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特開2022-102986巻線機及び巻線機が備えた端末線処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102986
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】巻線機及び巻線機が備えた端末線処理装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20220630BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H02K15/095
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218086
(22)【出願日】2020-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】519231946
【氏名又は名称】森川 渡
(74)【代理人】
【識別番号】100143410
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】森川 渡
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS03
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】インナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機において、コア上部で渡り線を形成する場合に、簡単な構造で汎用性が高く、巻線機内でコア下部で端子に線材を固定する端末線処理を行うことができる巻線機及びその端末線処理装置を提供する。
【解決手段】巻線機Mは、コアCの回動状態を切り替える回動状態切替装置4と、線材Wを保持する線材保持装置2と、線材Wを切断する切断装置5を備え、線材保持装置2またはノズル10により、コアC下部の端子Pに線材Wを固定し、巻線終了後に切断装置5により線材Wを切断することにより、回動部材31の内部で端末線処理を行う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機において、
ノズルを駆動し線材を巻線するためのノズル駆動装置と、
コアを保持するコア保持具と、コアの割り出しを行うコア割出用モータと、を備え、コアを保持し巻線時の割出しを行う巻線割出装置と、
コアの回動状態を切り替える回動状態切替装置と、
極への巻線が終了した線材または巻線を開始する前の線材を挟み込んで保持する線材保持装置と、
線材を切断する切断装置と、
を備え、
前記コア保持具は、
前記コア割出用モータと接続された筒状に形成されており、周面部に前記保持された線材に対し前記切断装置を接近または離間させるための窓部が設けられている回動部材と、
前記回動部材の上端に前記回動部材に対して回動可能に配置された、コアを保持するコア受け部材と、を備え、
前記線材保持装置は、前記回動部材の外部に配置され、線材を保持する線材保持部材を、前記窓部を通じて前記回動部材の内部で操作可能に構成され、
前記切断装置は、前記回動部材の外部に配置され、線材を切断する切断部材を、前記窓部を通じて前記回動部材の内部で操作可能に構成され、
前記回動状態切替装置は、
コアを回動させるコア回動手段と、
コアを前記回動部材を介して前記コア割出用モータにより回動して割り出す第1の状態と、前記コア回動手段によりコアを前記回動部材に対して相対的に回動させる第2の状態と、に切り替える切替手段と、を備え、
コアの端面に設けられた端子に線材を固定する端末線処理を前記回動部材の内部で行うことを特徴とする巻線機。
【請求項2】
前記ノズルまたは前記線材保持部材により、前記端子の周りに線材を周回させて、線材を前記端子に絡げることにより端末線処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の巻線機。
【請求項3】
前記ノズルを駆動し、線材をかしめるために前記端子に設けられたフック部に線材を案内し、線材が案内された前記フック部を前記線材保持装置の線材保持部材によりかしめて線材を前記端子に固定する端末線処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の巻線機。
【請求項4】
前記コア回動手段は、前記コア割出用モータであり、
前記切替手段は、
前記回動部材とともに前記コア受け部材が回動する状態と、前記回動部材が回動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第1の切替手段と、
前記回動部材に接続され、前記第1の切替手段と協働して、前記コア割出用モータの駆動により前記コア受け部材が回動する状態と、前記コア割出用モータが駆動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第2の切替手段と、
を備え、
前記第1の状態で端末線処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機。
【請求項5】
前記コア受け部材には、第1の回動制限部と第2の回動制限部とが形成されており、
前記第1の切替手段は、前記第1の回動制限部に第1の制限部材を挿抜可能な第1の回転制限装置を備え、
前記第2の切替手段は、前記第2の回動制限部に第2の制限部材を挿抜可能な第2の回転制限装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の巻線機。
【請求項6】
前記コア回動手段は、前記コア受け部材を回動させるための回動モータであり、
前記切替手段は、前記回動部材に接続され、前記コア割出用モータの駆動により前記コア受け部材が回動する状態と、前記コア割出用モータが駆動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第3の切替手段であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機。
【請求項7】
前記コア受け部材を回動させないときは、前記コア回動手段を前記コア受け部材から離間させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の巻線機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の巻線機が備えた端末線処理装置であって、前記コア保持具、前記線材保持装置及び前記切断装置を備えたことを特徴とする端末線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にインナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機及びその巻線機が備えた端末線を処理するための端末線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用モータ(電動パワーステアリング用や燃料ポンプ用)や電動工具用モータに使用されるDCブラシレスモータどの外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーローター型モータのコアとして、図5に示すようなコアが採用されている。このようなコアに、巻線を行う巻線機として、線材を案内するノズルを上下に駆動し、コアをその中心を軸とした回転方向に揺動させることにより線材を巻線する巻線機が広く用いられている。
【0003】
このような巻線機では、ある極への巻線に続いて他の極に巻線を行うときに、線材を渡り線係止部に渡り線として掛け渡して、次に線材を巻線を行う極まで移動させる必要がある。近年、コアの用途の多様化に伴い、渡り線と巻線の導出部とをコアの両端面に別々に配置する要請がある。そこで、コアの保持具の下方で渡り線(下渡り線)を掛け渡す方法として、例えば特許文献1、2に記載の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、巻線機は渡り線ガイド部材を備えており、巻線の終了後にノズルとともに渡り線ガイド部材をワークの半径方向に移動させて、渡り線ガイド部材の線材案内部を渡り線用ピンの外側の所定の位置に配置し、ワークを回転させることにより、渡り線ガイド部材を経由して線材を渡り線用ピンに掛け渡す。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、筒状のワーク保持具の外周壁に複数の貫通孔を形成し、この貫通孔を介し外側から下渡り線形成ユニットを出し入れし、線材を掛け渡す。
【0006】
しかし、上記技術はいずれも装置が複雑であり、また汎用性に欠けるものであった。
【0007】
このように、下渡り線の形成は困難を伴うため、渡り線の形成はコア上部で行い、コア下部で端末線処理を行う技術が提案されている。このような技術として、例えば、特許文献3では、ワーク(コア)を保持するワーク保持治具が、ワークを配置する開口端を有する筒状に形成された保持本体部と、複数の線材支持部と、を備えており、ワークに対する線材の巻き付け作業の途中段階において、線材を複数の線材支持部のうちいずれかで支持し、切断することによりスタート線などの線材の引出部を形成する端末線処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-164124号公報
【特許文献2】特許第6694621号公報
【特許文献3】特許第6747732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、コア下部に端子を設け、端子に線材を巻き付けて固定する「絡げ」や端子に線材をかしめて固定する「かしめ」による端末線処理は、巻線終了後にコアを巻線機から取り出した後に手作業で行われており、巻線機内でこのような端末線処理を行うことはできなかった。
【0010】
そこで、本発明は、インナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機において、コア上部で渡り線を形成する場合に、簡単な構造で汎用性が高く、巻線機内でコア下部で端子に線材を固定する端末線処理を行うことができる巻線機及びその端末線処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、
インナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機において、
ノズルを駆動し線材を巻線するためのノズル駆動装置と、
コアを保持するコア保持具と、コアの割り出しを行うコア割出用モータと、を備え、コアを保持し巻線時の割出しを行う巻線割出装置と、
コアの回動状態を切り替える回動状態切替装置と、
極への巻線が終了した線材または巻線を開始する前の線材を挟み込んで保持する線材保持装置と、
線材を切断する切断装置と、
を備え、
前記コア保持具は、
前記コア割出用モータと接続された筒状に形成されており、周面部に前記保持された線材に対し前記切断装置を接近または離間させるための窓部が設けられている回動部材と、
前記回動部材の上端に前記回動部材に対して回動可能に配置された、コアを保持するコア受け部材と、を備え、
前記線材保持装置は、前記回動部材の外部に配置され、線材を保持する線材保持部材を、前記窓部を通じて前記回動部材の内部で操作可能に構成され、
前記切断装置は、前記回動部材の外部に配置され、線材を切断する切断部材を、前記窓部を通じて前記回動部材の内部で操作可能に構成され、
前記回動状態切替装置は、
コアを回動させるコア回動手段と、
コアを前記回動部材を介して前記コア割出用モータにより回動して割り出す第1の状態と、前記コア回動手段によりコアを前記回動部材に対して相対的に回動させる第2の状態と、に切り替える切替手段と、を備え、
コアの端面に設けられた端子に線材を固定する端末線処理を前記回動部材の内部で行う、
という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の巻線機において、
前記ノズルまたは前記線材保持部材により、前記端子の周りに線材を周回させて、線材を前記端子に絡げることにより端末線処理を行う、
という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の巻線機において、
前記ノズルを駆動し、線材をかしめるために前記端子に設けられたフック部に線材を案内し、線材が案内された前記フック部を前記線材保持装置の線材保持部材によりかしめて線材を前記端子に固定する端末線処理を行う、
という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機
において、
前記コア回動手段は、前記コア割出用モータであり、
前記切替手段は、
前記回動部材とともに前記コア受け部材が回動する状態と、前記回動部材が回動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第1の切替手段と、
前記回動部材に接続され、前記第1の切替手段と協働して、前記コア割出用モータの駆動により前記コア受け部材が回動する状態と、前記コア割出用モータが駆動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第2の切替手段と、
を備え、
前記第1の状態で端末線処理を行うという技術的手段を用いる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の巻線機において、
前記コア受け部材には、第1の回動制限部と第2の回動制限部とが形成されており、
前記第1の切替手段は、前記第1の回動制限部に第1の制限部材を挿抜可能な第1の回転制限装置を備え、
前記第2の切替手段は、前記第2の回動制限部に第2の制限部材を挿抜可能な第2の回転制限装置を備えている、
という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機
において、
前記コア回動手段は、前記コア受け部材を回動させるための回動モータであり、
前記切替手段は、前記回動部材に接続され、前記コア割出用モータの駆動により前記コア受け部材が回動する状態と、前記コア割出用モータが駆動しても前記コア受け部材が回動できない状態と、に切り替える第3の切替手段である、
という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の巻線機において、
前記コア受け部材を回動させないときは、前記コア回動手段を前記コア受け部材から離間させる移動手段を備えた、
という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の巻線機が備えた端末線処理装置であって、前記コア保持具、前記線材保持装置及び前記切断装置を備えた、
という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の巻線機及び端末線処理装置によれば、回動状態切替装置により、コアの回動状態を、第1の状態と第2の状態とに切り替えることができるので、回動部材の外部に設けた線材保持装置及び切断装置により、簡単な構造で汎用性が高く、コアを巻線機から取り外すことなく、回動部材の窓部を介して巻線機内で端末線処理を行うことができる。また、端子に対する端末線処理が困難な太線(例えば、φ0.3~φ0.3~1.5mm)を巻線するときにも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る巻線機の構成を示す説明図であり、巻線機を上方から見た上面図である。
図2】巻線機を図1右方向から見た側面図である。
図3】巻線機を図1下方向から見た正面図である。
図4】端末線処理装置の構成を示す斜視図である。図4(a)は正面側、図4(b)は裏面側から見た斜視図である。
図5】インナーローター型コアの一例を示す斜視図である。
図6】第1実施形態の巻線機による巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図6(a)は一部断面図、図6(b)は下方から見た下面図、図6(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図7】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図7(a)は一部断面図、図7(b)は下方から見た下面図、図7(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図8】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図8(a)は一部断面図、図8(b)は下方から見た下面図、図8(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図9】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図9(a)は一部断面図、図9(b)は下方から見た下面図、図9(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図10】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図10(a)は一部断面図、図10(b)は下方から見た下面図、図10(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図11】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図11(a)は一部断面図、図11(b)は下方から見た下面図、図11(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図12】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図12(a)は一部断面図、図12(b)は下方から見た下面図、図12(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図13】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図13(a)は一部断面図、図13(b)は下方から見た下面図、図13(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図14】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図14(a)は一部断面図、図14(b)は下方から見た下面図、図14(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図15】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図15(a)は一部断面図、図15(b)は下方から見た下面図、図15(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図16】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図16(a)は一部断面図であり、図16(b)、(c)は線材保持装置及び切断装置により端末線処理を行う工程を示す説明図である。
図17】巻線工程及び端末線処理工程における端末線処理装置の状態を示す斜視図である。図17(a)は図4(a)の斜視図、図17(b)は図4(b)の斜視図にそれぞれ対応する。
図18】巻線工程及び端末線処理工程における端末線処理装置の状態を示す斜視図である。図18(a)は図4(a)の斜視図、図18(b)は図4(b)の斜視図にそれぞれ対応する。
図19】巻線工程及び端末線処理工程における端末線処理装置の状態を示す斜視図である。図19(a)は図4(a)の斜視図、図19(b)は図4(b)の斜視図にそれぞれ対応する。
図20】巻線工程及び端末線処理工程における端末線処理装置の状態を示す斜視図である。図20(a)は図4(a)の斜視図、図20(b)は図4(b)の斜視図にそれぞれ対応する。
図21】回動状態切替装置の第1の状態を示す側面図である。
図22】回動状態切替装置の第2の状態を示す側面図である。
図23】第2実施形態の巻線機による巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図23(a)は一部断面図、図23(b)は下方から見た下面図、図23(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図24】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図24(a)は一部断面図、図24(b)は下方から見た下面図、図24(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図25】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図25(a)は一部断面図、図25(b)は下方から見た下面図、図25(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図26】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図26(a)は一部断面図、図26(b)は下方から見た下面図、図26(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図27】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図27(a)上図は一部断面図、左下図は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図であり、図27(b)、(c)は線材保持装置により線材の方向を変更する工程を示す説明図である。
図28】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図28(a)は一部断面図、図28(b)は下方から見た下面図、図28(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図29】巻線工程及び端末線処理工程を示す説明図である。図29(a)は一部断面図、図29(b)は下方から見た下面図、図29(c)は図中左方向から見た極、線材保持装置及び切断装置の状態を示す一部断面図である。
図30】その他の実施形態に係る巻線機での巻線工程及び端末線処理工程における巻線機の状態を示す側面図である。
図31】その他の実施形態に係る巻線機での巻線工程及び端末線処理工程における巻線機の状態を示す側面図である。
図32】その他の実施形態に係る巻線機の変更例を示す側面図である。
図33】その他の実施形態に係る巻線機の変更例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る巻線機について、インナーローター型モータのコアの極に対し巻線を行う巻線機を例に、図1-4を参照して説明する。ここで、コアに巻線を行う線材は、端末線処理として絡げを行うことが困難な太線(例えば、φ0.3~1.5mm)とする。
【0022】
巻線機Mは、インナーローター型モータのコアCの極aに対し、線材Wを巻線するための巻線機である。
【0023】
図1-4に示すように、巻線機Mは、線材Wを巻線するためのノズル駆動装置1と、極に対して巻線を終了した線材を保持する線材保持装置2と、コアを保持し巻線時の割出しを行う巻線割出装置3と、コアの回動状態を切り替える回動状態切替装置4と、線材保持装置2により保持された線材を切断する切断装置5と、各装置の動作を制御する図示しない制御装置と、を備えている。
【0024】
ノズル駆動装置1は、線材Wを案内するためのノズル10、ノズルを保持するノズル保持具11、ノズル前後移動装置12、ノズル左右移動装置13、ノズル上下移動装置14、ノズル回動ユニット15を備えている。
【0025】
ノズル前後移動装置12は、台座Dに載置されており、ノズル前後移動用モータ12aと、ノズル前後移動用モータ12aにより駆動されるノズル前後移動用ボールねじ12bと、ノズル前後移動用ボールねじ12bに接続され前後に水平移動される前後リニアガイド12cと、を備えている。ここで、「前後方向」とは、図中X方向のことをいう。
【0026】
ノズル左右移動装置13は、前後リニアガイド12cに取り付けられており、ノズル左右移動用モータ13aと、ノズル左右移動用モータ13aにより駆動されるノズル左右移動用ボールねじ13bと、ノズル左右移動用ボールねじ13bに接続され左右に水平移動される左右リニアガイド13cと、を備えている。ここで、「左右方向」とは、図中Y方向のことをいう。
【0027】
ノズル左右移動装置13は、ノズル前後移動装置12により前後に水平移動させることができる。
【0028】
ノズル上下移動装置14は、左右リニアガイド13cに取り付けられており、ノズル上下移動用モータ14aと、ノズル上下移動用モータ14aにより駆動されるノズル上下移動用タイミングベルト14bと、を備えている。ここで、「上下方向」とは、図中Z方向のことをいう。
【0029】
ノズル上下移動装置14は、ノズル左右移動装置13により左右に水平移動させることができる。
【0030】
ノズル回動ユニット15は、回動ユニット本体15aと、回動ユニット本体15aに取り付けられた回動手段15bと、を備えている。回動手段15bにはノズル保持具11が取り付けられており、ノズル回動ユニット15によりノズル保持具11を水平な回転中心軸を中心に回動させて姿勢を変更することができる。
【0031】
ノズル回動ユニット15は、回動ユニット本体15aにおいて、ノズル上下移動装置14のノズル上下リニアガイド14cに取り付けられており、ノズル上下移動用タイミングベルト14bを介してノズル上下移動装置14により上下方向に移動させることができる。
【0032】
ノズル前後移動装置12及びノズル左右移動装置13により、ノズル回動ユニット15を水平方向(X方向及びY方向)に移動させることができる。ノズル上下移動装置14により、ノズル回動ユニット15を上下方向(Z方向)に移動させることができる。そして、ノズル回動ユニット15により、ノズル保持具11を介してノズル10を回動させることができる。更に、巻線割出装置3により、コアCを、回転中心軸Aを中心に回動、または揺動(R方向)させることができる。このように、ノズル前後移動装置12、ノズル左右移動装置13、ノズル上下移動装置14、ノズル回動ユニット15及び巻線割出装置3が協働することにより、ノズル10を、台座Dに対して水平方向、上下方向、水平な回転中心軸に対する回転方向の3方向を組み合わせて移動させることができ、更に、コアCを回転中心軸Aを中心に回動、または揺動(R方向)させて、ノズル10との相対的な位置関係を変えることができる。
【0033】
図4に示すように、線材保持装置2は、線材保持部材21と線材保持部材21の駆動装置22と、を備えている。
【0034】
線材保持装置2は、切断装置5に隣接し、線材保持部材21を回動部材31の窓部31bから挿抜可能な位置に配置されている。
【0035】
線材保持部材21は、棒状部材21aの先端に開閉制御が可能なクランプ21bを備えて構成されている。線材保持部材21は、切断部材51の下方に配置されている。
【0036】
駆動装置22は、線材保持部材21を棒状部材21aの軸線方向とそれに垂直な計3軸方向、または加えて周方向、に駆動可能な駆動機構を備えている。
【0037】
巻線割出装置3は、コア保持具30と、コア割出用モータ33と、を備えている。
【0038】
コア保持具30は、回動部材31と、回動部材31の上端に配置されたコア受け部材32と、を備えている。
【0039】
回動部材31は、コア割出用モータ33と回動可能に接続された筒状部31aを備えており、筒状部31aの周面部には周方向に沿って開口する窓部31bが形成されている。筒状部31aの中心軸はコア割出用モータ33の回転中心軸Aと一致している。
【0040】
窓部31bは、線材保持部材21及び切断部材51を挿抜可能であるとともに、この窓部31bを通じてコアCの端末線処理状態が視認可能である。
【0041】
コア受け部材32は、コアCを保持するコア受け部32aと、コア受け部32aとベアリング34(図21)を介して回動部材31に接続され、コアCが回動部材31とともに回動するか否かを切り替える切替部材32bと、を備えている。
【0042】
コア受け部32aは、コアCをコアCの回動中心が回転中心軸Aとが一致した位置に保持する。
【0043】
切替部材32bは上面が円板状に形成されており、回動部材31より径が大きく、回動部材31の外方に張り出している。
【0044】
切替部材32bの外周には、等間隔で溝状に形成された第1回動制限部32cが形成されている。本実施形態では、第1回動制限部32cは極aの数に対応して40°おきに9か所形成されている。
【0045】
切替部材32bには、同心円状に配置された貫通孔である第2回動制限部32dが形成されている。第2回動制限部32dは、第2回転制限装置42のピン42aを挿抜可能な位置に形成されている。本実施形態では、窓部31bの開口位置を極aの位置に対応させるため、極aの数に対応して40°おきに9か所形成されている。また、第2回動制限部32dを30°おきに12か所形成すると、3相に巻線を行う場合で極aの数が6、9、12のコアCに対応することができ、汎用性を高くすることができる。
【0046】
コア割出用モータ33は、回動部材31と接続されており、コア受け部材32を回動部材31を介して鉛直方向の回転中心軸Aを中心に水平方向に回動、または回転往復運動(揺動)させることができる(R方向)。
【0047】
回動状態切替装置4は、第1回転制限装置41と、第2回転制限装置42と、を備えている。
【0048】
第1回転制限装置41は、ピン41aと、ピン41aを水平方向に前進及び後退させる駆動手段41bと、を備えている。第1回転制限装置41は、台座Dから延伸された取付部材に固定され、第1回動制限部32cにピン41aを挿抜可能な位置に配置されている。第1回動制限部32cにピン41aを挿抜することにより、回動部材31とともにコア受け部材32が回動する状態と、回動部材31が回動してもコア受け部材32が回動できない状態と、に切り替えることができる。第1回転制限装置41と第1回動制限部32cとが、第1の切替手段を構成する。
【0049】
第2回転制限装置42は、ピン42aと、ピン42aを垂直方向に前進及び後退させる駆動手段42bと、を備えている。第2回転制限装置42は、回動部材31の周面部に固定され、第2回動制限部32dにピン42aを挿抜可能な位置に配置されている。第2回転制限装置42は、第1回転制限装置41と協働して、第2回動制限部32dにピン42aを挿抜することにより、コア割出用モータ33の駆動によりコア受け部材32が回動する状態と、コア割出用モータ33が駆動してもコア受け部材32が回動できない状態と、に切り替えることができる。第2回転制限装置42と第2回動制限部32dとが、第2の切替手段を構成する。
【0050】
切断装置5は、極への巻線が終了した線材Wを切断するための装置であり、切断部材51と駆動装置52とを備えている。
【0051】
本実施形態では、切断部材51は、棒状部材の先端に開閉制御が可能な鋏を切断部51aとして備えたエアーニッパからなる。ここで、切断部材51は、線材Wを切断できれば鋏状に限定されるものではなく、例えば、棒状部材の先端にカッターを備えた構成などとすることもできる。
【0052】
駆動装置52は、切断部材51を棒状部材の軸線方向とそれに垂直な計3軸方向、または加えて周方向、に駆動可能な駆動機構を備えている。
【0053】
切断装置5は、巻線割出装置3に隣接し、切断部51aを回動部材31の窓部31bから挿抜可能な位置に配置されている。これにより、線材保持装置2により保持された線材Wに対し、切断部材51を接近または離間させることができる。
【0054】
以下に、巻線機Mを用いてインナーローター型モータのコアCの各極aに線材Wを巻線する方法について図5-22を参照して説明する。ここでは、3相モータで、U相、V相、W相の3相の巻線を行う場合を例に説明する。なお、図17-20において、簡単のため、ノズル駆動装置1の図示を省略した。
【0055】
図5に巻線が終了したコアCの形状を示す。コアCは、インナーローター型コアであり、ヨークYから半径方向内側に向かって巻線を行うための極a1-a9が所定の間隔で設けられている。隣接する極の間にはスロットSLが形成されている。コアCの上端面には、渡り線を係止するための渡り線係止部K(K1-K9)が上方へ突出して設けられており、下端面には、端末線処理として線材Wを固定するための端子P(P1-P6)が下方へ突出して設けられている。ここで、端末線処理としては、端子Pに線材Wを巻き付ける「絡げ」と、端子Pの一部に線材Wをかしめて固定する「かしめ」がある。端子Pには、線材Wを絡げやするための絡げ部Pk及び線材Wを案内してかしめるためのフック部Pfが形成されている。第1実施形態では、端末線処理として絡げを行う場合について説明する。3相の巻線を行うときには、U相、V相、W相の3相のスタート線及びフィニッシュ線にそれぞれ対応するために、3組6つの端子P1-P6が、極a1、a2、a3、a7、a8、a9に対応してその下方にそれぞれ設けられている。巻線時には、コアCはコア受け部材32に固定される。
【0056】
図6は、U相を構成する3つの極a1,a4,a7の巻線が終了した状態を示す。渡り線係止部Kには、渡り線WKが張り渡されている。第7極a7の巻線が終了したノズル10は、先端が端子Pに隣接した状態で配置されている。
【0057】
切断装置50の切断部51a及び線材保持部材21のクランプ21bは、窓部31bの外方に位置している。ここで、切断部51a及びクランプ21bは、ノズル10や回動部材31と干渉しない位置まで離間させておいてもよい。
【0058】
本実施形態では、クランプ21bの先端部は、一方が鉤状に張り出し、他方が張り出した部分に対応した凹部を備えている。これにより、線材Wを保持したときに、線材Wにクランプによる保持力を超える張力が生じても鉤状部に係止されるので、線材Wがクランプ21bから外れることを防ぐことができる。
【0059】
このとき、図17及び図21に示すように、ピン41aは第1回動制限部32cに挿入されておらず、ピン42aは第2回動制限部32dに挿入されている。これにより、コア受け部材32は回動部材31に対して回動不能な状態となるとともに、コア受け部材32の回動は制限されない状態となり、コア割出用モータ33によりコアCの割り出しが可能な状態となる。これを「第1の状態」という。窓部31bは、切断装置5側で開口しており、切断装置5を基準として、上方から見て反時計回り方向に40°、時計回り方向に160°開口している。窓部31bには、線材保持装置2が面しており、外部から視認可能である。
【0060】
続いて、図7に示すように、ノズル10が第7極a7の下方に設けられた端子P4の下方に配置されるように、第1の状態でコアCを20°回動させる。そして、線材Wを保持させた状態でクランプ21bを端子P周りを線材Wが周回するように駆動し、フック部Pfに線材Wを通すとともに線材Wを端子Pに絡げる。その後、ノズル10を切断部51a及びクランプ21bより下方となる位置に移動させる。
【0061】
続いて、図8に示すように、駆動装置52及び駆動装置22により切断装置5の切断部51a及び線材保持部材21のクランプ21bが線材Wを挟み込める位置までそれぞれ移動させる。線材保持部材21のクランプ21bにより線材Wを挟み込み保持した後に、切断装置50の切断部51aによりクランプ21bと端子P4との間で線材Wを切断する。線材Wの切断後に、切断部51aを後退させる。切断され端子P4側に残った線材WがU相のフィニッシュ線(WF線)となり、ノズル10側でクランプ21bにより端部が保持されている線材WがV相のスタート線(WS線)となる。
【0062】
続いて、図9に示すように、切断部51aを後退させてから、線材保持装置2のクランプ21bにより線材Wを保持した状態で、図18に示すようにコア割出用モータ33により回動部材31をR1方向に所定の角度(本実施形態では160°)だけ回動させ、V相の第1極となる第2極a2に対応する端子P2の下方にノズル10が位置するようにコアCを割り出す。ここで、図17及び図21で示したように、コア受け部材32は回動部材31に対して回動不能であるので、コア受け部材32は回動部材31と一体的に中心軸Aを中心に回動されコアCが割り出される。
【0063】
続いて、クランプ21bを後退させてノズル10から離間させ、水平方向で端子P2より外方に、ノズル10を高さ方向でクランプ21bと端子Pの間に位置させる。
【0064】
続いて、図10に示すように、ノズル10を端子Pの絡げ部Pkより上に移動させた後に、クランプ21bを端子P周りを周回するように駆動し、線材Wを端子Pに絡げる端末線処理を行う。ここで、絡げた線材Wは、コアCを取り出した後にヒュージングにより端子Pに固定するため、巻線による張力に耐えうる保持力があればよい。このため、太線(例えば、φ0.3~1.5mm)を巻線するときにも、端末線処理として絡げを採用することができる。
【0065】
続いて、図11に示すように、切断部51aを線材Wに向かって前進させて、線材Wを切断する。クランプ21bに保持された切断後の線材Wは不要な線材となり、クランプ21bを後退させた後に捨て線として処理する。
【0066】
続いて、図19及び図22に示すように、第1回転制限装置41を駆動してピン41aを第1回動制限部32cに挿入し、第2回転制限装置42を駆動してピン42aを第2回動制限部32dから抜く。これにより、コア割出用モータ33が駆動しても、回動部材31のみ回動し、コア受け部材32が回動できない状態となる。これを「第2の状態」という。
【0067】
回動状態切替装置4により第2の状態に切り替えた後に、図20に示すように、コア割出用モータ33により回動部材31をR2方向に所定の角度(本実施形態では160°)回動させる。これにより、回動部材31のみ回動し、窓部31bを元の位置に戻すことができる。
【0068】
続いて、第2回転制限装置42を駆動してピン42aを第2回動制限部32dに挿入した後に、第1回転制限装置41を駆動してピン41aを第1回動制限部32cから抜く。これにより、第1の状態となり、第2極a2に線材Wを巻線する準備が完了する。また、先にピン42aを第2回動制限部32dに挿入することにより、コア受け部材32が第1回転制限装置41及び第2回転制限装置42ともに制限を受けていない状態を避けることができる。
【0069】
その後、図12に示すように、ノズル10を上昇させ、V相の第1極となる第2極a2への巻線を行う。まず、ノズル駆動装置1により、ノズル10の先端がコアCの半径方向の外方に向かって突出するように、第1極a1と第2極a2との間に形成されるスロットSLの上方に配置する。
【0070】
続いて、ノズル10を駆動して、ノズル上下移動装置14によるスロットSL内の往復上下動(Z方向)と、巻線割出装置3による回転中心軸Aを中心とした揺動(R方向)と、を組み合わせて、第2極a2に対して相対的に周回移動させる。そして、線材Wを第2極a2に1周巻き付ける毎にノズル前後移動装置12によりコアCの径方向にノズル10を所定ピッチ(例えば線材Wの径)で移動させる。これにより、第2極a2に線材Wを巻線する。
【0071】
V相第1極である第2極a2の巻線が終了すると、次に巻線する極、本実施形態ではV相第2極である第5極a5へ渡り線を形成し、割り出しを行う。
【0072】
渡り線の形成は、コアCの上方で、ノズル駆動装置1によりノズル10の先端が下方を向くように姿勢変換を行い、ノズル10を駆動して渡り線係止部Kに線材Wを係止する。回動状態切替装置4により第1の状態に切り替えて、次に巻線する極、本実施形態ではV相第2極である第5極a5へ向かって、コアCの渡り線係止部Kに線材Wを掛け渡すことで渡り線を形成する。
【0073】
続いて、回動状態切替装置4により第2の状態に切り替えて、図20に示すように、コア割出用モータ33により回動部材31をR2方向に回動させる。このとき、線材Wにたるみが生じないように、ノズル10を上昇させながら回動させている。これにより、回動部材31のみ回動し、窓部31bを元の位置に戻すことができる。
【0074】
続いて、図13に示すように、第5極a5、第8極a8の巻線を行いV相を形成し、続いて第3極a3、第6極a6、第9極a9への巻線を行いW相を形成する。ここで、各相の巻線が終了すると、第2の状態に変更し、窓部31bを元の位置に戻している。続いて、図7同様に線材Wの端子Pへの絡げを行う。
【0075】
続いて、図14に示すように、切断部51aを前進させて、端子P6直下で線材Wを切断する。上記の工程により、インナーローター型モータのコアCの極aに対する巻線が完了し、図5に示すようなコアCが形成される。
【0076】
続いて、図15に示すように、切断部材51を後退させる。ノズル10側に残った線材Wは、太線で剛性が高いので上方を向いたままである。ノズル10をコアCに衝突しない位置まで移動させた後に上方に移動させて、巻線が完了したコアCを取り出し、新しいコアCをコア受け部材32のコア受け部32aに配置する。
【0077】
ノズル10側の残った線材Wが新しいコアCのU相のスタート線(WS線)となる。新しいコアCのスタート線の保持は、図16に示す以下の工程で行う。
【0078】
まず、図16(a)に示すように、線材保持部材21のクランプ21bを前進させてノズル10の先端から上方に伸びる線材Wを挟み込んで保持する。
【0079】
続いて、図16(b)に示すように、図10同様に、ノズル10を端子Pの絡げ部Pkより上に移動させた後に、クランプ21bを端子P周りを周回するように駆動し、線材Wを端子Pに絡げる端末線処理を行う。
【0080】
続いて、図16(c)に示すように、切断部51aを前進させて、端子P1直下で線材Wを切断する。これによりU相のスタート線の端末線処理が完了する。
【0081】
本実施形態では、コア割出用モータ33がコア回動手段、第1回転制限装置41及び第1回動制限部32cが第1の制限手段(第1の切替手段)、第2回転制限装置42及び第2回動制限部32dが第2の制限手段(第2の切替手段)にそれぞれ相当する。
【0082】
コア保持具30、前記線材保持装置2及び切断装置5は、既存の巻線機に取り付け可能な端末線処理装置として用いることができる。
【0083】
(変更例)
図7ではノズル10により絡げによる端末線処理を行ったが、図10に示すように線材保持装置2を用いて行うこともできる。
【0084】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の巻線機及び端末線処理装置によれば、回動状態切替装置4により、コアCの回動状態を、第1の状態と第2の状態とに切り替えることができるので、回動部材31の外部に設けた線材保持装置2及び切断装置5により、簡単な構造で汎用性が高く、コアを巻線機から取り外すことなく、回動部材31の窓部31bを介して巻線機M内で端末線処理を行うことができる。また、端子に対する端末線処理が困難な太線(例えば、φ0.3~1.5mm)を巻線するときにも好適に用いることができる。
【0085】
(第2実施形態)
本発明の巻線機の第2実施形態である端末線処理として、線材Wを端子Pにかしめて固定する構成について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を用いるとともに、説明を省略する。
【0086】
第2実施形態の巻線機において、線材保持装置7は、線材Wを挟み込む構成が第1実施形態の線材保持装置2と異なっている。図23に示すように、線材保持装置7は、線材保持部材71と線材保持部材71を軸線方向とそれに垂直な計3軸方向、または加えて周方向、に駆動可能な駆動手段を備えている。
【0087】
線材保持装置7は、切断装置5に隣接し、線材保持部材71は、切断部材51の上方で回動部材31の窓部31bから挿抜可能な位置に配置されている。
【0088】
線材保持部材71は、略棒状に形成された第1保持部材72及び第2保持部材73を備えている。
【0089】
第1保持部材72は、先端に鉤状に形成された押圧部72aを備えている。
【0090】
第1保持部材72は、第2保持部材73に沿って水平動が可能に形成されており、第1保持部材72の押圧部72aが先端部73aに対向している。第1保持部材72は、例えばシリンダなど直線駆動する駆動手段により水平方向に駆動することができる。
【0091】
これにより、第1保持部材72の押圧部72aを第2保持部材73の先端部73aに対して接近または離間させることができ、第2保持部材73の先端部73aと第1保持部材72の押圧部72aとの間にあるものを挟み込んで押圧することができる。このように、本実施形態における線材保持部材71は、線材Wの保持に加え、端子Pへのかしめを行うことができる。
【0092】
次に、巻線工程及び線材Wをかしめる工程について説明する。図23は、U相を構成する3つの極a1,a4,a7の巻線が終了した状態を示す。渡り線係止部Kには、渡り線WKが張り渡されている。
【0093】
切断装置50の切断部51a及び線材保持部材71の先端部は、窓部31bの外方に位置している。ここで、切断部51a及び線材保持部材71の先端部は、ノズル10や回動部材31と干渉しない位置まで離間させておいてもよい。
【0094】
巻線が終了した後、ノズル10が第7極a7の下方に設けられた端子P4の下方に配置されるように、第1の状態でコアCを20°回動させる。第7極a7の巻線が終了したノズル10は、巻線の終了後に端子Pのフック部Pfに線材Wを案内するように駆動される。その後、ノズル10を線材保持部材71及び切断部材51より下方となる位置に移動させる。
【0095】
続いて、図24に示すように、端子Pのフック部Pf及び線材Wが第1保持部材72の押圧部72aと第2保持部材73の先端部73aとの間に位置するように線材保持部材71を移動させる。その後、図示しない駆動手段により第1保持部材72の押圧部72aを第2保持部材73に向かって駆動し、フック部Pf及び線材Wを挟み込んで押圧することによりかしめる。
【0096】
続いて、図25に示すように、第2保持部材73による押圧を開放し、線材保持部材71を後退させる。続いて、ノズル10を下方に移動させた後に切断部51aを前進させて、端子P直下で線材Wを切断する。端子P4側の線材WがU相のフィニッシュ線(WF線)となり、ノズル10先端から露出している線材WがV相のスタート線(WS線)となる。
【0097】
続いて、図26に示すように、ノズル10の上方に端子P2を割り出すとともに切断部材51を後退させる。ノズル10側に残った線材Wは、太線で剛性が高いので上方を向いたままである。
【0098】
続いて、図27(a)に示すように、ノズル10先端から上方に伸びる線材Wの側方に第1保持部材72の押圧部72aを配置する。続いて、図27(b)に示すように、線材保持部材71を水平方向に移動させて、押圧部72aにより線材Wを押し倒す。このとき、線材Wは押圧部72aの下面により案内されている。そして、図27(c)に示すように、線材Wに接触したまま線材保持部材71をノズル10先端の下方に移動させる。これにより、線材Wをノズル10先端から下方に伸びる状態に変更することができる。
【0099】
続いて、図28に示すように、線材保持部材71及び切断部材51を後退させた後に、ノズル10を駆動して、線材Wを端子Pのフック部Pfに差し込む。
【0100】
続いて、図29に示すように、図24と同様に線材保持部材71によりフック部Pf及び線材Wを挟み込んで押圧することによりかしめる。
【0101】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の巻線機及び端末線処理装置によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。更に、線材Wをかしめにより端子Pに固定する端末線処理を行うことができるので、より強固に線材Wを端子Pに固定することができる。
【0102】
(その他の実施形態)
巻線機のその他の実施形態について、図30-29を参照して説明する。なお、第1実施形態の巻線機Mと同じ構成については、同じ符号を用いるとともに、説明を省略する。
【0103】
本実施形態の巻線機M2は、コア受け部材35を回動させるための回動モータ61と、コア割出用モータ33の駆動によりコア受け部材35が回動する状態と、コア割出用モータ33が駆動してもコア受け部材35が回動できない状態と、に切り替える切替手段を備えている。
【0104】
コア受け部材35は、コアCを保持するコア受け部35aと、コア受け部35aとベアリング34を介して回動部材31に接続され、コアCが回動部材31とともに回動するか否かを切り替える切替部材35bと、を備えている。
【0105】
切替部材35bは上面が円板状に形成されており、回動部材31より径が大きく、回動部材31の外方に張り出している。切替部材35bの外周には、ギヤの歯35cが形成されている。
【0106】
切替部材35bには、同心円状に配置された貫通孔である回動制限部35dが形成されている。回動制限部35dは、第2回転制限装置42のピン42aを挿抜可能な位置に形成されている。
【0107】
回転モータ61は、モータ本体61a及びギヤ61bからなり、モータ移動シリンダ62は、回転モータ61を切替部材35bに近接または離間させる移動手段として機能する。
【0108】
ギヤ61bは、切替部材35bのギヤの歯35cと噛み合う高さに配置されており、モータ移動シリンダ62により、ギヤ61bと切替部材35bのギヤの歯35cとが噛み合った状態と、噛み合っていない状態と、に切り替えることができる。
【0109】
本実施形態において第1の状態は、図30に示すように、ピン42aは回動制限部35dに挿入されている。これにより、コア受け部材35は回動部材31に対して回動不能な状態となり、コア割出用モータ33により回動部材31とコア受け部材35とを一体的に回動可能となるので、コアCの割り出しが可能な状態となる。ここで、回転モータ61は回動部材31に配置されていないので、コア割出用モータ33による回動部材31の回動の抵抗となることがない。
【0110】
本実施形態において第2の状態は、図31に示すように、ピン42aは回動制限部35dから抜かれている。また、モータ移動シリンダ62により回転モータ61を、モータギヤ61bと切替部材35bのギヤの歯35cとが噛み合った状態となっている。コア割出用モータ33の駆動を停止し回転モータ61を駆動すると、回動部材31が停止した状態でコア受け部材35のみを回動させることができる。これにより、窓部31bの位置は不変で、コアCだけを回動させることができる。
【0111】
本実施形態では、回転モータ61がコア回動手段、第2回転制限装置42及び第2回動制限部35dが第3の制限手段に相当する。
【0112】
第1実施形態では、モータを1台、切替手段を2つ用いたのに対し、本実施形態では、モータを2台、切替手段を1つ用いて同様の効果を奏することができる。
【0113】
(変更例)
巻線を行った後、図30に示すように、ピン42aが回動制限部35dに挿入されている状態のままコア割出用モータ33により回動部材31とコア受け部材35とを一体的に回動させることもできる。回動部材31を元の位置に戻すときには、図31に示すように、ピン42aが回動制限部35dから抜かれ、モータ移動シリンダ62により回転モータ61を、モータギヤ61bと切替部材35bのギヤの歯35cとが噛み合った状態とする。そして、モータ61の保持トルクによりコア受け部材32が回動できないようにし、コア割出用モータ33により回動部材31を先の回動方向と反対方向に回動させる。これにより、回動部材31のみ回動し、回動部材31を元の位置に戻すことができる。
【0114】
この変更例では、コア割出用モータ33がコア回動手段、第2回転制限装置42、第2回動制限部35d及び回転モータ61が第3の制限手段に相当する。
【0115】
モータ移動シリンダ62を備えていない構成を採用することもできる。図32に示すように、モータギヤ61bと切替部材35bのギヤの歯35cとが噛み合った状態となるように、回転モータ61を回動部材31に配置してもよい。更に、第2回転制限装置42でコア受け部材35を回動不能にしなくてもモータ61の保持トルクによりコア受け部材が32が回動しないなら、図33に示すように第2回転制限装置42も備えていない構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…ノズル駆動装置
10…ノズル
11…ノズル保持具
12…ノズル前後移動装置
13…ノズル左右移動装置
14…ノズル上下移動装置
15…ノズル回動ユニット
2…線材保持装置
21…線材保持部材
21a…棒状部材
21b…クランプ
22…駆動装置
3…巻線割出装置
30…コア保持具
31…回動部材
31a…筒状部
31b…窓部
31c…底部
32…コア受け部材
32a…コア受け部
32b…切替部材
32c…第1回動制限部
32d…第2回動制限部
33…コア割出用モータ
34…ベアリング
35…コア受け部材
35a…コア受け部
35b…切替部材
35c…歯
35d…回動制限部
4…回動状態切替装置
41…第1回転制限装置
41a…ピン
41b…駆動手段
42…第2回転制限装置
42a…ピン
42b…駆動手段
5…切断装置
51…切断部材
51a…切断部
52…駆動装置
61…回転モータ
61a…モータ本体
61b…モータギヤ
62…モータ移動シリンダ
7…線材保持装置
71…線材保持部材
72…保持部材
72a…押圧部
73…保持部材
73a…先端部
C…コア
a…極
D…台座
K…渡り線係止部
M…巻線機
P…端子
Pk…絡げ部
Pf…フック部
W…線材
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