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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102975
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】制震装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220630BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
F16F15/023 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218073
(22)【出願日】2020-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】502141636
【氏名又は名称】江戸川木材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521001124
【氏名又は名称】石垣 充
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 純二
(72)【発明者】
【氏名】石垣 充
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC22
2E139BA12
2E139BD24
3J048AA06
3J048AC04
3J048BE03
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】 構造物の施工後であっても、簡単な作業で制震装置を取付けられるようにする。
【解決手段】 制震装置11は、左柱4に壁板6を挟んで取付けられた左上当木12と、左上当木12よりも下側に位置して左柱4に壁板6を挟んで取付けられた左下当木14と、右柱5に壁板6を挟んで取付けられた右上当木15と、右上当木15よりも下側に位置して右柱5に壁板6を挟んで取付けられた右下当木16と、左上当木12と右上当木15との間に設けられ、左柱4と右柱5を通じて上梁2の振動が入力される上部伝達部材17と、左下当木14と右下当木16との間に設けられ、左柱4と右柱5を通じて下梁3の振動が入力される下部伝達部材18と、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間に設けられ、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間の振動による相対変位を減衰するダンパ19と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上梁と下梁との間に左右方向に間隔をもって左柱と右柱とが設けられ、前記左柱の表面と前記右柱の表面に壁板が取付けられた構造物に適用され、前記構造物の振動を吸収する制震装置であって、
前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左上当木と、
前記左上当木よりも下側に位置して前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左下当木と、
前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右上当木と、
前記右上当木よりも下側に位置して前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右下当木と、
前記左上当木と前記右上当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記上梁の振動が入力される上部伝達部材と、
前記上部伝達部材よりも下側に位置して前記左下当木と前記右下当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記下梁の振動が入力される下部伝達部材と、
前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間に設けられ、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、を備えていることを特徴とする制震装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制震装置において、
前記上部伝達部材と前記下部伝達部材とのうち少なくとも一方の伝達部材を覆うカバー部材が設けられ、
前記左上当木、前記左下当木、前記右上当木、前記右下当木のうち前記カバー部材と対面する当木と前記カバー部材との間には、前記カバー部材を前記当木に取付ける取付部材が設けられ、
前記取付部材は、前記当木に設けられた下側支持部と、前記カバー部材に設けられ、前記下側支持部に対して左右方向に移動可能に係合する上側支持部と、を備えていることを特徴とする制震装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制震装置において、
前記左上当木の下端部と前記右上当木の下端部との間には、前記上部伝達部材が前記相対変位する方向と異なる方向に振れるのを抑止する上部振れ止め部材が設けられ、
前記左下当木の上端部と前記右下当木の上端部との間には、前記下部伝達部材が前記相対変位する方向と異なる方向に振れるのを抑止する下部振れ止め部材が設けられていることを特徴とする制震装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制震装置において、
前記上部振れ止め部材は、前記左上当木と前記右上当木に対して前記相対変位する方向に移動が可能に取付けられ、
前記下部振れ止め部材は、前記左下当木と前記右下当木に対して前記相対変位する方向に移動が可能に取付けられていることを特徴とする制震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物の振動を抑制する制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の構造物は、上梁と下梁との間に左右方向に間隔をもって左柱と右柱とを有している。この上で、左柱の表面と右柱の表面には、壁板が取付けられている。昨今の構造物には、地震等による振動を吸収する制震装置が設けられている。
【0003】
制震装置は、左柱と右柱との間に設けられ、左柱と右柱を通じて上梁の振動が入力される上部伝達部材と、上部伝達部材よりも下側に位置して左柱と右柱との間に設けられ、左柱と右柱を通じて下梁の振動が入力される下部伝達部材と、上部伝達部材と下部伝達部材との間に設けられ、上部伝達部材と下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、を含んで構成されている。制震装置は、地震等が発生して上部伝達部材と下部伝達部材との間に相対変位が生じると、この相対変位によってダンパが伸長、縮小して減衰力を発生する。これにより、制震装置は、構造物の振動を抑制している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/074131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1による制震装置は、構造物の施工時に設置されるもので、上梁、下梁、左柱、右柱によって囲まれた空間に配置され、壁板で覆われている。このために、構造物の施工後に制震装置を取付ける場合には、壁板を取外すなどの大掛かりな工事が必要になるから、構造物の施工後には、制震装置を取付けることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、構造物の施工後であっても、簡単な作業で取付けることができるようにした制震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、上梁と下梁との間に左右方向に間隔をもって左柱と右柱とが設けられ、前記左柱の表面と前記右柱の表面に壁板が取付けられた構造物に適用され、前記構造物の振動を吸収する制震装置であって、前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左上当木と、前記左上当木よりも下側に位置して前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左下当木と、前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右上当木と、前記右上当木よりも下側に位置して前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右下当木と、前記左上当木と前記右上当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記上梁の振動が入力される上部伝達部材と、前記上部伝達部材よりも下側に位置して前記左下当木と前記右下当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記下梁の振動が入力される下部伝達部材と、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間に設けられ、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、構造物の施工後であっても、簡単な作業で制震装置を取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態による制震装置を構造物に取付けた状態で示す正面図である。
図2】左柱、右柱および壁板から左上当木、左下当木、右上当木、右下当木を分離した状態を示す斜視図である。
図3図1中の矢示III-III方向から見た制震装置の断面図である。
図4】左上当木に対する上部振れ止め部材の取付構造を示す斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態による制震装置を構造物に取付けた状態で示す正面図である。
図6】カバー部材を取外した制震装置を構造物と一緒に示す正面図である。
図7図5中の矢示VII-VII方向から見た制震装置とカバー部材の断面図である。
図8】構造物と左上当木とが分離した状態を図6中の矢示VIII-VIII方向から示す断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態による取付部材を用いた構造物に対する制震装置の取付構造を示す断面図である。
図10】取付部材の取付構造を構造物と制震装置とを分離した状態で示す断面図である。
図11】本発明の変形例による制震装置を構造物に取付けた状態で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る制震装置について、添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1ないし図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1において、構造物1は、例えば木造建築物、木材と鉄骨のハイブリッド建築物等の建物の一部を構成している。例えば、木造建築物を構成する構造物1は、水平方向に延びた上梁2と、上梁2よりも下側に位置して上梁2と平行に延びた下梁3と、左右方向に間隔をもった状態で垂直方向に延び上梁2と下梁3とに連結された左柱4、右柱5と、左柱4の表面4Aおよび右柱5の表面5Aに取付けられた壁板6とを備えている。
【0012】
上梁2は、室内の高い位置(天井側)で水平方向に延びた横木の一種を例示したものであり、胴差し、桁等も含んでいる。また、下梁3は、室内の低い位置(床板側)で水平方向に延びた横木の一種を例示したものであり、土台、胴差し等も含まれる。一般的に、上梁2、下梁3、左柱4、右柱5には、断面矩形状の木材が用いられている。一方で、上梁2と下梁3には、軽量鉄骨を用いることもできる(ハイブリッド建築物)。さらに、壁板6としては、合板、石膏ボード等が用いられる。
【0013】
左柱4と右柱5は、角柱体として形成され、室内側となる表面4A,5Aには、壁板6が取付けられている。ここで、左柱4、右柱5および壁板6には、後述する左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16を取付けるための複数個の下穴7が設けられている。各下穴7は、壁板6を貫通して左柱4、右柱5まで延びている。
【0014】
次に、本実施形態による制震装置11の構成について述べる。制震装置11は、壁板6よりも室内側に位置して左柱4、右柱5間に設けられている。ここで、制震装置11は、左右方向に間隔をもった状態で垂直方向に延びた2本の左柱4と右柱5が存在していれば、壁板6を取付けた構造物1の施工後であっても、左柱4、右柱5を利用して設けることができる。そして、制震装置11は、例えば地震により水平方向(左右方向)の振動が構造物1に入力されると、後述のダンパ19が伸長、縮小することで発生する減衰力を利用して構造物1の振動を吸収する。
【0015】
制震装置11は、後述の左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16、上部伝達部材17、下部伝達部材18、ダンパ19、上部振れ止め部材20、下部振れ止め部材23を含んで構成されている。
【0016】
左上当木12は、左柱4の上側部分に対面するように配置され、左柱4に対して壁板6を挟んで取付けられている。左上当木12は、左柱4に沿って垂直方向に延びて形成されている。詳しくは、左上当木12は、左柱4の長さ方向の中間部から上部に亘って配置されている。また、左上当木12は、断面矩形状の角柱体からなり、図3に示すように、前後方向の寸法(奥行き寸法)は、後述の上部伝達部材17およびダンパ19が収まる寸法に設定されている。
【0017】
図2に示すように、左上当木12は、壁板6に対面する取付面12A、この取付面12Aと反対側の前面12B、右上当木15と対面する右側の対向面12Cおよび後述の上部振れ止め部材20が取付けられる下面12Dを有している。左上当木12には、左柱4および壁板6に亘って形成された複数個の下穴7に対応するように、複数個のねじ挿通孔12Eが設けられている。
【0018】
左上当木12を構造物1に取付ける場合には、左柱4の上側部分と対面するように、左上当木12の取付面12Aを壁板6に当接させる。この状態で、複数本のねじ部材13をねじ挿通孔12Eに挿通して左柱4の下穴7に螺着する。これにより、左上当木12は、左柱4に一体的に取付けられるから、上部伝達部材17を取付けるための構造体となり、構造物1に振動が入力されたときには、左柱4と一緒に振動する。
【0019】
次に、左下当木14は、左上当木12よりも下側、即ち、左柱4の下側部分に対面するように配置され、左柱4に壁板6を挟んで取付けられている。左下当木14は、左柱4に沿って垂直方向に延びて形成されている。詳しくは、左下当木14は、左上当木12の真下に一直線に連なるように左柱4の長さ方向の中間部から下部に亘って配置されている。また、左下当木14は、左上当木12と同様に、断面矩形状の角柱体からなり、前後方向の寸法は、後述の下部伝達部材18およびダンパ19が収まる寸法に設定されている。
【0020】
左下当木14は、左上当木12を上下方向で反転した形状となっている。即ち、左下当木14は、取付面14A、前面14B、対向面14Cおよび後述の下部振れ止め部材23が取付けられる上面14Dを有している。また、左下当木14は、左柱4および壁板6に亘って形成された複数個の下穴7に対応するように、複数個のねじ挿通孔14Eが設けられている。
【0021】
ここで、左上当木12と左下当木14は、別々に左柱4に取付ける構成となっているから、左当木を1本の角柱体で形成した場合に比較して短く形成することができる。短い角柱体は、取扱いが容易な上に、コストを抑えることができる。
【0022】
左下当木14を構造物1に取付ける場合には、左柱4の下側部分と対面するように、左下当木14の取付面14Aを壁板6に当接させる。この状態で、複数本のねじ部材13をねじ挿通孔14Eに挿通して左柱4の下穴7に螺着する。これにより、左下当木14は、左柱4に一体的に取付けられるから、下部伝達部材18を取付けるための構造体となり、構造物1に振動が入力されたときには、左柱4と一緒に振動する。
【0023】
右上当木15は、左上当木12と左右方向で対称形状をなしている。即ち、右上当木15は、取付面15A、前面15B、対向面15C、下面15Dおよび各ねじ挿通孔15Eを有している。また、右下当木16は、左下当木14と左右方向で対称形状をなしている。即ち、右下当木16は、取付面16A、前面16B、対向面16C、上面16Dおよび各ねじ挿通孔16Eを有している。
【0024】
右上当木15を構造物1に取付ける場合には、右柱5の上側部分と対面するように、右上当木15の取付面15Aを壁板6に当接させる。この状態で、複数本のねじ部材13をねじ挿通孔15Eに挿通して右柱5の下穴7に螺着する。また、右下当木16を構造物1に取付ける場合には、右柱5の下側部分と対面するように、右下当木16の取付面16Aを壁板6に当接させる。この状態で、複数本のねじ部材13をねじ挿通孔16Eに挿通して右柱5の下穴7に螺着する。これにより、右上当木15と右下当木16は、右柱5に一体的に取付けられるから、構造物1に振動が入力されたときには、右柱5と一緒に振動する。
【0025】
図1図3に示すように、上部伝達部材17は、上側に位置して左右方向で対向した左上当木12と右上当木15との間に設けられている。上部伝達部材17には、左柱4と右柱5を通じて上梁2の振動が入力される。上部伝達部材17は、大きな歪みを生じることがない十分な厚さをもった構造用合板等からなり、下側に向けて狭幅となる台形状に形成された構造板17Aと、構造板17Aの上部の幅方向の両端に設けられた左当木ブラケット17B、右当木ブラケット17Cと、構造板17Aの下部に設けられたダンパブラケット17Dとにより構成されている。上部伝達部材17は、左上当木12、右上当木15、左柱4、右柱5を通じて上梁2と一緒に水平方向(左右方向)に振動する。
【0026】
当木ブラケット17B,17Cは、例えば、構造板17Aに沿って水平方向に延びた金属板の端部をL字状に折り曲げることにより連結金具として形成されている。左当木ブラケット17Bは、左上当木12の対向面12Cにねじ部材を用いて固定され、右当木ブラケット17Cは、右上当木15の対向面15Cにねじ部材を用いて固定されている。そして、当木ブラケット17B,17Cは、構造物1の振動時に左柱4と右柱5(左上当木12と右上当木15)の変位に伴って弾性変形することにより、左柱4と右柱5(左上当木12と右上当木15)の変位を阻害しないように、この変位を構造板17Aに伝達する構造になっている。
【0027】
さらに、ダンパブラケット17Dは、構造板17Aの左下位置にねじ部材を用いて固定されている。例えば、ダンパブラケット17Dは、構造板17Aに沿って水平方向に延びた金属板からなり、その下端部の左側には、下向きに延びて取付部17D1が設けられている。この取付部17D1には、ダンパ19のピストンロッド19Bが回動可能に取付けられている。
【0028】
下部伝達部材18は、上部伝達部材17よりも下側に位置して左右方向で対向した左下当木14と右下当木16との間に設けられている。下部伝達部材18には、左柱4と右柱5を通じて下梁3の振動が入力される。下部伝達部材18は、上部伝達部材17と同一の構造体として形成されている。即ち、上部伝達部材17を180度回転させて上下を反転させることにより下部伝達部材18になる。従って、下部伝達部材18は、上部伝達部材17の構成で用いた符号と同じ順番で新たに符号を付し、その構成の説明は省略する。
【0029】
下部伝達部材18は、構造板18A、左当木ブラケット18B、右当木ブラケット18C、ダンパブラケット18D(取付部18D1)を含んで構成されている。下部伝達部材18は、左下当木14、右下当木16、左柱4、右柱5を通じて下梁3と一緒に水平方向(左右方向)に振動する。
【0030】
ダンパ19は、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間に設けられている。ダンパ19は、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間の振動による相対変位を減衰する。ダンパ19は、作動油が充填されたシリンダ19Aと、シリンダ19A内を摺動するピストン(図示せず)に結合されてシリンダ19Aから伸縮可能に突出したピストンロッド19Bとを含んで構成されている。
【0031】
ダンパ19は、水平方向(左右方向)に延びるように配置され、ピストンロッド19Bの端部が、上部伝達部材17を構成するダンパブラケット17Dの取付部17D1に回動可能に取付けられている。一方、シリンダ19Aの端部は、下部伝達部材18を構成するダンパブラケット18Dの取付部18D1に回動可能に取付けられている。これにより、ダンパ19は、上部伝達部材17と下部伝達部材18の間の振動による相対変位を、ピストンに設けた減衰バルブ(図示せず)によって減衰させる。なお、ダンパ19は、2本以上設ける構成としてもよい。
【0032】
上部振れ止め部材20は、左上当木12の下端部と右上当木15の下端部との間に設けられている。上部振れ止め部材20は、上部伝達部材17が相対変位する方向(左右方向)と異なる方向(前後方向等)に振れるのを抑止するものである。上部振れ止め部材20は、左右方向に長尺な長方形状の板体からなり、左端部が左上当木12の下面12Dに当接した状態で取付ブラケット21を用いて左上当木12に取付けられている。一方、上部振れ止め部材20の右端部は、右上当木15の下面15Dに当接した状態で取付ブラケット21を用いて右上当木15に取付けられている。
【0033】
ここで、図4に示すように、上部振れ止め部材20には、上部伝達部材17のダンパブラケット17Dの取付部17D1に対応する位置に、取付部17D1が左右方向に移動可能に挿通されるガイド溝20Aを有している。このガイド溝20Aは、取付部17D1の板厚寸法よりも僅かに大きな内幅寸法をもったスリットとして形成されている。これにより、ガイド溝20Aは、ダンパブラケット17Dの取付部17D1を前後方向で挟むことにより、上部伝達部材17を相対変位する方向に限定して案内することができる。
【0034】
また、取付ブラケット21は、長方形状の金属板をL字状に折り曲げることにより直角に配置された2面を有している。取付ブラケット21の一方の面は、左上当木12の対向面12Cの下部と右上当木15の対向面15Cの下部にねじ部材22を用いて取付けられている。一方、取付ブラケット21の他方の面には、左右方向に延びたスリット状のねじ挿通孔21Aが形成されている。取付ブラケット21は、ねじ挿通孔21Aに挿通したねじ部材22を上部振れ止め部材20に螺着することにより、上部振れ止め部材20を左上当木12と右上当木15に取付けることができる。
【0035】
上部振れ止め部材20は、スリット状のねじ挿通孔21Aによって左上当木12と右上当木15に対して左右方向に移動が可能となっている。従って、構造物1が大きく振動して上部伝達部材17のダンパブラケット17Dの取付部17D1がガイド溝20Aの端部に当接した場合には、スリット状のねじ挿通孔21Aによって上部振れ止め部材20を移動させることができ、上部振れ止め部材20に作用する負荷を軽減することができる。
【0036】
下部振れ止め部材23は、左下当木14の上端部と右下当木16の上端部との間に設けられている。下部振れ止め部材23は、上部振れ止め部材20と同様に、下部伝達部材18が相対変位する方向(左右方向)と異なる方向(前後方向等)に振れるのを抑止する。下部振れ止め部材23は、ガイド溝23Aを有し、取付ブラケット21を用いて左下当木14の上面14Dと右下当木16の上面16Dに取付けられている。
【0037】
次に、制震装置11を、施工後の構造物1に取付ける場合の作業手順の一例について説明する。
【0038】
まず、制震装置11を施工後の構造物1に取付ける準備作業として、設計図や検査機器を用いて壁板6の裏側(奥)に左柱4と右柱5を探す。左柱4と右柱5の位置が明確になったら、左柱4、右柱5および壁板6に複数個の下穴7を穿設する。
【0039】
準備作業が終了したら、左柱4の上側部分と対面するように、左上当木12を壁板6に当接させる。また、左柱4の下側部分と対面するように、左下当木14を壁板6に当接させる。この状態で、ねじ挿通孔12E,14Eに挿通させたねじ部材13を下穴7に螺合させる。同様に、右柱5の上側部分と対面するように、右上当木15を壁板6に当接させる。また、右柱5の下側部分と対面するように、右下当木16を壁板6に当接させる。この状態で、ねじ挿通孔15E,16Eに挿通させたねじ部材13を下穴7に螺合させる。これにより、左柱4と一体構造をなす左上当木12、左下当木14と、右柱5と一体構造をなす右上当木15、右下当木16とを、構造物1の所定位置に固定することができる。
【0040】
構造物1に左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16を固定したら、上部伝達部材17の当木ブラケット17B,17Cを上当木12,15の対向面12C,15Cにねじ部材を用いて固定する。また、当木ブラケット17B,17Cには、構造板17Aを取付け、構造板17Aの下部には、ダンパブラケット17Dを取付ける。同様に、下部伝達部材18の当木ブラケット18B,18Cを下当木14,16の対向面14C,16Cにねじ部材を用いて固定する。また、当木ブラケット18B,18Cには、構造板18Aを取付け、構造板18Aの上部には、ダンパブラケット18Dを取付ける。
【0041】
次に、左上当木12の下端部と右上当木15の下端部との間に上部振れ止め部材20を取付け、左下当木14の上端部と右下当木16の上端部との間に下部振れ止め部材23を取付ける。さらに、上部伝達部材17のダンパブラケット17Dと下部伝達部材18のダンパブラケット18Dとの間に、水平方向に延びるようにダンパ19を取付ける。これにより、制震装置11は、構造物1に取付けることができ、構造物1の振動を吸収することができる。
【0042】
本実施形態による制震装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0043】
制震装置11が取付けられた構造物1に、例えば地震等により水平方向の振動が入力されると、上梁2および下梁3を介して左柱4と右柱5との上下部間で水平方向の相対変位が生じる。このときには、左柱4と右柱5と一緒に左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16も変位する。そして、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16の変位は、上部伝達部材17、下部伝達部材18を通じて、ダンパ19に入力される。これにより、ダンパ19は、シリンダ19A内をピストンが摺動することにより減衰力を発生して、構造物1に作用した振動エネルギを吸収し、振動を抑制する。
【0044】
また、上部振れ止め部材20は、ガイド溝20Aにダンパブラケット17Dの取付部17D1を挿入することにより、上部伝達部材17を相対変位する方向となる左右方向に案内することができる。一方、下部振れ止め部材23は、ガイド溝23Aにダンパブラケット18Dの取付部18D1を挿入することにより、下部伝達部材18を左右方向に案内することができる。これにより、振動による変位をダンパ19に効率よく作用させることができる。
【0045】
かくして、本実施形態によれば、制震装置11は、左柱4に壁板6を挟んで取付けられた左上当木12と、左上当木12よりも下側に位置して左柱4に壁板6を挟んで取付けられた左下当木14と、右柱5に壁板6を挟んで取付けられた右上当木15と、右上当木15よりも下側に位置して右柱5に壁板6を挟んで取付けられた右下当木16と、左上当木12と右上当木15との間に設けられ、左柱4と右柱5を通じて上梁2の振動が入力される上部伝達部材17と、上部伝達部材17よりも下側に位置して左下当木14と右下当木16との間に設けられ、左柱4と右柱5を通じて下梁3の振動が入力される下部伝達部材18と、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間に設けられ、上部伝達部材17と下部伝達部材18との間の振動による相対変位を減衰するダンパ19と、を備えている。
【0046】
従って、本実施形態の制震装置11は、左柱4と右柱5に壁板6を取付けた構造物1の施工後であっても、左柱4に壁板6を挟んで左上当木12と左下当木14を取付け、右柱5に壁板6を挟んで右上当木15と右下当木16を取付けることにより、左柱4、右柱5と制震装置11とを左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16を用いて連結することができる。この結果、制震装置11は、構造物1の施工後であっても、簡単な作業で取付けることができる。
【0047】
しかも、本実施形態では、左柱4に取付けられる左側の当木を、左上当木12と左下当木14とに分割している。同様に、右柱5に取付けられる右側の当木を、右上当木15と右下当木16とに分割している。これにより、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16を短く、軽く形成できるから、施工作業を行うときの作業性を向上できる上に、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16の価格や輸送コストを抑えることができる。
【0048】
一方、左上当木12の下端部と右上当木15の下端部との間には、上部伝達部材17が相対変位する方向(左右方向)と異なる方向に振れるのを抑止する上部振れ止め部材20が設けられている。同様に、左下当木14の上端部と右下当木16の上端部との間には、下部伝達部材18が相対変位する方向(左右方向)と異なる方向に振れるのを抑止する下部振れ止め部材23が設けられている。
【0049】
これにより、上部振れ止め部材20は、上部伝達部材17が左右方向と異なる方向に振れないように、ガイドすることができる。また、下部振れ止め部材23は、下部伝達部材18が左右方向と異なる方向に振れないように、ガイドすることができる。この結果、振動による変位をダンパ19に直接的に効率よく作用させることができ、ダンパ19による振動の減衰性能を安定させることができる。
【0050】
また、上部振れ止め部材20は、左上当木12と右上当木15に対して左右方向に移動が可能に取付けられ、下部振れ止め部材23は、左下当木14と右下当木16に対して左右方向に移動が可能に取付けられている。
【0051】
従って、構造物1が大きく振動して、上部伝達部材17のダンパブラケット17Dの取付部17D1が上部振れ止め部材20のガイド溝20Aの端部に当接したり、下部伝達部材18のダンパブラケット18Dの取付部18D1が下部振れ止め部材23のガイド溝23Aの端部に当接したりした場合には、上部振れ止め部材20、下部振れ止め部材23は、取付ブラケット21に形成されたスリット状のねじ挿通孔21Aによって移動が許可される。これにより、上部振れ止め部材20、下部振れ止め部材23に作用する負荷を軽減することができ、耐久性を向上することができる。
【0052】
さらに、上部振れ止め部材20、下部振れ止め部材23は、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16の前後方向の厚さ寸法(奥行き寸法)に収まるように形成されている。これにより、制震装置11を薄型化することができ、設置に伴う圧迫感を軽減することができる。この結果、制震装置11を設置できる範囲を広げることができる。
【0053】
次に、図5ないし図8は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、上部伝達部材と下部伝達部材とのうち少なくとも一方の伝達部材を覆うカバー部材が設けられ、左上当木、左下当木、右上当木、右下当木のうちカバー部材と対面する当木とカバー部材との間には、カバー部材を当木に取付ける取付部材が設けられ、取付部材は、当木に設けられた下側支持部と、カバー部材に設けられ、下側支持部に対して左右方向に移動可能に係合する上側支持部と、を備えていることにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
図5において、制震装置31は、第1の実施形態の制震装置11と同様に、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16、上部伝達部材17、下部伝達部材18、ダンパ19を含んで構成されている。しかし、第2の実施形態による制震装置31は、後述の上部カバー部材32、上部取付部材33、下部取付部材36、下部カバー部材39を備えている点で、第1の実施形態の制震装置11と相違している。
【0055】
カバー部材としての上部カバー部材32は、上部伝達部材17を覆うように設けられている。詳しくは、上部カバー部材32は、左上当木12と右上当木15とが形成する矩形の範囲を覆っている。これにより、上部カバー部材32は、左上当木12、右上当木15、上部伝達部材17を覆い隠すことができる。上部カバー部材32は、上部取付部材33、下部取付部材36を用いて左上当木12と右上当木15に取付けられている。
【0056】
上部カバー部材32は、左上当木12と右上当木15の間隔寸法と同等の間隔寸法をもって上下方向に延びた一対の縦枠32Aと、上下方向に間隔をもって左右方向に延び、一対の縦枠32Aの端部を連結した一対の横枠32Bと、一対の縦枠32Aと一対の横枠32Bとによって形成された枠体の内側に設けられた矩形状の有孔ボード32Cとを備えている。有孔ボード32Cは、複数個の孔を有し、複数個の孔にはフックやラックを掛けることができ、物品を収容することができる。
【0057】
取付部材としての上部取付部材33は、左上当木12、右上当木15の上側位置と上部カバー部材32の上側位置との間に設けられている。図7に示すように、上部取付部材33は、上部カバー部材32を左上当木12、右上当木15に取付けるものである。上部取付部材33は、下側支持部34と上側支持部35とを有している。
【0058】
図6に示すように、下側支持部34は、左上当木12の上側位置と右上当木15の上側位置との間に左右方向に延びて設けられている。具体的には、図8に示すように、下側支持部34は、左右方向に長尺な金属板を上下方向でクランク状に折り曲げることにより形成されている。これにより、下側支持部34は、左上当木12の前面12Bと右上当木15の前面15Bにねじ部材を用いて取付けられる取付板34Aと、取付板34Aよりも上側に位置して左上当木12の前面12B、右上当木15の前面15Bとの間に隙間を有して上側に延びた係合板34Bとにより構成されている。左上当木12の前面12B、右上当木15の前面15Bと係合板34Bとの離間寸法は、上側支持部35の係合板35Bの厚さ寸法よりも僅かに大きな寸法に設定されている。
【0059】
上側支持部35は、上部カバー部材32の上側位置に左右方向に延びて設けられている。具体的には、上側支持部35は、下側支持部34と同一の部材を上下方向で反転して用いている。即ち、上側支持部35は、上側の取付板35Aが上部カバー部材32の縦枠32Aにねじ部材を用いて取付けられている。また、下側の係合板35Bは、下側支持部34の係合板34Bと左上当木12の前面12B、右上当木15の前面15Bとの間に上側から差し込むことができる。同時に、下側支持部34の係合板34Bは、上側支持部35の係合板35Bと上部カバー部材32の縦枠32Aとの間に下側から差し込むことができる。
【0060】
これにより、上部取付部材33は、上側支持部35の係合板35Bを下側支持部34の係合板34Bに上側から係合することにより、上部カバー部材32の上側部分を左上当木12、右上当木15に取付けることができる。しかも、上部取付部材33は、上側支持部35の係合板35Bを下側支持部34の係合板34Bに上側から係合させているだけであるから、上側支持部35と下側支持部34とを相対的に左右方向に移動することもできる。
【0061】
取付部材としての下部取付部材36は、左上当木12、右上当木15の下側位置と上部カバー部材32の下側位置との間に設けられている。下部取付部材36は、上部取付部材33と同様に構成されており、下側支持部37(取付板37A、係合板37B)と上側支持部38(取付板38A、係合板38B)とを有している。
【0062】
カバー部材としての下部カバー部材39は、下部伝達部材18を覆うように設けられている。詳しくは、下部カバー部材39は、上部カバー部材32と同様に、縦枠39A、横枠39B、有孔ボード39Cからなり、上部取付部材33、下部取付部材36を用いて左下当木14と右下当木16に取付けられている。
【0063】
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第2の実施形態によれば、上部伝達部材17を覆う上部カバー部材32と下部伝達部材18を覆う下部カバー部材39を設けているから、制震装置11の大部分を覆い隠すことができ、見栄えを良好にすることができる。しかも、上部カバー部材32と下部カバー部材39には、有孔ボード32C,39Cを設けているから、物品を収容(陳列)することができる。上部カバー部材32と下部カバー部材39には、棚やボックスを設けることもできる。
【0064】
また、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16に上部カバー部材32、下部カバー部材39を取付ける上部取付部材33、下部取付部材36は、当木12,14,15,16に設けられた下側支持部34,37と、カバー部材32,39に設けられ、下側支持部34,37に対して左右方向に移動可能に係合する上側支持部35,38と、を備えている。従って、制震装置31が振動によって変位した場合でも、上側支持部35と下側支持部34とを相対的に左右方向に移動することにより、上部カバー部材32、下部カバー部材39の変形や損傷を防止することができる。
【0065】
次に、図9図10は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、左上当木12、右上当木15と上部カバー部材の上側との間の上部取付部材は、左上当木12、右上当木15に対して上部カバー部材の上側位置を左右方向に固定した状態で取付ける構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、前述した第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図9において、取付部材としての上部取付部材41は、左上当木12、右上当木15の上側位置と上部カバー部材32の上側位置との間に設けられている。上部取付部材41は、上部カバー部材32を左上当木12、右上当木15に取付けるもので、係合溝部42と係合爪部43とを有している。なお、上部取付部材41は、左下当木14、右下当木16の上側位置と下部カバー部材39の上側位置との間にも設けることができる。
【0067】
図10に示すように、係合溝部42は、左上当木12の上側に位置して上下方向に延びた狭幅な溝42Aと、左上当木12の前面12Bに取付けられ、溝42Aの下側部分を覆った係合板42Bとを有している。この係合溝部42は、右上当木15にも同様の位置に設けられている。
【0068】
係合爪部43は、上部カバー部材32の左側の縦枠32Aに設けられている。係合爪部43は、係合溝部42の溝42Aに挿入される爪板43Aを有している。爪板43Aは、係合溝部42の溝42Aに挿入した後に下側に移動することにより、係合溝部42の係合板42Bに係合することができる。この係合爪部43は、右上当木15にも同様の位置に設けられている。
【0069】
これにより、上部取付部材41は、係合爪部43の爪板43Aを係合溝部42の溝42Aに挿入した後に下側に移動することにより、係合溝部42の係合板42Bに係合することができ、上部カバー部材32の上側部分を左上当木12、右上当木15に取付けることができる。
【0070】
かくして、第3の実施形態でも、第2の実施形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。即ち、上部取付部材41は、左上当木12、右上当木15の上側位置に上部カバー部材32の上側位置を容易に取付けることができる。
【0071】
なお、第1の実施形態では、上部伝達部材17の構造板17Aと下部伝達部材18の構造板18Aを台形状に形成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば構造板を、三角形状、四角形状、多角形状等に形成する構成としてもよい。この構成は、他の実施形態についても同様に適用することができる。
【0072】
第1の実施形態では、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16を構造物1に取付けた後に、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16に伝達部材17,18、ダンパ19等を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、左上当木12、左下当木14、右上当木15、右下当木16に対し、各伝達部材17,18等を予め取付けた組立体(サブアッセンブリ)を形成した後に、この組立体を構造物1に取付ける構成としてもよい。この構成は、他の実施形態についても同様に適用することができる。
【0073】
この場合、図11に示す変形例のように、左上当木12の上部と右上当木15の上部とを連結するように連結部材51を設ける構成としてもよい。同様に、左下当木14の下部と右下当木16の下部とを連結するように連結部材52を設ける構成としてもよい。これにより、組立体を安定した構造とすることができ、容易に取扱うことができる。
【0074】
第1の実施形態では、ダンパ19は、作動油が充填されたシリンダ19Aと、シリンダ19A内を摺動するピストンに結合されてシリンダ19Aから突出したピストンロッド19Bとを含んだオイルダンパとして構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ゴム材(樹脂材)の弾性力を利用して減衰力を発生するゴムダンパ、摩擦材の摩擦力を利用して減衰力を発生する摩擦ダンパ等、他の形式のダンパを用いる構成としてもよい。この構成は、他の実施形態についても同様に適用することができる。
【0075】
一方、第1の実施形態では、ダンパ19は露出しているが、ダンパ19を覆い隠すカバー部材を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施形態についても同様に適用することができる。
【0076】
第1の実施形態では、上部振れ止め部材20に作用する負荷を軽減するために、上部振れ止め部材20は、スリット状のねじ挿通孔21Aを有する取付ブラケット21を用いて左上当木12、右上当木15に取付ける構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、上部振れ止め部材20に作用する負荷を軽減する必要がない場合には、ねじ部材、ダボ等を用いて上部振れ止め部材20の端部を左上当木12、右上当木15に固定的に取付ける構成としてもよい。この構成は、下部振れ止め部材23についても同様である。
【0077】
第2の実施形態では、上部カバー部材32は、上部取付部材33と下部取付部材36とを用いて構造物1に取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、上部取付部材33だけで上部カバー部材32を構造物1に取付ける構成としてもよい。この場合、上部カバー部材32の下部は、摩擦力によって構造物1に支持されている。この構成は、第2の実施形態による下部カバー部材39および第3の実施形態にも同様に適用することができる。
【0078】
第3の実施形態では、上部取付部材41の係合溝部42を左上当木12に設け、係合爪部43を上部カバー部材32に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、上部取付部材41の係合溝部42を上部カバー部材32に設け、係合爪部43を左上当木12に設ける構成としてもよい。この場合、上部取付部材41は、上下を反転させて設ける構成となる。
【0079】
さらに、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組合わせが可能であることは言うまでもない。
【0080】
以上説明した実施形態に基づく制震装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0081】
制震装置の第1の態様としては、上梁と下梁との間に左右方向に間隔をもって左柱と右柱とが設けられ、前記左柱の表面と前記右柱の表面に壁板が取付けられた構造物に適用され、前記構造物の振動を吸収する制震装置であって、前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左上当木と、前記左上当木よりも下側に位置して前記左柱に前記壁板を挟んで取付けられた左下当木と、前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右上当木と、前記右上当木よりも下側に位置して前記右柱に前記壁板を挟んで取付けられた右下当木と、前記左上当木と前記右上当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記上梁の振動が入力される上部伝達部材と、前記上部伝達部材よりも下側に位置して前記左下当木と前記右下当木との間に設けられ、前記左柱と前記右柱を通じて前記下梁の振動が入力される下部伝達部材と、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間に設けられ、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、を備えていることを特徴としている。これにより、構造物の施工後であっても、簡単な作業で制震装置を取付けることができる。
【0082】
制震装置の第2の態様としては、第1の態様において、前記上部伝達部材と前記下部伝達部材とのうち少なくとも一方の伝達部材を覆うカバー部材が設けられ、前記左上当木、前記左下当木、前記右上当木、前記右下当木のうち前記カバー部材と対面する当木と前記カバー部材との間には、前記カバー部材を前記当木に取付ける取付部材が設けられ、前記取付部材は、前記当木に設けられた下側支持部と、前記カバー部材に設けられ、前記下側支持部に対して左右方向に移動可能に係合する上側支持部と、を備えていることを特徴としている。これにより、制震装置を覆い隠すことができ、見栄えを良好にすることができる。また、物品を収容(陳列)することができる。さらに、カバー部材の変形や損傷を防止することができる。
【0083】
制震装置の第3の態様としては、第1または2の態様において、前記左上当木の下端部と前記右上当木の下端部との間には、前記上部伝達部材が前記相対変位する方向と異なる方向に振れるのを抑止する上部振れ止め部材が設けられ、前記左下当木の上端部と前記右下当木の上端部との間には、前記下部伝達部材が前記相対変位する方向と異なる方向に振れるのを抑止する下部振れ止め部材が設けられていることを特徴としている。これにより、構造物に作用した振動をダンパに効率よく伝えることができる。
【0084】
制震装置の第4の態様としては、第3の態様において、前記上部振れ止め部材は、前記左上当木と前記右上当木に対して前記相対変位する方向に移動が可能に取付けられ、前記下部振れ止め部材は、前記左下当木と前記右下当木に対して前記相対変位する方向に移動が可能に取付けられていることを特徴としている。これにより、上部振れ止め部材、下部振れ止め部材に作用する負荷を軽減することができ、耐久性を向上することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 構造物
2 上梁
3 下梁
4 左柱
4A,5A 表面
5 右柱
6 壁板
11,31 制震装置
12 左上当木
14 左下当木
15 右上当木
16 右下当木
17 上部伝達部材
18 下部伝達部材
19 ダンパ
20 上部振れ止め部材
23 下部振れ止め部材
32 上部カバー部材(カバー部材)
33,41 上部取付部材(取付部材)
34,37 下側支持部
35,38 上側支持部
36 下部取付部材(取付部材)
39 下部カバー部材(カバー部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11