(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102808
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217772
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056HA22
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】光の強度不足を避けつつ、ノズル内の液体に光が照射された場合でも当該液体の硬化を抑制することができる画像記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置は、第1硬化パラメータを有する光硬化型の第1液体を吐出する複数のノズルを含む第1ノズル列、および第1ノズル列と主走査方向に並んで配置されると共に第2硬化パラメータを有する光硬化型の第2液体を吐出する複数のノズルを含む第2ノズル列を有する吐出ヘッドと、吐出ヘッドと主走査方向に並んで配置され、第1液体および第2液体を硬化させる光を発する光照射装置とを備え、第2ノズル列は第1ノズル列と光照射装置との間に配置され、第2硬化パラメータを有する第2液体は第1硬化パラメータを有する第1液体よりも硬化し難い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1硬化パラメータを有する光硬化型の第1液体を吐出する複数のノズルを含む第1ノズル列、および前記第1ノズル列と主走査方向に並んで配置されると共に第2硬化パラメータを有する光硬化型の第2液体を吐出する複数のノズルを含む第2ノズル列を有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体および前記第2液体を硬化させる光を発する光照射装置と、を備え、
前記第2ノズル列は前記第1ノズル列と前記光照射装置との間に配置され、
前記第2硬化パラメータを有する第2液体は前記第1硬化パラメータを有する第1液体よりも硬化し難い、画像記録装置。
【請求項2】
前記光照射装置は光を出射する光源を有し、
前記第1ノズル列と前記光源との前記主走査方向における距離は第1距離であり、前記第2ノズル列と前記光源との前記主走査方向における距離は第2距離であり、
前記第1硬化パラメータおよび前記第2硬化パラメータは値が小さいほど硬化し難いことを示すパラメータであり、
前記第2硬化パラメータは、前記第2距離を前記第1距離で割った第1係数と前記第1硬化パラメータとの乗算値以下の値である、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記第1液体および前記第2液体が吐出される被印刷媒体を支える支持部をさらに備え、
前記第1ノズル列は、前記光源から出射された光が所定の前記被印刷媒体および前記支持部の一方又は両方で反射した光である反射光が前記第1ノズル列のノズルに照射されない位置に配置され、
前記第2ノズル列は、前記反射光が前記第2ノズル列のノズルに照射される位置に配置されている、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記第1硬化パラメータは前記第1液体に含まれる光重合開始剤の量であり、前記第2硬化パラメータは前記第2液体に含まれる光重合開始剤の量であり、
前記第2液体は前記第1液体よりも前記光重合開始剤の量が少ない、請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記主走査方向において前記光照射装置とは逆側に配置された第2光照射装置をさらに備え、
前記吐出ヘッドは、第3硬化パラメータを有する光硬化型の第3液体を吐出する複数のノズルを含む第3ノズル列をさらに有すると共に、前記光照射装置と前記第2光照射装置との間に配置され、
前記主走査方向において前記第2光照射装置に近い側から、前記第3ノズル列、前記第1ノズル列、および第2ノズル列の順で配置され、
前記第3硬化パラメータは前記第1硬化パラメータよりも硬化し難いパラメータである、請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記第1液体の吸光度および前記第2液体の吸光度を、前記第1液体および前記第2液体に対して所定照度の紫外線を照射してFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)法により測定し、
前記第1硬化パラメータは、前記第1液体の測定前の吸光度で前記測定における所定時間後の前記第1液体の吸光度を除した第1割合であり、
前記第2硬化パラメータは、前記第2液体の測定前の吸光度で前記測定における前記所定時間後の前記第2液体の吸光度を除した第2割合であり、
前記第1割合および前記第2割合のうち数値が高いものが硬化し難いパラメータである、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記所定時間が240秒である、請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記第1液体の吸光度および前記第2液体の吸光度を、前記第1液体および前記第2液体に対して所定照度の紫外線を照射してFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)法により測定し、
前記第1硬化パラメータは、前記第1液体の測定前の吸光度で前記測定における前記第1液体の吸光度を除した第3割合が所定割合に達するまでの第1時間であり、
前記第2硬化パラメータは、前記第2液体の測定前の吸光度で前記測定における前記第2液体の吸光度を除した第4割合が前記所定割合に達するまでの第2時間であり、
前記第1時間および前記第2時間のうち時間が長いものが硬化し難いパラメータである、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記所定割合が80%である、請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記所定照度が5mW/cm2である、請求項6乃至9の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
第1液体を吐出する複数のノズルを含む第1ノズル列、および前記第1ノズル列と主走査方向に並んで配置されると共に第2液体を吐出する複数のノズルを含む第2ノズル列を有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体および前記第2液体を硬化させる光を発する光照射装置と、を備え、
前記第2ノズル列は前記第1ノズル列と前記光照射装置との間に配置され、
前記第2液体は前記第1液体よりも前記光に対して硬化し難い、画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、光硬化型のインクを吐出するノズルを備えた吐出ヘッドと当該インクを硬化させる光を出射する光照射部とを備えた画像記録装置が開示されている。この画像記録装置では、吐出ヘッドと光照射部とが並んで配置されている。この光照射部は、発する光によってノズル内のインクが硬化しないようにその全体を吐出ヘッドに対して外側に傾けた状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の画像記録装置では光照射部全体を吐出ヘッドに対して外側に傾けた状態で配置しているため、光の強度が不足し易いという課題がある。詳しくは、光照射部全体を傾けた状態で配置すると、吐出ヘッドに近い位置の発光部(発光ダイオードチップなど)と当該吐出ヘッドから遠い位置の発光部とで、発光部から被印刷媒体までの距離に差が生じてしまう。つまり、吐出ヘッドから遠い位置の発光部から被印刷媒体までの距離は、吐出ヘッドに近い位置の発光部から被印刷媒体までの距離よりも長くなる。そのため、吐出ヘッドから遠い位置の発光部により被印刷媒体に照射される光の照度は、吐出ヘッドに近い位置の発光部により被印刷媒体に照射される光の照度よりも小さくなり、それ故エネルギー効率が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、光の強度不足を避けつつ、ノズル内の液体に光が照射された場合でも当該液体の硬化を抑制することができる画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、第1硬化パラメータを有する光硬化型の第1液体を吐出する複数のノズルを含む第1ノズル列、および前記第1ノズル列と主走査方向に並んで配置されると共に第2硬化パラメータを有する光硬化型の第2液体を吐出する複数のノズルを含む第2ノズル列を有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドと前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体および前記第2液体を硬化させる光を発する光照射装置と、を備え、前記第2ノズル列は前記第1ノズル列と前記光照射装置との間に配置され、前記第2硬化パラメータを有する第2液体は前記第1硬化パラメータを有する第1液体よりも硬化し難いものである。
【0007】
本発明に従えば、第2ノズル列が第1ノズル列と光照射装置との間に配置された構成において、第2硬化パラメータを有する第2液体が第1硬化パラメータを有する第1液体よりも硬化し難い。このことによって、光照射装置に近い位置に配置された第2ノズル列のノズル内の液体に光が照射された場合でも当該液体の硬化を抑制することができる。また、従来のように光照射装置全体を吐出ヘッドに対して外側に傾けた状態で配置しないので、光の強度不足が生じることもない。以上によって、光の強度不足を避けつつ、ノズル内の液体に光が照射された場合でも当該液体の硬化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光の強度不足を避けつつ、ノズル内の液体に光が照射された場合でも当該液体の硬化を抑制することができる画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像記録装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1のキャリッジに搭載された吐出ヘッドおよび紫外線照射装置の配置例を示す平面図である。
【
図3】
図1の画像記録装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の吐出ヘッドにおける各ノズル列と紫外線照射装置における発光ダイオードチップとの距離を説明するための図である。
【
図5】第1ノズル列と反射光との位置関係および第2ノズル列と反射光との位置関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態における第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明するためのグラフである。
【
図7】第3実施形態における第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明するためのグラフである。
【
図8】吐出ヘッドおよび紫外線照射装置の配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る画像記録装置について図面を参照して説明する。以下に説明する画像記録装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る画像記録装置1を示す斜視図である。
図1において、互いに直交する方向を、上下方向、左右方向、および前後方向とする。なお、左右方向が後述の主走査方向Dsであり、前後方向が後述の副走査方向Dfである。この画像記録装置1は、印刷用紙等の被印刷媒体Wへの印刷のみならず、例えば各種グッズに印刷するグッズ等の樹脂等の被印刷媒体Wに印刷するグッズプリントをも行うものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の画像記録装置1は、筐体2と、キャリッジ3と、操作キー4と、表示部5と、プラテン6と、上部カバー7とを備える。また、画像記録装置1は
図3の制御ユニット19を備える。
【0013】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は前面に開口部2aを有すると共に背面に図略の開口部を有している。筐体2の右側前方の位置には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の後方の位置には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は所定のタイミングで操作キーとしても機能する。制御ユニット19(
図3)は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0014】
キャリッジ3は主走査方向Dsに沿って往復動可能に構成されている。
図2に示すように、キャリッジ3には、例えば、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)および2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されている。紫外線照射装置40が光照射装置に相当する。吐出ヘッド10としては、液体の一例として紫外線硬化型のインクを吐出するインクジェットヘッドを用いることができる。また、紫外線照射装置40は、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップDT(
図4)を有し、吐出ヘッド10により吐出された上記インクを硬化させるための光である紫外線を照射する。発光ダイオードチップDTが光源に相当する。吐出ヘッド10Aおよび吐出ヘッド10Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。また、紫外線照射装置40Aおよび紫外線照射装置40Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。さらに、吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Aは吐出ヘッド10Aの右方に配置されている。また、吐出ヘッド10Bおよび紫外線照射装置40Bは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Bは吐出ヘッド10Bの右方に配置されている。なお、画像記録装置1は吐出ヘッド10に供給するためのインクを貯留する図略のインクタンクを備える。
【0015】
図2において、印刷処理における1パス時にはキャリッジ3は主走査方向Dsの左方に移動する。これにより、印刷処理時において吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は左方に移動する。この場合、吐出ヘッド10は主走査方向Dsの左方に移動しつつ被印刷媒体Wにインクを吐出し、紫外線照射装置40は主走査方向Dsの左方に移動しつつ被印刷媒体Wに着弾したインクに紫外線を照射する。これによって、印刷処理時のキャリッジ3の移動方向において吐出ヘッド10よりも後方側に紫外線照射装置40が位置されるので、被印刷媒体Wに着弾した直後のインクに対して紫外線を照射することができる。
【0016】
印刷処理の1パスが終了すると、キャリッジ3は主走査方向Dsの右方に移動して主走査方向Dsの所定位置に戻る。これにより、吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は主走査方向Dsの右方に移動する。この場合、吐出ヘッド10はインクを吐出することなく主走査方向Dsの右方に移動し、紫外線照射装置40は主走査方向Dsの右方に移動しつつ、印刷処理時に吐出されたインクに対して紫外線を照射する。これにより、インクに対して紫外線を十分に照射することができ、当該インクの硬化性を向上することができる。
【0017】
本実施形態において、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインクを吐出する。吐出ヘッド10Aにはこれらの各インクを吐出するノズル列NLが副走査方向Dfに沿ってそれぞれ延在して設けられる。各ノズル列NLは主走査方向Dsに沿って一定間隔で設けられる。以上の4色のインクが被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。
【0018】
一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインクおよびクリア(Cr)のインクを吐出する。吐出ヘッド10Bにはこれらの各インクを吐出するノズル列NLが副走査方向Dfに沿ってそれぞれ延在して設けられる。各ノズル列NLは主走査方向Dsに沿って一定間隔で設けられる。例えば被印刷媒体Wとしての布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクが先に吐出され、当該白インクの上にカラーインクが吐出される。また、クリアインクは光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。
【0019】
支持部に相当するプラテン6は、被印刷媒体Wを支えるように構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば副走査方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。上記のプラテン支持台は被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で移動可能に構成されている。印刷位置とはプラテン6が吐出ヘッド10に対向する位置であり、着脱位置とは上記のプラテン支持台が筐体2の外側に配置される位置であって被印刷媒体Wをプラテン6上に載置可能な位置である。印刷時には、プラテン6が副走査方向Dfに移動するので、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wは副走査方向Dfに搬送される。
【0020】
上部カバー7は、その前部を持ち上げると、回動可能に構成された基端を支点として上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出するようになっている。
【0021】
次に、画像記録装置1の各構成の機能についてブロック図を参照しつつ説明する。
図3に示すように、画像記録装置1は、上述の構成要素の他、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,36、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC37,38、内部電源15、および受電部16を備えている。
【0022】
制御ユニット19は、CPU20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)およびASIC25を有している。CPU20は、画像記録装置1の制御部であり、上記記憶部に接続されていると共に各ドライバIC30~32,36~38および表示部5を制御する。
【0023】
CPU20は、ROM21に記憶された所定のプログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。CPU20は、制御ユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。
【0024】
ROM21には、CPU20が印刷処理を実行させるための印刷制御プログラムが記憶されている。RAM22にはCPU20の演算結果が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には機密性の高い特定情報などが記憶される。
【0025】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,36と、照射装置ドライバIC37,38とが接続されている。CPU20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、印刷制御プログラムに基づいて、印刷指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、印刷指令に基づいて各ドライバIC30~32,36~38を駆動する。CPU20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6が副走査方向Dfに移動し、被印刷媒体Wが搬送される。また、CPU20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動してキャリッジ3を移動させる。また、CPU20は、ヘッドドライバIC32,36により移動するキャリッジ3に搭載された吐出ヘッド10からインクを吐出させ、搬送される被印刷媒体Wに画像データを印刷させる。さらに、CPU20は、照射装置ドライバIC37,38により紫外線照射装置40A,40Bからインクを硬化させるための紫外線を照射させる。
【0026】
内部電源15は筐体2内の所定位置に設けられている。内部電源15は画像記録装置1の本体電源がOFF状態にあるときに制御ユニット19を動作可能にする。内部電源15は、例えば二次電池である。また、受電部16は筐体2から外部に露出するように設けられ、外部電源から電力の供給を受ける。本体電源がON状態にあるときには、外部からの電力が受電部16を介して画像記録装置1の各部へ供給される。本体電源の状態によらずに内部電源15には外部からの電力が受電部16を介して供給され、内部電源15はこの電力により充電される。
【0027】
続いて、本実施形態の紫外線照射装置40における複数の発光ダイオードチップDTの配置について説明する。発光ダイオードチップDTは紫外線を発生させる半導体素子である。なお、以下では紫外線照射装置40Aおよび吐出ヘッド10Aについて代表的に説明するが、紫外線照射装置40Bおよび吐出ヘッド10Bについても紫外線照射装置40Aおよび吐出ヘッド10Aと同様に構成することができる。
【0028】
図4に示すように、紫外線照射装置40Aは平面視において例えば矩形状に形成された支持基板41を備えている。各発光ダイオードチップDTは支持基板41上に配置される。
【0029】
各発光ダイオードチップDTは、インクに紫外線を照射することにより、当該インクに含まれる光重合開始剤が反応し、当該インクに含まれるモノマーが重合し、当該インクを被印刷媒体Wに定着させる。各発光ダイオードチップDTはマトリクス状に配置される。各発光ダイオードチップDTは、主走査方向Dsに沿って一定間隔で配置されると共に、副走査方向Dfに沿って一定間隔で配置されている。副走査方向Dfに沿って一定間隔で並んで配置された複数の発光ダイオードチップDTの群をチップ列DLとする。したがって、
図4には5つのチップ列DLが配置された例が示されている。なお、支持基板41に配置される発光ダイオードチップDTの数は上記に限定されるものではなく、1パス時の積算光量や消費電力等に基づいて決定される。
【0030】
吐出ヘッド10Aには、上述の通り4つのノズル列NLが設けられている。各ノズル列NLは、副走査方向Dfに沿って一定間隔で並んで配置されてインクを吐出する複数のノズルNzを含む。なお、
図4には2つのノズル列NLのみ図示しており、他の2つのノズル列については省略されている。
【0031】
図4に示すように、主走査方向Dsにおいて紫外線照射装置40Aの左方に配置されたノズル列NLを、以下、ノズル列NL1(第1ノズル列に相当)とする。また、ノズル列NL1と主走査方向Dsに並んで配置され且つノズル列NL1と紫外線照射装置40Aとの間に配置されたノズル列NLを、以下、ノズル列NL2(第2ノズル列に相当)とする。なお、主走査方向Dsにおいて紫外線照射装置40Aの左方に配置されたノズル列NLであれば、吐出ヘッド10Aにおける左から3つのノズル列NLのうち何れのノズル列NLをノズル列NL1としてもよい。また、ノズル列NL1と主走査方向Dsに並んで配置され且つノズル列NL1と紫外線照射装置40Aとの間に配置されたノズル列NLであれば、吐出ヘッド10Aにおける右から3つのノズル列NLのうち何れのノズル列NLをノズル列NL2としてもよい。
【0032】
本実施形態において、ノズル列NL1の各ノズルNZは、第1硬化パラメータを有する光硬化型のインクである第1液体を吐出する。また、ノズル列NL2の各ノズルNZは、第2硬化パラメータを有する光硬化型のインクである第2液体を吐出する。
【0033】
第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータは、値が小さいほどインクが硬化し難いことを示すパラメータである。第2硬化パラメータは第1硬化パラメータよりも紫外線により硬化し難いパラメータである。例えば、第1硬化パラメータは第1液体に含まれる光重合開始剤の量であり、第2硬化パラメータは第2液体に含まれる光重合開始剤の量である。この場合、上述の通り、硬化パラメータの値が小さいほどインクが硬化し難いことと、第2硬化パラメータを有する第2液体の方が比較的硬化し難いことから、第2液体は第1液体よりも光重合開始剤の量が少ない。
【0034】
ここで、第1硬化パラメータと第2硬化パラメータとの関係をノズル列NLと発光ダイオードチップDTとの距離を用いて表すと、次の通りとなる。
図4において、ノズル列NL1と発光ダイオードチップDT(吐出ヘッド10Aに最も近いもの)との主走査方向Dsにおける距離を第1距離L1とし、ノズル列NL2と発光ダイオードチップDTとの主走査方向Dsにおける距離を第2距離L2とする。このとき、第2硬化パラメータは、第2距離L2を第1距離L1で割った第1係数と第1硬化パラメータとの乗算値以下の値である。
【0035】
次に、
図5は第1ノズル列と反射光との位置関係および第2ノズル列と反射光との位置関係を示す図である。なお、反射光とは発光ダイオードチップDTから出射された光が所定の被印刷媒体Wおよびプラテン6の一方又は両方で反射した光である。所定の被印刷媒体Wとは、例えばプラテン6の上面と平行な平面を有する被印刷媒体である。
【0036】
図5に示すように、ノズル列NL1は、発光ダイオードチップDT(吐出ヘッド10Aに最も近いもの)からの出射光SRの反射光HRがノズル列NL1のノズルNZに照射されない位置に配置される。これに対して、ノズル列NL2は、反射光HRがノズル列NL2のノズルNZに照射される位置に配置される。なお、
図5では右から2番目のノズル列NLをノズル列NL1(つまり第1ノズル列)とし、右から1番目のノズル列NLをノズル列NL2(つまり第2ノズル列)とした場合の位置関係について述べた。しかし、上述した通り、吐出ヘッド10Aにおける左から3つのノズル列NLのうち何れのノズル列NLをノズル列NL1としてもよく、そして、吐出ヘッド10Aにおける右から3つのノズル列NLのうち何れのノズル列NLをノズル列NL2としてもよい。このようなことから、例えば、
図5において右から3番目のノズル列NLをノズル列NL1とし、右から2番目のノズル列NLをノズル列NL2としてもよい。この場合における反射光HRの吐出ヘッド10Aに対する照射位置は上述と同様である。
【0037】
本実施形態において、吐出ヘッド10Aにおける4つのノズル列NLの主走査方向Dsにおける配置順序は、主走査方向Dsの右方から左方にかけて、紫外線により硬化し難いインクを吐出するノズル列NLの順となっている。すなわち、紫外線により最も硬化し難いインクを吐出するノズル列NLが紫外線照射装置40Aに最も近い位置に配置されるようになっている。例えば、吐出ヘッド10Aにおける4つのノズル列NLの主走査方向Dsにおける配置順序は、主走査方向Dsの右方から左方にかけて、イエロー(Y)色のインクを吐出するノズル列NL、ブラック(K)色のインクを吐出するノズル列NL、シアン(C)色のインクを吐出するノズル列NL、およびマゼンタ(M)色のインクを吐出するノズル列NLの順とすることができる。
【0038】
以上のように、本実施形態の画像記録装置1によれば、ノズル列NL2がノズル列NL1と紫外線照射装置40Aとの間に配置された構成において、第2硬化パラメータを有する第2液体が第1硬化パラメータを有する第1液体よりも硬化し難い。このことによって、紫外線照射装置40Aに近い位置に配置されたノズル列NL2のノズルNZ内のインクに紫外線が照射された場合でも当該インクの硬化を抑制することができる。また、従来のように紫外線照射装置40全体を吐出ヘッド10に対して外側に傾けた状態で配置しないので、紫外線の強度不足が生じることもない。以上によって、紫外線の強度不足を避けつつ、ノズルNZ内のインクに紫外線が照射された場合でも当該インクの硬化を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータは値が小さいほど硬化し難いことを示すパラメータであり、第2硬化パラメータは第2距離L2を第1距離L1で割った第1係数と第1硬化パラメータとの乗算値以下の値である。このように第2硬化パラメータと第1硬化パラメータとの関係式を確立することで、第2硬化パラメータが第1硬化パラメータよりも紫外線により硬化し難いパラメータであることを簡易に規定することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ノズル列NL1は発光ダイオードチップDT(吐出ヘッド10Aに最も近いもの)からの出射光SRの反射光HRがノズル列NL1のノズルNZに照射されない位置に配置される。これに対して、ノズル列NL2は反射光HRがノズル列NL2のノズルNZに照射される位置に配置される。このような構成を採用することで、比較的硬化し易い第1硬化パラメータを有する第1液体を吐出するノズル列NL1の各ノズルNZには反射光HRが照射されないようにすることができる。また、比較的硬化し難い第2硬化パラメータを有する第2液体を吐出するノズル列NL2の各ノズルNZに反射光HRが照射されたとしても、当該第2液体は硬化し難い。これらにより、紫外線の強度不足を避けることができると共に、ノズルNZ内のインクに紫外線が照射された場合でも当該インクの硬化を抑制することができるという効果を奏することが可能となる。また、上述の通りノズル列NL2は反射光HRが当該ノズル列NL2のノズルNZに照射される位置に配置されてもよいとすることで、吐出ヘッド10Aを紫外線照射装置40Aに近付けて配置することができる。これにより、上記の吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aを搭載するキャリッジ3をコンパクト化することができる。
【0041】
また、本実施形態では、第1硬化パラメータは第1液体に含まれる光重合開始剤の量であり、第2硬化パラメータは第2液体に含まれる光重合開始剤の量であり、当該第2液体は第1液体よりも光重合開始剤の量が少ない。このように光重合開始剤の量を調整することによって、第2硬化パラメータが第1硬化パラメータよりも紫外線により硬化し難いパラメータであることを容易に確保することができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態における第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明する。
【0043】
本実施形態においては、第1液体の吸光度および第2液体の吸光度を、第1液体および第2液体に対して所定照度の紫外線を所定時間照射してFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)法により測定する。上記の所定時間は例えば240秒であり、上記の所定照度は例えば5mW/cm2である。なお、FTIR法は公知であるため説明を省略する。
【0044】
図6は第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明するためのグラフである。
【0045】
本実施形態では、第1硬化パラメータを、第1液体の測定前の吸光度で測定における所定時間後の第1液体の吸光度を除した第1割合とする。また、第2硬化パラメータを、第2液体の測定前の吸光度で測定における所定時間後の第2液体の吸光度を除した第2割合とする。以下、具体的に説明する。
【0046】
図6に示すように、第1液体(マゼンタ)につき、測定前の吸光度は50であり、240秒経過後の吸光度は曲線から40である。したがって、第1割合は80%となる。また、第2液体(シアン)につき、測定前の吸光度は46であり、240秒経過後の吸光度は曲線から38である。したがって、第2割合は82%となる。この場合、第1割合および第2割合のうち数値が高いものを、紫外線により硬化し難いパラメータとして判定する。よって、第2液体(シアン)の方が第1液体(マゼンタ)よりも紫外線により硬化し難い。なお、本実施形態では、第1液体としてマゼンタのインクを用い、第2液体としてシアンのインクを用いたが、これに限定されるものではなく、これらの色のインクを含む任意の色のインクの硬化パラメータ同士を比較する場合にも同様の方法で硬化し難さを判定することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、紫外線の強度不足を避けつつ、ノズルNZ内のインクに紫外線が照射された場合でも当該インクの硬化を抑制することができる。また、上記のように第1硬化パラメータを第1割合とし、第2硬化パラメータを第2割合とすることで、第2硬化パラメータが第1硬化パラメータよりも紫外線により硬化し難いパラメータであることを簡易に規定することができる。
【0048】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態における第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明する。
【0049】
本実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1液体の吸光度および第2液体の吸光度を、第1液体および第2液体に対して所定照度の紫外線を照射してFTIR法により測定する。上記の所定照度は例えば5mW/cm2である。
【0050】
図7は第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータについて説明するためのグラフである。
【0051】
本実施形態では、第1硬化パラメータを、第1液体の測定前の吸光度で測定における第1液体の吸光度を除した第3割合が所定割合に達するまでの第1時間とする。また、第2硬化パラメータを、第2液体の測定前の吸光度で測定における第2液体の吸光度を除した第4割合が所定割合に達するまでの第2時間とする。本実施形態において、上記の所定割合を例えば80%とする。以下、具体的に説明する。なお、所定割合は80%に限らず、種々の値を採用することができる。
【0052】
図7に示すように、第1液体(マゼンタ)につき、測定前の吸光度は50であり、上記の第3割合が80%に達するとき(つまり、測定における吸光度が40に達するとき)の時間は曲線から第1時間t1である。また、第2液体(シアン)につき、測定前の吸光度は46であり、上記の第4割合が80%に達するとき(つまり、測定における吸光度が38に達するとき)の時間は曲線から第2時間t2である。この場合、第1時間t1および第2時間t2のうち時間が長いものを、紫外線により硬化し難いパラメータとして判定する。よって、第2液体(シアン)の方が第1液体(マゼンタ)よりも紫外線により硬化し難い。なお、本実施形態では、第1液体としてマゼンタのインクを用い、第2液体としてシアンのインクを用いたが、これに限定されるものではなく、これらの色のインクを含む任意の色のインクの硬化パラメータ同士を比較する場合にも同様の方法で硬化し難さを判定することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、紫外線の強度不足を避けつつ、ノズルNZ内のインクに紫外線が照射された場合でも当該インクの硬化を抑制することができる。また、上記のように第1硬化パラメータを第1時間t1とし、第2硬化パラメータを第2時間t2とすることで、第2硬化パラメータが第1硬化パラメータよりも紫外線により硬化し難いパラメータであることを簡易に規定することができる。
【0054】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0055】
上記実施形態では、吐出ヘッド10Aの主走査方向Dsの右方に紫外線照射装置40Aを設ける構成を採用したが、これに限定されるものではなく、以下の通り構成することもできる。
【0056】
図8は吐出ヘッドおよび紫外線照射装置の配置の変形例を示す図である。
図8に示すように、主走査方向Dsにおいて紫外線照射装置40Aとは逆側の位置、すなわち吐出ヘッド10Aの左方に第2紫外線照射装置40Cを設けてもよい。なお、第2紫外線照射装置40Cが第2光照射装置に相当する。
【0057】
吐出ヘッド10Aは紫外線照射装置40Aと第2紫外線照射装置40Cとの間に配置される。吐出ヘッド10Aは、第3硬化パラメータを有する光硬化型の第3液体を吐出する複数のノズルNZを含むノズル列NL3(第3ノズル列に相当)をさらに有している。第3硬化パラメータは第1硬化パラメータよりも硬化し難いパラメータである。すなわち、第3硬化パラメータは、第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータよりも硬化し難いパラメータである。
【0058】
このような構成において、主走査方向Dsにおいて第2紫外線照射装置40Cに近い側から、ノズル列NL3、ノズル列NL1、およびノズル列NL2の順で配置される。このように3つの硬化パラメータに基づき3つのノズル列NLの配置を決定してもよい。
【0059】
上記実施形態では、吐出ヘッド10Aにおけるノズル列NL1とノズル列NL2との配置関係について言及したが、吐出ヘッド10Bにおける2つのノズル列NLの配置関係も同様にすることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータとして、第1距離L1、第2距離L2、光重合開始剤の量、第1割合、第2割合、第1時間t1、および第2時間t2を挙げて説明を行ったが、紫外線による硬化し難さを示すものであれば、第1硬化パラメータおよび第2硬化パラメータは上記に限定されるものではない。
【0061】
さらに、上記実施形態では、キャリッジ3に2つの吐出ヘッド10(10A,10B)および2つの紫外線照射装置40(40A,40B)を搭載することとしたが、これに限らず、吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aのみを搭載してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 画像記録装置
6 プラテン
10,10A,10B 吐出ヘッド
40,40A,40B,40C 紫外線照射装置
Df 副走査方向
Ds 主走査方向
DT 発光ダイオードチップ
L1 第1距離
L2 第2距離
NL,NL1,NL2,NL3 ノズル列
NZ ノズル
W 被印刷媒体