ70の両端から異物Gが出ることを抑制できる。なお、電動モータ18に大電流を供給して駆動させることが要求される背景から、導線30aの本数の増加によるモータ配線30の大径化している。この大径化に伴い、熱収縮前の熱収縮チューブ70や保護チューブ80が大径化しても、モータ配線30と熱収縮チューブ70との隙間や保護チューブ80と熱収縮チューブ70との隙間は相対的に大きく変化しない。このため、熱収縮チューブ70の両端における隙間を好適に縮めることが可能である。
【0048】
○ 実施形態において、熱収縮チューブ70は、開口を両端に有する筒状であるチューブ本体と、チューブ本体の内周面に設けられた接着剤からなる接着層と、を有する構成であってもよい。この場合、熱収縮チューブ70の中において、接続箇所Sに発生した異物Gを接着層に接着させることができるため、異物Gが熱収縮チューブ70の内側に留めやすくなる。その結果、熱収縮チューブ70の外に異物Gが出ることをさらに抑制できる。
【0049】
○ 実施形態において、熱収縮チューブ70の第2端部70bの先端面70cは、結束部36の先端面36aと面一になっていなくてもよい。要は、結束部36の先端面36aは、熱収縮チューブ70の外部に露出していればよい。
【0050】
○ 実施形態において、コイル26の相数を変更してもよい。
○ 実施形態において、コイル26を形成する導線30aの本数は、適宜変更してもよい。
【0051】
○ 実施形態において、圧縮部17は、固定スクロール17aと可動スクロール17bとで構成されるタイプに限らず、例えば、ピストンタイプやベーンタイプなどに変更してもよい。
【0052】
○ 実施形態において、絶縁被膜Hの一部は先端面36a付近において導線30aの周面に形成されたままでもよい。この場合、熱収縮チューブ70は、絶縁被膜Hに密着している。
【0053】
○ 実施形態において、かしめ部51c及び支持板51aと、導線30aとは溶接されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…電動圧縮機、17…圧縮部、18…電動モータ、20…モータ駆動回路、30…モータ配線、30a…導線、34…導電部材、50…接続端子、51…接続部としてのモータ配線用接続部、70…熱収縮チューブ、80…保護チューブ、H…絶縁被膜。