(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102883
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】座標入力装置および座標算出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
G06F3/041 590
G06F3/041 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217912
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 実
(72)【発明者】
【氏名】六ケ所 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康洋
(57)【要約】
【課題】2つの物体の間の距離が比較的長い場合と、2つの物体の間の距離が比較的短い場合との各々において、2つの物体の各々の座標位置を高精度に算出すること。
【解決手段】座標入力装置は、格子状に配置された複数の検出電極と、複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、物体の近接位置を示す座標を算出する座標算出部と、座標算出部によって算出された座標を出力する出力部とを備え、座標算出部は、第1の算出方法と、第2の算出方法との各々により、座標を算出し、出力部は、第1の算出方法および第2の算出方法の双方において2つの物体が検出された場合において、2つの物体の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、第1の算出方法によって算出された座標を出力し、2つの物体の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、第2の算出方法によって算出された座標を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配置された複数の検出電極と、
前記複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、物体の近接位置を示す座標を算出する座標算出部と、
前記座標算出部によって算出された前記座標を出力する出力部と
を備え、
前記座標算出部は、
静電容量の変化のピークとなる検出電極の位置に基づいて前記座標を算出する第1の算出方法と、静電容量の変化が検出された複数の検出電極の重心から所定の半径を有する円の円周上の静電容量値の周期性に基づいて前記座標を算出する第2の算出方法との各々により、前記座標を算出し、
前記出力部は、
前記第1の算出方法および前記第2の算出方法の双方において2つの物体が検出された場合において、
前記2つの物体の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、前記第1の算出方法によって算出された座標を出力し、
前記2つの物体の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、前記第2の算出方法によって算出された座標を出力する
ことを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
前記出力部は、
前記第1の算出方法および前記第2の算出方法の双方において2つの物体が検出された場合において、
前記第2の算出方法によって検出された2つの物体の間の距離が、前記所定の第1閾値より大きい場合、前記第1の算出方法によって算出された座標を出力し、
前記第2の算出方法によって検出された2つの物体の間の距離が、前記所定の第2閾値より小さい場合、前記第2の算出方法によって算出された座標を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の座標入力装置。
【請求項3】
前記座標算出部は、
前記第1の算出方法と、前記第2の算出方法とにより、前記2つの物体の各々の座標を算出し、
前記第2の算出方法は、前記所定の半径を有する円における静電容量の変化量の周期性をフーリエ級数展開によって求め、当該周期性の係数を用いて算出される前記2つの物体の各々の前記重心からの距離と、当該周期性の位相を用いて算出される前記2つの物体の各々の前記重心からの方向とに基づいて、前記2つの物体の各々の座標を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の座標入力装置。
【請求項4】
前記第1閾値は、前記第2閾値よりも大きく、
前記出力部は、
前記2つの物体間の距離が、前記第1閾値よりも小さく、且つ、前記第2閾値よりも大きい場合、直前の出力座標の算出に用いられた算出方法と同じ算出方法によって算出された座標を出力する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の座標入力装置。
【請求項5】
前記第1閾値は、前記第2閾値と等しい
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の座標入力装置。
【請求項6】
前記出力部は、
前記第2の算出方法によって前記2つの物体が検出されなかった場合、前記第1の算出方法によって算出された座標を出力する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の座標入力装置。
【請求項7】
前記座標算出部は、
前記第1の算出方法により、静電容量の変化量が最も大きいピーク電極における静電容量の変化量と、前記ピーク電極よりも1つ前の検出電極における静電容量の変化量と、前記ピーク電極よりも1つ後の検出電極における静電容量の変化量とを通る2次曲線の頂点を、前記物体の近接位置を示す座標として算出する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の座標入力装置。
【請求項8】
前記座標算出部は、
前記静電容量の変化量が所定の閾値以上の範囲の重心を、前記静電容量の変化量のピーク位置とみなして、前記座標を算出する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の座標入力装置。
【請求項9】
格子状に配置された複数の検出電極を備えた座標入力装置における静電座標算出方法であって、
前記複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、物体の近接位置を示す座標を算出する座標算出工程と、
前記座標算出工程において算出された前記座標を出力する出力工程と
を含み、
前記座標算出工程では、
静電容量の変化のピークとなる検出電極の位置に基づいて前記座標を算出する第1の算出方法と、静電容量の変化が検出された複数の検出電極の重心から所定の半径を有する円の円周上の静電容量値の周期性に基づいて前記座標を算出する第2の算出方法との各々により、前記座標を算出し、
前記出力工程では、
前記第1の算出方法および前記第2の算出方法の双方において2つの物体が検出された場合において、
前記2つの物体の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、前記第1の算出方法によって算出された座標を出力し、
前記2つの物体の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、前記第2の算出方法によって算出された座標を出力する
ことを特徴とする座標算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標入力装置および座標算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、静電容量方式によって接触面に対する物体の接触を検出するタッチパネルにおいて、閾値を超える静電容量値の分布領域を検出し、分布領域の形状に基づいて、接触面に接触した物体が1つであるシングルタッチか、接触面に接触した物体が複数であるマルチタッチかを決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、2つの物体によるマルチタッチがなされた場合において、2つの物体の間の距離が比較的長い場合と、2つの物体の間の距離が比較的短い場合との各々において、2つの物体の各々の座標位置を高精度に算出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る座標入力装置は、格子状に配置された複数の検出電極と、複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、物体の近接位置を示す座標を算出する座標算出部と、座標算出部によって算出された座標を出力する出力部とを備え、座標算出部は、静電容量の変化のピークとなる検出電極の位置に基づいて座標を算出する第1の算出方法と、静電容量の変化が検出された複数の検出電極の重心から所定の半径を有する円の円周上の静電容量値の周期性に基づいて座標を算出する第2の算出方法との各々により、座標を算出し、出力部は、第1の算出方法および第2の算出方法の双方において2つの物体が検出された場合において、2つの物体の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、第1の算出方法によって算出された座標を出力し、2つの物体の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、第2の算出方法によって算出された座標を出力する。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、2つの物体の間の距離が比較的長い場合と、2つの物体の間の距離が比較的短い場合との各々において、2つの物体の各々の座標位置を高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る座標入力装置の構成を示すブロック図
【
図2】一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図
【
図3】一実施形態に係る制御装置(座標算出部)による座標の算出例を示す図
【
図4】一実施形態に係る座標入力装置における操作入力と静電容量の変化との関係を示す図
【
図5】一実施形態に係る座標入力装置における操作入力と静電容量の変化との関係を示す図
【
図6】一実施形態に係る制御装置による処理の手順を示すフローチャート
【
図7】一実施形態に係る制御装置(出力部)による出力パターンを示す図
【
図8】一実施形態に係る制御装置による処理の手順の変形例を示すフローチャート
【
図9】一実施形態に係る制御装置(出力部)による出力パターンの変形例を示す図
【
図10】一実施形態に係る座標入力装置による効果の比較例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る座標入力装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示す座標入力装置10は、操作者の指30(「物体」の一例)による操作面10A(
図3参照)に対する近接操作が可能な装置であり、静電容量方式(自己容量検出方式または相互容量検出方式)により、操作面10Aに対する操作者の指30の近接位置を検出可能な装置である。
【0010】
図1に示すように、座標入力装置10は、センサ基板11、X軸側検出部14、Y軸側検出部15、A/D変換部16、記憶部17、制御装置20、およびインタフェース部19を備える。
【0011】
センサ基板11は、操作面10Aの裏側に重ねて設けられている。センサ基板11には、X軸方向(
図1の横方向)の静電容量を検出するためにX軸方向に並べて設けられた複数のX軸電極12と、Y軸方向(
図1の縦方向)の静電容量を検出するためにY軸方向に並べて設けられた複数のY軸電極13とがマトリクス状に並設されている。
【0012】
X軸側検出部14は、複数のX軸電極12の各々の静電容量を検出する。また、X軸側検出部14は、検出された複数のX軸電極12の各々の静電容量を示す検出信号(アナログ信号)を出力する。
【0013】
Y軸側検出部15は、複数のY軸電極13の各々の静電容量を検出する。また、Y軸側検出部15は、検出された複数のY軸電極13の各々の静電容量を示す検出信号(アナログ信号)を出力する。
【0014】
A/D(アナログ/デジタル)変換部16は、X軸側検出部14から出力された検出信号およびY軸側検出部15から出力された検出信号をデジタル信号に変換し、制御装置20へ供給する。
【0015】
記憶部17は、各種情報を記憶する。記憶部17に記憶される情報としては、例えば、X軸側検出部14によって検出された複数のX軸電極12の各々の静電容量値、Y軸側検出部15によって検出された複数のY軸電極13の各々の静電容量値、制御装置20によって実行されるプログラム、等が挙げられる。
【0016】
制御装置20は、X軸側検出部14からA/D変換部16を介して供給された検出信号によって特定される、複数のX軸電極12の各々の静電容量の変化に基づいて、操作面10Aにおける操作者の指30のX軸方向の近接位置を検出する。また、制御装置20は、Y軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給された検出信号によって特定される、複数のY軸電極13の各々の静電容量の変化に基づいて、操作面10Aにおける操作者の指30のY軸方向の近接位置を検出する。そして、制御装置20は、特定された操作者の指30の近接位置(X軸座標およびY軸座標)を示す座標情報を出力する。なお、制御装置20の機能の詳細については、
図2を用いて後述する。
【0017】
インタフェース部19は、制御装置20から出力された操作者の指30の近接位置を示す座標情報を、外部機器(図示省略)に出力する。例えば、外部機器は、インタフェース部19から出力された、指30の近接位置を示す座標情報に応じて、当該座標に対応する所定の処理を実行する。
【0018】
(制御装置20の機能構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置20の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置20は、静電容量算出部21、座標算出部22、および出力部23を備える。
【0019】
静電容量算出部21は、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する。
【0020】
座標算出部22は、静電容量算出部21によって検出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、操作面10Aにおける操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する。
【0021】
本実施形態では、座標算出部22は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、頂点算出方法および周期算出方法の各々により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出することができる。「頂点算出方法」は、「第1の算出方法」の一例である。「頂点算出方法」は、静電容量の変化のピークとなる検出電極の位置に基づいて座標を算出する方法である。「周期算出方法」は、「第2の算出方法」の一例である。「周期算出方法」は、静電容量の変化が検出された複数の検出電極の重心から所定の半径を有する円の円周上の静電容量値の周期性に基づいて座標を算出する方法である。
【0022】
また、本実施形態では、座標算出部22は、操作面10Aに対して操作者の2本の指30による近接操作がなされた場合、制御装置20は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、頂点算出方法および周期算出方法の各々により、操作者の2本の指30の各々の近接位置を示す座標を算出することができる。
【0023】
出力部23は、座標算出部22によって検出された座標(すなわち、操作者の指30の近接位置を示す座標)出力する。本実施形態では、出力部23は、座標算出部22によって頂点算出方法および周期算出方法の双方において操作者の2本の指30が検出された場合において、2本の指30の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、第1の算出方法によって算出された座標を出力し、2本の指30の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、第2の算出方法によって算出された座標を出力する。本実施形態では、第1閾値および第2閾値として、いずれにも「22mm」を用いている。
【0024】
なお、制御装置20は、ハードウェア構成として、プロセッサ(例えば、CPU)、記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)等)、通信インタフェース等を備えて構成されている。例えば、
図2に示す制御装置20の各機能部は、記憶媒体に記憶されているプログラムを、プロセッサが実行することによって実現される。また、A/D変換部16、記憶部17、およびインタフェース部19の少なくともいずれか一つは、制御装置20に設けられてもよい。
【0025】
(頂点算出方法による座標の算出例)
図3は、一実施形態に係る制御装置20(座標算出部22)による座標の算出例を示す図である。
【0026】
図3に示す例では、センサ基板11には、15本のX軸電極12(X0~X14)と、15本のY軸電極13(Y0~Y14)とが、マトリクス状に、且つ、操作面10Aに重ねて設けられている。また、
図3に示す例では、操作面10Aに対して、操作者の2本の指30A,30Bによる近接操作がなされている。
【0027】
図3に示すように、X軸方向においては、指30Aと重なるX軸電極X4と、指30Bと重なるX軸電極X10とのそれぞれにおいて、静電容量の変化量のピークが生じている。
【0028】
また、
図3に示すように、Y軸方向においては、指30Aと重なるY軸電極Y10と、指30Bと重なるY軸電極Y4とのそれぞれにおいて、静電容量の変化量のピークが生じている。
【0029】
例えば、座標算出部22は、頂点算出方法を用いて、X軸電極X4と、その前後のX軸電極X3,X5とを通過する二次曲線C1の頂点位置のX軸座標を、指30Aの近接位置を示すX軸座標として算出することができる。
【0030】
同様に、座標算出部22は、頂点算出方法を用いて、X軸電極X10と、その前後のX軸電極X9,X11とを通過する二次曲線C1の頂点位置のX軸座標を、指30Bの近接位置を示すX軸座標として算出することができる。
【0031】
同様に、座標算出部22は、頂点算出方法を用いて、Y軸電極Y10と、その前後のY軸電極Y9,Y11とを通過する二次曲線C2の頂点位置のY軸座標を、指30Aの近接位置を示すY軸座標として算出することができる。
【0032】
同様に、座標算出部22は、頂点算出方法を用いて、Y軸電極Y4と、その前後のY軸電極Y3,Y5とを通過する二次曲線C2の頂点位置のY軸座標を、指30Bの近接位置を示すY軸座標として算出することができる。
【0033】
例えば、座標算出部22は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれについて、下記数式(1)により、静電容量の変化量が最も大きい電極をピーク電極として、ピーク電極における静電容量の変化量Xpkと、ピーク電極よりも1つ前の検出電極における静電容量の変化量Xpk-1と、ピーク電極よりも1つ後の検出電極における静電容量の変化量Xpk+1とを通る2次曲線の頂点を、操作者の指30の近接位置を示す座標XQとして算出することができる。
【0034】
【0035】
但し、上記数式(1)において、RESOは、電極間分解能を示す。また、XOFSは、ピーク電極の座標を示す。
【0036】
(周期算出方法による座標の算出例)
以下、
図4および
図5を参照して、座標算出部22による周期算出方法による座標の算出例について説明する。
【0037】
まず、座標算出部22は、静電容量算出部21によって算出された、複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、重心座標を算出する。
【0038】
次に、座標算出部22は、算出された重心座標を中心とする所定の半径を有する測定円の円周上の各検出電極の交点における静電容量の変化を算出する。
【0039】
そして、座標算出部22は、算出された各検出電極の交点における静電容量の変化が、測定円に沿った1周において、2周期の周期性を示すか否かを判定する。
【0040】
座標算出部22は、「2周期の周期性を示さない」と判定した場合、「操作者の1本の指30による入力操作が行われた」と判断し、上記重心座標を、操作者の1本の指30の近接位置を示す座標として出力する。
【0041】
一方、座標算出部22は、「2周期の周期性を示す」と判定した場合、「操作者の2本の指30による入力操作が行われた」と判断し、操作者の2本の指30の各々の近接位置を示す座標を算出して出力する。
【0042】
図4および
図5は、一実施形態に係る座標入力装置10における操作入力と静電容量の変化との関係を示す図である。
図4は、
図4(A)に示すように、操作面10Aに対して操作者の1本の指30によって操作入力が行われた場合を示す。また、
図5は、
図5(A)に示すように、操作面10Aに対して操作者の2本の指30によって操作入力が行われた場合を示す。
【0043】
また、
図4(B)および
図5(B)は、操作面10Aにおける静電容量の変化量の平面的な分布を示す。
図4(B)および
図5(B)では、静電容量の変化量の平面的な分布が、静電容量の変化量の等値線(実線の閉曲線)で示されている。また、
図4(B)および
図5(B)では、所定の半径rを有する測定円が、破線で示されている。また、
図4(B)および
図5(B)では、操作者の指30が接触した領域である指領域FAが、塗りつぶされた円で示されている。なお、本実施形態では、半径rを、一般的な指30のサイズに合わせて「9mm」としているが、これに限らない。
【0044】
また、
図4(C)および
図5(C)は、差分値の角度特性を示す。
図4(C)および
図5(C)において、横軸は測定円状の位置(重心に対する角度)を示し、縦軸は測定円上の静電容量の変化量を示す。
【0045】
例えば、
図4(A)に示すように、操作者の1本の指30によって操作入力が行われた場合、
図4(B)に示すように静電容量の変化量が所定の閾値以上になる指領域FAは円形であり、等値線も円形になる。また、測定円の中心となる重心は、1つの指領域FAの重心になる。この場合、測定円上の各サンプリング点における静電容量の変化量が等しくなるため、
図4(C)に示すように、静電容量の変化量の角度特性はフラットな特性になる。そして、この場合、座標算出部22は、「操作者の1本の指30による入力操作が行われた」と判断し、上記重心座標を、操作者の1本の指30の近接位置を示す座標として出力する。
【0046】
また、
図5(A)に示すように、操作者の2本の指30によって操作入力が行われた場合、
図5(B)に示すように静電容量の変化量が所定の閾値以上になる指領域FAは2つの円形であり、等値線は楕円形になる。この楕円形の幅は、2本の指30を結ぶ方向(X方向)側が広く、90度異なる方向(Y方向)側が狭い。また、測定円の中心となる重心は、2つの指領域FAの重心同士を結ぶ直線の中間位置になる。この場合、測定円において、静電容量の変化量が最大になる点PMAXが2箇所生じるため、静電容量の変化量の角度特性は、
図5(C)に示すように、測定円に沿った1周において、2周期の周期性を示す。そして、この場合、座標算出部22は、「操作者の2本の指30による入力操作が行われた」と判断し、操作者の2本の指30の各々の近接位置を示す座標を算出して出力する。
【0047】
例えば、座標算出部22は、周期算出方法により、測定円(所定の半径r)における静電容量の変化量の周期性をフーリエ級数展開によって求め、当該周期性の係数を用いて算出される2本の指30の各々の重心からの距離と、当該周期性の位相を用いて算出される2本の指30の各々の重心からの方向(X軸に対して2本の指30を結ぶ直線がなす角度)とに基づいて、2本の指30の各々の座標を算出することができる。
【0048】
(制御装置20による処理の手順)
図6は、一実施形態に係る制御装置20による処理の手順を示すフローチャートである。
【0049】
まず、静電容量算出部21が、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する(ステップS601)。
【0050】
次に、座標算出部22が、ステップS601で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、周期算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS602)。
【0051】
次に、出力部23が、ステップS602において周期算出方法により2本の指30が検出されたか否かを判断する(ステップS603)。
【0052】
ステップS603において、周期算出方法により2本の指30が検出されていないと判断された場合(ステップS603:No)、座標算出部22が、ステップS601で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、頂点算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS606)。そして、出力部23が、ステップS606で頂点算出方法により算出された座標を出力する(ステップS607)。その後、制御装置20は、
図6に示す一連の処理を終了する。
【0053】
一方、ステップS603において、周期算出方法により2本の指30が検出されたと判断された場合(ステップS603:Yes)、出力部23が、ステップS602において周期算出方法により算出された2つの座標間の距離が「21mm」未満であるか否かを判断する(ステップS604)。
【0054】
ステップS604において、2つの座標間の距離が「21mm」未満ではないと判断された場合(ステップS604:No)、座標算出部22が、ステップS601で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、頂点算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS606)。そして、出力部23が、ステップS606で頂点算出方法により算出された座標を出力する(ステップS607)。その後、制御装置20は、
図6に示す一連の処理を終了する。
【0055】
一方、ステップS604において、2つの座標間の距離が「21mm」未満であると判断された場合(ステップS604:Yes)、出力部23が、ステップS602で周期算出方法により算出された座標を出力する(ステップS605)。その後、制御装置20は、
図6に示す一連の処理を終了する。
【0056】
(出力部23による出力パターン)
図7は、一実施形態に係る制御装置20(出力部23)による出力パターンを示す図である。
図7は、
図6に示す一連の処理による座標の出力パターンを示す。
【0057】
図7に示すように、出力部23は、周期算出方法によって1本の指30が検出された場合、頂点算出方法によって算出された1本または2本の指30の座標を出力する。
【0058】
また、
図7に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、周期算出方法によって算出された2つの座標間の距離が「21mm」以上の場合、頂点算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0059】
一方、
図7に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、周期算出方法によって算出された2つの座標間の距離が「21mm」未満の場合、周期算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0060】
また、
図7に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、頂点検出方法によって1本の指30が検出された場合、周期算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0061】
以上説明したように、一実施形態に係る座標入力装置10は、格子状に配置された複数の検出電極と、複数の検出電極の各々の静電容量の変化に基づいて、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する座標算出部22と、座標算出部22によって算出された座標を出力する出力部23とを備え、座標算出部22は、静電容量の変化のピークとなる検出電極の位置に基づいて座標を算出する頂点算出方法と、静電容量の変化が検出された複数の検出電極の重心から所定の半径を有する円の円周上の静電容量値の周期性に基づいて座標を算出する周期算出方法との各々により、座標を算出し、出力部23は、頂点算出方法および周期算出方法の双方において2本の指30が検出された場合において、2本の指30の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、頂点算出方法によって算出された座標を出力し、2本の指30の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、周期算出方法によって算出された座標を出力する。
【0062】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、2本の指30の間の距離が比較的長い場合には、頂点算出方法によって算出された座標を出力することで、高精度な座標を出力することができる。また、一実施形態に係る座標入力装置10は、2本の指30の間の距離が比較的短い場合には、周期算出方法によって算出された座標を出力することで、高精度な座標を出力することができる。したがって、一実施形態に係る座標入力装置10によれば、2つの物体の間の距離が比較的長い場合と、2つの物体の間の距離が比較的短い場合との各々において、2つの物体の各々の座標位置を高精度に算出することができる。
【0063】
また、一実施形態に係る座標入力装置10において、出力部23は、頂点算出方法および周期算出方法の双方において2本の指30が検出された場合において、周期算出方法によって検出された2本の指30の間の距離が、所定の第1閾値より大きい場合、頂点算出方法によって算出された座標を出力し、周期算出方法によって検出された2本の指30の間の距離が、所定の第2閾値より小さい場合、周期算出方法によって算出された座標を出力する。
【0064】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、特に、2本の指30の間の距離が第2閾値よりも小さい場合、頂点算出方法よりも周期算出方法のほうが2本の指30の座標を高精度に算出することができるため、周期算出方法によって算出された高精度な座標に基づく距離に基づいて、出力する座標を決定することができる。
【0065】
また、一実施形態に係る座標入力装置10において、座標算出部22は、周期算出方法により、測定円(所定の半径r)における静電容量の変化量の周期性をフーリエ級数展開によって求め、当該周期性の係数を用いて算出される2本の指30の各々の重心からの距離と、当該周期性の位相を用いて算出される2本の指30の各々の重心からの方向とに基づいて、2本の指30の各々の座標を算出する。
【0066】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、2本の指30の間の距離が比較的短い場合であっても、2本の指30の各々の座標を高精度に算出することができる。
【0067】
また、一実施形態に係る座標入力装置10において、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出されなかった場合(すなわち、周期算出方法によって1本の指30が検出された場合)、頂点算出方法によって算出された座標を出力する。
【0068】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、1本の指30による近接操作がなされた場合、頂点算出方法によって、高精度に、当該1本の指30の近接位置を示す座標を算出することができる。
【0069】
また、一実施形態に係る座標入力装置10において、座標算出部22は、頂点算出方法により、静電容量の変化量が最も大きいピーク電極における静電容量の変化量と、ピーク電極よりも1つ前の検出電極における静電容量の変化量と、ピーク電極よりも1つ後の検出電極における静電容量の変化量とを通る2次曲線の頂点を、操作者の指30の近接位置を示す座標として算出する。
【0070】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、検出電極の間隔よりも高い分解能で、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出することができる。
【0071】
(制御装置20による処理の手順の変形例)
図8は、一実施形態に係る制御装置20による処理の手順の変形例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、静電容量算出部21が、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する(ステップS801)。
【0073】
次に、座標算出部22が、ステップS801で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、周期算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS802)。
【0074】
次に、出力部23が、ステップS802において周期算出方法により2本の指30が検出されたか否かを判断する(ステップS803)。
【0075】
ステップS803において、周期算出方法により2本の指30が検出されたと判断された場合(ステップS803:Yes)、出力部23が、ステップS802において周期算出方法により算出された2つの座標間の距離が「21mm」(第1閾値)未満であるか否かを判断する(ステップS804)。
【0076】
ステップS804において、2つの座標間の距離が「21mm」未満であると判断された場合(ステップS804:Yes)、出力部23が、ステップS802で周期算出方法により算出された座標を出力する(ステップS805)。その後、制御装置20は、ステップS801へ処理を戻す。
【0077】
一方、ステップS803において、周期算出方法により2本の指30が検出されていないと判断された場合(ステップS803:No)、および、ステップS804において、2つの座標間の距離が「21mm」未満ではないと判断された場合(ステップS804:No)、制御装置20は、ステップS806へ処理を進める。
【0078】
ステップS806では、座標算出部22が、ステップS801で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、頂点算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS806)。そして、出力部23が、ステップS806で頂点算出方法により算出された座標を出力する(ステップS807)。
【0079】
続いて、静電容量算出部21が、X軸側検出部14およびY軸側検出部15からA/D変換部16を介して供給される検出信号に基づいて、各検出電極の静電容量の変化量を算出する(ステップS808)。
【0080】
次に、座標算出部22が、ステップS808で算出された各検出電極の静電容量の変化量に基づいて、周期算出方法により、操作者の指30の近接位置を示す座標を算出する(ステップS809)。
【0081】
次に、出力部23が、ステップS809において周期算出方法により2本の指30が検出されたか否かを判断する(ステップS810)。
【0082】
ステップS810において、周期算出方法により2本の指30が検出されていないと判断された場合(ステップS810:No)、制御装置20は、ステップS806へ処理を戻す。
【0083】
一方、ステップS810において、周期算出方法により2本の指30が検出されたと判断された場合(ステップS810:Yes)、出力部23が、ステップS809において周期算出方法により算出された2つの座標間の距離が「20mm」(第2閾値)より大きいか否かを判断する(ステップS811)。
【0084】
ステップS811において、2つの座標間の距離が「20mm」より大きいと判断された場合(ステップS811:Yes)、制御装置20は、ステップS806へ処理を戻す。
【0085】
一方、ステップS811において、2つの座標間の距離が「20mm」より大きくないと判断された場合(ステップS811:No)、制御装置20は、ステップS805へ処理を戻す。
【0086】
(出力部23による出力パターンの変形例)
図9は、一実施形態に係る制御装置20(出力部23)による出力パターンの変形例を示す図である。
図9は、
図8に示す一連の処理による座標の出力パターンを示す。
【0087】
図9に示すように、出力部23は、周期算出方法によって1本の指30が検出された場合、頂点算出方法によって算出された1本または2本の指30の座標を出力する。
【0088】
また、
図9に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、周期算出方法によって算出された2つの座標間の距離が「21mm」(第1閾値)以上の場合、頂点算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0089】
一方、
図9に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、周期算出方法によって算出された2つの座標間の距離が「20mm」(第2閾値)未満の場合、周期算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0090】
また、
図9に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、頂点検出方法によって1本の指30が検出された場合、周期算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0091】
また、
図9に示すように、出力部23は、周期算出方法によって2本の指30が検出され、且つ、周期算出方法によって算出された2つの座標間の距離が「20mm」(第2閾値)以上から「21mm」未満の場合、直前の出力座標の算出に用いられた算出方法と同じ算出方法によって算出された2つの座標を出力する。
【0092】
(効果の比較例)
図10は、一実施形態に係る座標入力装置10による効果の比較例を示す図である。
図10(A)は、
図6に示すフローチャートおよび
図7に示す出力パターンによる効果を示す。
図10(B)は、
図8に示すフローチャートおよび
図9に示す出力パターンによる効果を示す。
【0093】
図10では、一実施形態に係る座標入力装置10を用いて、操作面10Aにおける2本の指30の間の距離に応じて、対象物の拡大比率を変化させる拡大操作を行う例を表している。
図10(A)および
図10(B)において、縦軸は、拡大操作の拡大比率を示し、横軸は、時間を示す。なお、
図10(A)および
図10(B)において、期間S1は、2本の指30の間の距離を互いに接触する距離に固定した期間(すなわち、拡大比率が変化しないことが好ましい区間)を表している。
【0094】
図10(B)に示すように、第1閾値と第2閾値とを異ならせることにより、
図10(A)に示す第1閾値と第2閾値とを等しくする場合と比較して、2本の指30の間の距離を互いに接触する距離に固定したときの、ノイズの影響による拡大操作の拡大比率の変化を抑制することができる。
【0095】
以上説明したように、一実施形態に係る座標入力装置10において、第1閾値は、第2閾値よりも大きくてもよく、出力部23は、2本の指30の間の距離が、第1閾値(一例では、「21mm」)よりも小さく、且つ、第2閾値(一例では、「20mm」)よりも大きい場合、直前の出力座標の算出に用いられた算出方法と同じ算出方法によって算出された座標を出力してもよい。
【0096】
これにより、一実施形態に係る座標入力装置10は、2本の指30の間の距離が、第1閾値と第2閾値との間である場合、出力座標の算出方法が、周期算出方法と頂点算出方法との間で頻繁に切り替わってしまうことを抑制することができる。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0098】
例えば、一実施形態では、座標算出部22は、頂点算出方法として、静電容量の変化量のピーク位置の座標を、指30の近接位置を示す座標として算出するが、これに限らない。例えば、座標算出部22は、頂点算出方法として、静電容量の変化量が所定の閾値以上である領域の重心を、静電容量の変化量のピーク位置の座標とみなし、指30の近接位置を示す座標として算出してもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 座標入力装置
10A 操作面
11 センサ基板
12 X軸電極
13 Y軸電極
14 X軸側検出部
15 Y軸側検出部
16 A/D変換部
17 記憶部
19 インタフェース部
20 制御装置
21 静電容量算出部
22 座標算出部
23 出力部
30,30A,30B 指