(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102866
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】交換レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220630BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20220630BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G03B17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217871
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】東間 祐介
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AE06
2H101EE08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子部品の静電破壊を防止しつつ、交換レンズの組立性を高めること。
【解決手段】マウント16の内側に、グラウンド端子を含む複数の接点端子を有した端子台が配設され、フレキシブル基板36の一端側がメイン基板に電気的に接続され、フレキシブル基板36他端側が複数の接点端子に電気的に接続され、フレキシブル基板36は、グラウンド端子に電気的に接続された接続片40を有し、接続片40は、金属製の外装部品24の内周面に直接的又は間接的に導通している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の環状のマウントに固定され、鏡筒の一部を構成する金属製の環状又は筒状の外装部品と、
前記鏡筒内に配設され、複数の電子部品が実装されたメイン基板と、
前記マウントの内側に配設され、グラウンド端子を含む複数の接点端子を有した端子台と、
一端側が前記メイン基板に電気的に接続され、他端側が前記複数の接点端子に電気的に接続されたフレキシブル基板と、を備え、
前記フレキシブル基板は、前記グラウンド端子に電気的に接続された接続片を有し、前記接続片は、前記外装部品の内周面に直接的又は間接的に導通していることを特徴とする交換レンズ。
【請求項2】
前記接続片は、前記フレキシブル基板の径方向外側の部位に形成され、
更に、前記外装部品の内側に配設され、前記接続片を径方向内側から支持するサポート部を備えることを特徴とする請求項1に記載の交換レンズ。
【請求項3】
前記接続片は、導電性の介在部材を介して前記外装部品の内周面に間接的に導通し、かつ前記介在部材と前記サポート部との協働により挟持されていることを特徴とする請求項2に記載の交換レンズ。
【請求項4】
前記介在部材は、弾性変形可能であることを特徴とする請求項3に記載の交換レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラのカメラ本体に着脱可能な交換レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
交換レンズの鏡筒内には、露光を調整する絞り機構、及びフォーカスレンズによる合焦動作を行う合焦機構等、複数の駆動機構が設けられている。また、鏡筒内には、複数の駆動機構を制御するための回路基板が配設されており、回路基板には、複数の電子部品が実装されている。
【0003】
交換レンズの小型化の要請に伴い、複数の電子部品が非常に狭い空間に配置されることが多い。その結果、交換レンズの外的要因又は内的要因によって静電気が複数の電子部品に印加されると、電子部品の静電破壊を招くおそれがある。交換レンズの外的要因としては、例えば、使用者が帯電した状態で交換レンズを操作すること等が挙げられる。交換レンズの内的要因としては、例えば、金属製の部材と合成樹脂製の部材との摺動によって摩擦帯電が生じること等が挙げられる。
【0004】
特許文献1の交換レンズでは、グラウンドを強化して電子部品の静電破壊を防止するために、端子台のグラウンド端子にグラウンド用リード線の一端側が電気的に接続され、グラウンド用リード線の他端側がレンズ鏡筒の一部を構成する導電性部材に導通している。また、端子台のグラウンド端子を含む各接点端子は、接続用リード線の一端側に電気的に接続されており、各接続用リード線の他端側は、回路基板の対応する配線パターンに半田付けによって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の交換レンズは、複数の接続用リード線の他に、端子台のグラウンド端子に接続された専用のグラウンド導通部品としてグラウンド用リード線を備えるために、リード線の接続箇所が増えて、交換レンズの組立性が低下するという問題がある。なお、複数の接続用リード線に代えて、回路基板と端子台の複数の接点端子を電気的に接続するフレキシブル基板を用いた場合にも、同様の問題が生じる。
【0007】
本発明の一態様は、電子部品の静電破壊を防止しつつ、交換レンズの構成の簡略化及び交換レンズの組立性を高めることを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る交換レンズは、金属製の筒状のマウントに固定され、鏡筒の一部を構成する金属製の環状又は筒状の外装部品と、前記鏡筒内に配設され、複数の電子部品が実装されたメイン基板と、前記マウントの内側に配設され、グラウンド端子を含む複数の接点端子を有した端子台と、一端側が前記メイン基板に電気的に接続され、他端側が前記複数の接点端子に電気的に接続されたフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記グラウンド端子に電気的に接続された接続片を有し、前記接続片は、前記外装部品の内周面に直接的又は間接的に導通している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、電子部品の静電破壊を防止しつつ、交換レンズの組立性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る交換レンズの一部を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図1におけるB-B線に沿った拡大断面図である。
【
図4】
図1におけるC-C線に沿った拡大断面図である。
【
図5】メイン基板とレンズ側端子台とフレキシブル基板との配置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。なお、明細書及び特許請求の範囲において、軸方向とは、交換レンズの軸方向、換言すれば、鏡筒の軸方向のことであり、交換レンズの光軸方向と同義である。径方向とは、交換レンズの径方向(半径方向)、換言すれば、鏡筒の径方向のことである。径方向外側とは、径方向のうちの外側のことをいい、径方向内側とは、径方向のうちの内側のことをいう。図面に記載した通り、被写体側(物体側)を前側、結像側を後側と称する。
【0012】
〔交換レンズの全体的な構成〕
図1を参照して、交換レンズ10の全体的な構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る交換レンズの一部を示す模式的な断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る交換レンズ10は、カメラ12のカメラ本体14に着脱可能であって、被写体像を結像させる光学ユニットである。交換レンズ10は、カメラ本体14を取り付けるための金属製の環状のレンズ側マウント16を備えている。レンズ側マウント16は、カメラ本体14の金属製の環状のカメラ側マウント18にバヨネット(不図示)を介して着脱可能である。
【0014】
交換レンズ10は、軸方向(前後方向)に延びた略円筒状の鏡筒20を備えており、鏡筒20の一部を構成する金属製又は合成樹脂製の後部筒22は、レンズ側マウント16に固定されている。後部筒22の外周側には、鏡筒20の一部を構成する金属製の環状の外装部品24が配設されており、外装部品24は、レンズ側マウント16に固定されている。外装部品24は、レンズ側マウント16に導通している。鏡筒20は、後部筒22の他に、複数の金属製又は合成樹脂製の筒状部材(一部のみ図示)を有している。鏡筒20は、外装部品24の他に、複数の金属製又は合成樹脂製の環状部材(一部のみ図示)を有している。なお、外装部品24を筒状に形成してもよい。
【0015】
鏡筒20内には、被写体像を結像させるための複数のレンズ(不図示)が軸方向に沿って配設されている。また、鏡筒20内には、露光を調整する絞り機構(不図示)、複数のレンズのうちのフォーカスレンズによる合焦動作を行う合焦機構(不図示)が設けられている。また、鏡筒20内には、複数のレンズのうちの補正レンズによる手ぶれ補正動作を行う手ぶれ補正機構(不図示)が設けられている。
【0016】
〔交換レンズの電気的な構成等〕
図1から4を参照して、交換レンズ10の電気的な構成等について説明する。
図2は、
図1におけるA部の拡大図である。
図3は、
図1におけるB-B線に沿った拡大断面図である。
図4は、
図1におけるC-C線に沿った拡大断面図である。
図5は、メイン基板とレンズ側端子台とフレキシブル基板との配置状態を示す図である。
【0017】
図1から5に示すように、後部筒22の後端部側には、複数の駆動機構を含む交換レンズ10全体の動作を制御するための略C字形状のメイン基板26が設けられている。メイン基板26は、交換レンズ10とカメラ本体14との通信を制御する。メイン基板26の片面(後側面)には、抵抗、コンデンサ、ICチップ等の複数の電子部品28が実装されている。メイン基板26は、基準電位点となるグラウンド(不図示)を有しており、交換レンズ10とカメラ本体14の基準電位を同じにすることができる。なお、メイン基板26が略C字形状に形成される代わりに、環状に形成されてもよい。複数の電子部品28がメイン基板26の片面に実装される代わりに、メイン基板26の反対側の片面(前側面)又は両面に実装されてもよい。
【0018】
レンズ側マウント16の内側には、円弧状のレンズ側端子台30が配設されており、レンズ側端子台30は、止めネジ等によってレンズ側マウント16に固定されている。レンズ側端子台30は、インサート成形によって製作され、複数の金属製の接点端子32を有している。複数の金属製の接点端子32のうち、接点端子32A,32Bは、グラウンド端子であり、グラウンド端子32A,32Bは、メイン基板26のグラウンドに導通する。なお、レンズ側端子台30がレンズ側マウント16に固定される代わりに、後部筒22に固定されるようにしてもよい。
【0019】
レンズ側端子台30の各接点端子32は、交換レンズ10がカメラ本体14に装着されると、カメラ本体14の本体側端子台34の対応する接点端子(不図示)に電気的に接続される。換言すれば、交換レンズ10は、交換レンズ10がカメラ本体14に装着されると、レンズ側端子台30及び本体側端子台34によってカメラ本体に電気的に接続されるように構成されている。これにより、交換レンズ10がカメラ本体14に装着された状態において、交換レンズ10のメイン基板26とカメラ本体14の回路基板(不図示)との間で信号(データ)の通信経路が形成される。交換レンズ10は、通信経路を通じて撮像に関するデータをカメラ本体14に送信する。カメラ本体14は、通信経路を通じて制御信号を交換レンズ10に送信する。
【0020】
外装部品24の内側には、メイン基板26とレンズ側端子台30の複数の接点端子32を電気的に接続する略円弧状のフレキシブル基板36が配設されている。フレキシブル基板36の一端側は、コネクタ38を介してメイン基板26に電気的に接続されている。フレキシブル基板36の他端側は、レンズ側端子台30の複数の接点端子32に半田付けによって電気的に接続されている。フレキシブル基板36は、各接点端子32をメイン基板26の対応する導電パターン(不図示)に導通させる。
【0021】
フレキシブル基板36の径方向外側の部位には、2つの接続片40(40A,40B)が形成されており、各接続片40の先端側のカバレイは、開口されている。一方の接続片40Aは、フレキシブル基板36の導電パターン(不図示)を介して一方のグラウンド端子32Aに電気的に接続されている。他方の接続片40Bは、フレキシブル基板36の導電パターン(不図示)を介して他方のグラウンド端子32Bに電気的に接続されている。各接続片40(40A,40B)の先端側は、各接続片40(40A,40B)を折り曲げた状態で、導電性の介在部材42を介して外装部品24の内周面に間接的に導通している。介在部材42は、導電性ガスケットと同様の材料、例えば、導電性ゴムにより構成されており、弾性変形可能である。なお、各接続片40の先端側が介在部材42を介して外装部品24の内周面に間接的に導通する代わりに、外装部品24の内周面に直接的に導通してもよい。各接続片40(40A,40B)の先端側の折り曲げ部の数は2つであるが、1つ又は3つ以上にしてもよい。
【0022】
外装部品24の内側には、2つの接続片40を半径方向内側から支持する円弧状のサポート部44が配設されている。サポート部44は、鏡筒20の一部を構成する筒状部材又は環状部材の一部であってもよい。2つの接続片40(40A,40B)は、介在部材42とサポート部44との協働により挟持されている。
【0023】
〔本実施形態の作用効果〕
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0024】
フレキシブル基板36が2つのグラウンド端子32A,32Bに電気的に接続された2つの接続片40(40A,40B)を有し、各接続片40(40A,40B)が外装部品24の内周面に直接的又は間接的に導通している。そのため、交換レンズ10とカメラ本体14の間で、通常のグラウンド経路の他に、外装部品24から2つの接続片40(40A,40B)、レンズ側端子台30、及び本体側端子台34を経由したカメラ本体14の回路基板のグラウンドまで導通させる別のグラウンド経路を形成することができる。通常のグラウンド経路とは、交換レンズ10のメイン基板26のグラウンドからレンズ側端子台30及び本体側端子台34を経由したカメラ本体14の回路基板のグラウンドまで導通させる経路のことである。
【0025】
つまり、本実施形態に係る交換レンズ10の構成によれば、グラウンド端子32A,32Bに接続された専用のグラウンド導通部品を用いることなく、交換レンズ10のグラウンドを強化することができる。特に、2つの接続片40(40A,40B)が介在部材42とサポート部44との協働により挟持されているため、2つの接続片40(40A,40B)と外装部品24の内周面との導通状態を安定させて、交換レンズ10のグラウンドを安定的に強化することができる。
【0026】
従って、本実施形態によれば、電子部品28の静電破壊を防止しつつ、導通部材の接続箇所を減らして、交換レンズ10の組立性を高めることができる。特に、介在部材42が弾性変形可能であるため、2つの接続片40(40a,40b)を介在部材42とサポート部44との間に容易に挿入することができ、交換レンズ10の組立性をより高めることができる。
【0027】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る交換レンズは、金属製の環状のマウントに固定され、鏡筒の一部を構成する金属製の環状又は筒状の外装部品と、前記鏡筒内に配設され、複数の電子部品が実装されたメイン基板と、前記マウントの内側に配設され、グラウンド端子を含む複数の接点端子を有した端子台と、一端側が前記メイン基板に電気的に接続され、他端側が前記複数の接点端子に電気的に接続されたフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記グラウンド端子に電気的に接続された接続片を有し、前記接続片は、前記外装部品の内周面に直接的又は間接的に導通している。
【0028】
前記の構成によれば、前記フレキシブル基板が前記グラウンド端子に電気的に接続された前記接続片を有し、前記接続片が前記外装部品の内周面に直接的又は間接的に導通している。そのため、前記交換レンズと前記カメラ本体の間で、通常のグラウンド経路の他に、前記外装部品から前記接続片、前記端子台、及び前記カメラ本体の端子台を経由した前記カメラ本体のグラウンドまで導通させる別のグラウンド経路を形成することができる。つまり、本発明の態様1に係る交換レンズの構成によれば、前記グラウンド端子に接続された専用のグラウンド導通部品を用いることなく、前記交換レンズのグラウンドを強化することができる。従って、前記電子部品の静電破壊を防止しつつ、導通部材の接続箇所を減らして、前記交換レンズの組立性を高めることができる。
【0029】
本発明の態様2に係る交換レンズは、前記態様1において、前記接続片は、前記フレキシブル基板の径方向外側の部位に形成され、更に、前記外装部品の内側に配設され、前記接続片を径方向内側から支持するサポート部を備えてもよい。
【0030】
前記の構成によれば、前記接続片が前記サポート部によって径方向内側から支持さているため、前記接続片と前記外装部品の内周面との導通状態を安定させることができ、前記交換レンズのグラウンドを安定的に強化することができる。
【0031】
本発明の態様3に係る交換レンズは、前記態様2において、前記接続片は、導電性の介在部材を介して前記外装部品の内周面に間接的に導通し、かつ前記介在部材と前記サポート部との協働により挟持されてもよい。
【0032】
前記の構成によれば、前記接続片が前記介在部材と前記サポート部との協働により挟持されているため、前記接続片と前記外装部品の内周面との導通状態をより安定させて、前記交換レンズのグラウンドをより安定的に強化することができる。
【0033】
本発明の態様4に係る交換レンズは、前記態様3において、前記介在部材は、弾性変形可能であってもよい。
【0034】
前記の構成よれば、前記介在部材が弾性変形可能であるため、前記接続片を前記介在部材と前記サポート部との間に容易に挿入することができ、前記交換レンズの組立性をより高めることができる。
【0035】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10 交換レンズ
12 カメラ
14 カメラ本体
16 レンズ側マウント(マウント)
18 カメラ側マウント
20 鏡筒
22 後部筒
24 外装部品
26 メイン基板
28 電子部品
30 レンズ側端子台(端子台)
32 接点端子
32A グラウンド端子
32B グラウンド端子
34 本体側端子台
36 フレキシブル基板
38 コネクタ
40接続片
40A 一方の接続片
40B 他方の接続片
42 介在部材
44 サポート部