IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

特開2022-102867熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法
<>
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図1
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図2
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図3
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図4
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図5
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図6
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図7
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図8
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図9
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図10
  • 特開-熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102867
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220630BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20220630BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220630BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220630BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220630BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220630BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20220630BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20220630BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20220630BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220630BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20220630BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B5/32
B32B27/34
B32B27/36
B32B7/027
B32B27/00 103
B32B1/02
B29C48/08
B29C48/21
B29C44/00 E
B29C44/24
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217884
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】田井 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】田積 皓平
(72)【発明者】
【氏名】山田 航平
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA17
3E033BA18
3E033BA30
3E033BB08
3E033CA07
3E033CA20
3E033FA01
4F100AC03A
4F100AC03B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK49B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA01A
4F100CA01B
4F100DA01A
4F100DA01B
4F100DJ01A
4F100DJ01B
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA05
4F100JA12
4F100JA13
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JK02
4F100JL16A
4F100JL16B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F207AA24
4F207AA40
4F207AB02
4F207AG01
4F207AG03
4F207AG20
4F207AH58
4F207KA01
4F207KA11
4F207KB26
4F207KK04
4F207KK63
4F207KL88
4F214AA24
4F214AA40
4F214AB02
4F214AG01
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH58
4F214UA11
4F214UB02
4F214UB26
4F214UN04
4F214UN63
4F214UP88
(57)【要約】
【課題】耐熱強度及び成形性に優れる熱可塑性樹脂発泡積層シートを提供する。
【解決手段】第一発泡層5と第二発泡層6とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シートであって、第一発泡層5は、熱可塑性樹脂積層発泡シート2の一方の面に位置し、ポリエステル系樹脂を含み、第二発泡層6は、熱可塑性樹脂積層発泡シート2の他方の面に位置し、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、第二発泡層6のガラス転移温度Tg2が単一である、熱可塑性樹脂積層発泡シート2。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一発泡層と第二発泡層とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シートであって、
前記第一発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シートの一方の面に位置し、ポリエステル系樹脂を含み、
前記第二発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シートの他方の面に位置し、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
前記第二発泡層のガラス転移温度Tg2が単一である、熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
前記第一発泡層のガラス転移温度をTg1(℃)とし、
前記第二発泡層のガラス転移温度をTg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)の全てを満たす、請求項1に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
【請求項3】
前記Tg1(℃)及び前記Tg2(℃)が、下記の関係式(4)を満たす、請求項2に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
【請求項4】
前記第二発泡層は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
前記第一発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、
前記第二発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に、下記の関係式(5)~(7)の全てを満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
0≦D1≦55・・・(5)
5≦D2≦60・・・(6)
5≦(D2-D1)・・・(7)
【請求項6】
前記D1(質量%)及び前記D2(質量%)が、下記の関係式(8)を満たす、請求項5に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
5≦(D2-D1)≦55・・・(8)
【請求項7】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2と、前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きが-0.18~-0.025である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項8】
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項9】
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項10】
前記第一発泡層及び前記第二発泡層の双方又はいずれか一方が、リサイクル原料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【請求項11】
前記第一発泡層及び前記第二発泡層を、共押出法により、積層しつつ押出発泡成形する工程を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シートの製造方法。
【請求項12】
第一発泡層と第二発泡層とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体であって、
前記第一発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の一方の面に位置し、ポリエステル系樹脂を含み、
前記第二発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の他方の面に位置し、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
前記第二発泡層のガラス転移温度Tg2が単一である、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項13】
前記第一発泡層のガラス転移温度をTg1(℃)とし、
前記第二発泡層のガラス転移温度をTg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)の全てを満たす、請求項12に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
【請求項14】
前記Tg1(℃)及び前記Tg2(℃)が、下記の関係式(4)を満たす、請求項13に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
【請求項15】
前記第二発泡層は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、請求項12~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項16】
前記第一発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、
前記第二発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に、下記の関係式(5)~(7)の全てを満たす、請求項12~15のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
0≦D1≦55・・・(5)
5≦D2≦60・・・(6)
5≦(D2-D1)・・・(7)
【請求項17】
前記D1(質量%)及び前記D2(質量%)が、下記の関係式(8)を満たす、請求項16に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
5≦(D2-D1)≦55・・・(8)
【請求項18】
加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2と、前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きが-0.18~-0.025である、請求項12~17のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項19】
前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、請求項12~18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項20】
前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項21】
前記第一発泡層及び前記第二発泡層の双方又はいずれか一方が、リサイクル原料を含む、請求項12~20のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項22】
食品包装容器である、請求項12~21のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項23】
電子レンジ加熱対応容器である、請求項12~22のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【請求項24】
請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シートを得る工程と、
前記熱可塑性樹脂積層発泡シートを成形して熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体を得る工程と、を有する、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びに熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を発泡させた樹脂発泡シート及びその成形体は、軽量で断熱性が高いという特徴から、食品容器等に用いられている。
コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の小売店で調理済食品を購入し、これを家庭等で喫食する中食市場が拡大している。中食市場において、電子レンジでの加熱調理に対応できる食品容器が求められている。加熱調理に対応する食品容器には、電子レンジ等での加熱時に変形しにくいこと(加熱寸法安定性に優れる)、加熱した後に軟弱にならず容易に取り扱えること(耐熱強度に優れる)が求められる。
【0003】
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、ビカット軟化点110℃以上のポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする第一発泡層と、ビカット軟化点が110℃未満のポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする第二発泡層とを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートが提案されている。特許文献1の発明によれば、耐熱性や耐衝撃性に優れた積層発泡シートが得られる。
【0004】
特許文献1の発明は、耐油性の低いポリスチレン系樹脂組成物で構成されているため、油分の多い食材を容器に入れた状態でレンジ加熱すると、容器表面に溶けが発生する。また、耐油性を持たせるために、ポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムを発泡シートの表面にラミネートすることができるが、工程が煩雑となる。
【0005】
従来、耐油性が高く、かつ、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂の一つにポリエステル系樹脂があり、ポリエステル系樹脂の発泡シートが種々検討されている。
例えば、特許文献2には、低結晶化度の発泡ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに予備加熱を施して発泡PETシートを軟化し、次いで結晶化を促進する温度以上の金型で成形する発泡PETシートの成形方法が提案されている。特許文献2の発明によれば、結晶化を促進する温度以上で発泡PETシートを加熱することで、PETを結晶化して、加熱寸法安定性の向上を図っている。しかし、特許文献2の発明は、結晶化を促進するための工程(ヒートセット工程)を要するため、成形時間が長くなる。また、特許文献2の発明は、結晶化を促進するための温度まで加熱できる装置を要するため、新たな設備投資を要する等の問題を有する。
【0006】
こうした問題に対して、特許文献3には、結晶性ポリエステル系樹脂と、特定のガラス転移温度Tgの非晶性ポリエステル系樹脂とを特定の割合で含有する熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートが提案されている。特許文献3の発明によれば、ヒートセット工程を要することなく、優れた加熱寸法安定性の容器を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-158065号公報
【特許文献2】特開平3-239527号公報
【特許文献3】特開2014-28920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3の発明は、耐熱強度が低い。このため、加熱した後の容器が軟弱になり、取り扱いにくい。また、樹脂発泡シートには、成形体への成形のしやすさ(成形性)が求められる。
【0009】
そこで、本発明は、耐熱強度及び成形性に優れる熱可塑性樹脂発泡積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、結晶性ポリエステル系樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂との混合物は充分に相溶していないため、2種のポリエステル系樹脂の内の低い方のガラス転移温度に達すると、軟化して変形を生じるとの知見を得た。この知見を基に、2層以上の発泡層を有する熱可塑性樹脂積層発泡シートにおいて、相溶性の高い2種の樹脂を前記発泡層の内、少なくとも1層に含ませることで、耐熱強度及び成形性を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]第一発泡層と第二発泡層とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シートであって、
前記第一発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シートの一方の面に位置し、ポリエステル系樹脂を含み、
前記第二発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シートの他方の面に位置し、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
前記第二発泡層のガラス転移温度Tg2が単一である、熱可塑性樹脂積層発泡シート。
[2]前記第一発泡層のガラス転移温度をTg1(℃)とし、
前記第二発泡層のガラス転移温度をTg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)の全てを満たす、[1]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
[3]前記Tg1(℃)及び前記Tg2(℃)が、下記の関係式(4)を満たす、[2]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
[4]前記第二発泡層は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
[5]前記第一発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、
前記第二発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に、下記の関係式(5)~(7)の全てを満たす、[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
0≦D1≦55・・・(5)
5≦D2≦60・・・(6)
5≦(D2-D1)・・・(7)
[6]前記D1(質量%)及び前記D2(質量%)が、下記の関係式(8)を満たす、[5]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
5≦(D2-D1)≦55・・・(8)
[7]加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2と、前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きが-0.18~-0.025である、[1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
[8]前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、[1]~[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
[9]前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
[10]前記第一発泡層及び前記第二発泡層の双方又はいずれか一方が、リサイクル原料を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート。
【0012】
[11]前記第一発泡層及び前記第二発泡層を、共押出法により、積層しつつ押出発泡成形する工程を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シートの製造方法。
【0013】
[12]第一発泡層と第二発泡層とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体であって、
前記第一発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の一方の面に位置し、ポリエステル系樹脂を含み、
前記第二発泡層は、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の他方の面に位置し、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含み、
前記第二発泡層のガラス転移温度Tg2が単一である、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[13]前記第一発泡層のガラス転移温度をTg1(℃)とし、
前記第二発泡層のガラス転移温度をTg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)の全てを満たす、[12]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
[14]前記Tg1(℃)及び前記Tg2(℃)が、下記の関係式(4)を満たす、[13]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
[15]前記第二発泡層は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量と発熱量との差の絶対値が3~35J/gである、[12]~[14]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[16]前記第一発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、
前記第二発泡層におけるポリイミド系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に、下記の関係式(5)~(7)の全てを満たす、[12]~[15]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
0≦D1≦55・・・(5)
5≦D2≦60・・・(6)
5≦(D2-D1)・・・(7)
[17]前記D1(質量%)及び前記D2(質量%)が、下記の関係式(8)を満たす、[16]に記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
5≦(D2-D1)≦55・・・(8)
[18]加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2と、前記第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きが-0.18~-0.025である、[12]~[17]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[19]前記ポリイミド系樹脂がポリエーテルイミド系樹脂である、[12]~[18]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[20]前記ポリエステル系樹脂が、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、[12]~[19]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[21]前記第一発泡層及び前記第二発泡層の双方又はいずれか一方が、リサイクル原料を含む、[12]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[22]食品包装容器である、[12]~[21]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
[23]電子レンジ加熱対応容器である、[12]~[22]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体。
【0014】
[24][1]~[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層発泡シートを得る工程と、
前記熱可塑性樹脂積層発泡シートを成形して熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体を得る工程と、を有する、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂発泡積層シートによれば、耐熱強度及び成形性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂積層発泡シートの一例を示す断面図である。
図2】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図3】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図4】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂積層発泡シートの製造装置の一例を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の一例を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体の製造装置の一例を示す模式図である。
図8】実施例5の貯蔵弾性率E’の測定結果を示すグラフである。
図9】比較例1の貯蔵弾性率E’の測定結果を示すグラフである。
図10】実施例5の第一発泡層のDSC曲線である。
図11】実施例5の第二発泡層のDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「~」は、その両端の値を下限値及び上限値として含む範囲を表す。
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、第一発泡層と第二発泡層とを有する熱可塑性樹脂積層発泡シート(以下、単に「積層発泡シート」ともいう。)を例にして説明する。積層発泡シートは、発泡層のみで構成されていてもよく、発泡層の片面又は両面に非発泡層が設けられていてもよい。積層発泡シートの発泡層は、2層の発泡層で構成されていてもよく、3層以上の発泡層を有していてもよい。あるいは、2つ以上の発泡層からなる積層発泡シートの各発泡層の間に非発泡層が設けられていてもよい。
【0018】
[積層発泡シート]
本発明の積層発泡シートは、第一発泡層と第二発泡層とを有する。第一発泡層は、積層発泡シートの一方の面に位置し、第二発泡層は、積層発泡シートの他方の面に位置する。
第一発泡層は、ポリエステル系樹脂を含み、第二発泡層は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含む。
積層発泡シートの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1の積層発泡シート2は、熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体(以下、単に「積層発泡シート成形体」ともいう。)の原反、又は平板状の緩衝材等に用いられる。積層発泡シート成形体としては、例えば、熱成形体、圧空成形体、深絞成形体等の容器、折箱等が挙げられる。
図1は、本実施形態の積層発泡シート2の断面図である。積層発泡シート2は、2層の発泡層で構成されている。すなわち、積層発泡シート2は、第一発泡層5と、第二発泡層6とを有する。
【0020】
<物性>
積層発泡シート2の連続気泡率は、用途を勘案して決定できる。例えば、20%以下が好ましく、18%以下がより好ましく、16%以下がさらに好ましい。積層発泡シート2の連続気泡率が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体の耐衝撃性をより高め、成形性をより高められる。積層発泡シート2の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により求められる。
【0021】
積層発泡シート2の坪量は、用途を勘案して決定できる。例えば、50~900g/mが好ましく、100~700g/mがより好ましく、150~600g/mがさらに好ましい。積層発泡シート2の坪量が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の耐衝撃性をより高められる。積層発泡シート2の坪量が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体をより軽量にできる。加えて、積層発泡シート2の坪量が上記上限値以下であると、加熱成形の際の加熱時間が長くなり過ぎず、積層発泡シート成形体の生産性をより高められる。
【0022】
積層発泡シート2の坪量は、以下の方法で測定することができる。
積層発泡シート2の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片5個以上を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、積層発泡シート2の坪量(g/m)とする。
【0023】
積層発泡シート2の見掛け密度は、用途を勘案して決定できる。例えば、0.050~0.666g/cmが好ましく、0.066~0.500g/cmがより好ましく、0.100~0.400g/cmがさらに好ましい。積層発泡シート2の見掛け密度が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。積層発泡シート2の見掛け密度が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体をより軽量にできる。
積層発泡シート2の見掛け密度は、実施例に記載した方法と同様に求めることができる。
【0024】
積層発泡シート2の発泡倍率は、用途を勘案して決定できる。例えば、2~30倍が好ましく、3~20倍がより好ましく、3.5~15倍がさらに好ましい。積層発泡シート2の発泡倍率が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。積層発泡シート2の発泡倍率が上記上限値以下であると、積層発泡シート2の成形性をより高められる。
積層発泡シート2の発泡倍率は、実施例に記載した方法と同様に求めることができる。
【0025】
積層発泡シート2の厚さTは、用途を勘案して決定できる。例えば、積層発泡シート2が容器成形用であれば、厚さTは、0.3~5.0mmが好ましく、0.4~3.0mmがより好ましく、0.5~2.5mmがさらに好ましい。厚さTが上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性、剛性を高められる。厚さTが上記上限値以下であると、積層発泡シート2の成形性を高められる。
厚さTは、例えば、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定できる。
【0026】
積層発泡シート2において、加熱速度5℃/分、周波数1Hzでの固体粘弾性測定における第二発泡層6のガラス転移温度Tg2とガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きr(以下、単に「傾きr」ともいう。)は、-0.18~-0.025が好ましく、-0.15~-0.030がより好ましく、-0.10~-0.035がさらに好ましい。傾きrが上記下限値以上であると、温度上昇に伴う貯蔵弾性率E’の変化が小さくなり、耐熱強度をより高められる。傾きrが上記上限値以下であると、温度上昇に伴う貯蔵弾性率E’の変化が小さくなりすぎず、成形性をより高められる。
貯蔵弾性率E’の指数近似式の傾きrは、下記(e)式におけるxの係数rである。
【0027】
y=p×exp(r×x) ・・・(e)
y:貯蔵弾性率E’(Pa)
x:温度(℃)
p:x=0におけるyの値(Pa)
【0028】
≪第一発泡層≫
第一発泡層5は、熱可塑性樹脂組成物である第一樹脂組成物を発泡してなる層である。
第一樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と発泡剤とを有する。第一樹脂組成物を発泡してなる第一発泡層5は、熱可塑性樹脂で形成されたマトリクス内に、2以上の気泡を有する。
【0029】
第一発泡層5の熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂を含む。ポリエステル系樹脂を含むことで、本実施形態の積層発泡シート2は、耐油性をより高められる。
【0030】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(C-PET)がより好ましい。C-PETは、酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコールであるポリエステル系樹脂である。
ポリエステル系樹脂は、石油化学品由来のポリエステル系樹脂でもよいし、いわゆるバイオPET等の植物由来のポリエステル系樹脂でもよいし、これらの混合物でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料でもよい。
これらのポリエステル系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0031】
以下、植物由来のポリエステル系樹脂について説明する。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0032】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0033】
PETの合成反応を(I)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen-1,4-dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0034】
【化1】
【0035】
[(I)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1100の数である。]
【0036】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、図2に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、図3に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0037】
PEFの合成反応を(II)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0038】
【化2】
【0039】
[(II)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1100の数である。]
【0040】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図4に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0041】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3は、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。Tg3が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg3が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。なお、「成形性」は、例えば、積層発泡シート2を金型に挟んで熱成形した際に、金型のキャビティに積層発泡シート2が追随して、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3は、加熱速度10℃/分における2回目昇温過程のDSC測定で求められる。
【0042】
ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0043】
ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.5~1.5が好ましく、0.6~1.3がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。IV値が上記下限値以上であると、発泡時の破泡が抑制され、連続気泡率をより低められる。IV値が上記上限値以下であると、密度をより低くし、表面をより平滑にして、外観の美麗さを高められる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
【0044】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、9,000~26,000が好ましく、15,000~26,000がより好ましく、20,000~25,000がさらに好ましい。
Mnが上記下限値以上であると、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。Mnが上記上限値以下であると、耐熱性をさらに高められる。
【0045】
ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、100,000~500,000が好ましく、150,000~450,00がより好ましく、200,000~400,000がさらに好ましい。
Mzが上記数値範囲内であると、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。
【0046】
Mn及びMzは、以下の方法で測定できる。
(ポリエステル系樹脂の分子量)
測定対象から試料5mgを取り、これにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に追加して軽く手動で振とうする。これを浸漬時間24±1.0hrで放置する。試料が完全に溶解したことを確認後に、クロロホルムで10mLに希釈して軽く手動で振とうして、混合する。その後、ジーエルサイエンス(株)製の非水系0.45μmのクロマトディスク、又は(株)島津ジーエルシー製の非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過して、測定試料とする。測定試料を次の測定条件にて、クロマトグラフで測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを求める。
【0047】
〔測定装置〕
・測定装置=東ソー(株)製、「HLC-8320GPC EcoSEC」、ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
〔GPC測定条件〕
・カラム
〈サンプル側〉
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列。
〈リファレンス側〉
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列。
カラム温度=40℃。
移動相=クロロホルム。
〈動相流量〉
サンプル側ポンプ=1.0mL/分。
リファレンス側ポンプ=0.5mL/分。
検出器=UV検出器(254nm)。
注入量=15μL。
測定時間=26分。
サンプリングピッチ=500m秒。
【0048】
〔検量線用標準ポリスチレン試料〕
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量Mwが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、131,000、54,000、20,000、7,590、3,450、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、131,000、20,000、3,450)及びB(3,120,000、442,000、54,000、7,590、1,320)にグループ分けする。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを算出する。
【0049】
第一樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエステル系樹脂の含有割合は、40~100質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましい。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記下限値以上であると、成形性を高められる。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記上限値以下であると、耐熱強度をより高められる。
【0050】
<その他の樹脂>
第一樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、全く含まないか、積層発泡シート2の品質に影響しない程度に含むことをいう。第一樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部が最も好ましい。
【0051】
第一樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)を含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。
【0052】
(ポリイミド系樹脂)
第一樹脂組成物がポリイミド系樹脂を含有することで、第一発泡層5は、耐熱強度をより高められる。
ポリイミド系樹脂としては、特に限定されないが、環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであることが好ましく、溶融成形性を有するポリマーであることが好ましい。
ポリイミド系樹脂としては、例えば、米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号公報、特許第2606912号公報、特許第2606914号公報、特許第2596565号公報、特許第2596566号公報、特許第2598478号公報などに記載されるポリエーテルイミド、特許第2598536号公報、特許第2599171号公報、特開平9-48852号公報、特許第2565556号公報、特許第2564636号公報、特許第2564637号公報、特許第2563548号公報、特許第2563547号公報、特許第2558341号公報、特許第2558339号公報、特許第2834580号公報に記載のポリマー等が挙げられる。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリイミド系樹脂の主鎖に環状イミド以外の構造単位が含まれていてもよい。
環状イミド以外の構造単位としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が挙げられる。
また、ポリイミド系樹脂は、リサイクル原料でもよい。
これらのポリイミド系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0053】
ポリイミド系樹脂は、例えば、下記(III)式で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化3】
【0055】
[(III)式中、Rは、炭素数6~42の炭素原子の有する芳香族基であり、R’は、炭素数6~30の2価の芳香族基、炭素数2~30の脂肪族基及び炭素数4~30の脂環族基からなる群から選ばれた少なくとも1種の2価の有機基である。pは繰り返し単位を表す数で、5~100である。]
【0056】
ポリイミド系樹脂としては、ポリエステル系樹脂との相溶性を高める観点から、エーテル結合を有する構造単位を有するポリエーテルイミド系樹脂が好ましい。
【0057】
ポリイミド系樹脂は、従来公知の製造方法により調製できる。例えば、(III)式中のRを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸及びその酸無水物のいずれかもしくは双方と、(III)式中のR’を誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミン及び芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物を脱水縮合することにより得られる。ポリイミド系樹脂の製造方法として具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミド等の化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記R’を誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法等を例示できる。
【0058】
テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、1,1’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,2’-ビス[(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン及びその酸無水物等が挙げられる。
【0059】
ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p-フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等及びこれらの芳香族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する芳香族一級ジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、2-メチル-1,3-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等及びこれらの脂肪族、並びに脂環族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する脂肪族及び脂環族一級ジアミン等を例示できる。
【0060】
ポリイミド系樹脂のガラス転移温度Tg4は、190~240℃が好ましく、200~230℃がより好ましく、210~220℃がさらに好ましい。Tg4が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg4が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
ポリイミド系樹脂のガラス転移温度Tg4は、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3と同様の方法で求められる。
【0061】
ポリイミド系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3~30g/10分が好ましく、5~25g/10分がより好ましく、7~20g/10分がさらに好ましい。MFRが上記下限値以上であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。MFRが上記上限値以下であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。
本明細書において、MFRは、337℃、6.6kgfにおける値であり、ASTM D1238に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0062】
ポリイミド系樹脂の数平均分子量は、5,000~50,000が好ましく、6,000~39,000がより好ましく、7,000~27,000がさらに好ましい。ポリイミド系樹脂の数平均分子量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。ポリイミド系樹脂の数平均分子量が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
ポリイミド系樹脂の数平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。
【0063】
第一樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリイミド系樹脂の含有割合(第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の濃度D1)は、0~55質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記下限値以上であると、耐熱強度をより高められる。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
【0064】
第一発泡層5のポリイミド系樹脂の含有割合(第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の濃度D1)を把握することが必要である場合には、例えば、以下に示す方法で、濃度D1を測定できる。
積層発泡シート2の厚さ方向に直交する方向(平面方向)に沿って、第二発泡層6が入らないように第一発泡層5をスライスして薄片試料(例えば、厚さ0.2mmの試料)を作製する。この試料に対してポリイミド系樹脂の濃度D1を測定する。以下に、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂との混合樹脂の総質量に対するポリイミド系樹脂の含有割合について、その測定方法を例示する。下記測定方法では、ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド系樹脂としてポリエーテルイミド(PEI)を用いる。
【0065】
(ポリイミド系樹脂の含有割合の測定方法)
積層発泡シート2の発泡層の表面から厚さ方向に直交する方向(平面方向)に沿って他方の発泡層が入らないように発泡層を0.2mmにスライスし、測定試料とする。測定試料の表面の赤外分光(IR)分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC社製「Nicolet iS10」フーリエ変換赤外分光光度計及びThermo SCIENTIFIC社製一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS-5(角度=42°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~400cm-1
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
【0066】
得られた赤外吸収スペクトルのチャートから、D1410とD1778のピーク高さを求め、標準試料を用いて作成した検量線から得られた以下の式よりポリイミド系樹脂の含有割合を算出する。
ポリイミド系樹脂の含有割合(質量%)=100-{19.00ln(R)+37.95}×100
R=D1410/D1778
【0067】
D1410とは、ポリエステル系樹脂由来の波数1410cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度-ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。ベースラインは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1400cm-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1420cm-1±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
また、D1778とは、ポリイミド系樹脂由来の波数1778cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度-ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。ベースラインは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1760cm-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1800cm-1±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
【0068】
なお、上記標準試料は、以下のようにして作製できる。
【0069】
(標準試料の作製)
まず、表1に示した配合に従い、ポリエステル系樹脂(PET:遠東新世紀社製、商品名「CH-653」)と、ポリイミド系樹脂(PEI:SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1000」)と、無水ピロメリット酸(PMDA)とを混合して、混合物を用意する。該混合物をラボプラストミル二軸押出機(東洋精機製作所社製、型式:2DC15W、口径15mm、L/D=17)に投入し、350℃で溶融混練して樹脂組成物とする。該樹脂組成物をラボプラストミル二軸押出機前端に取り付けたノズル金型(直径3.0mm)から押出す。押出した樹脂組成物を、直ちに冷却水槽で冷却する。そして、冷却されたストランド状の樹脂組成物を充分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて長さが約2mmで、直径が約3mmの小粒状に切断して標準試料(A~I)を作製する。
標準試料(A~I)の組成を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
なお、上記検量線は、以下のように作成する。
【0072】
(検量線の作成)
上記標準試料(A~I)の表面の赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC社製「Nicolet iS10」フーリエ変換赤外分光光度計及びThermo SCIENTIFIC社製一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS-5(角度=42°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~400cm-1
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
・測定回数:10回。
【0073】
各測定において得られた赤外吸収スペクトルのチャートから、ポリイミド系樹脂の含有割合を求めるときと同様にデータ処理を実施し、D1410とD1778のピーク高さを求め、吸光度比(R=D1410/D1778)を算出する。各標準試料(A~I)の吸光度比に対するポリエステル系樹脂の配合割合をプロットし、前記プロットにおける対数近似式を検量線とする。
【0074】
第一樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、リサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂の何れか一方にリサイクル原料を含んでいてもよく、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂の両方にリサイクル原料を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂の一部又は全部がポリエステル系樹脂のリサイクル原料であってもよく、ポリイミド系樹脂の一部又は全部がポリイミド系樹脂のリサイクル原料であってもよい。
リサイクル原料は、例えば、次の原料等が挙げられる。
1)発泡体を粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした回収ペレット。
2)PETボトルを粉砕して得られるフレーク状の樹脂を押出機で再溶融させ、ノズル金型よりストランド状に押出し、これを冷却した後ペレタイズした再生PET。
【0075】
<発泡剤>
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0076】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~12質量部が好ましい。
【0077】
<任意成分>
第一発泡層5は、熱可塑性樹脂及び発泡剤以外のその他成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
【0078】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等が挙げられる。これらの気泡調整剤は、第一発泡層5の独立気泡率を高め、第一発泡層5を形成しやすい。
気泡調整剤の含有量は熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.2~5質量部が好ましい。
【0079】
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0080】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0081】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、酸化亜鉛、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
本実施形態の積層発泡シート2を食品用の容器に用いる場合には、上記の着色剤の中から衛生協議会登録品を選択することが好ましい。
着色剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、2質量部以下が好ましい。
【0082】
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0083】
結晶化促進剤としては、例えば、ケイ酸塩、炭素、金属酸化物等が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、含水ケイ酸マグネシウムであるタルクが挙げられる。炭素としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、グラフェン、コークス、メソポーラスカーボン、ガラス状炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
結晶化促進剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、3質量部以下が好ましい。
【0084】
架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物に架橋剤を配合することで、発泡時の破泡が抑制され、連続気泡率をより低められる。
架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.08~0.8質量部が好ましい。
【0085】
上述の任意成分は、それぞれ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
第一発泡層5に含まれる任意成分の総量は、第一発泡層5の総質量に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0086】
<物性>
第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、75~127℃が好ましく、80~120℃がより好ましく、85~115℃がさらに好ましい。Tg1が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg1が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、加熱速度10℃/分における2回目昇温過程のDSC測定で求められる。
なお、第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、第一発泡層5を構成する第一樹脂組成物のガラス転移温度と同一視できる。
【0087】
第一発泡層5における吸熱量と発熱量との差の絶対値(吸熱発熱差)は、3~35J/gが好ましく、5~30J/gがより好ましく、7~28J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であると、結晶化度が高まり、耐熱強度及び加熱寸法安定性をより高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であると、結晶化度が高まりすぎず、成形性を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における1回目昇温過程のDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
なお、第一発泡層5における吸熱発熱差は、第一発泡層5を構成する熱可塑性樹脂の吸熱発熱差と同一視できる。
【0088】
第一発泡層5の連続気泡率は、20%以下が好ましく、18%以下がより好ましく、16%以下がさらに好ましい。第一発泡層5の連続気泡率が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体の耐衝撃性をより高め、成形性をより高められる。
第一発泡層5の連続気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により求められる。
【0089】
第一発泡層5の坪量は、例えば、25~450g/mが好ましく、50~350g/mがより好ましく、75~300g/mがさらに好ましい。第一発泡層5の坪量が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の耐衝撃性をより高められる。第一発泡層5の坪量が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体をより軽量にできる。加えて、第一発泡層5の坪量が上記上限値以下であると、加熱成形の際の加熱時間が長くなり過ぎず、積層発泡シート成形体の生産性をより高められる。
【0090】
第一発泡層5の坪量は、以下の方法で測定することができる。
第一発泡層5の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片5個以上を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、第一発泡層5の坪量(g/m)とする。
【0091】
第一発泡層5の見掛け密度は、例えば、0.050~0.666g/cmが好ましく、0.066~0.500g/cmがより好ましく、0.100~0.400g/cmがさらに好ましい。第一発泡層5の見掛け密度が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。第一発泡層5の見掛け密度が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体をより軽量にできる。
【0092】
第一発泡層5の発泡倍率は、例えば、2~30倍が好ましく、3~20倍がより好ましく、3.5~15倍がさらに好ましい。第一発泡層5の発泡倍率が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の断熱性をより高め、耐衝撃性をより高められる。第一発泡層5の発泡倍率が上記上限値以下であると、積層発泡シート2の成形性をより高められる。
第一発泡層5の発泡倍率は、実施例に記載した方法と同様に求めることができる。
【0093】
第一発泡層5の平均気泡径は、例えば、80~1000μmが好ましく、150~750μmがより好ましく、200~500μmがさらに好ましい。第一発泡層5の平均気泡径が上記下限値以上であると、積層発泡シート成形体の耐衝撃性をより高められる。第一発泡層5の平均気泡径が上記上限値以下であると、積層発泡シート成形体の表面平滑性をより高められる。
第一発泡層5の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0094】
第一発泡層5の厚さTは、用途を勘案して決定できる。例えば、積層発泡シート2が容器成形用であれば、厚さTは、0.15~2.5mmが好ましく、0.2~1.5mmがより好ましく、0.25~1.25mmがさらに好ましい。厚さTが上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性、剛性を高められる。厚さTが上記上限値以下であると、積層発泡シート2の成形性を高められる。
厚さTは、例えば、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定できる。
【0095】
≪第二発泡層≫
第二発泡層6は、熱可塑性樹脂組成物である第二樹脂組成物を発泡してなる層である。
第二樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と発泡剤とを有する。第二樹脂組成物を発泡してなる第二発泡層6は、熱可塑性樹脂で形成されたマトリクス内に、2以上の気泡を有する。
【0096】
第二発泡層6の熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含む。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂との双方を含むことで、本実施形態の積層発泡シート2は、耐熱強度を高められる。
【0097】
第二発泡層6におけるポリエステル系樹脂は、第一発泡層5におけるポリエステル系樹脂と同様である。
第二発泡層6におけるポリエステル系樹脂は、第一発泡層5におけるポリエステル系樹脂と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0098】
第二樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリエステル系樹脂の含有割合は、40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記下限値以上であると、成形性を高められる。ポリエステル系樹脂の含有割合が上記上限値以下であると、耐熱強度をより高められる。
【0099】
第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂は、第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂と同様である。
第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂は、第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0100】
第二樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の総質量に対するポリイミド系樹脂の含有割合(第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂の濃度D2)は、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記下限値以上であると、耐熱強度をより高められる。ポリイミド系樹脂の含有割合が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
【0101】
第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂の含有割合(第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂の濃度D2)は、第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の含有割合(第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の濃度D1)と同様の方法で求めることができる。
【0102】
第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂の濃度D2と、第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の濃度D1との差(濃度差(D2-D1))は、5~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%がさらに好ましい。濃度差(D2-D1)が上記下限値以上であると、美麗な外観と優れた耐熱強度とを兼ね備えた成形品が得られやすくなる。濃度差(D2-D1)が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。加えて、濃度差(D2-D1)が上記上限値以下であると、第一発泡層5と第二発泡層6との層間接着性を高められ、層間剥離の発生を抑制できる。
【0103】
すなわち、積層発泡シート2は、第一発泡層5におけるポリイミド系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、第二発泡層6におけるポリイミド系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に、下記の関係式(5)~(7)を全て満たすことが好ましい。
0≦D1≦55・・・(5)
5≦D2≦60・・・(6)
5≦(D2-D1)・・・(7)
【0104】
積層発泡シート2は、さらに、下記の関係式(8)を満たすことが好ましい。
5≦(D2-D1)≦55・・・(8)
【0105】
第二樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、全く含まないか、積層発泡シート2の品質に影響しない程度に含むことをいう。第二樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、第一樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の含有量と同様である。
【0106】
第二樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)を含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。
【0107】
第二発泡層6において、ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂の合計割合は、熱可塑性樹脂の総質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂の合計割合が上記下限値以上であると、積層発泡シート2の耐熱強度をより高められる。
【0108】
第二発泡層6は、単一のガラス転移温度Tg2を示す。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶することで、単一のガラス転移温度Tg2となる。第二発泡層6のガラス転移温度Tg2が単一であることで、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3よりも高いガラス転移温度Tg2となり、耐熱強度が高まる。
なお、「ガラス転移温度が単一」であるとは、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定チャート(DSC曲線)において、2回目昇温過程にみられる結晶化ピークよりも低温側におけるガラス転移温度が単一であると認識できることをいう。但し、2回目昇温過程において結晶化ピークが観測されない場合は、2回目昇温過程の温度範囲(30~300℃)におけるガラス転移温度が単一であると認識できることをいう。
第二発泡層6におけるガラス転移温度Tg2は、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tg2が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg2が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
第二発泡層6におけるガラス転移温度Tg2は、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3と同様の方法で求められる。
【0109】
積層発泡シート2は、第一発泡層5のガラス転移温度をTg1(℃)とし、第二発泡層6のガラス転移温度Tg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)を全て満たすことが好ましい。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
【0110】
積層発泡シート2は、さらに、下記の関係式(4)を満たすことが好ましい。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
【0111】
すなわち、積層発泡シート2における、第二発泡層6のガラス転移温度Tg2(℃)と、第一発泡層5のガラス転移温度をTg1(℃)との差(温度差(Tg2-Tg1))は、3~50℃が好ましく、5~40℃がより好ましく、10~30℃がさらに好ましい。温度差(Tg2-Tg1)が上記下限値以上であると、美麗な外観と優れた耐熱強度とを兼ね備えた積層発泡シート成形体が得られやすくなる。温度差(Tg2-Tg1)が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。加えて、温度差(Tg2-Tg1)が上記上限値以下であると、第一発泡層5と第二発泡層6との層間接着性を高められ、層間剥離の発生を抑制できる。
【0112】
第二発泡層6における吸熱量と発熱量との差の絶対値(吸熱発熱差)は、3~35J/gが好ましく、5~30J/gがより好ましく、7~28J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であると、結晶化度が高まり、耐熱強度及び加熱寸法安定性をより高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であると、結晶化度が高まりすぎず、成形性を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における1回目昇温過程のDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
なお、第二発泡層6における吸熱発熱差は、第二発泡層6を構成する熱可塑性樹脂の吸熱発熱差と同一視できる。
【0113】
第二樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、リサイクル原料を含んでいてもよい。
第二樹脂組成物に含まれるリサイクル原料は、第一樹脂組成物に含まれるリサイクル原料と同様である。
第二樹脂組成物に含まれるリサイクル原料は、第一樹脂組成物に含まれるリサイクル原料と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0114】
第二発泡層6は、熱可塑性樹脂及び発泡剤以外のその他成分(任意成分)を含有してもよい。
第二発泡層6における任意成分は、第一発泡層5における任意成分と同様である。第二発泡層6における任意成分は、第一発泡層5における任意成分と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0115】
<物性>
第二発泡層6の連続気泡率は、第一発泡層5の連続気泡率と同様である。第二発泡層6の連続気泡率は、第一発泡層5の連続気泡率と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0116】
第二発泡層6の坪量は、第一発泡層5の坪量と同様である。第二発泡層6の坪量は、第一発泡層5の坪量と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0117】
第二発泡層6の見掛け密度は、第一発泡層5の見掛け密度と同様である。第二発泡層6の見掛け密度は、第一発泡層5の見掛け密度と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0118】
第二発泡層6の発泡倍率は、第一発泡層5の発泡倍率と同様である。第二発泡層6の発泡倍率は、第一発泡層5の発泡倍率と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0119】
第二発泡層6の平均気泡径は、第一発泡層5の平均気泡径と同様である。第二発泡層6の平均気泡径は、第一発泡層5の平均気泡径と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0120】
第二発泡層6の厚さTは、第一発泡層5の厚さTと同様である。第二発泡層6の厚さTは、第一発泡層5の厚さTと同じでもよく、異なっていてもよい。
【0121】
[積層発泡シートの製造方法]
積層発泡シート2は、従来公知の製造方法により製造される。
積層発泡シート2の製造方法としては、例えば、第一発泡層5及び第二発泡層6を、共押出法により、積層しつつ押出発泡成形する工程を有する次の方法が挙げられる。
図5の積層発泡シートの製造装置1は、押出成形(共押出法)により積層発泡シートを得る装置である。製造装置1は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、第一の押出機11と、第二の押出機12を備え、第一の押出機11と第二の押出機12は配管16で合流金型19に接続されている。第一の押出機11と第二の押出機12はそれぞれホッパー14を備える。第一の押出機11と第二の押出機12には、それぞれ発泡剤供給源18が接続されている。
合流金型19の下流にはサーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
なお、製造装置1の押出機10はタンデム型押出機でもよい。また、製造装置1の押出機10は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0122】
第一発泡層5を構成する原料をホッパー14から第一の押出機11に投入する。第二発泡層6を構成する原料をホッパー14から第二の押出機12に投入する。ホッパー14から投入される原料は、第一発泡層5及び第二発泡層6をそれぞれ構成する樹脂、及び必要に応じて配合される任意成分である。
第一の押出機11では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第一の押出機11に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して第一樹脂組成物とする。
第二の押出機12では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第二の押出機12に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して第二樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。
【0123】
第一樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂(原料ポリエステル系樹脂)のガラス転移温度Tg3は、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。Tg3が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg3が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。なお、「成形性」は、例えば、積層発泡シートを金型に挟んで熱成形した際に、金型のキャビティに積層発泡シートが追随して、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
第二樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂(原料ポリエステル系樹脂)は、第一樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂と同様である。
【0124】
原料ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であると、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0125】
原料ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、0.5~1.5が好ましく、0.6~1.3がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。IV値が上記下限値以上であると、発泡時の破泡が抑制されて連続気泡率をより低められる。IV値が上記上限値以下であると、密度をより低くし、表面をより平滑にして、外観の美麗さを高められる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
【0126】
原料ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、9,000~26,000が好ましく、15,000~26,000がより好ましく、20,000~25,000がさらに好ましい。
Mnが上記下限値以上であると、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。Mnが上記上限値以下であると、耐熱性をさらに高められる。
【0127】
原料ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、100,000~500,000が好ましく、150,000~450,00がより好ましく、200,000~400,000がさらに好ましい。
Mzが上記数値範囲内であると、耐寒性(即ち、低温での機械的強度)をさらに高められる。
【0128】
第一樹脂組成物は、第一の押出機11で混合され、任意の温度に冷却された後、配管16と合流金型19を経て、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
第二樹脂組成物は、第二の押出機12で混合され、任意の温度に冷却された後、配管16と合流金型19を経て、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
樹脂流路に導かれた第一樹脂組成物及び第二樹脂組成物は、サーキュラーダイ20から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の積層発泡シート2aとなる(共押出法により、積層しつつ押出発泡成形する工程)。積層発泡シート2aは、第一発泡層5と第二発泡層6とを有する。第一発泡層5と第二発泡層6とは、どちらが内径側に位置していてもよいが、ポリイミド系樹脂の濃度が高く、耐熱性と剛性が高い第二発泡層6が外径側に位置していることが好ましい。
円筒状の積層発泡シート2aは、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の積層発泡シート2aは、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却され、カッター32によって2枚に切り裂かれて積層発泡シート2となる。積層発泡シート2は、各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて積層発泡シートロール4となる。
【0129】
なお、積層発泡シートの製造方法としては、上述の製造方法以外に次の方法等が挙げられる。
1)第一発泡層5となる第一発泡シートと、第二発泡層6となる第二発泡シートとをそれぞれ製造し、第一発泡シートと第二発泡シートとをこの順で重ね、これを加熱圧着する方法(熱圧着法)。
2)第一発泡シートと第二発泡シートとをこの順で重ね、それぞれの発泡シートを接着剤で貼り合せる方法(貼合法)。
【0130】
積層発泡シートは、発泡層の片面又は両面に非発泡層が設けられていてもよい。
非発泡層としては、熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルムやポリプロピレン系樹脂フィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリアクリル酸エステル系樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等の透明な樹脂フィルムが挙げられる。ポリエチレン系樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、耐油性に優れ、積層しやすいことから、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルムが好ましく、ポリエステル系樹脂フィルムがより好ましい。
非発泡層を形成する方法としては、積層発泡シート2を得、この表面にTダイ法によって非発泡層を形成する方法(Tダイ法)、共押出法によって非発泡層を形成する方法(共押出法)、非発泡フィルムを積層発泡シート2の表面に接着剤で貼り合せて非発泡層を形成する方法(貼合法)、非発泡フィルムを積層発泡シート2の表面に加熱圧着させて非発泡層を形成する方法(熱圧着法)等が挙げられる。
【0131】
[熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体]
本実施形態の熱可塑性樹脂積層発泡シート成形体(以下、単に「積層発泡シート成形体」ともいう。)は、積層発泡シート2を成形してなる。積層発泡シート成形体としては、食品用トレー等の容器、電気製品又は自動車等の工業部材に用いる緩衝材、梱包材、構造部材、断熱材等が挙げられる。
【0132】
図6の容器100は、平面視形状が真円形の丼形状の容器である。容器100は、円形の底壁110と、底壁110の周縁から立ち上がる側壁120とを有する。容器100には、側壁120の上端で囲まれた開口部130が形成されている。側壁120は上端に向かうに従い、外側に広がっている。側壁120の上端で囲まれた開口部130は、平面視真円形である。底壁110は、開口部130の方向に凸となる平面視真円形の凸部112と、凸部112を囲む円環状の凹部114とから形成されている。
【0133】
容器100の底壁110及び側壁120の厚さ(以下、「壁厚」ともいう。)は、用途等を勘案して決定され、例えば、20~1000μmが好ましく、40~800μmがより好ましく、60~600μmがさらに好ましい。容器100の壁厚が上記下限値以上であると、容器100の耐衝撃性をより高められる。容器100の壁厚が上記上限値以下であると、容器100をより軽量にできる。
容器100は、食品包装容器として好適であり、電子レンジ加熱対応容器として特に好適である。
【0134】
なお、本実施形態の容器100は、平面視で真円形であるが、本発明はこれに限定されない。容器の平面視形状は、楕円形でもよいし、四角形等の多角形でもよい。
【0135】
本実施形態の容器100は、積層発泡シート2を成形して得られる。すなわち、容器100は、熱可塑性樹脂中に気泡を有する。
容器100の第二発泡層6は、単一のガラス転移温度Tg2を示す。ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶することで、単一のガラス転移温度Tg2となる。容器100の第二発泡層6のガラス転移温度Tg2が単一であることで、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3よりも高いガラス転移温度Tg2となり、耐熱強度が高まる。
【0136】
容器100における第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、例えば、75~127℃が好ましく、80~120℃がより好ましく、85~115℃がさらに好ましい。Tg1が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg1が上記上限値以下であると、成形性が向上し、外観が美麗な容器が得られる。
容器100における第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、加熱速度10℃/分における2回目昇温過程のDSC測定で求められる。
なお、容器100における第一発泡層5のガラス転移温度Tg1は、第一発泡層5を構成する第一樹脂組成物のガラス転移温度と同一視できる。
容器100における第二発泡層6のガラス転移温度Tg2は、例えば、80~130℃が好ましく、85~125℃がより好ましく、90~120℃がさらに好ましい。Tg2が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tg2が上記上限値以下であると、成形性が向上し、外観が美麗な容器が得られる。
容器100における第二発泡層6のガラス転移温度Tg2は、加熱速度10℃/分における2回目昇温過程のDSC測定で求められる。
なお、容器100における第二発泡層6のガラス転移温度Tg2は、第二発泡層6を構成する第二樹脂組成物のガラス転移温度と同一視できる。
【0137】
容器100は、第一発泡層5のガラス転移温度をTg1(℃)とし、第二発泡層6のガラス転移温度Tg2(℃)とした場合に、下記の関係式(1)~(3)を全て満たすことが好ましい。
75≦Tg1≦127・・・(1)
80≦Tg2≦130・・・(2)
3≦(Tg2-Tg1)・・・(3)
【0138】
容器100は、さらに、下記の関係式(4)を満たすことが好ましい。
3≦(Tg2-Tg1)≦50・・・(4)
【0139】
すなわち、容器100における第二発泡層6のガラス転移温度Tg2(℃)と、第一発泡層5のガラス転移温度をTg1(℃)との差(温度差(Tg2-Tg1))は、3~50℃が好ましく、5~40℃がより好ましく、10~30℃がさらに好ましい。温度差(Tg2-Tg1)が上記下限値以上であると、美麗な外観と優れた耐熱強度とを兼ね備えた容器が得られやすくなる。温度差(Tg2-Tg1)が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。加えて、温度差(Tg2-Tg1)が上記上限値以下であると、容器100の第一発泡層5と第二発泡層6との層間接着性を高められ、層間剥離の発生を抑制できる。
【0140】
容器100における第一発泡層5の吸熱発熱差は、3~35J/gが好ましく、5~30J/gがより好ましく、7~28J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であると、結晶化度が高まり、加熱寸法安定性を高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であると、結晶化度が高まりすぎず、成形性を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における1回目昇温過程のDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
【0141】
容器100における第二発泡層6の吸熱発熱差は、3~35J/gが好ましく、5~30J/gがより好ましく、7~28J/gがさらに好ましい。吸熱発熱差が上記下限値以上であると、結晶化度が高まり、加熱寸法安定性を高められる。吸熱発熱差が上記上限値以下であると、結晶化度が高まりすぎず、成形性を高められる。
吸熱発熱差は、加熱速度10℃/分における1回目昇温過程のDSC測定によって求められる吸熱量と発熱量との差である。
【0142】
容器100において、傾きrは、-0.18~-0.025が好ましく、-0.15~-0.030がより好ましく、-0.10~-0.035がさらに好ましい。傾きrが上記下限値以上であると、温度上昇に伴う貯蔵弾性率E’の変化が小さくなり、耐熱強度をより高められる。傾きrが上記上限値以下であると、温度上昇に伴う貯蔵弾性率E’の変化が小さくなりすぎず、成形性をより高められる。
容器100の傾きrは、積層発泡シート2の傾きrと同様に求められる。
【0143】
容器100における第一発泡層5の結晶化度は、5~25%が好ましく、10~20%がより好ましく、12~18%がさらに好ましい。容器100における第一発泡層5の結晶化度が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。容器100における第一発泡層5の結晶化度が上記上限値以下であると、成形性が向上し、外観が美麗な容器が得られる。
容器100における第一発泡層5の結晶化度は、実施例に記載の方法で求められる。
【0144】
容器100における第二発泡層6の結晶化度は、5~25%が好ましく、10~20%がより好ましく、12~18%がさらに好ましい。容器100における第二発泡層6の結晶化度が上記下限値以上であると、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。容器100における第二発泡層6の結晶化度が上記上限値以下であると、成形性が向上し、外観が美麗な容器が得られる。
容器100における第二発泡層6の結晶化度は、実施例に記載の方法で求められる。
【0145】
[積層発泡シート成形体の製造方法]
容器100の製造方法としては、例えば、積層発泡シート2を加熱して、これを雌型(キャビティ)と雄型(コア)とで挟み込んで成形する方法(熱成形方法)が挙げられる。
容器100の製造方法に用いられる成形装置の一例を図7に示す。
【0146】
図7の成形装置200は、シャフト221と、一対の供給ローラ222と、搬送コンベア223と、予熱部203と、加熱金型204と、冷却金型205と、型抜機224とを有する。
予熱部203は、上加熱板231と、上加熱板231に対向する下加熱板232とを有する。予熱部203は、上加熱板231と下加熱板232との組み合わせに代えて、加熱炉でもよい。
加熱金型204は、加熱キャビティ241と、加熱コア242とを有する。加熱金型204としては、真空成形機、圧空成形機等が挙げられる。
冷却金型205は、冷却キャビティ251と、冷却コア252とを有する。
なお、加熱キャビティ241と冷却キャビティ251とは同形状であり、加熱コア242と冷却コア252とは同形状である。
【0147】
まず、シャフト221に積層発泡シートロール4を取り付ける。積層発泡シートロール4から積層発泡シート2を繰り出し、一対の供給ローラ222でX方向に積層発泡シート2を間欠的に移送する。予熱部203は、移送された積層発泡シート2を加熱する(予備加熱工程)。予備加熱工程直後の積層発泡シート2の表面温度は、例えば、90~230℃が好ましく、100~210℃がより好ましく、105~190℃がさらに好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、積層発泡シート2を軟化して、成形性を高められる。加熱温度が上記上限値以下であると、積層発泡シート2の過度な結晶化度の上昇を抑制して、成形性を高められる。
予備加熱工程における加熱時間は、5~90秒が好ましく、10~60秒がより好ましく、15~50秒がさらに好ましい。
【0148】
次いで、加熱金型204は、加熱キャビティ241と加熱コア242とで積層発泡シート2を挟み込んで、積層発泡シート2を加熱しつつ成形する(成形工程)。成形工程における加熱金型の温度(加熱温度)は、30~240℃が好ましく、35~200℃がより好ましく、40~180℃がさらに好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、積層発泡シート2を軟化し、加熱キャビティ241内に押し付けて、成形性を高められる。加熱温度が上記上限値以下であると、成形体の離型性をより高められる。成形工程における成形時間は、1~10秒が好ましく、2~8秒がより好ましく、3~7秒がさらに好ましい。成形時間が上記下限値以上であると、積層発泡シート2を軟化し、加熱キャビティ241内に押し付けて、成形性を高められ、加熱寸法安定性を高められる。成形時間が上記上限値以下であれば、1サイクル当たりの時間を短縮して、生産性を高められる。
【0149】
積層発泡シート2を熱成形して得られる容器100の内面形状を精度よく形成させる観点からは、第一発泡層5が容器100の内面側となるように積層発泡シート2に熱成形を施すことが好ましい。
容器100の内面側を特に耐熱性に優れるものとする観点からは、第二発泡層6が容器100の内面側となるように積層発泡シート2に熱成形を施すことが好ましい。
【0150】
加熱金型204は、成形工程の後、加熱金型204内で積層発泡シート2をさらに加熱してもよい(ヒートセット工程)。ヒートセット工程を設けることで、積層発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性をより高められる。ヒートセット工程における加熱金型の温度(ヒートセット温度)は、130~240℃が好ましく、140~220℃がより好ましく、150~200℃がさらに好ましい。ヒートセット温度が上記下限値以上であると、積層発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性を高められる。ヒートセット温度が上記上限値以下であれば、成形体の離型性をより高められる。ヒートセット工程における加熱時間(ヒートセット時間)は、3~90秒が好ましく、5~60秒がより好ましく、7~50秒がさらに好ましい。ヒートセット時間が上記下限値以上であると、積層発泡シート2の結晶化度を高めて、加熱寸法安定性を高められる。ヒートセット時間が上記上限値以下であると、1サイクル当たりの時間を短縮して、生産性を高められる。
なお、本実施形態の積層発泡シート2は、ヒートセット工程を省略しても、耐熱強度が低下せず、加熱寸法安定性が著しく損なわれることがない。
【0151】
次いで、加熱金型204を開き、所望の形状に成形された積層発泡シート2を冷却金型205の位置に移送し、積層発泡シート2を冷却キャビティ251と冷却コア252とで挟み込む(冷却工程)。
なお、冷却工程は、省略することができる。
【0152】
次いで、型抜機224で積層発泡シート2から積層発泡シート成形体である容器100を切り出す。
【0153】
本実施形態の積層発泡シート2の第二発泡層6は、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とが相溶しており、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が単一であるため、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tg3よりも高いガラス転移温度Tg2となり、耐熱強度を高められる。このため、積層発泡シート2を加熱成形して得られる積層発泡シート成形体は、耐熱強度に優れる。
加えて、本実施形態の積層発泡シート2は、ヒートセット工程を要することなく、優れた耐熱強度を発揮するため、積層発泡シート成形体の生産性を高められる。本実施形態の積層発泡シート成形体は、結晶化度が20%未満でも、優れた耐熱強度発揮する。
さらに、本実施形態の積層発泡シート成形体は、ヒートセット工程を経て製造されることで、結晶化度が高まり、加熱寸法安定性がより高まる。
【実施例0154】
以下、本発明について実施例を示して説明するが、本発明はこれらにより限定されることはない。
【0155】
(使用原料)
<ポリエステル系樹脂>
・PET(A):遠東新世紀社製、商品名「CH-653」、ガラス転移温度:79℃、融点:248℃、IV値:1.01、バイオマス度:27~30%。
・PET(B):遠東新世紀社製、商品名「CH-611」、ガラス転移温度:78℃、融点:251℃、IV値:1.04、バイオマス度:0%。
・PET(C):遠東石塚グリーンペット社製、商品名「CB-603RJ」、ガラス転移温度:79℃、融点:248℃、IV値:0.80、バイオマス度:0%、PETボトルをリサイクルした再生PET。
【0156】
<ポリイミド系樹脂>
・PEI:ポリエーテルイミド、SABIC Innovative Plastics社製、商品名「Ultem1000」、ガラス転移温度:217℃、MFR:9g/10分。
【0157】
<非晶性ポリエステル系樹脂>
・PCT:イーストマンケミカル製、商品名「Traitan TX-1001」、芳香族ジカルボン酸成分=テレフタル酸、ジオール成分=1,4-シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ガラス転移温度:107℃、IV値:0.72。
【0158】
<タルクマスターバッチ>
・タルクMB:PET=72質量%、タルク=28質量%からなるマスターバッチ。
【0159】
<架橋剤>
・PMDA:無水ピロメリット酸。
【0160】
(評価方法)
≪厚さ≫
積層発泡シートの幅方向(TD方向)の両端20mmを除いた部分を、幅方向に等間隔9点について、ダイヤルシックネスゲージSM-112(テクロック社製)を使用して厚さを測定し、測定値を相加平均した値を厚さとした。
【0161】
≪坪量≫
積層発泡シートの幅方向(TD方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片6個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、積層発泡シートの坪量(g/m)とした。
【0162】
≪見掛け密度≫
積層発泡シートの坪量と厚さから、下記(s1)式にて算出した。
見掛け密度(g/cm)=坪量(g/m)÷厚さ(mm)÷1000・・・(s1)
【0163】
≪発泡倍率≫
各例の配合割合から熱可塑性樹脂の密度を求め、熱可塑性樹脂の密度を得られた積層発泡シートの見掛け密度で除した値を発泡倍率とした。なお、各樹脂の密度は以下の値を用いた。
・PET:1.35g/cm
・PEI:1.28g/cm
・PCT:1.18g/cm
【0164】
≪連続気泡率≫
積層発泡シートから、縦25mm×横25mmのシート状サンプル2枚以上を切り出し、切り出したサンプルを空間があかないよう重ね合わせて厚さ25mmとして試験片を得た。得られた試験片の外寸を、(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」ノギスを用いて、1/100mmまで測定し、見掛け上の体積(V1:cm)を求めた。次に、東京サイエンス(株)製「1000型」空気比較式比重計を用いて、1-1/2-1気圧法により試験片の体積(V2:cm)を求めた。下記(s2)式により連続気泡率(%)を計算し、5つの試験片の連続気泡率の平均値を求めた。試験片は予め、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23±2℃、相対湿度50±5%)、2級の標準雰囲気下で24時間以上かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下にて測定した。なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm、小8.58cm)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=(V1-V2)/V1×100・・・(s2)
(V1:ノギスを用いて測定される見掛け上の体積、V2:空気比較式比重計で測定される体積)
【0165】
≪融点、結晶化温度、ガラス転移温度≫
融点、結晶化温度及びガラス転移温度は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
積層発泡シート又は積層発泡シート成形体から、厚さ方向に直行する方向(平面方向)に沿って他方の発泡層が入らないように各発泡層をスライスして薄片試料を作製した。該薄片試料をアルミニウム製測定容器の底に、隙間のないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~4で試料の加熱と冷却とを施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温し(1回目昇温過程)、10分間保持。
(ステップ3)試料を速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷。
(ステップ4)10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温(2回目昇温過程)。
なお、基準物質としてアルミナを用いた。各発泡層について、装置付属の解析ソフトを用いて、図10図11に示すように2回目昇温過程にみられる融解ピーク及び結晶化ピークのトップの温度を読みとって各発泡層の融点及び結晶化温度とした。各発泡層のガラス転移温度Tg1及びTg2は2回目昇温過程にみられるDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度を算出した。この中間点ガラス転移温度は、JIS K7121:2012に記載の(9.3)より求めた。
なお、各発泡層のガラス転移温度Tg1及びTg2は、加熱速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定チャート(DSC曲線)において、2回目昇温過程にみられる結晶化ピークよりも低温側におけるガラス転移温度を採用した。但し、2回目昇温過程において結晶化ピークが観測されない場合は、2回目昇温過程の温度範囲(30~300℃)におけるガラス転移温度を採用した。
【0166】
≪固体粘弾性測定≫
固体粘弾性測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いた。積層発泡シート又は積層発泡シート成形体から、長さ約40mm、幅約10mm、厚さ約1mmに試料を切り出した。条件は次の通りとした。
・モード:引張制御モード。
・雰囲気:窒素雰囲気。
・周波数:1Hz。
・昇温速度:5℃/分。
・測定温度:30℃~300℃。
・チャック間隔:20mm。
・歪振幅:5μm。
・最小張力:100mN。
・張力ゲイン:1.5。
・力振幅初期値:100mN。
解析は装置付属の解析ソフトを用いた。図8図9に示すように、積層発泡シート又は積層発泡シート成形体における第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2と第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2+20℃との間の貯蔵弾性率E’の値を用いて指数近似式から傾きrを算出した。なお、図8は後述する実施例5の測定結果であり、図9は後述する比較例1の測定結果である。また、積層発泡シート又は積層発泡シート成形体における第二発泡層におけるガラス転移温度Tg2は、2回目昇温過程のDSC曲線から求めた値を用いた。
試験片の寸法測定には、Mitutoyo Corporation製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
【0167】
≪吸熱量(a)、発熱量(b)、結晶化度≫
吸熱量(a)(融解熱量)及び発熱量(b)(結晶化熱量)はJIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の通りとした。
積層発泡シート又は積層発泡シート成形体から、厚さ方向に直行する方向(平面方向)に沿って他方の発泡層が入らないように各発泡層をスライスして薄片試料を作製した。該薄片試料をアルミニウム製測定容器の底に、隙間のないように5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、以下のステップ1~2で試料の加熱及び冷却を施して、DSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)速度10℃/minで30℃から300℃まで昇温(1回目昇温過程)。
この時の基準物質にはアルミナを用いた。各発泡層の吸熱量(a)及び発熱量(b)は、装置付属の解析ソフトを用いて算出した。具体的には、図10図11に示すように、各発泡層の吸熱量(a)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。各発泡層の発熱量(b)は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。吸熱量(a)、発熱量(b)ともに、1回目昇温過程のDSC曲線から求めた。
各発泡層の結晶化度は、前記吸熱量(a)と前記発熱量(b)を用いて、下記(s3)式により算出した。
結晶化度(%)={(吸熱量(a)の絶対値(J/g)-発熱量(b)の絶対値(J/g))÷完全結晶化熱量(J/g)}×100・・・(s3)
完全結晶化熱量は、100%結晶化した場合の熱量を表す。なお、上記(s3)式における完全結晶化熱量はPETの完全結晶化熱量である140.1J/gを用いた。
【0168】
(評価方法)
<積層発泡シートの加熱寸法安定性(加熱変形試験〉>
各例の積層発泡シートから一辺が約10cmの平面正方形状の試験片を5個、各辺が前記積層発泡シートの押出方向(MD方向)又は幅方向(TD方向)に平行な状態となるように切り出した。
次いで、各試験片上に、互いに対向する辺の中央部同士を結ぶ直線を二本、十字状に描いた。このとき、加熱前の各方向における直線の長さをMD1、TD1とした。次に、各試験片を所定の温度(100℃、120℃又は140℃)に設定した湿度調整無しのオーブン中の平台に静置して、150秒間加熱した後、オーブンから取り出して室温にて30分間冷却した。その後、加熱前に描いた各方向の直線の長さを測定し、各試験片の測定長の相加平均値を加熱後の長さとした。得られた加熱後の長さMD2、TD2と、加熱前の長さMD1、TD1から、押出方向の加熱前の長さ(MD1)と加熱後の長さ(MD2)の比(MD比=MD2/MD1)、幅方向の加熱前の長さ(TD1)と加熱後の長さ(TD2)の比(TD比=TD2/TD1)を算出した。
【0169】
MD比及びTD比の結果から、下記評価基準に基づいて積層発泡シートの加熱寸法安定性を評価した。
《評価基準》
◎:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97以上。
〇:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97以上。
△:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.95以上0.97未満。
×:140℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.97未満であり、120℃設定においてMD比とTD比とで小さい方の値が0.95未満。
【0170】
<積層発泡シートの耐熱強度(加熱引張試験)>
積層発泡シートの加熱引張試験における引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。すなわち、引張弾性率は(株)島津製作所製「オートグラフAG-Xplus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。試験片は、ダンベル形タイプ5とし、その長さ方向が積層発泡シートの押出方向(MD)となるように切り出した。試験速度200mm/分、つかみ具間隔80mmとした。試験片はJIS K7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で24時間以上状態調節した後試験に用いた。
測定は、標準雰囲気下(23℃)及び80℃にて実施した。80℃においては、(株)島津製作所製「TCR2A型」付帯恒温槽内に設置した冶具に試験片を挟み、1分間保持した後に測定した。前記雰囲気温度における試験片の数はそれぞれ5個とし、各試験片における引張弾性率測定値の相加平均を引張弾性率の値とした。引張弾性率は引張比例限度内における傾きが最大となる領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて算出した。
80℃における引張弾性率(E80)と標準雰囲気下(23℃)における引張弾性率(E23)を用いて、下記(s4)式により保持率を算出した。
保持率(%)=(E80)/(E23)×100・・・(s4)
【0171】
保持率の結果から、下記評価基準に基づいて積層発泡シートの耐熱強度を評価した。
《評価基準》
◎:保持率が50%以上である。
〇:保持率が40%以上50%未満である。
△:保持率が25%以上40%未満である。
×:保持率が25%未満である。
【0172】
≪積層発泡シートの総合評価≫
積層発泡シートの加熱寸法安定性の評価及び積層発泡シートの耐熱強度の評価の結果から、下記評価基準に基づいて積層発泡シートの総合評価を行った。
《評価基準》
◎:全ての項目の評価が「◎」であった。
〇:全ての項目の評価で「×」及び「△」がなく、かついずれかの項目の評価で「○」が1つ以上であった。
△:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が1つ以上であった。
×:いずれかの項目の評価が「×」であった。
【0173】
<積層発泡シート成形体の加熱寸法安定性(加熱変形試験)>
各例の積層発泡シートを用いて、長手方向210mm、短手方向180mm、高さ方向30mmの平面視矩形状のトレー状の積層発泡シート成形体(容器)を成形した。各例の容器について、平面視における長手方向、短手方向及び高さ方向の寸法を算出した。各方向の寸法は、各例の容器3個の相加平均とした。加熱前の長手方向の容器寸法は、例えば、平面視における容器の輪郭線上の1点から輪郭形状の中心点を通って反対側の輪郭線に到達するまでの距離が最も長くなる方向における寸法(容器輪郭線間距離)とした。加熱前の短手方向の容器寸法は、例えば、平面視における容器の輪郭線上の1点から輪郭形状の中心点を通って反対側の輪郭線に到達するまでの距離が最も短くなる方向における寸法(容器輪郭線間距離)とした。加熱前の高さ方向の容器寸法は、成形体の底部が上向きとなるように水平台に静置させたときの台面から容器底部までの距離とした。
次いで、容器を湿度調整無しのオーブン中の平台に静置して、140℃で150秒間加熱した後に取出し、標準状態(25℃、1気圧)の場所に1時間放置した。その後、同じ箇所の寸法を加熱後の寸法とし、下記(t1)~(t3)式によって加熱寸法変化率を算出した。
【0174】
SL=|(L1-L0)|/L0×100・・・(t1)
[SL:長手方向の加熱寸法変化率(%)、L1:加熱後の長手寸法(mm)、L0:加熱前の長手寸法(mm)]
SS=|(L3-L2)|/L2×100・・・(t2)
[SS:短手方向の加熱寸法変化率(%)、L3:加熱後の短手寸法(mm)、L2:加熱前の短手寸法(mm)]
ST=|(L5-L4)|/L4×100・・・(t3)
[ST:高さ方向の加熱寸法変化率(%)、L5:加熱後の高さ寸法(mm)、L4:加熱前の高さ寸法(mm)]
【0175】
各方向の加熱寸法変化率の合計(SL+SS+ST)を算出し、下記評価基準に基づいて積層発泡シート成形体の加熱寸法安定性を評価した。
《評価基準》
◎:加熱寸法変化率の合計が20%未満である。
〇:加熱寸法変化率の合計が20%以上30%未満である。
△:加熱寸法変化率の合計が30%以上50%未満である。
×:加熱寸法変化率の合計が50%以上である。
【0176】
<積層発泡シート成形体の耐熱強度>
各例の積層発泡シート成形体(容器)に100gのサラダ油を入れ、業務用電子レンジ(電子レンジ:パナソニック社製NE1901S型)にて1600Wの出力で60秒間加熱した。その後、直ちにサラダ油が入った状態で積層発泡シート成形体を持ち上げ、目視にて積層発泡シート成形体の変形の度合を確認し、下記評価基準に基づいて積層発泡シート成形体の耐熱強度を評価した。
《評価基準》
◎:変形なく、片手で持ち上げられる。
〇:少し変形するが、片手で持ち上げられる。
△:大きく変形するが、片手で持ち上げられる。
×:著しく大きく変形し、片手で持ち上げることができない。
【0177】
<層間剥離>
各例の積層発泡シート成形体(容器)の底面を厚さ方向に切断し、その切断面を顕微鏡で観察した。第一発泡層と第二発泡層との界面の状態を観察し、下記評価基準に基づいて第一発泡層と第二発泡層との層間剥離を評価した。
《評価基準》
◎:容器厚さ方向において各発泡層間の層間剥離が観察されず、各発泡層間の気泡径の差がほとんどなく、界面がわからない。
〇:容器厚さ方向において各発泡層間の層間剥離が観察されないものの、各発泡層間の気泡径に僅かな差があり、界面が確認できる。
△:容器厚さ方向において各発泡層間の層間剥離は観察されないものの、各発泡層間の気泡径に大きな差があり、界面が明確に確認できる。
×:容器厚さ方向において各発泡層間の層間剥離が観察され、各発泡層間の気泡径に大きな差があり、界面が明確に確認できる。
【0178】
<成形性>
各例の積層発泡シート成形体の外観を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて積層発泡シート成形体の成形性を評価した。
《評価基準》
◎:積層発泡シート成形体の形状が金型の形状通りに成形され、微細な凹凸形状に至るまで輪郭がシャープで外観美麗である。
〇:積層発泡シート成形体の形状が金型の形状通りに成形されているものの、微細な凹凸形状において輪郭が若干ぼやけている。
△:積層発泡シート成形体の形状が金型の形状からややずれており、微細な凹凸形状における輪郭もぼやけており、外観が悪い。
×:積層発泡シート成形体の形状が金型の形状から著しくずれているか、成形体に裂けや穴空きがみられる。
【0179】
≪積層発泡シート成形体の総合評価≫
積層発泡シート成形体の加熱寸法安定性、耐熱強度、層間剥離及び成形性の評価の結果から、下記評価基準に基づいて積層発泡シート成形体の総合評価を行った。
《評価基準》
◎:全ての項目の評価が「◎」であった。
〇:全ての項目の評価で「×」及び「△」がなく、かついずれかの項目の評価で「○」が1つ以上であった。
△:全ての項目の評価で「×」がなく、かついずれかの項目の評価で「△」が1つ以上であった。
×:いずれかの項目の評価が「×」であった。
【0180】
≪積層発泡シートの製造≫
[実施例1]
単軸押出機(口径65mm、L/D=34)を2系統用意し、これらを1つの合流金型を介して直径93mmの円環状スリットで、かつ、スリット幅が0.6mmのサーキュラーダイに接続させた。2系統の押出機の内の第一の系統の押出機に相対的にポリイミド系樹脂濃度の低い第一樹脂組成物を供給して溶融混練させ、第二の系統の押出機に相対的にポリイミド系樹脂濃度の高い第二樹脂組成物を供給して溶融混練させた。これらの押出機から吐出される溶融混練物を前記サーキュラーダイから共押出できるように準備した。
第一樹脂組成物については、まず表2の配合に従い、PET、PEI、タルクマスターバッチ及び架橋剤をミキサーにて混合して、混合物を用意した。ここで、第一樹脂組成物のポリイミド系樹脂濃度(D1)は10質量%とした。
押出機を所定の温度に設定し、押出機で混合物を混練して樹脂溶融物とした。押出機バレルの途中から表2に示した量の発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=35:65(質量比))を圧入して樹脂溶融物に加え、さらに混練して、熱可塑性樹脂組成物(第一樹脂組成物)とし、押出時の樹脂温度を300℃に設定し、20kg/hの割合で前記合流金型へと供給させるようにした。
【0181】
一方で、第二樹脂組成物については、まず表2の配合に従い、PET、PEI、タルクマスターバッチ及び架橋剤をミキサーにて混合して、混合物を用意した。ここで、第二樹脂組成物のポリイミド系樹脂濃度(D2)は30質量%とした。
押出機を所定の温度に設定し、押出機で混合物を混練して樹脂溶融物とした。押出機バレルの途中から表2に示した量の発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=35:65(質量比))を圧入して樹脂溶融物に加え、さらに混練して、熱可塑性樹脂組成物(第二樹脂組成物)とし、押出時の樹脂温度を300℃に設定し、20kg/hの割合で前記合流金型へと供給させるようにした。
合流金型に供給された上記2種類の熱可塑性樹脂組成物を当該合流金型内で合流、積層した後、前記サーキュラーダイのダイスリットから溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を内側が第一樹脂組成物、外側が第二樹脂組成物となるように円筒形に押出発泡(共押出)させ、円筒状の発泡体を形成させた。
この円筒状の発泡体を冷却用マンドレルによって拡径し、冷却用マンドレルよりもさらに下流側に配した引取機によって引き取らせた。冷却用マンドレルの外周面を発泡体の内周面に沿わせて発泡体を冷却すると共に、冷却用マンドレルの下流側において円筒状発泡体を押出方向に沿って切断した。そして、円筒状発泡体を平坦な帯状にして引取機によりロール状に巻き取り、積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性及び評価を表2に示す。なお、表中「-」は、その成分を含有しないことを示す。また、評価欄の「-」は、単位がないことを示す。
【0182】
[実施例2]
実施例1で得られた積層発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。裁断した積層発泡シートを160℃に加熱された一対の熱板で挟持し、積層発泡シートの表面温度が160℃となった状態で10分間に亘って保持し、ヒートセットが施された積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性及び評価を表2に示す。なお、表中「-」は、その成分を含有しないことを示す。
【0183】
[実施例3~14、比較例1、3~4]
表2~8の配合に従い、押出時の樹脂温度と引取機の引取速度を調整した以外は、実施例1と同様にして積層発泡シートを作製した。得られた積層発泡シートの物性及び評価を表2~8に示す。なお、表中「-」は、その成分を含有しないことを示す。また、比較例3~5の「Tg2-Tg1」欄の「-」は、Tg2が単一でないため、「Tg2-Tg1」を算出していないことを示す。
【0184】
[比較例2]
比較例1で得られた積層発泡シートを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてヒートセットが施された積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性及び評価を表7に示す。
【0185】
[比較例5]
比較例4で得られた積層発泡シートを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてヒートセットが施された積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性及び評価を表8に示す。
【0186】
≪積層発泡シート成形体の製造≫
[実施例15]
実施例1にて得たヒートセットする前の積層発泡シートを用意し、この積層発泡シートを一辺250mmの平面正方形状に裁断した。押出(MD)方向が容器の長手方向になるように積層発泡シートを固定する枠内にセットし、前記積層発泡シートを320℃のヒーター槽で20秒間予備加熱して、積層発泡シートの表面温度を170℃にした。その後、マッチモールド成形法によって上部に開口部を有する、平面視矩形状のトレー状の積層発泡シート成形体(縦210mm×横180mm×高さ30mm、第二発泡層が成形体の内面側)を得た。積層発泡シート成形体が得られるまでにかかった時間(成形サイクル時間)は33秒間であった。得られた積層発泡シート成形体の物性及び評価を表9に示す。なお、表中、ヒートセットの欄の「-」は、ヒートセットを施さなかったことを示す。表中、第一樹脂組成物及び第二樹脂組成物の欄の「-」は、その成分を含有しないことを示す。
【0187】
[実施例16]
実施例1にて得たヒートセットする前の積層発泡シートを用意し、この積層発泡シートから一辺が34cmの平面正方形状の試験片を切り出した。積層発泡シートの押出(MD)方向が容器の長手方向になるように試験片を固定する枠内にセットし、上記試験片を320℃のヒーター槽で20秒間予備加熱して、積層発泡シートの表面温度を170℃にした。次いで、積層発泡シートを180℃に加熱した金型で真空圧空成形し、10秒間金型内で積層発泡シート成形体を保持した。その後金型を開放し、ヒートセットを施した上部に開口部を有す平面視矩形状のトレー状の積層発泡シート成形体(縦210mm×横180mm×高さ30mm、第二発泡層が成形体の内面側)を得た。得られた積層発泡シート成形体の物性及び評価を表9に示す。
【0188】
[実施例17~29、比較例6、8~9]
表9~15に示した積層発泡シートを用いて、成形条件を表9~15に示した条件としたこと以外は、実施例15と同様にして積層発泡シート成形体を得た。得られた積層発泡シート成形体の物性及び評価を表9~15に示す。なお、表中、ヒートセットの欄の「-」は、ヒートセットを施さなかったことを示す。表中、第一樹脂組成物及び第二樹脂組成物の欄の「-」は、その成分を含有しないことを示す。また、比較例8~10の「Tg2-Tg1」欄の「-」は、Tg2が単一でないため、「Tg2-Tg1」を算出していないことを示す。
【0189】
[比較例7、10]
表14~15に示した積層発泡シートを用いて、成形条件を表14~15に示した条件としたこと以外は、実施例16と同様にして積層発泡シート成形体を得た。得られた積層発泡シート成形体の物性及び評価を表14~15に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
【表6】
【0195】
【表7】
【0196】
【表8】
【0197】
【表9】
【0198】
【表10】
【0199】
【表11】
【0200】
【表12】
【0201】
【表13】
【0202】
【表14】
【0203】
【表15】
【0204】
表2~8に示すように、本発明を適用した実施例1~14は、総合評価が「◎」~「△」であった。
一方、第二発泡層にポリイミド系樹脂を含まない比較例1~2、第二発泡層のガラス転移温度が単一でない比較例3~5の総合評価は「×」であった。
【0205】
表9~15に示すように、本発明を適用した実施例16~29は、総合評価が「◎」~「△」であった。
一方、第二発泡層にポリイミド系樹脂を含まない比較例6~7、第二発泡層のガラス転移温度が単一でない比較例8~10の総合評価は「×」であった。
【0206】
これらの結果から、本発明の積層発泡シート及び積層発泡シート成形体によれば、成形性に優れ、耐熱強度を高められることが確認された。
【符号の説明】
【0207】
2 積層発泡シート
5 第一発泡層
6 第二発泡層
100 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11