(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102791
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】深海用自然変状検知装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20220630BHJP
G01D 21/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
G01D21/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217744
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】591151808
【氏名又は名称】株式会社KANSOテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐也
(72)【発明者】
【氏名】島津 充
【テーマコード(参考)】
2F065
2F076
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065AA65
2F065CC00
2F065FF58
2F065FF59
2F065GG07
2F065JJ15
2F065LL02
2F065LL03
2F065UU03
2F076BA01
2F076BB12
2F076BD01
2F076BD06
2F076BD13
2F076BD16
2F076BE01
2F076BE04
2F076BE05
2F076BE09
2F076BE17
2F076BE19
(57)【要約】
【課題】深海などにおいて、多様なデータを検知できる装置を提供する。
【解決手段】水中状態を検知する装置であって、耐圧容器本体30と電子回路部31及び電源供給部32を有する耐圧容器部3と、圧力吸収液剤82が充填された等圧容器本体20と、該等圧容器本体20の内表面に設けられた発光部6及び受光部7と、圧力吸収液剤82の充填量を調節する圧力調整部を有する等圧容器部2と、光を観測対象へ搬送する第1の光ファイバ41と、観測対象から搬送する第2の光ファイバ42を備え、耐圧容器部3と等圧容器部2は、耐圧コネクタ5を介してケーブルにより電力供給及び電気信号の送受信が行われ、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42の一端は、等圧容器本体20の外表面にそれぞれ発光部6と受光部7と正対する位置に接続され、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42が接続される等圧容器本体20の位置は、透光性樹脂で形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の状態を検知する変状検知装置であって、
耐圧容器本体と電子回路部及び電源供給部を有する耐圧容器部と、
圧力吸収液剤が充填された等圧容器本体と、該等圧容器本体の内表面に設けられた発光部及び受光部と、前記圧力吸収液剤の充填量を調節する圧力調整部を有する等圧容器部と、
観測対象へ光を搬送する第1の光ファイバと、観測対象からの光を搬送する第2の光ファイバ、を備え、
前記耐圧容器部と前記等圧容器部は、耐圧コネクタを介して電力の供給及び電気信号の送受信が行われ、
第1及び第2の光ファイバの一方の端部は、それぞれ前記発光部と前記受光部と正対する前記等圧容器本体の外表面に接続され、
前記光ファイバが接続される前記等圧容器本体の部位は、透光性樹脂で形成されることを特徴とする深海用自然変状検知装置。
【請求項2】
前記耐圧容器部の発光部と受光部は、前記耐圧容器部の内表面に、二対以上設けられることを特徴とする請求項1に記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項3】
前記圧力調整部は、前記等圧容器本体に設けられた開口部と、前記開口部に設けられたコンペンセータとから構成され、
前記圧力吸収液剤は、前記等圧容器本体の内部及び前記コンペンセータの内部に充填されることを特徴とする請求項1又は2に記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項4】
前記コンペンセータは、前記等圧容器本体が20MPaの圧力を受けた状態で、前記等圧容器本体内部に、圧力吸収液剤が満たされた状態が維持される長さに設けられることを特徴とする請求項3に記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項5】
前記透光性樹脂は、厚みが3~10mmであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項6】
前記圧力吸収液剤は、シリコンオイルであることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項7】
前記耐圧容器部と前記等圧容器部は、円筒形状であり、それぞれの一端面で接合され、
前記等圧容器部の他端面に前記透光性樹脂が用いられ、前記発光部と前記受光部が配置されることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項8】
前記コンペンセータは、前記耐圧容器部の側周面に固定されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の深海用自然変状検知装置。
【請求項9】
前記耐圧容器本体に、外部機器と接続する耐圧コネクタが更に設けられることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の深海用自然変状検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深海などの高圧下において光学的に自然変状を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、危険斜面などの自然構造物や人工構造物の変状を検知する装置を既に提案している(特許文献1を参照)。これは、光を発生させる光源部と、光ファイバなどの搬送部と、自然の変状量あるいは人工構造物の変状量に連動させて搬送部の出射光の特性を制御するフィルター部と、フィルター部を透過もしくは反射した後の光を分散させるための光分散部とを備えるものであり、装置構成は、電気を使用して光を作る光源部と、電気を全く使わず光を搬送する搬送部と、電気を全く使わず光だけでセンサリングするフィルター部からなる。特許文献1の構造物変状検知装置によれば、低コストで広範囲のモニタリングができ、電気回路の開閉を伴わず光学的に構造物の変状を検知することが可能である。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の構造物変状検知装置は、陸上での使用が前提とされており、海洋観測、特に水深1000m以上の深海での観測へ適用する場合は耐圧構造等が必要となる。すなわち、水中であっても、例えば数m程度の水中をモニタリングするのであれば、受発光部や電子回路部等を陸上に設け、光ファイバなどの搬送部だけを水中に沈めることも可能であるが、水深1000m以上の深海での観測を行う場合には、装置全体を水中に沈め、スタンドアローンで動作させ、或いは装置に設けられた通信手段を用いて、陸上と通信するといったことが必要となるのである。
したがって、深海での観測を行うための変状検知装置においては、光ファイバ、発光部、受光部、制御基板とバッテリから成る制御ユニット、及び、制御ユニットと発光部又は受光部とを接続する信号/電源ケーブルの全てが深海に沈められることとなり、これらの内、発光部、受光部及び制御ユニットについては耐圧構造が必要となる。
【0004】
耐圧構造を有する装置としては、光ファイバ用の水中コネクタ装置が知られている(特許文献2を参照)。これは、耐圧容器に接続するプラグ内に電気-光変換器(若しくは光-電気変換器)を設け、光ファイバを抜き差しすることなく、着脱できる構造としたものである。これによれば、耐圧容器内に制御ユニットを設け、また電気-光変換器(若しくは光-電気変換器)が設けられる容器には樹脂モールドが充填され耐圧性が付与されているため、発光部、受光部及び制御ユニットについて耐圧性が得られることとなる。
しかしながら、特許文献2に開示された光ファイバ用の水中コネクタ装置では、プラグ内に設けられる変換機は、電気-光変換器又は光-電気変換器の何れかであり、1本の光ファイバにつき、1つのコネクタが必要となる。したがって、多数の光ファイバからデータを取得するためには、その数に応じたコネクタが必要になるため、装置の大型化やコストの増大が避けられないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5607185号公報
【特許文献2】特開昭58-136009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑みて、本発明は、深海などにおいて、多様なデータを検知することのできる深海用自然変状検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の深海用自然変状検知装置は、水中の状態を検知する変状検知装置であって、下記1)~4)を備える。
1)耐圧容器本体と電子回路部及び電源供給部を有する耐圧容器部、
2)圧力吸収液剤が充填された等圧容器本体と、該等圧容器本体の内表面に設けられた発光部及び受光部と、圧力吸収液剤の充填量を調節する圧力調整部を有する等圧容器部、
3)観測対象へ光を搬送する第1の光ファイバ、
4)観測対象からの光を搬送する第2の光ファイバ。
そして、耐圧容器部と等圧容器部は、耐圧コネクタを介して電力の供給及び電気信号の送受信が行われ、第1及び第2の光ファイバの一方の端部は、それぞれ発光部と受光部と正対する等圧容器本体の外表面に接続され、光ファイバが接続される等圧容器本体の部位は、透光性樹脂で形成される。
かかる構成とされることで、第1の光ファイバの一方の端部と発光部、又は、第2の光ファイバの一方の端部と受光部が、等圧容器本体を介して、光信号の送受信を行うことができる。これにより、多数の第1の光ファイバや第2の光ファイバを比較的簡素な構造で取り付けることができ、深海などにおいて、多様なデータを検知することが可能となる。具体的な深さとしては、水深2000mまでの深海域に適用可能である。
ここで、透光性樹脂は、アクリル樹脂であることが好ましい。透明性の高いアクリル樹脂で形成されることにより、等圧容器本体における光の拡散を効果的に防止でき、精度の高い観測が可能となる。なお、等圧容器本体において、光ファイバが接続される部位以外の部位は、光の受け渡しを行わないため、遮光性と強度の高い樹脂又は金属で形成されることが好ましく、より好ましくは、不透明の塩化ビニル樹脂(PVC)で形成されることである。
【0008】
本発明の深海用自然変状検知装置において、耐圧容器部の発光部と受光部は、耐圧容器部の内表面に、二対以上設けられることが好ましい。発光部と受光部が二対以上設けられることにより、多様なデータが収集可能となる。
【0009】
本発明の深海用自然変状検知装置において、圧力調整部は、等圧容器本体に設けられた開口部と、開口部に設けられたコンペンセータとから構成され、圧力吸収液剤は、等圧容器本体の内部及びコンペンセータの内部に充填されることが好ましい。
圧力吸収液剤が、等圧容器本体の内部だけでなく、コンペンセータの内部にも充填されることで、深海の圧力によって圧力吸収液剤の体積が縮小しても、海水が等圧容器本体にまでは流入しない構成とできる。これにより、海水の流入を防ぎつつ、深海の水圧を受けた状態で等圧容器本体の内部の発光部や受光部を正常に作動させることができる。
【0010】
本発明の深海用自然変状検知装置において、コンペンセータは、等圧容器本体が20MPaの圧力を受けた状態で、等圧容器本体内部に、圧力吸収液剤が満たされた状態が維持される長さに設けられることが好ましい。コンペンセータの機能は、最深の位置においても、コンペンセータ内に圧力吸収液剤が留まり、海水を等圧容器本体に流入させないことが必要である。したがって、コンペンセータが、等圧容器本体が20MPaの圧力を受けた状態で、等圧容器本体内部に圧力吸収液剤が満たされた状態が維持される長さに設けられることにより、水深2000mでの観測が可能となる。
【0011】
本発明の深海用自然変状検知装置において、透光性樹脂は、厚みが3~10mmであることが好ましい。透光性樹脂の厚みが3mm未満であると強度が不十分となり、また、10mmを超えると透光性樹脂内を透過する光が拡散し、観測の精度が低下する。そこで、透光性樹脂の厚みが3~10mmとされることにより、等圧容器本体の強度を維持しつつ、高精度での観測が可能な自然変状検知装置とすることができる。
【0012】
本発明の深海用自然変状検知装置において、圧力吸収液剤は、シリコンオイルであることが好ましい。シリコンオイルは、低温から高温までの広い温度範囲で粘度変化が小さいため、深海などの低温下においても安定的な利用が可能である。
【0013】
本発明の深海用自然変状検知装置において、耐圧容器部と等圧容器部は、円筒形状であり、それぞれの一端面で接合され、等圧容器部の他端面に透光性樹脂が用いられ、発光部と受光部が配置されることが好ましい。かかる構成とされることにより、公知の耐圧容器や等圧容器を利用して作製でき、低コストでの製造が可能となる。
【0014】
本発明の深海用自然変状検知装置において、コンペンセータは、耐圧容器部の側周面に固定されたことが好ましい。コンペンセータが、耐圧容器部の側周面に固定されることにより、水中における装置の挙動が安定し、精度の高い観測が可能となる。
【0015】
本発明の深海用自然変状検知装置は、耐圧容器本体に、外部機器と接続する耐圧コネクタが更に設けられてもよい。本発明の深海用自然変状検知装置は、スタンドアローンの装置として利用することも可能であるが、外部機器接続用の耐圧コネクタが設けられることにより、収集したデータを外部機器に送信したり、外部電源から電力を供給したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の深海用自然変状検知装置によれば、深海などにおいて、多様なデータを検知することができるといった効果がある。具体的には、沈降粒子の堆積量、水中の濁り、泥の色、海底の色などを検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図6】深海用自然変状検知装置の性能試験イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0019】
図1は、深海用自然変状検知装置の機能ブロック図を示している。
図1に示すように、深海用自然変状検知装置1は、等圧容器部2、耐圧容器部3、第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42で構成される。
等圧容器部2は、第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42が接続される部位が透光性樹脂で形成される等圧容器本体20、第1の光ファイバ41へ光を発する発光部6、第2の光ファイバ42から反射光を受け取る受光部7、及び等圧容器本体20内部の圧力を等圧に制御する圧力調整部8を備える。
耐圧容器部3は、20MPa(水深2,000m)の圧力に耐え得る耐圧容器本体30、制御基板で構成される電子回路部31、バッテリで構成される電源供給部32、及び外部機器11との接続を可能とする耐圧コネクタ34を備える。電源供給部32と電子回路部31により制御ユニット33を構成している。
【0020】
第1の光ファイバ41は、発光部6からの出射光を対象物12に搬送するものであり、第2の光ファイバ42は、対象物12からの反射光を受光部7に搬送するものである。
電源供給部32と電子回路部31、若しくは電子回路部31と耐圧コネクタ34は、信号/電源ケーブル9によって接続されており、また、発光部6と電子回路部31若しくは受光部7と電子回路部31は、耐圧コネクタ5を介して信号/電源ケーブル9によって接続されており、電力の供給や電気信号の送受信が行われる構造である。
【0021】
図2は、深海用自然変状検知装置の外観斜視図を示している。
図2に示すように、深海用自然変状検知装置1は、等圧容器部2、耐圧容器部3、第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42で構成されている。等圧容器部2と耐圧容器部3は、略円筒形状であり、等圧容器部2の一端面は開口部となっている。等圧容器部2と耐圧容器部3は、当該開口部と、耐圧容器部3の一端面で接合され、等圧容器部2の他端面に、発光部6と受光部7が配置されている。
耐圧容器部3において、制御ユニット33は、耐圧容器部30の内側に配置されることで、水深2,000mにおいても圧力の影響はうけない。
図1で説明した圧力調整部8は、コンペンセータ81及びシリコンオイル82により構成されている。コンペンセータ81の一端は、等圧容器本体20に設けられた開口部20aに取り付けられており、他端81aは開口している。ここでは図示しないが、コンペンセータ81の他端81aは、耐圧容器本体30の外側周面に巻き付けて固定してもよいし、第1の光ファイバ41又は第2の光ファイバ42と干渉しない位置で等圧容器本体20の外側周面に巻き付けて固定してもよい。なお、シリコンオイル82は、等圧容器本体20及びコンペンセータ81の内部に充填されている。
【0022】
等圧容器本体20の素材としては、第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42が接続される部位は、光の受け渡しをするために透明性の高いアクリル樹脂が用いられているが、略円筒形状の側周面を形成する部位は、遮光性と強度を高めるために不透明の塩化ビニル樹脂(PVC)が用いられている。
第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42は、等圧容器本体20の外側に取り付けられ、発光部6及び受光部7は、等圧容器本体20の内側に取り付けられている。第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42の等圧容器本体20への取付構造や、第1の光ファイバ41と発光部6又は第2の光ファイバ42と受光部7との間での光信号の送受信の構造については後述する。
【0023】
次に、深海用自然変状検知装置の具体的な構造について
図3を参照しながら説明する。
図3は、深海用自然変状検知装置の構成模式図を示している。
図3に示すように、耐圧容器本体30内に設けられた制御ユニット33において、電源供給部32から電力が供給され電子回路部31が作動する。また、電源供給部32から信号/電源ケーブル9を介して、受光部6又は発光部7に対しても電力が供給される。
等圧容器本体20は、
図2に示すように耐圧容器本体30の外側に螺子を用いて固定されている。等圧容器本体20に設けられた信号/電源ケーブル9と、耐圧容器本体30に設けられた信号/電源ケーブル9との間の電力供給や電気信号の送受信は、耐圧コネクタ5を介して行われる。
【0024】
耐圧コネクタ5としては、公知の耐圧構造の水中コネクタが好適に用いられる。図示しないが、ここで用いる水中コネクタは、雄雌のピンが設けられた2つの部材を嵌合し、固定具を用いて螺合して固定するものである。本実施例で用いる水中コネクタは、耐圧構造を有しているため、耐圧容器本体30の耐圧性を保持したまま、等圧容器本体20との間で電力供給や電気信号の送受信が可能である。本実施例では、3つの耐圧コネクタ(5a~5c)を用いているが、これは計測に用いる第1の光ファイバ41の数が8本、第2の光ファイバ42の数が8本の計16本であり、これらの計測に必要な範囲で耐圧コネクタを設けたものであり、用いる第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42の数に合わせて増減することが可能である。
また、耐圧コネクタ34についても、耐圧コネクタ5と同様に、公知の水中コネクタが好適に用いられ、耐圧容器本体30の耐圧性を保持したまま、接続ケーブル91を用いて外部機器との通信や電力供給が可能である。
【0025】
上述したように、シリコンオイル82は、等圧容器本体20及びコンペンセータ81の内部に充填されている。等圧容器本体20自体は、20MPa(水深2,000m)の圧力に耐えることはできないが、シリコンオイル82が圧力を吸収することにより、等圧容器本体20の内部は、深海においても等圧状態が保持される構造である。具体的には、深海においては、シリコンオイル82が圧力を吸収することにより、
図3の矢印に示す方向に体積が小さくなる。コンペンセータ81が機能するためには、最深の位置においても、コンペンセータ81内にシリコンオイル82が留まり、海水が等圧容器本体20に流入しないことが必要である。したがって、より深い位置まで深海用自然変状検知装置1を沈めて使用する場合には、コンペンセータ81についても、より長く設けることが必要である。
このように、等圧容器本体20の内部は、深海においても海水が流入することなく、等圧状態が保持されるため、発光部6及び受光部7を正常に機能させることが可能である。
【0026】
図3に示す第1の光ファイバ41は、一端が等圧容器本体20に取り付けられ、発光部6からの出射光を搬送し、他方の端部41aにおいて、対象物12を照射するものであるが、発光部6に直接取り付けられるのではなく、等圧容器本体20の外側に取り付けられている。また、第2の光ファイバ42は、対象物12における反射光をセンサ部42aにおいて検出し、受光部7に搬送するものであるが、第2の光ファイバ42についても、受光部7に直接取り付けられるのではなく、等圧容器本体20の外側に取り付けられている。なお、ここでは図示しないが、第1の光ファイバ41と第2の光ファイバ42は、それぞれ1本ずつが一対となってセンシングに用いられる。
【0027】
図4は、光ファイバの固定イメージ図を示している。
図4に示すように、第1の光ファイバ41又は第2の光ファイバ42は、光ファイバ接続部材14により等圧容器本体20に固定されている。具体的には、図示しないが、等圧容器本体20に固定用の螺子孔が形成され、第1の光ファイバ41又は第2の光ファイバ42は挟着部材14aにより固定される。かかる状態で、挟着部材14aを等圧容器本体20の外側に当接し、弾性部材14d及び挟着部材14bを等圧容器本体20の内側に当接し、螺子14cを用いて固定する。等圧容器本体20と挟着部材14bの間に弾性部材14dを設けることにより、螺子14cにより安定的に固定でき、しかも等圧容器本体20内部の螺子孔を通して、シリコンオイル82が外部に流出することを防止できる。
【0028】
図3に示すように、発光部6又は受光部7と制御ユニット33は、耐圧コネクタ(5a~5c)を介して信号/電源ケーブル9により接続されているが、第1の光ファイバ41と発光部6又は第2の光ファイバ42と受光部7は、等圧容器本体20を介して、光信号の送受信が行われることになる。そこで、光信号の送受信が行われる具体的な構造について、
図5を参照して説明する。
図5は、光信号の送受信の説明図を示している。
図5に示すように、発光部6は、LED光源61を備えている。また、受光部7は、光センサ71を備え、検出した光信号を電気信号に変換する。
【0029】
等圧容器本体20において、第1の光ファイバ41及び第2の光ファイバ42が接続される部位はアクリル樹脂で形成されており、アクリル樹脂は、光線透過率が93%と極めて透明性が高いため、発光部6に設けられたLED光源61からの出射光13aを殆ど拡散することなく第1の光ファイバ41に届けることが可能である。
同様に、出射光13aが対象物12に反射し、第2の光ファイバ42により反射光13bとして届けられた光は、等圧容器本体20において殆ど拡散することなく光センサ71に届けられることになる。
このように、出射光13aと反射光13bの何れについても等圧容器本体20を通して円滑に光信号を送受信することが可能となっている。
【0030】
(深海用自然変状検知装置の性能試験)
まず、深海用自然変状検知装置1につき、20MPaの圧力下において動作試験を実施し、発光部6及び受光部7が大気圧下と同様に作動することを確認した。
【0031】
次に、水深約2mの大型海水水槽内において、実施例1の深海用自然変状検知装置1による基礎性能試験を実施した。
図6は、深海用自然変状検知装置の性能試験イメージ図を示している。試験内容としては、
図6に示すように、第2の光ファイバ42のセンサ部42aに、対象物12として人工的に砂を堆積させて、受光部7の応答を確認した。第1の光ファイバ41又は第2の光ファイバ42としては、POF(プラスチック光ファイバ)を用いた。
【0032】
図7は、受光部の応答信号に関するグラフを示している。深海用自然変状検知装置1による観測間隔は1分間に設定した。応答信号のCh1はPOF先端部すなわち第2の光ファイバ42のセンサ部42aの最下部を表し、Ch8は最上部を表している。グラフの縦軸は光強度、横軸は計測を行った時刻を表している。なお、ここでは光強度の数値については重要ではなく、砂の堆積に従って、光強度が低下しているか否かを二値的に判定すればよい。
図7に示されるように、まず、13時39分頃にCh1の光強度が低下し、13時41分頃にCh2の光強度が低下し、13時42分頃にCh3、13時43分頃にCh4、13時44分頃にCh5、13時45分頃にCh6、13時47分頃にCh7、また13時48分頃にCh8の光強度が低下している。このように、各Chの応答信号は砂の堆積に伴い変化し、Ch1から順番にCh8まで段階的に変化したことが確認できる。
本試験結果から、深海用自然変状検知装置1により海水中での砂の堆積厚を検知可能であることが確認できた。