(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103036
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ポリイミドおよびそれから形成されたフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021139591
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】109146306
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】506021156
【氏名又は名称】律勝科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】シュー,スティーブ リエン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン-ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ボ-ハン
(72)【発明者】
【氏名】シー,ユー-チアオ
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA05
4J043PA06
4J043PA08
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA15
4J043SA16
4J043SA54
4J043SA62
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA47
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA042
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA512
4J043UA522
4J043UA712
4J043UA722
4J043UB011
4J043UB151
4J043UB152
4J043UB161
4J043UB221
4J043UB241
4J043UB301
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA062
4J043VA081
4J043XA16
4J043ZA12
4J043ZA35
4J043ZA51
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線熱膨張係数が小さいポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】式(1)で表される第1構造単位と式(2)で表される第2構造単位とを含む構造単位を含むポリイミドであって、式中、Aは、それぞれ独立に、主鎖部に脂環式化合物基を含む4価の有機基であり、Dは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンの2価の残基であり、Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基であり、該ポリイミドで形成されたポリイミドフィルムの黄色度指数(YI)が5未満である、ポイリイミドを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される第1構造単位、および、式(2)で表される第2構造単位:
【化1】
を含む構造単位を含むポリイミドであって、
式中、Aは、それぞれ独立に、主鎖部に脂環式化合物基を含む4価の有機基であり、Dは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンの2価の残基であり、Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基であり、該ポリイミドで形成されたポリイミドフィルムの黄色度指数(YI)が5未満である、該ポイリイミド。
【請求項2】
前記構造単位が、さらに、式(3)で表される第3構造単位、式(4)で表される第4構造単位、または、式(3)で表される前記第3構造単位と式(4)で表される前記第4構造単位の両方:
【化2】
を含み、
式中、Bは、それぞれ独立に、主鎖部分に脂環式化合物基または芳香環基を含む4価の有機基であり、Dは、アミド基を含むジアミンの2価の残基であり、Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基である、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項3】
Aが、それぞれ独立に、下記:
【化3】
から選ばれる、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項4】
Bが、それぞれ独立に、下記:
【化4】
から選ばれ、
式中、R
1~R
22は、それぞれ独立に、H、F、CF
3、またはPhであり、R
1~R
22は、現れる毎に同じ又は異なるものである、請求項2に記載のポリイミド。
【請求項5】
Dが、それぞれ独立に、式(5)で表される基:
【化5】
で表される基から選ばれ、
式中、mは、0~5の整数であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1及びX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、-CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、-SO
2NHCH
2-、-NHSO
2CH
2-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1及びR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つ以上のフッ素または有機基で置換されていてもよく;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは-CONH
2である、請求項1または2に記載のポリイミド。
【請求項6】
Dが、それぞれ独立に、下記:
【化6】
から選ばれる、請求項5に記載のポリイミド。
【請求項7】
Eが、それぞれ独立に、式(6)で表される基:
【化7-1】
または
【化7-2】
から選ばれ、
式中、Rは、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、F、CF
3またはOCF
3であり;oは、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、0~4の整数であり;nは、1~3の整数であり、但し、少なくとも1つのoは、1~4の整数である、請求項1または2に記載のポリイミド。
【請求項8】
Eが、それぞれ独立に、下記:
【化8】
から選ばれる、請求項7に記載のポリイミド。
【請求項9】
該ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムのTgが420℃より大きく、該ポリイミドフィルムの50℃~400℃の線熱膨張係数が20ppm未満である、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項10】
該ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムが有機溶剤に不溶性である、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項11】
アミド基の含有量は、該ポリイミドのモル数の25%未満を占める、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項12】
該ポリイミド中のアミド基の含有量が、0.082mmol/g未満である、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項13】
請求項1に記載のポリイミドから形成されたポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドに関するものであり、特に、アミド基を含む分岐鎖を有するポリイミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
ディスプレイの開発では、薄型化、軽量化、さらにはフレキシブル化が現在の方向性となっている。そのため、ガラス基板をいかに薄く、軽くしていくか、さらにはガラス基板をプラスチック基板に置き換えていくかは、業界が考えている課題である。現在のディスプレイは薄膜トランジスタで駆動しているため、基板上に薄膜トランジスタを作製する必要がある。この薄膜トランジスタは、主に無機材料で構成されている。その形成には高温のプロセスが必要であり、そのような高温に耐えられるプラスチック基板材料は限られている。また、プラスチック基板と無機膜材料の線熱膨張係数が大きいと、膜が曲がって無機材料にダメージを与える可能性がある。そのため、プラスチック基板は、無機材料と同じ線熱膨張係数であることが必要である。また、ダウンエミッション型の有機ELなど、プラスチック基板からの光を透過させる必要があるディスプレイの場合、プラスチック基板は透明でなければならず、特に400nm以下の波長領域での光透過率が高くなければならない。
【0003】
ポリイミドポリマーは、熱安定性、高い機械的強度、耐薬品性を持つプラスチック材料の一種である。しかし、分子構造上、分子間や分子内での電荷移動を生じやすく、その結果、ポリイミドの外観が黄色くなってしまうため、用途が限られてしまう。電荷移動の現象を抑えるために、一般的には連結基を導入して主鎖を柔軟にしたり、ある程度大きな基を導入してスタッキング状態を壊したりすることで、効果を得ることも可能である。一般的な連結基としては、例えば、(-O-)、(-CO-)、(-CH2-)、(-C(CF3)2-)などが挙げられる。さらに、電荷移動を生じない脂環式テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとを組み合わせて形成した透明性の高い半脂環式ポリイミドを用いることも提案されている。このような半脂環式ポリイミドは、透明性と屈曲性を兼ね備えている。しかし、透明性を得るために連結基、脂環式二無水物、脂環式ジアミンのいずれを導入しても、これらの基の導入により線熱膨張係数が大きくなるため、半脂環式ポリイミドをディスプレイの薄膜トランジスタの基材に使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術課題に鑑み、本発明の目的は、ディスプレイ用薄膜トランジスタや太陽電池に適したポリイミドフィルムを提供することである。具体的には、線熱膨張係数が小さいポリイミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、式(1)で表される第1構造単位と式(2)で表される第2構造単位とを含む構造単位を含むポリイミドを提供する。
【化1】
式中、Aは、それぞれ独立に、主鎖部に脂環式化合物基を含む4価の有機基であり、Dは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンの2価の残基であり、Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基であり、このポリイミドで形成されたポリイミドフィルムの黄色度指数(YI)は5未満である。
【0006】
好ましくは、当該構造単位は、式(3)で表される第3構造単位、式(4)で表される第4構造単位、または、式(3)で表される第3構造単位と式(4)で表される第4構造単位の両方を、さらに含む。
【化2】
式中、Bは、それぞれ独立に、主鎖部分に脂環式化合物基または芳香環基を含む4価の有機基であり、Dは、アミド基を含むジアミンの2価の残基であり、Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基である。
【0007】
好ましくは、Aは、それぞれ独立に、下記:
【化3】
から選ばれる。
【0008】
好ましくは、Bは、それぞれ独立に、下記:
【化4】
から選ばれる。
式中、R
1~R
22は、それぞれ独立に、H、F、CF
3、またはPhであり、R
1~R
22は、現れる毎に同じ又は異なるものである。
【0009】
好ましくは、Dは、それぞれ独立に、式(5)で表される基:
【化5】
から選択される。
式中、mは、0~5の整数であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1及びX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、-CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、-SO
2NHCH
2-、-NHSO
2CH
2-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1及びR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つ以上のフッ素または有機基で置換されていてもよく;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは-CONH
2である。
【0010】
好ましくは、Dは、それぞれ独立に、下記
【化6】
から選択される。
【0011】
好ましくは、Eは、それぞれ独立に、式(6)で表される基:
【化7-1】
または
【化7-2】
から選ばれる。
式中、Rは、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、F、CF
3、またはOCF
3であり;oは、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、0~4の整数であり;nは、1~3の整数であり、但し、少なくとも1つのoは、1~4の整数である。
【0012】
好ましくは、Eは、それぞれ独立に、以下から選択される。
【化8】
【0013】
好ましくは、ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムが、420℃より大きいTgを有し、50℃~400℃の間のポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm未満である。
【0014】
好ましくは、ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムは、有機溶媒に不溶性である。
【0015】
また、本発明は、上記ポリイミドから形成される、ポリイミドフィルムを提供する。
【0016】
本発明のポリイミドは、アミド基を含有し特定の構造を有するジアミンモノマーおよび直鎖構造を有する芳香族の含フッ素ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとを共重合して得られる。このポリイミドから作製されたポリイミドフィルムは、透明性と低黄色度指数を有するだけでなく、低い線熱膨張係数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1のポリイミドのFTIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本書において、「*」(アスタリスク)は接続点を意味する。
本書において、「アミド基含有ジアミンの2価の残基」とは、アミド基含有ジアミンモノマーから重合用の2つのアミン基(-NH
2)を除去した後に残る2価の基を指す。以下にその例を示す。
【化9】
【0019】
本書において、「含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基」とは、含フッ素芳香族ジアミンモノマーから重合用の2つのアミン基(-NH
2)を除去した後に残る2価の基を指す。以下にその例を示す。
【化10】
【0020】
本発明が提供するポリイミドは、式(1)で表される第1構造単位と式(2)で表される第2構造単位とを含む構造単位を有する。
【化11】
式中、Aは、それぞれ独立に、主鎖部に脂環式化合物基を含む4価の有機基であり;Dは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンの2価の残基であり;Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基であり、このポリイミドにより形成されるポリイミドフィルムの黄色度指数(YI)は5未満である。なお、当該構造単位が複数のAを含む場合、複数のAは、互いに、同じ又は異なるものである。当該構造単位が複数のDを含む場合、複数のDは、互いに、同じ又は異なるものである。当該構造単位が複数のEを含む場合、複数のEは、互いに、同じ又は異なるものである。Aは、好ましくは、脂肪族4価の有機基である。
【0021】
本発明のポリイミドは、アミド基含有ジアミンに由来するアミド基を有しており、高温脱水後にシアノ結合を形成して主鎖間の結合形成を促進し、架橋構造を形成することができるため、ポリイミドフィルムの熱的、機械的特性を向上させることができる。本発明において、アミド基を含有するジアミンは、好ましくは、アミド基を含有する芳香族ジアミンである。好ましい一実施形態では、アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の25%未満を占める。好ましい一実施形態では、ポリイミド中のアミド基の含有量は、0.082mmol/g未満である。より好ましい一実施形態では、ポリイミド中のアミド基の含有量は、0.05より大きく、0.082mmol/g未満である。
【0022】
当該構造単位は、好ましくは、式(1)で表される少なくとも2つの第1構造単位と、式(2)で表される少なくとも2つの第2構造単位とを含む。第1構造単位に含まれる複数のAは、同じであっても異なっていてもよく、第2構造単位に含まれる複数のAは、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
当該構造単位は、さらに、式(3)で表される第3構造単位、式(4)で表される第4構造単位、または、式(3)で表される第3構造単位および式(4)で表される第4構造単位の両方を含んでいてもよい。
【化12】
式中、Bは、それぞれ独立に、主鎖部分に脂環式化合物基または芳香環基を含む4価の有機基であり;Dは、アミド基を含むジアミンの2価の残基であり;Eは、含フッ素芳香族ジアミンの2価の残基である。なお、当該構造単位が複数のBを含む場合、複数のBは、互いに、同じ又は異なるものである。当該構造単位が複数のDを含む場合、複数のDは、互いに、同じ又は異なるものである。当該構造単位が複数のEを含む場合、複数のEは、互いに、同じ又は異なるものである。Bは、Aと同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、Bは、Aと異なっている。好ましい一実施形態において、Bは、脂肪族4価の有機基である。
【0024】
Aは、それぞれ独立に、下記:
【化13】
から選ぶことができる。
【0025】
Bは、それぞれ独立に、下記:
【化14】
から選ぶことができる。
式中、R
1~R
22は、それぞれ独立に、H、F、CF
3、またはPhであり、R
1~R
22は、現れる毎に同じ又は異なるものである。例えば、複数のR
6がある場合、R
6は、互いに、同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
Dは、それぞれ独立に、式(5)で表される基:
【化15】
から選ぶことができる。
式中、mは、0から5までの整数(例えば、1、2、3、又は4など)であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち複数のQがある場合
1、複数のQは
1、互いに、同じでも異なっていてもよい)、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1とX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、X
2が複数ある場合、複数のX
2は、互いに、同じでも又は異なっていてもよい)、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、-CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、-SO
2NHCH
2-、-NHSO
2CH
2-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1とR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のR
2がある場合、複数のR
2は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つまたは複数のフッ素または有機基で置換されていてもよい;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、Y
2が複数ある場合、複数のY
2は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは-CONH
2である。すなわち、Dは、アミド基(-CONH
2)を含む基である。
【0027】
Dは、それぞれ独立に、下記:
【化16】
から選ぶことができる。
【0028】
Eは、それぞれ独立に、式(6)で表される基:
【化17-1】
または
【化17-2】
から選ぶことができる。
式中、Rは、同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のRがある場合、複数のRは、互いに、同じ又は異なるものでもよい)、それぞれ独立に、F、CF
3またはOCF
3であり、oは、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のoがある場合、複数のoは、互いに、同じでも異なっていてもよい)、それぞれ独立に、0~4の整数であり;nは、1~3の整数であり(すなわち、nは、1、2又は3であり得る)、但し、少なくとも1つのoは、1、2又は3など、1~4の整数である。
【0029】
Eは、それぞれ独立に、下記:
【化18】
から選択することができる。
【0030】
好ましい一実施形態では、当該ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムは、420℃を超える(例えば、423℃を超える、425℃を超える、428℃を超える、430℃を超える、または433℃を超えるなど)Tgを有し、50℃~400℃の間のポリイミドフィルムの線熱膨張係数は、20ppm未満(18ppm未満、15ppm未満、11ppm未満、9.5ppm未満、または9.3ppm未満など)である。
【0031】
好ましい一実施形態では、当該ポリイミドから形成されたポリイミドフィルムは、有機溶媒に不溶性である。有機溶媒は、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、m-クレゾール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、アセトン、または前記溶媒の2種類以上(例えば、3種類以上、4種類以上等)の混合物である。
【0032】
好ましい一実施形態では、ポリイミドは、ピロロン(pyrrolone)またはイソインドーロキナゾリンジオン(isoindoloquinazolinedione)を含まない。好ましい一実施形態では、ポリイミドは、ピロリドン(pyrrolidone)を含まず、イソインドールキナゾリンジオン(isoindolequinazolindione)も含まない。
【0033】
また、本発明は、上述のポリイミドから形成されたポリイミドフィルムを提供する。
【0034】
本発明のポリイミドフィルムは、以下の方法で調製することができる。少なくとも1種(例えば:少なくとも2種または少なくとも3種)のテトラカルボン酸二無水物、含フッ素芳香族ジアミンおよびアミド基含有ジアミンを溶媒に溶解し、一段階合成で重合してポリイミド溶液を得た後、ポリイミド溶液を塗布してフィルムを形成し、フィルムを乾燥する。乾燥は、230~400℃の焼成温度、例えば250、275、300、325、350、または375℃で行うことができ、いくつかの実施形態では、前記値のいずれか2つの間の温度(250~350℃または275~375℃など)で行われる。アミド基を含むジアミンに対する含フッ素芳香族ジアミンのモル比は、好ましくは8~20、より好ましくは9~19である。このような比であれば、黄色度指数が低いポリイミドフィルムを得ることができる。
【0035】
テトラカルボン酸二無水物は、主鎖部に脂環式化合物基を含むテトラカルボン酸二無水物であっても、主鎖部に芳香環基を含むテトラカルボン酸二無水物であってもよい。テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピルジエンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸二無水物)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、オクタヒドロ-ペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、(8aS)-ヘキサヒドロ-3H-4,9-メチルフラン[3,4-g]イソペンテン-1,3,5,7(3aH)-テトラケトン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デク-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピレン)ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルケトンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ヒドロキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルチオテトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物、スルホニルジフタル酸無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0036】
重合に用いる溶媒は特に限定されず、m-クレゾール、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ-ブチロラクトン(GBL)などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
上述したポリイミド溶液からの成膜方法は特に限定されず、ドロップコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティングなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
ポリイミドフィルムの黄色度指数(YI)は、5未満、例えば4.5未満、4未満、3未満、または2.5未満である。好ましい一実施形態において、ポリイミドフィルムの全光線透過率は、85%より大きく、例えば90%より大きく又は91%より大きい。
【0039】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するために用いられるものではない。本発明の技術分野において通常の技能を有する者が、本発明の精神から逸脱することなく行うあらゆる変更および修正は、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
材料:
【0041】
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)
【化19】
【0042】
3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン
【化20】
【0043】
2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1,4-ジアミン
【化21】
【0044】
3,5-ジアミノベンズアミド(3,5-DABAM)
【化22】
【0045】
5,5’-メチレンビス(2-アミノベンズアミド)
【化23】
【0046】
【0047】
ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)
【化25】
【0048】
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)
【化26】
【0049】
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)
【化27】
【0050】
実施例1:
【0051】
4.5mmol(mmole)の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の10%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.156mmol/gである。
図1に示すように、このポリイミド溶液中のポリイミドは、少なくとも2959.19cm
-1(N-H)、1778.14cm
-1(C=O、カルボニル)の吸収ピークを有している。
【0052】
実施例2:
【0053】
4.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.5mmolの5,5’-メチレンビス(2-アミノベンズアミド)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の20%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.080mmol/gである。
【0054】
実施例3:
【0055】
4.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、4mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物と、1mmolの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の10%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.152mmol/gである。
【0056】
実施例4:
【0057】
4.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、4mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物と、1mmolの1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の10%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.149mmol/gである。
【0058】
実施例5:
【0059】
4.75mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.25mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の5%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.316mmol/gである。
【0060】
実施例6:
【0061】
4.0mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と1.0mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の20%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.076mmol/gである。
【0062】
実施例7:
【0063】
4.5mmolの3,3-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の10%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.156mmol/gである。
【0064】
実施例8:
【0065】
4.5mmolの2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1,4-ジアミンと0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の10%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.127mmol/gである。
【0066】
比較例1:
【0067】
5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃に上げ24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0068】
比較例2:
【0069】
4mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃に上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0070】
比較例3:
【0071】
3.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TFMB)と1.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の20重量%に相当した。完全に溶解した後、5mmolのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物を加え、15分間撹拌した。その後、3.2mmolのイソキノリンを加え、反応温度を200℃まで上げ、24時間反応と重合を行い、ポリイミド溶液を得た。アミド基の含有量は、ポリイミドのモル数の30%を占める。また、ポリイミド中のアミド基の含有量は0.050mmol/gである。
【0072】
ポリイミドフィルムの製造方法は以下の通りである。
【0073】
上述した実施例および比較例のポリイミド溶液をフィルターで濾過した後、ブレードコーティング法によりガラス基板上に塗布し、400℃の高温窒素環境下で焼成することにより、15μmの固定厚さを有するポリイミドフィルムを形成した。
【0074】
上記ポリイミドフィルムを以下の試験に供した。
【0075】
<線膨張係数(Linear Thermal Expansion Coefficient)>及び<ガラス転移温度(Glass Transition Temperature)>
【0076】
熱機械分析装置(TA Instrument TMA Q400EM)を用いて、50℃から200℃までのCTE値とガラス転移温度(Tg)を測定した。熱分析の前に、すべてのポリイミドフィルムを220℃で1時間熱処理した後、TMAでガラス転移温度を測定した。フィルムモードでは、加熱速度は10℃/分、荷重は30mNで一定とした。同様に、50から200℃までの線熱膨張係数をTMAを用いて測定した。このとき、負荷ひずみは30mN、加熱速度は10℃/分であった。
【0077】
<黄色度指数(YI:Yellowness index)>
【0078】
ポリイミドフィルムの黄色度指数YI値は、ASTM E313に準拠して、日本電色COH 5500を用いて測定した。黄色度指数YIは、400~700nmの光の透過率を分光光度計を用いて測定した三刺激値(x,y,z)であり、YIは以下の式で算出した。
YI=100×(1.2769×-1.0592z)/y
【0079】
<全光線透過率(TT:Total Transmittance)>
【0080】
ポリイミドフィルムの全光線透過率は、日本電色COH 5500を用いてASTM D1003に準拠して測定した。
【0081】
<1%重量減少温度(1% weight reduction temperature)>
【0082】
膜厚15μmのポリイミドフィルムを試験片とし、TA INSTRUMENT社製の熱量計測定装置(Q50001R)を用いて、窒素ガス気流中で25℃から700℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、得られた重量曲線から1%重量減少温度を算出した。
【0083】
上記ポリイミドフィルムの試験結果を、下記表1に示す。
【表1】
【0084】
実施例1および比較例1から、アミド基を含むジアミンを導入することで、ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)を上昇させることができること、また、アミド基は高温で架橋反応を起こすため、線熱膨張係数(CTE)が大幅に低下することがわかる。
【0085】
実施例1、5、6および比較例3から、アミド基含有ジアミンの含有量が増加すると、Tgが若干増加し、CTEが若干減少することがわかる。しかし、アミド基含有ジアミンの含有量が増えると、ポリイミドフィルムの黄色度指数値YIも増加する。
【0086】
実施例1および比較例2から、類似の構造を持つジアミンが、アミド基とカルボキシル基が異なると、熱的特性が全く異なる結果となることがわかる。アミド基を導入したジアミンの方が、Tgが良く、CTEが低い。また、カルボキシル基を導入したジアミンの熱的特性は、カルボキシル基を導入していない比較例1の熱的特性とあまり変わらない。したがって、アミド基を含むジアミンを導入することで、熱的特性が大幅に改善されることがわかる。
【0087】
以上のことから、本発明のポリイミドフィルムは、高い無色透明性を有するだけでなく、耐熱性にも優れていることがわかる。具体的には、高いガラス転移温度、高い熱分解温度(thermal cracking temperature)、低い線熱膨張係数を有している。
【0088】
しかし、上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するために使用されるべきではない。したがって、本願の特許請求の範囲および明細書に従って行われる単純かつ同等の変更および修正はすべて、依然として本発明の範囲内である。
【外国語明細書】