(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103051
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】らせん案内路付き縦管
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20220630BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
E03F5/02
E02D29/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168990
(22)【出願日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2020216757
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】南 吾郎
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063BA20
2D063BA37
2D063CA25
2D063DA06
2D147BA00
(57)【要約】
【課題】内部を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体が安定して保持され、充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することが可能ならせん案内路付き縦管を提供すること。
【解決手段】縦管本体100と、前記縦管本体100内に配置された中心筒体110と、前記中心筒体110の周りに形成された上部らせん状案内路121と、下部らせん状案内路125と、を有するらせん状案内路120と、前記上部らせん状案内路121と前記下部らせん状案内路125の間に形成された中抜き空間130と、前記中抜き空間130に配置された平板状ガイド部材140と、を備え、前記上部らせん状案内路121の下端から前記平板状ガイド部材140の上端部までを間隔Lは、前記上部らせん状案内路の1ピッチ以上であることを特徴とするらせん案内路付き縦管10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、
前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、
前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、
前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、
前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成された平板状ガイド部材と、
を備え、
前記管軸方向における前記上部らせん状案内路の下端から前記平板状ガイド部材の上端部までの間隔Lは、前記上部らせん状案内路の1ピッチ以上である
ことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【請求項2】
直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、
前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、
前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、
前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、
前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成された平板状ガイド部材と、
を備え、
前記管軸方向における前記上部らせん状案内路の下端から前記平板状ガイド部材の上端部までを間隔L、前記縦管本体の内径Dとしたときに、
L≧0.8Dに設定されている
ことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【請求項3】
直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、
前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、
前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、
前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、
前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成され、前記上部らせん状案内路の下端から前記管軸に沿って延在された平板状ガイド部材と、
を備えたことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のらせん案内路付き縦管であって、
前記平板状ガイド部材は、
平面視したときに、前記管軸周りにおいて、前記上部らせん状案内路の下端と同じ周方向位置に配置されている
ことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のらせん案内路付き縦管であって、
前記中心筒体を前記縦管本体に固定するための中心筒体固定支持部材を備えている
ことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【請求項6】
請求項5に記載のらせん案内路付き縦管であって、
前記中心筒体固定支持部材は、
前記中心筒体を保持する筒状部と、
前記筒状部と前記縦管本体とを連結する支持アーム部と、
を有し、
平面視したときに、
前記支持アーム部は、前記らせん状案内路を流下する液体の上流側が前記筒状部と接続され、流下する液体の下流側が前記縦管本体と接続されるとともに、前記筒状部の外周面の接線方向に沿って延在している
ことを特徴とするらせん案内路付き縦管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流入した液体が縦管本体内をらせん状に流下するらせん案内路付き縦管に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画され、関連公共下水道との接続点が高落差接合となり、マンホール内に設けられる縦管が長くなるので、縦管下端へ流下する下水の落下衝撃が大きく、底部を損傷するおそれがある場合がある。
【0003】
そこで、上方に配置された上流側水平管路と下方に配置された下流側水平管路とを接続するための縦管として、らせん案内路付き縦管(中心筒昇降型ドロップシャフト)を配置する技術が普及しつつある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
らせん案内路付き縦管(中心筒昇降型ドロップシャフト)は、一般的には、縦管本体内に配置した中心筒体の周囲にらせん状案内路が形成され、らせん状案内路が最下部まで継続した構成とされている。
縦管本体内にらせん案内路付き縦管を設置する際には、らせん状案内部材をFRP積層によって縦管本体の内周面に固定する作業を縦管本体内の狭い空間で行うことから、技術的に非常に特殊かつ困難な作業が必要となる。
【0005】
また、らせん案内路付き縦管は、上流側水平管路と下流側水平管路が高落差になると中心筒体が長くなり、らせん状案内路を形成するらせんの周回数も多くなるので、経済的に不利になるケースがある。
【0006】
一方、中心筒昇降型ドロップシャフト(らせん案内路付き縦管)におけるらせん状案内路のらせん数を削減して経済的な不利を解消するために、上部らせんと下部らせんを分離して、その部分のらせん状案内路を省略する方式の中抜き式が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-179920号公報
【特許文献2】特開2011-089338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記中抜き式のらせん案内路付き縦管(中心筒昇降型ドロップシャフト)は、経済的なメリットがある反面、中心筒体に固定されてない部分が生じて、側筒体が、縦管本体内の水流や振動に対して充分な耐久性を確保するのが困難であるという課題がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、内部を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体が安定して保持され、充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することが可能ならせん案内路付き縦管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)この発明の第一態様は、直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成された平板状ガイド部材と、を備え、前記管軸方向における前記上部らせん状案内路の下端から前記平板状ガイド部材の上端部までの間隔Lは、前記上部らせん状案内路の1ピッチ以上であるらせん案内路付き縦管である。
【0011】
この発明に係るらせん案内路付き縦管によれば、上部らせん状案内路と下部らせん状案内路の間に配置された中抜き空間に平板状ガイド部材が形成され、中心筒体の外周面が縦管本体の内周面が平板状ガイド部材によって接続されているので、中心筒体が縦管本体に固定、支持される。
また、平板状ガイド部材の上端部が、管軸方向における上部らせん状案内路の下端から平板状ガイド部材の上端部までを間隔Lが、上部らせん状案内路の1ピッチ以上であるので、上部らせん状案内路をらせん状に流れてきた液体は、上部らせん状案内路を出た後は重力によって自由落下しながら、らせん状に周回する際の周方向流速が減速されて平板状ガイド部材に衝突する。その結果、平板状ガイド部材に衝突した際の跳ね返りが抑制され、平板状ガイド部材に衝突した後の液体は下方に整流される。
そして、平板状ガイド部材によって整流された液体は、下部らせん状案内路によって案内され、下部らせん状案内路によってらせん状に案内されて流下する。
その結果、縦管本体内を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体が安定して保持され、充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することができる。
【0012】
ここで、上部らせん状案内路の下端とは、上部らせん状案内路において液体が流れる面における下端をいい、言い換えると、上部らせん状案内路を構成するらせん状板材の流下面(上面)の軸線方向における最も低い位置である。
同様に、下部らせん状案内路の上端とは、下部らせん状案内路の流下面(上面)の軸線方向における最も低い位置である。
【0013】
また、平板状ガイド部材が、管軸方向における全長にわたって縦管本体と中心筒体を接続するかどうかは任意に設定することが可能であり、平板状ガイド部材と縦管本体、平板状ガイド部材と中心筒体が、管軸方向の一部において接続されていない構成とされてもよい。
また、平板状ガイド部材の下端部は、下部らせん状案内路の上端に対して、液体が上流から下流に向かって流れる際の周回方向における(1/4)回転、すなわち軸線回りに90°ほど前方側に形成されていることが好適である。なお、ピッチとは、らせん案内路が上下方向に延びる仮想の円柱を周回するときの上下方向(高さ方向)の寸法のことで、らせん案内路の1周分の高さである。
【0014】
(2)この発明の第二態様は、直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成された平板状ガイド部材と、前記管軸方向における前記上部らせん状案内路の下端から前記平板状ガイド部材の上端部までを間隔L、前記縦管本体の内径Dとしたときに、L≧0.8Dに設定されているらせん案内路付き縦管である。
【0015】
この発明に係るらせん案内路付き縦管によれば、管軸方向における上部らせん状案内路の下端から平板状ガイド部材の上端部までを間隔L、縦管本体の内径Dとしたときに、L≧0.8Dに設定されているので、上部らせん状案内路をらせん状に流れてきた液体は、上部らせん状案内路を出た後は重力によって自由落下しながら、らせん状に周回する際の周方向流速が減速されて平板状ガイド部材に衝突する。
その結果、縦管本体内を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体が安定して保持され、充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することができる。
【0016】
また、平板状ガイド部材が、管軸方向における全長にわたって縦管本体と中心筒体を接続するかどうかは任意に設定することが可能である。
また、平板状ガイド部材の下端部は、下部らせん状案内路の上端に対して、液体が上流から下流に向かって流れる際の周回方向における(1/4)回転ほど前方側に形成されていることが好適である。
【0017】
(3)この発明の第三態様は、直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、前記縦管本体の内部に上下方向に配置された中心筒体と、前記中心筒体の周りにらせん状に形成され、少なくとも一対の前記中心筒体における上側に配置された上部らせん状案内路と、前記上部らせん状案内路の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有し、前記縦管本体と前記中心筒体の間を流下する液体をらせん状に案内するらせん状案内路と、前記上部らせん状案内路と、前記下部らせん状案内路の間に形成された少なくとも一つの中抜き空間と、前記中抜き空間に配置され、前記縦管本体の内周面と前記中心筒体の外周面を接続するとともに前記縦管本体の管軸に沿って平板状に形成され、前記上部らせん状案内路の下端から前記管軸に沿って延在された平板状ガイド部材と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
上部らせん状案内路の下端から下方に延在させた平板状ガイド部材を備えることで、流水を下方に導くガイド板としての機能を強化することができ、中心筒体を支持する観点からも有効な構成となる。
【0019】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のらせん案内路付き縦管は、前記平板状ガイド部材は、平面視したときに、前記管軸周りにおいて、前記上部らせん状案内路の下端と同じ周方向位置に配置されていてもよい。
【0020】
この発明に係るらせん案内路付き縦管で間隔Lを上部らせん状案内路の1ピッチ以上とした構成によれば、平板状ガイド部材が、平面視したときに、上部らせん状案内路の下端と同じ周方向位置(鉛直方向真下)に配置されているので、上部らせん状案内路から出てきた液体は、平板状ガイド部材に衝突するまでに、確実に管軸の周りを一周する。
その結果、平板状ガイド部材の衝突するまでに、液体の周方向流速及び遠心力が充分に低下される。
【0021】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のらせん案内路付き縦管は、前記中心筒体を前記縦管本体に固定するための中心筒体固定支持部材を備えていてもよい。
【0022】
この発明に係るらせん案内路付き縦管によれば、中心筒体固定支持部材を備え、中心筒体を縦管本体に固定、支持されるので、中抜き空間が形成されていても、縦管本体内を流下する液体が平板状ガイド部材に衝突しても中心筒体に振動等が生じるのを抑制することができる。
【0023】
(6)上記(5)項に記載のらせん案内路付き縦管は、前記中心筒体固定支持部材が、前記中心筒体を保持する筒状部と、前記筒状部と前記縦管本体とを連結する支持アーム部と、を有し、平面視したときに、前記支持アーム部は、前記らせん状案内路を流下する液体の上流側が前記筒状部と接続され、流下する液体の下流側が前記縦管本体と接続されるとともに、前記筒状部の外周面の接線方向に沿って延在していてもよい。
【0024】
この発明に係るらせん案内路付き縦管によれば、中心筒体固定支持部材が、中心筒体を保持する筒状部と、筒状部と縦管本体とを連結する支持アーム部と、を有していて、平面視したときに、支持アーム部が、らせん状案内路を流下する液体の上流側が筒状部と接続され、流下する液体の下流側が縦管本体と接続されるとともに、筒状部の外周面の接線方向に沿って延在しているので、流下する液体が衝突した際の跳水が抑制される。また、流下する液体が衝突した際に、中心筒体固定支持部材に大きな力が付加されるのを抑制することができる。
その結果、中心筒体固定支持部材により中心筒体を縦管本体に対して安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係るらせん案内路付き縦管によれば、内部を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体が安定して保持され、充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視I-Iで示す側面から見た概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の要部を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た図である。
【
図4】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図1に矢視IV-IVで示す平面視した概念図である。
【
図5】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体固定支持部材の概略構成を説明する平面図である。
【
図6】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体固定支持部材の概略構成を説明する側面図である。
【
図7】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体固定支持部材のボルト固定部の概略構成の一例を説明する側面図である。
【
図8】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体固定支持部材の受け金具の概略構成の一例を説明する側面図である。
【
図9】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体接合部を示す側面図である。
【
図10】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管における中心筒体接合部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図8を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視I-Iで示す側面から見た概略構成図であり、
図2は
図4に矢視II-IIで示す側面から見た概略構成図である。また、
図3はらせん案内路付き縦管の要部を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た図であり、
図4は
図1に矢視IV-IVで示す平面視した概念図である。なお、
図1~
図8において、必要な箇所だけ破線や断面を用いて図示する場合がある。
【0028】
図1~
図4において、符号10はらせん案内路付き縦管を、符号100は縦管本体を、符号110は中心筒体を、符号120はらせん状案内路を、符号121は上部らせん状案内路を、符号125は下部らせん状案内路を、符号130は中抜き空間を、符号140は平板状ガイド部材を、符号150は中心筒体固定支持部材を、符号Oは縦管本体の管軸を、符号Pはピッチを示している。また、符号R1、R2は、上部らせん状案内路、下部らせん状案内路における下水(液体)等の移動方向を概念的に示している。また、寸法関係は強調した箇所があるものとする。
【0029】
らせん案内路付き縦管10は、
図1~
図4に示すように、例えば、縦管本体100と、中心筒体110と、らせん状案内路120と、中抜き空間130と、平板状ガイド部材140と、中心筒体固定支持部材150と、を備えている。
また、この実施形態では、縦管本体100と中心筒体110は、管軸Oが同時とされている。
【0030】
そして、らせん案内路付き縦管10は、地盤Gに上下方向に形成されたコンクリート地下構造物(例えば、マンホール)11内に上下方向に配置され、マンホール11内において、上流側水平管路12と下流側水平管路13とを、上下方向に接続している。
また、この実施形態において、上流側水平管路12と下流側水平管路13とは、平面視したときに、同一直線上に並ぶように配置されている。
【0031】
マンホール11は、コンクリート等で形成されていて、軸線が上下方向に沿うように配置された円筒状壁部と、円筒状壁部の上側に形成された上部壁部(不図示)を備え、下面にはコンクリート底面が形成されている。
そして、上部壁部には開口部(不図示)が形成されて、地上に通じるマンホール出入口(不図示)が接続されている。
また、例えば、マンホール11は、内径が数m程度に形成されていて、複数の管体が積み上げられて形成される組立式であっても、現場打ちのコンクリートにより形成されていてもよい。
【0032】
縦管本体100は、
図1~
図4に示すように、内部に縦管空洞部101が形成された円筒形状の直管により形成され、マンホール11の内部に管軸Oに沿って上下方向に沿って配置されている。
縦管本体100を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
【0033】
また、縦管本体100の上部側面には上部開口102が形成され、この上部開口102には上流側水平管路12が接続されている。
また、縦管本体100の下部側面には下部開口103が形成され、この下部開口103には下流側水平管路13が接続されている。
【0034】
中心筒体110は、
図1~
図4に示すように、内部に中心管体空洞部111が形成された円筒形状の直管により形成され、マンホール11の内部に管軸Oに沿って上下方向に沿って配置されている。
また、中心筒体110を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
【0035】
また、中心筒体110の内部には、上下方向に沿って、複数の点検用はしご115が間隔をあけて配置されている。また、点検用はしご115の下方には、傾斜した点検用はしご116が配置されている。
また、点検用はしご115と点検用はしご115の間及び傾斜した点検用はしご116の上端部近傍には、ステップ114が形成されている。
【0036】
らせん状案内路120は、
図1~
図4に示すように、中心筒体110の外周面110Aに接続され、管軸Oを中心として、平面視したときに反時計回りのらせん状に形成されている。
らせん状案内路120を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
また、らせん状案内路120は、例えば、縦管本体100の内周面100BにFRP積層を施すことにより接続されている。
【0037】
また、らせん状案内路120は、
図1~
図4に示すように、管軸O方向における上側に配置された上部らせん状案内路121と、下側に配置された下部らせん状案内路125とを備えている。
また、管軸O方向における上部らせん状案内路121と下部らせん状案内路125の間には、らせん状案内路120が配置されておらず、下水等の液体が重力により自由落下することが可能な中抜き空間130が形成されている。
【0038】
中抜き空間130は、上部らせん状案内路121と下部らせん状案内路125の間に配置され、この実施形態では、例えば、一つの中抜き空間130が形成されている。
【0039】
上部らせん状案内路121は、例えば、上端122が上流側水平管路12の底面よりも下方に配置されている。
そして、上部らせん状案内路121は、上流側水平管路12から縦管本体100に流入した下水等の液体を受け入れて、上部らせん状案内路121に沿って中心筒体110の周りにらせん状(矢印R1方向)に流下させて、下端123から中抜き空間130内に排出する。
【0040】
下部らせん状案内路125は、下端127が下流側水平管路13よりも上方に配置されている。
そして、下部らせん状案内路125は、中抜き空間130を流下してきた下水等の液体を受け止めて、下部らせん状案内路125に沿って中心筒体110の周りにらせん状に流下させて、下端127から排出するように構成されている。
下部らせん状案内路125の下端127は、例えば、底面部100cより2m程度の高さに設定できる。この高さに設定すると、下方から中心筒体110への水の浸入を抑制できる。
例えば、
図2の2点鎖線に示すように下流側水平管路13の外側に管径の大きな排水管14が配置されている場合であっても、中心筒体110への水の浸入を抑制できる。
【0041】
下水等の液体は、遠心力により縦管本体100の内周面100Bに沿う流れとなる。そして、空気は内周側(管軸O側)に集められ、縦管空洞部101を通って上方に向かって移動する。また、下水は、上部らせん状案内路120に沿ってらせん状(矢印R2方向)に流下しつつ流下エネルギーを減衰させて、縦管本体100の底面部110Cに強く衝突するのが抑制される。そして、底面部110Cまで流下した下水(液体)は、下流側水平管路13を通じて排出される。
【0042】
平板状ガイド部材140は、例えば、矩形平板状の板部材とされ、中抜き空間130に管軸O方向に沿って配置されている。
平板状ガイド部材140を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、ステンレス鋼により形成されている。
【0043】
また、平板状ガイド部材140は、例えば、幅が縦管本体100と中心筒体110の半径方向の間隔(内径差の1/2)に対応して形成されている。
そして、平板状ガイド部材140は、平面視したときに、外周側縁部140Aが縦管本体100の内周面100Bと接続され、内周側縁部140Bが中心筒体110の外周面110Aと接続されている。
その結果、平板状ガイド部材140は、中心筒体110と縦管本体100を固定、支持する機能を有する。
【0044】
また、平板状ガイド部材140の上端部141は、例えば、縦管本体100の内径をDとしたときに、上部らせん状案内路121の下端123との管軸O方向における間隔Lが、間隔L=1.0Dに設定されている。
なお、平板状ガイド部材140の上端部141は、他の例として、上部らせん状案内路121の下端123の直下に設置されていてもよい。
図1では、間隔L=1.0Dの位置に平板状ガイド部材140の上端部141を設置した構造を実線で示し、上部らせん状案内路121の下端123の直下近傍に平板状ガイド部材140’の上端部141’を設置した構造を2点鎖線で示した。
【0045】
なお、平板状ガイド部材140の上端部141の管軸O方向における位置は、間隔L ≧0.8Dの範囲で任意に設定してもよい。
この構成の場合、平板状ガイド部材140の上端部141の管軸O方向における上部らせん案内路121の下端123からの間隔Lを、間隔L≧0.8Dの範囲で設定することは、間隔Lがらせん状案内路120の1周分よりも下方となり、流下する液体の周方向速度を充分に減速できる点で好適である。また、間隔L≧0.8Dは、上部らせん状案内路121における1P(ピッチ)以上、下方位置にあることを意味する。
かかる構成により、上部らせん状案内路121から流れ出た下水は、中心筒体110の周りを1周してから平板状ガイド部材140に衝突することになる。
また、平板状ガイド部材140’の上端部141’を上部らせん状案内路121の下端123の直下に設置した場合、上部らせん状案内路121から流れ出た下水は、中心筒体110の周りに沿って若干周回後、平板状ガイド部材140に衝突することになる。
【0046】
また、平板状ガイド部材140、140’は、平面視したときに、上部らせん状案内路121の下端123に対して、周方向において同じ位置に配置されている。すなわち、平板状ガイド部材140、140’は、上部らせん状案内路121の下端123の真下に配置されている。
【0047】
平板状ガイド部材140の下端部142は、管軸O方向における下部らせん状案内路125の上端126と対応させて配置されている。
すなわち、平板状ガイド部材140は、管軸O方向において、上部らせん状案内路121の下端123に対して間隔Lをあけた位置から、下部らせん状案内路125の上端126までの範囲に形成されていることになる。
また、平板状ガイド部材140’は、管軸O方向において、上部らせん状案内路121の下端123の直下から、上部らせん状案内路121の下端123と下部らせん状案内路125の上端126の間の中間位置まで形成されていることになる。
【0048】
具体的には、平板状ガイド部材140の下端部142は、下部らせん状案内路125の上端126に対して、下水(液体)が上流から下流に向かって流れる際の周回方向において、1/4回転ほど前方側(下流側)、言い換えると軸線O回りに90°ほど前方側に形成されている。
なお、平板状ガイド部材140の下端部142の周方向位置については、下部らせん状案内路125の上端126に対して1/4回転前方側に限定されることなく任意に設定してもよい。
【0049】
以下、
図5~
図10を参照して、中心筒体固定支持部材について説明する。
図5、
図6は、らせん案内路付き縦管における中心筒体固定支持部材の概略構成を説明する平面図、側面図である。
図7は中心筒体固定支持部材のボルト固定部の概略構成の一例を説明する側面図であり、
図8は中心筒体固定支持部材の縦管連結部の概略構成を説明する側面図である。また、
図9は中心筒体接合部の側面図であり、
図10は中心筒体接合部を示す部分断面図である。
図において、符号151は支持部材を、符号151Sは筒状部を、符号154は支持アーム部を、符号157は縦管連結部を、符号159は相対位置調整部を示している。
【0050】
中心筒体110は、例えば、同一内外径の複数の筒体110aを継ぎ足し接合することで構成されている。筒体110aどうしの接合部分の一例として、
図6、
図9に示すように接合するべき一方の筒体110aの端部にフランジ部110bを設け、他方の筒体110aの端部にフランジ部110bを設け、フランジ部110bどうしを突き合わせた接合構造を採用できる。
フランジ部110bどうしの突き合わせ部分を貫通する複数のボルト112とこれらのボルト112に螺合するナット113により
図6、
図9に示すように筒体110aと筒体110aが接合されている。
フランジ部110bを用いて筒体110a、110aを継ぎ足し接合した構造であるならば、筒体110aどうしの接合部を強固な構造にできる。
【0051】
中心筒体固定支持部材150は、
図5に示すように、例えば、中心筒体110を周方向に囲むように配列された3つの支持部材151を備えている。3つの支持部材151を設ける位置は、フランジ部110bの位置と干渉しない位置に設定される。例えば、
図6に示すようにフランジ部110bより若干下方に3つの支持部材151が設けられる。なお、支持部材151を設ける位置は、
図6に示す位置に限らず、フランジ部110bと干渉しない位置であれば、いずれの位置であっても良い。
中心筒体固定支持部材150を配置する管軸O方向位置(上下方向位置)は、中抜き空間130内において任意に設定することが可能であるが、平板状ガイド部材140、140’が配置されていない部分とすることが、固定効果を大きく発揮する上で好適である。
【0052】
図1に実線で示す平板状ガイド部材140の場合、例えば、中抜き空間130の上下方向における中間位置、言い換えると、上部らせん状案内路121の下端123と平板状ガイド部材140の上端部141の中間位置(例えば、上下方向における中央部)に配置されている。
なお、中心筒体固定支持部材150を配置する位置については任意に設定することが可能であり、中抜き空間130の上下方向寸法を長く設定する場合は、例えば、中抜き空間130に、互いの上下方向寸法が4m以内となるように、複数の中心筒体固定支持部材150を配置することが好適である。
【0053】
支持部材151は、
図5に示すように、例えば、円弧状保持部152と、円弧状保持部152から外周側(縦管本体100側)に向かって伸びる支持アーム部154と、支持アーム部154の第1端部(外周側端部)154Aに連結され、縦管本体100の内周面100Bと連結される縦管連結部157と、相対位置調整部159と、を備えている。
【0054】
円弧状保持部152は、例えば、中心筒体110の外周面の曲率半径と対応する曲率半径の円弧形状に形成されている。また、この円弧形状は、管軸Oを中心として中心角120°に設定されている。
【0055】
また、円弧状保持部152は、円弧形状の両端部に、平面視外周側に向かって屈曲し略L字形に形成された結合フランジ部152Fを有している。
また、結合フランジ部152Fには、締結部材(例えば、ボルト及びナット)152Tを挿通するための貫通穴(不図示)が形成されている。
【0056】
そして、
図5に示すように、3つの中心筒体固定支持部材150を中心筒体110の周囲に配置して、締結部材152Tにより隣接するフランジ部152F同士を結合することにより、これら3つの円弧状保持部152により略円筒形状の筒状部151Sが形成される。
そして、筒状部151Sによって中心筒体110の外周面110Aを保持することが可能とされている。
【0057】
支持アーム部154は、
図5に示すように、平面視したときに、らせん状案内路120を流下する液体の上流側に位置された第2端部(内周側端部)154Bが円弧状保持部152の外周面152Aと接続され、下流側に位置された第1端部(外周側端部)154Aが縦管連結部157を介して縦管本体100の内周面100Bと連結されている。
その結果、支持アーム部154は、矢印R1方向のらせん状の流れに沿った配置とされている。
【0058】
また、支持アーム部154は、
図6に示すように、例えば、円弧状保持部152と同じ高さ寸法に設定されている。
また、支持アーム部154は、例えば、長手方向に沿って見たときの断面が略H字形に形成されたH型の型材によって構成されている。
【0059】
また、支持アーム部154は、
図7に示すように、例えば、第1端部(外周側端部)154Aに縦管連結部157と連結するための貫通穴154Hが形成されている。
具体的には、型材のウエッブWを挟んで対向配置された2つのフランジ部Fに、ウエッブWを挟んで上側と下側に位置される部位に、それぞれフランジ部Fの厚さ方向に貫通する3つの貫通穴154Hが、支持アーム部154の長手方向に沿って形成されている。
【0060】
また、支持アーム部154は、例えば、第1端部(外周側端部)154Aに、2つのフランジ部Fの外面に、ウエッブWの延長線上に配置され外方に向かって突出する筋状突部154Gが形成されている。
また、支持アーム部154は、
図5に示すように、平面視したときに、円弧状保持部152の外周面152Aに対して接線方向に延在している。
その結果、支持アーム部154は、例えば、概ね中心筒体110の外周面110Aに対しても略接線方向に沿って形成される。
【0061】
縦管連結部157は、
図8に示すように、例えば、底面壁部158Aと、底面壁部158Aの幅方向両端から上方に立ち上る立上り壁部158Bと、を有するチャネル形型材158を加工して形成されている。
そして、底面壁部158Aと立上り壁部158Bで形成された空間に支持アーム部154の第2端部154Bが挿入されて、支持アーム部154と縦管本体100とを連結する連結部材である。
【0062】
具体的には、
図8に示すように、例えば、チャネル形型材158の第1端部(外周側端部)157Aの端面に取付け用壁部157Fが接続され、底面壁部158Aの下面から取付け用壁部157Fにわたって、チャネル形型材158の長手方向に沿って略三角形のステー壁部157Sが接続されている。
【0063】
また、取付け用壁部157Fには、厚さ方向に貫通する貫通穴157Jが形成されている。そして、貫通穴157Jに締結ボルト151Tを挿入して、には、厚さ方向に貫通する貫通穴157Jが形成されている。そして、貫通穴157Jに締結ボルト151Tを挿入して縦管本体100の内周面100Bに取付け用壁部157Fを取り付けることで中心筒体固定支持部材150が縦管本体100に固定される。
中心筒体固定支持部材150の設置数、設置間隔は任意に設定することが可能であるが、例えば、概ね2m間隔の範囲内で設置されていることが好適である。
この実施形態では、中心筒体固定支持部材150は一つ設置されている。
【0064】
また、立上り壁部158Bには、支持アーム部154の貫通穴154Hと対応する位置に、チャネル形型材158の長手方向に沿って厚さ方向に貫通する長穴157Hが形成されている。
また、立上り壁部158Bには、例えば、厚さ方向に貫通し筋状突部154Gを挿入可能とされたガイド溝157Gが長手方向に沿って形成されている。
【0065】
そして、支持アーム部154を、筋状突部154Gをガイド溝157Gによって案内させながら縦管連結部157のチャネル形型材158に挿入する。そして、長穴157H及び貫通穴154Hに締結部材(例えば、ボルト、ナット)157Tを挿入、締結することにより、支持アーム部154と縦管連結部157が連結する。
【0066】
なお、この実施形態において、長穴157Hは、中心筒体110と縦管本体100の相対位置の調整するための対位置調整部159を構成する。
具体的には、締結部材(例えば、ボルト、ナット)157Tを支持アーム部154及び縦管連結部157に挿入して連結する際に、締結部材(例えば、ボルト、ナット)157Tを長穴157Hの任意の位置に調整することにより、中心筒体110と縦管本体100の相対位置の調整する。
【0067】
中心筒体固定支持部材150を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態において、中心筒体固定支持部材150は、例えば、ステンレス鋼により形成されている。ステンレス鋼により形成により形成することは、らせん案内路付き縦管10内において、下水等と接触した場合でも中心筒体固定支持部材150が腐食するのが抑制されるので好適である。
なお、中心筒体固定支持部材150を、ステンレス鋼以外の材料により形成してもよいし、複数の材料により形成してもよい。
【0068】
次に、らせん案内路付き縦管10の作用について説明する。
(1)まず、らせん案内路付き縦管10内に下水等の液体が流入する。具体的には、上流側水平管路12から、縦管本体100内に液体が流入する。
(2)縦管本体100に流入した液体は、縦管本体100内を落下して上部らせん状案内路121に流入する。
(3)上部らせん状案内路121に流入した液体は、上部らせん状案内路121に案内されて、中心筒体110の周囲を周回しながら、矢印R1方向にらせん状に流下する。
そして、液体は、上部らせん状案内路121内において周方向の流速が増加するとともに、遠心力が増加する。
このとき、液体は、遠心力により縦管本体100の内周面100Bに沿う流れとなる。そして、空気は内周側(管軸O側)に集められ、縦管空洞部101を通って上方に向かって移動する。
【0069】
(4)その後、液体、上部らせん状案内路121の下端123から中抜き空間130に排出される。
図1の実線で示す平板状ガイド部材140の場合、上部らせん状案内路121から排出された液体は、中抜き空間130内において、重力により落下速度が加速されるとともに、上部らせん状案内路121による周方向の速度が減速され、ばらけることがある。このばらけた液体は、中心筒体110の周囲を一回転周回した後に、平板状ガイド部材140に衝突する。よって、ばらけた液体が霧状や粒状になってしまうことを抑制できる。
らせん流は、上部らせん状案内路121の下端123から寸法L(0.8D)だけ下方に導かれるので、周方向の流速が充分に減速される。ここで、上部らせん状案内路121の上下方向の1P(ピッチ)は、概ね0.8Dである。
なお、ピッチとは、上部らせん案内路121が上下方向に延在する仮想の円柱を周回するときの上下方向(高さ方向)の寸法のことであり、上部らせん案内路121の1周分の高さが1P(ピッチ)である。
図1の2点鎖線で示す平板状ガイド部材140’の場合、中抜き空間130に排出された液体は、中心筒体110の周りを若干周回後、平板状ガイド部材140’に衝突し、周方向の流速が減速される。
【0070】
(5)平板状ガイド部材140、140’に衝突した液体は、平板状ガイド部材140、140’に沿って下方(略鉛直方向、矢印V方向)に整流される。言い換えると、先のばらけた液体を生じた場合、平板状ガイド部材140、140’でまとめられる。
そして、平板状ガイド部材140、140’によって整流された液体は、平板状ガイド部材140、140’の下端部142、142’から、中抜き空間130あるいは下部らせん状案内路125に流入する。
(6)下部らせん状案内路125に流入した液体、下部らせん状案内路125に沿って中心筒体110の周囲を周回しながららせん状に流下する。このときの液体の挙動は、上部らせん状案内路121の場合と同様である。
そして、下部らせん状案内路125に沿って矢印R2方向にらせん状に流下した液体は、鉛直方向の流速が小さいので、縦管本体100の底面部110Cに強く衝突するのが抑制される。また、液体が衝突することによって生じる騒音、振動、水しぶきは抑制される。
そして、底面部110Cまで流下した下水(液体)は、下流側水平管路13を通じて排出される。
【0071】
第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管10において、中抜き空間130に平板状ガイド部材140が形成された場合、平板状ガイド部材140の上端部141が、管軸O方向における上部らせん状案内路121の下端123の下方に、間隔L≧1.0D(D:縦管本体100の内径)をあけて配置されている。このため、上部らせん状案内路121をらせん状流は周方向の流速及び遠心力が低下してから平板状ガイド部材140に衝突するので、平板状ガイド部材140に衝突した際の跳ね返りが抑制され、平板状ガイド部材140により下方流に整流される。
第1実施形態において、上部らせん状案内路121の下端123の直下に平板状ガイド板140’の上端部141’を設けた場合、らせん状に流入した液体が平板状ガイド板140で整流されるので、良好な整流効果が得られる。
また、上部らせん状案内路121の下端から下方に延在させた平板状ガイド部材140’を備えることで、流水を下方に導くガイド板としての機能を強化することができ、中心筒体110を支持する観点からも有効な構成となる。
【0072】
平板状ガイド部材140、140’によって整流された液体は、下部らせん状案内路125によって案内され、ほぼ下方に流下する。
その結果、縦管本体100内を流れる液体の水理機能を確保しつつ中心筒体110が安定して保持され、らせん案内路付き縦管10に充分な耐久性と優れたメンテナンス性を確保することができる。
【0073】
また、らせん案内路付き縦管10によれば、平板状ガイド部材140が、平面視したときに、上部らせん状案内路121の下端123と同じ周方向位置(鉛直方向真下)に配置されているので、上部らせん状案内路121から出てきた下水等の液体は、平板状ガイド部材140に衝突するまでに、確実に管軸0の周りを一周する。
その結果、平板状ガイド部材140に衝突するまでに、液体の周方向流速が充分に低下される。
【0074】
また、らせん案内路付き縦管10によれば、中心筒体110が中心筒体固定支持部材150により縦管本体100に固定、支持されているので、中抜き空間130が形成されていても、縦管本体100内を流下する液体が平板状ガイド部材140に衝突しても中心筒体110に振動等が生じるのを抑制することができる。
【0075】
また、らせん案内路付き縦管10によれば、中心筒体固定支持部材150が、平面視したときに、らせん流の上流側で中心筒体110と連結され、下流側で縦管本体100と連結されるとともに、支持アーム部154が、筒状部151S及び中心筒体110の外周面の接線方向に沿って形成されているので、流下する液体が衝突した際の跳水が抑制される。
【0076】
また、らせん案内路付き縦管10によれば、流下する液体が中心筒体固定支持部材150に衝突した際に、中心筒体固定支持部材150に大きな力が付加されるのを抑制することができる。その結果、中心筒体110を安定して保持することができる。
【0077】
また、らせん案内路付き縦管10によれば、中心筒体固定支持部材150が相対位置調整部159を備えているので、中心筒体110と縦管本体100の相対位置を容易かつ効率的に調整することができる。
その結果、現場において、らせん案内路付き縦管10を施工することができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、らせん案内路付き縦管10が一つの中抜き空間130を備えている場合について説明したが、二つ以上(複数)の中抜き空間を備えた構成としてもよい。
また、複数の中抜き空間が配置されている場合に、すべての中抜き空間に平板状ガイド部材140あるいは平板状ガイド部材140’を配置するかどうかは任意に設定することが可能であり、一部の中抜き空間に平板状ガイド部材140あるいは平板状ガイド部材140’を配置してもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、ひとつの中抜き空間130に対して、ひとつの平板状ガイド部材140あるいは平板状ガイド部材140’が配置されている場合について説明したが、例えば、中抜き空間130における中心筒管110の管軸Oの周方向位置に、複数の平板状ガイド部材140あるいは平板状ガイド部材140’を配置してもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、平板状ガイド部材140、140’が中心筒体110と縦管本体100とを接続して形成されている場合について説明したが、管軸O方向の一部において、平板状ガイド部材140、あるいは平板状ガイド部材140’と中心筒体110、縦管本体100が接続されていない構成としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、平板状ガイド部材140が、例えば、上側らせん案内部材121の下端123から平板状ガイド部材140までの間隔L、縦管本体100の内径Dとしたときに、L=1.0Dに設定されている場合について説明したが、間隔Lについては、1.0ピッチ以上もしくは、L≧0.8Dの範囲で任意に設定してもよい。間隔Lは、1.2ピッチ以上もしくは、L≧0.8Dがより好ましい。間隔Lは、大きすぎるとばらけた液体を整流しにくくなるので、2.4(ピッチ)以下もしくは、L≦2.0Dが好適である。
【0083】
また、上記実施形態においては、中心筒体固定支持部材150が、中抜き空間130の上下方向における中間位置に配置されている場合について説明したが、中心筒体固定支持部材150の数、配置する上下方向位置については任意に設定してもよい。
なお、例えば、中抜き空間130の上下方向寸法が4mを超える場合には、中抜き空間130の中に複数の中心筒体固定支持部材150を配置することが好適である。
【0084】
また、上記実施形態においては、中心筒体固定支持部材150がステンレス鋼により形成されている場合について説明したが、中心筒体固定支持部材150を形成する材料については任意に設定することが可能であり、例えば、ステンレス鋼以外の金属や樹脂材料によって形成してもよい。また、中心筒体固定支持部材150を複数の材料により形成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態においては、相対位置調整部159が縦管連結部157に形成された長穴157Hにより構成されている場合について説明したが、支持アーム部154側に形成された長穴により相対位置調整部159を構成してもよいし、その他周知の手段によって相対位置調整部159を構成してもよい。
【0086】
また、上記実施形態においては、らせん案内路付き縦管10に流入する液体が下水等である場合について説明したが、らせん案内路付き縦管10に流入する液体は、下水に限定されることなく任意に設定することが可能である。
【0087】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
O 管軸
10 らせん案内路付き縦管
100 縦管本体
110 中心筒体
120 らせん状案内路
121 上部らせん状案内路
125 下部らせん状案内路
130 中抜き空間
140 平板状ガイド部材
140’平板状ガイド部材
150 中心筒体固定支持部材
159 相対位置調整部