(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103010
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】風力発電機
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
F03D3/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066230
(22)【出願日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2020218087
(32)【優先日】2020-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599072530
【氏名又は名称】株式会社山利製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠平
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA13
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB73
3H178CC01
3H178DD12Z
(57)【要約】
【課題】微風でもスムーズに回転し、構成が簡易で安価に製造しうる風力発電機を提供する。
【解決手段】支持台11と、その支持台11によって回転自在に支持される風車12と、その風車12の回転によって発電する発電機13とからなる風力発電機10。前記風車12は、円板状ないしリング状の基材14と、その基材14の周縁部に固定された複数の風受け15とからなる。前記風受け15は、扇形のシート材15aを円錐状に湾曲し、周方向の両端部15b、15cで前記基材14を上下から挟んで固定したものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
その支持台によって垂直軸回りに回転自在に支持される風車と、
その風車の回転によって発電する発電機とからなり、
前記風車が、円板状ないしリング状の基材と、その基材の周縁部に固定された複数の風受けとからなり、
前記風受けが、略円錐状を呈する風力発電機。
【請求項2】
前記風受けが、可撓性を有する扇形のシート材を円錐状に丸め、周方向の両端部で前記基材を挟んで固定したものである請求項1記載の風力発電機。
【請求項3】
前記風受けが柔軟性を有する請求項1または2記載の風力発電機。
【請求項4】
前記基材と平行に支持基材が設けられ、基材と支持基材とが間隔維持材によって共回りするように連結されている請求項1~3のいずれかに記載の風力発電機。
【請求項5】
前記基材または支持基材が自転車のホイールからなる、請求項4記載の風力発電機。
【請求項6】
前記発電機がハブダイナモからなり、そのハブダイナモの支持軸が前記支持台に固定され、ハブダイナモの回転部に前記基材が取り付けられている請求項1~5のいずれかに記載の風力発電機。
【請求項7】
前記風車と平行に、かつ、共回りするように動力伝達ホイールが設けられ、前記発電機がリムダイナモからなり、リムダイナモの回転部が前記動力伝達ホイールに押し付けられている請求項1~5のいずれかに記載の風力発電機。
【請求項8】
前記風車が上下に複数個設けられ、下の風車の風受けが上の風車の風受けに対し、平面視で半ピッチずれている請求項1~7のいずれかに記載の風力発電機。
【請求項9】
前記基材に、風受けを内面側から支える支え棒が取り付けられている請求項1~8のいずれかに記載の風力発電機。
【請求項10】
前記基材の周囲に、上向きの取り付け片と下向きの取り付け片を備えたブラケットが固定されており、それぞれの取り付け片に風受けが固定されている
請求項1記載の風力発電機。
【請求項11】
前記基材の周囲に風受けを支持する取り付け板が複数個固定され、それらの取り付け板を挟む一対の半円錐状の部品が風受けを構成している請求項1記載の風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸回りに回転する風車を備えた、簡易な構成の風力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、垂直軸回りに回転可能な回転体と、その回転体に同じ向きに環状に配列して取り付けられた複数個のヘルメットと、回転体の回転によって発電する発電機とを備えた垂直軸型風車を開示している。特許文献2は、クロスフロー型風車の羽の先端に半球状のカップを追加した微風力発電装置を開示している。また特許文献2では、起電力を測定するために自転車のハブダイナモを接続することが記載されている。
【0003】
特許文献3は、垂直方向の連結軸によって開閉可能に、かつV字状に連結された第1風受け板と第2風受け板を備えた垂直軸型風車が開示されている。このものは連結軸が風下に向かうときは第1風受け板と第2風受板が連結軸を中心に拡がり、広い面積で風を受ける。連結軸が風上に向かうときは第1風受け板と第2風受板が閉じて狭い面積で風を受ける。それにより風向および風力の変化に素早く対応できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-84718号公報
【特許文献2】特開2008-157165号公報
【特許文献3】特開2013-130071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の垂直軸形風車は、使用済みのヘルメットを再利用できるので、低コストで製造できると共に、耐久性が高い。しかし風車全体が重いため、始動時に微風による回転が難しい。特許文献2の微風力発電装置は、アルミニウムやバルサなどの軽量素材を用いているため、風車が軽量であり、狭い場所に設置できる。しかし広い面積で風を受けることが難しい。特許文献3の垂直軸型風車は、向かい風では風受けが狭くなり、追い風では風受けが広がる。そのため垂直軸型でありながら効率が高い。しかし構造が複雑で、製造コストが高い。
【0006】
本願発明は、微風でもスムーズに回転し、効率的に発電することができ、構成が簡易で安価に製造しうる風力発電機を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の風力発電機10、10A、10B、10C、10D、10E、10Fは、支持台11と、その支持台11によって垂直軸回りに回転自在に支持される風車12、12U、12Lと、その風車12、12U、12Lの回転によって発電する発電機13、13Aとからなり、前記風車12、12U、12Lが、円板状ないしリング状の基材14と、その基材14の周縁部に固定された複数の風受け15、15U、15L、22とからなり、前記風受け15、15U、15L、22が、略円錐状を呈することを特徴としている。
【0008】
このような風力発電機10、10A、10B、10C、10D、10Eにおいては、前記風受け15、15U、15Lが、可撓性を有する扇形のシート材15aを円錐状に丸め、周方向の両端部(15b、15c)で前記基材14を挟んで固定したものであるのが好ましい。また、前記風受け15、15U、15Lが柔軟性を有するものが好ましい。さらに前記基材14と平行に支持基材16が設けられ、基材14と支持基材16とが間隔維持材16a、16cによって共回りするように連結されているものが好ましい。
【0009】
また、前記基材14または支持基材16が自転車のホイール17からなるものが好ましい。さらに、前記発電機13が自転車のハブダイナモからなり、そのハブダイナモの支持軸13aが前記支持台11に固定され、ハブダイナモの回転部(ロータ)13bに前記基材14が取り付けられているものが一層好ましい。
【0010】
また、前記風車12と平行に、かつ、共回りするように動力伝達ホイール18が設けられ、前記発電機13、13Aがリムダイナモからなり、リムダイナモの回転部13Aaが前記動力伝達ホイール18に押し付けられているものであってもよい。さらに前記風車12、12U、12Lが上下に複数個設けられ、下の風車12Lの風受け15Lが上の風車12Uの風受け15Uに対し、平面視で半ピッチずれているものが好ましい。
【0011】
いずれの風力発電機においても、前記基材14に、風受け15、15U、15Lを内面側から支える支え棒(ねじ棒、間隔維持材)15h、16aが取り付けられているものが好ましい。
【0012】
前記基材(ホイール17)の周囲に、上向きの取り付け片20Uと下向きの取り付け片20Lを備えたブラケット20が固定されており、それぞれの取り付け片20U、20Lに風受け15U、15Lが固定されているものが好ましい。また、前記基材(ホイール17)の周囲に風受け22を支持する取り付け板21U、21Lが複数個固定され、それらの取り付け板21U、21Lを挟む一対の半円錐状の部品22aが風受け22を構成しているものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の風力発電機は、風車が円板状ないしリング状の基材と、その基材の周縁部に固定された複数の風受けとからなり、風受けが略円錐状を呈するので、風受けの頂点が風上に向かうときは抵抗が少なく、背面(凹面)で風を受けるときは、風をしっかりと取り込むことができる。そして風車の構成がシンプルで軽量であるので、安価に製造できる。
【0014】
このような風力発電機において、前記風受けが、可撓性を有する扇形のシート材を円錐状に丸め、周方向の両端部で前記基材を挟んで固定したものである場合は、立体的な風受けを容易に製造することができる。
【0015】
前記風受けが柔軟性を有する場合は、向かい風のときは風受けが変形して正面から見た投影面積が減る。そのため、風の抵抗が小さくなり、発電効率が高くなる。前記基材と平行に支持基材が設けられ、基材と支持基材とが間隔維持材によって共回りするように連結されている場合は、風車の剛性および強度を高くすることができる。
【0016】
前記基材または支持基材が自転車のホイールからなる場合は、基材または支持基材の剛性および強度を高くすることができる。前記発電機が自転車のハブダイナモからなり、そのハブダイナモの支持軸が前記支持台に固定され、ハブダイナモの回転部に前記基材が取り付けられている場合は、発電機を小型化することができる。前記風車と平行に、かつ、共回りするように動力伝達ホイールが設けられ、前記発電機がリムダイナモからなり、リムダイナモの回転部が前記動力伝達ホイールに押し付けられている場合は、発電機の回転数を高くすることができ、発生電力を大きくできる。
【0017】
前記風車が上下に複数個設けられ、下の風車の風受けが上の風車の風受けに対し、平面視で半ピッチずれている場合は、風車の1回転中における回転力の変動が少なく、発電量の変動が少ない。
【0018】
前記いずれかの風力発電機において、前記基材に、風受けを内面側から支える支え棒が取り付けられている場合は、風受けが前方から風を受けたとき、扁平に変形しても、円錐状に戻りやすい。
【0019】
前記基材の周囲に、上向きの取り付け片と下向きの取り付け片を備えたブラケットが固定されており、それぞれの取り付け片に風受けが固定されている場合は、2段タイプの風力発電機を簡単に構成することができる。前記基材の周囲に風受けを支持する取り付け板が複数個固定され、それらの取り付け板を挟む一対の半円錐状の部品が風受けを構成している場合は、風力発電機を簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の風力発電機の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3Aは
図1の風力発電機の風受けの展開図、
図3Bは風受けの組み立て途中の斜視図、
図3Cは風受けの組み立て状態を示す要部正面図である。
【
図4】本発明の風力発電機の他の実施形態を示す平面図である。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは本発明の風力発電機のさらに他の実施形態を示す平面図および正面図である。
【
図7】
図7Aは本発明の風力発電機のさらに他の実施形態を示す平面図、
図7Bおよび
図7Cは
図7AのVIIa-VIIa線断面図およびVIIb-VIIb線断面図である。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、それぞれ2段タイプの風力発電機の要部断面図である。
【
図9】本発明の風力発電機のさらに他の実施形態を示す正面図である。
【
図10】本発明に関わる風受け固定具の実施形態を示す正面図である。
【
図11】本発明の風力発電機のさらに他の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図12】
図11の風力発電機に用いられている風受けの組み立て方法を示す分解斜視図である。
【
図14】
図14Aは
図11の風力発電機に用いられている風受けを構成するシート材の展開図、
図14Bは
図11の風力発電機に用いられている取り付け板の実施形態を示す側面図である。
【
図15】本発明に関わる取り付け板の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す風力発電機10は、支持台11と、その支持台11によって回転自在に支持される風車12と、その風車12の回転によって発電する発電機13とを備えている。支持台11は円柱状で、その上端に発電機13が設けられ、発電機13の周囲に風車12が取り付けられている(
図2B参照)。風車12は、円板状の基材14と、その基材14の周縁部に取り付けられた6個の風受け15とから構成されている。風受け15は、扇状のシート材15a(
図3A参照)を略円錐状に丸めたものである。
【0022】
前記風車12は、
図2Aに示すように、6個の風受け15が、円板状の基材14の周縁部に同じ向きで、等間隔で固定されている。風受け15は2~5個でもよく、7個以上でもよい。風受け15の数が少ないと、回転力の変動が大きくなる。風受け15の数が多いと、回転力の変動が少ないが、重量が重くなる。風受け15は、
図3Aに示す扇形のシート材15aを略円錐状に丸めたものであり(
図3B参照)、両端の折り曲げ片15b、15cで基材14を挟んで固定している(
図3C参照)。風受け15を構成する円錐の頂点Pは、基材14の周縁に位置している。
【0023】
図3Aに示すように、扇状のシート材15aの中心角θは、250~300°程度である。その場合、円錐の頂角α(
図2A参照)は、sig(α/2)が250/360~300/360となる角度となる。
【0024】
図2Aに示すように、円錐の中心線Jは基材14の半径Rに対してほぼ直角である。円錐の下端15dを半径Rに対してほぼ直角にしてもよい。中心線Jと基材14の半径Rの角度を小さくすると、広い面積で風を受けることができ、風力を効率的に風車のトルクに変換できる。この実施形態では、折り曲げ片15b、15cは基材14の半径Rに対して0°~90°程度時計方向(右向き)に傾けて設けており、45°~60°程度がさらに好ましい。ただし反時計方向(左向き)に傾けることもできる(
図4A参照)。
【0025】
風受け15は、基材14に対して両面テープや接着剤などで固定することができる。熱溶着で固定してもよく、ビスとナットなど、他の部材を用いて固定してもよい。たとえば
図3Bに示すように、基材14と折り曲げ片15b、15cに貫通孔15eをあけてビス15fとナット15gあるいは鳩目で固定してもよい(
図3C参照)。ビス15fとナット15gなどで着脱自在に固定するときは、風力発電機10を設置する現場で風車12を組み立てることができる。
【0026】
基材14としては、PET樹脂が用いられるが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなども採用できる。ガラス繊維、カーボン繊維などの繊維強化プラスチック(FRP)や、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属シートを用いることもできる。厚さは0.5~3mm程度であり、好ましくは1~2mm程度である。基材14の厚さが0.5mm以下の場合は軽量で、しかも加工が容易である反面、強度や剛性が低くなる。3mm以上の場合は強度や剛性が高くなるが、重くなり、加工しにくい。
【0027】
風受け15についてもPET樹脂が用いられるが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、FRPなども採用できる。厚さは0.01~0.5mm程度、好ましくは0.1~0.3mm程度である。風受け15を構成する合成樹脂シートの厚さを薄くすると、柔軟性が高くなり、頂点P側(凸面側)から風を受けると扁平に撓む。それにより頂点P側から見た投影面積が小さくなり、風に対する抵抗が小さくなる。ただし厚くして、変形しないようにすることもできる。合成樹脂シートの厚さが0.1mm以上の場合は、割れやすいので、温水やヘアドライヤなどで加温しながら湾曲するのが好ましい。
【0028】
図2Bに示すように、前記支持台11は風受け15と干渉しない程度の太さであり、上下方向に延びている。そして支持台11の上端に発電機13が取り付けられている。この実施形態では発電機13として自転車の車輪に取り付けてランプに電力を供給する公知のハブダイナモ(あるいはダイナモハブ)を採用している。このハブダイナモは、支持軸13aと、その支持軸13aの周囲に回転自在に設けられる円筒形のロータ(回転部)13bを備えている。
【0029】
支持軸13aは一端側を支持台11の上端に固定し、ロータ13bの上端に基材14を固定する。支持軸13aの上端は基材14を貫通して上部に延び出ている。一般的なハブダイナモでは、支持軸13aに、一対の鉄心と、それらの間に設けられるコイルとが取り付けられ、ロータ13bに複数の極に分割されたマグネットが設けられている。
【0030】
ハブダイナモは入手しやすく、取り付けや交換も容易である。しかし他の発電機、たとえば後述するリムダイナモなどを用いることもできる。発電機13の起電力は4~10V程度、とくに6V前後、発生電力は20~80rpmで1~6W程度、とくに3W程度のものが好ましい。しかし起電力や発電量がさらに高い発電機を採用することもできる。
【0031】
図1および
図2Bの風車12では、想像線で示すように、基材14と平行に支持基材16を設け、基材14と支持基材16との間に複数本の間隔維持材16aを設けてもよい。支持基材16は基材14と実質的に同形状の円板からなる。支持基材16は金属薄板、とくにステンレススチールなどの強度が高い金属材料から形成するのが好ましい。間隔維持材16aとしては、鋼やステンレススチールなどの金属線が用いられるが、合成樹脂または金属製の板材あるいは棒材やパイプを用いることができる。間隔維持材16aとして上下の端部近辺あるいは全体にネジが形成された棒材を採用し、
図2Bに示すように、基材14や支持基材16を上下からナット16bで挟圧することによって固定してもよい。また、間隔維持材16aによって風受け15を基材14に固定するようにしてもよい。
【0032】
このような支持基材16と間隔維持材16aは、風車12を支持する。そして基材14、支持基材16および間隔維持材16aは、全体として籠状の立体形状を呈する。そのため、風受け15の重量や風圧によって基材14が撓むことを抑制する。基材14が合成樹脂製などで撓みやすい場合には、特に有効である。したがって風車12の軽量化に資することができる。そして風車12がスムーズに回転し、風受け15は効率的に風を受けることができる。
【0033】
図4、
図5Aおよび
図5Bに示す風力発電機10Aは、支持基材として自転車のホイール17を用いている。ホイール17は、ハブ17aと、リム17bと、それらを連結する複数本の線材からなるスポーク17c1、17c2とからなる。風車12とホイール17の間には、パイプなどからなる間隔維持材16cが介在されている。なお、
図2Bと同様の棒状の間隔維持材16aを用いることもできる。発電機13はホイール17の中心に設けたハブダイナモであり、ハブ17aは発電機13のロータを兼ねている。
【0034】
また、風受け15自体は
図1、
図2Aの風車12の風受け15と同様であるが、取り付け位置は
図2Aと異なり、風受け15の折り曲げ片15b、15cが基材14より外側にはみ出している。そして外周縁より外側の部分では、折り曲げ片15b、15c同士を直接重ねてネジなどで接合している。このように風受け15が基材14より外側にはみ出しているので、大きい風受け15を採用することができる。小さい基材14を採用しているということもできる。そして基材14のうち、風受け15の内部に入り込んでいる範囲が小さいので、風受け15に入り込む風が基材14の影響を受けにくい。
【0035】
さらに
図2Aの風車12と異なり、平面視で折り曲げ片15b、15cが基材14の半径に対して反時計方向(左側)に傾いている。そして折り曲げ片15b、15cが反時計方向に傾いているので、一つの風受け15から出ていく風Zが、回転方向における前の風受け15で再び受け止められる。そのため、風を有効利用できる。
【0036】
この風力発電機10Aは、リム17bとハブ17aが線材からなるスポーク17c1、17c2で連結され、基材14とハブ17aがパイプ(間隔維持材16c)で連結されているので、強度および剛性が高い。発電機13付きの自転車のホイールをそのまま利用することができる。また、スポーク17c1、17c2の間は空気が自由に通るため、風受け15が受ける上向きの風は抵抗が少ない。線材からなるスポーク17c1、17c2に代えて、合成樹脂やFRPなどからなる板材または膜材で連結することもできる。
【0037】
図6A、
図6Bに示す風力発電機10Bのように、風車12U、12Lを2段で設けることもできる。風受け15U、15Lは同じ向きである。上下の風車12U、12Lの風受け15U、15Lの数は同一で、平面視で周方向に半ピッチずらせている(
図6A参照)。この実施形態では上下の風受け15U、15Lはそれぞれ6個である。発電機13は1個でもよく、2個の発電機13を連結してもよい。風車12は3段以上設けることもできる。風車12を複数段にすることにより、回転力が増大し、発電力が増大する。上の風受け15Uと下の風受け15Lを半ピッチずらせているので、回転力(トルク)の変動が少なく、発電量の変動が少ない。
【0038】
図6Aに示す風車12U、12Lも、
図4の風車12と同様に、風受け15の折り曲げ片15b、15cが基材14の外周端から外向きに突出している。しかし折り曲げ片15b、15cは、基材14の半径に対し、時計回り(右向き)に傾いている。そのため、風受け15U、15Lの円錐の中心が基材14の半径に対して直角に近くなり、風車を回すトルクが大きくなる。風車12ごとに発電機13を設ける場合は、風受け15の向きは逆にすることができる。それぞれの風車12が受ける風同士の干渉を少なくするため、上下の間隔を拡げてもよい。
図6A、
図6Bの風車12では、間隔維持材16aとしてネジ棒を採用し、風受け15を基材14に固定する固定部材を兼用している。
【0039】
図7に示す風力発電機10Cでは、1枚の基材14に12個の風受け15を30°間隔で配列している。そして後ろの風受け15の頂点P近辺が前の風受け15の内側に入り込んでいる。そして
図7B、
図7Cから分かるように、後ろの風受け15の折り曲げ片15b、15cを基材14に止めるネジ棒16hを上方に延ばし、間隔維持材前の風受け15の内面に当接させ、風受け15を内側から支える支え棒としている。そのため、風受け15が前方(頂点P側)から風を受けて扁平に変形しようとしても、ネジ棒(支え棒)16hで支えられて大きくは変形しない。そのため、円錐状に戻りやすい。他の点は
図1、
図2Aの風力発電機10と同様である。
【0040】
図8A、
図8Bの風力発電機10Dは、
図7A~Cの風力発電機10Cの風車12を上下2段としたものである。上下の風車12U、12Lは6本または12本のネジ棒15hで連結されている。ネジ棒15hは上下の基材14、14の間隔維持材として作用し、ネジ棒15hの上部は上の風車12Uの支え棒として作用する。また、ネジ棒15hは上下の風受け15U、15Lの内側を通るため、
図8Bで示すように、上の風受け15Uの下部および下の風受け15Lの上部と干渉する。しかし風受け15U、15Lが撓むことにより、ネジ棒15hを上下に通すことができる。この場合、ネジ棒15hは風受け15U、15Lの所定以上の変形を抑制する。上下の風受け15U、15Lを半ピッチずらせてもよい。
【0041】
図9の風力発電機10Eは、風車12と平行に動力伝達ホイール18を配置し、風車12と動力伝達ホイール18が共回りするように支持基材16および間隔維持材16aなどで連結している。さらに動力伝達ホイール18に自転車のリムダイナモからなる発電機13Aの回転部13Aaを押し付けて、発電するようにしている。動力伝達ホイール18としては、自転車のホイールを用いることができる。このものは発電機13Aの回転数が多くなるので、風車12の回転抵抗が高くなるが、起電力および発生電力が大きくなる。
【0042】
図10に示す2段風車用のブラケット20は、自転車のホイールのリム17bなどに取り付ける固定部20aと、上の風受け15Uの折り曲げ片15b、15cを取り付ける上部取り付け片20Uと、下の風受け15Lの折り曲げ片15b、15cを取り付ける下部取り付け片20Lとを有する。
【0043】
上部取り付け片20Uは固定部20aの後端から斜め上に向かって延び、下部取り付け片20Lは固定部20aの前端から斜め下に向かって延びている。このブラケット20をリム17などの基材の周囲に複数個取り付けると、1つの基材の周囲にそれぞれ複数個で上下2段の風車の風受け15U、15Lを取り付けることができる。基材の周囲の長さは、上の風受け15Uと下の風受け15Lの左右のずれの長さの整数倍、たとえば3~10倍とする。
【0044】
図11に示す風力発電機10Fは、支持台11と、その支持台11の上端に設けられる発電機13と、発電機13のロータ13bに取り付けられたホイール17と、ホイール17のリム17bに取り付けられる上下の取り付け板21U、21Lと、それらの取り付け板21U、21Lによって支持される風受け22とからなる。風受け22は、
図12に示すように、取り付け板21U、21Lの両側に設けた一対の半円錐状の部品22aからなる。一対の半円錐状の部品22aは、折り曲げ片22b同士を重ね合わせることにより、円錐状の風受け22の形態となる。そして2個の部品22aの折り曲げ片22b、22bの間に取り付け板21を挟み込み、ビスとナットなどで固定することにより、風受け22と取り付け板21U、21Lとを一体化することができる。ホイール17に代えて、円板状の基材(
図1の符号14)を採用することができる。
【0045】
取り付け板21U、21Lはホイール17の上側に6個、下側に6個、上下が交互になるように、さらに平面視で互いに半ピッチずらせて配置している。ホイール17と、取り付け板21U、21Lと、風受け22は、全体として風車12を構成している。上向きに立ち上げた取り付け板21Uの下端および下向きに延びる取り付け板21Lの上端は、たとえば2本のボルト23などでリム17bに固定している(
図13A、
図13B参照)。
【0046】
半円錐状の部品22aは、たとえば
図14Aに示す扇形のシート材22cの端部を折り曲げて折り曲げ片22bとし(
図13参照)、扇部分22dを半円錐状に丸めることにより構成することができる。折り曲げ片22bには、折り曲げ片22b同士を連結するための孔24が2~3個形成されている。外側の孔24は、取り付け板21U、21Lへの取り付けにも用いられる。シート材22cは、
図3のシート材15と同様の材料および厚さのものを採用することができる。扇部分22dの中心角θは、120~150°程度である。
【0047】
上下の取り付け板21U、21Lは同じものを用いることができ、
図14Bに示す取り付け板21のように、細幅の矩形状の板材に、風受け22を固定する孔25およびホイール17への取り付け用の孔26を形成したものが用いられる。ホイール17に固定する部位の反対側の端部(
図14Bの上端)の前側の角は、組み立て時に折り曲げ片22bからはみ出るので、斜めにカットしている(符号27参照)。取り付け板21U、21Lとしては、たとえばアルミニウム、ステンレス、鋼などの金属板を用いることができる。アルミニウムは軽量で耐候性があるので好ましい。その場合、板の厚さは1~3mm程度、幅は20~40mm程度が好ましい。
【0048】
取り付け板21は、
図15で示すように、後部側の縁を折り曲げて補強リブ28を形成するのが好ましい。このように補強リブ28を形成すると、強い横風を受けたときでも風受けが撓むことがない。
【0049】
半円錐状の部品22aを作成する場合、折り曲げ片22bは扇状のシート材の両端縁を屈曲して塑性変形させ、円錐部分は弾力的に湾曲変形させる。そのため、シート材の板厚や塑性変形の状態によっては折り曲げ片22bが弾力的に元に戻ろうとして拡がる場合がある。しかし円錐の下端の円形部分は取り付け板21U、21Lによって拘束されているので、上下方向に拡がらず、円錐形状を維持することができる。合成樹脂製のシート材を塑性変形で折り曲げる場合は、89~100℃程度まで加熱すると、割れにくいため好ましい。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されず、発明の範囲内で種々変更することができる。たとえば前記実施形態では、風受けをシート材を丸めて構成しているが、射出成型などで初めから円錐形に成形することもできる。その場合は、風受けまたは基材にスリットを形成し、互いに噛み合わせるようにする。また、前記実施形態では、発電機として、自転車用のハブダイナモやリムダイナモを採用しているが、汎用の発電機を採用してもよい。
図11の風力発電機10Fでは上下交互に風受け22を設けているが、上だけ、あるいは下だけに風受けを設けることもできる。
【符号の説明】
【0051】
10、10A、10B、10C、10D、10F 風力発電機
11 支持台
12 風車
12U 上の風車
12L 下の風車
13、13A 発電機
13a 支持軸
13b ロータ(回転部)
13Aa 回転部
14 基材
15 風受け
15U 上の風受け
15L 下の風受け
15a 扇形のシート材
15b、15c 折り曲げ片
15d 下端
15e 貫通孔
15f ビス
15g ナット
15h ネジ棒
P 円錐の頂点
θ 中心角
α 頂角
J 円錐の中心線
R 基材の半径
Z 風
16 支持基材
16a 間隔維持材
16b ナット
16c 間隔維持材(パイプ)
17 ホイール
17a ハブ
17b リム
17c1、17c2 スポーク
18 動力伝達ホイール
20 ブラケット
20a 固定部
20U 上部取り付け片
20L 下部取り付け片
21 取り付け板
21U 上の取り付け板
21L 下の取り付け板
22 風受け
22a 半円錐状の部品
22b 折り曲げ片
22c シート材
22d 扇部分
23 ボルト
24 (取り付け板へ取り付ける)シート材の孔
25 (風受けを固定する)取り付け板の孔
26 (ホイールへ取り付ける)取り付け板の孔
27 斜めにカットした部位
28 補強リブ