(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102980
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/62 20060101AFI20220630BHJP
A47C 11/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
A47C7/62 A
A47C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218079
(22)【出願日】2020-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月26日に通販カタログ「MINOHANG30」頒布、令和2年10月20日に調度品・通販カタログ「minohan G31」頒布
(71)【出願人】
【識別番号】504449859
【氏名又は名称】イワトー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【弁理士】
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】岩原 崇
【テーマコード(参考)】
3B084
3B095
【Fターム(参考)】
3B084JA07
3B084JB03
3B095AA09
(57)【要約】
【課題】座部の下側に広い収納部を有する椅子を提供する。
【解決手段】左右の前脚2と左右の後脚3で支持される座部4と、座部4の下に位置する枠状の座枠6と、左右の前脚2間の下方位置に設けられた貫材9と、を備えた椅子1において、座枠6の下向きに開口する開口部7を覆う閉じ位置と、後脚3側を中心に前脚2側を下げて開口部7を開く開き位置と、の間で回動可能な蓋板8と、その蓋板8を閉じ位置に保持する閉蓋保持部材11と、蓋板8を開き位置に保持する開蓋保持部材12と、蓋板8の上面且つ少なくとも前縁側に上向きに突設された滑落防止凸片10aと、を備えてなることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左右の前脚と左右の後脚で支持される座部と、
前記座部の下に位置する枠状の座枠と、
少なくとも左右の前脚間の下方位置に設けられた貫材と、を備えた椅子において、
前記座枠の下向きに開口する開口部を覆う閉じ位置と、前記後脚側を中心に前脚側を下げて前記開口部を開く開き位置と、の間で回動可能な蓋板と、
その蓋板を前記閉じ位置に保持する閉蓋保持部材と、
前記蓋板を前記開き位置に保持する開蓋保持部材と、
前記蓋板の上面且つ少なくとも前縁側に上向きに突設された滑落防止凸片と、を備えてなることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記蓋板は、複数人が着座可能な長い座部に対して、その着座可能人数分に分割して設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記開蓋保持部材は、前記貫材又はその貫材の後面に突設した蓋受け片で構成され、その貫材又は前記蓋受け片に前記蓋板の前端を載せて受け支えるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記蓋板は、その前端寄りの位置に貫通孔状の開閉操作部を設けてなることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の椅子。
【請求項5】
前記蓋板は、前記滑落防止凸片に指掛け部を設けてなることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座する座部の下側に収納部を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
着座する座部の下側に収納部を備えた椅子は、例えば特許文献1に記載されているように従来から存在する。
この従来の椅子は、座部の下面に設けた外シェルに開口部を設け、その開口部の後側の側縁に蓋板の後縁側を蝶着し、蓋板の前側を上げ下げして開口部を開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の椅子は、座部の下面を覆う外シェル内に収納部を設けるものであるため、収納量を大きくする余地がない。また、蓋板の前方を下げて開口を開いたとしてもその状態を保持する手段がないため、片手で蓋板を保持しつつ他方の手で被収納物を出し入れする必要があり、不便で使い勝手が悪い問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたものでその目的は、座部の下側に広い収納部を備えることができ且つ被収納物の出し入れが片手はもちろん、両手でも行えるようにした椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、
少なくとも左右の前脚と左右の後脚で支持される座部と、
前記座部の下に位置する枠状の座枠と、
少なくとも左右の前脚間の下方位置に設けられた貫材と、を備えた椅子において、
前記座枠の下向きに開口する開口部を覆う閉じ位置と、前記後脚側を中心に前脚側を下げて前記開口部を開く開き位置と、の間で回動可能な蓋板と、
その蓋板を前記閉じ位置に保持する閉蓋保持部材と、
前記蓋板を前記開き位置に保持する開蓋保持部材と、
前記蓋板の上面且つ少なくとも前縁側に上向きに突設された滑落防止凸片と、を備えてなる椅子を提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、前記蓋板は、複数人が着座可能な長い座部に対して、その着座可能人数分に分割して設けられている請求項1記載の椅子を提供する。ここで着座可能人数とは、設計上の着座人数である。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記開蓋保持部材は、前記貫材又はその貫材の後面に突設した蓋受け片で構成され、その貫材又は前記蓋受け片に前記蓋板の前端を載せて受け支えるものである請求項1又は2記載の椅子を提供する。
【0009】
また、請求項4に記載したように、前記蓋板は、その前端寄りの位置に貫通孔状の開閉操作部を設けてなる請求項1~3の何れか1項に記載の椅子を提供する。
【0010】
また、請求項5に記載したように、前記蓋板は、前記滑落防止凸片に指掛け部を設けてなる請求項1~4の何れか1項に記載の椅子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の椅子は、座部の下に位置する座枠で囲われた空間を収納部とするため、必要とする収納量に対して座枠の高さを高くすることで対応することができる。
また、開蓋保持部材によって蓋板を開き位置に保持することができるため、被収納物の出し入れが片手はもちろん、両手でも行うことができる。
さらに蓋板の上面且つ少なくとも前縁側に滑落防止凸片を設けたため、開き位置に保持された蓋板に傾斜があっても被収納物が前方に滑り落ちにくい。
【0012】
また、請求項2のように、複数人が着座可能な長い座部に対して、その着座可能人数分に分割して蓋板を設けることで、着座者一人に一つずつ独立した蓋板付きの収納部を提供することができる。
【0013】
また、請求項3のように、蓋板を開き位置に保持する開蓋保持部材を、左右の前脚間の下方位置に設けられた貫材又はその貫材の後面に突設した蓋受け片で構成することで、蓋板を閉じた状態で収納部を有する椅子であることが外観上判りにくいため、設置した室内に馴染みやすい。
【0014】
また、請求項4のように、蓋板を開閉操作するための開閉操作部を貫通孔状に形成したことにより、蓋板の下面をフラットにすることができるため、使用者が着座した姿勢のまま手探りで蓋板の開閉操作部を探したとしても、突起物への接触等による怪我のおそれが殆どない。
【0015】
また、請求項5のように、蓋板の上面に設けた滑落防止凸部に指掛け部を設けることにより、開き位置にある蓋板の前縁をその指掛け部を使って簡単に持ち上げることができるため、蓋板を閉じる操作がストレス無く行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】前方から見た状態を示す椅子の斜視図である。
【
図2】後方から仰ぎ見た状態を示す椅子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
椅子1は、左右の前脚2,2と左右の後脚3,3で支持される座部4と、後脚3,3の上方に連設支持される背凭れ5と、座部4の下に位置する四角い枠状の座枠6と、座枠6の下向きに開口する開口部7を覆う蓋板8と、左右の前脚2間の下方位置に設けられる角材状の貫材9と、から概略構成される。
【0018】
椅子1の座部4は、複数人(実施形態では4人)が着座可能な長さに設定されており、もちろんそれに合わせて座枠6や貫材9も左右方向に長くなっている。
座枠6は、前脚2,2間に差し渡される前座枠6fと、後脚3,3間に差し渡される後座枠6rと、前脚2と後脚3間に差し渡される左右の横座枠6s,6sで形成され、さらに実施形態では前座枠6fと後座枠6r間に、座枠6の内側を着座可能人数分に分割(実施形態では4分割)するための中座枠6hが三本設けられている。
【0019】
前記蓋板8は、座枠6の開口部7を覆う
図3実線の閉じ位置と、後脚3側を中心に前脚2側を下げて開口部7を開く
図3想像線の開き位置と、の間で回動可能なように適宜な蝶番(図示せず)で後座枠6rに取り付けられている。なお、実施形態の蓋板8は、座枠6の内側が着座可能人数分に分割されていることに対応して着座可能人数分に分割されており、それぞれが独立して前記閉じ位置と開き位置との間で回動しうる。
蓋板8には、上面且つ前縁側に上向きに突設された滑落防止凸片10aが設けられており、開き位置の蓋板8が傾斜していても、被収納物が容易には滑り落ちないようになっている。実施形態では、蓋板8の上面に額縁状の凸枠10が設けられており、その凸枠10の前側の一辺が滑落防止凸片10aを構成する。
【0020】
蓋板8は、自重で開き位置に回動するバランスになっているが、実施形態の椅子1には蓋板8を閉じ位置に保持するための閉蓋保持部材11が設けられている。具体的な閉蓋保持部材11は、前記滑落防止凸片10aの上面中央に設けられた鉄製の金属板11aと、前記前座枠6fの内側面に固着された磁石11bであり、その磁石11bに金属板11aを磁着させることによって蓋板8を閉じ位置に止める。
また、椅子1には蓋板8を開き位置に保持するため開蓋保持部材12も設けられている。具体的な開蓋保持部材12は、前記貫材9の後面に突設した蓋受け片12aであり、その蓋受け片12aに蓋板8の前端を載せて受け支えるようになっている。なお、開蓋保持部材12は、実施形態の蓋板8を前方に延長して貫材9の上面をそのまま利用するようにしてもよい。
【0021】
蓋板8には、前端寄りの中央に貫通孔状の開閉操作部13が形成されている。この開閉操作部13に下側から手を差し込むことで閉じ位置にある蓋板8を下向きに引っ張ることができ、また、開閉操作部13に上側から手を差し込むことで開き位置にある蓋板8を開蓋保持部材12たる蓋受け片12aから浮き上がらせることができる。なお、開閉操作部13を貫通孔状に形成したことで蓋板8の下面をフラットにすることができるため、使用者が着座した姿勢のまま蓋板8の開閉操作部13を手探りで探したとしても怪我をするおそれが殆どない。
【0022】
また、蓋板8には、前記滑落防止凸片10aに凹溝状の指掛け部14が設けられている。もし仮に前記開閉操作部13が被収納物で覆われていたとしても、この指掛け部14に指を掛けることによって開き位置にある蓋板8の前側を簡単に持ち上げることができる。そして、浮き上がった蓋板8の下側に手を入れてそのまま閉じることが容易に行える。
【0023】
本発明の椅子1は上記の構成を有するため、通常時において、それぞれの蓋板8が座枠6の下の開口部7を覆う閉じ位置に保持されている。したがって、外観上は普通の長椅子と変わらない。
この状態で座枠6内の収納部にバッグや靴等の被収納物を入れる場合は、蓋板8の開閉操作部13に下側から手を差し込んで下向きに引張り、閉蓋保持部材11の磁石11bから金属板11aを強制的に引き離す。そうすると、蓋板8は、自重で前側を下げようとするため、それを手で支えてゆっくり下ろす。そして、蓋板8の前端が開蓋保持部材12の蓋受け片12aに当たって止まるとその位置で保持されるため、蓋板8の上面に被収納物を入れる。開き位置にある蓋板8は傾斜しているものの、前縁側の滑落防止凸片10aが滑り止めになるため、被収納物は前方に滑り落ちることなく安定する。
次に、蓋板8を手で閉じ位置まで回動させるのであるが、その際、開閉操作部13に上から指を入れるか、又は開閉操作部13が被収納物で隠れている場合は滑落防止凸片10aの指掛け部14に指を掛けて蓋板8の前側を持ち上げ、浮き上がった蓋板8の下側に手を入れてそのまま閉じ位置まで回動させる。そうすると、閉蓋保持部材11の磁石11bに金属板11aが磁着してそのまま止まる。
その後、上記の要領で蓋板8を開き、座枠6内の被収納物を出して蓋板8を閉じると通常時の状態に戻る。
【0024】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、実施形態では長椅子に着座可能人数分の蓋板8を設けるようにしたが、一人掛けの椅子に一つの蓋板8を設けるようにしてもよい。
また、実施形態では蓋板8の上面に額縁状の凸枠10を設けてその一辺を滑落防止凸片10aにしたが、滑落防止凸片10aを一本の角材で形成するようにしてもよい。
また、実施形態では、閉蓋保持部材11として磁石11bと金属板11aを使用したが、例えば、弾性クリップに矢尻形の作動杆を係脱させる周知のロータリーキャッチ(図示せず)を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 …椅子
2 …前脚
3 …後脚
4 …座部
6 …座枠
7 …開口部
8 …蓋板
9 …貫材
10a …滑落防止凸片
11 …閉蓋保持部材
12 …開蓋保持部材
12a …蓋受け片
13 …開閉操作部
14 …指掛け部