IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102957
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20220630BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220630BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220630BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20220630BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220630BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220630BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/06
C09J11/08
C09J133/02
C09J133/14
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218048
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥原 健太
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB05
4J004CA01
4J004CB01
4J004CC02
4J004FA08
4J040DF001
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040DF092
4J040DG011
4J040EC001
4J040EC002
4J040EF262
4J040GA05
4J040GA07
4J040HA166
4J040HB25
4J040HC02
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA09
4J040MA10
4J040MB02
4J040MB03
4J040NA12
4J040NA16
4J040NA19
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成可能な粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】共重合体(A)と、架橋剤(B)と、水性媒体とを含む粘着剤組成物であって、前記共重合体(A)は、カルボキシ基及びエポキシ基を有し、前記架橋剤(B)は、カルボジイミド化合物に由来するカルボジイミド基、ポリエポキシ化合物に由来するエポキシ基、及びポリイソシアネート化合物に由来するイソシアナト基からなる群から選択される1種以上を架橋剤官能基として含み、前記共重合体(A)100gあたりに含まれるカルボキシ基の量は10mmol/100g以上100mmol/100g以下であり、前記共重合体(A)100gあたりに含まれるエポキシ基の量は0.30mmol/100g以上30mmol/100g以下であり、前記共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、前記架橋剤(B)中の前記架橋剤官能基の含有量は、0.10×10-2mol以上30×10-2mol以下である、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と、架橋剤(B)と、水性媒体とを含む粘着剤組成物であって、
前記共重合体(A)は、カルボキシ基及びエポキシ基を有し、
前記架橋剤(B)は、カルボジイミド化合物に由来するカルボジイミド基、ポリエポキシ化合物に由来するエポキシ基、及びポリイソシアネート化合物に由来するイソシアナト基からなる群から選択される1種以上を架橋剤官能基として含み、
前記共重合体(A)100gあたりに含まれるカルボキシ基の量は10mmol/100g以上100mmol/100g以下であり、
前記共重合体(A)100gあたりに含まれるエポキシ基の量は0.30mmol/100g以上30mmol/100g以下であり、
前記共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、前記架橋剤(B)中の前記架橋剤官能基の含有量は、0.10×10-2mol以上30×10-2mol以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A)は、ヒドロキシ基を有し、前記共重合体(A)100gあたりに含まれるヒドロキシ基の量は、0.50mmol/100g以上15mmol/100g以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記共重合体(A)の主鎖は、炭素原子同士の結合からなる、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記共重合体(A)の、前記カルボキシ基、前記エポキシ基、前記ヒドロキシ基以外の部分で、かつ末端以外の部分は、炭化水素構造、エステル結合、及びカルボニル基からなる群から選択される1種以上の構造からなる請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、前記共重合体(A)中のエポキシ基の含有量は、0.60×10-2mol以上60×10-2mol以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記共重合体(A)中のエポキシ基1molに対する、前記架橋剤(B)中の前記架橋剤官能基の含有量は、0.040mol以上1.5mol以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記架橋剤(B)は、ポリカルボジイミド化合物である請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(B)のカルボジイミド当量は150以上1000以下である請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(B)は、ポリエポキシ化合物である請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記架橋剤(B)のエポキシ当量は70以上700以下である請求項9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記共重合体(A)100gに対する、架橋剤(B)が有する架橋剤官能基の量は、0.20mmol/100g以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
不揮発分中の前記共重合体(A)及び前記架橋剤(B)の合計含有率は50質量%以上である請求項1~11のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
基材と、基材表面に形成された粘着層とを備えた粘着テープであって、
該粘着層は、請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着剤組成物の硬化物を含む粘着テープ。
【請求項14】
基材に請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を塗布する工程と、
前記基材に塗布された前記粘着剤組成物から水性媒体を除去して粘着層を形成する工程と、を含む粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤の代表的な用途として粘着テープがある。粘着テープは、基材上に、粘着剤を含む層、すなわち粘着層が形成されており、粘着テープは、例えば、各種物品を修復する、あるいは物品同士を固定するために、物品に貼付される。また、基材両面に粘着層が形成された両面型の粘着テープは、自動車等の輸送機器、家電製品、及び文具等幅広い用途で用いられている。
【0003】
粘着テープの代表的な製法としては、粘着剤を液媒体中に溶解または分散させた塗工液を基材上に塗布し、乾燥させることにより、基材表面に粘着層が形成される。粘着剤は天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等が広く使用されており、特にアクリル系は様々な機能性を付与できるという点に大きな特徴がある。液媒体としては、近年は水を用いることが、多く検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、反応性界面活性剤を用いて重合したアクリル系樹脂エマルジョン粘着剤に、揮発性界面活性剤を添加したアクリル系樹脂エマルジョン粘着剤配合液を、基材フィルムに塗布してなることを特徴とするウエハ加工用テープが記載されている。アクリル系樹脂エマルジョン粘着剤は、カルボン酸含有ビニル化合物を含む単量体を重合して得られることが記載されている。また、粘着剤配合液にテトラメチロール-トリ-β-アジリジニルプロピオネートを添加している実施例がある。
【0005】
特許文献2には、粘着剤層が、粘着性微粒子と、バインダーと、タッキファイヤーと、カルボジイミド基を有する架橋剤とを含有する再剥離性粘着シートが記載されている。また、実施例等において、粘着性微粒子の合成において、アクリル酸がモノマーとして用いられている。
【0006】
特許文献3には、実施例1において、アクリル酸を含む単量体を共重合された共重合体とエポキシ架橋剤を含むアクリル系粘着剤水分散液が記載されている。また、実施例3等においては、アクリル酸及びシランカップリング剤を共重合された共重合体と、オキサゾリン系架橋剤とを含むアクリル系粘着剤水分散液が記載されている。
【0007】
特許文献4には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有不飽和単量体、多官能性不飽和単量体、その他の不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合させて得られるエマルジョンと、架橋剤とを含有する再剥離型水性粘着剤組成物が記載されている。また、その他の不飽和単量体として、アルコキシシリル基を有する単量体が例示されている。さらに、架橋剤が、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物から選ばれる少なくとも1種であることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-171117号公報
【特許文献2】特開2005-126479号公報
【特許文献3】特開2013-189645号公報
【特許文献4】特開2004-256789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2の構成では、高温環境下での粘着力及び保持力に改善の余地がある。
【0010】
特許文献3の実施例1の構成は、粘着テープに適用した場合、高温環境下での保持力に改善の余地がある。また、特許文献3の実施例2等の構成は、粘着テープに適用した場合、高温環境下での粘着力及び保持力に改善の余地がある。
【0011】
特許文献4の構成も同様に高温環境下での粘着力及び保持力に改善の余地がある。また、アルコキシシリル基は、十分な効果を発揮するための含有量の範囲が狭いが、どの程度含めると効果が得られるのか、記載されていない。それどころか、この文献においては、アルコキシシリル基を有する単量体は、例示されているさまざまな種類の単量体の一つに過ぎず、その効果についてもこの文献においては一切触れられていない。
【0012】
そこで、本発明は、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成可能な粘着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、以下の手段を提供するものである。
[1]共重合体(A)と、架橋剤(B)と、水性媒体とを含む粘着剤組成物であって、
前記共重合体(A)は、カルボキシ基及びエポキシ基を有し、
前記架橋剤(B)は、カルボジイミド化合物に由来するカルボジイミド基、ポリエポキシ化合物に由来するエポキシ基、及びポリイソシアネート化合物に由来するイソシアナト基からなる群から選択される1種以上を架橋剤官能基として含み、
前記共重合体(A)100gあたりに含まれるカルボキシ基の量は10mmol/100g以上100mmol/100g以下であり、
前記共重合体(A)100gあたりに含まれるエポキシ基の量は0.30mmol/100g以上30mmol/100g以下であり、
前記共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、前記架橋剤(B)中の前記架橋剤官能基の含有量は、0.10×10-2mol以上30×10-2mol以下である、粘着剤組成物。
[2]前記共重合体(A)は、ヒドロキシ基を有し、前記共重合体(A)100gあたりに含まれるヒドロキシ基の量は、0.50mmol/100g以上15mmol/100g以下である、上記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記共重合体(A)の主鎖は、炭素原子同士の結合からなる、上記[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記共重合体(A)の、前記カルボキシ基、前記エポキシ基、前記ヒドロキシ基以外の部分で、かつ末端以外の部分は、炭化水素構造、エステル結合、及びカルボニル基からなる群から選択される1種以上の構造からなる上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[5]前記共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、前記共重合体(A)中のエポキシ基の含有量は、0.60×10-2mol以上60×10-2mol以下である上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[6]前記共重合体(A)中のエポキシ基1molに対する、前記架橋剤(B)中の前記架橋剤官能基の含有量は、0.040mol以上1.5mol以下である上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[7]前記架橋剤(B)は、ポリカルボジイミド化合物である上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[8]前記架橋剤(B)のカルボジイミド当量は150以上1000以下である上記[7]に記載の粘着剤組成物。
[9]前記架橋剤(B)は、ポリエポキシ化合物である上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[10]前記架橋剤(B)のエポキシ当量は70以上700以下である上記[9]に記載の粘着剤組成物。
[11]前記共重合体(A)100gに対する、架橋剤(B)が有する架橋剤官能基の量は、0.20mmol/100g以上である上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[12]不揮発分中の前記共重合体(A)及び前記架橋剤(B)の合計含有率は50質量%以上である上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[13]基材と、基材表面に形成された粘着層とを備えた粘着テープであって、
該粘着層は、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物の硬化物を含む粘着テープ。
[14]基材に上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を塗布する工程と、
前記基材に塗布された前記粘着剤組成物から水性媒体を除去して粘着層を形成する工程と、を含む粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成可能な水分散型粘着剤組成物を提供することができる。本明細書において、粘着力とは、「粘着シートまたは粘着テープの粘着面と被着体との接触によって生じる力」と定義され、貼ったものを剥がす時に必要な力を意味する。本明細書において、保持力とは、「粘着シートまたは粘着テープを被着体に貼り、長さ方向に静荷重を掛けた際に粘着剤がズレに耐える力」と定義され、粘着層の凝集力の強さを表す。
また、本発明によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着テープを提供することができる。
【0015】
以下の説明において、特に断りがなければ、表面は「ひょうめん」を意味する。
【0016】
「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0017】
エポキシ基は、グリシジル基の一部を形成する構造も含む。例えば、グリシジルメタクリレートもエポキシ基を有することとする。
【0018】
「エチレン性不飽和結合」とは、特に断りがない限り、ラジカル重合性を有するエチレン性不飽和結合を指す。
【0019】
エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合体において、あるエチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する構造単位は、その化合物のエチレン性不飽和結合以外の部分の化学構造と、重合体におけるその構造単位のエチレン性不飽和結合に対応する部分以外の部分の化学構造とが同じであるとする。例えば、アクリル酸由来の構造単位は、重合体において-CHCH(COOH)-で表される構造を有している。
【0020】
以下の説明において、ある構造単位の由来となる化合物は、その構造単位との間で上記関係にある化合物を言い、実際の製造工程で用いた単量体と一致する必要はない。
【0021】
なお、カルボキシ基のようなイオン性の官能基を有する構造単位については、特に断りがなければ、その官能基の一部が、イオン交換されていても、またはイオン交換されていなくても、同じイオン性化合物に由来する構造単位とする。例えば、-CH-C(CH)(COONa)-で表される構造単位も、メタクリル酸に由来する構造単位とする。
【0022】
また、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物については、重合体の構造単位としてエチレン性不飽和結合が残っていてもよい。独立した複数のエチレン性不飽和結合とは、互いに共役ジエンを形成しない複数のエチレン性不飽和結合を言う。例えば、ジビニルベンゼンに由来する構造単位は、エチレン性不飽和結合を有さない構造(いずれのエチレン性不飽和結合に対応する部分も重合体の鎖に取り込まれた形態)でもよく、1個のエチレン性不飽和結合を有する構造(一方のエチレン性不飽和結合に対応する部分のみ重合体の鎖に取り込まれた形態)でもよい。
【0023】
さらに、重合後にエチレン性不飽和結合に対応する鎖以外の部分を化学反応させる等、単量体の化学構造と重合体の化学構造とで対応しない場合は、重合後の化学構造を基準とする。例えば、酢酸ビニルを重合し、その後けん化した場合、けん化された構造単位については重合体の化学構造を基準に考えて、酢酸ビニルに由来する構造単位ではなく、ビニルアルコールに由来する構造単位とする。
【0024】
「不揮発分」は、直径5cmのアルミ皿に組成物を1g秤量し、1気圧(1013hPa)で、乾燥器内で空気を循環させながら105℃で1時間乾燥させた後に残った成分である。組成物の形態は、溶液、分散液、スラリーが挙げられるが、これらに限られない。「不揮発分濃度」とは、乾燥前の組成物の質量(1g)に対する、上記条件下で乾燥後の不揮発分の質量割合(質量%)である。
【0025】
<1.粘着剤組成物>
本実施形態にかかる粘着剤組成物は、共重合体(A)、架橋剤(B)、及び水性媒体を含む。粘着剤組成物には、その他の添加剤等が含まれていてもよい。
【0026】
〔1-1.共重合体(A)〕
共重合体(A)は、カルボキシ基及びエポキシ基を有する。共重合体(A)の主鎖は、炭素原子同士の結合からなることが好ましく、炭素原子同士の単結合からなることがより好ましい。すなわち、共重合体(A)はエチレン性不飽和結合を有する化合物の重合体であることが好ましい。共重合体(A)は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0027】
[1-1-1.カルボキシ基]
カルボキシ基は、後述するエポキシ基と反応して内部架橋を形成させる、及び後述する架橋剤(B)が有する官能基と反応して粒子間架橋を形成させる。そして、これらの架橋により粘着層に凝集力が付与され、耐熱性が向上すると考えられる。カルボキシ基は、一部または全てが塩を形成していてもよいが、塩の形成割合は数(mol数)基準で10%以下であることが好ましい。
【0028】
共重合体(A)100gあたりに含まれるカルボキシ基の量は10mmol/100g以上であり、20mmol/100g以上であることが好ましく、30mmol/100g以上であることがより好ましく、40mmol/100g以上であることがさらに好ましい。粘着層の凝集力を向上させ、耐熱性を高めるためである。
【0029】
共重合体(A)100gあたりに含まれるカルボキシ基の量は100mmol/100g以下であり、80mmol/100g以下であることが好ましく、60mmol/100g以下であることがより好ましい。共重合体(A)の極性及び粘着層の凝集力を適度に保ち、十分な粘着性を有する粘着層を得るためである。
【0030】
共重合体(A)へのカルボキシ基の導入方法としては、カルボキシ基を有する化合物を重合する方法でもよく、重合後に所定の官能基をカルボキシ基に変換する方法でもよい。カルボキシ基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチルアクリレートオリゴマー、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸等のα,β-不飽和モノまたはジカルボン酸;及びおよびフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シュウ酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有ビニル化合物;等が挙げられる。
【0031】
[1-1-2.エポキシ基]
【0032】
共重合体(A)100gあたりに含まれるエポキシ基の量は0.30mmol/100g以上であり、1.0mmol/100g以上であることが好ましく、2.0mmol/100g以上であることがより好ましく、2.5mmol/100g以上であることがさらに好ましい。粘着層の凝集力を向上させ、耐熱性を高めるためである。
【0033】
共重合体(A)100gあたりに含まれるエポキシ基の量は30mmol以下であり、20mmol/100g以下であることが好ましく、10mmol/100g以下であることがより好ましく、5.0mmol/100g以下であることがさらに好ましい。粘着層の凝集力を適度に保ち、十分な粘着性を有する粘着層を得るためである。
【0034】
共重合体(A)へのエポキシ基の導入方法としては、エポキシ基を有する化合物を重合する方法でもよく、重合後に所定の官能基をエポキシ基に変換する方法でもよい。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート 、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
[1-1-3.ヒドロキシ基]
共重合体(A)がヒドロキシ基を有することで粘着層の高温での保持力がさらに向上する。ヒドロキシ基が、共重合体(A)が有するエポキシ基、及び/または後述する架橋剤(B)が有する官能基と反応することで、内部架橋及び/または粒子間架橋を補助するためであると考えられる。
【0036】
共重合体(A)100gあたりに含まれるヒドロキシ基の量は0.50mmol/100g以上であることが好ましく、1.0mmol/100g以上であることがより好ましく、2.0mmol/100g以上であることがさらに好ましい。高温環境下での粘着層の保持力が向上するためである。
【0037】
共重合体(A)100gあたりに含まれるヒドロキシ基の量は15mmol/100g以下であることが好ましく、10mmol/100g以下であることがより好ましく、5.0mmol/100g以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)の極性及び粘着層の凝集力を適度に保ち、十分な粘着性を有する粘着層を得るためである。
【0038】
共重合体(A)へのヒドロキシ基の導入方法としては、ヒドロキシ基を有する化合物を重合する方法でもよく、重合後に所定の官能基をヒドロキシ基に変換する方法でもよい。ヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0039】
[1-1-4.共重合体(A)のその他の構造]
共重合体(A)における上記官能基(ここでは、カルボキシ基、エポキシ基、及びヒドロキシ基を指す)の含有率を調整するためには、上記官能基を有さない構造を導入して上記官能基の含有率を適正な範囲に希釈することが考えらえる。この希釈のための構造には上記官能基との相互作用が小さいことが好ましい。そのような構造として好ましいのは、アルキレン基、アルキル基等の炭化水素構造、エステル結合、カルボニル基等である。
【0040】
なお、共重合体(A)は、その製造工程で用いられた重合開始剤、連鎖移動剤に由来する構造を末端等に有していてもよい。
【0041】
共重合体(A)の、上記官能基及び末端以外の構造は、炭化水素構造、エステル結合、及びカルボニル基からなる群から選択される1種以上からなることが好ましく、炭化水素構造及びエステル結合の少なくともいずれかからなることがより好ましい。
【0042】
[1-1-5.共重合体(A)のガラス転移点]
共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、-80℃以上であることが好ましく、-65℃以上であることがより好ましく、-55℃以上であることがさらに好ましい。粘着剤の凝集力を向上させ、より優れた耐熱性を粘着層に付与するためである。
【0043】
共重合体(A)のガラス転移点は、30℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましく、-35℃以下であることが特に好ましい。後述する粘着剤組成物の濡れ性を向上させ、粘着層の基材への密着性を向上させるためである。また、粘着層の柔軟性を高めて、乾燥使用時の粘着層のタック性を向上させるためである。
【0044】
Tgは、重合体を構成する単量体単位とその割合から、以下に示すFOXの式により計算して得られる理論値である。
【0045】
1/T=W1/T1+W2/T2+W3/T3+・・・+Wn/Tn
【0046】
T(K)=Tg(℃)+273℃で、Tは共重合体(A)のガラス転移点を絶対温度で表した数値である。また、Wnは各構造単位の質量分率(≦1)であり、Tnは、各構造単位の由来となる化合物のホモポリマーのガラス転移点(絶対温度)である。
【0047】
[1-1-6.共重合体(A)の製造方法]
共重合体(A)の製造方法は特に限定されないが、所望の官能基を有する化合物を、所定量含む単量体の混合物を重合してもよく、一部または全ての構造単位について、その他の化合物を重合した後に、所望の官能基を導入する等により、目的とする構造単位としてもよい。ここで、所望の官能基は、例えば上で述べた官能基であるが、その他の官能基を含んでもよい。
【0048】
共重合体(A)の製造方法としては、例えば、単量体を水性媒体中で乳化させて重合開始剤を用いて乳化重合させる方法が挙げられる。重合において、共重合体の分子量及びその分布を適切な範囲に制御するために連鎖移動剤を用いてもよい。単量体を乳化させるために乳化剤を用いてもよい。単量体は、予め反応器に全量を仕込んでもよく、均一な粒子を得るためには、共重合体(A)の構造単位を形成させるための全ての種類の単量体を含む混合物を、連続的または断続的に供給し仕込みながら重合してもよい。重合温度は、特に限定されないが、5~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましい。
【0049】
水性媒体は、水、親水性の溶媒、またはこれらの混合物である。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びN-メチルピロリドン等が挙げられる。重合安定性の観点から、水性媒体は水であることが好ましい。なお、重合安定性を損なわない限り、水性媒体として、水に親水性の溶媒を添加したものを用いてもよい。
【0050】
乳化重合において使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げあげられる。これらの重合開始剤は単独で使用しても、混合して使用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の総量に対して0.1~2質量%であることが好ましい。
【0051】
また、必要に応じて、これら重合開始剤と共に還元剤を使用できる。このような還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられる。
【0052】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられるがこれらに限られない。連鎖移動剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0053】
連鎖移動剤の使用量は、少なくなると粘着剤の凝集力が向上して耐熱性が向上する、多くなると粘着剤の凝集力は低下して粘着層の粘着力が向上する。連鎖移動剤の使用量は、共重合体(A)のための単量体100質量部に対して0.0010質量部以上であることが好ましく、0.050質量部以上であることがより好ましく、0.080質量部以上であることがさらに好ましい。強い粘着力を有する粘着層を形成させるためである。
【0054】
連鎖移動剤の使用量は、共重合体(A)のための単量体100質量部に対して5.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、0.50質量部以下であることがさらに好ましく、0.30質量部以下であることが特に好ましい。粘着層の耐熱性を向上させるためである。
【0055】
乳化剤としては、特に限定されないが、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、セシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルベダイン等の両性界面活性剤、その他反応性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0056】
〔1-2.架橋剤(B)〕
架橋剤(B)は、カルボジイミド基(-N=C=N-で表される構造)、エポキシ基、及びイソシアナト基からなる群から選択される官能基を1分子内に複数有する。これらの官能基をここでは架橋剤官能基を称する。粘着剤組成物における、架橋剤(B)の含有量は、架橋剤官能基の量と、共重合体(A)に含まれる官能基の量との関係に基づいて調整される。粘着剤組成物におけるこれらの官能基の量的関係については後述する。
【0057】
架橋剤(B)は、ポリカルボジイミド化合物(カルボジイミド基を複数有する化合物)、ポリエポキシ化合物(エポキシ基を複数有する化合物)、及びポリイソシアネート化合物(イソシアナト基を複数有する化合物)からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0058】
ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の化合物や日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(登録商標、以下同様)V-02」、「カルボジライトSV-02」、「カルボジライトV-04」、「カルボジライトV-10」、「カルボジライトE-02」、「カルボジライトE-03A」、「カルボジライトE-05」等が挙げられる。
【0059】
ポリカルボジイミド化合物の、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1個当たりの分子量)は、150以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましく、350以上であることが特に好ましい。共重合体(A)との架橋反応における立体障害を抑制し、架橋反応の速度及び架橋密度を向上させるためである。
【0060】
ポリカルボジイミド化合物の、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1個当たりの分子量)は、1000以下であることが好ましく、750以下であることがより好ましく、6000以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)との架橋反応において、架橋密度を向上させるためである。
【0061】
ポリエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコール(登録商標、以下同様)EX-611」、「デナコールEX-612」、「デナコールEX-614」、「デナコールEX-614B」、「デナコールEX-622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-321」等)、レソーシノールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-201」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-211」等)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-212」等)、ヒドロジェネイティッドビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-252」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」等)、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N′,N′-テトラグリシジルm-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N′-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。中でも水溶性タイプのものが好適である。
【0062】
ポリエポキシ化合物の、エポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、70以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。共重合体(A)との架橋反応における立体障害を抑制し、架橋反応の速度及び架橋密度を向上させるためである。
【0063】
ポリエポキシ化合物の、エポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、700以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、200以下であることが特に好ましい。共重合体(A)との架橋反応において、架橋密度を向上させるためである。
【0064】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。具体的な商品としては、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)のようなビュレットポリイソシアネート化合物;「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(バイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ウレタン社製)のようなイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン社製)のようなアダクトポリイソシアネート化合物;「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」(日本ポリウレタン社製)のような自己乳化型の水分散ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、水分散ポリイソシアネート化合物が好適である。また、ポリイソシアネート化合物としてブロックイソシアネート化合物を使用してもよい。
【0065】
ポリイソシアネート化合物の、イソシアナト当量(イソシアナト基1個当たりの分子量)は、60以上であることが好ましく、75以上であることがより好ましい。共重合体(A)との架橋反応における立体障害を抑制し、架橋反応の速度及び架橋密度を向上させるためである。
【0066】
ポリイソシアネート化合物の、イソシアナト当量(イソシアナト基1個当たりの分子量)は、500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)との架橋反応において、架橋密度を向上させるためである。
【0067】
共重合体(A)100gに対する、架橋剤(B)が有する架橋剤官能基の量は、0.20mmol/100g以上であることが好ましく、0.35mmol/g以上であることがより好ましく、0.70mmol/100g以上であることがさらに好ましく、1.0mmol/100g以上であることが特に好ましい。粒子間の架橋密度が増加し、粘着剤の凝集力が向上し、粘着層の強度が向上するためである。
【0068】
共重合体(A)100gに対する、架橋剤(B)が有する架橋剤官能基の量は、20mmol/100g以下であることが好ましく、5.0mmol/100g以下であることがより好ましく、3.0mmol/g以下であることがさらに好ましく、2.0mmol/100g以下であることが特に好ましい。粘着層の柔軟性が向上し、より強い粘着力が得られるためである。
【0069】
〔1-3.各官能基間の量的関係〕
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、共重合体(A)中のエポキシ基の含有量は、0.60×10-2mol以上であることが好ましく、2.0×10-2mol以上であることがより好ましく、4.0×10-2mol以上であることがさらに好ましく、5.0×10-2mol以上であることが特に好ましい。粘着剤に含まれる粒子(共重合体(A)及び架橋剤(B)の硬化物、ここでは以下同様)の内部架橋の密度が向上し、耐熱性が高まるためである。
【0070】
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、共重合体(A)中のエポキシ基の含有量は、60×10-2mol以下であることが好ましく、40×10-2mol以下であることがより好ましく、20×10-2mol以下であることがさらに好ましく、10×10-2mol以下であることが特に好ましい。粘着剤に含まれる粒子の内部架橋の密度を適度に保ち、高い粘着性を有する粘着層が得られるためである。
【0071】
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、共重合体(A)中のヒドロキシ基の含有量は、1.0×10-2mol以上であることが好ましく、3.0×10-2mol以上であることがより好ましく、4.5×10-2mol以上であることがさらに好ましい。粘着剤に含まれる粒子の内部架橋及び粒子間架橋の密度が向上し、高温環境下での粘着層の保持力が向上するためである。
【0072】
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、共重合体(A)中のヒドロキシ基の含有量は、15×10-2mol以下であることが好ましく、10×10-2mol以下であることがより好ましく、7.5×10-2mol以下であることがさらに好ましい。粘着剤に含まれる粒子の内部架橋及び粒子間架橋の密度を適度に保ち、高い粘着性を有する粘着層が得られるためである。
【0073】
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、架橋剤(B)中の架橋剤官能基の含有量は、0.10×10-2mol以上であり、0.50×10-2mol以上であることが好ましく、0.70×10-2mol以上であることが好ましく、1.5×10-2mol以上であることがより好ましく、2.0×10-2mol以上であることがさらに好ましい。粒子間の架橋密度が増加し、粘着剤の凝集力が向上し、粘着層の強度が向上するためである。
【0074】
共重合体(A)中のカルボキシ基1molに対する、架橋剤(B)中の架橋剤官能基の含有量は、30×10-2mol以下であり、10×10-2mol以下であることが好ましく、7.0×10-2mol以下であることがより好ましく、5.0×10-2mol以下であることがさらに好ましく、3.5×10-2mol以下であることが特に好ましい。粘着層の柔軟性が向上し、より強い粘着力が得られるためである。
【0075】
共重合体(A)中のエポキシ基1molに対する、架橋剤(B)中の架橋剤官能基の含有量は、0.040mol以上であることが好ましく、0.080mol以上であることがより好ましく、0.14mol以上であることがさらに好ましく、0.28mol以上であることが特に好ましい。粒子内部だけではなく、粒子間の架橋密度も向上させることで、高い耐熱性を有する粘着層が得られるためである。
【0076】
共重合体(A)中のエポキシ基1molに対する、架橋剤(B)中の架橋剤官能基の含有量は、1.5mol以下であることが好ましく、1.0mol以下であることがより好ましく、0.60mol以下であることがさらに好ましい。粒子間だけではなく、粒子内部の架橋密度も高くすることで、高い密着性を有する粘着層が得られるためである。
【0077】
〔1-4.水性媒体〕
水性媒体は、水、親水性の溶媒、またはこれらの混合物である。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びN-メチルピロリドン等が挙げられる。水性媒体は水であることが好ましい。水性媒体は、共重合体(A)の重合に用いた水性溶媒と同一の組成でもよく、異なる組成でもよい。
【0078】
〔1-5.その他の添加剤〕
添加剤は、必要に応じて適宜、粘着剤組成物に含めることができる。添加剤を添加するタイミングは特に限定されない。添加剤は、共重合体(A)と架橋剤(B)との混合と同時または混合後に加えることができる。また、添加剤は、共重合体(A)及び架橋剤(B)の混合前に予め、いずれかまたは両方の溶液または分散液に添加してもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘着付与剤が挙げられる。また、添加剤として、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤等を適宜使用することができる。
【0079】
pH調整剤としては、一般的な無機酸、有機酸等の酸性物質やその塩、アミノ酸等の両性塩を使用することができる。有機酸のpH調整剤としては、例えば、酢酸、ギ酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、乳酸、酪酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アジピン酸、シュウ酸、アビエチン酸等が挙げられる。無機酸のpH調整剤としてはホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸等が挙げられる。さらに、酸性物質の塩としては、上記有機酸または無機酸とナトリウム、カリウム、アンモニア、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンとの塩等が挙げられる。また、アミノ酸のpH調整剤としては、グリシン、グリシルグリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸等が挙げられる。これらのpH調整剤は単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5留分/C9留分系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
〔1-4.粘着剤組成物の各成分の含有量〕
粘着剤組成物の不揮発分濃度は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。少ない粘着剤組成物の塗布量でより多くの粘着層を形成できるためである。また、塗布された粘着剤組成物の乾燥時間が短くなり、生産性が向上するためである。
【0082】
粘着剤組成物の不揮発分濃度は、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。粘着剤組成物中の共重合体(A)のゲル化を抑制するためである。
【0083】
粘着剤組成物における、不揮発分中の共重合体(A)及び架橋剤(B)の合計含有率は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。粘着層の粘着力及び保持力、特に高温での保持力が向上するためである。
【0084】
粘着剤組成物における、不揮発分中の共重合体(A)及び架橋剤(B)の合計含有率は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
<2.粘着テープ>
〔2-1.粘着テープの構成〕
本発明にかかる粘着剤組成物の代表的な用途として、粘着テープがある。本実施形態にかかる粘着テープは、基材と、基材表面に形成された粘着層とを備える。粘着層は基材の一方の面のみに形成されていてもよく、両方の面に形成されていてもよい。
【0086】
基材の材質としては、特に限定はされないが、紙、プラスチック、布、金属等が挙げられる。また、基材はフィルムでもよく、織布、不織布でもよく、特に限定はされないが、不織布であることが好ましい。基材に粘着剤組成物が浸み込み、粘着層と基材との間の結合力が高まるためである。
【0087】
粘着層は、上記粘着剤組成物の硬化物を含む。粘着層はこの粘着剤の他に、粘着剤組成物に含まれる添加剤等が含まれていてもよい。下に述べるように、粘着剤組成物を基材に塗布して作製された粘着テープでは、粘着層には粘着剤組成物の不揮発分が含まれる。粘着層の厚さは10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。粘着層を被着物の表面に追従させるために十分に変形させることができるためである。粘着層の厚さは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。粘着層の凝集破壊を抑制するためである。
【0088】
〔2-2.粘着テープの製造方法〕
粘着テープの製造方法は、基材の片面または両面に粘着剤組成物を塗布する工程と、前記基材に塗布された前記粘着剤組成物から水性媒体を除去して粘着層を形成する工程と、を含む。塗布の際に、粘着剤組成物の粘度を調製するために、水性媒体あるいは増粘剤等を粘着剤組成物に適宜加えてもよい。両面に粘着剤組成物を塗布する場合、一面ずつ塗布してもよく、一度に両面に塗布してもよい。粘着剤組成物は、基材へ連続的に塗布してもよいし、間欠的に塗布してもよい。
【0089】
粘着剤組成物の塗布量は特に限定されないが、10~500g/mであることが好ましい。基材に塗布された粘着剤組成物の乾燥温度は、特に限定されないが、20~160℃であることが好ましい。十分な粘着力と凝集力を有する粘着層が得られるためである。
【0090】
<3.粘着剤組成物及び粘着テープの用途>
ここでは、本発明の粘着剤組成物の好ましい用途の1つとして粘着テープについて説明したが、本発明の粘着剤組成物の用途はこれに限らない。例えば、本発明の粘着剤組成物を、部材に直接塗布し、粘着テープを用いずに他の部材と貼り合わせてもよい。また、粘着テープの用途としては、例えば、電気製品、自動車、建築部材、玩具等の用途がある。粘着テープの被着材は特に限定されないが、ポリプロピレン等のプラスチック部材、SUS、アルミニウム等の金属部材である場合が特に有用である。
【実施例0091】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は実施例によっては制限されない。
【0092】
<1.粘着剤組成物の作製>
撹拌機、温度計、還流凝縮器を備えた重合装置中で、イオン交換水23質量部及び乳化剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬社製)0.10質量部を混合し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。重合装置内の混合液を撹拌しながら80℃に保ち、重合開始剤として5.0質量%過硫酸カリウム水溶液2質量部を添加した。イオン交換水50質量部と、乳化剤1.0質量部と、単量体及び連鎖移動剤を合計で100質量部と、を含む単量体乳化液を、重合開始剤が添加された上記混合液に4時間かけて滴下した。ここで滴下された単量体及び連鎖移動剤の種類は、各実施例及び比較例において表1、表2-1、及び表2-2に示される通りである。ここで滴下された単量体及び連鎖移動剤の合計100質量部に占める各成分の含有率は表1、表2-1、及び表2-2の各実施例及び比較例の左欄の通りである。単量体乳化液の滴下開始と同時に、2.5質量%過硫酸カリウム水溶液20質量部を4時間かけて滴下した。
【0093】
滴下終了後、80℃で2時間反応させた。その後、重合装置内の混合液を25℃まで冷却した。中和剤としてアンモニア水を添加しpHを8.5に調整した。さらに、粘着付与剤としてスーパーエステルE-865NT(荒川化学工業社製)25質量部、増粘剤としてプライマルASE-60(ダウケミカル社製)を2.0質量部添加した。その後、各実施例及び比較例において表1、表2-1、及び表2-2の左欄に示される種類及び量の架橋剤(架橋剤(B)またはその他の架橋剤)を添加し、粘着剤組成物を得た。
【0094】
また、各実施例及び比較例における、共重合体(A)100g当たりのカルボキシ基、エポキシ基、及びヒドロキシ基のモル数(mmol/100g)を表1、表2-1、及び表2-2に示す。さらに、共重合体(A)100gに対する、架橋剤(B)に含まれる架橋剤官能基(カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアナト基)、またはその他架橋剤に含まれる、アジリジン基のモル数(mmol/100g)も表1及び表2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2-1】
【0097】
【表2-2】
【0098】
<2.粘着テープの作製>
各実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物を離型紙(林コンバーテック社製KP-8D)の離型面に塗布した。塗布された粘着剤組成物を100℃で3分間乾燥し、粘着剤組成物から水性媒体を除去して、離型面上に膜厚が60μmの粘着層が形成された。離型面上の粘着層を、目付け14g/mの不織布(基材:材質はレーヨン)の両面に転着させた。不織布上に転着された粘着層を40℃で3日間養生し、粘着テープを得た。なお、粘着層への異物付着を避けるため転着後も離型紙は剥がさなかった。
【0099】
<3.粘着テープの評価>
各実施例及び比較例において作製した粘着テープについて、以下の評価をした。評価結果は表1、表2-1、及び表2-2に示すとおりである。なお、以下の説明において、各実施例及び比較例における操作は特に断りがなければ共通する。
【0100】
〔3-1.評価1:初期粘着力の測定〕
粘着テープの片面の離型紙を剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。このフィルムを25mm×250mmに切り出した。さらに、粘着テープの反対側の面の離型紙を長手方向に半分剥がして切り取り、ポリプロピレン(PP)板に貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。貼り合わせは、23℃×50%RHの雰囲気下で2kgローラーを1往復させることにより行った。評価用サンプルにおける、粘着テープとポリプロピレン板との貼り合わせ部分は25mm×125mmの長方形となる。貼り合わせ部分の端部はいずれもポリプロピレン板の端部とは重ならないようにした。すなわち、この状態で、粘着テープの長手方向の一端側の半分はポリプロピレン板と貼り合わせられており、他端側の半分は離型紙が貼り合わせられている。
【0101】
評価用サンプルを作製後、温度23℃の雰囲気下で30分間放置した。その後、以下の手順の測定を、温度23℃の雰囲気下で行った。
【0102】
試験はいわゆる180°剥離試験である。評価用サンプルの粘着テープをポリプロピレン板に貼り付けられている部分と貼りつけられていない部分の境を、折り返し線として180°折り返した。粘着テープのポリプロピレン板が貼り付けられていない方(折り返された方)の一端を試験機の上側のチャックで掴んだ。折り返し線を挟んで上側のチャックと対抗するポリプロピレン板の一端を下側のチャックで掴んだ。
【0103】
その状態で、ポリプロピレン板から粘着テープを200mm/minの速度で引き剥がし、剥離長さ(mm)-剥離力(N)のグラフを得た。得られたグラフにおいて剥離長さ25~100mmにおける剥離力の平均値(N)(剥離長さ25~100mmにおけるグラフの面積を剥離長さで割った値)を算出し、この数値を初期粘着力(N/25mm)とした。なお、いずれの実施例及び比較例においても、試験中、粘着層と基材との間での剥離、及び粘着層の凝集破壊は起こらなかった。
【0104】
〔3-2.評価2:高温環境下での粘着力の測定〕
上記の手順と同様の手順で評価用サンプルを作製後、温度70℃の恒温槽に30分間放置した。その後、温度70℃の雰囲気下で上記の手順で180°剥離試験を行い、剥離長さ25~100mmにおける剥離力の平均値(mN)を高温保管後の粘着力(N/25mm)とした。
【0105】
〔3-3.評価3:高温保持力の測定〕
粘着両面テープの片面の離型紙を剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。粘着テープの他方の面に離型紙を長手方向の一端から25mm剥がして、離型紙が剥がされた部分をすべてカバーするようにSUS板(SUS#304)を貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。すなわち、評価用サンプルにおいて、粘着テープとSUS板とが貼り合わせられている範囲は25mm×25mmの正方形となる。貼り合わせは、23℃の雰囲気下で2kgローラーを1往復させることにより行った。また、この際、粘着テープの、SUS板に貼り合わせられている一端の延長上の、粘着テープが貼り合わせられていないSUS板のみの部分をSUS板側チャック部として設けた。
【0106】
評価用サンプルを、80℃の恒温槽に30分間放置した。その後、80℃の恒温槽内で、評価用サンプルのSUS板側チャック部をチャックで掴み、粘着テープのSUS板が貼り合わせられていない方の長手方向の一端に500gのウエイトを吊り下げ、24時間放置した。その後、粘着テープがSUS板に対して鉛直方向にずれた距離(mm)を測定した。
【0107】
<4.評価結果>
表1に示される通り、実施例にかかる粘着剤組成物を用いて作製された粘着テープは、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成されていることがわかる。
【0108】
一方、共重合体(A)がエポキシ基を含まない粘着剤組成物を用いて作製された比較例1~4及び比較例6~9にかかる粘着テープでは、高温粘着力及び高温保持力のうち少なくともいずれかが十分ではない。
【0109】
これらの中で、比較例2では、粘着剤組成物中の架橋剤官能基の量を増やしているが、粘着テープの高温粘着力が低下している。また、比較例3及び比較例4においては、架橋剤官能基として、エポキシ基を有する架橋剤(B)が用いられているが、粘着テープの高温保持力または高温粘着力が不十分であった。これらのことから、共重合体(A)がエポキシ基を含まない構成においては、粘着剤組成物に含まれる架橋剤官能基の量を多くしても、その種類を変えても、本発明の目的は達成できないことがわかる。
【0110】
また、上記比較例のうち、エポキシ基の代わりに、エチレングリコールジメタクリレートを多く用いて内部架橋をした比較例7、及びジビニルベンゼンを多く用いて内部架橋した比較例9にかかる粘着テープでは、初期粘着力が不十分であった。また、エポキシ基の代わりに、エチレングリコールジメタクリレートを少量用いて内部架橋した比較例6及び、ジビニルベンゼンを少量用いて内部架橋した比較例8にかかる粘着テープでは、高温保持力が著しく劣っている。これらのことから、共重合体(A)において、エポキシ基を含んでいない構成においては、代わりに、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物を用いて共重合体(A)の粒子を内部架橋しても、本発明の目的は達成できないことがわかる。
【0111】
架橋剤(B)を含まない粘着剤組成物を用いて作製された比較例5にかかる粘着テープは、高温保持力が著しく劣っている。
【0112】
架橋剤(B)の代わりにアジリジン基を含む架橋剤を用いた比較例10では、高温粘着力及び高温保持力が不十分であった。
【0113】
以上の通り、本発明によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成可能な水分散型粘着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、さらに高温下における高い保持力をも有する粘着テープを提供することができる。